教職大学院の制度創設については、現在の学校教育を巡る現状、特に力量ある教員の養成に対する社会的要請にかんがみ、早ければ平成19年4月の開設が可能となるよう、専門職大学院設置基準等関係規程の改正を行う方向で準備を進めることとする。
教職大学院の整備に当たっては、国公私立を通じ、各大学において主体的に設置構想が検討されることが前提となるが、このうち国立大学については、財政基盤が国からの財政支出に依存していることを踏まえ、実践的な指導力を有する教員の養成について、特に優れた実績を有するとともに、意欲的で、かつ、真に他の大学のモデルとなる設置構想と計画を実現し得る大学から整備を行うこととする。
教職大学院においては、2.1.(1)3で述べたとおり、「学校現場」「デマンド・サイド」との連携を重視する観点から適正な運営を確保するため、従来の運営体制にこだわらず、学校関係者等現場サイドとの密接な連携関係を管理運営体制の中にビルト・インするとともに、教育現場や社会の変化に柔軟に対応し得る機動的なマネジメント・システムを大学院として確立することが重要である。
教職大学院制度を活用した教員養成システムの充実、発展を目指すためには、各大学における積極的な取組みとともに、国においても、現行の学部・大学院制度における教員養成システムの更なる改善を強力に促進するための検証・支援のための方策の強化を図りつつ、質の高い教職大学院の設置を促進するための方策、教職大学院の前提となる専門職大学院制度の基盤作りを推進するための方策、更には、実際に設置された教職大学院のうち他大学のモデルとなり得る特色ある優れた取組みを促すための方策など、各般にわたる強力な支援策を講じていくことが不可欠である。
教職大学院の修了者に対する免許状については、
などを考慮すると、新たな免許状を創設するよりも、むしろ現行の専修免許状を活用する方向を中心に検討することが適当ではないかと考えられる。
ただし、
など、教員免許制度全体の中で整理すべき課題が多いため、免許状の取扱いについては、引き続き教員養成部会において、上記の観点等を踏まえ、総合的見地から検討し、結論を得る必要がある。
公立の小学校等の教諭の初任者研修については、教職大学院が上記2.1.(2)3のように、修了要件のうち一定の単位(例えば10単位=300~450時間の実習時間に相当)以上は、学校における実習によることとする旨専門職大学院設置基準等で規定することを踏まえれば、その修了生については任命権者の判断により初任者研修の全部又は一部について免除することができることとする。
公立の小学校等の教諭の10年経験者研修については、一律に修得すべき内容を定めているものではなく、各教員に応じた多様なものであり、これまでも任命権者の判断により修士課程が活用されていたが、教職大学院の課程についても上記2.(2)2.「修業年限」、2.(2)3.「修了要件」、2.(2)5.「教育課程」等から、個々人の能力・適性等に応じた研修の場として積極的に活用することが期待される。
修了者の処遇については、具体的には、校長・教頭等学校における一定の職務・位置付け、給与面での処遇その他の取扱いが考えられる。
学校における一定の職務・位置付けについて、特に現職教員である教職大学院修了者には、地域における指導的役割を果たす教員として活躍することが期待されるが、これらの役割について、制度的に措置を講ずることは適当ではなく、修了者の実績等を踏まえ、各教育委員会等において主体的に対応することが適当である。
また、給与面の処遇については、現在、新卒者については採用学歴に応じて換算され、また現職教員については経験年数に応じた扱いとされているものを、勤務評価に基づくこととすることについて、各任命権者において検討されている。教職大学院の修了者についても、この検討において、修了者の実績等を勘案しつつ、各任命権者において検討していくことが期待される。
さらに、修了者のうち新人教員については、例えば都道府県教育委員会等が行う教員採用選考試験において、教職大学院における履修実態等を考慮し、通常の採用選考方法とは異なる観点・方法で選考することなどの工夫も考えられるが、これについては、各任命権者の責任において適切に検討していくことが期待される。
高等教育局専門教育課