資料6 改革の具体的方策(議論のたたき台と検討の視点例)

下線は、前回示した議論のたたき台 ○は、第2回ワーキンググループの議論を踏まえて、追加した検討の視点例

 児童生徒や保護者の尊敬と信頼を得られる質の高い教員を養成・確保するため、教員免許制度の改革、とりわけ教員免許更新制の導入に当たっては、教員としての適格性の確保に留意しつつ、教員が教職生活の全体を通じて、専門性の絶えざる向上を図ることができるようにする点に主眼を置いて、例えば、以下のような方策を検討してはどうか。

(1)教員免許状の授与の仕組み

案1

  • 例えば教育実習の際に、教員としての適格性を適切に確認した上で、免許状を授与する。

案2

  • 一定の勤務実績により、教員としての適格性を適切に確認した上で、免許状を授与する仕組みに改める。
  • 具体的には、大学で学士等の学位を取得し、教職課程を履修した者に対して授与する新たな免許状(一定の有効期限があり、更新不可)を創設し、その取得後、一定の勤務経験を積み、当該期間の勤務実績を評価した結果、適格性に問題がないと判定された場合に、正規の免許状を授与する。

案3

  • 案2に加えて、教職課程の履修状況を適切に確認した上で、免許状を授与する仕組みに改めるため、新たに教職課程の履修者を対象とする試験を実施する。

○ 教員免許状が、教科等の指導力や適格性等を含めた教員としての全体的な資質能力を確実に保証するものとなるようにするためには、現行の免許状の授与の仕組みを見直すことが必要ではないか。

○ 教職課程の履修者を対象とする試験の実施は、教員志願者の専門性を確実に保証するとともに、大学の教職課程を学校現場のニーズに対応したものに改善する上で意義が認められる。
 他方、大学の教職課程の位置づけ、教員志願者や大学の教員養成教育への影響、教員採用選考試験との関係等、検討すべき課題も多いのではないか。

○ 教員を目指す学生に自己の教職への適性を考えさせるとともに、大学側が履修者の教職への適格性を確認する機会とするため、大学の教職課程全体を通じて、キャリア教育を実施することについて検討する必要があるのではないか。

(2)教員免許更新制の制度設計

1.更新の要件(更新制の制度設計の基本)

 教員免許更新制は、基本的に、免許状に有効期限を設け、一定の要件の基で更新の可否を決定する制度である。

案1

  • 更新の要件は、有効期限内における一定以上の勤務実績、適格性の判定及び専門性向上の確認の3つとする。
  • 適格性の判定は、有効期限内における勤務実績を評価することにより行う
  • 専門性向上の確認は、有効期限内における一定の講習の受講状況や自己研鑽の状況を評価することにより行う。

案2

  • 更新の要件は、有効期限内における一定以上の勤務実績及び適格性の判定の2つとする(内容は案1と同様)。
  • 更新の要件とはしないものの、免許状保有者は有効期限内に一定の講習の受講に努めなければならないこととする。また、更新時に、有効期限内における一定の講習の受講状況や自己研鑽の状況を通して、専門性向上の確認を行う(その評価に応じて、所定の単位を付与する(後述の4参照))。

案3

  • 免許状の種類や更新回数等に応じて、更新の要件に差異を設けることとする(例えば、専修免許状については、専門性向上の確認は行わない等)。

1)教員としての適格性を確保するための制度とする考え方

○ 現在、条件附採用期間や分限制度により、教員としての適格性を判定する仕組みがある中で、新たに免許状に有効期限を付し、一定期間ごとに適格性を判定するという更新制を導入することは、例えば、次のような点で意義があるのではないか。

  • 現行の分限制度は、法律又は条例の定める事由に該当する場合に限り適用されるため、何らかの問題が生じた後に、その適用が検討されることが一般的であるが、更新制を導入した場合、全ての免許状保有者について、一定期間ごとに一律に適格性を判定することが可能となることから、問題の早期発見と拡大防止につながることが期待できる。

○ 一方、教員としての適格性を判定し、問題があるとされた場合には、免許状を更新しないこととする場合、例えば以下のような課題があるのではないか。

  • 適格性に問題があるという基準をどのように設定するのか。また、適格性の判定を公正中立に行うためには、どのような判定方法等とすることが必要か。
  • 分限処分の対象である地方公務員法上の適格性を欠く場合等との関係をどのように整理するのか。

2)教員としての専門性向上を図るための制度とする考え方

○ 現在、上進制度や現職研修など、教職生活を通じて教員としての専門性が向上していくという仕組みがある中で、新たに免許状に有効期限を付し、一定期間ごとに専門性向上を確認するという更新制を導入することは、例えば、次のような点で意義があるのではないか。

  • 教員自身に常に緊張感を持たせ、日常的に自己研鑽に励むことを促すこととなり、更新を経るにしたがい、教員一人ひとりの専門性はもとより、教員全体の専門性が確実に向上することが期待できる。
  • 研修機会(講習の受講機会)の拡充等により、上進制度を活用した上級免許状の取得が格段に進むとともに、更新制と連動させることにより、現職研修の活性化等の効果が期待できる。

○ 一方、教員の職責を考慮した場合、大学4年間で教員として十分な資質能力を身に付けた者を送り出すことは難しく、教職生活全体を通じて資質能力の向上を図っていく必要があるとの前提に立ち、一定期間内に専門性が一定レベルまで達しない場合には、免許状を更新しないこととする考え方もあるが、これについては、例えば以下のような課題があるのではないか。

  • 学部卒業者が教員採用者の中心である現状において、学部卒業では教員として十分な資質能力を身に付けることは難しいとの前提に立つことは、児童生徒や保護者はもとより、広く社会に対して不安や不信感を与えないか。
  • 一定期間内に到達することが期待される専門性のレベルについて、具体的な基準を設定することができるか。また、専門性の判定を公正中立に行うためには、どのような判定方法等とすることが必要か。
  • 更新により再授与される免許状が同一免許状である場合、更新回数に応じて、免許状が保証する専門性が異なることとなるが、資格制度として妥当か。

3)その他

○ 適格性の確保や専門性の向上以外の観点として、例えば、現行の免許状の失効や取上げ等に至らないレベルで、教職や免許状に対する信頼を失わせるような場合に免許状を更新しないこととする考え方もあり得るのか。

2.免許状の有効期限

案1

  • 免許状の有効期限は、全ての免許状について、一律に5~10年程度とする。

案2

  • 免許状の有効期限は、免許状の種類(専修免許状、一種免許状等)により差異を設ける(例えば、専修免許状は10年、一種免許状は5年等)。

案3

  • 免許状の有効期限は、更新回数により、差異を設ける(例えば、最初の更新時までは5年、2回目以降は10年等)。

○ 教員の資質能力は養成・採用・研修の各段階を通じて向上していくものであり、免許状の有効期限や更新制の在り方を考える場合も、教員のライフステージの区切りを考慮する必要があるのではないか。

3.適格性や専門性向上等の判定基準・方法

  • 適格性の判定は、免許状保有者に共通に求められる最小限必要な資質能力を有しているかどうかを基準として行うこととしてはどうか。
  • 専門性向上の確認は、有効期限内における一定の講習の受講状況や自己研鑽の状況を基準として行うこととしてはどうか。
  • この場合、適格性の判定及び専門性向上の確認のそれぞれについて、具体的な判定基準・方法を定めておくことが必要ではないか。
  • 一定以上の勤務実績については、少なくとも有効期限の半分以上の期間についての勤務実績が必要ではないか。

4.更新制と上進制度等との関係

  • 教員は教職経験を積むことで専門性が向上するという現行の上進制度の理念を踏襲し、例えば、有効期限内における一定の講習の受講や自己研鑽の状況の評価に応じて所定の単位を付与することとするなど、更新制と連動して上級免許状の取得が促進されるような仕組みを設けることとしてはどうか。
  • この場合、一定の講習としては、大学等が開設する講習のほか、現職研修(初任者研修、10年経験者研修等)についても、免許制度上の評価において専門性向上が期待できるものは対象とすることにより、更新制と現職研修とが相まって、専門性の一層の向上(上級免許状の取得)が促進されることとしてはどうか。
  • 同様に、教員の自己研鑽についても、免許制度上の評価において専門性向上が期待できるものについては、上級免許状の取得につながる単位付与の対象に含めてはどうか。

5.免許状の失効の効果

  • 免許状が失効した場合、引き続き教職にとどまることはできなくなるが、その場合の教員の身分上の取り扱いについては、任命権者(私立学校の場合は雇用主)の判断によるものとして、免許状の失効とは切り離してはどうか

6.免許状の失効後の再授与の在り方

案1

  • 免許状が失効した場合、どのような理由であっても、一定の要件(例えば講習の受講等)を満たすことで、免許状の再授与の申請を可能とする。

案2

  • 一定以上の勤務実績がないため、免許状が失効した者等については、案1と同様とする。
  • ただし、適格性の判定により失効した者については、一定期間(例えば、3~5年程度)を経過するまでは、再授与の申請は認めないこととする。

7.免許状の種類ごとの更新制の取扱い

案1

  • 更新制は、全ての普通免許状について同等に適用する。
  • 特別免許状も更新制の対象とし、有効期限等を見直す。
  • 臨時免許状は、現行と同様の取扱いとする(有効期限3年)。

案2

  • 更新制のうち、適格性の判定については、全ての普通免許状について、同等に適用する。
  • 一方、専門性向上の確認は、免許状の種類に応じて差異を設ける(例えば専修免許状については、適用の対象外とする等)。
  • 特別免許状及び臨時免許状の取扱いは案1と同様とする。

8.いわゆるペーパーティーチャーを含む一定以上の勤務実績がない者の取扱い(再掲)

  • 有効期限内に、一定以上の勤務実績がない者については、免許状が失効することとする。
  • ただし、一定の要件(例えば、講習の受講等)を満たすことで、免許状の再授与の申請を可能とする。

9.複数の免許状を保有する者の取扱い

  • 複数の免許状を保有する者については、更新制の導入により、過重な負担が生じないよう、例えば、適格性の判定は同じ勤務実績を基に行うこととするなど、更新要件等において工夫を講じることとしてはどうか。

10.現に免許状を有する者(特に現職教員)の取扱い

案1

  • 更新制の適用の対象外とする。

案2

  • 更新制の適用の対象外とするが、現職教員について、一定期間ごとに適格性や専門性向上の確認を行うような仕組みを設けることについて検討する。

(3)教員免許状の種類の在り方

1.二種免許状の取扱い

  • 質の高い教員を養成・確保するという改革の趣旨及び近年の教員採用の動向等に鑑みると、一部の学校種における二種免許状の在り方について、検討する必要があるのではないか。

2.専門職大学院の修了者に授与する免許状

  • 教員養成の専門職大学院が設置された場合、修了者に授与する免許状として、新たに専門職免許状(仮称)を創設する必要があるのではないか。この場合、現行の専修免許状との関係について整理(専門職大学院の教育課程の内容を踏まえて整理)することが必要ではないか。

(4)教員免許状と教員の処遇との関係

  • 校長・教頭等について、基本的に専修免許状(又は専門職免許状(仮称)を有することを資格要件とするか。
  • 更新制の導入に伴い、専門性の向上が確認できた者等については、人事・処遇等において配慮するような措置を講じることが必要ではないか。

(5)現行の教職課程の改善・充実(新規)

  • 各大学において、教員養成・免許制度の改革の理念を踏まえた教員養成が行われるようにするため、教職課程の認定に係る審査(審査基準・手続き等)の在り方を見直すことが必要ではないか。
  • 大学の教職課程を評価する新たな仕組み(例えば、外部評価機関の設置)を検討する必要があるか。
  • 教職課程として認定された課程が、認定基準に違反すると認められる等の場合には、例えば勧告・取り消し等の措置を行うことを検討する必要があるか。

(6)その他

  • 教員の現職研修や自己研鑽は、本来、更新制における専門性向上のための講習とは目的・位置づけ等が異なるが、これらの中でも、免許制度上の評価において専門性向上の効果が期待できるものについては、上級免許状の取得につながる単位付与という形で、免許制度(上進制度)上、適切に評価してはどうか(再掲)。
  • 義務教育の在り方や教育課程の基準全体の見直しに係る検討に対応して、教員養成・免許制度の改革の検討が必要になるのではないか。

お問合せ先

初等中等教育局教職員課

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