中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会小学校・中学校理科専門部会（第4期第2回（第10回））議事録・配付資料［資料2］

　小学校では学年段階で資質・能力を示しているが、中学校では1分野、2分野で示されている。今の中1ギャップの解消ということから考え、中学校の改善の方向性の中に示されていることを、小学校との連携で明記できれば、現場での混乱が少なくて済むと思う。
　中学校でも科学的に思考し、適切に表現する、数量的なデータをもとに考察する、日常生活の様々な現象を基礎的な科学の概念に沿って関係付けるなどの力を盛り込んでいけば、小中学校の連携が可能なのではないかと考える。
　理科は学校生活の中のほんの一部なので、理科の接続をよくしても中1ギャップが解消されるというものではないのではないか。
　小3から中3まで通して見た資質・能力をどの段階でどう学ばせるかを示すことが理科の中での中1ギャップの解消につながっていくのではないかと思う。
　小学校で培った資質・能力を大事にしながら、それをさらに科学という観点、PISA等を意識しながら、中学校では、スパイラルなやり方で、単元によっては比較する力を重視したり、小学校と違った条件制御の力をより強化したりするなどの整理の仕方も可能ではないか。
　小学校の中学年ではこういう能力、資質、小学校の高学年ではこういう能力、資質、そして、中学校ではこういう能力、資質という、3段階ぐらいに分けて考えるということも考えられる。
　小学校で問題解決の入り口から出口まで、ある程度学年ごとに整理し、中学校では、科学的に解釈する力や表現する力に課題があるというPISAの調査報告に焦点を絞り、小学校では各学年ごとに科学的に解釈する力や表現する力にウエートをかけて、中学校では3年間見通して整理していくというやり方をとった方がいい。
　小学校では資質・能力を重視、中学校では内容を重視ということでやってきたことが、中1ギャップの1つになっているのではないか。また、小学校とのつながりという面で資質・能力を中学校でも考える必要があり、例えば、複数学年で資質・能力を示すのがちょうどいいのではないか。
　問題解決の能力で、小学校、中学校と系統的に考えるのではなくて、小学校は小学校としての系統として一段落させておいて、中学校は中学校でまた系統の違う能力ということを考えていけば、それほど難しいことではないのではないか。そのような方向で、今後検討すればいいのではないか。
　基本的な科学的な概念で柱立てをし、できるだけ小学校も、中学校も、高校も、同じような考え方で整理ができないかという方向で今回の検討が進められている。そのような方向でいけば、スパイラルなカリキュラムの構成が可能ではないか。
　学校教育法の目的のところにも、生涯にわたって学習する基盤を培うということが目標として示されているが、何よりも理科教育で大事なのは、知識、理解ということはもちろんであるが、科学的な感性だとか、資質・能力というのがこれから重視されなければならないと思う。
　中学校段階では小学校段階で身に付けた資質・能力を活用しながら、PISA調査の課題である考察したり、解釈するといった場面でのスキルの育成が重要と考える。

2．教育内容について

　小学校の理科で実験や観察をたくさんすると、その後の考察がなかなかできないという話もあるが、これは考察でどんな力をつけるかということが明確になりさえすれば、先生たちはそれに合わせて学習指導をし、時間の中で終わらせることも可能である。ただ、明確に示されていない場合は、体験して終わる、観察・実験で先生が示して終わるといったこともあるため、学習指導要領などで示すことは大事だと思う。
　児童に付けたい力として、PISA型読解力の情報収集、解釈、熟考・評価という、PISAの学力に沿っていくのか、それとも資質・能力というところで関心、意欲、態度でいくのかで、同じことではあると思うが、今現場で混乱が起こっている。その点などを整理する必要がある。
　中学校は、義務教育の最終段階であり、網羅的に教えようとする発想があるが、小学校では、資質・能力を各学年段階で身に付けることが中心となっているため、小学校の指導内容は中学校と比べると少ないのではないか。
　中学生と小学生の発達の段階は違い、小学生の発達を考えての内容となっているため、必ずしも、小学校の指導内容が中学校より少ないということではないと考える。
　小学校の理科では系統性の弱い面があった。今後は、いわゆるエネルギー、粒子、生命、地球という系統性で整理して改善してはどうか。
　絶えず学んだ法則とか概念を日常生活にリンクさせるような工夫があれば、ある程度、自分は何のために理科を学んでいるのか、何のために重量保存、質量保存を学んでいるのかということに対する答えになるのではないかと思う。それを学習指導要領で、どのようにするかということが大きな議論になってくると思う。
　持続可能な社会の構築というために、世界中があらゆる分野でそのための方策を講じているが、それを環境教育だけに矮小化してしまっていいのかという実感がある。理科を学ぶ意義との関連付けで、少し幅広に取り上げていく必要があるのではないか。
　持続可能な社会への啓発は「もったいない」という心を養うことだと考える。しかし、教育を考える際には、社会の将来、それに向かう持続可能な社会はどのようなものでありたいかを、われわれ大人たちが展望を十分描ききれていないことに留意する必要がある。
　環境教育においては、環境をとらえるときの基本となる能力を先にとらえて、きちんと整理し、それをいろいろなところへ配置していく必要がある。
　科学的な、基礎的な概念で少し整理をして内容を構成することによって、丁寧な学習指導ができていくのではないか。そうしたことの成果として、キャリア教育に結びついたり、いろいろなほかのことにも結びついていくのではないか。
　学習とは、「知らないということを知る」、「無知の知」への気付きであり、その気付きのきっかけを与えるのが教育だと思う。
　理科の基礎力は必要である。基礎力に必要な基礎教育とは、言葉で理解する、数と量を理解する、法則を見出す、自然観察をするといったこと順序立て、反復学習をすることである。

3．指導方法等について

　日本の理科の先生方が授業づくりにおいて、先生方がまず感動し、自分が教える中身に対して、生き生きとした、科学というのはおもしろいという気持ちがあって、それが子どもたちに伝わるかどうかというのが大事だと思う。
　授業を超えた日常生活の中での出会いを記述していくという科学日記みたいなものを埋め込むような仕掛けをつくってみてはどうか。科学を文化として見て、日常的に何か書きつづることで、授業も進むのではないかと考える。
　何のために理科をやるかということで、実際に、世の中で理科がどのように使われているかというのを見るのもいいことだと思う。教育の中に現場訪問、現場で一緒に考えるということを増やしてもらえるといいのではないか。
　実生活と理科とが結びついたとき、生徒は学ぶ意味を認め、意欲的な学びを始める。実生活との関連を生かした理科授業を通して、生徒が、理科を学ぶことの意義や有用性を実感させる必要があり、社会の様々な場面で科学の成果が使われていることを児童生徒に伝えることが必要である。
　自然観察においては、単なる自然観察だけでは理科の基礎への方法論として不十分であるため、観察の視点を持てるようにすることが大事である。また、具体的な視点を持つと自然が新しく見え、多様な視点を持つことへの関心を高めることができる。
　自然観察では、科学的な仮説実験授業が大切だと思う。
　考える理科というのは大事だと思うが、子どもたちに投げかける問いをいかに考えるかはすごく時間がかかる。議論しながら子どもたちと当たって実験していくということをすれば、理解は深まると思う。
　現場の先生方の指導の自由を確保することは重要である。教育内容の検討だけではなく、授業実践への具体的な考え方についての検討が必要である。また、小・中学校において、地域の特性を活かすとはどういうことなのかを考えていきたい。

4．言語力の育成について

　観察した結果などを記述していく力が付けば、論理性が出てきて、コミュニケーションの力もつくため書くことは大事だと思う。
　理科で書くことについては、そこに体験があって、実感を伴っているため、子どもたちが実感を伴った言葉で書くことができる。また、感性豊かに書くことも、事実を踏まえて書くことも、指導者の指示や発問などによってかなり的確に行われるのではないか。
　言語力の育成では、どう書けばよいかということを十分教育していないところが日本の教育のよくないところである。これからの学習指導要領の内容の取扱いなどで、このように書かせるということを明記する必要があるのではないか。
　学習指導要領に入っている「目的意識をもって」というところを今までどおり重視しながらいかないと、最後の考察場面でうまく書く指導につながらないのではないか。
　科学的リテラシーの育成のために、証拠に基づいた結論を導き出すための科学的知識の活用とその利用、自然界に関する知識や科学的知識に関する知識の獲得、現象を科学的に説明する力が求められている。知識・技能を活用し、考え行動するためにも、自然事象やデータを理解し、利用し、熟考するためにも言語力の育成は重要である。

小学校・中学校理科専門部会（第4期第1回（第9回））における主な意見（論点ごとに整理）

1．小中学校の接続、資質・能力について

2．教育内容について

3．指導方法等について

4．言語力の育成について