中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会高等学校地理歴史・公民専門部会（第4期第3回）議事録・配付資料［資料2］

　基本的事項をしっかり教える、情報から事象を読み取る、論理的説明、主体的に社会に参画など、それぞれだれも反対しないことだと思うが、特に小学校、中学校では、子供に好奇心を持たせることが重要。
　意欲を持たせるような社会科学習、問題意識、知的好奇心を高めるような社会科を考えていくべき。教えるべきことはきちんと教える、これは大事なことであるが、教えるには、時間に限りがある。いかに自分で積極的に学んでいくのかが、知識を得る上では重要なポイントである。
　発達の系統性、連続性を大事にしつつ、非連続のおもしろさを取り入れることで子どもたちは関心を持つ。また、自分を客観的に見ていくこととどう結び合わせるかを工夫することが重要。
　言葉と体験というキーワードについて、体験が重視されているが、体験をした上で何を学んだのか、何を教訓として得たのか。見方、考え方を得たというところが、今はまだ弱い。
　社会科は知識科目であると誤解されており、先生方の意識を変えるなどのフォローをしないと、考える社会科にはならない。
　社会科は、断片的に持っている知識を授業のプロセスで教師が結びつけてやることが、一番の基本。そうしたことが反映できるような形で、表現を詰めていけるとよい。
　社会科的な見方や考え方を成長させることを一層重視する方向で改善することについては、賛成。
　前回の学習指導要領の改訂は厳選と言われたが、内容的には、体験的な学習など非常に時間が必要な内容が出てきたにもかかわらず、一方で時間が削減されるという難しい改訂だった。今回、世界の歴史が必要である、あるいはその他さまざまなことが足りないから必要であるという指摘は分かるが、時間数を念頭に置かないと、今回も同じようなことが起こるのではと危惧する。
　人類社会が抱えている最大のテーマは、持続可能な社会をどう構築するかである。地球社会のあらゆる分野でそのことが議論されている時代であり、環境問題に矮小化しない、持続可能な社会という表現を、社会科の学習の流れの中で、どこかで組み込めないか。
　「より良い社会の条件とは」といったことについて、学校で討論させることがよりよい社会の形成に参画する資質や能力を養うことになる。このため、こうした討論させる手法などを書き加えてはどうか。討論することは社会科学習の重要な視点の一つである。
　主体性を持って社会に積極的に参画して、課題を解決していく、自分が持続可能な社会のために何ができるのかということを考える、こうしたことは社会科が担う大きなミッションである。
　SRやCSR、サステナビリティーなど言葉を知っている子どもたちもいる。言葉の意味や訳も入れながら授業で扱えば、ニュースも分かり、自分で調べていこうという学びのきっかけができる。
　伝統や文化の複数性というものを学習の中に意図的に組み込んで欲しい。伝統とか文化について、共通の特色をつかむと同時に多様性、複数性というものを学んでいく機会が必要。
　日本の中にも多様な伝統と多様な文化がある。地域によって異なるので、それをどんどん純化させて、妙なナショナリズムにいくのは非常に危険であるため、伝統や文化の多様性、複数性という視点は大切。
　小学校では、第3学年以上に総合的な学習の時間がある。総合的な学習の時間から社会科を見る、社会科から総合的な学習の時間を見ていくこと、他教科や領域との関連をどうするかについても検討する必要がある。
　実体験、自然体験など実質的に教室から出て、いろいろな体験をさせる授業を取り入れるべき。
　先生の創意工夫の余地があるような学習指導要領にすべき。
　「社会的事象の意味、意義を解釈する」は「理解」、「事象の特色や事象間の関連を説明する」は「説明」、「自分の考えを論述する」は「意思決定」という異なる認識形成の原理であり、今回の改訂では多様な原理をどれも重視するということになる。
　自分の考えの論述を重視することには懸念を抱いている。人の意見に耳を傾けなかったり、自分の気にいった意見だけを採集し、コピーアンドペーストで、根拠や論証に鈍感である。また、教員の指導力に左右されるところも大きい。むしろ人の身になって考える想像力を育てる方が、世の人々の多様性を考えさせる社会科にふさわしいのではないか。
　インターネットを使って探究していく活動がよく行われるが、調べっぱなしで、作業に終わっているというケースも多い。そこから自分の考えを深めるところに結びつくようにしたい。
　インターネットは便利だが、えてして自分の都合のよい情報しか出さない。この情報をまとめるだけでは、まったく力が付かない。さらに、プレゼンテーションが重視されているが、そのために資料を過度に単純化されるようなこともある。このようなことを注意した上で、しっかりと活用するという教育が大事である。
　今までのテレビは、台風時に警報を常に流していたが、この頃はまったく流れない。一方、気象庁のホームページでは20分刻みくらいで出てくる。情報を流す方もテレビとインターネットの役割を使い分けている。このことも踏まえて考える必要がある。
　学習指導要領はカリキュラム編成の基本となる部分にとどめ、指導方法や学習活動まで細かく指摘せず、教師の創意工夫に委ねるべき。
　学習の基礎となる知識・技能と学習指導要領の基礎的・基本的知識・技能の違いを明確にしておくことが必要。これらを一体としてとらえると、すべてを習得させることとなり、記憶中心の授業に陥る危険性がある。習得学習ばかりが重視されないよう配慮が必要。工夫して、子どもに社会生活に関する関心を持たせることが必要。

【小学校】

　世界には日本と違ったところがたくさんあり、日本と違うことがわかることで好奇心も生まれてくるため、世界の多様性というものを小学校3，4年生で学ばせてもよいのではないか。
　小学校で世界的な内容というのは、例えば6年生で、日本と関係の深い国を幾つか選んで、その国の暮らしについて勉強する、5年等では、原材料の輸出入にかかわって外国が出てくるが、あまり深い学習はしていない。3年生、4年生は、自分たちの生活とのかかわりの中で扱っている。このため、概念とか知識という部分で、学習そのものが初めから成り立っていないにもかかわらず、基本的に知識がないと言われても、小学校としてはどうかと思う。
　低学年の社会科的な知識等、1年生、2年生に扱えた時代の社会科と、今の社会科は大分変わっていて、理科もそうかもしれないが、3年生での接続と発展という意味では苦労しているため、「生活科の学習の上に立ち」という表現が気になる。
　「身に付けた知識を活用し」は、なぜ活用するのが「知識」のみなのか不明。技能や能力も当然よりより社会の形成への参画に必要ではないか。
　小学校における英語活動は、言葉のもつ文化、背景を十分に理解していなければ効果は上がらない。また基本法を受けての伝統・文化の充実、新たな社会的課題への対応と言ったことを考えると小学校における授業時数の増加が必要。
　小学校から基本的な地名等を身に付けさせることはよいこと。しかし、急に地名等に入ると子どもたちは違和感をもつと思う。このため、地図に親しませるような手立てを講じおくことが必要。
　47都道府県の位置に加え、日本の自然環境や日本が山がちの国であるということ、狭い島国の中で非常に人が多いこと等の地理的環境を小学校低学年から教えておくべき。
　アングロサクソンは地球儀の上から世界を見る。日本人は日本から外を見る。日本人も地球儀の上から日本はどこにあるのか、世界と比べてどういうところにあるのかがわかるようであるとよい。
　縄文時代から学習に入るのは賛成。狩猟民族だった時代に関する理解がないと、金融、経済の理解を深めることは難しい。
　伝統と文化の充実については、暮らしの原点、生活の成り立ち、経済など暮らしに関連した生きる力につながる概念を取り入れるべき。
　縄文時代の授業は、子どもたちの生活と衣食住で直接結びついており、子どもたちが興味深く学習できる。
　中学校で貨幣を学ぶのでは遅い。縄文時代の生活の中から、物々交換から貨幣経済が芽生えたところを新鮮に受け止めさせるようにしてほしい。
　身近な地域のことを学ぶ際、自分の地域と他の地域を比べることで自分の地域のどこが劣っているのかを学ぶやり方と、自分の地域の特色は何かを学ぶやり方とかがある。両方とも学ばせたい。
　社会科は社会的責任を教えることが使命である。この意味では、小学校からルールや法が大切だということを教えるべき。法令遵守の原点は子どものときに、ルールなどの大切さを教えることである。
　貨幣や金融は目にみえず小学生の立場からするとわかりにくい。原理原則をわかるようにせず、数字のやりとりだけだと危険だ。実感としてわからせることが重要だ。
　歴史や文化を大切にするため、農耕の始まり以前の内容について取り上げる際、縄文以前の内容や神話等の内容が関係してくるが、時間数との関係では、扱いは慎重でありたい。

【中学校】

　地名を聞いてどの県であるか、人名を聞いて何時代の人かなど、個別の知識を整理する枠を身に付けないと一生に渡って続く学習の基盤ができない。日本地図や世界地図、歴史の年表の概略はありとあらゆる知識を身に付けるフックみたいなもので、繰り返し教えしっかり身に付けさせることが必要。
　中学校三分野の改善点については、おおむね理解できる。
　小・中学校の橋渡しとなる単元が必要ではないか。
　座布団型かπ型、どちらが適当なのか。現在のπ型が本当に子どもたちが地歴を学べるようになっているのか疑問だ。

【地理】

　地理の分野では、地図を道案内の道具として捉えるような自分から見た見方も必要であるが、人工衛星から地球を眺める、自分の姿自体も客観的に眺めるというような見方もこれから大切になる。特に地球環境問題などは少し高い視点に立った見方が必要。
　事象の特色や事象間の関連を説明する場合に、その関連や結びつきを、有機的に子供たちに考えさせる場合には、2点間の関係や位置的なことを重視するような社会科学習がもう少し必要。
　自分の位置をちゃんととらえられないこと、出発点と目的地だけしか分からない状況があるので、地図を地図として使う教育が必要。
　世界の学習に関して、日本とあまり関係の深くない国のことを学ぶというのは非常に重要ではないか。例えば地球環境問題などを扱う場合、一見関係のない、アフリカの熱帯雨林の問題が関係してくることで、世界は非常に多様であること、実は自分たちにもつながっているんだということなど、自分にあまり関係のない国のことをもっと教える必要があるのではないか。
　昔、地理と歴史は地歴科として一つのグループとされ、地理でも歴史を語り、歴史でも地理を語る先生を育ててきた。地理的観点を入れると新しい歴史的観点を持てたり、歴史をバックにすると地理が理解しやすくなったりする。関連の精神は大事にしたい。
　公民では環境問題を学ばせるが、地理においても学ばせるべき。また、持続可能な社会ということでは、環境問題のほか、資源の問題も盛り込むべきである。
　かつて地形図は社会科学習や野外学習に使われていた。中学生に地形図を学習させてはどうか。地理的思考の大切さが分かってくる。
　地理的分野については、持続可能な開発や文化摩擦などの問題についての扱いを重視することが重要。

【歴史】

　近現代史の重視が盛り込まれたのは意義深い。しかし、近現代はグローバリズムへの巻き込みを特徴とする時代なので、日本の内部だけみていても不十分。
　地理的な学習においては、地域学習で地域の歴史についても触れて歴史を融合させて学ばせるが、歴史的な学習においては、あまり地理的なことは考慮されていないのではないか。地図を活用する方向で進めれば、地理と歴史をうまく組み込みながら学習を進めることができると思う。
　世界と日本は歴史的事象や地理的事象までかかわっている。世界史では、日本との歴史との関連付けを重視とする視点があるが、日本史の分野において世界との関わりのなかで日本をどうとらえるかという観点は弱い。ジェネラルヒストリーとしての歴史としての分野が可能かどうかを議論する前に、日本史において、世界史の中の日本という観点が持たせることが必要。
　現行では、世界史の背景として日本の歴史を学ぶことになっているが、これを踏襲すべきだ。また、日本の歴史でも、どの時代でも外国との交流の中で文化や政治・経済を培ってきたのだから、その視点から歴史を学ばせてほしい。

【公民】

　法は社会の基本的なフレームワークをなしているので、それをきちんと押さえないで教育をすると、社会に出たときに好き勝手になってしまったり、共通理解が図れないという危険性があるので、そのあたりをきちんと押さえることが必要。
　民主主義、自由などいろいろな言葉があり、言葉としては学習するが、その言葉を支えている実感、体験、裏づけがない場合が多い。実生活の中でそれが結びつかないところが、社会参画とか、現実の身近な問題なり、地域、国の問題なりを解決していくという力に結びついていない。
　日本人はいろいろな宗教に対して無頓着である。宗教に関する学習も、グローバル化の中に入れてもらいたい。
　少子高齢社会と税に関する問題というならば、税に並べて社会保障も取り入れるべきである。
　税金や行政サービスのほかに、ボランティアやNPOなども社会にとって不可欠となっている。これらのことについても学ばせるようにしてはどうか。
　貨幣という言葉がお金の流通を意味するなら、むしろ金融ということができる。子どもたちも携帯電話の中に財布の機能があることを知っているし、改札もカードで通ることができる。今後はキャッシュレス、ペーパーレス世界の中で、子どもたちはお金について考えていくことが求められる。
　公民的分野では、合意形成の過程が大事である。個人の価値と相対的な社会全体との価値の在り方を考えさせ、生徒がどのように生きていくかを考えさせる。その中で、社会は支え合って生きているということを生徒に自覚させる指導をしていかなければならない。
　公民的分野において、裁判の判例はよい教材だ。合意形成は重要だが、合意形成ができない場合、最終的に裁判で争って裁判官が判断を下し社会が動いていく。このような内容が教材として入るとよい。
　金融は重要である。高校で総合社会が実現しないとすると、選択で金融や経済を学ばない子どもがでてくる。このため、これを中学校で何とか学ばせたい。経済については、ミクロ経済とマクロ経済を区別して、そのつなぎも教えることが必要。

小学校・中学校社会専門部会における主な意見（論点ごとに整理）

【総論】

【小学校】

【中学校】

【地理】

【歴史】

【公民】

【言語力の育成】

【地図等の活用】