教職員給与の在り方に関するワーキンググループ(第2回)・教職員給与の在り方に関するワーキンググループ(第3回)合同会議 議事録

1.日時

平成18年9月4日(月曜日) 10時~12時 13時~15時

2.場所

東京グリーンパレス 地下1階 「ばら」

3.議題

  1. ヒアリング・質疑応答
  2. その他

4.議事録

【田村主査】
 定刻となりましたので、ただ今から、第2回・第3回中央教育審議会初等中等教育分科会・教職員給与の在り方に関するワーキンググループを開催致します。本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 本日は、午前と午後それぞれ2時間ずつの予定で第2回と第3回を続けて行わせていただきます。
 本日の審議に入る前に、前回欠席された委員をご紹介します。慶応義塾大学教授の吉野委員でいらっしゃいます。よろしくお願いいたします。
 それでは、本日の議事に入りますが、本日の議題は関係団体ヒアリングということで、本日と次回の2回に分けて、地方公共団体、学校関係者、教育関係団体、民間企業、総務省、財務省等の皆様から教職員給与の在り方についてご意見を伺いたいと思っております。本日配付されています資料1にありますとおり、全部で19人の皆様からのヒアリングを予定しております。その内、本日は7人の皆様においでいただいております。
 皆様におかれましては、大変ご多忙の中、ご出席を賜り、ありがとうございます。本日の進め方としては、1人に対して30分ずつの時間を設けております。その30分の中で、まず最初の15分は意見発表をしていただき、その後の15分でそれに対する質疑がありましたら、各委員からお願いします。では、早速皆様から意見を伺っていきたいと思います。まず、全国都市教育長協議会から意見発表をお願いいたします。

【全国都市教育長協議会】
 皆様、おはようございます。全国都市教育長協議会の理事をしております、所沢市教育委員会教育長の鈴木でございます。本来ですと会長が参りまして意見を申し上げるべきところでございますが、私の方から資料に従いまして、発表させて頂きたいと思います。
 人材確保法の在り方についてでございます。まず最初に、人材確保法の必要性について、優れた教師を採用することは大変重要なことであること。教職員の給与は優れた人材が進んで教師を希望することを助長するに足る高い水準が必要であるという人確法の精神、そういったものは大変重要であり、この存在意義は失われていくとは考えられず、全国で高い水準の教育を維持向上していくために、基本的に必要な制度であると考えます。
 2番目に、人材確保法による優遇措置についてでございますが、教育という職の特殊性と責任の大きさを考えますと、職務が適切に評価され、相応の優遇措置が維持されるべきだと思います。それぞれの能力や勤務実績に応じた給料や手当の在り方になるように、再検討して頂ければと思います。
 次に、教職員給与の在り方についてですが、メリハリのある給与体系について意見を申し上げます。教員の能力や適性等が適正に評価され、それを処遇に反映することができるように教員のモチベーションを高めるような給与体系。こういうものが必要だと思います。本来学校の職場というものは、色々な職がございますけれども、今申し上げたような視点での給与体系の見直しということも大切なことかと考えます。
 次に、教職調整額について意見を申し上げます。現在支給されている教職調整額4パーセントという基準が、教員という職務の特殊性を考えたときに妥当かどうかは、教職員の勤務実態調査等の分析を踏まえて検討する必要があると考えます。この教職調整額の決定されたそもそもは、超過勤務手当という超勤の測定というものが非常に難しいと言うことで一律支給となっているわけであります。現在も勤務時間の内外を問わず包括的に支給されている現状について、なかなか実態に応じた支給というのは、困難を伴うかと思いますけれども、十分に検討して頂きたいと思います。
 次に(3)の教員特有の手当についてでございます。教員の指導、勤務態様、職務内容、こういう特殊性を踏まえますと、各手当の必要性、支給要件、支給方法、金額など教員の専門性、特殊性を再検討しながら見直していく必要があると考えます。次に、その他といたしまして、教員評価についてでございます。教員の評価制度については、教員一人一人の職務遂行能力を向上させるために的確で透明性の高い評価システムを構築する必要があると考えます。ただし、その運用に当たりましては、適正な人材育成のための指導助言等により教員の職務に対する意欲を高めたり、多様化する教員のニーズに柔軟かつ的確に対応できるような職員研修の充実を図っていくことも必要であろうと考えます。評価結果を処遇や給与に反映させることについては、評価基準と評価結果が公正・公平でなければならないということから、より慎重に議論をして頂きたいと思います。それから、学校の管理運営についてでございます。各学校では特色ある学校づくり等、学校の自主性・自立性を尊重した学校経営が行われておりますけれども、学校長の方針を具現化するということから、新たな段階を設けるために、主幹制等を導入するというピラミッド型の運営組織を検討しているところも多いようでございます。以上、レジュメにありましたものを、簡単にかいつまんでご説明致しました。

【田村主査】
 ありがとうございました。それでは、資料の2でございますが、ご質問お願い致します。どうぞ、吉野委員。

【吉野委員】
 ありがとうございます。いくつか質問させて頂きます。一つは、民間の企業との関係で、好景気か不景気かによって教員の質が変わるようなことを聞くことがあるのですが、全体として先生の質というのが落ちてきているのかそうではないのかということ。もう一つは、その場合に、給与による処遇という場合に、教職調整額とか様々なことによって、モチベーションを高める必要があると思うのですが、給与の他に教員のモチベーションを高めるような方法をお考えでありましたら、教えてください。3番目はこれまで教員の評価というものは、どのようにやられてこられたか。この3点について質問致します。

【全国都市教育長協議会】
 まず、景気の影響を受けているかと言うことですけれど、私が振り返ってみますと、人確法ができたときに既に、30歳の後半でした。そのことから考えますと、人確法の影響というのは何で評価するかと言うことでございますが、教員の質は高まっていると思います。
 ただ、色々な事件等ありますと教員のことが大きく報道されますけれど、例えば、卒業した大学の状況ですとか、教育に夢を抱くと言いますか、教育の重要性を認識している教員は、戦後まもなくよりは増えてきているのだろうと思います。私は、私が就職したころよりは教員の質は高まっていると考えております。
 それから、処遇ですけれども、色々な表彰制度があるのではないかということですが、教育界に優秀な人材を迎えると言うことは、社会全体が教育を取り巻く環境といいますか、教員の給与のこともさることながら、教員の評価ですね、教員を取り巻く条件が良くなると言うことが大切だろうと思います。
 教員になる人たちが、周りの影響を大きく受けて教員になろうという意志を固めるのだろうと思いますので、表彰制度というものがありますけれどもこれが、即優秀な人材を迎えるための手段となるかどうか。私は埼玉におりますが、埼玉でも教員表彰制度があります。
 優秀な教員を年齢にかかわらず表彰をしてそして、はつらつ先生として、そこに推薦される先生は確かに優秀であります。しかし、そうしたモチベーションを高めるということにおいて、教員が向かっていくと言うよりは、いかに皆さんが認めてくれるかという環境が大切だと思いますが、それよりも、先ほど申し上げましたような、教員に対する一般の評価というものを高めるような工夫、アピールというものが非常に重要であると考えています。
 それから、3番目の評価と言うことで今学校現場がどうなっているかと言うことでありますが、勤務評定から人事評価制度を導入しております。先ず、自己申告というものを学校長も一般の教諭も行います。こういう目標、こういうことを到達目標とするということを毎年自己申告という形で提出し、校長は教育委員会へ、そして私ども教育委員会は年3回校長から説明を受けます。そして校長は一般の教員からやはり3回説明を受けます。もっと回数を多く受けているかもしれません。
 そして、本年から最終的には人事評価制度、総合的な評価というものを教育委員会では校長を、学校長は一般の教員を評価をするということを行っております。やはり、評価でランク付けをするということよりも、むしろ学校経営にどのように教員が参画していくか、あるいは、私はこういうことをやっていきたいということですから、学校長は教員と対話をしますし、教育委員会は学校長と対話を行いますので、私はそういう面で、評価制度というのは非常に学校運営上役立っていると思います。以上でございます。

【田村主査】
 ありがとうございました。本城委員どうぞ。

【本城委員】
 1点目は、1枚目を拝見しますと給与は差があると、実績に応じて実態に応じてということで、給与に差がつくと言うことを肯定的に受け止めているのかなと見受けられるのですが、例えば、具体的にいうと、経験年数が18年ぐらいで仮定した40歳の教員であれば、例えば金額が40万円とすると、上がどれくらいまで、下がどれくらいまで差がついて良いと考えるのかということについて、教えてください。もう1点ですが、主幹制の導入についての検討についてですが、全国の小学校、中学校では組織の規模に差があると思います。40人以上教職員がいる組織もあれば、10人以下の教職員の組織もあると思いますが、すべてについてこの主幹制が必要だとお考えなのか、それとも、組織の人数によって、例えば15人以上であれば必要だけれどもそれ以下であれば必要ないだとか、その2つについて教えてください。

【全国都市教育長協議会】
 最初の給与差の問題ですが、お答えしにくいですね。というのは、これは、一般の行政職の給与というものとそれから教員の給与、これが、最初は人確法により初任給には差がありますね。私は教員の中の給与の差、これは、例えば18年たって40万円での上限と下限ですね、これらについてはどうでしょうか、基準というか、総額40万円で1割ぐらい差があって良いというようなことはお答えしにくいと思います。それから、主幹制についてですが、これは、人数に左右されると思います。場合によっては、大きい学校では指導面と管理面がありますので、これは行政職もそうですが、主幹を置くか置かないかは、その課の状況にもよりますので、大きい学校で指導面に力を注ぐ主幹と、管理面に力を注ぐ主幹が必要な学校もありますし、いわゆる、教頭がそういうことに対応できる小さい学校もありますので、一律に行かないと考えております。

【田村主査】
 本城委員よろしゅうございますか。では、箕浦委員どうぞ。

【箕浦委員】
 先ず1つ目が今の主幹制の問題なんですが、職務として設けると言うことだと思うのですが、今のお話を聞きますと、指導面、管理面で一定の組織があった場合には、必要があるだろうということだと思いますが、一方、給料からしますと主任というものがあると思います。主任というものと位置づけがどう違うのかお聞きしたいと思います。それから、2ぺーじの教員評価についてですが、評価システムの構築の必要があるということだと思いますが、評価結果を処遇や給与に反映させることについては慎重な検討が必要だということですが、民間の会社から言わせると評価を行うと言うことは給与・処遇に反映あるいは能力開発にどう使うかということに視点をあてて行うものなので、これは、時期的なものなのか、そういう障害を除く必要があるということなのかご意見があれば教えて頂きたい。

【全国都市教育長協議会】
 主幹制ということですが、これは進んでいる県とそうでない県というのがあると思います。これの代表的な裏付けというか、主幹言うものをどのように位置付けて、手当等をどうするか、管理職として処遇するのかそれとも教務主任とか主任制というものもあるので、そういったものと兼ねているのか。ですから、管理職として位置付けるかどうかによって違ってきますね。学校長がいて、教頭がいて、教務主任がいて色々な主任がいますね。それら主任は管理職手当が出ませんから手当が出ます。主幹の方も手当にするか、主幹になったら何の手当にするか。そういったこともあります。ですから主任と兼ねる場合が多いのではないでしょうか。教頭とではないですね。教頭は管理職ですから。
 主幹を管理職に位置付けるかどうか。その辺が検討課題だと思います。それから評価の点ですが、当然処遇や能力開発に役立てるべきではないか。能力開発は、先ほどお話ししたとおりで、研修等になります。
 この処遇の点で学校の現場を見ますと明らかな差の付く場合、例えば調整手当みたいなものですと、段階を付けて、この人は勤務時間を超して仕事をやらなければいけないということであれば、4パーセント一律ではなくて差を付けることも考えられるのですが、給与の点では例えば給料表を変えることによって、そこに位置付けていくとか、何か違ったことが考えられるのではないかと思います。
 評価をする、差を付けるということは、一般的には聞くのですが、結局予算があって、それに基づいて評価して配分していくと言うことは難しい仕事ではないかと考えます。授業をしている状況をどう捉えるか。ですから先ほど言ったように、公正・公平という基準性といいますか、そういったことを先に検討しなければならないのではと考えております。以上です。

【田村主査】
 ありがとうございます。それでは、小川委員どうぞ。

【小川委員】
 2点伺います。1つは、人確法については従来、教職員全員に対して支給されていたんですが、今回の提案ではそれをやめて、実績に応じて措置できるようにと提案されています。これは、下の2のメリハリのある給与体系の実績に基づく給与体系とどう違うのか。つまり、このように、人確法の支給の仕方を変えると、人確法の性格が大きく変わるのではと思いますので、どうなのかということが1つです。もう1つは、2ページの教職調整額のことですが、超勤手当は出ていなくて仕方がないといいながら、しかし、今の超勤手当の仕方については問題があり、実態に即して支給されるべきだという点について、この主旨についてもう少し説明して頂きたいと思います。つまり、教員の勤務実績に比べて支給が少ないから増やせということなのか、どういうことなのかもう少し説明頂ければと思います。

【全国都市教育長協議会】
 まず、人確法の性格についてということでございますが、教職員の給与の在り方について、どちらかというと、年齢にしたがって給料が上がっていく。給料表も非常に荒っぽい給料表です。そういったことですと、指導力不足教員であっても、他の人と同じように昇給していくという、一般的には一律という印象を受けると思います。これはやはり変えるべきではないかと思います。
 例えば、学年主任になったら給料表が変わっていくとかですね、そういうメリハリある給料表といいますか、そういうものに変えていく必要があるのではということでございます。それから、優遇措置のことですが、これは、手当の在り方といいますが、これが学校種別にもよるし、例えば部活動の手当と言うことで考えますと、今のままで言うと、一生懸命やる教員とそうでない教員がいるわけです。やはり、積極的に関わっていくところに手厚くで、そういうものに改めていけば、ということでございます。
 それから、調整額のことですけれども、実際どうなんでしょうか。4パーセントと決まった根拠なんですが、これはわからないのですが、今は4パーセントが支給されて、それが本俸に繰り入れられています。非常に重要な調整額だと思います。4パーセントがどうかということは、まず教員の勤務実態、超過勤務の状態というものがどうなっているのか。普通ですと予算があって、その予算内で超勤を命じる、そして処理をしているということが一般的だと思うのですが、教員はそれが把握しにくいと言うことではないでしょうか。ですから、教員の勤務実態の調査というものを十分にして頂いて、そしてそれが一律支給でよろしいかどうかと言うことです。誰もが同じだけもらうと言うことはありえません。一般的に考えれば差がつくと言うことはあり得ると思います。

【田村主査】
 ありがとうございました。最後に帯野委員どうぞ。

【帯野委員】
 先ほど、主幹制について、管理職に位置付けるかどうかが課題と言うことでしたが、同じく、学校の管理運営力の点で、校長の裁量権をどの程度拡大すれば、学校の自主性・自立性を確立できるとお考えなのか。たとえば、人事権、決裁権まで与えてしまうのか。その教育委員会との関係はどのようにお考えなのか、教えてください。

【全国都市教育長協議会】
 学校長になってこういう学校にしたい、それから地域に対してこういう学校を目指しますというと、評議委員さんなどと一緒にそういう方針を検討してやった場合にやはり財政的な裏付けは必要だと思います。やはりお金が必要ということです。ですから極力、今は教育委員会で処理していると思うのですが、責任の持てる範囲で、財源を学校の方へ与えていく制度が必要だと思います。全部教育委員会が抱えて、割り当てていくと言うことではなくて、裁量権のある財源を与えることが大事だと思います。
 もう一つの人事権ですけれども、これも、各学校長がそれぞれに制約条件はありますけれども、こういった人が欲しいといったときに、今は教育委員会がヒアリングを行い、できるだけ希望に添った人を配置するようにしますけれども、一番難点があるのは中学や高校だと思います。免許の関係がありますから。しかし、基本的には学校長の人事希望に添うように、できるだけ学校長の人事への係わりが大きくなるような制度が望ましいと思います。

【田村主査】
 ありがとうございました。それでは時間でございますので、よろしゅうございましょうか。次に、全国高等学校長協会からのご意見を伺います。

【全国高等学校長協会】
 失礼致します。今、ご紹介頂きました全国高等学校長協会の島宮でございます。本日は意見表明の機会を与えてくださいましてありがとうございます。それでは、時間の関係もありますので、高等学校長協会としての意見を述べさせて頂きたいと思います。一つに、教員の勤務実態についてです。これは皆様もご存じかと思います。
 平成15年から高等学校では新しい学習指導要領が始まったわけでありますが、その前に、学校五日制。こういう中で現在高等学校では何が大変かと言いますと、小中学校で学習内容が3割削減されて、そういう生徒が高等学校に入ってくる。例えば、大学入試、国公立で考えますと、五教科七科目が課せられる。そういう中で、高等学校では生徒の学力を向上させる。または、もっと基本的なことを申し上げれば基礎学力を定着させるということに非常に多くの時間を割いていることが実態であります。
 それから、授業時間が減少している。これに対応するために、例えばゼロ時間目、7時間目、8時間目の授業を行ったり、または土曜日に講習、補習を行ったり、休業中に休業日を弾力化したり休業日を短くしてそこで講習や補習を行ったりするというこういうような努力を行ったりしている。それから、生徒が非常に多様化している現実がありますので、例えば教科も、非常に多様な科目を用意しまして、生徒が選択します。そういう中で教員の持ち時数も増加します。それから一人当たりが担当する科目数も増加します。人によっては4科目5科目を教えなければいけない。そのための教材研究に非常に時間がかかる。そういう風な実態がございます。
 それから更に、総合的な学習の時間があります。これは高等学校教員にとっては、教科は専科ですので非常に教えにくい、非常に苦慮しているということがあります。さらには、今後例えば、キャリア教育というものが導入されるでしょう。また、奉仕というような科目もあります。こういう専門外の科目に対応するために相当な時間をさいて準備を行っているという実態があります。
 それから、授業以外の校務分掌、部活動等に相当熱心に教員は取り組んでおります。土曜日も日曜日もない、そういう生活をしている教員もおります。それから、引率業務があります。部活動の合宿、修学旅行があり、それから家庭訪問もあります。このようなことから教員の中には多忙感が渦巻いている実態にあります。それから学校の管理といった面で考えますと、現在は事務職員が定数減、おそらくどこの県でも同じだと思いますが、事務職員関係が定数減になっております。そうしますと、例えば学校の施設管理は教員が分担しなくてはならない。それから、週休日等の夜間はどうしたらいいのかという問題があります。現在警備を担当する職員というのは全国的になくなってきております。ということは、学校が無人化され機械警備化されています。その週休日に例えばPTA、保護者が会合を開くということになりますと、やはり教員が大活躍して学校を開けなければならない、または最終的に閉めなければならない。そういうような施設管理、教育以外の施設管理というようなことも生じてきます。あとは同窓会への対応、学校評議委員会への対応なども教員が係わっていかないと、実際運営できないということで、従来にはなかった仕事を抱え込んで、学校五日制の中で本当に大変な思いをしている教員が、現在定数減というような動きが起こっているということで、ますます大変になるというのが現場の実感です。
 2番目に教員の給与についてお話ししたいと思います。先ほど高等学校教員は教科は専科であるというお話しをいたしましたが、やはり大学に、いわゆる高等教育に対応できる学力を身につけさせなければいけない、そういう意味で、高等学校の教員には高い専門性が要求されています。その専門性に是非配慮した給与であって欲しいと考えています。先ほどの議論にもございましたが、教員の給与体系は教諭は一本しかございません。この給料表を複数化する必要があると考えます。
 先ほどの主幹、もっと違った名前でも結構なんですが、教諭と教頭との間にいくつかの給料表が存在する必要があるのではないかと考えます。非常に教員の職務も複雑化しています。または高度化しています。ですから、教員の能力や業績に応じた給料表を作るべきであると我々は考えております。先ほども部活動のお話しもいたしましたが、この部活動の件については週休日に8時間指導しますと手当としては1日1,700円です。8時間に対して1,700円です。これは、高等学校の生徒がアルバイトしても、とてもこういう金額ではアルバイトはしない。そういう金額ではございますが、この1,700円の手当が振替、他の日に休むということとどちらか選ぶことができることになっているのですが、教員としては振り替える日がありません。学校五日制の中で授業が目一杯詰まっておりますので実際に振り替えることができない。ですから、東京都ではこの振替を前2月後ろ4月まで振り替えることが可能となっております。後ろ4月ということは長期休業日に振り替えるということが可能となる。この辺は全国的に見ても、このように振替をする傾向になっています。しかし、まだまだ振替ができない県もあります。そういうところでは、手当やまたは教員の本当にボランティアで部活動が行われているという状況にあります。従いまして、是非、この部活動につきましては、現在学習指導要領に位置付けられておりませんが、学習指導要領への位置付け、手当の改善、こういうことにご配慮頂けたら有り難いと思っております。
 それから、教育管理職の手当に関してでございますが、近年の教育管理職は非常に厳しく、針のむしろと申しますが、そういうところに座らされております。責任が非常に重くなっております。それから、今までは、学校管理責任という形が多かったと思いますが、現在は学校経営責任というふうに考えられておりまして、学校の内外に対して、管理職は責任を持っていなければならない。そういうような、いわゆる管理職が管轄する仕事の範囲は拡大しております。それから、学校経営に対しては常に説明責任があります。こういう責任の重さに配慮した管理職手当であっていただきたい。最近、教育管理職試験を受ける先生達が非常に少なくなってきました。このまま行きますと、非常に低い倍率で教育管理職になるということになります。そのようなことから管理職の資質低下が懸念されるところであります。そういう意味で、是非魅力ある管理職であって欲しい。その意味でも是非管理職の手当についてはご配慮頂きたいと思っております。
 それから、最後に教員評価についてお話ししたいと思うのですが、この教員評価については全国的に新しい教員評価を導入しているところが増えてきています。しかし、導入していないところでは従来の勤務評定が行われているわけでありますが、この勤務評定は形骸化している現状にあります。したがって、やはり教員の日常の仕事、日頃遂行している過程を公正かつ適正に評価するシステムが是非必要であると考えています。やはり、教員の人材育成と能力開発につながる、そのような評価システムを構築するべきだと考えております。現在47都道府県中37都道府県でこの新しい教員の評価システムが導入されているということであります。この、公正かつ適正な教員評価のもとで、それを給与、昇任又は異動といった処遇に反映されるべきだと、高等学校長協会は考えます。今後、教員の定数というものは非常に危うい、国全体の歳出抑制の中で、公務員全体の削減が図られている。そこに教員もどうしても含まれてしまう。そのような懸念があるわけですが、是非、この大変な職務である、また、高い専門性が要求される教員というものについて、他の公務員よりも優遇された措置をお願いしたいと考えております。今回、人確法は危ういというお話も聞いております。この教員に対する優遇措置がなくなると、ますます教員の志望者は減少することになるでしょうし、教員の資質の低下につながると考えております。やはり、国造りは人づくりであると思います。その意味で是非教育を司る教員の優遇をお願いしたい。ありがとうございました。

【田村主査】
 ありがとうございました。それではご質問のお願い致します。どうぞ金井委員。

【金井委員】
 私は、一般行政学が専門であまり教育の分野は詳しくないので教えて頂きたいのですが、公務員制度を考えるときに教員の特殊な給料表その他を扱う最大の根拠、つまり給与制度を扱うときの技術的な根拠を扱うときの根拠は、まさに、階層が少ないということが最大の根拠でありました。それから、いわゆる専門化されているということ、まさに専科ということを伺っていたのですが、お話しを伺っていますと、だんだん階層化を作るべきだと、それから、実態問題においては、事務であるとか、事務職的な仕事が増えてきていると。更にいえば、専科としての専門性はだんだんなくなってきて、行政職員が色々な分野の行政をするように、高校の先生でさえ色々な科目を教える、まさに色々な科目を教えるゼネラリストとしての存在になりつつあると。例えば、キャリア教育というようにこれまでの教員では対応困難である。困難であるからこそ処遇が必要でるということもあるでしょうが、逆に言うと、キャリア教育にはキャリア教育にふさわしい人材がいるであろうということになれば、お話を伺っている限り教育としての特殊性はないというふううに受け止めざるを得ない。こうなりますと、都道府県教育委員会ではなくて、都道府県人事委員会、都道府県知事時部局の発想としては、教育職としての給料表と行政職としての給料表を分けていく技術的な理屈がだんだん見えにくくなってきているというふうに思われるのですが、そこら辺は、何故違うのかということをもう少し教えて頂ければと思います。

【全国高等学校長協会】
 教員の専門性、特殊性又は定数に係わってくることだと思います。高等学校におきましては、いわゆる教科教育を行うことが基本であります。そのような意味で、教科毎に何人の教員が必要か。これは、国語、社会、理科等の教科があるわけですが、そこに何人の教員を配置することが適切か、ということから先ず考えます。教育課程をどのように組むか。例えば、国語を何時間、日本史を何時間というように考えたときに、教員が何名いればその授業ができるか。いわゆる教員というものは教科毎の定数というものを配慮しなければ授業が成り立たない。しかもその中で他の仕事も分担しなければならないというのが実態です。例えば、キャリア教育が大切だから教科教員を減らしてキャリア教育の専門家を入れるべきだという意見がありますが、これは非常に不満です。教科の授業が成り立ちませんから。やはり、高等学校はおそらく今は4分の3ぐらいの生徒が大学に進学して高等教育を受けるようになっています。それに対応できる、ちょうど中間的な橋渡し的な意味でありますから、教科教員の数は減らすわけにはいかない。司書教諭も今は必配置になったわけでありますが、かつて、司書教諭はございました。しかし、一時期この司書教諭はなくなりました。又、今必配置です。それで、誰を置いたか。例えば、司書教諭の専門家というだけで、教科担当をしなくてはもったいない。ですから、司書教諭の免許を持っている教諭が兼務をしております。というような状態です。これでお答えになったでしょうか。

【田村主査】
 よろしゅうございましょうか。では、渡久山委員どうぞ。

【渡久山委員】
 一つは、給与表の複数化というのはある程度わかるのですが、例えば、その際に、今だんだん具体的になってきているのは、教頭と教諭の間に一つ入れるということですね。その場合に、それを入れるということで教員の給与が下がれば意味がなくなってくるわけですよね。そうすると、その場合に校長給を上げると、どこまで上げるのかという妥当性を検討する必要性があるということが一つ、この点でどのような検討をしているかということ。
 それから、部活動の関係ですが、これは、おっしゃったとおりだと思います。学校から部活動を無くすということは非常に難しいのですが、高等学校では、部活動を担当している教諭とそうではない教諭がありますよね。中学校の場合は割と多くの教員が担当していますが、これを、本格化することにしますと、先生言われているように、40時間労働を遙かに超して、超した分を公務として扱うと言うことですね。そうすると、普通の超勤の場合には100パーセントプラスアルファですね25パーセント等色々あるわけですね。これは非常に現実的に困難だと思うんです。ですから、そうであれば、部活動を学校から無くして、他のところへ、例えば社会体育だとか地域のボランティアだとかを考えるだとかしないとこれは、ちょっと解決できそうにないと思います。
 先生がおっしゃったように確かに1,700円ではボランティアで、アルバイト料よりも少ないわけですね。それから今の振替の関係ですね。2ヶ月前ですとか4ヶ月後ですとかあるわけですが、いつの間にか忘れられてしまいますね。取れないんですよ、忙しくなって。そうすると、労基法の問題からすると1週間の中で消化すると言うことになると、その原則を守っていかないとだんだんずるずると悪い状況を自ら作っていくと言うことが非常に気になるところです。
 3つ目は、管理職手当の問題。管理職の受験者がいないということ。これは、手当を上げればいいのか、あるいは管理職の仕事内容を変えなければならないのか、これは非常に検討すべき問題ですね。例えば今、経営責任といいますか、経営や管理とか色々言われていますが、民間からも無免許の校長が来ても良いと言うことになっています。そういうことを考えますと、無免許でもできる校長というものがあるんだから、そうであれば、管理職の在り方、仕事の在り方というものを検討していく必要があるのではないでしょうか。もちろん、管理職手当を上げると言うことについては反対ではありませんが。どうでしょうか。

【全国高等学校長協会】
 先ず、校長の給与、管理職手当の問題でございますが、校長の給与がどれくらいが良いか、私が申し上げる立場ではないわけでありますが、やはりそれなりに魅力を感じるような、高さといいますか、レベルであって欲しいと願っています。これはやはり、国や都道府県の財政の問題も関わってきますので、ちょっと申し上げにくい立場だと思っています。それから、管理職の職務内容について是非検討すべきであるとというお話しですが、これはまさにそのとおりと考えております。我々自身、スリム化しよう、スリム化しようといつも考えておりますが、どうしても、我々が対応せざるを得ない部分もあります。当然教員に任せる、あるいは、副校長、教頭に任せる、主幹に任せるということでやっていかなければいけないのですが、最終的な責任者として、出て行かざるを得ない部分については、どうしても出て行かざるを得ません。この辺は是非、渡久山先生おっしゃるように我々自身検討していきたいと考えております。
 それから部活に関してですが、社会体育に移行しても良いのではないかというお話しです。これは学校五日制が導入されたときに、ゆとりのある中で、子供は地域に帰すのだという話もございましたが、実際地域での受け皿は十分整備されていない状況であります。当然部活動についても、かつての学習指導要領から外れる時に地域で運営すべきだという話がございましたが、やはり地域に受け皿がないということで、学校でやらざるを得ない。しかも、この部活動において、教育効果が非常に高いものがあります。やはり生徒の人間性を高める、又は仲間で切磋琢磨する。そういう中に今欠けているといわれる思いやりとか、そういう心が芽生えてくるとふうに私は考えております。ですから、部活動はやはり教育活動の重要な一つであると言うような立場で我々は動いているところであります。そういう意味で先ほど申しましたように学習指導要領に部活動をきちんと位置付けて頂きたい。これは、教室だけで人間形成ができると言うことではございません。やはり実際に、子供達同士でぶつかって、自分の個性を伸ばす活動の中で培っていくものと思います。
 それから、部活動における例えば超勤の問題でございますが、これはなかなか難しい問題で、今はお答えできるという問題ではございません。これは私の学校の状況でございますが、やはり勤務時間を過ぎて部活動を行うこともあります。本来なら顧問は勤務時間外で帰っていいわけであります。しかし、そこから先もやっている。これに対して、校長は部活動を指導しなさいという命令が出せるかというと、これは出しにくい。実際は東京都では部活動は職務という位置づけを行いました。ですからこれは教員の職務です。我々は命令することは可能です。4パーセントもらっているわけですから、勤務時間を超えても命令できるわけですから、しかし、現実には難しいと考えております。そういう意味ではオーバーワークしている、週40時間を超えて働いている教員がかなりいます。いわゆる週休日の部活動については、校長なり副校長が活動の許可を与えているわけでありますが、こういう段階で全く休んでない教員もいますが、あなたは少し休みなさい又は、生徒の活動が例えば一月、30日毎日行われているということでは、生徒の健康上の問題もありますので、例えば一週間に一度は休みなさいというような指導をする中で、厳密な40時間を厳守することは難しいことでありますが、配慮している状況です。以上です。

【田村主査】
 ありがとうございました。最後に細川委員どうぞ。

【細川委員】
 部活動について引き続きお伺いしたいのですが、私は品川区の教育委員をしておりますので、高等学校については所管外と言うことであまり理解していないと言うことを承知して頂きたいと思いますが、今、渡久山委員の方からは地域に活動を委ねたらどうかというお話しがありましたが、私はそれと逆で、例えば、学校の先生ではない校外の方で、部活動の指導のためだけに来るという方も現在でもいらっしゃると思いますが、そういう方達をもう少し拡大して活用していくという方法で、コスト面で、先生の超過勤務を減らすということの比較においてどちらがコスト的にはどうかという当たりであったり、コストだけではなくて部活動はただやればいいということではなく、それなりの部がそれなりの結果を残していくという大きな目標があると思いますので、そういうことを考えたときにどちらの方が、適しているのかというようなことを試算をしているのかどうか教えてください。

【全国高等学校長協会】
 部活動の外部人材の活用ということですよね。これについては、一定の報償費がございまして、その報償費の枠の中で例えば、コーチをお願いするという形で、多くの学校が行っていると思います。ただ、全くの引率責任者になりうるのかというと問題なんですが、これは競技団体によっては、引率は教員に限るというような団体もございます。こういうところでどうしても一定の制限が出てくるわけでありますが、やはり、教員は部活動の専門家ではありません。趣味の範囲で、例えば、バドミントンが好きだとか、そういう趣味の範囲で顧問を引き受けるとか、それと全く関係なく、運動を全くしたことのない女性の先生が男子の運動部を受け持つこともあります。ですから、そういう意味でそのコーチについては報償費の範囲で外部人材を活用しております。以上です。

【田村主査】
 ありがとうございました。では時間の関係もございますので貴重なご意見頂きありがとうございました。続きまして、全日本教職員連盟からのご意見をちょうだい致します。

【全日本教職員連盟】
 この度は、私どもの意見を述べさせて頂く機会を設けていただき誠にありがとうございます。まず、全日本教職員連盟ですが、私たちは自らを教育専門職と位置付けて、あらゆる教育改革、施策等についてそれが子供のためになるかどうかということを判断基準として、それに対する意見を申し述べさせていただいている団体であります。
 本日の教職員給与に関する意見ですが、先ず、人材確保法のことについて申し述べたいと思います。私たちは、各県の教職員に説明しますときに、人材確保法というものは私たちの教育専門職としての拠り所なんだと、誇りに関する法律なんだということを常に言っております。子供のために日々汗を流している教育専門職としての拠り所、後ろ盾となっている法律だということを言っております。困難な職務に向かっていく活力の源でもあるというふうに捉えております。現在、総人件費改革が検討されていますが、学校教育における子供たちの最大の教育環境は教員であることは間違いないと思います。その教員に優秀な人材を確保するという目的が第1条で規定されているこの人確法が、歳出削減ありきで、先ずそこからスタートしているということは誠に残念であります。もしも、人確法が廃止と言うことになり、それがテレビのニュース等で流れたとしたら、国民に対して学校教育はもう優秀な人材が必要ではないんだというメッセージを与えてしまうのではないかという危機感さえ憶えております。同時に現職である先生、また、これから教師になろうとしている若い方たちにとって、意欲と使命感を減退させることになると思っております。子供たちのために本当に真摯に取り組んでいる多くの教職員に対して、教育専門職としての適切な処遇が与えられること、優れた教職員を一人でも多く、学校現場に確保することこそ、あらゆる教育改革の中で実現しなければならないものだと思っております。日本全国に今約100万人の教師がいますが、ほとんどの教師は教育に全力を傾け、この瞬間もこの時間も日本全国の学校で、子供たちのために汗を流し、授業を行っております。そういう教師は、保護者からの信頼と子供たちからの尊敬を受けております。人確法の歴史的役割は終わったという考えがありますが、ご存じのように団塊の世代の大量退職にともなって、教員の大量採用の傾向に向かうことは紛れもありません。今言われております学習意欲の低下であるとか、学級崩壊等の諸問題がありますが、今こそ教員の質の向上を図って、教員の力量を高めることが必要であり、こういう時代だからこそ必要であると思います。人確法第1条に規定されております優れた人材を確保し、もって学校水準の維持向上に資するという目的が今後とも尊重されていくべきであると考えております。
 では、その人確法で規定されている優遇措置についてでありまが、一律優遇の維持は厳しい状況にあるのは分かります。先だって、私どもの会員を対象に教職員の給与の在り方に関するアンケートを行いました。これによりますと、これまでどおりすべての教員について人確法に基づいて給与を優遇すべきであるということを選択した会員は22.4パーセントでありました。また、不適格な教員以外は人確法に基づいて優遇すべきであるということを選択した会員が55.1パーセントと半数を超えました。また、同じ22.4パーセントなんですが、優秀な教員には人確法に基づいて給与を優遇すべきであるということを答えております。このように、従来の一律優遇とは異なる措置を求める会員が多くなっております。そこで私たちとしましては、人確法は冒頭申し上げましたように、存続すべきであるとは思います。同法の目的と、理念を尊重した上で、教育職員に対する優遇措置は継続して残すべきだと思います。尚かつ、人確法の第3条に定められております優遇措置が講じられる教員については、新たに職務遂行能力のある教員であるという文言を付け加えることによって、職務遂行能力に優れた教員に支給するということを明確にし、そこで個々の教職員の能力・実績に応じた優遇措置になるような制度化が図られるよう求めたいと思っております。
 続きまして、メリハリある給与体系ということについて述べさせていただきます。私たち全日教連では結成当初から教員給与の平等主義を改めるために、教育職給料表の5級制を提言しております。現行4級制のままでは実際に教員における職責や職務遂行能力や実績を給与に反映させることは難しいということを考えております。非常に高い、熱い情熱とプラス優れた能力プラス実績を兼ね備えている教員であっても、現在2級止まりであるために、管理職にならなければそれなりの処遇を与えられないというのが現実であります。そこで、そういった熱い情熱と指導力と実績を持っている教員に関しましては、新しく新3級への昇格の道を開くことを提案しております。更に、主幹級の職務給を明確にする必要性があることから、より一層研修を積み重ね、その学校だけではなく地域のリーダーとして指導力を発揮できる教員に対しては、管理職にならなくても基本給の上で新4級や新5級といった処遇が与えられる、これが私たちが提言している俸給制であります。この5級制につきましても、先ほどのアンケート結果によりますと私たちの会員は次の様に考えております。俸給表を5級制にして一般教員にも新4級、新5級への昇格を可能にすることは72.3パーセントが指示しました。先ほど人確法について述べましたが、一律優遇を求める声は少ない、一律とは異なる優遇を求める声が多いということと、今の5級制を求める声が多いというのは根っこが同じではないかと思います。私たちの会員はやはり自分の職務に責任を持っているのだと思います。私たちとしましては、5級制というものを強く望みたいと思います。
 次に教職調整額についてでありますが、これにつきましても現在一律に支給されていることを疑問視する声があることは承知しています。これにつきましてアンケート結果によりますと、現状のまま支給すべきであるという声が47.9パーセントで最も多い回答でした。以下、勤務条件によって差を付けて支給すべきが47.1パーセント、時間外勤務手当てとして支給すべきが3.3パーセントという結果でございました。また、しっかりした予算が確保できないのであれば、今のままが良いという、その他の意見もありました。これが現状のまま支給すべきであるという47.9パーセントの代表的な考え方ではないかなと思います。先程来お話しがでておりますけれども、教員という職業は一般の行政職に比べて勤務時間の明確な線引きができないことはご承知のことと思います。教材研究、授業準備、児童生徒の評価など、また、学校内外における生活指導、安全指導、特に安全指導については今の社会状況に鑑みまして、本当にギリギリいっぱいのところで教員は放課後の校外指導にあたったり、始業前の指導に当たっているところが多々ございます。このような勤務の特殊性から勤務の明確な線引きができない状況にあります。教員は一般行政職員と同じような勤務時間の管理は馴染まないというのが教職調整額の元々の考えですので、私たちとしては、今後もこの教職調整額を本給に含めての支給として望みたいと思います。しかし、先ほど申し上げましたけれども、全員同率の支給というものは必ずしも現状を反映したものとは言えませんので、また、先ほどのアンケート結果にも勤務状況によって差を付けて支給すべきであるという会員も多いことから、教職調整額を現行の一律4パーセントから、例えば0パーセントから10パーセントというように幅を持たせて支給することについても、今後検討する余地があるのではないかと考えております。ただ、そのためにはあくまでも評価制度がきちんと整備されなければ、例えば0パーセントから10パーセントの幅で誰をどの率にということが言えないと思いますので、公平・公正な評価制度が確立されることが必要だと思っております。
 続きまして、教員特有の手当についてでありますが、これについても会員の意見を聞いてみました。メリハリのある給与制度にするために、どのような手当が必要ですかという質問に対して、最も多かったのが主任手当の充実、部活動などの特殊業務手当の充実でした。先ほどお話ししたことも含めまして具体的に意見を書いている会員がございました。1としまして現行では主任手当が日額200円でありますけれどもこれを400円にするという案。またその支給方法につきましても、今は日額制なんですけれどもこれを月額制にするという案。そして、主任の職責級としての位置づけをより鮮明にしていくということがございました。また、部活動を含めまして特殊業務手当は現行4時間1,200円でありますけれどもこれを1時間300円にするということを求める意見がありました。今は4時間で1,200円ですが、小分けにして支給することによって例えば3時間であれば900円、2時間であれば600円というような支給の仕方もあるのではないかと考えております。4時間部活動指導を行って初めて1,200円が支給される、という意味ではありません。
 また、3点目に現行では養護教諭への手当というものは支給されておりませんが、この養護教諭に対する手当というものも新設していただきたい。ご存じのように養護教諭の学校における職務の範囲というものは以前よりかなり拡大しております。一人で何百人もの児童生徒のけが、病気、さらには心のケアまで担当している養護教諭が沢山おります。このことから養護教諭に対する手当を新設していただきたいという意見があります。メリハリのある給与体系を確立していくためには、このようなことを念頭に検討をしていくことも大切ではないかと考えております。
 また、義務特手当につきましては、教職の専門性を保障するものであるというように捉えておりますので、定率でこの手当を算定しまして、基本給に上乗せすることによって、各年齢において新任の先生であっても、中堅の先生であっても、各年齢で同じ割合で常に優遇されるということを求めたいと考えております。
 最後になりますけれども、冒頭申し上げました人材確保法につきましては、私たちが教育専門職であるという自覚を促すことになりますので、この主旨を尊重した上で、適切な改正がなされるように求めたいと考えております。教員の人数も給与も減らされていく時代であっては、教員のモチベーションは下がっていきます。昨年の中教審答申にもありましたように国として教育に責任を持つと高らかに宣言されておりますので、そうであればこそやはり現場には支援が必要であると、支援をすべきであると考えております。よろしくお願い致します。ありがとうございました。

【田村主査】
 どうもありがとうございました。それではご質問はありますか。どうぞ帯野委員。

【帯野委員】
 2点お伺いしたいのですが、先ず、人確法による優遇措置について。不適格な教員以外の教員について優遇すべきだというのが55.1パーセントということですが、不適格な教員については、これは評価結果に基づいた結果だと思うのですが、評価はマイナスも有りだとお考えなのかということが1点。それからもう1点は5級制の観点ですが、行政職の5級の最高額が38万300円で、それから教職員の2級の最高が44万2,900円。ということは、この5級制というのは、19万1,400円から36号の44万2,900円の範囲で、現2級の範囲の中で新たに5級に分けるということなのか、あるいはこの枠組みを外して、更にマイナスをして5級に分けるということなのか、この2点をお伺いしたいのですが。

【全日本教職員連盟】
 それでは先ず、不適格な教員ということについてですが、これは現在評価制度が確立されていない状況であっても、いわゆる指導力不足教員ですとか、報道されていますようなわいせつな教員であるとか、子供のためにならない教員がいるのは事実であろうと思います。ただ、そういった教員はパーセンテージからいうと約100万の教員の中でわずかではあると思いますのでこれを持ってすべてを考えていこうということではありません。こういった教員がいるということに基づきまして、私たちはこの提言をしているのですけれども、評価制度に基づいてのご質問だと思うのですが、もちろん今現在、評価制度が確立されていない状況でもそうであるならば、評価制度が確立すれば、より明確に、そして万人が納得できるような形で、この先生は不適格であるということがいわれていくと思います。この不適格な教員には研修制度がありますが、もっとよりよい研修制度を確立し、また、給与のことを考えてもいいのではないか。例えば0パーセントから10パーセントの教職調整額につきましても、不適格教員と認定され研修期間中である教員は、子供たちを目の前にしていないことから、調整額を払う必要がないということもあるのではと思います。それから2点目の5級制についてでありますが、全日教連の執行部に給与法制局というセクションがございまして、この5級制についてもその他の給与についてもさらに検討している最中であります。先ほどおっしゃった金額についてはまだ議論が詰めらられておりませんので、その範囲の中で振り分けていくですとか、又はそうではないという議論をしていく予定であります。また、ある県におきましては、県段階の教職調整額の在り方というものを県レベルで考えているところもありますので、そういったことも基にしまして給与法制局の中で今後詰めていきたいと思います。尚、本年度中に本ワーキンググループは12回、本日は2回目ということですけれども、また機会を得て述べさせていただく色々な方法があると思いますので、その際に私たちの見解を述べさせていただければ幸いです。

【田村主査】
 井上委員どうぞ。

【井上副主査】
 ただいまの質問に関連して、2点目の5級制の問題なんですが、学校の実態を見ていますと、少子化に相まって学校の統廃合が進んで教員数が減ってきております。
 そして、給与の改善の経緯を見ますと、人確法に伴う人事院の勧告の中で、優れた指導力を持った教員に対しては、1等級格付けも可能であるという報告がすでに人事院から出ているので、むしろ5級制にして、教頭の下にそういう指導力のある教員を位置付けるよりは、2等級なり1等級への格付けが可能なようにむしろ制度として考えた方が合理性があるのではないか。
 何故、これを職務と責任に応じて5級制にするかということの説明が非常に難しい。むしろ今ある4等級でも、市町村段階なり、都道府県段階でも、各教科で指導力のある教員について教頭と同じような2等級に格付けするとか校長と同じような1等級に格付けするというように、指導職として教育専門職として処遇するのであれば、指導職としての2等級なり1等級への格付けをやった方が合理的ではないかと考えているのですが、その点については如何でしょうか。

【全日本教職員連盟】
 今のおっしゃった経緯につきましては、私たちも給与法制局の中で議論がでておりませんので先ずこうです、ということは控えまして、今後お伝えできればと思います。それでよろしいでしょうか。

【田村主査】
 どうぞ吉野委員。

【吉野委員】
 2つあるのですが、1つは評価制度について、公平公正な制度は大切だと思うのですが、民間では上下左右といいますか、上からも下からも評価がありますが、小中学校、高等学校の場合には児童生徒からの評価を入れるということはどうなのかということ。2番目は大学でも我々は学生の評価というものを入れております。それから、民間については全くの想像なんですが、民間の企業にはいわゆる人確法なんかはないのですから、非常に一生懸命いい人材を採ろうとしているわけであります。その際には同種の職種であればその中でいい人材を採らなければその企業は潰れるわけですけれど、教員の場合にその中で今後どういう形でいい人材を確保する、インセンティブももちろんそうですけれど、民間の企業の色々な努力と比べて、どんなやることがあるのか教えてください。

【全日本教職員連盟】
 やはり、私たちの考えとしましては、中教審の答申にもありますけれども養成と採用と研修、この3つのステップが大事なものになると思います。これをきちっと、ある意味今までは養成のところも採用のところも、ましてその研修の部分も今ひとつきちっと徹底されていないようなところも多々あると思います。ですので、養成段階で免許更新制のところも絡みまして、まずは学部段階での養成ということをきちっとして、そこでまずは見極めを付ける。
 そして採用段階で2つ目のふるいをかける。ここで、この若者は子供のためになる教員であるのか、もっといえば、我が国の教員として適切であるのかどうかということを見極めるということがあればいいと思います。
 そして、その後の研修におきましても、現在、現場で行われている研修も、非常に多いのですが、きちっと根本的な理念が周知徹底された上での研修であるならば、教員が自分たちの力量を伸ばすために自主的に研修を受けるのではないかと思います。このように、養成、採用、研修その段階を踏まえてより力量を高めていく教員が増えていくことを望んでいます。生徒による評価については、聞くところによりますと、既に生徒による評価を行っているところも、あるいは、保護者による評価を行っているところもあるように聞いております。しかし、その評価にどれだけの信頼性があるかということは慎重に検討しなければならないと思います。ただ子供の人気取りと申しましょうか、その場限りの甘い指導によって子供から人気を取るという場合もあります。しかし、それでは、子供の成長過程において本当に適切な教員であるかどうかということは別の問題であるかもしれませんので、児童生徒からの評価、保護者からの評価というものも見極めていかなければならないと考えております。

【田村主査】
 君島委員どうぞ。

【君島委員】
 教職調整額のことについてもう少し細かくお聞きしたいのですが、この資料にもありますように、教員は一般行政職と同じような管理は馴染まないということでありながら、勤務状況によって差を付けて支給すべきだということから、細かい数字を上げられまして現行の一律4パーセントを0パーセントから10パーセントの幅を持たせてというご提案をされているのですが、この教員の給与の実態ということから考えたときに、0パーセントということが考えられるのかどうか。実際にどういう状況を想定されているのかということを先ず一つと、仮にこの0パーセントから10パーセントという差を設けていく際に通年で考えるのか、月ごとに考えるのかその辺はどのようにお考えなのかということをお聞きしたい。

【全日本教職員連盟】
 先ず、0パーセントの件につきましては、先ほど不適格教員のところでも少し触れましたが、調整額を支給するに値しないというような表現が適切かなと思いますが、免許を持っていても子供のためにならない、研修を受けなければならない教員がいるということを踏まえまして、その研修に行くということは、一定期間研修に行くということは学校現場を離れるわけでありますから、学校でのその多忙な毎日ということは行わなくて済む、ということであれば、調整額を支給する必要はなかろうということであります。また、通年か月ごとかということについてはまだそこの議論は詰められておりませんので、ここは今後詰めていかなければならないところだと考えております。

【田村主査】
 そろそろ時間でございますが、どうぞ、川田委員。

【川田委員】
 今回のご報告で、印象的だったのは、先生方の中にも評価が適切に行われれば働きぶりに応じて差がつく、消極的かもしれませんが、受け入れるという方が結構いるということですけれども、それとの関係で少し抽象的になってしまいますが、そういう意見が出てくる前提というのは、多分現場で他の先生から見てこの先生は職務遂行能力があるとか、この先生はないとかという感覚があるのだろうと思います。その感覚が教員の自主的な勤務時間とどれくらい結びついてるものと受け止められているのか、その点が調整額の考え方と係わってくると思いますので、要するに、働いている時間は非常に短いのだけれども効率的に仕事を進めて能力が高いということが現場の感覚としてあるのか、最初の現場の感覚としての評価というものはどれくらい時間をかけているのかというところをお伺いしたいのですが。

【全日本教職員連盟】
 一人の教員を見るのに色々な観点があるのかと思いますが、教員でいいますと個人の状態でできることもありますし、チームとして、学校職員がチームとして取り組んでいかなければならない行事とかがありますけれども、それを考えた場合に個人の業務は的確にやる、仕事も速いという方も確かにおります。ただ、チームになった場合にそこがずれてしまうという方もいます。集団で行動する場合においては、力を発揮できないけれども個人の場合には力を発揮できるという方もいますし、又、逆もしかりだと思います。色々な観点で一人一人の教員を見ていかなければならないと思います。よろしいでしょうか。

【田村主査】
 よろしいでしょうか。なかなか難しいところが確かにありますね。それでは時間ですので、どうもありがとうございました。次に、日本人事行政研究所清水理事お願い致します。

【日本人事行政研究所】
 財団法人日本人事行政研究所の清水と申します。本来は非常勤の理事なのですが、たまたま理事長が欠になっているために、理事長代行という肩書きで、週に何日か勤務しております。また、私自身は人事院で給与関係の仕事を比較的長く担当しており、問題とされています教員給与の教職調整額とか特別改善とかという問題も参事官または課長として直接処理をしたものでございます。従いまして当時の経緯とか考え方というものについて本日はお話を申し上げたいと思います。ただし、限られた時間でございますので、お手元にお届けしてございます資料5のレジメに示してあります事項を中心に簡単にお話し申し上げ、あとはご質問にお答えするということで補足させて頂くことといたします。
 早速ですが教職調整額の制度と、教員給与の特別改善はどちらが先だったのかと申しますと、教職調整額制度の制定というのは、昭和46年の話で昭和47年1月から実施に移されております。一方教員給与の特別改善というのは、ご承知の田中内閣当時の問題でありまして、昭和48年度予算として3月分予算を計上したということが事のはじめでして、時期的には昭和49年1月1日から5年間くらいかかってやられたわけでございます。
 最初の教職調整額制度の制定経緯でございますが、戦後の教員給与を決める際に教員の勤務時間は通常の公務員よりも長いであろうということで、昭和23年当時に俗に1割増と称して10パーセント有利な取扱いをやってきたわけであります。そしてその代わりに教員には超過勤務をさせない、超過勤務手当も実際上支給しないという建前をとったわけです。しかしこれは運用上の話でして、当時の文部省の方で制度的な整備ということを明確に措置したわけではありませんでした。そこで、実は昭和30年代に入りまして、当時の日教組を中心とした組合の運動とも関係しまして、何故に教員には超過勤務手当が支給されないのかということを理由に、超過勤務を命じられて勤務をした分の手当を支給すべきだという「行政措置要求」を各府県の人事委員会に提訴し、また裁判所にも訴訟を提起したわけです。これに対する各府県の人事委員会の判定なり裁判所の判決としては、教員といえども当時の給与法の建前から見て正規の超過勤務をやった場合には超過勤務手当を支給しなければいけないということでして、人事院自身もその旨の回答を文部事務次官あてに出しておりました。したがってまさに問題の処理として混乱をきたし、これをそのまま放置するわけには参らなくなったわけです。
 そこで人事院は昭和39年の給与勧告の際にこの問題については勤務時間のあり方の問題を含めて早急に何らかの措置をする必要があるという指摘をして、その収拾に乗り出したわけであります。そして人事院としては国立学校が直接の所管でありますので、国立学校の教職員の超過勤務の実態であるとか、あるいは仕事の分担であるとかを調査したり、それから外国、特に欧米の先進国の実情がどうなっているのかということを、実際にそれらの国々に出張をして、細かく調べてみたりして検討を重ね、結果的に教職調整額というような制度を作ることが一番適当だということで、昭和46年に法律の制定についての意見の申し出という形で国会と内閣に対して意見の申し出を行い、昭和47年の1月からこの制度が発足したということであります。
 次に制度の基本的な考え方と具体的な仕組みということで見てみますと、教員の勤務、仕事の内容というのはそれぞれの教員の自発性なり自主性ということを基本にやらなければいけないものである。だから勤務時間も実質的に長いと考えて10パーセント増しの給与を決めてきたのではないか。しかし、それがそういう趣旨のものなのだということが不明確になってきたもので、この際「教職調整額」という形で4パーセントの給与、といっても俸給並みの給与、すなわち期末・勤勉手当や退職手当にも跳ね返る俸給と同じ性格の給与として4パーセントの教職調整額を支給することとしてはどうか。その代わりに教員には超過勤務手当の制度は適用しないとするとともに、先ほど申しましたように、教員の勤務というものは自主性なり自発性が基本となるのだから勤務時間の細かな管理は毎日毎日することはないだろうということとしますと同時に、教員に超過勤務を学校長が命じうる場合というものを限定するという方向を取ったわけであります。つまり超過勤務を命令として命じうる場合というのは、文部大臣が人事院と協議して定める特別な場合に限ることとした制度を作るべきだとした結果、実際に超過勤務を命令として命じうる場合というのは、職員会議の場合とか修学旅行的行事、生徒の実習指導、非常災害等々のいくつかの場合に限ることとして、他は専ら教員の自主性、自発性による勤務ということを基本に考えてやってきたわけです。そして教員の自主性・自発性の問題として当時一番問題になりましたのは、例えば家庭訪問とか、教案の作成というようなものであって、これらはそれぞれの教員が自ら自主的に考えてやるしかないということと理解してきたわけです。ご承知のように当時は学級編制としましても今の30人学級ということではなくて多くの生徒を抱えていた時代ですし、家庭訪問なんかもかなり時間外の時間を費やしておった実情でした。それで文部省が現に調査した結果に加えて人事院としても調査をしました結果を踏まえ、4パーセントという教職調整額というものを決めたといい得ます。
 ところで現在の教員の勤務の実情との関係で見た場合にどうかとなりますと、いまや国立の小中校、高校というものがなくなり、人事院がこれらの学校の教員の給与問題にノータッチになってしまったわけです。したがって、今申し上げましたように昔は40人、50人の生徒が当たり前だったのが、30人学級が目標という時代になり、また家庭訪問にしましても、奥様方がみんな働きに出てしまっていて伺ってもダメなので土曜か日曜を利用するしかないということになってきているという事情の変化もございます。このためにこのような教職調整額が必要か、あるいはその支給割合が適当かどうかということについて、色々議論があると聞いています。しかし、教員には超過勤務手当は適用しないのだというこの制度を無くしてしまいますと、何か必要があって実際に超過勤務をした場合に、超過勤務手当を支給しろと言う話が蒸し返されて、先ほど申しました昭和40年代の前半以前の状態となり、問題を紛糾させるだけではないかと、私自身は考えるものであります。したがって、この辺は正に実態をどのように見るかという判断だと思いますけれど、教員については、教職調整額の制度を発足させましたときに労働基準法の規定の非適用という特例を当時の労働基準審議会に諮りまして、教員には超過勤務手当の支給規定であります労働基準法の第37条の規定を適用しないんだという特例を法定してもらったわけです。そういうような経緯もございますので、この教職調整額の制度を無くして元に戻すのということだけは慎重でなければならない問題といえます。支給割合が多いか少ないかということについては、実態に応じて色々な議論があるのだと思いますし、また俸給並みの給与のままで良いのかどうかということについては、それはご検討頂ければよいことと思います。
 次に2番目の教員給与の特別改善の問題について申し上げますと、この特別改善というのは、実は昭和46年の6月に出されました中教審の答申が問題の発端になっておりまして、同答申の中で「教員の養成確保とその地位の向上のための施策」の一環として、教員の給与は「すぐれた人材が進んで教職を志望することを助長するに足る高い水準」とすべきであるとしたことが契機となり、続いて当時の自民党の文教制度調査会及び文教部会が翌年昭和47年に教員養成と待遇改善についての改革案をまとめて、政治レベルで問題を取り上げられるところとなった。そして文部省は昭和48年度予算として教員の給与を3年で50パーセント引き上げるための要求をされたわけです。それは結果的に対象を義務教育の教員に限定し、かつ、3年で25パーセントの配分ということとなり、第1次改善として10パーセント、第2次改善として10パーセント、第3次改善として5パーセントの予算を組みましょうということに落ち着いたわけであります。ただし財政的に年度当初から全部を上げることは大変ですから、48年度予算で10パーセントの3月分、49年度予算で10パーセントの3月分ということで組まれることとされたわけです。
 ところで、この問題の背景をみてみますと、実は義務教育教員の免許制度の建前と養成の実態にずれがあったという事が一つ存するわけです。ご承知かと思いますが、小中学校の教員の免許資格というのは現在では短大卒で2級免、大学卒で一級免と決められているのですが、その前は師範学校というのは専門学校よりも1年少ない準専門学校卒であったり、専門学校卒であったりしてきているわけです。したがって、戦前から在職しています先生方としてはそんなに高い学歴の方はいなかったので(高校教員の場合は、ご承知のとおり高等師範の卒業というのが原点になっていましたから違うのですが)、到達する給与、教員としてずうっと勤務していたときにどこまで給与が上がっていくのかという給与の高さが、自ずから限られた高さになっていたわけです。それで戦後新しく卒業して教員になる大学卒の者について見ると……本来は短大卒もいるのですが、昭和30年代なってから4年制の大学卒の者が入ってくるようになり、ましてや、40年代になると、過半数が4年制の大学卒の新採用者として入ってきた……ゆくゆくは自分がどこまで給与が上がるんだろうと見た場合に案外低いということで、それで、教員の給与を改善すべきであるという動きが強くなってきて、先ほど申しましたとおり、中教審の答申にそれが強く盛り込まれ、さらに特別改善の話が出てきたわけであるのです。
 一方、公務員の給与は人事院の勧告を基礎にして決めていくのだという大原則がありましたので、それとの係わりをどのようにするのかということは、正に大問題であり、そこで、苦肉の策として人材確保法という法律を制定することになったわけです。この法律を制定するに当たっては、当時の官房長官であられた後藤田さんがいろいろと知恵を絞られ、人材確保法というものを制定して、人材確保法ではまず国立学校の教員の給与を人事院が勧告し、そしてそれに習って地方の公立学校の教員の給与を改善するというような仕組みを考えられると同時に、そのために政府は予め必要な予算措置を講じなければならないということを附則に定めて整合性を確保されたわけです。……この点参考までに申しますと、先ほど申し上げましたとおり現在は国立の義務教育の学校というものがなくなってしまいましたから、法律が改正されて「教員給与については一般の公務員の給与水準に比較して必要な優遇措置が講じられなければならない」としているだけで、何を基準に、どうやって優遇していくかという話は一切定められていないということでございます。
 特別改善で義務教育教員の給与を25パーセント有利に改善したといいましても、当時は毎年ベースアップがあったわけですから、前年度に組まれた予算の数字は目減りしてしまうわけで、レジメに参考までに記しておきましたように10パーセント改善の予算が第1次改善では9パーセント分に目減りし、第2次改善ですと49年のベアの割合がかなり大きかったせいもあって7パーセントしか改善できなかったということでございます。加えて第三次改善が前半、後半に分かれた関係もあって、合計した改善の幅としては25パーセントは実際には19パーセント余ということになっています。
 それはともかくとして、人事院が改善(勧告)の中身として行いました主要事項はレジメに示してありますような内容でございまして、第一次改善の義務教育教員分の改善が俸給で9パーセントというのは、4年制の大学卒の者が主力を占めてきたのにふさわしい改善にしようということで改善したわけです。しかし義務教育の教員の給与と高校の教員の給与が逆転するような形にすることはできないわけですから、そこで高校教員についても、俸給表で5.5パーセントの改善を行ったわけであります。2次改善でも高校教員について義務教育の教員と同じように必要な改善を行う旨を指摘し、同時に給与の問題はバランス問題であり、高校の教員の給与を改善した場合には高等専門学校の講師の給与を放っておくわけにはいかないということで、高専の講師等の給与についても必要な改善をしているのです。というのは、高校の教員から高専の講師になるのが通常のルートだったわけですから、高専の講師の給与も改善しなければならないためでありますと同時に、レジメの注に書いておきましたように大学の教員の給与の一部についても同様に改善をしました。……そうすると警察官ですとか消防官の給与も低いということでそれらの給与についても若干の手直しを、この特別改善とは違う次元で行って均衡を失しないように措置して、今日に至っています。
 この特別改善の措置の中での問題は、第2次改善で創設した「義務教育等教員特別手当」でございます。これは特別改善といっても俸給表の改善をこれ以上行っては公務員全体の均衡が取れないということで、俸給表の改善ではなくて義務教育教員等特別手当として、義務教育等の教員の給与を改善をするという趣旨のもので、この手当により人確法の目的に見合うだけの高さの給与を志向しようということで作った手当であるといえます。そして第3次改善等で若干の改善をしまして、当時の俸給表の俸給月額の6パーセント相当の手当額として支給されました。ただし、そういう趣旨の手当ですから、第3次改善が終わりまして以降、特別の改善はしていないので、この6パーセントの額は今では5パーセント程度の額になっているのも事実かと思います。この手当は、義務教育等教員特別手当として、小中学校と高校、養護学校、盲・聾学校も入りますが教員にだけ支給されている手当であります(国立の幼稚園の教員についは手当額の二分の一だけが特別に支給されている。)。したがって、比較的融通性があるといいますか、教員を優遇する必要性なりその度合いが変わった場合に変更の余地の有無を議論する余地はあるし、技術的に見ても、義務教育の教員と高校の教員は同額の手当として支給されているものですので、比較的に処置はしやすい手当ではないかと私は考えています。
 最後に一言だけ申し上げますと、教員給与について、能力なり、実績に応じた給与体系を考えろという話は昔からある話です。人事院の特別改善の最後の勧告で、豊かな教職経験と優れた教育実績を持つ教員については、教頭に準ずる俸給に格付けをすることを認めたらどうかということも触れているわけであります。ただし、それはあくまでも、豊かな教職経験を持ち、かつそれなりの教育実績を有する場合ということですから、当時組合がただ単に経験年数だけで上げろということを主張したのですが、人事院はそれはダメであるとして、そこは文部省なり教育関係者に考えてもらうことではないかということを申し上げてきまして、結果的に現在でも公式には実現していないことであります。しかし、いくつかの県で特2等級というような類似の仕組みをして行っている例が一部あるということを耳にしますが、問題は、同じ教員の中でウチの子供の先生は2級だ、隣のクラスの先生は3級だという形になったときに、果たして父兄が納得してくれるかということが一番の問題だと思っています。したがって、同じ職名で同じ仕事をしているならば、同じ等級格付けをせざるを得ないのではないかということであります。他の職種、例えば、警察官、刑務官等にも同じ取扱いがなされているわけであります。つまり本当に能力、実績に応じて処遇するというのであれば正に昨年の人事院の勧告で新しく決められました昇給制度のような勤務成績に応じて昇給の幅を変えるという仕組みが一番手っ取り早い話であって、従来の特別昇給制度でも幾らでもできてきた話であるといい得ます。

【田村主査】
 ありがとうございました。現状の教員の給与がどのようにしてできたかということを説明して頂きました。今非常に問題が出てきておりまして、例えば時間外の問題、私立学校は時間外手当を払うようにハローワークから告発をされております。最初の考え方は5パーセントで全部解決しているということでしたが、労働省の方は告発例が出ているんです。ですから、その時に考えてやった問題を放置しておくわけにはいかないというのが現実です。その時は5パーセントの調整額で時間外は解決したのですが、今はそれが出てきている。どうしても議論せざるを得ない。特別手当についても色々な経緯があるんですね。これももう一回見直す必要があります。少し違っているかもしれませんがすみません。井上委員どうぞ。

【井上副主査】
 清水理事、大変お忙しいところありがとうございました。今のご説明で一点だけ、私も教員の給与担当していて思ったのは、少子化により学校数が減ってきて、別に管理職だけが教員の生きる道だけではないわけでありまして、教育専門職として優れた指導力を持つ教員に対して、評価基準を設けて、先ほど能力実績に応じてということおっしゃいましたが、そういうことで限られた指導力のある人に対して、上級の格付けにしていくということが、人事院の意見の申し出にもあったということですが、能力、実績に応じてというのは人事院では当時どのような能力・実績に応じてということを考えていたのか教えてください。

【日本人事行政研究所】
 周囲から見て、あの先生は立派な先生だといわれるような先生の選び方、例えていえば、表彰制度により表彰された場合などに、このように表彰されたのですとか、何かこういう実績を上げられたのですとか、そういったことで文部省とか教育関係者に考えて頂くしかないですよ、素人では決めかねますからということを終始説明を申し上げまして、初中局の担当者や官房人事課等と折衝したりしてきたのですが、結局組合との関係もあってか、まとまらなかったというのが正直な実情だったと思います。……個人的にはお話のような選別を免許制度のうえで考えられないのかとも申し上げた記憶が存します。

【田村主査】
 君島委員どうぞ。

【君島委員】
 俸給表について、今現在義務教育の教員と高校の教員の俸給表が別になっていますね。これは先ほどのお話をお聞きしていたら、義務制も高校も同じだというような風に取ったのありますが、いずれこれは同じ俸給表で良いとお考えなのかどうかその辺のところを教えてください。

【日本人事行政研究所】
 俗に教員給与の3本立てといいますが、昭和28年に議員立法で義務教育と高校、大学というように分ける形とされました。そしてそれぞれ1号俸分ずつ有利性を違えるということが行われました。それはどういう事かと申しますと、先ほど申し上げたとおり免許制度の上から大学卒と短大卒で違うということと、もう一つは、校長なり教頭への登用率という点から見まして、学校の数からも高校の教員の方が登用率がかなり低かったので、そういうことから、一緒であった日教組と高校の教員組合とが別れてしまい、結果として義務教育と高校とで別立ての俸給表ができたということです。それで、実は昭和40年代までは初任給は高校の教員と義務教育の教員で同額ですが、2年目以降差がつくような形になっており、10年、15年経てば、高校の15年目の教員の給与と義務教育の15年目の教員の給与とではかなり違っていたわけです。それを、大学卒の教員が義務教育の中で主力を占めるようになったわけですから、もう同額にしてしまおうということで、特別改善の一環として、確か大学卒14年目までを同額にし、その後更に改善をしまして、今は確か17年目ぐらいまでは同額であると思います。しかしそれ以上になると高校の方が高くなっているのですが、これはいま申しました登用率の差などが実際上あるためです。ただし、登用率を文部省の調査で時々拝見してみますと、各県の職員構成の在り方が違うわけですから、それぞれの県で違っているわけで、その辺をどう考えていくかということは一つの問題ではあると考えてはおります。考え方としては、今お話ししたような考え方でやってきたということであります。

【田村主査】
 ありがとうございます。最後に渡久山委員どうぞ。

【渡久山委員】
 教職調整額について、これは4パーセントということですが、4パーセントの根拠は。

【日本人事行政研究所】
 4パーセントの根拠は、当時の文部省の調査結果としての正規の勤務時間を越える時間数を基礎に計算すると4パーセント程度になることと、4パーセントという数字自体は人事院が意見の申し出をする前に、文部省が43年度予算などで要求をしていた数字であり、その他関係者等の意見も踏まえて最終判断をしたものであります。(ただし、人事院の意見の申出は俸給並みの手当ですので、実力的には6パーセントに近い数字であるともいい得ます。)
 なお、確認的に申し上げておきますと、超過勤務をやっても手当を出さないといっても、修学旅行で2日も3日も泊まりがけで勤務しなければならない場合とか、対外試合で泊まりがけで出かけなければならない場合、及び非常災害の場合などには、超過勤務手当ではなく特別の手当を支給しようということで、「教員特殊業務手当」という手当を特殊勤務手当の一つとして作りまして、それを支給する途が別に設けられています。

【田村主査】
 ありがとうございました。以上で午前中の意見発表を終わらせて頂きます。午後の日程について、事務局からお願いします。

【藤岡室長補佐】
 それでは、午後の日程について説明いたします。この後、委員の皆様には昼食を用意させて頂いております。昼食を取りまして、午後は13時10分から再開させていただきたいと思います。午前に引き続き、3人の方からの意見発表を予定しております。以上でございます。

【田村主査】
 それでは、午前の部は終了いたします。

【田村主査】
 それでは、そろそろ午後の部を開会させていただきたいと思います。最初に、実は、今回が最初のご出席となります委員の先生をご紹介いたします。新潟県の有名な長岡市長の森先生でございます。ちょっと一言。

【森 委員】
 いつも欠席ばかりして申しわけございません。個人的には大変興味を持っておりますので、できるだけまいります。よろしくお願いいたします。

【田村主査】
 どうぞよろしくお願い申し上げます。それでは、午後の部も、午前に引き続きまして、意見発表をいただきます。意見発表の先生方、皆様におかれましては、大変ご多忙の中、ご出席を賜りましてありがとうございます。ヒアリングの進め方は、午前と同じように、1人に対して30分ずつの時間を設けてございます。したがいまして、最初15分間でご意見発表をいただき、そして、その後の15分でそれに対する質疑をお願い申し上げたいと思っております。
 それでは、午後の部、最初の宮崎県立図書館、日渡総務・企画課長さんからご意見発表をお願い申し上げます。

【日渡 氏】
 宮崎県立図書館総務・企画課長の日渡でございます。このような席に図書館の職員が来るのは、何か少し違和感を感じますが、3月まで教員の評価と処遇の担当していましたので、そのようなことでと考えております。
 本日、資料を用意していますので、資料に沿ってご説明をさせていただきます。資料6です。表紙に「評価と給与について」と書いてありますが、まず、初めに、宮崎県で始めています教員評価について説明いたしたいと思います。
 3枚めくっていただきまして4枚目、「教職員の新たな評価制度が実施されます!」とありますが、本年度、すべての職員に配付したリーフレットのコピーです。さらにこれから3枚めくっていただきまして、資料1があります。これは、新たな評価制度を実施するに当たって、県内の校長、教頭、市町村の教育委員会に対して行った説明会の資料です。これを開いていただきますと、下のほうにページが書いてあります。
 1ページです。「評価制度導入のねらいは、職員一人一人と学校組織のパワーアップです!」と書いてありますが、本県では、教職員の評価につきましては、職務行動評価と役割達成度評価という2つの評価制度を実施しております。職務行動評価につきましては、いわゆる能力評価と言われる部分でございまして、役割達成度評価については、いわゆる業績評価と言われるものを、このように表現しています。
 時間がありませんので、資料はまた読んでいただくということで、特徴的な部分だけ説明いたします。評価のねらいとして教職員にアピールしている点は次の3点です。
 ねらい1、職員一人一人の能力開発と人材育成にある。2つ目、組織マネジメントの向上にある。3つ目、評価結果のフィードバックと活用による職員のやる気の向上を目指しているということです。
 それでは、いわゆる能力評価と言われる部分を職務行動評価として本県では実施していますが、2ページに移ります。
 職務行動評価の目的は、教職員一人一人のパワーアップにあるということです。
 2つ目、職務行動評価の評価項目ですが、やはりどのような項目を立てているかが非常に気になるところです。下のほうに図がありますが、右が管理職、左が管理職を除く一般職員です。基本的に、一般職員については3つのカテゴリーから評価しいます。1つめが学校経営や組織への参画・貢献に関する項目、私たちはこれをマネジメントと呼んでいます。2つめが、各職種の専門性に関する項目。教員であれば、ここは授業能力等指導に関する項目です。そして3つめが、管理職、非管理職両方共通する部分として、教職員としての基本姿勢に関する項目があります。セルフマネジメントと呼んでいます。
 このような形で、各職種の専門性に関する項目は各職種ごとに異なりますが、マネジメントに関する部分については、各職種共通です。これで評価しまして、学校経営や組織への参画・貢献に関する項目の評価が高いと、これは管理職の能力があるのではないかとなるわけです。また、各職種の専門性に関する項目で、例えば、教諭というところで、この授業能力、指導能力が高いとなると、本年度から宮崎県で始めておりますスーパーティーチャー、いわゆる教諭の中の教諭、プロ中のプロということで、スーパーティーチャーの能力があるのではないかということになります。評価制度の中でキャリアの複線化も目指しています。
 右の図が管理職です。管理職につきましては、マネジメントに関する項目と、セルフマネジメントです。各職種の専門性に関する項目が、校長、教頭についてはマネジメントに関する項目であることをメッセージとして伝えていることになるかと思います。
 2ページの下のほうに自己評価方法と書いてあります。まず、自己評価をして、そして1次評価、2次評価者に提出されます。評価は、項目を羅列して評価基準を書いているのではなく、その評価基準をコンピテンシー、いわゆる職務行動としており、どういう能力があるかという潜在能力ではなくて、どのようなことをしたかという顕在能力で評価する方法をとっております。能力評価にコンピテンシーを導入しているところが特徴の2つ目となります。
 そのコンピテンシーによる行動評価ですが、その行動がどれぐらいの頻度でとっているか、あらわしているかでa、b、cという自己評価を行います。2次評価については、S、A、B、Cですが、これは4段階評価に見えますが、標準はBです。Bが標準的な行動である、Aは優秀である、Sは極めて優秀となります。極めて優秀というカテゴリーは、優秀なレベルの能力をいかに同僚職員に伝えているかという同寮性を重視しています。Cは標準に達しない努力を要するレベルということですが、Cを発見するための評価ではなく、標準から始まりますというのは評価のメッセージとしては重要なことかと思います。ただし、標準があると、標準に届かない人もいますので、Cもありますが、当然、Cレベルには、評価の基準として行動基準はありません。
 次の4ページが役割達成度評価です。これは、いわゆる業績評価、また、他県でいいますと目標管理方式による評価と言われる部分ですが、これを私たちは目標管理というくくりではなく、組織の中でそれぞれの役割があるはずだというところに注目しまして、役割達成度評価という言葉を使っております。
 目的としましては、学校組織のパワーアップです。下に4つほど書いてありますが、1.学校の組織的な教育力の向上をこの評価によって目指している。2.動機づけ。3.コミュニケーションの促進。4.処遇への反映です。処遇への反映ということを当初から目的の中に書いてあるのも、強いメッセージを教職員には与えていると考えます。
 役割達成度評価が機能するためのポイントについて、2番目に書いてありますが、私たちは学校という組織体でまず見ておりまして、学校という組織体がミッション、使命を持つためには、地域住民、保護者の思いと職員の思い、そして児童生徒の思いから学校の使命というものが出てきて、それに沿って学校経営方針がまず立てられる。学校経営方針が出ますと、学年とか、教科とか、校務分掌という校内の組織目標ができます。それを受けて、個人の目標に連鎖させます。役割達成度評価は全体目標の個人目標への連鎖、それによって組織的な教育力を向上させようというのが大きなねらいです。
 5ページです。役割達成度評価における評価項目ですが、これは校長の設定項目につきましては、学校の重点目標に関する内容、人材育成に関する行動計画、この2つです。教頭、事務長については、校務の整理、調整及び校長の補佐、学校経営への参画及び業務の管理、人材育成、これもやはり校長と一緒です。今年度、主任級までこの役割達成度評価を実施しておりますが、担当業務、上記以外に担っている役割、業務ということで、役割達成度では評価項目を簡潔に絞っております。ただ、それだけでは方向性を狭くしてしまいますので、やっていくうちに組織貢献が大きく出てきたものについては、プラスワンで入れることができるようにしています。いずれの職種にもプラスワンを入れているのが特徴です。
 また、困難度の設定です。これはよく見られる方法なのですが、困難度が高いか普通かということに加えて、ウエート欄の設定ということで、自分で業務の中でどれほどのウエートを占めているかという困難度とウエート、2つの部分が加味されております。ウエートが高くても困難度は低いというのが出てきたりするわけです。
 実際の評価表で見てみますと、下のほうのページの21ページから2枚ほどめくっていただきますと、資料2が出てきます。これは評価シート集です。すべての職員の評価シートをつけています。まず、1ページ目は、教頭用の職務行動評価シートです。管理職ですので、創造的企画力とリーダーシップ、人材育成力、外部折衝力、管理運営力という、いわゆるマネジメント項目で評価しております。共通項目として、セルフマネジメント、教職員としての基本姿勢に関する評価項目が続いております。
 教諭用、養護教諭用、栄養職員、事務職員とずっと続きますが、基本的には、頻度で自己評価を行いまして、教頭の1次評価、校長の2次評価が終わると、本人にこの評価表を提示して面談を行い、次期への努力目標等を話し合うこととしています。評価内容や、評価結果について。始まる前からオープンですが、終わった後の結果についてもオープンにしていく評価制度です。この評価表の中にとるべき行動そのものを書くことによって、一人一人の教職員の能力のアップにつなげようということです。任命権者側がそれぞれの職員ごとに、能力向上のためにとるべき行動を明示していることになるかと思います。
 次の途中から横書きになりますが、この横書きが役割達成度評価シートとです。校長につきましては、役割達成度評価と職務行動評価が1枚になっています。これは、校長という職務の性格上、その役割は学校全体に及ぼすものだということで、職務行動評価、校長につきましては別立てをしておりません。
 あと、説明の資料等をつけておりますので、見ていただければと思います。
 それでは、今、お手にしていただいているこの資料の一番最初に戻ります。資料6と書いてあるところです。宮崎県の評価制度についてとても十分な説明ができるような時間ではありませんので、後は見ていただくとしまして、少し評価と給与について考えていることについて意見を述べさせていただきます。
 1ページです。全体を「評価と給与について」という題にしておりますが、まず、最初の1、評価の種類です。やはり評価の種類につきましては、能力評価と業績評価の2本で評価するべきではないかという考えています。もちろん、宮崎県の評価制度もこれにのっとってつくっていますが、能力評価につきましては、職務遂行能力を評価して、これを職に反映させる。逆に言うと、どのような能力が校長として必要な能力だということを、まずメッセージとして伝える。そのような能力がある者が校長という職である。ということになるかと思います。
 業績評価につきましては、業績の達成度を評価して、それは給与に反映するものだと考えていますが、15、16、17年の3年間で文科省から各都道府県が教職員の評価について委嘱を受けましたが、私は個人的に見ますと、この評価の研究委嘱については、13年に閣議決定された公務員制度改革大綱を受けた流れで評価制度の構築が望まれていたように思うわけですが、どうもうまく機能していなかったように思うわけです。なぜ伝わらなかったのかというと教職員、特に教員という独特の部分の評価について、もう少し時間をかけて考えていくと、また新たな展開が出きていたのではないかという気がします。ただ、問題なのは、公務員制度改革大綱に沿った形で昨年の人事院の勧告もなされたわけですが、その人事院勧告の真意も伝わらなかった可能性があることが考えられます。
 2ページです。現在の評価の問題点です。現在と言いましても、新しい評価制度の委嘱を受けて、新しい評価制度への過渡期という言い方ができるかもしれません。未だ能力評価制度が完成してはいませんが、能力評価制度が完成したとしても、それを職に反映できない問題点があるということです。この評価制度が完成したとしても、どういう能力が校長か、教頭か、教諭なのかをもう1回組み立て直す必要があるのではないかということです。
 これに沿って、教諭の多段階化という勝手な言葉を使っておりますが、教諭という一 層の職から、教諭を複数層に分ける必要があるのではないかという問題も出てきます。 ただ、これは教諭の多段階化を促す学校組織づくりが進んでいませんので、これも評価 制度ができても、それを反映させる組織制度がどうしようもないところがまだあります。
 そのためには、教諭の多段階化を評価する評価方法が確立されるべきなのですが、そのためには、やはり最終的には学校の組織のあり方の再構築が必要であります。まず、学校は校長と教頭と教諭、これで成り立っているという形の再構築から必要ではないでしょうか。
 この学校の組織のあり方の再構築ということでは、教諭を何層にしようかという問題だけではありません。現在、教育課程審議会のほうで話題となっています、各教科の授業時数の自由化という話題がありますが、私は個人的に、この問題をもう少し全体の重要な問題としてとらえていただければ、学校の組織化の必要性は出てくると思います。現在、教科時数については国の基準で、各学年、各教科の授業時数が決まっておりまして、学校ではあてがいぶちといいますか、決められたとおり授業時数を振り分けていくだけで、教育課程を完成したというような雰囲気に陥っていますが、地域の実態に沿って、この学年のこの教科にはどれぐらいの時数が必要だということを学校が考え始めて、初めて教育課程の本格的な実施がされると思います。現在の学校の組織では、とてもそのようなことを考える組織能力はありません。将来を考えますと、学校組織のあり方が非常に重要な、最大の問題だという気がします。
 教諭の多段階化について途中で話題にしましたが、教諭の多段階化を前提とすると、何をインセンティブにするかが非常に重要な問題となります。やはり職務内容、それと処遇という2つの面しかないわけですが、今までどちらかというと、学校、特に教諭という職の中では給与というものがタブー視されてきました。このあたりも、戦後一貫してここ60年間給与制度は変わっていないこともあり、給与制度のあり方そのものから変えていって、タブー感をなくす必要がある気がします。
 そうなっていきますと、教諭を多段階化すると、指導技術に差をつけることは問題があると。隣の先生は指導技術が高い、うちは低いということは、これは機会均等という面からも非常に問題ですので、指導技術でない部分に見出す。ということは、これはもう組織のあり方につながるのかという気がします。
 この指導技術の差を評価しない、差があっても評価しないということは、逆にとりますと、教諭のあるべき姿、教師力に対して、教諭に対して強いメッセージを全体の制度として与えるのではないかと。教師の指導力の差はあってはならないものだと言い切ることが、教員に対する強いメッセージになるのではないかという気がします。
 そうなりますと、指導技術以外の能力を評価することになりますので、それは組織貢献力であったりマネジメント力、または同僚性と先ほどいいましたけれども、メンターとかリーダーとしての役割が考えられるのではないかという気がします。
 次のページです。現在の給与の問題点。今度は給与の問題点ですが、これは私は特に個人的に主張したいことは、現在の給与制度は1年1号の昇給が前提となっていることが最大の問題であるとうことです。これはどういうところにあらわれているかといいますと、教育職給料表2級とか3級とかありますが、2級は教諭です。この2級が36号給で構成されています。この36は60歳定年、22歳採用ということを考えると、38年間教員の期間があるわけです。36号あればペイしてしまうわけです。これが、まず1年1号の雰囲気をつくっているのではないか。これは給与のインセンティブがないことを示しています。努力しなくても給与は上がる。やはり、頑張る教諭の給与が上がることがインセンティブにつながるのではないかという気がします。
 また、別な角度から見たのが下です。現在の給与の問題点2と書いてありますが、まず、金額の重なりが大き過ぎるということです。教諭、教頭、校長の金額を号級別にして号級を置くと、どれぐらい分布しているかということです。教諭の場合、16万円から44万円あたりで分布しています。教頭は27万円から47万円くらい。校長は40万円から50万円くらいです。教諭と教頭がほとんど重なっている。教頭にならなくても、校長にならなくても給与が相応に上昇する。これもインセンティブを与えない問題点ではないかと考えています。
 続いて4ページです。それでは、教諭を多段階化した場合に給与はどうなるのかということです。指導技術以外の能力で差をつけるというのは先ほどお話ししましたけれども、このように指導技術以外のことを評価することになってきますと、評価のターゲットが絞り込まれる。何を努力すれば次のステージかがわかる。何が差なのかというメッセージが伝わりやすい。もちろん、1年1号の雰囲気がなくなるのが最大の特徴かと思います。
 下のほうです。教諭の多段階化後の給与ということで、少しイメージしてみましたが、現行が16万円から44万円あたりだとしますと、これを3段階に分けて、まず重なりを少なくする。そして、頭を抑えて全体をフラット化するということで考えられるのではないかという気がします。また、全体の頭を抑えますと、今、45万円まで到達していたのが40万円までしか到達しない、これはこれで問題があるという人がいるかもしれません。
 その問題に対しては、次の5ページです。多段階化後の給与1です。1年1号をなくすということで、初号の通過年数を短くして、上位号級の通過年数を長くすることによって、1年1号の雰囲気をなくす。これは早期立ち上がりとフラット化と言うことができるかと思います。これを金額面からとらえずに教員の能力の推移から見ると、1年1号の形を上のほうに現行として36並べていますが、これを3つに分けた場合、例えば、通過年数ですが、1号相当分を1年、2号相当分を2年、以下3年、5年とすることによって、早期立ち上がりとフラット化が実現する。全体の36号級を、思い切って半分以下にする。多段階化したのち、例えば1層目を4~5号給あたりで構成し、そして早期立ち上がりとフラット化をする。給与の到達金額を現行の45万円から40万円に抑えるという話をしましたが、これを下のほうにモデルとして書いてみると、現在は1年1号ですので、1年に1つずつ階段をのぼっていくわけですが、これが右のほうになって、早期立ち上がりとフラット化ということで、全体の面積が変わらないということは、標準的な教諭であれば、生涯賃金はそう変わらないことを図示しております。
 少し長くなりましたが、以上です。

【田村主査】
 ありがとうございました。それでは、ご質問いかがでございましょうか。挙手をいただきまして。どうぞ。

【本城委員】
 これは18年の4月から実施されていると思うんですけれども、現場の校長先生とか職員に説明したときの反響というか反応というのはどんな雰囲気だったか、少し教えてもらえますか。

【日渡 氏】
 役割達成度評価については18年4月から一部試行を主任級から試行しています。職務行動評価については3年目になっています。18年度と書いてますが、これまで3年かけて試行を行ってきました。構想から含めますと、全体的には5年かけました。説明2年、試行3年という形でやってきましたので、当初の14年当時から比べますと、学校としては、もうこれで行くんだという雰囲気が全体的にはできつつあります。

【本城委員】
 その指導技術力をあえて評価しないということ、指導技術力外の能力を評価していくことだと思うんですけれども、一部、組織貢献のところで言うと。違いますか。

【日渡 氏】
 説明の最初は宮崎県の評価制度です。これについては、評価制度はできても、評価を反映させう給与制度が不整備であるためにこれしかできなかったのです。資料では冒頭の3枚につきましては、私の意見表明という形で整理をさせてください。

【田村主査】
 吉野先生、どうぞ。

【吉野委員】
 いろいろ細かい評価の仕方をありがとうございました。一つは、大きい面で、よく知力、体力、徳力、これを向上させることが学校の大きな目標なんですけれども、そういう大きな目標と比べた場合に、ここのいろいろな評価というのは、うまくするとどう関連しているのかどうか。これが1点でございます。
 特に、その場合に、生徒さんの知力、徳力、体力が上がっているか、下がっているか、そういうことも学校全体として評価に関係すると思うんですけれども、それはどういう形ではかられる、評価されているのか。
 それから、ただいまご質問ありましたけれども、指導の技術に差がないことがほんとうにいいのかどうか。私、大学で教えていますけれども、やはり指導のところにも歴然と差があるような感じがいたしまして、それに対しても、ある程度差があることをわかることが、個人にとってかえって努力する、指導をよくする、そういうことにつながるんじゃないかと思います。
 その2点をお伺いしたいと思います。

【日渡 氏】
 知力、体力、徳力とか、よく言われる問題ですが、これ私は専門外ですので、その説明についてはなかなか難しいのですが、それは教育の理念といいますか、教育そのものの最大の目標なわけです。これを知力、体力、徳力だと抽象化た言葉で言わずに、どういう指導行動によってそれらの能力がつくかというものを評価基準の中に書いているということです。例えば、この評価シート集の中の教諭の部分を見ていただくとわかりますが、例えば、教諭の評価項目の最大のところは授業力なのです。授業力が最大ですよと、私たち宮崎県の職務行動評価では書いています。その授業力も、授業企画力、授業実践力、そして自分の授業を振り返る力と書いてあります。それを、頑張れとか、いいとか悪いというのではなくて、授業企画というのは、こういうことをすることが企画力の向上につながるのだと、行動そのものをあらわすのがコンピテンシーを使った評価の特徴です。どういう行動をとることが指導力の向上につながるのかと書いています。良好とか、おおむね良好とか、普通とか、そういうのがないのです。
 それと、差の問題ですが、先ほど言いましたように、指導技術力に差を見ないというのは、説明の後段の私の個人的な考えです。教師の指導力に差があるというのは歴然とした問題です。差がないといているのではありません。評価制度の中で、差を前提とする評価基準がいいかどうかという問題を言っているわけです。差があることを前提として、差があることで目標値がばらばらで、自分はこれぐらい能力がある。というのではなくて、すべては差がないことを前提として基準をつくらないといけないということです。それはもう評価の範疇ではなく、養成、採用、研修、登用という全体的な問題でないかということです。「不適格」というカテゴリーはもしかすると評価の範疇ではないのではという気もします。

【吉野委員】
 よろしいでしょうか。もう1つ、先ほど、企画力とか、いろいろ先生方がやられているわけですけれども、それは何か客観的に、あるいは生徒たちの試験の点数とか、体力の上昇の仕方とか、いろいろあると思う。そういうのを評価するところはどこにあるんでしょうか。

【日渡 氏】
 この評価シートの中の基準が、すべて客観行動であらわしておりますので、基準と言いますか、職務行動を基準とするという言い方の方がいいですね。例えば、今までであれば、授業企画力という項目があった場合に、次の評価基準は普通、ややよい、非常にすぐれている、やや劣っているという言葉であらわしていたのですが、これを、普通というのはこういうことなんだ、ややすぐれているというのは、こういう行動をすることなんだということで、その基準そのものを行動であらわしておりますので、この評価シート集そのものが客観的なものだと考えております。
 評価シート集の3枚目を開いていただくと、この授業力というものは、企画力と実践力と評価・改善力に分かれていますが、この中で、例えば、授業企画力の基準は、良いとか悪いとか普通とか書いていないのです。児童生徒の実態及び学校の教育目標にマッチした指導計画を立てているかどうかということで書いてありますので、自己評価は立てているとか、おおむね立てているというのをa、b、cで頻度基準に従って自己評価していくということです。授業企画力はこれだけではありませんで、指導目標を明確にした指導計画を立てているかということで、立てたかどうかを問うているわけです。企画力全体としていいとか悪いという評価はしておりません。

【田村主査】
 よろしいでしょうか。そうすれば、いいはずだと、こういうことですね。

【日渡 氏】
 そうですね、この行動をとれば。

【田村主査】
 このコンピテンシーを推進していけばね。わかりました。じゃあ、箕浦先生どうぞ。

【箕浦委員】
 指導技術に差を見出すことに問題があるというところにまた行くんですけれども、やはり、指導技術に差を見出すことに問題があるとなると、これは指導技術というのは多分、先生方の本来職務だと思いますので、その本来職務のところで差をつけないのであれば、何で差をつけるのかというところが、貢献力とかマネジメント力もあるのかもしれませんけれども、そこが一番、やはり処遇の上でもきちんと見出していくことが、表のあるべき姿とは乖離するかもしれませんか、そこはやはり結構大切なところではないかなというふうに思います。
 その中で、この能力評価と業績評価という分け方が非常に明快で、わかりやすくて非常にいいなと思っているんですが、その中でも、能力、業績というのを、職に反映と給与に反映と振り分けていらっしゃいますけれども、公務員の方たちの給与は賞与が連動で考えられていて、そこだけ引き離して評価できないのかもしれませんが、毎年ある一定の区間を区切って業績を考えるのであれば、業績というのはよくもあり悪くもあるのが基本ですので、できれば、この業績評価でプラスもあるでしょうしマイナスもあるんだというような感覚が持てると非常にいいんじゃないかなと思います。
 それから、特に、これは個人に対しての目標という部分で行動評価も考えていらっしゃると思うんですが、もしもプラス、マイナスができるのであれば、一つの学校、あるいは学年ですか、そういう組織でチームワークで動くことは、組織の場合では非常に大切な部分があるので、業績評価が給与以外の違う部分で、例えば賞与でマイナスができるようなことがあれば、そういう業績、チームによる──まあ、公証制度か何かがあるのかもしれませんけれども、そういうものに反映できるものがあると、よりいいなと思いました。
 ちょっと意見というか感想なんですけれども。

【田村主査】
 ありがとうございます。何かお話ございますか。

【日渡 氏】
 何回も言いますけれども、指導技術の能力で差をつけないというのは私の私見でございまして、それは宮崎県の方法ではございません。
 それと、役割達成度評価というのは、これは個人が置かれている組織と言いかえてもいいと思いますが、個人評価なのですが、どういう役割を担っているかに着目をしています。だから、校長になると全体評価イコール校長評価に役割達成度評価はなっていくということです。

【田村主査】
 森先生、どうぞ。

【森 委員】
 結局、この評価シートの項目次第のような気がするんです。というのは、ここに書かれていることが目標になるわけですね。望ましい先生増を端的にあらわす項目になると思うんです。ですから、私の意見だけれども、指導能力というのも、物差しがよければいいんだけれども、ほんとうにいい物差しができるかという問題点がやっぱりあって、この評価シートをつくるときに、どういう検討をしてつくられたかというのは非常に興味があるんです。結局、物差しがゆがんでいればどうしようもない結果になるし、よければいい目標ができるわけですね。
 そういう意味で見ると、児童生徒理解力、指導力のところなんかは、非常にこれはもののよくわかった人が書いたなという感じがしますよ。項目一つ見ていくと、能力じゃなくて、大事なこと、哲学が書いてあるような気がしますけれども、これをどうやっておつくりになったかということだけ私は聞きたいですね。

【日渡 氏】
 このことにつきましては、3年ほど前の中教審のヒアリングのときにもご説明をしたので、きょうは避けましたが、これは教育委員会側が一方的に書いたものではございません。3年ないし4年かけまして、教職員をブロックごとに意見を出してもらいました。それが何万という項目になりましたが、私たちは、それをカテゴリー化して評価項目をつくっていきました。ただ、一人一人の言葉がそのまま反映されてはいませんので、職員は自分の言ったことが書いていないと思うかもしれませんが、私たちの姿勢としては、すべての教職員の意見をもとに制度を作っていったと言っても過言ではありません。

【森 委員】
 わかりました。現場に即してつくったということだけ聞いて安心しました。ありがとうございました。

【田村主査】
 ありがとうございました。どうぞ、細川先生。

【細川委員】
 県のこの評価制度については、給与や処遇などについては今後検討と書かれているんですが、これは具体的なスケジュールがおありなのかどうかと、その際に、このS、A、B、Cという評価結果が基本になって処遇に反映されることになるのかということが1点。
 それから、教育委員会には、この経過は報告されるのかどうか。されるとすれば、いつの時点でされるのかどうか。
 その2点についてお聞きしたいです。よろしくお願いいたします。

【日渡 氏】
 処遇への反映ですが、昨年度までに早いうちに移したいということは職員には伝えておりますが、ここで何年ということは、まだ、ちょっと差し控えたいと思います。早いうちに処遇に反映させるという話はしております。
 ただ、説明ですけれども、職務行動評価はどのような能力があるかというものを評価するものですので、その結果は職務内容を異なることに反映させますので、校長なのか教頭なのか、スーパーティーチャーなのか、教諭の1なのか2なのかということを反映させるわけです。それも給与なのですが、一般的なイメージの給与の反映は、役割達成度評価を給与に反映させるということです。
 それと、市長村教育委員会との関係ととってよろしいんでしょうか。この評価は、任命権者ではなくて市町村教育委員会どまりの評価なのです。だから、市町村の小中学校については、教頭が1次評価、教頭が2次評価、そして市町村教育委員会が最終調整者、そこまでで終わりです。県の教育委員会は評価者ではありません。全体的な一覧表みたいなものは来ますけれども、個別といいますか、個々の評価内容については市町村教育委員会どまりです。もちろん県立学校は県教育委員会が行います。

【田村主査】
 では、ちょっと時間が。帯野先生が最後で。

【帯野委員】
 これは、18年度、今年度からとなっていますけれども、今まで実験的にはしておられるんですか。全く初めてされるんでしょうか。

【日渡 氏】
 職務行動評価については、3年試行をしてきました。

【帯野委員】
 すみません、失礼しました。そのときの評価結果というのは、どれぐらいの割合でA、B、Cの評価結果が出ているのでしょうか。

【日渡 氏】
 評価にはつきものですが、大体みんなそろいます。それも高めにそろうというのが試行での結果でした。S、A、Bですが、大体A、すぐれているという自己評価や評価が多かったというのが試行の結果でした。

【帯野委員】
 そのあたりが、ちょっと民間の感覚からいくと、普通であれば、仮にSA、B、Cであれば、民間は多分3、4、3ぐらいの割合で出ると思うのですが、どうしても公務員、特に教職員の場合は、6、3、1であるとか、高め高めの評価が出てくる。そのあたり適切な評価がされているのかどうか、あるいは、それを適正化するにはどんなふうにすればいいのか、もし何かコメントがございましたら。

【日渡 氏】
 まず、評価慣れしていないというのがあります。低く評価することに対して、評価者も被評価者側もそれを嫌っていたという感じもあります。あと一つは最初、私たちはS、A、Bではなく、3、4、5と数字で表していたのです。学校は数字で評価すると通知表に慣れているものですから、3は普通と感覚的にとらえてしまいます。そうすると、3では普通だから4にしてやろうとすると、4は一番すぐれている。そういうところもありました。

【田村主査】
 大変参考になるお話をどうもありがとうございました。時間がございますので、残念ですけれども、ここで終わらせていただきます。ほんとうにありがとうございました。

【日渡 氏】
 ありがとうございました。

【田村主査】
 それでは、引き続きまして、花王株式会社の青木執行役員から意見発表をちょうだいいたします。よろしくお願いいたします。

【青木 氏】
 時間が少し延長しているので、何時まで……。

【田村主査】
 一応、30分ということで。

【青木 氏】
 そうですか、わかりました。今、ご紹介いただきました、花王の青木でございます。このような場で私どもの事例をお話しすることがほんとうにふさわしいかどうかわかりませんけれども、何かご参考になればということでございます。後ほど、ご意見、あるいはご質問いただければと思います。
 それでは、限られた時間ですので、早速始めさせていただきます。お手元に資料を用意いたしましたので、それに従いましてお話しをいたします。
 あくまでも一民間企業の人材評価と報酬制度のお話でございますので、学校の先生にこれが当てはまるかどうか私はよくわかりませんので、ある意味では、意見発表というよりは事例紹介という立場でお話しさせていただきたいと思います。
 まず、開いていただきまして、花王ウェイというのを三角形の形の中に入れておりますが、これはまさに、私ども花王という会社が何のために世の中に存在しているのか、あるいは、我々の企業がどこに向かっているのか、何を目指しているのか。あるいは、そういった使命、ビジョンを達成するために何を基本的な価値に置いているのか。我々が共有すべき価値観というのは何か。それを達成するために、我々はどういう行動を起こすべきかというようなことを、こういう形でまとめて、日々、社員と共有する努力をしております。これは日本のみならず、海外各社のメンバーとも共有しております。
 次のページに具体的に使命、ビジョンが書いてありますけれども、そのほかにも、さらに行動原則等まで含めまして記述をしております。
 なぜ最初にこの話をするかというと、人材の評価ですとか、あるいは報酬、あるいは、それ全体を取り巻く人事の仕組み、人材育成の仕組みというのは、まさに組織全体の価値観だとかものの考え方があって、それをきちっと反映していくべきだと思っておるので、一番最初にそういう話をしたわけです。
 その次の4ページ、人材開発の全体フロー、一番上に花王ウェイがありまして、この花王ウェイだけでは日々のマネジメントは進みませんので、左側にBBS2010と書いてあります。これは中期の事業計画でございます。それから、右側にBCGと書いてあるのは、ビジネス・コンダクト・ガイドライン。もう少し行動原則をブレイクダウンした日々の行動指針、こういったものを持って、これをベースに人材開発全体のシステムを回していくということでございます。当然のことながら、組織をどう編成していくのか、あるいは、それにどういう要員配置をしていくのか。そして、その組織の目指した目標、結果がどういう形になっているのかの評価。その結果として、役割の貢献に応じて社員への報酬という形になる。
 しかし、その一つの流れだけではなくて、評価をした後に人材をどう棚卸しをし、あるいは育成をしていき、あるいは教育をし、次の配置異動に結びつけていくかというPDCAサイクルをいかに回していくか。こちら側のほうが、むしろ私なんかは今、一番重要だと思っておりまして、きょうは報酬、給与の話でございますけれども、きっとこのサイクルが回ることによって、結果としてその報酬がきちっとみんなの納得のいくものになっている。必ずしも、すべてがこううまくいっているわけではありませんが、こういう視点を持ちながら、日々やっているということです。
 したがいまして、一つ申し上げたいのは、やはり給与、成果主義のいろいろなご批判など、民間企業がここ数年やってきたものに対していろいろ反省もあるわけですけれども、いずれにしても、民間企業の人事、人材育成の仕組みというのは、トータルのシステムだという認識がきちっとあるかどうか、これが非常に大事ということです。それから、結果として、人材育成にきちっと資するものであるかどうかが2つ目に大事だということ。それから、全体として透明度の高い社員の納得のある制度、これもなかなか永遠の命題ではございますけれども、少なくとも、透明度の高いシステムである、そんなことが非常に重要であろうと思っております。
 次のページに、当社における非常に基本的な視点をまとめてございます。技術的なことはいろいろあるわけですが、花王における評価の視点というのは3つございまして、Position(ポジション)、それからPerformance(パフォーマンス)、それからPerson(パーソン)、この三つのPでございます。ポジションというのは、組織目標を達成するための役割分担でございます。役割、職務、そういう視点でございます。それから、その役割の遂行の度合い、これがパフォーマンスでございます。これは、ある一定期間にどれだけ組織目標を達成するために貢献できたかどうかということで、やはりここは潜在的な能力ということではなかなかはかれない部分、顕在化した能力、それは実績であり貢献度、こういう視点でございます。ポジションがあり、それのパフォーマンスがあるということなんですが、しかしながら、実際にその役割を遂行し、それから実績を上げるのは人でございますので、いかに優秀な人材、あるいは職務に合った人材、適所適材で人を当てはめるかということが最終的には一番重要なことになりますので、パーソンということになるわけで、やはり、この3つがどれも大事だということでございます。
 そのマトリックスで見ますと、いろいろな企業さんでこういう人材像の概念を設けておりますけれども、先ほど花王ウェイと言いましたが、やはりある一定の価値観を共有する人たちが一つあるべきパーソンとしてイメージがあって、もう一つは、その人たちが実際に現場でパフォーマンスを上げているか。両方高い人たちは基幹人材という認識で我々は置いております。やはり、どうしても、非常に先行き不透明な時代、あるいは競争が激しくなっている時代において、企業を引っ張っていく集団をいかに継続的に育てていくかということが非常に重要である。ここを基幹人材ということで、リーダーの育成という視点で力を入れています。
 さはさりながら、リーダーだけでは仕事は回らないわけなので、ここにMajority(マジョリティ)と書いてありますけれども、非常に多くの現場の人たちの士気をどうやって上げていくかということにも腐心をしているわけでございます。そこには、専門性の評価、それから基礎教育といいますか基本業務の評価、それから組織全体の健全性の評価みたいなものが必要だと思っております。
 それから、もし価値の共有ができない組織人がいるとすれば、これはできれば組織から退出していただきたいんですが、それもなかなか難しい部分もあるわけです。片や、頑張ってもなかなか成果が上がらないという群もいる。そういう意味では、要改善プログラム対象者と書いてありますけれども、企業の中には、やはりこういう集団はおります。これをいかに本人に気づきを与えて頑張ってもらうかということも、もう一つの課題でございます。
 いずれにいたしましても、この3つの視点で評価しておりますが、少し具体的にお話ししますと、次のページ、等級体系というところ。これが具体的な花王のポジションの体系でございまして、ちょっと見にくい字で恐縮ですけれども、P1、P2、P3、P4、P5、ここが管理職の体系で、5つになっていますけれども現在は4つです。これが管理職を役割の責任の大きさに従って4つないし5つに分けているという形。それから、その下のところは、箱が積み木みたいにいろいろな形になっていますけれども、Aフィールド、Bフィールド、Cフィールドとなっています。我々はメーカーでございますので、研究から、あるいは生産現場、販売から、いろいろな職種がございます。従前は、いわゆる職能等級という体系で一律でやっておったわけですけれども、職務だとか役割だとか、仕事ベースと言ったときに、やっぱり職種別に違うだろうということで、我々はそれをフィールドと言っているんですけれども、職種別の人事体系を持っております。その一つ一つを職群と定義をいたしまして、それにふさわしい処遇水準ですとか教育だとかいったことをやっているとご理解をいただきたい。これが大体1990年の終わりから2000年ぐらいから5、6年やってきた一つの大きな等級の体系でございます。
 ポジションをどう評価するか、役割責任ををどういうふうに評価するかというのは、次のページに書いてあるような役割評価基準というのを持っていて、いわゆるラインの業務と専門的な業務と、少し重みづけは違うわけですけれども、ここに書いてあるような項目で、ある意味、数値化をしてポイント化をして、同じ課長であっても、役割責任が大きい課長と役割責任か小さい課長、それはやっぱり等級が違う、こういう形になるわけです。
 次のページ、2つ目のパフォーマンスの評価になりますが、これは先ほど申し上げましたように、組織ですので、全体の目標と個人の目標の連関性、これを非常に重要に考えております。したがいまして、全社の目標、それは各事業部門の目標、さらに部の目標、課の目標という形でブレイクダウンをして、毎年毎年それが更新されます。また、成果の評価をするのを少し長期的と言いますか、1年間で見るところと半年ぐらい、場合によると四半期ごとに見なきゃいけないというなものもありますので、先ほどフィールドごとに人事制度を変えていると申し上げましたけれども、まさに評価の期間、あるいは評価の目線、評価基準も変えながらやっております。
 ここにKPIと書いてありますけれども、キー・パフォーマンス・インディケーターということで、必ずしもすべてが数値化ではないんですが、なるべくゴールの目標をクリアにしよう、透明にしようということで、4つの視点、これはバランススコアカードって皆さんご存じだと思いますけれども、経営の視点、カスタマーの視点、業務プロセスの視点、人材と組織運営の視点、ともすると経営数値的なものに寄りがちなものを、少しバランスをとりましょうということでやっています。それぞれ数値化できるものは数値化、できないものはなるべくゴールのイメージが共有できるような記述をして、各部門、あるいは各課ごとにこれを持って、それを毎年メンバーと共有して、個人目標に落として、それを最終的に評価し、フィードバックし、また次につなげる、こういうサイクルを回しているということでございます。まさに目標管理のことでございます。
 次のページ、KPIの一例と書いてありますけれども、そこにスタッフ系から事業部系、研究・技術系、生産系、販売系、メーカーですからいろいろなファンクションがございますけれども、こんな形になっています。
 学校の先生は研究職に近いという、今回、事務局からのお話がありましたが、例えばその研究・技術系のところを見ていただくと、経営数値ということであれば、やはり我々はいろいろな製品を世の中に問うというのもありますので、そういったものは研究を一つのベースにしておりますので、どれだけ市場に出ていったかということだとか、いろいろな現場の効率化については技術開発は重要ですので、そういったものがどう投資額に対して結果が出たかということ。
 カスタマーの視点であれば、お客様ということでございますので、どれだけ受け入れていただいたかという意味合いで言えば、シェアですとか、いろいろなお客様からの相談だとかクレームがございますので、そういったものをどう削減していったか。
 業務のプロセスという観点で言えば、例えば、研究であれば特許をどれだけ取ったかとか、研究員は一人一人が研究テーマを持っておりますので、研究テーマがどれだけ進捗しているか、そういったプロセスの評価。
 それから、人と組織運営ということで、このFINDというのは後ほどご説明しますけれども、社員の意識調査みたいなことです。それから、研修時間だとかEPSと一番下に書いてあるのは、イコール・パートナーシップの活動をどれだけやったか、そういうことを指標にしてやっております。それが結果としてどう出たか。
 最後に、パーソンが大事だというお話ですけれども、これは先ほど宮崎県の方からもお話がありましたけれども、一つ大事なのは、やはり結果だけではなく、そのプロセス、行動だということでコンピテンシーを入れております。これもフィールド別、職種別に求められるコンピテンシーは違いますので、それぞれでセットしてやっているということで、これも実績の評価と並行しながら、毎年ないしは半期ごとにやっているという形でございます。
 もう一つ、パーソンのところでは、先ほど基幹人材、リーダーの育成が大事だというお話をいたしましたけれども、次のページ、リーダーシップバリューというのがあります。先ほど花王ウェイというのがありましたが、花王ウェイを実現するためにリーダーは何をすべきかというバリュー、価値観、これを提示して、各部門における基幹人材を集めて、いわゆる多面評価、360度評価をやる。これはどこから始めたかというと、経営トップ、あるいはトップ候補者から始めました。まさに経営トップがこのリーダーシップバリューに合致したようなマネジメントをしているのかどうか。これをやって、花王ウェイの実現に向けてリーダーを育成していくということをやっております。これがパーソンのところでございます。
 次のページ、きょうの本題ですが、報酬の体系でございますけれども、基本的には、基本報酬とインセンティブの部分ということです。基本的報酬は、先ほどのポジション、役割、職務に応じて、ある一定の範囲の中で、先ほど課長の話をしましたけれども、大きな課長と小さな課長、あるいは、研究員でも、新卒ですぐに入った一般研究員と主任研究員で少し役割が違いますので、それぞれに応じた範囲役割給みたいな形になっておりますが、毎年の評価で、その範囲の中を上がっていくという形です。それが役割給です。
 それから賞与も、基本的な部分が日本の場合はあるだろうということで、基本賞与というのが入っています。ですから、このポジションに応じた報酬というのは、いわゆる月額の役割給と、年に2回の賞与のうちの基本賞与の部分です。それから、インセンティブの部分になりますけれども、実は賞与が3つに分かれていて、基本の賞与と、個人実績の賞与と、連結業績賞与と書いてありますけれども、もう一つ、部門・会社別業績賞与、いわゆる組織・チームの成果の配分みたいなところがあります。繰り返しになりますけれども、基本賞与、これはポジションですけれども、先ほどの目標管理での個人ごとの評価をしたものが反映した個人の実績賞与、それから、組織・チームの成果配分としての会社全体の連結業績の賞与と、一部、部門別・会社別の賞与、そういう形でやっています。それから、最近では、長期のインセンティブという考え方も入れてきています。
 いずれにしても、組織の目標をいかにみんなで達成するか、あるいは、達成したら、それをみんなでどうやって分かち合うか、こういうことで報酬の体系をつくっております。
 今、大体、制度の骨格とか視点を申し上げました。次のページが、先ほど、人事、人材育成のシステムというのは極めてトータルの仕組みで、それをどうやって回していくかということなんですけれども、一つきょう申し上げたいことがあるとすれば、制度をつくって魂入れずというか、要するに、制度をつくっても実際の場面で運用できなきゃ全く意味がないということを申し上げたい。いかに制度をつくった後にそれを実践するか、実行するか。あるいは、実行できるような、制度構築、あるいは運用体制、そういったことが非常に重要であろうと。
 我々のそこら辺の苦労は、例えばここに書いてありますように、人事委員会、これは皆さんの地方自治体さんの人事委員会とはちょっと違うんですけれども、まさに先ほどの基幹人材をどういうふうに育成していくかとか、基幹人材の評価をするとか、だれをどういうふうにローテーションするかとか、そういったことをトップみずから議論する場、さらに、部門別人事委員会とありますけれども、これは、さらにそれを部門別におろした議論です。そこに、キャリア・コーディネーターと書いてありますけれども、まさに部門ごとに人材育成を常に専門的にやる人を置いてやっている。片や、真ん中の人材開発会議。これは人事の専門家が制度構築だとか運用だとかというところのいろいろな改善をして議論をしていく場ということで、その下のことは割愛しますけれども、こういう運営の母体といったものをきちっとつくることは重要であろうと思っています。
 それから、次に、社員のやる気だとかモチベーションというのは、報酬だけではなくて、自分がいかにその組織の中で成長しているかとか、そういう意味では、いかに教育体系を育成システムと一緒にセットしていくかということが大事だろうということで、次のページに花王の能力開発体系とあります。一番上の基幹人材プログラムと書いてあるところ、これがまさにリーダーの育成プログラム。それから、次のマネジメントプログラム、ビジネス・スキルプログラム、グローバルプログラム、この辺がマジョリティのマネジメントの教育の部分。さらに、自己啓発ということで、やる気があり、能力アップの機会を求めている人たちに広くオープンでやっていく教育の機会というようなことをつくっております。現場でのOJTと、それから、こういったOFF・JTを両方そろえて、適所適材でやっているということです。
 最後に、FINDというのがその次のページに書いてありまして、社員の声・意識調査です。私が今申し上げましたようなトータルの仕組みがちゃんと組織の中に定着しているのかとか、浸透しているのか、そういったことのチェック、あるいは、もしそれがうまくいっていなければ、それに対するアクションといったものが非常に重要だということです。2年に1度、まず、先ほど言いました花王ウェイをはじめとした経営方針というのがきちっと社員に認識されているかという一番下のボトムのところ。それは、企業の力とか文化・風土とか、それから経営政策のところも含めてです。それから、花王という会社に社員が満足しているのか、仕事にやる気を感じているのか、ロイヤリティがあるのかということが最終的にでます。一番大事なのは、その間をつないでいる制度・インフラ、それからミドルマネジメント、トップマネジメント、こういったことがきちっと機能しているのかを、1万数千人の社員に2年に1度聞いて、それを各組織ごとにスコアをつけてチェックしております。
 それは最終的には、次のページ、E職KPIと書いてありますけれども、E職というのは管理職、P1、P2、P3、P4、P5と書いてあったところですけれども、彼らの4つの視点におけるカスタマーの視点と、それから人材と組織運営の視点の目標管理のKPIにセットして、これがちゃんといっているのかということを会社全体でチェックしております。こういったことを管理職の目標に掲げて、これを改善していく。2年に1度このスコアを上げていこうということでやっているということでございます。
 最後の最後ですけれども、研究開発について少し話をしてほしいという事務局からのお話でしたので、花王の研究開発は次に書いてあるような組織になっております。基盤技術の研究と、それから、我々は一般家庭用品の商品開発をやっています。その両方をマトリックスで運営して、ここに書いてあるような基盤技術研究所が7つ、それから、商品開発研究所も7つ、こういった研究所が、物理的というよりは機能的に分かれてやっております。
 次のページ、研究のフィールドにおける等級体系というのは、RD1、RD2、RD3、SR、それから、先ほどの管理職のP2、P3、P4、P5、こんな形になっていて、一般研究員のところは、いわゆる研究アシスタントがRD1で、マスタークラスが入ってきますとRD2ということで、ですから、一般研究員のところはRD2から入ってRD3という形になる。そして、いわゆる世の中で言う主任研究員はSRという形になる。この3つです。あとは管理職、研究室長ですとか、研究所長ですとか、そんな形になっています。
 片や、マネジメント系列だけではないので、いわゆる専門性も評価をいたしまして、それに見合う処遇を専門職系統として一致させていくということでございます。報酬体系は先ほどご説明した、ほかのところと同じような形でやっております。
 それから、給与以外のインセンティブの制度については、そこに書いてありますような、いわゆる表彰の制度、それから職務発明実績報奨制度。それは社内のいろいろな商品開発で大きな売上貢献、利益貢献をしたということ、それから、ライセンス収入に対する報奨ということ。それから、後はテクニカルマスターということで、ここで言えば、リーダー、主任層の主任クラスあたりの高度専門ということじゃないんですけれども、手に職を持っているという方ですね、そういう方を3年に1回ぐらい認定をいたしまして、一時金で遇するということをやっております。
 以上が私のお話ししたいことだったんですが、最後にまとめさせていただきますと、やはり民間企業はここ数年、いろいろな人事制度の改革をやってきましたけれども、基本的には、頑張った人と言いますか、責任の高い人だとか、責任が高い役割をきちっと演じた人だとか、実績を上げた人に対してと、そうでない人を分けていくというか、処遇差をつけるということは、やっぱりどうしても必要なことだろうと思っています。それは、社内的ないろいろな問題もありますし、他との人材の競争条件上もそれは必要だろうということが1点。2点目としては、ただし、給与だけじゃありませんよねと。いろいろな組織の中のメンバーの役割に応じた成長の機会というか、そういうことがありますよねと。最後は、そういったことをきちっと回すためには、運用がきちっといくということと、そのためには、メンバーとのコミュニケーションが重要であろうと思っています。以上でございます。

【田村主査】
 ありがとうございました。ちょっと時間がおくれていたので、ご迷惑をおかけしてすみません。

【青木 氏】
 すみません、少し早口で。

【田村主査】
 ちょっと質問の時間をいただいてよろしいですか。

【青木 氏】
 はい、どうぞ。

【田村主査】
 それでは、ご質問ございますか。どうぞ、川田先生。

【川田委員】
 どうもありがとうございました。私からの質問としては、民間企業でこういうことをやるとすると、ある程度の規模であれば、労働組合との関係があると思いますが、労働組合がこういう制度をつくって運用する上でどういうふうにかかわってきているのかということを……。

【青木 氏】
 花王の労働組合はちょっと特殊なところがあるんですけれども、そうであっても、この制度を改定するいろいろなワーキングのときから組合に入っていただいてやっています。各社、必ずそういう形で進めておられると思います。

【田村主査】
 ほかには。どうぞ、吉野先生。

【吉野委員】
 民間の企業の場合、やはり非常に収益が上がっているときと、それから下がっているときがあると思うんですが、日本でいいますと、現在、財政赤字で、どちらかというと下がっている状況だと思うんですが、そういうときに、いかに社員の方々に、あまりたくさんは払えないわけですけれども、インセンティブをこれまで付与されてきたのでしょうか。

【青木 氏】
 それは、やっぱり全体の分け前が小さければ、それはそれなりに全体が下がることはしょうがないんですが、先ほど言いましたように、いいときも悪いときも同じ制度で透明性を上げて、最初に約束したルールどおり払う。だから、アップもあるしダウンもある、こういう仕組みでやっております。特に、先ほど報酬の体系のところで、いわゆる役割に応じた基本の部分の月例給与と、それから賞与でも基本賞与というのがあります。ここは基本的には、よっぽどのことがないと、今ある水準を出します。その上に個人の実績、それから、その上に会社の業績、あるいは部門の業績、例えば、利益をこれだけ上げたらこれだけ、売り上げをこれだけ上げたらこれだけということを、あらかじめ労働組合と約束をしておいて、その計算式に従ってアップダウンさせる。こういうことでございます。

【田村主査】
 ありがとうございました。ご質問いかがでしょうか。よろしゅうございましょうか。じゃあ、ちょっと最後に一つだけ。企業の責任者として、我々は今、学校の現在の給与体系を議論しているわけですが、もちろん、これはパフォーマンスもあるし、いろいろな意味で批判されているものですから、そういうことに答えを出そうという考えがあるんですが、その辺のことでざっくばらんなご感想だけいただければ。

【青木 氏】
 先ほど言いましたように、企業も給与のアップダウンだけに着目した人事制度を先行してやったところは反省みたいなものが多分あると思うんです。ですから、私がきょう申し上げましたのはトータルの仕組みということで、片一方では人材育成という視点を入れていただいて、まさに先生は人材育成を使命として率先しておやりになる、そのおやりになる先生の人材育成というか、それに資するようなトータルな仕組みをつくっていただきたい。
 きょう来る前にいただいた資料で、公務員の皆さんより必ず先生方が高いかどうか、これはちょっと別で、それは是正していただくにしても、僣越ですけれども、私どもで言えば花王ウェイというのがあって、こういう企業になろうよ、あるいは、こういうリーダーになろうよという一つの像を描いて、それに合った行動だとかマネジメントをしようと。それが非常に大事だと思うんです。先生方だったら先生の像があって、それは学校によって違うかもしれませんが、その像をまずは描かれて、それにふさわしい人たちが頑張れば給与は上がる。その前段のところは十分に議論されて、最近、教育基本法の議論もございますので、そういう中で先生方、あるいはそれぞれの学校の教員のあり方をぜひおつくりになって、給与はその後でも、というふうに思っております。

【田村主査】
 これから議論を進めていく上で大変参考になるご意見をいただきまして、ありがとうございました。遅くなりまして申しわけありませんでした。ちょっと時間がずれておりますが、きょうは、最後に杉並区立和田中学校の藤原校長先生からご意見をいただくことになっておりますので、よろしくお願い申し上げます。

【田村主査】
 これから議論を進めていく上で大変参考になるご意見をいただきまして、ありがとうございました。遅くなりまして申しわけありませんでした。ちょっと時間がずれておりますが、きょうは、最後に杉並区立和田中学校の藤原校長先生からご意見をいただくことになっておりますので、よろしくお願い申し上げます。

【藤原 氏】
 和田中学校の藤原でございます。こんにちは。資料8ということで私の考えを3枚の紙に述べておりますけれども、和田中の校長になりまして、その前年に新入生が44名しか入らなかったということで、ご存じのとおり、40名を切ると単学級ということで、おとりつぶしの対象になるわけです。そこから3年しまして、ことし126名入ってきまして4クラスになったんです。この間、私が使いましたマネジメント手法というのは、人、金、物、情報、時間、この経営資源をマネジメントするということなんですが、残念ながら、ご存じのとおり、人事権はほとんどありませんから、例えば、もっと給料上げるからもっと頑張ってとか、あるいは、これをなし遂げたらボーナスあげるよ、こういうマネジメントは一切使えなかったんです。使えなかったんですが、そういうパフォーマンスを上げることができたということを、ちょっと最初にお含みおきいただいて、これは最後に私が述べることに結びつくところなんです。ちょっとその前振りで、今それをお話しいたしました。
 私、履歴としましては、リクルートという会社で25年ぐらいやっておりましたので、そういう意味で、人がどのようにすれば動機づくかとか、そういうことについては専門家のつもりでもおります。現場におりまして4年目になりますけれども、きょうは、その視点から感じるところを述べてみたいと思います。
 教員給与のことを論ずる場合、ミクロの議論とマクロの議論がどうしても必要で、ミクロの議論だけではだめでしょう。総コストは下げたいけれども、それによってやる気のある教員のモラルまで下げたくないということも含めてですね。総コストを下げたい、あるいは合理的に投資したいというのは十分わかるんです。ですが、とにかく給与テーブルだけをいじっても無理がある。
全体の組織を非効率にしている理由があるものですから、後から述べますけれども、そっちをきっちりとらえていないと、教員給与だけいじっても、全体効率は全然上がらないということが起こる。そのことを、きょう、きっちりお話ししたいと思います。
 マクロから先に述べるよりも、ミクロから先にちょっと見ていただこうかと思います。恐縮ですが、いきなり3枚目を開いていただいて、一番下です、2-3-2と書いてあるところ。ミクロの話についての私の意見はここにすべて集約されます。前に、中教審の会議で同じように証言台に立ったときに、田村さんから質問されました。給与についてどう考えますかと。そのとき、実は当時の東京都の横山教育長の姿が見えたので、ちょっと私、ごまかしたんですよ。あまり私が大胆なことを言っちゃうと、機嫌を損ねると悪いかなと思いまして。きょうはそういう心配はないと思うので、ざっくばらんに申し上げます。
 私が現場に入りまして非常に驚いたのは、40代の教員がすべて800万円台の年収という形で、できる教員もできない教員もほとんど一緒という給与体系。これではちょっと納税者は納得しないだろうなと思いました。私の考えとしましては、30代で600万円台ぐらいまで持っていってもいいと思う。ですが、その後、30代の後半ぐらいに決断を迫りまして、一体あなたはプロ教師を目指すんですか、もしくはマネジメントを目指すんですかと。マネジメントを目指すという場合には、そこから東京都ですと主幹、副校長、校長という道になるわけです。そういう道に入らないで、むしろ自分は最後まで子供たちとともにありたいという、すばらしい教師はいっぱいいる。こういう教師をプロ教師として処遇するべきだろうなと思う。プロ教師のキャリアなら40代で800万円台、それから60歳定年までに1,000万円程度になる現行のテーブルは納得がいきます。
 一方、管理職のほうは、教頭(東京都では副校長、以下教頭)になっても年収で50万円ぐらいしか上がらないんです、同じ年齢で。校長になっても100万円強しか上がらない。それで、これだけの責任を抱えさせられるということで、主幹から教頭、校長にどうしてもなりたいという人はどんどん減っている。ですから、東京都も、教頭になる前の主幹職の選考に非常に苦労しています。希望者がいない。その前に、指導主事になるという手もあるんですが、これも人気薄の仕事になってしまっています。
 というようなことで、できれば30代の終わり、まだ転職のきくような段階で、プロ教師になるんですか、マネジメントですか、それともそうじゃないんですかという仕切りをつけて、その後の給与テーブルをガラッと変えたほうがいいのではないか。
 それに、例の免許更新制度を兼ね合わせるのか、それとも、プロ教師になろうという人にマスター(修士)になるチャンスを与える手もある。現職にとどまったまま、例えば夜と土日でマスターを取って、マスターを取った人は年収が上がる。600万円が800万円台になるなら、それくらいのこともあっていいのではないかと考えるわけです。
 これがミクロの話です。
 では、次に、マクロの話をさせていただきます。もう一度、1ページにお戻りいただけますでしょうか。
 本質の話なんですが、今、皆さんが議論されているのは、公教育が非効率になっているという認識から、教員給与にネックがあるんじゃないかということで、それを変えようというものだと思います。しかし、なぜ公教育が非効率になっているかについて、次の3点をぜひ強く意識していただきたい、というのが私からのお願いです。
 まず、教員の文書事務が増えているという現実があります。現場が信じられないという前提での調査が、文科省、都道府県教委、それから市区町村教委と三重に来ますので、去年数えてみましたら、収受文書で大体1,200通以上ありました。増えています。多分、ことしは1,500通ぐらいになるんじゃないかと事務では予測しています。それから、いわゆる調査ものが中学校で年間200本、小学校で400本あると言われていまして、大体、教頭の主業務は文書の処理になってしまっている。教頭でありながら、現場の軍曹であるはずが、ほとんど授業も見られないような教頭が増えています。指導主事の仕事も、この中継ぎの事務仕事になってしまっていて、昔みたいに、ある授業を広めるために強力にそれを推進するような仕事ができなくなっている。文書業務が増えてしまったことで、特に教頭、副校長と指導主事の機能が低下しています。
 ちなみに、話だけでは何だと思ったので、きょう、現物を持ってきました。これちょっと、そちらから回していただくといいと思うんです。お一方30秒ぐらいで見て回していただいて、それが大体1週間で処理する量だと思ってください。100枚ぐらいあります。100枚あるということは、100ページじゃないんです、200ページぐらいある。その中に、大体4、5本調査が入っているような感じです。それが毎週届く。ほとんど教頭がかかりきり。そして、その文書をつくって流すのは指導主事なので、その両方の職種の人々は、そういう書類仕事にかまけてしまっていることになります。
 もう一つ例を示します。給食関係の文書も、ものすごく多い。O-157の発生以来、とにかくここまで書かせるかという感じで、給食関係でも仕事の半分が文書をつくる仕事になってしまっている。後から何か起こった際の免責の文書です。こういう文書を、もし10分の1ぐらいに減らせれば、現実に指導主事や教頭、副校長の効率化が図れますし、もっと、子どもたちの未来を見据えた、本来の仕事ができるようになる。
 もう一つ申し上げましょう。家庭・地域の教育の機能が低下して、教員が授業や教材研究に集中できないという事実です。次の資料もちょっと回していただけますか、すみません。口で言うだけではわからないかなと思ったので、けさ時間をかけてつくってきた図です。簡単に言います。
 昔の先生の仕事というのは、一番上の1に書いてありますように、授業があって、中学であれば部活、生徒会などの面倒を見て、土曜日の学習、課外活動の面倒を見る、これだけでよかった。これ以外の外側の領域の仕事は、家庭という社会と地域社会とがこぞって、子供たちの社会化を担っていたんだと思います。
 ところが、今はもう、どの校長に聞いていただいてもいいですけれども、家庭での社会化機能と地域社会での社会化機能が圧倒的に落ちてしまいました。そうすると、当然、この部分を学校が支えてほしいというニーズが広がっていきます。2の図です。学校がカバーしなきゃならない領域が圧倒的に増えました。かつ、本来なら総合学習というのは基本的には親の仕事、いろいろな体験をさせるのは家族の仕事のはずなのに、それも学校にしてほしい、となってしまった。それから、基礎学力の定着への期待も増えてきました。こういう地域社会と家庭という社会が本来担っていたものまで、全部先生が担わなければならなくなっちゃった。この学校に対する過剰な期待が逆に現場を混乱させています。
 和田中がとっているのは3の方式で、広がった期待部分について、もう一度地域社会に戻すという考え方です。ですが、学校の外に広がった地域社会にそのまま戻しても、今、町会とか商店会というのはほとんど力がなくなってしまっています。そこで、大学生ボランティアだったり、図書館のボランティアだったり、緑のボランティアだったり、そういう人たちを100人以上組織化しまして、その人たちを学内に入れてしまって、学校の中に地域本部という組織をつくって部屋も持たせ、そこで仮の地域社会を学校の中に再興してしまったわけです。そこに図書室の運営だったり、緑の管理だったり、部活のコーチングだったり、土曜日学校の運営等々、近年保護者や住民から広がってきた期待の部分を背負ってもらっているわけです。そのことによって、教員が昔どおりとは言いませんけれども、授業と部活に集中できる体制を保障しようとしています。
 もう一つ、何が公教育を非効率にしているのか。1ページの1-3に書いてございます。マネジメントの部分です。先ほど、私の前の発表者が民間企業の人事方針をお話になっていましたね。その中で何度も、マネジメントの「運用」が大事だという言葉がありました。教育改革が、多分、文科省が思っているほどのスピードで進まないのは、政策が悪いんじゃなくて、私はその「運用」が悪いだけだと思っているんです。
 現在、3万数千人の校長のほとんどが、私が見たところ、申しわけないのですが、事務屋さん。つまり教頭という事務職を一生懸命やって、最後、そろそろ校長にしてやるかということで、あがりの職業として校長になられている方。それから、昔、荒れた学校をおさめまして、生活指導屋さんと言うんですけれども、力を持って抑えて、その勲功をもって校長になった方が非常に多い。マネジメントという意味で、例えば私が情報交換をして非常に学ぶところが多い方というのは1割ぐらいだと思いますし、多く見積もっても3割ぐらいの方々しかマネジメントのなんたるかが分かっていらっしゃらない。それ以外の方々は、あがりの職という形で校長職に乗っかっちゃっている。
 ここを変えないで制度をいくら改革しても、それを運用するのは校長ですから、非常にせんない。
 だから、最終的な私の提案は一番最後、3ページの2-3-1になるわけです。
 私が全国を回って観察したかぎりでは、小学校の校長先生は比較的頭の柔らかい方が多い。なので、小学校は教員あがりの先生方でもマネジメントを勉強して、それで小学校長でいいんじゃないか。いっぽう、中学校が非常に問題なので、1万校の中学校のうち3,000人程度を学校外から人材を引き抜いてきて、校長に据えたほうがいい。それも、56歳ぐらいで出てきて4年間やっておしまいというのではなく、40代のミッドキャリアで出てきて、5年間だけ日本の教育改革に何としてでもかかわってほしいとお願いするんです。国の重要政策として、10年間で3,000人、つまり3割をかえていくということをどうしてもやるべきだと私は思います。
 そのためには、最後のページの2-3-3になるんですが、校長職は現在、兼業不能になっていますけれども、兼業可能な形に変える必要があるでしょう。
 例えば大学の先生でも中学の校長ができる、あるいは、補習塾の先生で、昔、教師をやっていて、すごい熱血漢のすばらしい先生、そういう先生も学校の経営ができる。あるいは、私企業の社長や、もうある程度ひともうけして、今度は社会貢献で行くんだというベンチャー経営者でもいい。また、文科省から出向で現場に下るというようなことも、兼業可能にすればできる。新しい風を吹き込む校長職を中学校に大量動員すれば、いろいろな教育改革、この給与制度改革もそうだと思いますけれども、それが実際に効いてくる。最初に言いましたけれども、そういうことをしないで制度だけ変えてもしょうがないんですね。その政策が効く、効かないということは、それを運用するマネジメントに100パーセント依存しますので、ぜひ新しい知恵と技術ある人材とセットで政策を投入するということをお勧めします。
 ちなみに、知らない方もいらっしゃると思うので、現在の公教育では、校長でさえも時間管理されている事実を証明するために、ここに出勤簿のコピーを持ってきました。非常にばかな話だと思うんです。なぜ管理職が時間管理されるのか、非常に疑問です。出勤するといちいち判こを押すわけなんですが、どうせ、いないときでも学校で起こるすべての事実に責任あるのが校長ですから、時間管理は必要ないでしょう。
 以上で、あとは質問等があればということで、いかがでございましょうか。

【田村主査】
 ありがとうございました。じゃあ、森先生。

【森 委員】
 この1-2の家庭と地域と学校の、これは、もうほんとうにこのとおりだと思うんです。今、全国の約10ぐらいの市町村で、教育リレーフォーラムをやると必ずこれが出てきます。原因は、教育委員会がほとんど9割方、学校教育委員会になっているんですよ。セクションはあるんだけれども、ほとんど教育長は学校の校長先生あがりだし、教育主事も学校から来ていますから、9割学校教育の仕事をしているわけです。家庭の教育力の充実とか地域の充実というのは、実は教育委員会より市長部局のほうがずっと強いんです。そこで、地域と家庭と学校の3つを結びつけるのは、教育委員会よりも市町村長が前面に出なきゃいけないという議論を今しています。
 だから、ご提案いただいたこのペーパーで、中学校が基盤になって地域と家庭を頑張って巻き込もうとしておられるけれども、ほんとうはそうではなくて、学校は学校教育、その地域と家庭はむしろ別の政策できちんとやって、それがうまく市長部局で道筋をつけるようにするのが本筋だと私は思います。そんなことで、全く同感なので。

【藤原 氏】
 ありがとうございます。それについては、2枚目の2-2-1になるんですけれども、今、和田中では、先ほど言いましたような体制で、100人から150人のボランティアを組織化して「地域本部(学校支援本部)」という名称で学校内に置いている。地域本部の事務局長というのは、ほとんど100日から150日学校に出てきているんです。それをきっちり仕事として認めてあげて、地域復興の非常に重要な仕事だということで、ちゃんと報酬を払ってあげたほうがいいと思う。例えば、年間90万円とか。それから、会計もすごく細かいので、ボランティアの会計ですから。杉並区がやっている学校サポーター制度という、1日何時間やっても2,200円というのを細かく運用している。そういう会計の仕事も、例えば年に30万円ぐらい払ってあげる。そうじゃないと、そういう有用な人材が学校の経営支援からスーパーのレジ打ちに流れていっちゃう。中学校だけでなくてもいいんですけれども、1校に総額で300万円から600万円ぐらい予算をつけていただいたら、そういう組織がつくれると。それと、そういう担当として教員を1人つけるのと、どっちがコストパフォーマンスがいいのかとか、そういう議論を是非していただきたいなと思うんです。

【森 委員】
 いずれにしても、家庭教育のほうにもっと文部科学省さんに出てもらいたいと私は思っていて、総合してやったほうがいいですよ、この3つは。どちらかというと、家庭の問題は厚生労働省系が強かったですけれども、もっと乗り出してもらいたいなというのが私の希望でございます。ちょっと早めに失礼します。すみません。

【田村主査】
 どうもありがとうございました。それでは、ほかにご質問ございませんでしょうか。どうぞ、新田先生。

【新田委員】
 3ページ、2-3-2のところで、報酬のインセンティブの話があったと思うんですが、プロ教師であれば今の報酬で妥当であるという話があったと思います。ということは、言いかえると、プロ教師にもなれない、マネジメントコースにも行かないという者に対しては、もっと下げるべきだとお考えなのかということが1点。また、それによって生まれたお金をどう運用するのか。
 それと、もう1点は、この中には出てきていないんですけれども、この部会で話し合う中心の一つに、教職調整額の話があるんですけれども、その調整額について先生のご意見をお聞きしたいなと思いまして。お願いします。

【藤原 氏】
 1点目については、現在の体系では下げるというシステムはないですね。だから、結局、上がらないということしかない。あとは、手当とかですよね。僕は基本給はあるところからは上げない、止まる、それによって、今度は一定の経験年数を経てプロ教師を目指す場合はそれが跳ね上がるような形がいいのかなと思う。下がるというのは制度としてありません。延伸という、ご存じだと思いますけれども、昇給を半年とか1年据え置く程度、それも3,000円ぐらいの話ですからね。それはそんなにいじれないでしょう。もう一つは、もうちょっと具体的に言っていただけますか。

【新田委員】
 教職調整額の……。

【藤原 氏】
 4パーセントの。

【新田委員】
 はい、そうです。

【藤原 氏】
 これも個人差なんですね。4パーセントというのは、残業見合いで、あるとき計算して4パーセントとしたと思うんです。例えば、うちの教員であれば、主幹でも教頭でもない普通の教員で、夏休みに30日出てきて部活の指導をする非常に熱心な人がいる。これは4パーセントどころの騒ぎじゃないと思います。部活の場合には、勝てば勝つほど土日がつぶれるというのがありまして、強くすればするほど、ほとんど休みがなくなりますので、そういうことをどうやって評価するか。例えば、調整をなくしてしまってタイムカードにすればいいんじゃないかという議論があるらしいんですが、これもなかなか難しい。どこまで仕事と認めるのか。仕事をできない新人がだらだら残って9時、10時までいるという現実だってあるわけなので。だから、僕はある程度の見合いで何パーセントとする以外ないんだろうなと思います。

【田村主査】
 どうぞ細川委員。

【細川委員】
 校長がかわれば学校が変わるという視点でお話しをいただいたように思うんですが、3万校の中学校のうち1割の3,000人の……。

【藤原 氏】
 すみません、中学校は1万校です。

【細川委員】
 ごめんなさい、1万校のうちの3割の3,000人を民間校長にということなんですが、学校教育機関という組織体に向く3,000人という人数が……

【藤原 氏】
 現実的かどうか、ですね。

【細川委員】
 現実的かどうかというふうには思うんですが、そういう形で、ある意味、リクルート的に─リクルートという会社じゃなくて、手法としてのリクルート的に校長を採用して就任していただいた場合、将来どういう給与体系になるかまだわかりませんが、その給与体系に当てはめてその校長に報酬を払うのか、あるいは、5年契約幾らみたいな、あるいは年俸制的な形で校長にお払いするのかというあたりをどういうふうにお考えかお聞かせいただけますか。

【藤原 氏】
 わかりました。10年で3,000人というのは、全国の話で言っているんです。なぜ、3,000という根拠があるかというと、僕は多分、少子化で中学校の数は将来6,000~7,000校ぐらいに落ち着くんじゃないかと思っている。そうすると、半分を民間、半分を教員からあがった人という形にしたらどうかなと。
 リクルートは可能だと思っています。10年でと申し上げているので、1年で300人です。そうすると、東京都というのが大体1割市場ですから、東京都で30人ぐらいです。30人の中途採用って、トヨタや日産でなくても、中堅の優良企業が毎年命がけで採用している数なんですよ。ですから、不可能ということはないでしょう。
 仮に、10年間で、お前やってみろと言われたら、僕一人で全国を歩いて、どういう報酬をもらうかによりますけれども、可能だと思います。なぜなら、教育界に対する関心が以前より数段高まっているということ。それから、一生やれというわけじゃなく、5年間、日本の教育の復興のために力を貸してほしいということをお願いすれば、力を貸してくれる志ある人は、ここから10年間はいると私は確信します。
 給与につきましては、非常にざっくばらんに言いますと、私は50歳で1,100万円ぐらいです。もし、私がバリバリにビジネスをやりますと、大体3,000万円から数千万円ぐらいは稼ぐんですよ。ちょっと言い方が大胆ですが、そういう人たちに校長をやってほしいと言うためには、1,000万円になっちゃいますけどいいですかというのは厳しい。なので、「兼業」を可能にすべきだと私は主張しているわけです。
 文科省の一部の方は、保護者がそういうことを許さないんじゃないかと思っていらっしゃるようなんですが、それは間違いです。全国の講演会で保護者にいろいろ聞いていますけれども、マネジメント能力のない校長が校長室に日がな一日ずっといるよりは、マネジメント力のある校長が半分いてくれたほうがいいとみんな言っていますから。その学校の生徒たちの学びを豊かにするために、外にネットワークの広い校長だったら、すべての保護者は歓迎ですよ。実際には、そこに副校長もいて、あるいは主任もいて、いろいろな事故の対応とか普段から訓練しているわけですから。
 兼業を可能にすることで、この件はリアリティが飛躍的に上がると思っています。

【田村主査】
 ありがとうございました。どうぞ、吉野先生。

【吉野委員】
 今の点と関係するんですけれども、そうしますと、やっぱり校長の評価をうまくしませんとメカニズムが働かないような気がしますし、それから、新しい方が入られても、そこでスクリーニングをかけられる必要があると思いますので、そのマネジメントがいいというのをだれがどのように評価するシステムがあったらいいかというのが第1番。
 2番目は、文書が多いというのは、我々大学でもそうなんですけれども、いろいろなレベルのところから同じような質問がいっぱい来るわけですが、それに対しては、やはりどういう形でお願いしたらいいでしょうか。減らせというよりは、出していただくほうが、ほかにどういうような種類の文書が出ていてというようなことを見ていただかないといないのかなとも思うんですが、いかがでしょうか。

【藤原 氏】
 校長の評価についてですが、例えば東京の場合には、もう半分以上の区で学校選択制(希望制)が始まっています。学校希望制というのは、杉並区の場合には5年たっていますけれども、中学で全体の2割ぐらいが動いていまして、大体落ち着いています。実力を発揮すればそれにこたえるような形になっています。ですから、マーケットが校長を評価するという部分があります。
 それから、実際、教育委員会と話をしていて、例えば、私自身のほかの校長に対する評価と、教育委員会が下している評価とがずれていたことってあまりないんです。同じように学校評価というのがありますよね。その中で第三者評価というのがあって、うちももう3年前から生徒から授業評価をとっています。この授業の評価で生徒がつける点数が、職員室内でこの先生は授業がうまい下手という評価と、それほどギャップがあったこともない。だから私は、ある程度、評価のリテラシーを教えることは大事ですけれども、生徒とか保護者は時間がたてば選べるようになってくるし、評価の視点を持ってくるので、そういう装置が働いていれば大丈夫だと考えています。おそらく現在、校長の中でどの人がどうかというのは、教育委員会は性格に把握しているんじゃないですか。
 それから、文書につきましては、本来私企業では、IT化を行う際、その前にBPRと言いまして、ビジネス・プロセス・リストラクチャリングですね、要するに、いらない仕事を捨てて文書を10分の1にするということをやるんです。それをやってからIT化するのがまともな進め方なんですけれども、それをしないで教育委員会なり学校がIT化を焦ってしまったために、かえって文書が増えている。それはなぜかというと、文科省や都教委から来た文書で、例えば、前は20枚あったら67校にコピーしていちいち配付するのは区教委としては嫌だったと思うんです。ところが、今、ボタン一発でファイル転送できちゃうものですから、末端に文書の束がドーンとくる。ボタン一発で行っちゃうからなんですよ。そういう意味では、教育改革をやる前に、まず業務改善を教育界は先にやるべきだった。おくれちゃったので、しょうがないですね。

【田村主査】
 どうぞ、帯野委員。

【帯野委員】
 すばらしいお話をありがとうございました。藤原校長先生みたいな先生が増えてくださればと思うんですが、私も学校に社会を取り入れるという意味で、民間校長は大賛成です。しかし、実際あまりうまくいっていない例が多く、表向きはセクハラなどいろいろありますが、おそらくコミュニケーションがうまくいっていなかったんじゃないかと思うのです。そういう点で、民間でリーダーシップをとれる人でも、学校に来るとリーダーシップがとれないのか。あるいは、民間でリーダーシップをとれない人を教育委員会は人選しているのか、人選の難しさについてお伺いしたい。それから教育委員会へのアドバイスがあれば教えていただきたい。
 あともう1つ、適切な人が来てもリーダーシップがとれないのであれば、やはり大きな学校の場合は、組織がまだきちんとできていないんじゃないかと。学校を民間に例えると、社長がいて、副社長がいて、あとは平社員という感じですよね。やはり、その間に専務がいて、常務がいてという風に、もう少し管理職のポストを増やして、ヒエラルキーをつくったほうがいいのかどうか、この3つについてのアドバイスを。

【藤原 氏】
 非常に言いにくい話なんですが、言ってしまいましょう。経営資源には人、金、物、情報(コミュニケーション)、時間がある。人、金、物については、例えば私の場合、人事権は都教委にあり、それから物と金の権利はほとんど区教委にあるわけです。そうすると、人、物、金をほとんどいじれない。じゃあ、何をいじるかというと、コミュニケーションと時間をマネジメントするわけです。
 例えば、和田中であれば、授業を中学校なのに45分にしてしまって、それで週32コマに持っていって、英、数、国、理、社のすべてを1年生では1コマ多くする。これが現在の法制度下でできるわけなんです。実際、指導要領に反してもいない。時間のマネジメントの例を示しましたけれども、そういうコミュニケーションと時間のマネジメントにすぐれている人でないと、新しい時代の校長としては通用しないと思います。
 要するに、大手の会社や銀行にいた方というのは、お金と人をマネジメントして部下を管理していた人でしょう。ところが、教員というのはほとんど偉くなりたいと思っていないわけですから。要するに、私企業では偉くなりたいだろうと昇進で釣って、それでマネジメントするわけです。あとは、ボーナス欲しいだろうとお金で釣る。でも、お金でも釣れないし、偉くなりたいだろうという権限でも釣れない。そうすると、そういうことでずっとマネジメントしてきた人は行き詰まってしまう。それより、コミュニケーションと時間をマネジメントしたことのある人材というのは、どういう業界に多いかというと、広告とかコミュニケーション、マスコミとか出版、そういうところなんです。第三次産業、サービス業のほうが私はいいと思う。はまるんじゃないでしょうか。
 民間校長とかもてはやされると、すぐ数値管理とか、組織をピラミッドにするみたいなことを言うんですが、そういうマネジメントというのは非常にレベルが低い。とにかく数値目標を立てて組織をピラミッドにするだけでマネジメントと言うんだったら、だれでもマネジメントできるわけです。そんなことでは通用しなくても当然ですね。形のないものを形づくっていかなきゃならないわけですから。
 それから、リクルートしてきた人材を校長にはめるときに、高校は非常に難しいと思う。高校って、保護者の関心は出口一本ですから。この部会長の田村さんが一番苦労していらっしゃると思うけれども、東大に何人入れるとか、上智に何人入れるか、入試の専門家でなければ教員も尊敬しないでしょう。また、小学校の場合は、3分の1とか半分は保育という面がありますので、小学校はやっぱり教育の専門家の方が当たったほうがいいと思っています。
 だから、民間(というより、学校以外からの人材登用)が一番効くのは中学校ですよ。今、中学校の校長が一番問題があって、非常に中途半端。だから、生徒たちが相対したいのに、自分にこたえてくれる大人がいないみたいな、そういう苛立ちがある。だから、全国の中学生は、今、学校に対して「どこかウソ臭いな」と思っちゃってるわけ。そこでやはり、大人のすごさを見せつけるという役柄を果たせる人材を大量投入すべきだと。中学生はこどもの終わりで、大人の始まり。そのハザマで魂がゆれてますから。
 中学が一番効くと思いますよ。

【田村主査】
 ありがとうございました。君島先生どうそ。

【君島委員】
 先ほどもちょっと出たんですが、1ページの文書事務の点でありますけれども、私も現場にいましたので、これにはほとほとまいってしまっているということで、もう少し精選してもらいたいなということがあるんですけれども、やはり民間企業と学校、特に公立学校との違いを見たときに、最近の保護者との関係でいちゃもんが多いと。無理難題を押しつけてくるというのが非常に多いと思うんですよ。ですから、その辺について学校としてきちんとした、あらかじめその対応を決めておかないといけないということから、文書の整理の仕方で、その辺のところ、トラブルが生じたときに切り抜けることができるだろうと、そういう意味での文書が幾つかあると思うんですね。
 先ほどの、文書が多過ぎて困っているよという例の一つとして、給食のあれを回していただいたんですが、私の感じでは、あの程度のことはやっておいたほうがいいのかなと。

【藤原 氏】
 あれは、動線計画まではやり過ぎじゃないかという例に過ぎません。

【君島委員】
 え?

【藤原 氏】
 すみません、動線計画の図だけをお持ちしたんです。何をどういうふうに運ぶか、ご飯と野菜がクロスしてはいけないみたいな動線計画を毎日描くんです。もちろん、給食には必要な書類もあるんですけれども、先ほど回したのは、野菜をどう運ぶ、ごはんをどう運ぶという動線計画をいちいち色鉛筆でやっている図です。O-157以降でしょうね。何かクロスしたら、そこで細菌を追えなくなるという発想ですかね。

【君島委員】
 わかりました。ちょっと勘違いしました。その私の勘違いでいくと、先生方が授業に対して学習指導案をつくるとか、年間計画を立てるとか、その辺もいいんじゃないかみたいな方向に行ったとしたら、これはとんでもないことであるので、その辺のところを確認したかったということであります。

【藤原 氏】
 わかりました。おっしゃるとおりです。これから団塊の世代が続々と暇になるじゃないですか。お金を持っていて、余裕もあって、孫がいるわけです。おそらく一番孫思いですよね。弁護士にも友達がいて、ネットを使いこなせるし、クレーム言うのは学生のころから慣れているわけです。そういう人たちが大量に輩出されますから、今、幼稚園ぐらいの子が小学校に入ったときに、この団塊世代のおじいちゃん、おばあちゃんが一番怖い。だとすると、この人たちを外にいる人として敵に回しちゃうか、それとも、中に入ってもらって一緒に学校経営をするかで、100パーセント学校のパフォーマンスが変わってくる。なので、ここに書いた3番目の和田中方式というのは、その地域の、特に団塊の世代以降の大人たちを巻き込んで学校を共同経営するスタイルにこれから持っていかないと、公立は厳しいですよと。永遠にクレームを言われますよという話なんです。

【田村主査】
 ありがとうございました。
そろそろ時間なんですが、あとご質問よろしいですか。
じゃあ、私から最後に一つ。この間お伺いしたことを覚えておいていただいて、また同じような質問をすることになるんですが、2つあります。
1つは、給与体系の問題で、下がらない前提でというお話があったんですけれども、体系が変われば下がることもあり得るわけです。そういうことについてどうお考えになっているか。
 それから、2点目は、一番やりやすいのは、管理職の給与を下げるのが一番やりやすいんですけれども、成果が上がれば上げるけれども、上がらなかったら下げることもあるということが校長職の場合にあり得るのか。実感でもってお答えいただけますか。

【藤原 氏】
 まず、2番目の質問から。管理職の場合には当然減給もありだと思います。例えば校長をやらせてみて、これは無理だと、校長になるにあたわずと判断したら、副校長なのか一教師なのかに降格もあり。給料が下がるリスクを校長はとるべきだと思います。ただし、校長、教頭の年俸の見直しも含んでですよ。
 こんどは、40代以上のプロ教師、あるいは一般の教員がどうなのかという話になると思いますけれども、僕はプロ教師にならない人が、あるところで(30台の年収で)とまって、例えば600万円なら600万円台でとまって、そのままというのはあってもいいかなと。これをいちいち下げるという努力はしない。
 最後に、プロ教師については、プロですから、ほんとうだったら年俸で毎年契約更改をやるぐらいの感じだと思います。ただ、学校の中では業績というのがはっきりしづらい面が多いので、毎年の更改は無理があるでしょう。プロというのであれば、下がるのも含めて考えるべきだと思います。そういうふうに2段階に分かれていく。30代の年収で基本は止まり、あとは手当てだけが微増していく教員。これは給与減はないが、指導力不足なら当然40代前に解雇もあり。それらとは別に、30代後半で決断して40代以降管理職になるかプロ教師になる人。管理職は降格も減給もあり。リスクをとる分、資料に書き込んだように、教頭で1,200万円くらいまで、校長で1,500万円くらいまでの年収にするべきでしょう。プロ教師は年収1,000万円くらいまで上っていくが、減給もあり。そんなふうに分かれていく感じじゃないかな。

【田村主査】
 ありがとうございました。それでは、司会が大変手際が悪くて時間をオーバーしてしまいまして、藤原先生にもご迷惑をかけました。

【藤原 氏】
 いえ、とんでもないです。

【田村主査】
 おそくなって申しわけございません。皆様、委員の先生方にもおそくまでおつき合いいただきまして、ありがとうございました。一応、きょうはこれで閉会ということになります。ほんとうにありがとうございました。事務局のほうで何かありますか。

【藤岡室長補佐】
 次回の日程についてご説明をさせていただきたいと思います。お手元の資料10をごらんいただければと思います。
 次回の開催予定、資料10に書いてありますとおり、9月13日水曜日の10時からとなっております。お昼ごはんを挟みまして16時半までという長時間になっておりますが、委員の皆様方におかれましては、どうぞよろしくお願いいたします。
 あと、机の上に2種類のものをお配りしております。先ほど申し上げました9月13日水曜日に開催されるワーキングの出欠の確認表でございます。こちらにつきましては、できれば本日ご提出いただければと思っております。
 また、もう1枚目、一覧表になっておるもの、教職員給与の在り方に関するワーキンググループの日程確認表がございます。10月以降のご予定につきましてご記入いただければと思っております。こちらにつきましては、本日ご提出いただいても結構ですし、また、先のご予定でございますので、ご予定確認の上、まことに恐縮ですが、9月7日木曜日ぐらいまでにファクスにてご回答いただければと思っております。以上でございます。

【田村主査】
 それでは、ほんとうに今日はありがとうございました。

お問合せ先

初等中等教育局財務課