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3   [確かな学力]の総合的な状況の把握の必要性

   昨今の学力に関する論議にみられるように、2で述べた子どもたちに求められる学力の考え方については必ずしも十分に周知されているとは言えないのが現状であろう。[確かな学力]をはぐくみ、新学習指導要領のねらいの一層の充実をはかるために、国及び各教育委員会においては、校長や教員をはじめとする教育関係者はもとより、保護者や国民一般に対しても、これから子どもたちに求められる学力はどのようなものであるかについて、今後とも継続的かつ積極的に周知していくことが求められることになる。

(全国的な調査等の実施)
   全国規模の調査を継続的に行うことは、単に[確かな学力]の実態把握にとどまらず、教育課程の基準の改訂や各教育委員会及び各学校における指導の充実・改善に有用であり、教育課程実施状況調査などの全国的な調査や研究指定校による調査を、今後とも継続的に実施する必要がある。このことは子どもたちに求められる学力はどのようなものであるかについて周知する上でも有用である。
   また、調査の実施にあたっては、次の点に留意する必要がある。
      1    単に知識の量を問うのみではなく、ペーパーテストでは測りにくいとされている思考力・判断力・表現力や学ぶ意欲などの状況の把握、評価や、教員の指導内容・指導方法等に関する調査等に一層積極的に取り組むことが必要である。また、[確かな学力]の総合的な状況を把握するためには、効果的かつ多様な調査方法の開発等を更に進め、例示することが必要である。
2    教育課程実施状況調査や研究指定校による調査にあわせて、両調査では測れない学力の状況を把握するため、「特定の課題に関する調査」を実施する必要がある。その際、これらの調査の有効性、学校の負担等の観点から、調査の規模や実施体制については更に検討を行う必要がある。
3    国で実施する全国的な調査の結果については、各学校における指導上の改善点等の分析結果等を各学校や各教育委員会に対して積極的に情報提供することが求められるが、その際、学校間の序列化等につながらないよう、データの取扱いについては十分配慮することが必要である。
4    「総合的な学習の時間」のねらいの全国的な実現状況を評価するとともに、各学校における指導に生かすため、各教科等で学んだ知識を実生活へ応用する力、思考力・判断力・表現力や学習意欲の変容の状況を把握する観点から、今後それらの調査方法等について研究する必要がある。

(地域・各学校における指導の充実・改善に役立つ調査)
   教育課程及び指導の充実・改善を図り、[確かな学力]をはぐくむためには、教育がその目標に照らしてどのように行われ、子どもがその目標の実現に向けてどのように変容しているかを明らかにし、また、どのような点でつまずき、それを改善するためにどのように支援していけばよいかを明らかにしようとするということが大切である。すなわち、子どもたちの[確かな学力]の総合的な状況を把握し、評価した上で、それを教育課程及び指導の充実・改善に生かすという一連の過程を確立することが極めて重要なのである。新学習指導要領の下で目標に準拠した評価(いわゆる絶対評価)を一層重視しているのも、このような考えに基づくものである。
   その過程においては、各教育委員会等において、幅広い学力を測る観点から国で実施した教育課程実施状況調査等の結果や国で開発した調査方法、OECDのPISA調査等を参考にしながら、独自の学力調査を実施することが求められる。既に、都道府県教育委員会や市町村教育委員会において、学力について調査が実施されているところもあるが、さらに、各教育委員会等は、国で実施する全国的な調査を活用していくことが重要であり、また各教育委員会等の希望に応じて全国的なデータと比較可能にすることも検討することが考えられる。
   なお、各教育委員会等において調査の結果を公表する方法等については、それぞれの実施主体において適切に判断されるべき事柄であるが、その際には調査結果のみならず、指導方法や指導体制、教育課程の工夫改善など多様な情報の提供に留意する必要があると考える。


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