参考資料7 チームとしての学校・教職員の在り方に関する作業部会中間まとめ(骨子案)

平成27年6月22日
教育課程部会

1.「チームとしての学校」が求められる背景

  • (1)次代を生きる力を育むための教育課程の改革や授業方法の革新を実現するための体制整備
  • (2)複雑化・多様化した課題を解決するための体制整備
  • (3)子供と向き合う時間の確保等のための体制整備

2.「チームとしての学校の在り方」

  • (1)学校のマネジメント機能の強化
  • (2)専門性に基づくチーム体制の構築
  • (3)教職員一人一人が力を発揮できる環境の整備

3.具体的な改善方策

(1)学校のマネジメント機能の強化

  1. 管理職の適材確保
  2. 主幹教諭制度の充実
  3. 事務体制の強化

(2)専門性に基づくチーム体制の構築

  1. 教職員の指導体制の充実
  2. 教員以外の専門スタッフの参画
  3. 地域との連携体制の整備

(3)教職員一人一人が力を発揮できる環境の整備

  1. 人材育成の推進
  2. 業務改善
  3. 教育委員会等による学校への支援の充実

チームとしての学校・教職員の在り方に関する作業部会中間まとめ(骨子案)

平成27年6月12日

1.「チームとしての学校」が求められる背景

 我が国の教員は、教科指導から生徒指導、部活動、さらには事務的業務まで幅広い業務を担っている中、教員の日々の努力により、国際的に見ても、日本の初等中等教育は高い成果を上げている。

 しかし、変化の激しい社会の中で生きていく子供たちに、求められる力を身に付けさせるためには、たゆまぬ教育水準の向上が必要である。

 そのためには、教育課程の改革や授業方法の革新が必要であるが、それを実現するためには、学校の体制整備が不可欠である。

 その一方で、我が国の学校や教員は、複雑化・多様化した課題を抱え、教員は、授業準備や教材研究等に十分な時間を割くことができないという実態があり、教員以外の職員や専門スタッフの活用や、教員が授業準備等に、より専念できるような体制の整備が重要である。

 体制を整備する上で重要な考え方は、校長のリーダーシップの下、教職員や専門スタッフ等が、子供や地域の実態に基づく教育目標を達成するため、チームとして取り組むということである。


(1)次代を生きる力を育むための教育課程の改革や授業方法の革新を実現するための体制整備

  • 子供たちに、これから求められる力を身に付けさせるためには、学習指導要領改訂の動きも踏まえ、学校全体でカリキュラム・マネジメントや指導方法、評価方法の開発・普及等に取り組むことができる体制を整備していく必要がある。
  • カリキュラムを実施するためには、ヒト・モノ・カネ・情報などの経営資源が必要であり、それらの条件整備が不可欠であるが、学校においても、教育内容と条件整備を一体的に議論、検討することが求められている。
  • また、学年単位、学級単位、教科単位の学校運営ではなく、子供や地域の実態に基づいた教育目標の下に学校全体の活動をまとめることができる体制を整備することが重要である。

(2)複雑化・多様化した課題を解決するための体制整備

  • 生徒指導上の課題や特別支援教育の充実など、学校が抱える課題は、複雑化・多様化し、教員だけで対応するのは、質的にも量的にも難しくなってきている。その上、心理や福祉など教育以外の高い専門性が求められるような課題も増えてきている。
  • そのため、教員の業務を見直し、専門スタッフ等が教育活動や学校運営に参画し、教員と事務職員、専門スタッフ等が連携、分担して校務を担う体制を整備することが重要である。
  • また、学校の業務が複雑化・多様化していることに伴い、学校が負うべき責任や説明責任の範囲が拡大しており、校長、副校長・教頭や主幹教諭、担当主任等が組織的に対応することが求められている。

(3)子供と向き合う時間の確保等のための体制整備

  • 国際調査や教員勤務実態調査において、我が国の教員が事務的業務等に多くの時間を割いているという結果が出ており、教員が授業準備等に、より専念できるようにしていく必要がある。
  • また、特に、副校長・教頭は、各種調査依頼への対応等を行ったり、学校内のどの分掌や委員会にも属さない業務を担ったりするなど、多くの業務を担っており、他の職よりも勤務時間が長いという実態が明らかになっている。
  • 教職員や専門スタッフ等がチームとして機能するための調整役として、副校長・教頭の役割は大きく、副校長・教頭の業務改善が重要である。

2.「チームとしての学校」の在り方

 校長のリーダーシップの下、教職員や専門スタッフ等が、子供や地域の実態を踏まえた教育目標の達成にチームとして取り組む体制を整備するために、以下の3つの方向性に沿って検討を行い、学校のマネジメントモデルの転換を図っていくことが必要である。

  1. 教職員や専門スタッフ等の多職種で組織される学校がチームとして機能するよう、校長がリーダーシップを発揮できるような体制を整備するとともに、学校内の分掌や委員会等の活動を調整して、学校の教育目標の下に学校全体を動かしていく機能を強化する必要がある。〔学校のマネジメント機能の強化〕
  2. 教職員や専門スタッフ等が自らの専門性をそれぞれ発揮できるよう、連携や分担の在り方を明確にする必要がある。〔専門性に基づくチーム体制の構築〕
  3. 教職員一人一人が力を発揮し、更に伸ばしていけるよう、人材育成や業務改善等の取組を進める必要がある。〔教職員一人一人が力を発揮できる環境の整備〕

(1)学校のマネジメント機能の強化

  • 子供たちや地域の実態に基づき、これからの時代に求められる資質・能力を子供たちが身に付けることができるよう、特色ある教育課程の編成・実施、指導内容や指導方法の改善に組織として取り組むことを可能とするため、学校のマネジメント機能を強化する。
    校長は、学校の教育ビジョンを定め、ビジョンを教職員や専門スタッフ等の間で共有し、ビジョンの達成に向けて、教職員を巻き込んでいくことや、人材育成にリーダーシップを発揮することが求められている。
  • 教職員と専門スタッフ等の多職種で組織される学校においては、今までの学校とは異なるマネジメント力が校長に求められる。
  • 学校は、学年単位、教科単位で動きがちであることから、学年や強化等の単位を超えて、企画・立案を行い、実施する機能を強化する必要がある。
  • 管理職のマネジメントを総務・財務面から補佐するため、学校の事務機能を充実する必要がある。

(2)専門性に基づくチーム体制の構築

  • 複雑化・多様化した学校の課題に対応し、子供たちの豊かな学びを実現するため、教員が担っている業務を見直し、専門スタッフが学校教育に参画して、教員が専門スタッフや地域の人材、関係機関と連携して、課題の解決に当たることができる体制を構築する。
  • その際、教員が、多くの業務を担っていることによる利点を踏まえながらも、多職種による協働へと文化を変えていく必要がある。
  • 多様な経験や専門性を持った人材を学校教育で生かしていくためには、少数職種が孤立しないよう、教員も意識改革を行い、少数職種をチームの一員として受け入れることが重要である。
  • 少数職種について、法令で職務内容等を位置付け、明確化し共有化することは、教員の意識改革のスタートラインになり得る。
  • また、学校教育に参画する専門家の側についても、子供の教育を共に担っていくパートナーという意識が求められる。
  • 小学校高学年の教科担任制は、教員の負担軽減だけでなく、学校の意識や文化を変えるきっかけにもなる。
  • チーム体制を構築していくに当たっては、情報をどのように共有化していくのかということが重要になってくる。

(3)教職員一人一人が力を発揮できる環境の整備

  • 学校がチームとして機能するためには、人材育成を進めるに当たって、管理職が教員の現状を把握して、適時適切なフィードバックを与え、評価することが重要である。
  • 学校全体で目標や問題意識を共有して校内研修に取り組む必要がある。
  • 学校の教職員が意欲を持って、能力を発揮できるよう、優れた実践を行った教職員を顕彰することが重要である。
  • 学校事故への対応や訴訟が提起された場合の対応など、法令に基づく専門的な対応が求められる事項や子供の安全管理など専門的な知識に基づく対応が必要な事項に関して学校や教職員を支援する体制の整備が重要である。

  地域の状況、学校種、学校の規模等により、講じるべき施策は異なってくるが、今後も、学校が子供たちに力を身に付けさせていくための教育機関であるためには、以上の方向性に沿った施策を講じることにより、「チームとしての学校」像の実現を図っていくことが必要である。

「チームとしての学校」像

 校長のリーダーシップの下、カリキュラム、日々の教育活動、経営資源が一体的にマネジメントされ、教職員、関係機関や学校内外の人材が、それぞれの専門性を生かして能力を発揮し、子供たちに必要な資質・能力を確実に身に付けさせることができる学校

3.具体的な改革方策

(1)学校のマネジメント機能の強化

 学校が一つのチームとして機能するように、学校のリーダーシップ機能を強化す  るとともに、学校の企画・調整機能や事務体制を強化する。

1.管理職の適材確保

ア 管理職のリーダーシップ

  • 校長は、学校の長として、子供たちや地域の実態を踏まえ、学校の教育ビジョンを示し、意識の共有を図るとともに、教職員の人材育成を行うことが求められている。
  • 校長が、自らの示す学校の教育ビジョンの下で、リーダーシップを発揮した学校運営を実現できるよう、校長裁量経費の拡大を図るなど、学校の裁量拡大を進めていくことが期待される。
  • 管理職選考の倍率が低下したり、希望降任の希望者が増加したりするなど、管理職の魅力が低下しているのではないかという指摘もある。
  • 管理職に適材を確保できなければ、学校の教育力も低下することは確実であり、優秀な人材が管理職を目指すような取組が求められている。
  • 特に、副校長・教頭については、勤務実態調査の結果を見ても、勤務時間が最も長く、日々、雑務に追われ、人材育成等に関わることができないという指摘がある。

イ 管理職の養成

  • 都道府県によって違いはあるものの、30代半ばから50歳までの教員数は、近年、減少しており、今後、管理職候補となる教員の数が少なくなることが予想される。
  • 教育委員会は、校長に求められる資質・能力に基づき、将来、管理職として活躍することが期待される教員に、計画的に教職大学院や民間企業への派遣、学校現場でのOJT等の経験を積ませる必要がある。

ウ 管理職の選考・登用

  • 選考試験においては、67都道府県・指定都市教育委員会のうち41教育委員会が短答形式による筆記試験を導入し、63教育委員会が小論文や作文による筆記試験を行っているが、試験の問題作成に教育委員会が多くの時間を費やしているという現状がある。
  • 女性管理職の割合が、全職員に占める女性教員の割合に比べて低いことから、能力実証を前提として、女性管理職の登用が進むような方策を検討する必要がある。

エ 管理職の研修

  • 教育委員会が実施している管理職研修の内容についても、校長に求められる資質・能力に基づき見直しを進める必要がある。
  • また、管理職研修の見直しを行うに当たっては、教職大学院をはじめとした大学と連携することが考えられるが、研修の実施方法について、管理職が受講しやすいような工夫について検討することが必要である。
2. 主幹教諭制度の充実

ア 主幹教諭制度の充実

  • 主幹教諭は平成19年に制度化されたが、
    • 分掌間・学年間の調整など学校の総合的な調整が図られ、学校の組織としての力が向上した
    • 教職員間の業務調整が円滑になり、業務の質が改善し、また、業務が効率化した
    • 主幹教諭が管理職と教職員のパイプ役になることにより、校長のビジョンが徹底するなど校内のコミュニケーションが改善された
    などの成果が上がっている。
  • 一方で、主幹教諭については、
    • 学校で主幹教諭の役割や職務内容、権限が十分に理解されていない
    • 主幹教諭となる者の人材育成が十分にできていない
    • 主幹教諭の授業時数が多く、主幹教諭に期待される校務を十分に処理できない
    という課題も指摘されている。
  • 地域や学校の実態も踏まえ、主幹教諭の配置を進めていくための方策について検討する必要がある。
3. 事務体制の強化

ア 事務職員の職務の見直し

  •  事務職員の職務について、学校教育法は「事務に従事する」と規定しているのみであるが、概ね、事務職員が従事している職務は、
    • 予算、決算等の会計管理
    • 施設・設備及び教材・物品の管理
    • 給与・旅費の管理、支給事務
    • 就学援助に係る事務
    • 学校徴収金の計画・執行管理
    • 文書の収受・発送
    • 諸手当の認定
    • 福利厚生に関する事務
    など、総務・財務等に関する事務である。
  • 事務職員は、学校において、ほぼ唯一、学校運営事務に関する専門性を有している職員であり、教育委員会によっては、学校組織マネジメントを効率的・効果的に行うための学校経営職員として位置づけ、地域連携や学校評価、危機管理等の総務・財務等に関する事務以外の職務にも事務職員が積極的に携わっている例も見られる。今後は、事務職員は、その専門性等も生かしつつ、より広い視点に立って、校長や副校長・教頭を学校経営面から補佐する学校運営チームの一員として役割を果たすことが期待される。
  • 教員の勤務実態に関する各種調査の結果によると、教員が様々な事務業務を行っており、それが教員の負担になっているという実態が見られる。
  • 特に、教頭は、事務業務の負担が非常に大きく、校長の補佐や人材育成等の業務を十分に果たしていくためには、教頭の事務業務の負担軽減を図っていくことは不可欠であり、教頭と事務職員との間での業務の連携や分担を進める必要がある。

イ 学校運営事務の統括者の位置付け

  • 現在、学校の管理職の多くは、教員出身者であり、行政事務に十分に練達しているとはいえない。今後、学校の業務が一層、複雑化・多様化することが考えられることから、学校の自律的な運営を可能とするためには、教育行政事務の専門性を有する者が学校運営に参画することが望ましい。
  • 小・中学校においても、例えば、一定規模以上の学校については、事務長等の学校運営事務の統括者を置くことができることを法令上、明確化することが考えられる。

ウ 事務職員の資質・能力の向上

  • 小・中学校で事務職員が一人配置であることを考えると、事務職員の資質・能力の向上は大きな課題であるが、事務職員向けの研修を企画できる指導主事が少ないことや事務職員向けの研修プログラムが少ないことなどの課題がある。

エ 事務の共同実施の推進

  • 事務の共同実施は、一部地域で実施しているものも含めると、48.8%の実施率となっており、事務処理におけるミスや不正の防止、学校間の標準化による事務処理の効率化等において一定の成果を上げているところである。事務の共同実施が教員の事務負担の軽減等にも資するよう、今後の取組の一層の充実が期待される。
  • 特に、事務長が置かれている場合には、事務の共同実施は、事務機能の一層の強化に効果的であると考えられるため、事務長の設置を明確化することと併せて、事務の共同実施の推進を一体的に検討する必要がある。

(2)専門性に基づくチーム体制の構築

教職員や専門スタッフが自らの専門性を十分に発揮し、チームとして総合力を最  大化できるような体制を構築する。

1. 教職員の指導体制の充実

ア 教員

  • 教員が自らの指導力を向上させ、児童生徒と向き合う時間を増やしていくためには、
    1. 教員が行うことが期待されている本来的な業務
      • 授業や授業準備、生徒指導
    2. 教員以外の専門スタッフが関わることで、より効果を上げることが期待できる業務
      • カウンセリング、部活動指導、教員以外の知見を入れることで学びが豊かになる教育(キャリア教育など)
    3. 1.・2.以外の業務
      • 印刷業務、私費会計処理
    など業務の性質に応じて整理し、2.、3.の業務については、事務職員や専門スタッフ、外部人材を活用する方策を検討する必要がある。
  • なお、諸外国と比較した場合、日本の教員は、子供に包括的に関わることが日本の教育の成果につながっているという指摘もあることから、専門スタッフ等の活用に当たっては、単なる業務の切り分けとならないよう注意が必要である。

イ 指導教諭

  • 指導教諭は、優れた指導力を生かして、示範授業を行うことなどにより、指導方法の改革に力を発揮することが期待されている。
    指導教諭は、67都道府県・指定都市教育委員会のうち、23教育委員会で設置されており、配置人数は平成26年度現在、1,873人である。
  • 指導教諭の授業時数が多く、指導教諭に期待される校務を十分に処理できないことが指摘されている。
  • また、指導教諭を配置するに当たっては、指導教諭にどのような役割を担わせるのか、明確化することが必要である。
2. 教員以外の専門スタッフの参画

ア スクールカウンセラー

  • スクールカウンセラーは、心理の専門家として児童生徒へのカウンセリングや、児童生徒への対応について教職員、保護者への専門的な助言や援助を行っている。
  • 国の補助事業で配置されているスクールカウンセラー等は、平成25年度で7,065人となっている。
  • スクールカウンセラーの資格に関して、平成25年度ではスクールカウンセラーの約84%が臨床心理士の資格を有している。
  • スクールカウンセラーは、教育委員会に採用され、非常勤の職として各学校に週1回程度派遣されていることが多いが、学校の教育相談体制の強化や問題行動の未然防止などの観点から効果があることから、量的拡充・資質の確保が望まれている。
  • 子供の貧困対策に関する大綱(平成26年8月29日閣議決定)において、学校は貧困の連鎖を断ち切るためのプラットフォームとして位置付けられ、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置を推進することとされている。
  • スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーについて、学校に必要な職員としてその職務内容等を明確にすることが求められているとの指摘がある。

イ スクールソーシャルワーカー

  • スクールソーシャルワーカーは、福祉の専門家として、問題を抱える児童生徒が置かれた環境への働きかけや関係機関等とのネットワークの構築、連携・調整、学校内におけるチーム体制の構築・支援などの役割を果たしている。
  • 国の補助事業で配置されているスクールソーシャルワーカーは、平成25年度で1,008人となっている。
  • スクールソーシャルワーカーについて、平成25年度に配置された者の有する資格の実人数に占める割合は、高い順に社会福祉士が43.7%、教員免許が39.6%、精神保健福祉士が24.7%となっている。
  • 子供の貧困対策に関する大綱(平成26年8月29日閣議決定)において、学校は貧困の連鎖を断ち切るためのプラットフォームとして位置付けられ、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置を推進することとされている。
  • 文部科学副大臣を主査とする「川崎市における中学1年生殺人事件に関するタスクフォース」が平成27年3月31日にとりまとめた「川崎市における事件の検証を踏まえた当面の対応方策」において、「不登校支援の中心となる教員・地域連携を担当する教員の明確化や、スクールソーシャルワーカーの配置等による、組織的な対応のための体制の整備」は平成27年度特に力を入れて取り組む施策とされている。
  • スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーについて、学校に必要な職員としてその職務内容等を明確にすることが求められているとの指摘がある。

ウ 医療的ケアを行う看護師

  • 医療的ケアを行う看護師は、対象となる児童生徒に対して、医師の指示の下、学校生活における日常的な医療的ケアを実施するほか、当該児童生徒に関わる教職員への指導・助言、保護者からの相談への対応、主治医や放課後デイサービス等との連絡を担い、医療的ケアに関する校内体制の中心的役割を果たしている。
  • 平成26年度において、公立特別支援学校において、医療的ケアが必要な幼児児童生徒数は7,774人、看護師等数は1,450人であり、ともに増加傾向にある。このうち、国は、330人分の看護師等の配置に必要な経費を補助している。
    公立小・中学校の医療的ケアが必要な児童生徒数は、976人、看護師等数は379人である。
  • 医療技術の進歩等を背景に、特別支援学校、小・中学校ともに医療的ケアを必要とする児童生徒数は増加傾向にある。
  • 国が補助している看護師等の人数は、医療的ケアを必要とする幼児児童生徒の数に比べて不十分であり、また、小・中学校に配置されている看護師等に係る支援は行われていない。
  • 医療的ケアを必要とする児童生徒が安心して学校で学ぶことができるよう看護師の配置を進めていく必要がある。

エ 特別支援教育支援員

  • 特別支援教育支援員は、障害のある児童生徒等の日常生活上の介助、発達障害の児童生徒等に対する学習支援など、日常の授業等において、教員を支援する役割を担っている。
  • 平成26年度の公立学校の配置実績は、幼稚園で5,638人、小・中学校で43,586人、高等学校で482人となっており、地方財政措置による支援が講じられている。
  • 平成25年には、学校教育法施行規則が一部改正され、障害のある児童生徒の就学について、個々の障害の状態等を踏まえ、総合的な観点から就学先を決定する仕組みとされた。
  • 特別支援学級の在籍者や通級による指導の対象者は増加し続けており、また、通常学級においても発達障害の可能性のある児童生徒への教育的な対応が求められている。
  • 多様な子供のニーズに的確に応えていくためには、教員だけでの対応には限界があることから、特別支援教育支援員の配置を充実していく必要がある。
  • また、教員と特別支援教育支援員との役割分担と協働の在り方等について、教員と特別支援教育支援員の双方で具体的に理解してもらう必要があるという指摘がある。

オ ICT支援員

  • ICT支援員は、学校における教員のICT活用(例えば、授業、校務、教員研修等の場面)をサポートすることにより、ICTを活用した授業等を教員がスムーズに行えるように支援する役割を果たしている。
  • 地方公共団体で配置されているICT支援員の数は、平成25年度で2,000人となっており、地方財政措置による支援が講じられている。
  • ICTを活用した教育の普及により、教職員をサポートする一定の能力を備えたICT支援員の不足が懸念されており、教育再生実行会議第七次提言(平成27年5月14日)においても、ICT支援員の養成、学校への配置の促進が求められている。

カ 学校司書

  • 平成26年6月に学校図書館法が改正され、学校には、専ら学校図書館の職務に従事する職員(以下「学校司書」という。)を置くよう努めなければならないとされている。
  • 学校司書の配置は平成26年5月時点で小学校では54.3%、中学校では53.0%、高等学校では64.5%となっている。
  • 学校司書については、学校図書館法の一部を改正する法律において、その専門性を確保するため、資格・養成の在り方等について検討を進めるとともに、研修の充実等必要な措置を講ずることとされている。

キ 部活動支援員(仮称)

  • 平成26年7月に日本体育協会が公表した「学校運動部活動指導者の実態に関する調査」によると、
    • 担当教科が保健体育以外であり、担当している部活動の競技経験もない教員が中学校で45.9%、高校で40.9%
    • 実技指導をしない教員が担当している部が中学校で13.7%、高校で18.2%
    という結果が出ている。
  • また、OECDが実施した国際教員指導環境調査(TALIS)の結果においても、中学校教員の課外活動指導時間は、週7.7時間であり、参加国平均の2.1時間と比較すると、大幅に長い。
  • 部活動の指導や顧問を行うことができる者の範囲について、教育委員会や都道府県の中体連・高体連がルールを決めている場合もあれば、決められていない場合もある。
  • ルールが定められている場合においては、部活動指導は外部指導者も行えるが、顧問や単独での引率は常勤の教職員に限定していることが多い。
  • 部活動を充実していくという観点から、教員に加え、部活動の指導、顧問、引率等を行うことができる新たな職の在り方について検討する必要がある。

ク サポートスタッフ

  • 国は、補習等のための指導員等派遣事業を実施し、児童生徒学習サポーターや教師業務アシスタント等に対する支援を行っている。
  • 多様な子供の実態に応じて、効果的な指導を行うためには、多様な経験を持った地域人材等の教育活動への参画を得ることが重要である。
3. 地域との連携体制の整備

ア 地域連携を担当する教職員

  • 子供たちや学校が抱える課題を解決し、子供たちの豊かな学びを実現していくためには、社会総掛かりでの教育を進めていくことが重要である。
  • 学校が地域と連携するに当たっては、地域や教育委員会との連絡・調整、校内の教職員の支援ニーズの把握・調整、学校支援活動の運営・企画・総括などの役割を担う者が必要である。
  • 学校と地域との連携を担う教職員については、都道府県や市町村の教育委員会規則等で位置付けられている学校は少なく、学校の方針として、校務分掌上位置付けられているところが多い。
  • 学校と地域との連携を担う教職員を位置づけることにより、学校と地域の信頼関係の構築や組織的な地域連携活動の展開等の成果が見られるところであり、その役割の必要性や重要性に関する認識を高めていくことが重要である。         
  • そのため、地域連携担当の教職員の職務内容や位置付けを明確化するとともに、そのような教職員に社会教育主事の有資格者を活用することについても検討する必要がある。
  • また、地域連携を担当する教職員と、地域に配置され、学校との連携窓口を担うコーディネーター等との連携を図っていくことが重要である。

(3)教職員一人一人が力を発揮できる環境の整備

チームとしての学校において、教職員一人一人が力を発揮できるよう、人材育成  や業務改善等の取組を進める。

1. 人材育成の推進

ア 人事評価制度の活用

  • 平成26年6月に地方公務員法が改正され、勤務評定制度に代わり、人事評価制度が導入される予定である。
  • 教員については、既に、人事評価制度導入の趣旨を踏まえた、目標管理型の人事評価制度の導入が進められてきており、今後、更に教職員の意欲や資質の向上に資するようなかたちで実施されることが重要である。
  • 人事評価の結果の活用状況を見ると、人材育成・能力開発・資質向上や研修に活用している教育委員会が多い。
  • また、人事評価を行うに当たっては、校長が教諭の授業を見ることが重要であるが、その際、適切なフィードバックを行うことが重要である。
  • 教職員個人の取組とあわせて、チームとしての取組も評価するような工夫を講じることも考えられる。

イ 教職員表彰制度の活用

  • 優れた実践を行った教員や高い指導力のある教職員を顕彰する仕組みの更なる推進を図っていく必要がある。
  • チームとしての取組を進める観点から、教職員表彰の対象として、チームとしての取組を対象に加えることも考えられる。
  • また、表彰に伴う措置として、特別な研修機会を付与する、優れた教職員の実践の普及を図るなど、表彰制度の活用を進める必要がある。
2. 業務改善

ア 学校における業務改善の推進

  • OECDが実施した国際教員指導環境調査(TALIS)や教員勤務実態調査等において、教員の多忙化が指摘されているように、社会や保護者等からの学校の要請の多様化や、学校現場を取り巻く環境の複雑化・困難化、様々な教育課題への対応等を背景とした教員の負担の増加は大きな課題となっている。
  • また、全国公立学校教頭会の調査では、教頭が費やしたい職務内容としては、職場の人間関係づくり、教職員の評価・育成や校内研修などが上げられているが、実際には、各種調査依頼への対応や外部対応に負担を感じているという結果が出ている。
  • 現行の学校制度が整備された当時は想定されていなかった業務や役割が増大してきたことを踏まえ、全ての業務や役割を学校で担うという発想に立つのではなく、学校として、必ずしも行う必要がない業務、他の機関と連携した方が効果的な業務など、教員の業務と同様、地域や学校の実態に基づき、判断することが必要である。
  • 国や都道府県・市町村教育委員会は、教職員が業務を効率的・効果的に進めることができるような支援を行う必要がある。
3. 教育委員会等による学校への支援の充実

ア 指導主事の配置の充実

  • 主体的・協働的学習など指導方法の改善を進めていくためには、指導主事が学校を支援していくことが必要である。
  • 一方、小規模の市町村では、指導主事の配置が少数のところも多く、引き続き、国や都道府県の財政的支援が必要である。
  • また、指導主事が配置されていても、事務業務に追われて、学校への指導が十分にできないような状況も見られる。
  • 学校の指導力向上のためには、都道府県教育委員会、教育事務所、市町村教育委員会それぞれに配置されている指導主事が、しっかりと分担、連携して取り組む必要がある。

イ 保護者や地域からの要望や相談への対応の支援

  • 教員勤務実態調査の結果によれば、小・中学校教員の約70%が保護者への対応が増えたと回答し、保護者への対応をストレスと感じる教員が50%を超えている。
  • 保護者や地域からの相談や要望の内容も複雑化・困難化しており、対応に苦慮する事例も見られる。
  • 教育委員会や学校は、保護者や地域への情報提供、学校評価等の取組を通して、学校の人員や予算等の実態について説明し、学校として対応可能な範囲について、日頃から理解を求めておくことが重要である。
  • 相談や要望を受けた際に、第三者的立場から中立的に問題解決を支援したり、教職員が専門的な知見を直接聞いたりできるような仕組みを作ることによって、学校の負担軽減につなげることが考えられる。

お問合せ先

初等中等教育局教育課程課企画室

電話番号:03-5253-4111(代表)(内線2369)

-- 登録:平成27年09月 --