資料4 「教職員給与の在り方」に関する意見

平成18年9月4日
全日本教職員連盟

1 はじめに

 教育は、未来に対する先行投資であり、将来の日本を支える青少年を健全に育成する崇高な営みである。経済状況の如何に関わらず、教育に対する投資を惜しまず、子供たちのために教育環境を整えていくことは私たち大人に課せられた責務である。特に、義務教育については、日本国憲法第26条にある、「その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」という規定の実現のため、国は子供たちの教育環境の充実に最大限の努力を払うべきである。

 現在、国及び地方の厳しい財政状況から、公務員の総人件費の削減が求められている。学校教育における子供たちにとっての最大の教育環境は教員であるにもかかわらず、教員に優秀な人材を確保するという重要な観点を抜きにして、「歳出削減」ありきで論じられていることは誠に遺憾である。仮に、昭和49年に制定された「人材確保法」の目的が尊重されないという結論になれば、「学校教育には優秀な人材を必要としていない」というメッセージを国民に発することになり、同時に現職にある全ての教員の意欲と使命感を減退させることにもなる。

 教育の重要性を鑑みるに、全日教連は「人材確保法」は今こそその目的を生かさなければならないものであると考える。子供たちのために真摯に取り組んでいる多くの教職員に対して、教育専門職としての適切な処遇が与えられること、優れた教職員を一人でも多く学校現場に確保することこそ、いかなる教育改革よりも優先して取り組まなければならないことである。
 以下、教職員が誇りと意欲を持って教育に専念できる給与の在り方について、全日教連としての意見を述べる。

2 人材確保法の在り方

(1)人材確保法の必要性について

「人材確保法」は、教育専門職としての誇りの根拠とも言えるものであり、困難な職務に向かって敢然と立ち向かう活力の源ともいえる重要な法律である。「教育は人なり」の言葉が示すように、児童、生徒の教育に携わる教員に優れた人材を確保することが、教育の質的向上を担保することであると考える。
 戦後の教育界において、教師労働者論を唱え、教育の社会的地位を貶め、教育者としてあるまじき行為を重ねてきた教員がいたことは事実である。しかし、多くの教員は常に「子供たちのために」と日々教育に全力を傾けており、保護者の信頼と子供からの尊敬を受けている。
 人確法の法的役割は終わったとする考え方があるが、団塊の世代の大量退職に伴い、教員の採用は今後とも増加傾向にある。学習意欲の低下、学級崩壊等の諸問題が叫ばれている中、教育の質の向上を図り、教員の力量を高めることは常に必要である。「すぐれた人材を確保し、もって学校教育の水準の維持向上に資することを目的とする」(人確法第1条)と規定されている同法の目的が今後とも尊重されるべきであると考える。

(2)人材確保法による優遇措置について

7月7日に「人確法に基づく優遇措置の縮減」が閣議決定されるなど、これまでのような一律優遇の維持は厳しい状況にある。全日教連会員を対象とした「教職員給与の在り方に関するアンケート」を実施したところ、「これまで通りすべての教員について、人確法に基づいて給与を優遇すべきである」(22.4パーセント)という意見に対して、「不適格な教員以外は、人確法に基づいて給与を優遇すべきである」と考えている会員が55.1パーセントおり、半数を超えた。また「優秀な教員には、人確法に基づいて給与を優遇すべきである」(22.4パーセント)との意見もあり、従来の一律優遇とは異なる措置を求める声が多い。
 全日教連としては、人確法は存続すべきであると考える。同法の目的を尊重した上で教育職員の優遇措置は継続して残し、なおかつ同法第3条に定める優遇措置が講じられる教員については、新たに「職務遂行能力に優れた教員であること」を規定し、個々の教員の能力と実績に応じた優遇措置となるよう制度化が図られることを求めるものである。

3 教職員給与の在り方

(1)メリハリある給与体系について

全日教連ではかねてより、教員給与における平等主義を改めるために「給与における教育職給料表(俸給表)の5級制」を提言している。現行の4級制では、教諭における職責や職務遂行能力、実績を給与に反映することは難しい。教育に対する熱い情熱と優れた能力を有する教員であっても、教諭の給与が2級止まりのため、管理職にならなければ相応の処遇とはならないのが現状である。優れた指導力を持つ教員がその職務や職責、能力、実績にふさわしい給与を与えられることは、教員の意欲や資質の向上につながると考える。
 現在、教諭は2級止まりであるが、指導力に優れ、子供のため、学校のために尽力している教諭に対して「新3級」への昇格の道を開くことを提案する。さらに、主幹級等の職務級を明確にする必要性があることから、研修を積み重ね、勤務先の学校のみならず、地域の教諭の指導的立場として力を発揮する教諭は、管理職にならずとも基本給の上で「新4級」や「新5級」の処遇を受けることも可能とするのが「5級制の給与体系」である。
 このことについて前出のアンケートでは、72.3パーセントの会員が「俸給表を5級制にし、一般教員にも新4級や新5級への昇格を可能にする」ことを求めている。つまり、全日教連会員は自分の職務に責任と自信を持ち、日々努力していることが分かる。このことからも、全日教連としては「基本給の5級制」の実現を強く望む。

(2)教職調整額について

教職調整額についても、一律に支給されていることを疑問視する声がある中、前出のアンケートでは、「現状のまま支給すべきである」(47.9パーセント)が最も多く、以下、「勤務状況によって差をつけて支給すべきである」(41.7パーセント)、「時間外勤務手当として支給すべきである」(8.3パーセント)という結果であった。また、「しっかりとした予算が確保できないのであれば現状のままがよい」といった意見もあった。
 一般行政職に比べ教員は、教材研究や授業準備、児童生徒の評価等に加え、学校内外における生活指導や安全指導等、勤務の特性から勤務時間の明確な線引きができない状況にある。
 このような現状からも、「教員は一般行政職と同じような勤務時間の管理はなじまない」との考えのもと、全日教連としては、今後も教職調整額の本給に含めての支給を求める。しかしながら、一律に同率の支給は必ずしも現状を反映したものとは言えず、「勤務状況によって差をつけて支給すべきである」という意見も多いことから、教職調整額を現行の一律4パーセントから、0パーセント~10パーセント程度の幅を持たせて支給することについても検討すべきであると考える。そのためには、公正公平な基準による評価制度の確立が必要であることは言うまでもない。

(3)教員特有の手当について

「メリハリある給与制度とするために、どのような手当が必要か」とのアンケートでは、「主任手当の充実」、「部活動など特殊業務手当の充実」を求める声が多かった。具体的には、1.現行では日額200円の主任手当を日額400円に、(また、月額制など支給方法の見直しを含め、職責給としての位置づけをより鮮明にしていくべきである、という意見)、2.特殊業務手当は現行の4時間1,200円から1時間300円に、3.現行では支給されていない養護教諭への手当の新設(学校における養護教諭の職務の範囲は従前よりも拡大していることに伴って、職責はより重要になっていることを背景として)、などが挙げられた。今後、メリハリある給与制度とするためには、以上のこと等も念頭に置いた改革が必要であると考える。
 また、義務教育等教員特別手当については、教員の専門性を保障するものとして定率で手当を算定し、基本給に上乗せすることによって、各年齢で常に同じ割合で優遇されることを求めたい。

4 最後に

教育は国家百年の大計であり、未来の日本を支えるものである。優れた教員を一人でも多く確保することによって社会全体が教員を尊敬し、信頼できるようになり、教育は大きく前進すると考える。社会的地位を高めると同時に、教員にその自覚を促す制度の拠り所としての「人材確保法」をより良いものに改正し、教員が誇りを持って教育活動に専念できるよう強く望むものである。

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