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資料2
教育課程部会における審議内容に関して寄せられた主な意見(概要)
(算数・数学教育に関するもの)

 小学校の算数教育については、数量や図形についての基礎的・基本的な知識・技能の習得に加えて、数学的なものの見方・考え方を育てるために興味・関心・意欲の喚起が重視されなければならない。そのためには、児童が楽しみながら学ぶことができる学習内容と学習環境が大事である。また、学習した内容が児童の実生活において役立つという実感を持たせる必要がある。

 中学校において、計算力や数学的思考力が十分に身に付いていないとの意見がある。学習内容については、論理性や思考力を育成する内容の検討を要望する。

 我が国では、学校週5日制の結果として、義務教育修了時点の数学の内容上の履修水準が後退した。図形の証明において、必修履修する日本と選択履修する米国とで達成度は同等との調査もあり、条件が同じであれば、量が確保されない限り質が保てない。人材確保は、教育の量と質の両面に支えられている。履修されるコアを質・量ともに一層確保することを前提にした上で、質を追求し選択化する教育のあり方が期待される。

 各教科の教育内容については、文科省が細部の具体的事例まで示す必要はなく、学習指導要領の記述程度にとどめるべきである。具体的な内容や指導方法については、各学校において子どもたちの実態に応じて創意工夫すべきである。

 これまでの中学校・高等学校の数学教育では、系統付けられた内容の理解と表現・処理の力が中心になっていたが、これからは数学の内容を系統的に理解するだけでなく、数学を用いた問題解決やコミュニケーション(他への発信、他から受信する活動)の力を、英国のように発達段階を配慮し時間をかけて養い、「使える数学」にすることが日本の学校教育にとって不可欠と考える。例えば、中学校第1〜第2学年の間に、数値データを収集・整理し統計グラフ等で表現することを問題解決領域として位置付けることや、高等学校で、例えばモデル化領域を教育課程に明確に位置付け、現象を行列モデルで表すことなどを扱うことが考えられる。

 「数と計算」領域の指導内容について
児童生徒の問題意識や認識力について十分調査するとともに、一人一人の能力に応じて発展的に考える能力が育てられるようにしてほしい。具体的には、次のような内容を加えることが考えられる。
(1) 「12マイナス2」のような計算は、「12マイナス9」のような計算より簡単であると同時に「12マイナス9」の計算の基礎となるものである。しかし、これは内容として示されていないなど、数と計算についての児童生徒の認識の仕方や学習過程が十分考慮されていない。そこで、新たな計算の仕方を考えるのに必要と思われる計算としてどのようなものがあるかを考慮して内容を構成したい。
(2) 算数・数学を学ぶ楽しさやよさである「発展的に考える」場を積極的に示したい。
特に、新たな問題を考えることができるように内容を示すようにしたい。
 児童生徒の問題意識や認識力について十分調査するとともに、一人一人の能力に応じて発展的に考える能力が育てられるようにしてほしい。具体的には、次のような内容を加えることが考えられる。
小1: 20までの数から1位数を引く計算、100を単位にして数をとらえる900までの何百の数、120までの数
小2: 十、百の位で繰り上がり繰り下がりのない3位数、4位数の加減(何十、 何百) かける(何)の計算…
小6: 計算の可能性の問題意識から負の数の導入
中2: 有理数、無理数
中3: 複素数(選択教科としての扱いでも導入したい)

 「図形」領域の指導内容について
(1) 図形に関する学習は、数と計算に関する学習が左脳の働きを活発にするのに対して、右脳の働きを活発にすると言われる。このような観点から図形に関する学習内容を増やすことが大切である。特に、立体図形に対する認識力を小学校段階から培いたい。
(2) 「発展的に問題を見いだす」という観点からどのような内容があるかを明示したい。
小3: 箱の形の学習の後、投影図、あるいは透視図の基礎的なものを扱う。
小4: 平面上の垂直、並行の学習の後、空間の位置にある垂直、並行の学習を取り 入れる。その際、位置の表し方として、(x、y)座標、(x、y、z)座標 の学習を扱う。なお、平面上の位置の表し方として(角度と距離)でも表せ ることにも気づかせる。
小5: 立方体、直方体、及びそれらの複合、欠損図形とそれらの見取り図や透視図
小6: 柱体、錐体とそれらの見取り図や透視図、表面積、体積。
中3: 初歩的な位相幾何学

 科学技術を重視し国際競争力を高め、科学リテラシーのある社会人を輩出するため、数学及び理科の教育には、次の点が重要と考える。
 理解が困難な事項を高学年に移行するのではなく、前倒して低学年から導入してほしい。同時に、小学校の理科、 算数の教育には、理工科系出身の専任教師の導入を望みたい。

 「教育内容の厳選を図る必要がある」のは当然だが、専門家(数学、物理、化学等々の学者など)から何の事項を何学年に配置すべきかを厳選してもらうべきである。

 「ゆとり」教育は現在の我が国には不要であり、その時間や総合的な学習の時間を算数・数学、理科に充てるべきである。また、知識の習得を排斥するのではなく、科学技術の基本的叡智を教えることが、資源小国の我が国にとって重要なことである。

 [生きる力]を育成する教育の高い目標は理解できるが、知識が乏しく未熟な小学生には、知識を感動とともに授けることが重要である。全人格の優れた教師が教科を教える過程から、生徒は[生きる力]を学び取り身に付けていくものと考える。教師の採用について検討し、再教育に力を入れるべきである。

 習熟度別の少人数授業を行っているが、一人一人に関わる時間の確保ができ、学習以外(生徒指導等)への効果も見られた。今後も少人数授業ができるような教員加配をお願いしたい。また、子供たちが塾に行かなくてもよい環境作りをして欲しい。学校教育(公教育)で十分な数学の力を付けることができ、繰り返しドリルの時間が確保できる、そのような時間確保、学習指導要領作りをお願いしたい。



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