資料3 コミュニティ・スクールに関するこれまでの主な意見等

1.学校運営協議会制度(いわゆる「コミュニティ・スクール」)の意義や成果をどう考えるか。

● 学校運営協議会制度の成果として、学校が地域に情報提供を積極的に行うようになった/特色ある学校づくりが進んだ/地域が協力的になった/学校が活性化した等の成果が挙げられている。
● 学校運営協議会制度(いわゆる「コミュニティ・スクール」)は、保護者や地域住民が一定の責任を持って主体的に学校運営に参画する仕組みとして、これまでの成果を踏まえ、その積極的な導入の促進を図るべきではないか。

<学校運営協議会制度の意義>

○ 教育は、学校と家庭の両輪で進めるものである、ということが言われてきたが、現在では、学校・家庭・地域・行政が一体となって、四輪駆動で進めていくべきものであり、それがコミュニティ・スクールの理念である。
○ 学校運営協議会は、保護者や地域が学校に意向を伝えるとともに、学校からも保護者や地域に意向を伝える、相互に交流できるシステムである。
○ 地域・家庭の教育力の充実という観点について十分な環境整備ができていなかったという指摘があることも踏まえ、コミュニティ・スクールを進めていく必要がある。
○ 学校運営協議会制度は、親や地域住民が学校に意向を伝える仕組みとしてメリットが大きいものであり、基本的には推進すべきものである。どうすれば学校運営協議会制度が全国に広まるのか、という検討をしていくことが必要である。
○ 学校運営協議会の制度化以前より、学社連携・融合といった動きの中で、学校と地域のつながりを深めるということが地域社会の中で進められ、学校運営協議会につながってきた部分もある。
○ 学校運営協議会を設置する学校に指定される経緯を考えると、地域と学校の関係が十分できてから指定をしていくという側面もあるし、指定を受けたことを契機に地域との関係をうまく作っていく努力をするという側面もある。
○ 各地域、学校により、コミュニティ・スクールとしての指定までには様々な経緯があり、コミュニティ・スクールの実態は、非常に多様である。
○ 地域によっては、学校選択制で学校改善を図ろうとする地域もあれば、コミュニティ・スクールで地域力を活用していく地域もあり、どのような選択をするかは、あくまでもそれぞれの自治体の権限に属するものである。
○ 現状として学校運営協議会を取り入れているのが特定の地域に偏っているため、取り入れていない地域の理由を分析することによって、制度の性格を明らかにすることができるのではないか。

<学校運営協議会制度の成果>

○ 平成20年4月までに、343校の幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校がコミュニティ・スクールの指定を受けている。
 <第1回作業部会 事務局説明資料より>
○ 導入校で成果として考えられていることには、「学校が地域に情報提供を積極的に行うようになった」「地域が協力的になった」「学校が活性化した」などの要素が高く評価されている。
 <第5回作業部会 佐藤日本大学教授説明資料より>
○ 「地域が活性化」「地域教育力向上」「家庭教育力向上」などの校外環境については、十分な成果を感じていない関係者も多く、学校運営協議会を置いたから地域が直ちに活性化するというわけではなく、一定の年数が必要なのではないか。
 <第5回作業部会 佐藤日本大学教授説明資料より>
○ 全般的に、指定から数年を経ている学校については肯定的な回答が多くなっており、ある程度実績を重ねた結果、成果が上がっているものと考えられる。また、校長の意識として、学校や保護者・地域の意向により指定を受けたと認識されている学校の方が、教育委員会や首長の主導で指定を受けたと認識されている場合よりも肯定的な回答が多く見られる。
 <第5回作業部会 佐藤日本大学教授説明資料より>
○ コミュニティ・スクールがうまく機能している地域では、学校運営協議会で出された提案などを具体的に実行する下部組織、実行組織を持っている場合が多い。学校運営協議会が会議を行っているだけの場合にはあまり成果が上がっていない傾向があるのではないか。
○ 例えば学校支援ボランティアが盛んな学校では、地域の方が日常的に学校に出入りしているため、学校や教員のことをよく理解し、教員も地域のことや制度趣旨をよく理解しているため、学校運営協議会における提案が実現しやすいようである。

2.学校運営協議会制度の課題と今後の方向性をどのように考えるか。

● 学校運営協議会を置くメリットが学校側に理解されていないという意見もあり、積極的な情報発信を行っていくことが必要である。
● 学校運営協議会の法律上の権限(学校運営方針の承認、教職員の任用に関する意見の申出等)が十分に活用されていない場合がある。学校運営協議会の役割として、法律上の権限を活用し、保護者や地域住民の意見の反映を図るという機能をもっと積極的に打ち出していくべきである。
● 教職員の任用に関する意見の申出については、特定の教職員を排除するための仕組みとして誤解されているために、活用されていない面もあると考えられる。効果的な活用例を示していくべきである。
● 学校運営協議会の運営を継続し発展させるための工夫(教職員の人事、活動資金の調達・運用、教育委員会の支援等)について、先進的な取組例を見極めつつ、さらに具体的な検討を行うべきである。

<メリットの情報発信>

○ 制度を導入していない学校からすると、学校運営協議会制度のメリット・デメリットが見えにくいという意見もあるため、この制度により、教育の内容・質がどのように変わったのかといったメリットを情報発信していくことがもっと必要である。
○ 学校運営協議会制度を進めていくのは子どもたちのためである。指定を受けている学校について、例えば、子どものためになる教育課程を実現できているのか、教員が育っているのか、という観点や、実際に子どもたちがどう育っているのかという観点から、しっかりと見る必要がある。
○ 学校運営協議会制度を導入したことによる成果なのか、合わせて実施している学校支援地域本部事業等による成果なのかが明確に判断しにくい場合がある。地域や学校の特性を考慮し、どのような場合にはどのような成果、特色が出やすいのかを整理することはできるのではないか。

<学校運営協議会の権限の活用>

○ 校長に意見を述べる、教職員の任用について意見を言うといった制度上の趣旨よりも、地域が学校を支援するという観点から制度を活用している場合が多いのではないか。
○ 教職員の任用に関する意見が出された学校の割合は2割に満たない。意見の内容は、若い教員が欲しい等の「任用に関する一般的要望」が多い。
 <第5回作業部会 佐藤日本大学教授説明資料より>
○ 教職員の任用に関して意見を言うためには、日常的に学校の様子を知らないと難しい。学校運営協議会の下におかれた部会の人が、頻繁に学校に出入りしているような場合には、教員の動きがよくわかっている。そのような学校では学校運営協議会の任用に関する意見が通ったりするようである。
○ 教職員の任用に関する意見については、特定の教職員を排除したりするための仕組みとして誤解されているために、活用されていないという面もあるのではないか。
○ 任用に関する意見を活用した例として、小学校で学校支援ボランティアの活動をしていた学生が教員採用試験に通ったため、都道府県教育委員会に意見の申出をして、そのままその小学校に採用することができたという例がある。
○ 学校運営協議会が「教職員の任用に関する意見」を述べることができるという点をアピールし、活用しなければ、制度自体の目的を達成できないのではないか。
○ 地域との連携であれば、学校運営協議会制度をとらずとも可能である。学校運営協議会の役割を、学校運営に保護者や地域住民の意見を反映させるという機能を強調した上で各地域へ広めていくべきではないか。
○ 学校運営協議会をうまく運営していくためには、最初は「学校の支援活動」から始まり、次に「学校運営の基本方針の承認」をしていくようになり、そして最終的には「教職員の任用に関する意見」も述べていくというように段階を追って活動に取り組むという考え方があるのではないか。

<体制・組織の維持強化等>

○ 学校運営協議会が機能するか否かは、管理職の意識によってかなり異なってくると思われるので、管理職の果たす役割や管理職の人事は大きな要素である。
○ 指定年度当初はそもそも学校の中で教職員の共通理解が十分でない場合がある。2年目になると、今度はある程度要領を得てきて、そして前年度の積み重ねの上に活動が充実してくるのではないか。
○ 学校運営協議会の委員と、(委員ではない)学校の教員とが懇談していく場を持ち、教職員の意識の向上を図っている学校もある。
○ 学校運営協議会を設置する学校を対象とした調査によると、コミュニティ・スクールが教育委員会に期待する役割として「予算措置」がもっとも多くあげられている。
 <第5回作業部会 佐藤日本大学教授説明資料より>
○ 学校運営協議会の活動が盛んになれば、活動するための資金が必要になるので、これからはファンド(活動資金の調達・運用方法)の問題を検討しなければならないのではないか。
○ 活動資金については、NPO化した団体がお金を管理する仕組みをとることも考えられる。
○ 地域の協力を得て行う施策は教育に限らず多い。地域を取り込むことは非常に重要だが、結局は特定の意欲のある人だけが動いていて、頼り切っているという状況がある。
○ 予算や権限、その他の工夫により、その組織を継続していくための仕組みが必要である。

<教育委員会の役割>

○ コミュニティ・スクールにおける教育委員会の役割を明確にするべきである。
○ (上の意見に関連して、教育委員会の役割が環境整備、支援ということであれば)児童・生徒数に応じて予算が配分され、費目を学校で決めることができるなど、学校が予算の裁量権を持つことができるようにするべきである。
○ 行政は、学校では対応できない予算の獲得など、条件整備の役割を担うべきである。
○ コミュニティ・スクールにおいて、教育委員会の役割として、学校への財政的支援、人的措置、人材登用への助言等が考えられる一方で、行政の視点からすると、個別の学校にコミュニティを中心とした自立した経営を任せることは、実際は非常に難しいものである。そこにコミュニティ・スクールの運営の難しさがあるのではないか。
○ 学校・家庭・地域・行政が一体となって進めるということはもちろんだが、色々な制度が重なり、プレーヤーがどんどん増えていく状況にあり、各々がコンセンサスを持って取り組む必要がある。

3.学校運営協議会制度と他の制度等との関係についてどう考えるか。
(学校支援地域本部、学校関係者評価等)

● 学校評議員制度、学校評価など、地域住民等の声を学校運営に反映させるための他の仕組みとの関係では、それぞれの制度趣旨を整理しつつ、地域の実態に応じて導入することを基本として考えるべき。

● 学校運営協議会自体は学校運営に保護者等の意見を反映するものであるということを基本的な考え方とする。その上で、地域住民の力を学校運営の支援に活用する機能を、学校運営協議会が付加的に果たしていくことも、学校運営への参画をより効果的にする。

● 教育委員会から校長への権限移譲を進め、そこに学校運営協議会を絡めていくことで、より学校運営に対して保護者や地域住民の声が反映できる幅を広げていくべきである。また、各教育委員会における取組状況を踏まえながら、今後、学校運営協議会に付与すべき新たな権限や役割はあるかという点について、国は継続的に検討していくことが望まれる。

<学校に保護者・地域の意見を反映させる仕組みとの関係>

(学校評議員制度、学校関係者評価等)

○ 学校評議員は、校長が必要に応じて学校運営に関する保護者や地域住民の意見を聞くための制度であり、校長の求めに応じて個人として意見を述べるというものである。学校評議員の意見は、学校運営協議会の意見と異なり、合議によるものではないこと、校長の意志決定に対し制度上の影響を及ぼすものではないという違いがある。
 <第1回作業部会 事務局説明>
○ また、平成19年の学校教育法施行規則の改正により、保護者等による学校関係者評価を実施することが努力義務化された。この学校関係者評価を行う学校関係者評価委員会と、学校運営協議会の関係についても整理すべきである。
○ すでに学校運営協議会の下部組織に、学校関係者評価を行う部門を設けている場合もある。学校評価のための評価委員会も、学校運営協議会の下の一部門として位置付けるという整理も考えられる。
○ 地域や保護者の声を学校に伝える方法は、学校運営協議会制度のほかにもいろいろあるが、学校運営協議会制度は一方向ではなく、双方向に想いを伝えるような仕組みであることが特徴である。

<保護者・地域が学校を支援する仕組みとの関係>

(学校支援地域本部事業、放課後子ども教室事業など)

○ 学校運営協議会は、校長や教育委員会に対する権限や役割が法令に規定されており、保護者や地域住民の意見が学校運営に直接反映されることを制度的に担保し、保護者や地域住民と学校とが、学校の教育目標の設定や達成に協働して責任を果たす仕組みである。
○ 学校支援地域本部は、具体的な学校の教育活動について地域住民が支援するものであり、地域の連携を強めるという点では同じであるが、学校運営そのものへの参画を目的とする学校運営協議会とは必ずしも一致するものではない。また、法令上に役割や権限の規定があるものではない。
 <第1回作業部会 事務局説明>
○ 実態として、コミュニティ・スクールが地域住民による学校支援という面に着目した取組として進められている場合もあるため、学校運営協議会と学校支援地域本部の役割の違いがわかりにくいという指摘もある。
○ コミュニティ・スクールは、学校運営協議会という制度だけによる成果ではなく、学校支援地域本部や放課後子ども教室等の事業との組み合わせで成果を上げているという面もあるのではないか。
○ コミュニティ・スクールがうまく機能している地域では、学校支援地域本部のような実行組織を持っている場合が多いという見方もあるのではないか。
○ コミュニティ・スクールの目的を果たす上では、学校運営協議会制度だけではなく、学校支援地域本部のありようについても議論すべきであるという指摘がある。
○ 地域によって多様性があってよいと思うが、教育委員会が指定しさえすればコミュニティ・スクールとなるため、教育委員会の運用の仕方によっては学校支援地域本部との違いがわからないような場合もある。学校運営協議会とは何をするものなのかを明確にしていくことが必要である。
○ 一つの整理の仕方として、学校運営協議会が方針を決め、その方針の下で学校を支援する実働組織が、学校支援地域本部のような役割を担う、ということが考えられる。
○ 学校や地域によっては、ボランティアや保護者の学校参加という段階から、学校評価や学校支援地域本部のような取組からスタートしていく中で、それらがある程度の規模になってきたら、統括するためのものとして、学校運営協議会を置くという流れも考えられるのではないか。
○ 学校運営協議会や学校支援地域本部の定義を制度的な問題として提示するよりも、地域と学校の関わり方について選択の幅を広げることにより、その時々によって市町村が自ら主体的に決めていけるような仕組みとして提示することが、成果を上げる上では重要ではないか。

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