児童生徒の学習評価の在り方に関するワーキンググループにおける,これまでの主な意見について

 総論(検討に当たっての基本的な考え方など)

○今回の学習指導要領の改訂は,「生きる力」の概念を継承,発展させたものである。現場との関係も考えると,大きな枠は変えず,教員の専門性を生かした評価の在り方や,観点・評価規準などをより深く実践に結びつけていく方策を深める方向で検討すべき。
○児童生徒の学習状況の評価は,教員として授業改善にどう取り組むかという問題であると同時に,学校や教育委員会として教育課程のPDCAサイクルにどう組み込むかという問題でもある。特に,指導と評価に関する優れた取組みについては,学校や教育委員会が組織として,引き継いでいくことが重要である。
○学習評価の在り方を検討するに当たっては,妥当性(教育課程との適合性),信頼性,公正性(条件の明瞭さなど),実行可能性に配慮する必要がある。また,客観性についても考慮が必要である。
○学習評価の在り方の検討に当たっては,客観性の向上や指導と評価の一体化の推進を図るだけでなく,評価の在り方の変更により,教員が児童生徒と向き合う時間が減ってしまう可能性についても配慮する必要がある。
○学校段階によって,状況が異なることを踏まえて,検討を行う必要がある。具体的には,小学校は,担任が全教科を指導する必要があること,中学校や高等学校は,高校や大学への進学や就職を考える必要があることを踏まえる必要がある。また,学校段階によって,観点別評価の理解や実践に差がある。
○教科ごとに特性が異なることにも配慮が必要であるが,小学校においては,担任が全教科を指導する必要があるので,観点の大きなくくりなど,ある程度の教科共通性は確保すべきではないか。
○新しい評価方法の開発と普及は,大変,難しい。モデルを示し,説明会や公開授業を行っても,なお,なかなか広まらない。学校で使いやすいのはどのようなものか,教員への研修をどう行うかということまで含めて検討する必要がある。

評価の目的など

○評価の目的としては,児童生徒の学習状況を把握し,それを個々の児童生徒の学習改善や授業改善に生かすことが重要である。
○指導と評価の一体化については,うまく実践がなされていない場合もある。例えば,学習指導案に示した目標にあった適切な評価方法が選ばれていなかったり,結果としての作品の評価だけになったり,授業改善に生かす視点が不十分であったり,そもそも評価をどう授業に生かせばいいのかが理解できてない例が見られる。
○教員は,評価規準等と関連付けながら授業を行えるよう,意識付けや資質の向上に努めることが重要である。
○国は,形成的評価と総括的評価の区別をより鮮明に示すとともに,指導要録や通信簿をはじめ,フォーマルな評価だけではなく,もっとインフォーマルな評価や普段の授業の中での評価に焦点を充て,その改善を促す方策が必要ではないか。例えば,授業の終わりに分かったことを書かせる教員は多いが,分からないことを書かせる教員にはほとんど出会ったことがない。そういうところへもっと注意を促していくことも必要ではないか。

目標に準拠した評価のこれまでの実施状況などについて

○目標に準拠した評価については,平成13年度の指導要録の改訂で,評定も含めた目標準拠の考え方が示されたところであり,これまでの改善の方向に沿って,より具体化な評価の在り方の検討を進めていくべきである。特に,教員が,児童生徒一人一人の学習状況を的確につかもうとする意識が高まっている,指導と評価の一体化に向けた努力が広まってきているなどの変化が現れてきている。
○目標に準拠した評価は正しい方向性だが,評価規準と評価方法の開発に関する研究は,「評価規準」の参考資料が国立教育政策所より示された当時は,十分進んでいなかった。
○目標に準拠した評価は高等学校等への入学者選抜には使えない,相対評価よりも恣意的で甘くなるという誤解はまだ残っている。教員や保護者への周知も一層図るべきではないか。
○目標に準拠した評価としての内実が伴っていない例もまだある。例えば,英語などにおいて,教科書の内容をそのまま定期テストに使うことにより,英語力と言うより,記憶力のテストともいうべき状態になっている例もある。
○学校では,学習の目標や評価規準より先に学習活動を決めようとしてしまう場合も多く,学習指導要領に定める目標に沿った指導をどう充実していくかということを考える必要がある。特に,小学校では,業者が,プレテスト,小テスト,単元末テストから通信簿の作成までを行うソフトウェアなどを学校に提供しており,教員もこれらを活用している。このような現状を踏まえれば,業者が作成する評価問題の質や通信簿などに記載されるまでの評価の過程がよりよいものになる方策を,国や県が考えることも必要ではないか。
○目標に準拠した評価を行うに当たっては,量的に評価できるものと質的に評価しなければならないものがある。個々の授業では,適切な評価方法を選択しつつ,いずれかの観点について重点的化して指導と評価を行うことも重要であるにもかかわらず,教員は,そこまでの重点化に踏み切れないことも多い。
○目標に準拠した評価と言っても,漢字や計算,地名などの知識や簡単な理解に関するものと,思考力・判断力といったものとでは,評価方法や評価規準の在り方を区別して考える必要があるのではないか。

評価規準について

○国立教育政策研究所が参考資料として示した評価規準は,各教育委員会や教科書会社に対する事例提示につながっており,おおむね満足できる状況(「B」)を基に,個に応じた指導のきっかけも示していた。こうした取組みは,ぜひ継続すべきである。
○国立教育政策研究所の参考資料を基に,都道府県等では,評価規準等を作成してきた。取組みの継続性という観点からは,次は,具体的な評価問題の作成を行うべきではないか。
○全国では,例えば,同じ教科書を使っているということで,市内で単元計画や評価規準を共有している例や,学校内で担当するクラスを学期ごとにずらす例など,評価結果の妥当性を向上させようという取組みや,教員が評価規準の作成に取り組む機会を設けることで,教員の指導力の向上につなげようとする取組みなど,様々な取組みが行われてきている。
○現在の評価規準は,どこまで指導すればいいのか,不明確な部分があるのではないか。また,各学年を超えた「B」の関係が見えず,どのように力を伸ばせばよいか,伝わりにくいところがあるのではないか。
○目標と評価規準の明確化は進んだが,それに対応した評価方法までは示されなかった。このため,どのような評価方法を用いてどの程度まで評価すれば,目標や評価規準に沿った評価になるのかが分からず,結果として,細分化した評価規準に対応しようとし過ぎるあまり,教員が忙しくなりすぎたり,評価方法まで細分化して本来目指している学力を評価できなくなったりするなど,実行可能性や妥当性の面で課題も出ているではないか。
○評価方法については,国立教育政策研究所や都道府県の教育課程研究センター等により,様々に示されているが,教員には十分に伝わっていない。国も都道府県レベルの取組みをもっと評価するなどして,周知を図ってはどうか。
○「B」と評価された児童生徒について,どう学習すれば,十分満足できると判断される状況(「A」)になれるのかということにも答えられる必要があるのではないか。
○「B」の児童生徒を「A」に引き上げる対応はそれほど求められていない一方,努力を要すると判断される状況(「C」)の児童生徒を「B」に引き上げる対応は必要不可欠であるとの考えから,「B」規準を中心に国立教育政策研究所等が示したということではないか。
○「規準」と「基準」の区別については,「規準」は質,「基準」は量という言い方をすることもあるが,必ずしもそうではない。「関心・意欲・態度」や「思考・判断」のように,単純には割り切れない学力を,「規準」という概念により,豊かで幅のある学力として伸ばそうと図ってきたと言えるのではないか。また,複数の観点があることで,各学校の実態に応じた評価がなされ得るものである。
○「規準」と「基準」の両方の考え方があるかも知れないが,「規準」だけで考えるようにするなど,考え方をシンプルなものにしたい。

適切な評価を行うための多様な方策について

○イギリスなどと同様,国が,課題例とマーキング・スキーム(採点基準と回答例)により,こういう問題でここまでできていれば到達できているものである,という例を示すことが考えられるのではないか。それができなくとも,学力ルーブリック(評価基準表)の作成や資質・能力論からのチェック・リストのようなものを国が示すことも考えられるのではないか。
○知識,技能の習得については,筆記テストや技能テストで評価する。また,知識,技能を活用する力については,論説文やレポート,展示物といった完成品を評価したり,スピーチやプレゼンテーション,実験の実施といった実演を評価したりするなどといった,実際的な文脈で知識,技能を総合して使う「パフォーマンス課題」で評価する。このように,目標や身に付けさせるべき力にあわせて,様々な方法を組み合わせて評価を行う学力評価計画の開発を推奨すべきである。その際,国は,教科の理解の本質に係るような事柄,教科別・領域別のルーブリック,「パフォーマンス課題」の事例等,大綱的な基準を参考資料として示すにとどめ,学校や地方の創意工夫を凝らした学力評価計画の研究開発が進む仕組みを考えるべきである。
○教育課程実施状況調査や全国学力・学習状況調査の問題は,教員による評価課題の作成のよい資料になる。こういう国レベルで作られる課題をもっと広める方法があっていいのではないか。
○到達すべき課題例を示すと,授業を通して最終的な段階で,そこだけチェックするということに評価論が陥ることになるのではないか。課題例を示すとしても,それだけではなく,授業構成を見据えて考える必要がある。
○教員が,単元計画を総合的にたてられる力を身に付けることが,評価を明確にした授業を行うことにつながるのではないか。

評価の観点の在り方について

○現行の評価の4観点については,維持すべき。その理由としては,学力を分析するのに優れた視点であること,客観性を高めたり授業改善に結びつけたりする取組みが進み始めた状況であるにもかかわらず,観点を変えれば,評価規準の設定等の議論に逆戻りしてしまうおそれがあること,今回の学習指導要領の改訂により,評価の観点との整合性は高まったと言えることなどがある。また,今回の学習指導要領の改訂における習得・活用などの考え方は,観点との関係を整理すれば,現場への実践へとつなげていけるのではないか。
○実際に評価する場合には,せいぜい,知識,技能とそれに伴う浅い理解,高次の技能,深い理解といったような2区分以上に分けるのは難しいのではないか。
○「知識の習得」や「技能の習得」,「知識・技能の活用」を観点としつつ,「関心・意欲・態度」については,他の観点の中で一体的に評価することが可能ではないか。
○4観点の観点別評価が定着しつつあると言われるが,導入からかなりの年数がたっているにもかかわらず,いまだに抵抗感があるのも事実であり,どこかわかりにくさ,不明確さがあるのではないか。
 学問,芸術,実技,ビジネスなど,どの世界でも「基礎的な知識・技能」「活用・探究・創造(創意工夫)」「関心・意欲・態度」を評価の対象としており,このようなものがわかりやすく,学習指導要領の改訂の方向性にも沿っていると言えるのではないか。また,これ自体,従来の4観点と大きく異なるというものでもないのではないか。
○学校教育法との関係では,第30条2項に示された「基礎的な知識及び技能」「これらを活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等」「主体的に学習に取り組む態度」に観点をそろえる必要があるのではないか。
○学校教育法自体は,大きな枠組みを示しているものであり,必ずしも,同法に示されているものと観点を一致させる必要はないのではないか。
○観点の問題は,各教科等の特性,授業の在り方といった切り口を持たないと形骸化する。これは,突き詰めれば,通教科的な学力と教科固有の学力をどうとらえるかという問題ではないか。現在は,すべての教科において,4つの学力の構成要素が示されているが,それをすべての教科に当てはめるというのではなく,教科ごとに得意な部分を伸ばすという発想でもよいのではないか。
○国語や外国語は,現行の観点に,「思考・判断」に当たるものが明示されていないが,教科の特性には合っており,妥当性が高い。特に,国語は,学習指導要領においても,技能として,指導事項が明確に示されており,その定着を図ることが重要である。
○算数・数学については,小学校段階では,できることをもって分かっていると言えるケースが多いが,発達段階が上がると,分かっていないとできないというケースが多くなる。算数・数学で言うところの表現・処理,すなわち,「技能・表現」を見る問題ばかりになっている現状があり,仮に,「知識・理解」と「技能・表現」を統合すると,「知識・理解」が適切に評価されなくおそれがある。

評価の観点の間の関係性について

○評価の観点の関係の構造化等について,検討を深める必要がある。また,現行の観点は,それぞれ相関性が高いと考えられるが,そのことをどう整理すべきか。
○本来,児童生徒が学ぶ姿は一つであるはずなのに,どこまでが「知識」で,どこまでが「思考」で,ということにこだわっている教員が多い。4観点の関連性を教員や保護者にもっと明示していくべきである。

関心・意欲・態度の評価の在り方について

○「関心・意欲・態度」は,生きる力の基本であり,現在の社会において,知識などを求めることに意欲的に取り組む姿勢を養うことは必要であること,国際的な調査において,我が国の児童生徒は,学校に引き続き家庭で学習に取り組んだり,将来の夢などを追求してみたりする部分が弱いこと,教員が児童生徒の意欲を喚起する授業を行うことにつながること,「関心・意欲・態度」が学習指導要領の目標に盛り込まれていることなどを踏まえると,引き続き,観点の一つとして示すことが妥当である。仮に,他の観点と一体化した場合,「関心・意欲・態度」をはぐくむ指導が行われなくなるおそれもある。
○「関心・意欲・態度」を観点として示すことは必要だが,実際にどう改善に生かしていけるか。また,教科間での考え方の違い,評価の対象の違いが大きいので,どういったことが評価の対象として含まれるのかということはもう少し明らかにすべきではないか。
○「関心・意欲・態度」は,ペーパーテストでは,他の観点とあわせて評価することは適当である。一方,レポートや論述等の言語活動を評価する際は,他の観点と区別することが適当ではないか。
○授業中の挙手や発言の回数といった表面的な状況のみで評価されるべきではないと言われるが,実際,こういったものでないと,はっきりとした徴候としてはとらえられないという指摘もあり,評価は非常に難しい。また,「関心・意欲・態度」に係る学力は,他の観点に係る学力に含まれるものと整理できるので,あえて,観点として設ける必要はないのではないか。
○情意面は,例えば,生徒が教員のことを好きか嫌いかということでも左右されるものであり,発達段階に沿った指導が難しい。その意味で,情意面の評価は,認知面の評価と少し切り離した形で考えることも必要ではないか。
○「関心・意欲・態度」は,客観的にとらえようとするべきものではなく,児童生徒が自分を学習者としてどうとらえているかを示させることによって判断すべきではないか。

基礎的・基本的な知識・技能の評価の在り方について

○学習評価は,学習の不十分な点について,それを補っていくことに生かすべき。所見などでいいところに着目し,児童生徒に伝えるのは重要ではあるが,教員としては,児童生徒の学習の足りないところ,十分分かっていないところを把握しながら補うことを考える必要がある。
○基礎的・基本的な知識・技能は,計算練習とか漢字の習得に限定されがちであるが,学習指導要領の内容が対象であるということを,教育に携わる者や社会全体で理解を共有していく必要がある。

思考力・判断力・表現力等を育成するための評価の在り方について

○思考力・判断力の評価については,ルーブリックや思考力を測る評価方法の開発も進んでいるところであり,そういうことも取り入れながら,国として,参考資料を出せないか。
○実際の授業が児童生徒に主体的に考えさせる授業になっていないことが多いことを踏まえると,国としては,ペーパーテストで実施できる課題例を示すだけではなく,授業構成全体を見据えて考える必要があるのではないか。
○作文と言うと,読書感想文や生活体験が多く,説明,論述ということを習わない。新しい学習指導要領では,言語に関する能力を教科横断的に育てることになっており,それを評価として行うためには,発表とか討論,レポートをきちっと位置づけることが大切である。その際,すべてフォーマルな評価を行うのではなく,インフォーマルな評価を行うものもあってよい。
○情報の取り出し,テキストの解釈,熟考・評価など,論文を書く一連のプロセスを分析したと考えられるPISA調査や全国学力・学習状況調査のB問題等に対応した問題を解かせることが広がり,より包括的な課題への取組みがなおざりにされているのではないか。
○論説文やレポート,展示物といった完成品を評価したり,スピーチやプレゼンテーション,実験の実施といった実演を評価したりするなどといった,リアルな文脈で知識,技能を総合して使いこなす「パフォーマンス課題」の実施を広めていくことが考えられないか。このような「パフォーマンス課題」については,教科の本質の理解に係るような事柄を文章にして教員として把握する必要はあるが,その文章自体を教えるのではなく,それを生徒が学びながら気づけるような工夫された課題を設定することが重要であること,実施する頻度は学期に1度程度することなどに配慮すれば,その妥当性や実行可能性も高まるのではないか。
○知識,技能を活用する力の評価については,具体的な子どもたちの作品を分析することで開発されるルーブリックを用いて長期的な発達をとらえ,到達点で総括的評価を行うという発想があっていいのではないか。
○シンガポールなどでは,ルーブリックを用いた研修なども行われており,教員の資質向上という観点から,面白い取組みである。
○「パフォーマンス課題」やそれに則したルーブリック作りについては,実際の学校の現場で実践可能かということを十分に検討する必要がある。例えば,算数・数学における課題学習等などの従来の取組みや,教科ごとの用語との関係性等も明らかにする必要があるのではないか。また,単元ごとの学習指導案の中でさえ,評価場面と方法が整合していないことがある現状において,学校の現場における評価を一層困難にさせることにならないか。
○言語に関する能力の育成を,どのように考えていくか。

評定について

○評定は,観点別評価の結果を踏まえてのものとして実施されていれば,意義もあり,また,児童生徒や保護者にとって,教科間の比較や過去の成績との比較に用いられたりするという意味で,教育的な意味もある。
○評定は指導には生かしにくい。また,評価の結果は,入試選抜のみならず,学校段階を超えて,児童生徒の学力を伸ばしていくことにも生かしていくことが重要であることにかんがみると,児童生徒の学習状況を詳細に把握できる観点別の評価があれば,評定は無くともよいのではないか。
○大学については,ある学校の評定「4」より別の学校の評定「5」の方が学力的に低いという,そういう実情の評定をもらうよりは,観点別の学力の評価結果を正しく出してもらえるのであれば,その結果をもらう方が望ましいと考えている面もあるのではないか。
○観点別評価の結果を評定に結びつける方法については,もう少し考え方を示すべきではないか。
○観点別評価の結果を評定に結びつけることは,それぞれの趣旨が違うので,行わない方がよいのではないか。

高等学校における評価の在り方について

○高等学校においては,生徒の良さを伸ばすということで,観点別評価に積極的に取り組んでいる学校や教員がいる一方,観点の考え方などが十分に浸透していない面がある。このため,主な教科や必履修科目などについては,小中高の接続の観点から,観点別評価の欄を指導要録に設けることを検討してもいいのではないか。
○専門高校では,一人4,5科目を担当していること等にかんがみると,観点別評価の一律の実施は難しいのではないか。また,国立教育政策研究所の資料は,量が多くて抽象的な面があり,高等学校の現場になじみにくいのではないか。
○生徒の実態や特性が多様化している高等学校の現状を考えると,一律の目標の下での評価を推進し過ぎると,後期中等教育としての教育機能が崩れる恐れはないか。例えば,多くの生徒が進学を目指す学校とそうでない学校で,どのように共通の目標を設定できるのか。

評価に伴う教員の負担軽減について

○現行の評価の在り方は,教員にとっては,大きな負担感,多忙感の原因になっているのではないか。
○客観性を担保しつつ,簡素化する方法にはどのようなものがあるのか。
○具体的な方策としては,例えば,
 ・「関心・意欲・態度」を他の観点と一体的に評価し,観点からは外す
 ・様々な評価方法を組み合わせた学力評価方法の開発を推奨し,国が「パフォーマンス課題」の例示等を行う
 ・形成的評価と総括的評価の区別を明確にする
 ことなどにより,どのような評価方法でどの程度評価すればよいか明確になり,教員の負担は,かなり軽減できるのではないか。
○学校や教員が求めているのは,一つ一つの単元構成の中で,具体的な評価の規準を,ワークシートや学習指導案とともに,国などが例示することである。この際,一単元や一単位時間ですべての観点を評価しようとするのではなく,重点的に評価する観点を決めることをはじめ,様々な単元の構成や評価の方法があることを伝え,学校や教員が工夫できることもあわせて伝える必要がある。
○教員が学習評価について不十分な知識で行わざるを得ない現状が,評価に時間が必要となり,ひいては,多忙感につながっているのではないか。

その他

(全国学力・学習状況調査等について)
○全国学力・学習状況調査と指導要録等における評価との関係はどうするか。そこは特別な関係づけをしないことも含め,考え方を整理しなければいけないのではないか。なお,ヒアリングを行った教育委員会からは,全国学力・学習状況調査の結果については,学校が各個人に返している成績表で示しているのみであるとの説明があった。
○ヒアリングを行った教育委員会からは,
 ・全国学力・学習状況調査や県独自の調査については,児童生徒の一人一人の補充指導等の参考にするとともに,学級や学校全体としての指導の改善に役立てることが重要である
 ・児童生徒の回答状況に改善すべき点が見られた課題については,児童生徒が取り組む課題例を指導案とともに示している。その課題例の作成や指導案づくりには,県教育委員会が中心になりながら,学校の先生方と一緒に行っている。このことが,学校の現場への波及効果を生んでいる部分があると考えている
 ・県の学力調査は,教員自らが採点することとしており,指導に生かすまでの時間的な間隔が少なくて済む
 などの説明があった。

(小学校外国語活動について)
○小学校における外国語活動はどう評価すべきなのか。教科としては位置づけられていないことにも配慮しつつ,検討すべきではないか。

(特別支援学校における評価について)
○特別支援学校の学習指導要領においては,自立活動と重複障害者を教育する場合のみならず,各教科等を含めて個別の指導計画や教育支援計画を作成することが明確化された。このようなケースについては,個別の児童生徒の指導目標をもとにした評価も取り入れて行く必要がある。

(学習評価の在り方の周知について)
○学習指導要領をすべての教員に配布したように,学習評価の在り方についても,手引きや解説の作成など,周知方法の充実を図ることが必要ではないか。
○児童生徒に主体的に考えさせる授業や指導につながる評価の在り方を十分理解し,その周知などについて,地域ごとに進めていくことのできる教員の育成を図ることが必要である。

お問合せ先

初等中等教育局教育課程課教育課程企画室

電話番号:03-5253-4111(内線2613)

-- 登録:平成21年以前 --