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3   「総合的な学習の時間」の一層の充実

(1)現状と課題

(創設の趣旨等)
   「総合的な学習の時間」は、平成8年の中央教育審議会答申(「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」(第一次答申))において、一定のまとまった時間を設けて横断的・総合的な指導を行うことが重要であると提言されたことや、さらにこれを踏まえた平成10年の教育課程審議会答申(「幼稚園、小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾学校及び養護学校の教育課程の基準の改善について」) で、自ら学び自ら考える力などの[生きる力]をはぐくむ役割を担うものとして創設が提言されたことを受けて、平成10年、11年に改訂された新学習指導要領に位置付けられ、平成14年度から順次本格実施されているところである。
   教育課程の基準として、具体的には、学校教育法施行規則及び学習指導要領総則において、「総合的な学習の時間」は各教科、道徳、特別活動とともに、教育課程を編成するものとして位置付けられ、年間授業時数、単位数、各学校において教育課程上必置とすること、ねらい、具体的な学習活動の例、学習活動を行うに当たっての配慮事項等が示されている。

(「総合的な学習の時間」の現状と実施上の課題等)
   各学校では、「総合的な学習の時間」について趣旨に即して創意工夫しながら実践に取り組んでいるところが見られ、創意工夫した授業計画の組み立ての機会の増加や児童生徒の思考力・判断力・表現力、学習意欲、学び方等の向上など肯定的に受け止める声が大きい一方で、教員の負担感、学習のテーマ設定の難しさ、具体的な実施内容に関する教員の悩みなどについて、何らかの参考となる手引きが必要との指摘もある。
   また、各学校の「総合的な学習の時間」の取組について様々な課題も指摘されている。例えば、「総合的な学習の時間」の「目標」や「内容」は、各教科等と異なり学習指導要領に示されておらず、各学校においては、学習指導要領に示された「総合的な学習の時間」の趣旨及びねらいを踏まえ、具体的にこれを定めて計画的に指導を行うことが求められるが、学校において具体的な「目標」や「内容」を明確に設定せずに活動を実施し、必要な力が児童生徒に身に付いたかの検証・評価が十分行われていない実態や、教科との関連に十分配慮していない実態、教科の時間への転用なども指摘されているところである。このほか、児童生徒の主体性や興味・関心を重視するあまり、教員が児童生徒に対して必要かつ適切な指導を実施せず、教育的効果が十分上がっていない取組も指摘されているなど、改善すべき課題が少なくない状況にある。
   さらに、「総合的な学習の時間」については「時間」であるという名称から、教科等とともに教育課程を構成するものであると受け止められにくく、計画的な指導の必要性が理解されにくくなっているとも指摘されている。


(2)当面の充実・改善方策

(学習指導要領の記述の見直し等)
   国においては、このような指摘等を踏まえ、「総合的な学習の時間」について小・中・高等学校等の学習指導要領の記述を見直すことにより、[生きる力]をはぐくむために横断的・総合的な学習等を創意工夫して多様な形で行うという趣旨を一層明確化するとともに、その実現のために各教科等で身に付けた資質や能力との関連付け、深化、総合化の観点や計画的な指導、学校間・学校段階間の連携などが重要であることを明確化する必要がある。
   また、各学校において計画的な指導の必要性が理解されるよう、学習指導要領における「総合的な学習の時間」の位置付けをさらに明確化する方途についても今後検討することが求められる。

(各学校における取組内容の不断の検証等)
   各学校においては、「総合的な学習の時間」の取組がそのねらいを踏まえたものとなるよう、各教科等を含めた学校の教育課程全体の中での「総合的な学習の時間」の位置付けと意義を明確に意識するとともに、「総合的な学習の時間」についての「学校としての全体計画」の作成、各学年の目標・内容、具体的な指導の改善、評価の在り方、学年間・学校段階間の連携、円滑な実施のための指導体制等について、自己評価の実施等により取組内容を不断に検証するとともに、学校間で実施上の情報や意見の交換を行うことが求められる。また、指導に当たっては、教員の役割・責任を明確にし、教員が明確な目標及び内容をもって行き届いた指導を行うことや、各教科等における学習との関連や知識と生活との結びつきに配慮しつつ、学びへの動機付けを図る指導を行うこと等が重要である。
   また、学習活動の一部について、活動内容によっては一定期間連続した取組を特定の時期に集中して実施した方が効果的な場合には、授業時間のほか長期休業期間も活用するなどして、弾力的に授業を実施する工夫も考えられる。


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