ここからサイトの主なメニューです

児童生徒の学習評価の在り方について(報告)

これまでの審議の経緯

○ 中央教育審議会においては,平成20年1月に「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について」の答申がとりまとめられた。この答申を受けて,平成20年3月に幼稚園,小学校,中学校の学習指導要領等が改訂され,平成21年3月に高等学校,特別支援学校の学習指導要領等が改訂された。新しい学習指導要領等は,幼稚園については平成21年度から実施されており,小学校については平成23年度,中学校については平成24年度から全面実施,高等学校については平成25年度から年次進行により実施されることとなっている。また,特別支援学校については,幼稚園,小学校,中学校,高等学校それぞれに準じて実施されることとなっている。

○ 学習評価については,同答申において「学校や教師は指導の説明責任だけではなく,指導の結果責任も問われていることを前提としつつ,評価の観点並びにそれぞれの評価の考え方,設定する評価規準,評価方法及び評価時期等について,今回の学習指導要領改訂の基本的な考え方を踏まえ,より一層簡素で効率的な学習評価が実施できるような枠組みについて,更に専門的な見地から検討を行う」こととされた(※1)。これを受け,平成21年4月1日に,初等中等教育分科会教育課程部会の下に,児童生徒の学習評価の在り方に関するワーキンググループを設置することを決定した。

○ ワーキンググループは,同年6月8日の第1回以降13回開催された。また,同年7月28日には,教育課程部会において「児童生徒の学習評価の在り方に関するワーキンググループにおける,これまでの主な意見について」報告を受けた。さらに,書面による関係団体からのヒアリング(※2)が実施された。

○ また,平成22年2月12日に開催された教育課程部会において,ワーキンググループより中間まとめが報告されるとともに,同内容について,一般の方々から意見を募集した。

○ これらの意見等を踏まえ,さらに議論を進め,小・中・高等学校及び特別支援学校における学習評価の在り方の改善のために必要な事項について,以下のように報告するものである。


(※1) 平成21年4月実施の幼稚園教育要領の下での幼児指導要録については平成20年12月22日の教育課程部会に報告されている。

(※2) 平成21年6月から7月にかけて書面によるヒアリングを行った。意見表明を行った団体は,以下のとおりである。
 全国連合小学校長会,全日本中学校長会,全国高等学校長協会,全国公立学校教頭会,日本私立小学校連合会,日本私立中学高等学校連合会,全国都道府県教育長協議会,指定都市教育委員・教育長協議会,中核市教育長会,全国市町村教育委員会連合会,全国都市教育長協議会,全国町村教育長会,日本PTA全国協議会,全国高等学校PTA連合会,日本教職員組合,全日本教職員組合,全日本教職員連盟,日本高等学校教職員組合,全国教育管理職員団体協議会,国立大学協会,日本私立大学団体連合会,日本青年会議所

1.学習評価の基本的な考え方とその見直しの経緯等について

(1) 学習評価の基本的な考え方とその見直しの経緯

○ 教育基本法第1条は,教育の目的を「人格の完成を目指し,平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成」と規定している。この教育基本法に定める教育の目的や目標,学校教育法に定める各学校段階の目的や目標の実現を図るため,各学校が編成する教育課程の基準である学習指導要領が定められている。

○ 学習評価は,学校における教育活動に関し,子どもたちの学習状況を評価するものである。現在,各教科については,学習状況を分析的にとらえる観点別学習状況の評価と総括的にとらえる評定(※1)とを,学習指導要領に定める目標に準拠した評価として実施する(※2)ことが明確にされている。学習評価には,このような目標に準拠した評価のほか,学級・学年など集団の中での相対的な位置付けに関する集団に準拠した評価や,観点別学習状況の評価や評定には示しきれない子どもたち一人一人のよい点や可能性,進歩の状況について評価する個人内評価がある。
 学習評価を行うに当たっては,子どもたち一人一人に学習指導要領の内容が確実に定着するよう,学習指導の改善につなげていくことが重要である。

○ また,各学校は,学習指導要領等に従い,地域や学校の実態等を考慮して適切な教育課程を編成し,学習指導と学習評価を実施する役割を担っている。一方,学校を設置する教育委員会等は,学校の管理運営に関する基本的事項を定める役割を担っており,指導要録の様式等学習評価に係る基本的事項について定めることとされている。

○ 国においては,各学校や設置者の参考となるよう,おおむね10年に一度行ってきた学習指導要領の改訂ごとに,その趣旨を反映した学習評価の基本的な考え方を示すとともに,指導要録に記載する事項等を提示してきたところである。

(小・中学校における主な見直しの経緯)

○ 昭和52年に小・中学校については,基礎的・基本的な事項を確実に身に付けられるよう教育内容を精選し,知・徳・体の調和のとれた発達を目指して,学習指導要領が改訂された。この改訂に伴う指導要録の見直しにおいて,各教科の学習の記録について集団に準拠して評価する評定(※3)を引き続き実施しつつ,併せて目標に準拠して観点別学習状況の評価を実施することが明確にされた。

○ その後,社会の変化に対応し主体的に生きていくことができる資質や能力の育成を重視した平成元年の学習指導要領の改訂に伴う指導要録の見直しにおいては,各教科の学習の記録について,目標に準拠して実施する観点別学習状況の評価を基本としつつ,集団に準拠して評価する評定を併用することとされた。

○ さらに,平成元年の学習指導要領の改訂の趣旨を更に発展させ,変化の激しい時代を担う子どもたちに必要な「生きる力」をはぐくむことを目指して,平成10年に学習指導要領が改訂された。この改訂に伴う指導要録の見直しにおいては,評定についても目標に準拠した評価として実施することが適当である(※4)とされた。

○ なお,児童生徒の学習状況を評価するに当たっては,観点別学習状況の評価や評定には十分示しきれない,児童生徒一人一人のよい点や可能性,進歩の状況等についても評価し,このような個人内評価を積極的に児童生徒に伝えることが重要である。
 個人内評価は,現在の指導要録においては,「総合所見及び指導上参考となる諸事項」(※5)において記入することとされている。

(各教科の評価の観点に関する経緯)

○ 昭和52年の学習指導要領の改訂に伴う指導要録の見直しの際,各教科の評価の観点として「関心・態度」が共通に示された。
 平成元年の学習指導要領の改訂に伴う指導要録の見直しの際,評価の観点については,「自ら学ぶ意欲の育成や思考力,判断力などの能力の育成に重点を置くことが明確になるよう」(※6),基本的には「関心・意欲・態度」,「思考・判断」,「技能・表現(又は技能)」及び「知識・理解」で構成すること,文部省が通知において示す観点の順序もこのとおりとすることとされた。この考え方は,平成10年の学習指導要領の改訂に伴う指導要録の見直しに当たっても基本的に踏襲され,平成13年4月27日初等中等教育局長通知においては,評価の観点を,各教科を通じ基本的には「関心・意欲・態度」,「思考・判断」,「技能・表現」,「知識・理解」(以下「評価の4観点」という。)で構成することとされた。

○ その後,国立教育政策研究所から,自ら学ぶ意欲や思考力,判断力,表現力などを含めて児童生徒の学習状況を適切に評価できるよう,平成14年2月に小・中学校のすべての教科について「評価規準の作成,評価方法の工夫改善のための参考資料」が示された。この資料では,学習指導要領の内容のまとまりごとの評価規準(※7)及びその具体例とともに,単元・題材の評価に関する事例が示されている。

○ このような経緯を踏まえ,各都道府県教育委員会による学習評価の手引き等の作成(※8)や,様々な研修会などを通して,現在,各学校において目標に準拠した評価の実践が行われている。

(高等学校における学習評価の基本的な考え方)

○ 高等学校については,各学校において生徒の特性,進路等に応じて多様な教育課程が編成されていることから,従来,高等学校学習指導要領に示す各教科・科目の目標に基づき,学校が地域や生徒の実態に即して設定した当該教科・科目の目標や内容に照らし評価を行うこととされている。また,小・中学校と同様,評価の4観点に基づく観点別学習状況の評価を踏まえながら評定を行うこととされており(※9),平成16年3月には,国立教育政策研究所より高等学校の必履修科目等について「評価規準の作成,評価方法の工夫改善のための参考資料」が示された。一方で,国の示す指導要録の参考様式としては大枠のみが示され,各教科・科目の学習状況の記録については原則として評定のみを記載することとされており,観点別学習状況の評価を記載することとはされていない。

(特別支援学校における学習評価の基本的な考え方)

○ 特別支援学校における学習評価の考え方は,基本的に小・中・高等学校における学習評価の考え方と変わらないが,実際の学習評価に当たっては,児童生徒の障害の状態等を十分理解し,児童生徒一人一人の学習状況を一層丁寧に把握する工夫が求められている。特に自立活動の指導や重複障害のある児童生徒に対する指導,知的障害のある児童生徒に対する指導は,児童生徒一人一人の障害の状態等に応じて個別に設定した指導目標や指導内容に基づいて行われており,その学習状況について評価を行うことになる。これらの学習評価については,平成14年3月に国立特殊教育総合研究所(現・独立行政法人国立特別支援教育総合研究所)から事例集が示されている。
 また,指導要録については,「自立活動の記録」及び「入学時の障害の状態」を記入することとなっている。特に,知的障害のある児童生徒に対する教育を行う特別支援学校においては,教育課程や学習状況に応じ,各教科・特別活動・自立活動についてそれぞれの区分ごとに書かず,まとめて記入できるようになっている。

(2) 新しい学習指導要領等の理念と改善事項

○ 平成20年1月17日中央教育審議会答申及びそれを踏まえて改訂された学習指導要領においては,「知識基盤社会」の時代において次代を担う子どもたちに必要な「生きる力」をはぐくむことが引き続き重要であることが明確にされた。

○ また,改正教育基本法(※10)では,学校教育で自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視することが明示されるとともに,学校教育法及び学習指導要領の総則においては,
 【1】 基礎的・基本的な知識・技能
 【2】 知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等
 【3】 主体的に学習に取り組む態度
を育成することが示された(※11)。

○ 新しい学習指導要領においては,子どもたちに「生きる力」をはぐくむため,これらの学力の重要な要素それぞれの育成を図っていくことが必要である。学習評価の検討に当たっても,このような学力に関する基本的な考え方を踏まえながら検討を進める必要がある。

○ また,小学校における「外国語活動」の導入,特別支援教育の充実など様々な改善が行われており,学習指導要領の改訂に対応した学習評価の在り方を検討することも求められている。


(※1) 「小学校児童指導要録,中学校生徒指導要録,高等学校生徒指導要録,中等教育学校生徒指導要録並びに盲学校,聾学校及び養護学校の小学部児童指導要録,中学部生徒指導要録及び高等部生徒指導要録の改善等について」(平成13年4月27日初等中等教育局長通知)においては,小学校について,「第3学年以上の各教科の学習の状況について,小学校学習指導要領に示す各教科の目標に照らして,その実現状況を総括的に評価し,記入する」とされている。

(※2) この考え方は,平成13年4月27日初等中等教育局長通知において示されている。
 また,目標に準拠した評価は,「児童生徒の学習と教育課程の実施状況の評価の在り方について」(平成12年12月4日教育課程審議会答申)においては「いわゆる絶対評価」とも呼称している。

(※3) 「小学校児童指導要録及び中学校生徒指導要録の改訂について」(昭和55年2月29日初等中等教育局長通知)においては,評定について,学習指導要領に示す目標に照らし,学級又は学年における位置付けを評価すること,その際,あらかじめ段階ごとに一定の比率を定め,児童生徒を機械的に割り振ることのないよう留意することとされていた。

(※4) 平成12年12月4日教育課程審議会答申は,評定についても目標に準拠した評価に改める理由を以下の5つにまとめている。
 ・ 児童生徒一人一人の進歩の状況や教科の目標の実現状況を的確に把握し,学習指導の改善に生かすことが一層重要であり,そのためには,目標に準拠した評価が適当であること
 ・ 教育内容を厳選し,基礎・基本の確実な定着を図ることを重視していることから,学習指導要領に示す内容を確実に習得したかどうかの評価を一層徹底することが必要であり,そのためには,目標に準拠した評価が優れていること
 ・ 初等中等教育における各学校段階において,児童生徒がその学校段階の目標を実現しているかどうかを評価することは,上級の学校段階の教育との円滑な接続に資する観点から重要となっており,そのためには,目標に準拠した評価を適切に行うことが必要となっていること
 ・ 児童生徒の学習の習熟の程度に応じた指導など個に応じた指導を一層重視しており,学習集団の編成も多様となることが考えられるため,指導に生きる評価を行っていくためには,目標に準拠した評価を常に行うことが重要となること
 ・ 少子化等により,かなり広範囲の学校で,学年,学級の児童生徒数が減少してきており,評価の客観性や信頼性を確保する上でも,集団に準拠した評価によるよりも,目標に準拠した評価の客観性を高める努力をし,それへの転換を図ることが必要となっていること

(※5) 個人内評価は,昭和55年2月29日初等中等教育局長通知や「小学校児童指導要録,中学校生徒指導要録並びに盲学校,聾学校及び養護学校の小学部児童指導要録及び中学部生徒指導要録の改訂について」(平成3年3月20日初等中等教育局長通知)においては各教科の学習の記録の「所見」欄等に,平成13年4月27日初等中等教育局長通知においては「総合所見及び指導上参考となる諸事項」に記録することが示されている。

(※6) 「小学校及び中学校の指導要録の改善について」(平成3年3月13日小学校及び中学校の指導要録の改善に関する調査研究協力者会議審議のまとめ)に考え方が示されている。

(※7) 平成3年3月20日初等中等教育局長通知において,観点別学習状況の評価が効果的に行われるようにするために,「各観点ごとに学年ごとの評価規準を設定するなどの工夫を行うこと」とされた。ここで示された「評価規準」は,学習評価が数量的に処理することに陥りがちである等の指摘を踏まえ,「学習指導要領の目標に基づく幅のある資質や能力の育成の実現状況の評価を目指す」(文部省「小学校教育課程一般指導資料」(平成5年9月))ものであり,学習指導要領に示す目標の実現の状況を判断するためのよりどころを意味するものである。

(※8) 小・中学校については,都道府県の約75%において学校における学習評価の手引き等を作成している(平成21年度文部科学省調べ)。

(※9) 平成13年4月27日初等中等教育局長通知においては,高等学校については生徒の学習状況を総括的にとらえる評定について,
 ・ 学習指導要領に示す各教科・科目の目標に基づき,学校が地域や生徒の実態に即して設定した当該教科・科目の目標や内容に照らし,その実現状況を総括的に評価する
 ・ 評価の4観点による評価を十分踏まえながら評定を行っていく
こととされている。

(※10) 教育基本法第6条第2項は,「学校においては,教育の目標が達成されるよう,教育を受ける者の心身の発達に応じて,体系的な教育が組織的に行われなければならない。この場合において,教育を受ける者が,学校生活を営む上で必要な規律を重んずるとともに,自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視して行われなければならない」と規定している。

(※11) 学校教育法第30条第2項は,学校教育を行うに当たり,「生涯にわたり学習する基盤が培われるよう,基礎的な知識及び技能を習得させるとともに,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力をはぐくみ,主体的に学習に取り組む態度を養うことに,特に意を用いなければならない」としている。

2.学習評価の現状と課題について

○ 1.に示した経緯を踏まえ,現在,各学校においては,きめの細かい学習指導の充実と児童生徒一人一人の学習内容の確実な定着を図るため,各教科における児童生徒の学習状況を分析的にとらえる観点別学習状況の評価と総括的にとらえる評定とを,目標に準拠した評価として行っている。

○ 文部科学省においては,平成15年度と平成21年度(※1)に,教師と保護者に対し,学習指導と学習評価に関する意識調査を実施しており,これらの調査から以下のような状況が見てとれる。

(小・中学校における学習評価の現状と課題)

○ 平成21年度の調査においては,「児童生徒の学力などの伸びがよく分かる」と感じている小・中学校の教師が約72%,「児童生徒一人一人の状況に目を向けるようになる」と感じている小・中学校の教師が約84%となっている。平成15年度の調査においては,「成長がこれまで以上に見えるようになった」教師が約33%であり,「一人一人をよく見るようになった」教師が約64%であったことから見れば,現在の学習評価は,小・中学校を中心に教師に定着してきていると考えられる。

○ 一方で,「学習状況の評価の資料の収集・分析に負担を感じる」小・中学校の教師は約63%に及ぶとともに,「学習評価を授業改善や個に応じた指導の充実につなげられている」と感じていない教師が約29%いる。現在の学習評価については,負担感や授業改善に関して課題があると考えられる。

○ しかしながら,負担を感じると答えた教師の中で「そう思う」と答えた教師は約17%にとどまり,平成15年度の調査において負担を明らかに感じていた教師が約40%にのぼっていたことから見れば,教師の負担感の状況に変化も見られる。

(各観点に係る教師の意識)

○ 現在の観点別学習状況の評価の4観点に関し,小学校の約81%,中学校の約76%の教師が「いわゆる4観点の評価は実践の蓄積があり,定着してきている」と感じており,全国の学校や教師の努力により,全体的には観点別学習状況の評価の着実な浸透が見られる。

○ 評価の観点について個別に見れば,「知識・理解」や「技能・表現」の学習評価を円滑に実施できていると感じている教師の割合は,小・中学校を通じて80%を超えている。一方で,「関心・意欲・態度」については小学校で約40%,中学校で約30%,「思考・判断」については小学校で約26%,中学校で約30%の教師が学習評価を円滑に実施できているとは感じていないなどの課題も見られる。

○ なお,学習評価を円滑に実施できているかどうかについての教師の意識には教科間で差が見られる。このことについては,評価の観点間の区別がつきにくいことが影響している場合もあると考えられる。

(高等学校における学習評価の現状と課題)

○ 高等学校については,県内のすべての県立高等学校において観点別学習状況の評価を積極的に推進している取組(※2)や観点別学習状況の評価を実施するための指導計画等を示し,その浸透を図る取組が見られる。

○ 一方,上述の調査によれば,「指導計画やシラバスに観点別の評価規準などを設けている」教師は約46%であり,十分な状況とは言えないと考えられる。また,指導要録や通信簿に観点別学習状況を記録している教師は約7%に,「いわゆる4観点の評価は実践の蓄積があり,定着してきている」と感じている教師は約41%にとどまるなど,現在の学習評価の考え方に基づく実践について小・中学校ほど十分な定着は見られない。

(学習評価に関する保護者の意識)

○ 「先生が,子ども一人一人の状況に目を向けてくれている」と感じている小・中学校の保護者は,約46%から約65%へと増加している。保護者については,学校における児童生徒一人一人の意欲を伸ばそうとする取組等については肯定的に受け止めていると考えられる。

○ 一方で,「評価に,先生の主観が入っているのではないか不安がある」と感じている小・中・高等学校の保護者が約38%,「学級や学年など集団の中で位置付けが分からず,入学者選抜などに向けて不安がある」と感じている保護者が約46%存在している。保護者は,学校における学習評価の在り方や児童生徒の学習状況について,より一層把握したいという要望をもっていると考えられる。


(※1) 「学習指導と学習評価に対する意識調査」(平成21年度文部科学省委託調査)において,平成21年8月における教師の意識と「学校教育に関する意識調査」(平成15年度文部科学省委託調査)で調査した教師の意識(小・中学校は平成15年6月,高等学校は平成16年2月)を比較している。
 なお,本報告において,これらの調査に言及する際,それぞれの質問項目について,「…と感じている」とは「そう思う」又は「まあそう思う」と回答した教師・保護者の合計の割合,「…と感じていない」とは「そう思わない」又は「あまりそう思わない」と回答した教師・保護者の合計の割合を用いている。

(※2) 神奈川県では,平成14年度から「教育課程研究集録」をまとめ,平成15年度以降に周知活動を実施,平成19年度からすべての県立高等学校で通信簿等に評価の4観点に係る学習状況を記録することとしている。このことをはじめ,神奈川県においては「確かな学力」の育成と授業改善に係る取組を推進している。

3.学習評価の今後の方向性について

(1) 学習評価の意義と学習評価を踏まえた教育活動の改善の重要性

○ 学習評価は,児童生徒が学習指導要領の示す目標に照らしてその実現状況を見ることが求められるものである。学習指導要領は,各学校において編成される教育課程の基準として,すべての児童生徒に対して指導すべき内容を示したものであり,指導の面から全国的な教育水準の維持向上を保障するものであるのに対し,学習評価は,児童生徒の学習状況を検証し,結果の面から教育水準の維持向上を保障する機能を有するものと言える。

(学習評価を踏まえた教育活動の改善の重要性)

○ また,従前指導と評価の一体化が推進されてきたところであり,今後とも,各学校における学習評価は,学習指導の改善や学校における教育課程全体の改善に向けた取組と効果的に結び付け,学習指導に係るPDCAサイクルの中で適切に実施されることが重要である。

○ すなわち,教師や学校にとっては,
 【1】 学校における教育課程の編成や,それに基づいた各教科等の学習指導の目標や内容のほか,評価規準や評価方法等,評価の計画も含めた指導計画や指導案の組織的な作成
 【2】 指導計画を踏まえた教育活動の実施
 【3】 児童生徒の学習状況の評価,それを踏まえた授業や指導計画等の評価
 【4】 評価を踏まえた授業改善や個に応じた指導の充実,指導計画等の改善
といった,Plan(【1】),Do(【2】),Check(【3】),Action(【4】)のPDCAサイクルを確立することが重要である。
 このようなPDCAサイクルは,日常の授業,単元等の指導,学校における教育活動全体等の様々な段階で繰り返されながら展開されるものである。学習評価を通じて,教師が授業の中で児童生徒の反応を見ながら学習指導の在り方を見直したり,一連の授業の中で個に応じた指導を図る時間を設けたりすることや,学校における教育活動を組織として改善したりしていくこと等が求められる。

○ このような学習指導に係るPDCAサイクルは,学校評価全体の枠組みの中で適切に位置付けられ,実施されることが必要である。
 各教科等の学習評価を通じて,例えば,思考力・判断力・表現力等に課題があることが明らかになれば,それらをはぐくむ学習活動を学校の教育課程全体の中で推進する等,学習評価を個々の授業の改善に加え,学校における教育活動全体の改善に結びつけることが重要であり,そういった取組を学校評価の枠組みを通じて行うことが考えられる。

○ 児童生徒にとって,学習評価は,自らの学習状況に気付き,その後の学習や発達・成長が促される契機となるべきものである。
 また,学習評価の結果を保護者に適切に伝えることは,学習評価に関する信頼を高めるものであるとともに,家庭における学習を児童生徒に促す契機ともなる。

○ なお,児童生徒が行う自己評価や相互評価は,児童生徒の学習活動であり,教師が行う評価活動ではないが,児童生徒が自身のよい点や可能性について気付くことを通じ,主体的に学ぶ意欲を高めること等学習の在り方を改善していくことに役立つことから,積極的に取り組んでいくことも重要である。
 また,児童生徒の自己評価を学校評価においても反映し,学校運営の改善につなげていくことも考えられる。

(2) 今回の学習評価の改善に係る基本的な考え方

(目標に準拠した評価による観点別学習状況の評価や評定の着実な実施)

○ ここまで述べてきたように,学習評価の意義や,現在の学習評価の在り方が小・中学校を中心に定着してきていること,また,1.(2)で述べたように,新しい学習指導要領は次代を担う児童生徒に「生きる力」をはぐくむという理念を引き継いでいることを踏まえれば,現在行われている学習評価の在り方を基本的に維持しつつ,その深化を図っていくことが重要である。
 このため,今後とも,きめの細かい学習指導の充実と児童生徒一人一人の学習内容の確実な定着を図るため,各教科における児童生徒の学習状況を分析的にとらえる観点別学習状況の評価と総括的にとらえる評定とについては,目標に準拠した評価として実施していくことが適当である。

(学力の重要な要素を示した新しい学習指導要領等の趣旨の反映)

○ また,学校教育法の一部改正を受けて改訂された新しい学習指導要領の総則においては,「生きる力」を支える「確かな学力」,「豊かな心」,「健やかな体」の調和が重視されるとともに,学校教育を行うに当たり「基礎的・基本的な知識及び技能を確実に習得させ,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力をはぐくむとともに,主体的に学習に取り組む態度を養」うことに努めなければならないことが示された。
 ここに明らかなように,平成10年・11年改訂の学習指導要領においても,改正教育基本法や学校教育法の一部改正を受けて改訂された新しい学習指導要領においても,教育の基本理念や育成すべき学力について大きな変化はない。このことを踏まえ,新しい学習指導要領の下における評価の観点を示すに当たっては,従来の評価の4観点の枠組みを基盤としつつ,基礎的・基本的な知識・技能の習得とこれらを活用する思考力・判断力・表現力等をいわば車の両輪として相互に関連させながら伸ばしていくとともに,学習意欲の向上を図るという改訂の趣旨を反映し,学習指導と学習評価の一体化を更に進めていくため,学力の3つの要素を踏まえて評価の観点を整理することが適当である。

○ また,学習指導要領の改訂により示されたそのほかの改善事項についても,それらに対応した学習評価の見直しを図っていくことが必要である。

(学校や設置者の創意工夫を生かす現場主義を重視した学習評価の推進)

○ 教育は,地域や学校,児童生徒の実態に応じて効果的に行われることが重要であり,近年の教育行政においては,各学校や設置者等の創意工夫を生かすことが重視されている。学習評価についても,各学校や設置者における教育の目標や学習指導に当たって重点を置いている事項を,指導要録等においてこれまで以上に反映できるようにするなど,学校や設置者の創意工夫を一層生かしていく方向で改善を図っていくことが求められる。

○ また,国や都道府県教育委員会等が,学校が学習評価を行うに当たって参考となる事例を示すなど,具体的な支援が充実されることも重要である。

○ このようなことを踏まえつつ,各学校においては,組織的・計画的な取組を推進し,学習評価の妥当性(※1),信頼性等を高めるよう努めることが重要である。

○ なお,児童生徒の学習状況が記録される指導要録の様式は設置者が定めるものであるが,指導要録は児童生徒の学習状況について異なる学校段階における円滑な情報の伝達を行うという機能を有することから,評価の結果が進学等において活用される都道府県等の地域ごとに,一定の統一性が保たれることも求められる。 


(※1) 本報告においては,学習評価の「妥当性」は,評価結果が評価の対象である資質や能力を適切に反映しているものであることを示す概念として用いている。この「妥当性」を確保していくためには,評価結果と評価しようとした目標の間に関連性があること(学習評価が学習指導の目標(学習指導要領等)に対応するものとして行われていること),評価方法が評価の対象である資質や能力を適切に把握するものとしてふさわしいものであること等が求められる。

4.観点別学習状況の評価の在り方について

○ 観点別学習状況の評価は,指導要録に記録するためだけでなく,きめの細かい学習指導と児童生徒一人一人の学習内容の確実な定着を図るため,日常の授業においても適切に実施されるべきものである。
 そこで,新しい学習指導要領の趣旨に沿って学校における学習評価を進めていく際の評価の観点に関する考え方を整理する。

(1) 学校教育法や学習指導要領の趣旨を踏まえた,評価の観点に関する考え方の整理

○ 新しい学習指導要領においても「生きる力」の理念を引き継いでいること等をかんがみれば,現在の評価の観点を大きく見直す必要はない。一方で,基礎的・基本的な知識・技能の習得とこれらを活用する思考力・判断力・表現力等をいわば車の両輪として相互に関連させながら伸ばしていくとともに,学習意欲の向上を図るという改訂の趣旨を反映し,学習指導と学習評価の一体化を更に進めていくため,学力の3つの要素を踏まえて評価の観点に関する考え方を整理することとする。

○ 現在の評価の4観点と学力の3つの要素との関係では,教科によって違いはあるものの,「知識・理解」及び「技能・表現」が基礎的・基本的な知識・技能を,「思考・判断」が知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等を,「関心・意欲・態度」が主体的に学習に取り組む態度を,それぞれ踏まえているものとしておおむね整理ができると考えられる。

○ 新しい学習指導要領においては,思考力・判断力・表現力等を育成するため,基礎的・基本的な知識・技能を活用する学習活動を重視するとともに,論理や思考等の基盤である言語の果たす役割を踏まえ,言語活動を充実することとしている。これらの能力を適切に評価し,一層育成していくため,各教科の内容等に即して思考・判断したことを,その内容を表現する活動と一体的に評価する観点(以下「思考・判断・表現」という。)を設定することが適当である。

○ 以上を踏まえ,新しい学習指導要領の下における評価の観点について,基本的には,基礎的・基本的な知識・技能については「知識・理解」や後述する「技能」において,それらを活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等については「思考・判断・表現」において,主体的に学習に取り組む態度については「関心・意欲・態度」においてそれぞれ評価を行うこととして整理する。

○ また,一部の教科においては,現在の評価の観点について,観点間の区別がつきにくいとの指摘があり,そのような指摘のある観点についても,併せて見直すことが適当である。

(2) 「知識・理解」及び「技能」の評価に関する考え方

○ 「知識・理解」は,各教科において習得すべき知識や重要な概念等を児童生徒が理解しているかどうかを評価するものである。新しい学習指導要領の下においても,従来の「知識・理解」の趣旨を踏まえた評価を引き続き行うことが重要である。

○ 今回,「技能・表現」に替えて示す「技能」は,各教科において習得すべき技能を児童生徒が身に付けているかどうかを評価するものである。教科によって違いはあるものの,基本的には,現在の「技能・表現」で評価している内容は引き続き「技能」で評価することが適当である。すなわち,算数・数学において式やグラフに表すことや理科において観察・実験の過程や結果を的確に記録し整理すること等については,現在「技能・表現」において評価を行っているが,同様の評価は今後「技能」において行っていくこととなる(※1)。
 なお,今回,各教科の内容等に即して思考・判断したことを,その内容を表現する活動と一体的に評価する観点として「思考・判断・表現」を設定することから,当該観点における「表現」との混同を避けるため,評価の観点の名称を「技能・表現」から「技能」に改めることとしている。

(3) 「思考・判断・表現」の評価に関する考え方

○ 「思考・判断・表現」は,それぞれの教科の知識・技能を活用して課題を解決すること等(※2)のために必要な思考力・判断力・表現力等を児童生徒が身に付けているかどうかを評価するものである。学習指導要領等に示された思考力・判断力・表現力等は,学校教育においてはぐくむ能力を一般的に示したものであり,そのような能力を育成するという目標の下,各教科の内容等に基づき,具体的な学習評価を行うための評価の観点が「思考・判断・表現」である。

○ 「思考・判断・表現」として,従来の「思考・判断」に「表現」を加えて示した趣旨は,この観点に係る学習評価を言語活動を中心とした表現に係る活動や児童生徒の作品等(※3)と一体的に行うことを明確にするものである。このため,この観点を評価するに当たっては,単に文章,表や図に整理して記録するという表面的な現象を評価するものではなく,例えば,自ら取り組む課題を多面的に考察しているか,観察・実験の分析や解釈を通じ規則性を見いだしているかなど,基礎的・基本的な知識・技能を活用しつつ,各教科の内容等に即して思考・判断したことを,記録,要約,説明,論述,討論といった言語活動等を通じて評価するものであることに留意する必要がある。

○ このように,「思考・判断・表現」の評価に当たっては,それぞれの教科の知識・技能を活用する,論述,発表や討論,観察・実験とレポートの作成といった新しい学習指導要領において充実が求められている学習活動を積極的に取り入れ,学習指導の目標に照らして実現状況を評価する必要がある。
 「思考・判断・表現」の評価については,全国学力・学習状況調査の「主として『活用』に関する問題」を参考にして作成した適切な問題を用いて評価を行うことも有益である。ただし,「思考・判断・表現」の評価は,そのような問題を一定の制限時間内に解決し,記述できるかどうかのみを評価するものではないことに留意し,様々な評価方法を採り入れることが重要である。

○ また,この観点については,指導後の児童生徒の状況を記録するための評価を行うに当たっては,思考・判断の結果だけではなく,その過程を含め評価することが特に重要であることに留意する必要がある。

○ なお,評価の観点である「思考・判断・表現」の「表現」は,基礎的・基本的な知識・技能を活用する学習活動等において思考・判断したことと,その内容を表現する活動とを一体的に評価することを示すものである。これは,例えば,学習指導要領の音楽,図画工作,美術の各教科において示す領域の一つであり,歌唱,器楽,絵,デザイン等の指導の内容を示す「表現」(※4)とは異なるものである。

(4) 「関心・意欲・態度」の評価に関する考え方

○ 改正教育基本法においては,学校教育において自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視することが示されるとともに,学校教育法及び学習指導要領の改正等により,主体的に学習に取り組む態度が学力の3つの要素の1つとして示されている。また,我が国の児童生徒の学習意欲について課題がある状況を踏まえると,学習評価において,児童生徒が意欲的に取り組めるような授業構成と継続的な授業改善を教師に促していくことの重要性は高い。さらに,主体的に学習に取り組む態度は,それをはぐくむことが基礎的・基本的な知識・技能の習得や思考力・判断力・表現力等の育成につながるとともに,基礎的・基本的な知識・技能の習得や思考力・判断力・表現力等の育成が当該教科の学習に対する積極的な態度につながっていくなど,他の観点に係る資質や能力の定着に密接に関係する重要な要素でもある。
 これらのことを踏まえれば,「関心・意欲・態度」について学習評価を行い,それをはぐくんでいくことは引き続き重要である。

○ 「関心・意欲・態度」は,各教科が対象としている学習内容に関心をもち,自ら課題に取り組もうとする意欲や態度を児童生徒が身に付けているかどうかを評価(※5)するものである。
 評価に当たっては,各教科が対象としている学習内容に対する児童生徒の取組状況を通じて評価することを基本とし,他の観点と同様,目標に照らして「おおむね満足できる」(※6)状況にあるかどうかの評価を中心とすることが適当である。

○ 具体的な評価方法としては,授業や面談における発言や行動等を観察するほか,ワークシートやレポートの作成,発表といった学習活動を通して評価することが考えられる。その際,授業中の挙手や発言の回数といった表面的な状況のみに着目することにならないよう留意する必要がある。

○ 各教科が対象としている学習内容に関心をもち,自ら課題に取り組もうとする意欲や態度をはぐくむことは,他の観点に係る資質や能力の定着に密接に関係するものである。教師の指導により,学習意欲の向上はみられたものの,その他の観点について目標の実現に至っていない場合は,学習指導の一層の充実を図ることが重要である。その際,個人内評価を積極的に活用し児童生徒の学習を励ますことも有効である。

(5) 各教科における評価の観点に関する考え方

○ 以上のことに加え,教科の特性やこれまでの実践の蓄積を踏まえ,次のような基本的な考え方に基づいた評価の観点の整理が適当である。

(各教科における評価の観点に関する基本的な考え方)

○ 基本的には,既に述べたとおり,各教科の観点を,基礎的・基本的な知識・技能(「知識・理解」及び「技能」),思考力・判断力・表現力等(「思考・判断・表現」)及び主体的に学習に取り組む態度(「関心・意欲・態度」)に対応させ整理することが適当である。

○ その際,基礎的・基本的な知識・技能に関する観点(「知識・理解」及び「技能」)について,教科の特性に応じ,知識と技能に関する観点を分けて示すことも適当である。

○ 「思考・判断・表現」については,各教科の目標や内容を踏まえ当該教科において育成すべき能力にふさわしい名称とし,明確に位置付けることが適当である。

(国語や外国語における評価の観点に関する考え方)

○ 国語や外国語においては,現在の評価の観点で言えば,「言語についての知識・理解・技能」(国語),「言語や文化についての知識・理解」(外国語)などが,基礎的・基本的な知識・技能に着目した観点と位置付けられる。

○ その上で,学習指導要領の内容の示し方やこれまでの実践を踏まえ,「話す・聞く能力」「書く能力」「読む能力」(国語)や,「外国語表現の能力」「外国語理解の能力」(外国語)を,学習指導要領の内容のまとまりに合わせ,基礎的・基本的な知識・技能と「思考・判断・表現」とを合わせて評価する観点として位置付けることが適当である。

(音楽,図画工作,美術における評価の観点に関する考え方)

○ 音楽,図画工作,美術においては,表現,鑑賞の活動を通じて,音楽活動や造形的な創造活動の基礎的な能力を培うとともに,豊かな情操を養うことが目標とされている。

○ そのうち,芸術に係る表現の能力を評価するに当たっては,基礎的・基本的な知識・技能のうち,特に「技能」に関する観点と,表現を創意工夫したり発想・構想したりする能力に関する観点とに分けて示すことが適当である。

○ また,芸術に係る鑑賞の能力を評価するに当たっては,基礎的・基本的な知識・技能のうち,特に「知識・理解」に関する観点と,自分なりに評価したり価値を考えたりする能力に関する観点とを一体的に見る観点を位置付けることが適当である。

(評価の観点の示し方)

○ このような考え方を踏まえつつ,現在の我が国の子どもたちの現状として,主体的に学習に取り組む態度や思考力・判断力・表現力等に依然として課題があることも考慮し,これらの学力の要素に関する学習指導と学習評価の重要性を引き続き喚起していくため,新しい学習指導要領の下における小・中学校の各教科の観点を,表1及び表2に示した。高等学校等の各教科の観点についても,これらと同様にすることが考えられる。

○ なお,いずれの観点についてもその特性に沿って適切に評価を行うことが求められること,ここに示す評価の観点の順序が学習指導の順序と必ずしも結び付けられるものではないことに十分留意する必要がある。

(6) 観点別学習状況の評価を円滑に実施するに当たっての留意事項

○ 観点別学習状況の評価を円滑に実施するに当たっては,適切な評価時期を設定することや学習指導の目標に沿った学習評価を行うこと等が重要である。

(評価時期)

○ 授業改善のための評価は日常的に行われることが重要である。一方で,指導後の児童生徒の状況を記録するための評価を行う際には,単元等ある程度長い区切りの中で適切に設定した時期において「おおむね満足できる」状況等にあるかどうかを評価することが求められる(※7)。
 「関心・意欲・態度」については,表面的な状況のみに着目することにならないよう留意するとともに,教科の特性や学習指導の内容等も踏まえつつ,ある程度長い区切りの中で適切な頻度で「おおむね満足できる」状況等にあるかどうかを評価するなどの工夫を行うことも重要である。

(学習指導の目標と学習活動の関係)

○ 各教科において,基礎的・基本的な知識・技能の習得を図る学習活動と思考力・判断力・表現力等の育成を図る学習活動は相互に関連し合って截然とは分類されるものではない。
 このため,同様の学習活動であっても,教師の指導のねらいに応じ,「知識・理解」や「技能」の評価に用いられることも,「思考・判断・表現」の評価に用いられることもあると考えられる。このことを踏まえつつ,学習指導の目標に照らして実現状況を評価するという目標に準拠した評価の趣旨に沿って,学習活動を通じて子どもたちに身に付けさせようとしている資質や能力を明確にした上で,それに照らして学習評価を行うことが重要である。


(※1) 学習指導要領の体育,保健体育の指導内容として,例えば,ダンスにおいては「動きに変化を付けて即興的に表現したり」等が規定されている。このような場合の「表現」は体育,保健体育における技能を示すものであることから,現在「運動の技能」で評価しており,今後も「技能」の観点で評価することが適当である。

(※2) 思考力・判断力・表現力等は,知識・技能を活用して課題を解決するために必要であるとともに,教科の内容をより深く理解するためにも必要なものである。

(※3) 各教科における「思考・判断・表現」の評価に当たっては,言語だけでなく,教科の特性に応じた表現に係る活動を通じて,評価を行うことも必要である。例えば,観察・実験の分析・解釈を通じ見いだした規則性を式や図,グラフ等を用いて表現しているところを評価すること,児童生徒の作品を通じて児童生徒の構想や設計に係る工夫を評価すること等が考えられる。

(※4) これらの学習指導に係る学習評価については,教科ごとに設定される評価の観点を踏まえ,「関心・意欲・態度」や基礎的・基本的な「技能」も含めて行うことが適当である。

(※5) 教科によって,評価の対象に特性があることに留意する必要がある。例えば,体育・保健体育の運動に関する領域においては,公正や協力などを,育成すべき「態度」として学習指導要領に位置付けており,そのような指導内容に対応した学習評価が行われることとされている。

(※6) 平成13年4月27日初等中等教育局長通知において,観点別学習状況については,学習指導要領に示す各教科の目標に照らして,その実現状況を観点ごとに評価し,「十分満足できると判断されるもの」をA,「おおむね満足できると判断されるもの」をB,「努力を要すると判断されるもの」をCとすることとされている。

(※7) 平成20年1月17日答申においては「1単位時間の授業において評価の4観点(関心・意欲・態度,思考・判断,技能・表現,知識・理解)のすべてを評価しようとしたり,授業冒頭に「進んで取り組んでいるかどうか」をチェックし,チェック終了後授業に入ったりするなど評価のための評価となっている不適切な事例も見られる」との指摘がある。

5.指導要録の改善について

(1) 指導要録の役割と現在の参考様式における記録の項目

○ 指導要録は,児童生徒の学籍並びに指導の過程及び結果の要約を記録し,その後の指導及び外部に対する証明等に役立たせるための原簿となるものである。文部科学省が平成13年4月27日初等中等教育局長通知により示している記載事項としては,小・中学校については,
 【1】 「学籍に関する記録」(児童生徒の氏名,性別,生年月日及び現住所,保護者の氏名及び現住所,入学前の経歴,入学・編入学等,転入学,転学・退学等及び卒業に係る年月日,進学先・就職先等,学校名及び所在地,校長氏名印,学級担任氏名印)
 【2】 「指導に関する記録」
  1 「各教科の学習の記録」として「観点別学習状況」と「評定」
  2 「総合的な学習の時間の記録」
  3 「特別活動の記録」
  4 「行動の記録」
  5 「総合所見及び指導上参考となる諸事項」
  6 「出欠の記録」
を記入することとされている。

○ 高等学校の指導要録については,「観点別学習状況」及び「行動の記録」を独立して記載することとはされていない。また,特別支援学校の指導要録については,それぞれ対応する学校種のものに準じつつ,「自立活動」及び「入学時の障害の状態」を記入することとされている。

(2) 小・中学校の指導要録の「指導に関する記録」の記載事項に係る改善

○ 指導要録の改善は,3.(2)で述べた基本的な考え方を踏まえて行うことが必要である。すなわち,きめの細かい学習指導の充実と児童生徒一人一人の学習内容の確実な定着を図るため,目標に準拠した評価等を着実に実施すること,新しい学習指導要領の趣旨や改善事項に適切に対応すること,学校や設置者の創意工夫を一層生かしていくことが必要である。

【1】 「各教科の学習の記録」としての「観点別学習状況」と「評定」

○ 「観点別学習状況」に関しては,4.の観点別学習状況の評価の在り方を踏まえた評価の観点を示すことが適当である。

○ また,「評定」は,簡潔で分かりやすい情報を提供するものとして,児童生徒の教科の学習状況を総括的に評価するものであり,教師同士の情報共有や保護者等への説明のためにも有効である。このため,低学年を除く小学校,中学校及び高等学校において,評定を行うことは引き続き必要である。その際,新しい学習指導要領で明確にされた学力の3つの要素をすべて含んだ教科の総括的な学習状況を示す情報として現在と同様に示すことが適当である。

○ 各学校においては,設置者等の方針に沿って,自校における指導の重点や評価方法等を踏まえ,各教科の総括的な学習状況をとらえる評定の決定の方法を検討し,適切な方法を定める必要がある。その際,異なる学校段階の間での児童生徒の学習状況を円滑に伝達するため,評価の結果が進学等において活用される都道府県等の地域ごとに一定の統一性を保つことも考えられる。また,そのような評定の決定の方法を対外的に明示することも求められる。

(「関心・意欲・態度」に係る評価の工夫)

○ 「関心・意欲・態度」の評価については,目標に準拠した評価の趣旨等にかんがみ,他の観点と同様,「おおむね満足できる」状況にあるか「努力を要する」状況にあるかの評価を中心としつつ,「十分満足できる」状況にある生徒の評価も行っていくことが適当である。

○ 一方で,学習評価の在り方に関する議論の中では,「関心・意欲・態度」は必ずしも分かりやすい形で現れないこと,また,そのことにより結果について説明責任を果たす教師に負担感があること等について指摘があった。また,評定については,学力の指標としての妥当性,信頼性等を高める必要があることについても指摘があった。

○ このような指摘に対応するためには,4.(4)や(6)で述べたような様々な工夫を行うことが適当である。一方で,上述したような指摘を踏まえ,例えば,「関心・意欲・態度」については,
 ・ 「努力を要する」状況と判断される児童生徒に対する学習指導の徹底は図りつつ,指導後の児童生徒の状況を記録するための評価に当たっては,「十分満足できる」状況と判断できる場合のみに記録することとすること
 ・ 評定への反映に当たっては,加点要素として位置付けることとすること
等,観点別学習状況の評価や評定について様々な工夫を行うことも考えられるとの指摘があった。

○ このような指摘を踏まえた工夫を行う場合は,異なる学校段階において児童生徒の学習状況を円滑に伝達するため,評価の結果が進学等において活用される都道府県等の地域ごとに評価の在り方等を適切に考え,工夫の方法を統一することが必要と考えられる。その際,そのような評価に関する基本的な考え方を対外的に明示することも求められる。

【2】 小学校「外国語活動」の評価

○ 小学校「外国語活動」については,平成20年1月17日中央教育審議会答申において,数値による評価にはなじまないとされていること等を踏まえ,現在,「総合的な学習の時間」の評価において行われているような,評価の観点を設定し,それに即して,文章の記述による評価を行うことが適当である。

○ また,評価の観点は,中・高等学校における外国語科との連続性に配慮して設定する必要がある。
 具体的には,学習指導要領に定める「外国語活動」の目標,すなわち,言語や文化に関する体験的な理解,コミュニケーションを図ろうとする態度,外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しむことについて観点を設定し,学習評価を行うことが適当である。

【3】 「総合的な学習の時間」の評価

○ 「総合的な学習の時間」は,自ら課題を見付け,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よりよく問題を解決する資質や能力を育てることなどを目標とすることから,思考力・判断力・表現力等が求められる「知識基盤社会」の時代において,「生きる力」をはぐくむために重要な役割を果たすものである。

○ 「総合的な学習の時間」については,各学校が自ら設定した目標や内容を踏まえて観点を設定し,それに即して文章の記述による評価を行っており,新しい学習指導要領下でも現在の評価の在り方を維持することが適当である。また,各学校において,児童生徒の具体的な学習状況を想定した評価規準を設定することは,各教科と同様,総合的な学習の時間についても児童生徒がどのような学習状況にあるかを適切に把握し,学習活動を改善するために重要である。

○ なお,新しい学習指導要領では,総合的な学習の時間の目標に沿って育てようとする資質や能力の視点等を例示しており,このような視点に配慮して各学校において評価の観点を定めることも考えられる。

【4】 「特別活動」の評価

○ 「特別活動」は,望ましい集団活動や体験的な活動を通して,豊かな学校生活を築くとともに,公共の精神を養い,社会性の育成を図るものであり,「生きる力」をはぐくむために重要な役割を果たすものである。

○ 現在,「特別活動」の評価については,各活動・学校行事ごとにその趣旨に照らして十分満足できる状況にあると判断される場合には○印を記入しているが,基本的には,この枠組みを維持することが適当である。その上で,特別活動の目標に照らして育成しようとしている資質や能力と評価の関係を明確にするため,新しい学習指導要領で特別活動の各活動・学校行事に新たに目標が規定されたことを踏まえながら,各学校において評価の観点を設定し,指導要録においても明示することが適当である。また,その観点に照らして実現状況を評価するとともに,具体的な事実等について「総合所見及び指導上参考となる諸事項」に記すことが適当である。その際,特別活動が人間形成にかかわる多様な資質や能力の育成を目標としていることから,児童生徒の十分満足できる活動の状況を積極的に認めるようにすること等が,大切であることに留意する必要がある。

【5】 「行動の記録」の評価

○ 「行動の記録」は,これまで,文部科学省の通知において,「各教科,道徳,特別活動,総合的な学習の時間,その他学校生活全体にわたって認められる児童生徒の行動について,各項目ごとにその趣旨に照らして十分満足できる状況にあると判断される場合には,○印を記入する」こととされており,また,各学校や設置者においては「特に必要があれば,項目を追加して記入する」こととされている。学校においては,「基本的な生活習慣」,「健康・体力の向上」,「自主・自律」等(※1)の項目に関し,児童生徒の行動の様子について評価を行っている。新しい学習指導要領の下においても,このような「行動の記録」の基本的な在り方は維持していくことが重要である。

○ 新しい学習指導要領に対応した指導要録については,改正教育基本法や学校教育法の一部改正の趣旨を反映していくことや,学校や設置者の創意工夫を生かしていくこととしている。このような基本的考え方は,学校における多様な教育活動全体における行動の様子を評価するものであるという性格をもつ「行動の記録」の見直しにも十分反映していく必要がある。

○ すなわち,「行動の記録」の項目の設定に当たっては,教育基本法第2条(※2)や学校教育法第21条(※3)に示されている義務教育の目標,学習指導要領第1章総則や第3章道徳に示す道徳の目標や内容,内容の取扱いで重点化を図ることとしている事項(※4),同第1章総則において示す体育・健康に関する指導等を踏まえる必要がある。

○ 設置者は,国や都道府県教育委員会等の示す参考例を踏まえ,指導要録の様式において項目を適切に設定する必要がある。その上で,各学校において,各学校の教育目標を踏まえた項目を加えることも適当である。

○ また,これらのことと併せ,児童生徒の行動に関する所見については「総合所見及び指導上参考となる諸事項」に記すことも重要である。

【6】 「総合所見及び指導上参考となる諸事項」

○ 「総合所見及び指導上参考となる諸事項」においては,児童生徒の成長の状況を総合的にとらえ,各教科・科目や総合的な学習の時間の学習に関する所見,特別活動に関する事実及び所見,行動に関する所見,進路指導に関する事項,児童生徒の特徴・特技等を記入することとなっている。このような項目や今回の学習指導要領の改訂で新たに導入された外国語活動に関する所見については「総合所見及び指導上参考となる諸事項」において記入することが適当である。
 新しい中学校学習指導要領において,学校教育の一環として教育課程との関連が図られるよう留意することが明確化された部活動については,これまでの指導要録上の取扱に係る実態も踏まえつつ,「総合所見及び指導上参考となる諸事項」において,部活動を通じた生徒の成長等について記載することが適当である。

(個人内評価)

○ 児童生徒の学習意欲を高め,その後の学習や発達を促していくためには,児童生徒のよい点を褒めたり,更なる改善が望まれる点を指摘したりするなど,児童生徒の発達の段階等に応じ,励ましていくことが重要である。
 このため,観点別学習状況の評価や評定を目標に準拠した評価として行う際には,そこでは十分示し切れない,児童生徒一人一人のよい点や可能性,進歩の状況等についても,積極的に児童生徒に伝えるとともに,個人内評価の結果として「総合所見及び指導上参考となる諸事項」に記入することが重要である。


(※1) 平成13年の初等中等教育局長通知においては,「行動の記録」の項目として,「基本的な生活習慣」,「健康・体力の向上」,「自主・自律」,「責任感」,「創意工夫」,「思いやり・協力」,「生命尊重・自然愛護」,「勤労・奉仕」,「公正・公平」及び「公共心・公徳心」が示されている。

(※2) 教育基本法第2条は,「教育は,その目的を実現するため,学問の自由を尊重しつつ,次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする」と規定し,以下の5つを教育の目標として掲げている。
一 幅広い知識と教養を身に付け,真理を求める態度を養い,豊かな情操と道徳心を培うとともに,健やかな身体を養うこと。
二 個人の価値を尊重して,その能力を伸ばし,創造性を培い,自主及び自律の精神を養うとともに,職業及び生活との関連を重視し,勤労を重んずる態度を養うこと。
三 正義と責任,男女の平等,自他の敬愛と協力を重んずるとともに,公共の精神に基づき,主体的に社会の形成に参画し,その発展に寄与する態度を養うこと。
四 生命を尊び,自然を大切にし,環境の保全に寄与する態度を養うこと。
五 伝統と文化を尊重し,それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに,他国を尊重し,国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。

(※3) 学校教育法第21条は,「義務教育として行われる普通教育は,教育基本法(平成十八年法律第百二十号)第五条第二項に規定する目的を実現するため,次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする」と規定し,以下を義務教育の目標として掲げている。
一 学校内外における社会的活動を促進し,自主,自律及び協同の精神,規範意識,公正な判断力並びに公共の精神に基づき主体的に社会の形成に参画し,その発展に寄与する態度を養うこと。
二 学校内外における自然体験活動を促進し,生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと。
三 我が国と郷土の現状と歴史について,正しい理解に導き,伝統と文化を尊重し,それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度を養うとともに,進んで外国の文化の理解を通じて,他国を尊重し,国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
四 家族と家庭の役割,生活に必要な衣,食,住,情報,産業その他の事項について基礎的な理解と技能を養うこと。
五 読書に親しませ,生活に必要な国語を正しく理解し,使用する基礎的な能力を養うこと。
六 生活に必要な数量的な関係を正しく理解し,処理する基礎的な能力を養うこと。
七 生活にかかわる自然現象について,観察及び実験を通じて,科学的に理解し,処理する基礎的な能力を養うこと。
八 健康,安全で幸福な生活のために必要な習慣を養うとともに,運動を通じて体力を養い,心身の調和的発達を図ること。
九 生活を明るく豊かにする音楽,美術,文芸その他の芸術について基礎的な理解と技能を養うこと。
十 職業についての基礎的な知識と技能,勤労を重んずる態度及び個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うこと。

(※4) 小学校学習指導要領第3章道徳第3においては,「各学校においては,各学年を通じて自立心や自律性,自他の生命を尊重する心を育てることに配慮するとともに,児童の発達の段階や特性等を踏まえ,指導内容の重点化を図ること。特に低学年ではあいさつなどの基本的な生活習慣,社会生活上のきまりを身に付け,善悪を判断し,人間としてしてはならないことをしないこと,中学年では集団や社会のきまりを守り,身近な人々と協力し助け合う態度を身に付けること,高学年では法やきまりの意義を理解すること,相手の立場を理解し,支え合う態度を身に付けること,集団における役割と責任を果たすこと,国家・社会の一員としての自覚をもつことなどに配慮し,児童や学校の実態に応じた指導を行うよう工夫すること。また,高学年においては,悩みや葛(かっ)藤(とう)等の心の揺れ,人間関係の理解等の課題を積極的に取り上げ,自己の生き方についての考えを一層深められるよう指導を工夫すること」と規定している。
 また,中学校学習指導要領第3章道徳第3においては「各学校においては,生徒の発達の段階や特性等を踏まえ,指導内容の重点化を図ること。特に,自他の生命を尊重し,規律ある生活ができ,自分の将来を考え,法やきまりの意義の理解を深め,主体的に社会の形成に参画し,国際社会に生きる日本人としての自覚を身に付けるようにすることなどに配慮し,生徒や学校の実態に応じた指導を行うよう工夫すること。また,悩みや葛(かっ)藤(とう)等の思春期の心の揺れ,人間関係の理解等の課題を積極的に取り上げ,道徳的価値に基づいた人間としての生き方について考えを深められるよう配慮すること」と規定している。

6.高等学校における学習評価の在り方について

(高等学校における学習評価についての基本的な考え方)

○ 「生きる力」をはぐくむという学習指導要領の趣旨は,小・中・高等学校すべてに共通するものである。現在,高等学校の学習評価については,観点別学習状況の評価の趣旨を踏まえた学習評価を行い,授業の改善につなげるよう努力している学校がある一方で,ペーパーテストを中心としていわゆる平常点を加味した,成績付けのための評価にとどまっている学校もあるとの指摘があり,小・中学校の状況とは異なっている点も見られる。

○ しかし,学習指導と学習評価を一体的に行うことにより,生徒一人一人に学習内容の確実な定着を図り,授業の改善に寄与するという学習評価の重要性は異なるものではない。また,小・中学校において観点別学習状況の評価が定着していることから,高等学校段階においても,学習評価の前提となる指導と評価の計画や,観点に対応した生徒一人一人の学習状況を生徒や保護者に適切に伝えていくなど,学習評価の一層の改善が求められる。

○ このようなことを踏まえ,高等学校においても,学校教育法や新しい学習指導要領を踏まえ,基礎的・基本的な知識・技能に加え,思考力・判断力・表現力,主体的に学習に取り組む態度に関する観点についても評価を行うなど,観点別学習状況の評価の実施を推進し,きめの細かい学習指導と生徒一人一人の学習の確実な定着を図っていく必要がある。

○ なお,高等学校における教科・科目の評価の観点は,小・中学校との連続性に配慮しつつ,新しい学習指導要領の趣旨に沿って整理して設定することが適当である。また,国等が,教科・科目の評価の観点とその趣旨,評価規準,評価方法等について参考となる資料を示すとともに,具体的な事例の収集・提示等を行っていくことにより,高等学校における観点別学習状況の評価の実施を支援していくことが重要である。

(学習評価を通じた高等学校における教育の質の保障)

○ 一人一人の生徒の希望する進路が実現できるようにするためにも,高等学校学習指導要領に示す各教科・科目の目標・内容に基づいて適切な指導が行われることが必要である。
 現在,中学校の卒業生の約98%が高等学校に進学し,高等学校においては多様な興味・関心をもつ生徒が在学するとともに,卒業後の進路も多様である中で,高等学校における教育の質の向上を今まで以上に図っていく必要がある。

○ 学習評価は,生徒の学習状況を検証し,結果の面から教育水準の維持向上を保障する機能を有するものである。したがって,学校が地域や生徒の実態を踏まえて設定した観点別学習状況の評価規準や評価方法等を明示するとともに,それらに基づき学校において適切な評価を行うことなどにより,高等学校教育の質の保障を図ることが求められる。

(高等学校の指導要録)

○ 平成13年4月27日初等中等教育局長通知においては,例えば,観点別学習状況の評価を踏まえながら評定を行うこととされているが,指導要録に記載すべき事項としては評定のみが示され,観点別学習状況の評価の結果は記載すべき事項とはされていない(※1)。
 高等学校の指導要録の記載事項については,生徒の特性,進路等に応じて多様な教育課程が編成されていることや,高等学校の指導要録の現状を考慮して,大枠のみを示すという基本的な考え方を維持することとする。

○ 設置者である都道府県教育委員会等においては,きめの細かい学習指導の充実と生徒一人一人の学習内容の定着を図るため,指導要録において観点別学習状況を記載できるようにすることも有効な手段であると考えられる。その際,併せて,都道府県教育委員会等において,国等が示す資料を参考にしつつ,評価規準や評価の参考となる具体的な事例を示すなど,学校の支援に努めることが重要である。


(※1) 学校設定教科に関する科目は,指導要録において教科・科目として評定及び習得単位数を記録することが,当該教科・科目の目標や内容等から数値的な評価になじまない科目については評定は行わず,学習状況や成果などを踏まえて,「総合所見及び指導上参考となる諸事項」欄に所見等を記述するなど,各学校で評価の在り方等について工夫することが引き続き適当である。

7.障害のある児童生徒に係る学習評価の在り方について

(1) 障害のある児童生徒の学習指導に係る基本的な考え方

(特別支援教育に係る制度の整備)

○ 障害のある児童生徒に対する指導については,様々な制度改正が行われている。平成18年3月には,通級による指導の対象に新たにLD,ADHDのある児童生徒を加えるとともに,同年6月の学校教育法等の改正により,特別支援学校に係る制度が整備された。また,小・中学校等においても教育上特別な支援を必要とする児童生徒等に対して障害による学習上又は生活上の困難を克服するための教育を行うこととされた。

(学習指導要領の改訂による主な改善事項)

○ 新しい学習指導要領では,一人一人に応じた指導の充実を図るため,特別支援学校に在籍するすべての児童生徒について,自立活動だけでなく各教科等の学習指導においても個別の指導計画を作成したり,医療,福祉,労働等の業務を行う関係機関等との連携を図るため個別の教育支援計画を作成したりすることが義務付けられた。また,小・中学校等に在籍する障害のある児童生徒についても,必要に応じて個別の指導計画や個別の教育支援計画を作成することとされた。さらに,すべての学校種を通じて,障害のある児童生徒と障害のない児童生徒の交流及び共同学習の推進に配慮することとされた。

(障害のある児童生徒に対する学習指導の工夫)

○ 近年,特別支援学校や小・中学校の特別支援学級に在籍する児童生徒,通級による指導を受ける児童生徒の数の増加が顕著である。これらの児童生徒については,視覚障害,聴覚障害,知的障害,肢体不自由,病弱などの児童生徒だけではなく,LDやADHD等の発達障害など様々な障害のある児童生徒が含まれ,一人一人の障害の状態や発達の段階,特性を的確に把握して,適切な指導を行うことが求められている。

○ 小・中学校等の通常の学級では,通級による指導の対象となっている児童生徒に対する通級以外の場面での指導や,通級による指導の対象となっていないが教育上特別な支援を必要とする児童生徒に対する指導に当たって,障害の状態等に即した適切な配慮を行うことが求められている。
 例えば,発達障害等により読むことや書くことに困難を有する児童生徒に対しては,プリント教材の漢字に振り仮名を付けたり,試験の問題用紙の記入枠を大きくしたりするなどの配慮を行うことが考えられる。また,弱視や難聴,肢体不自由,病弱・身体虚弱などの児童生徒に対しては実験・実習等の際に適切な役割分担をしたり,学習内容に応じて障害の状態等に配慮した工夫を行ったりすることが考えられる。

○ なお,個別の指導計画については,個々の児童生徒の実態に即した適切な指導を進めることをねらいとしており,その活用に当たっては,PDCAサイクルを通じて,適宜,指導計画自体の見直しを行い,指導内容・方法の改善に生かしていくことが重要である。

○ また,個別の教育支援計画に基づいて関係機関等と連携し,必要に応じ外部の専門家による指導・助言を受け自立活動の指導や評価等に生かしていくことも重要である。

(2) 障害のある児童生徒の学習評価に係る基本的な考え方

○ 障害のある児童生徒の学習評価に当たっては,児童生徒の障害の状態等を十分理解しつつ,行動の観察やノート等の提出物の確認など様々な方法を活用して,一人一人の学習状況を一層丁寧に把握する工夫が必要である。

○ ただし,その評価の考え方については,学習指導要領に定める目標に準拠して評価を行うことや個人内評価を重視すること,学習指導と学習評価とを一体的に進めること,指導目標や指導内容,評価規準の設定においては一定の妥当性が求められることなど,障害のない児童生徒に対する評価の考え方と基本的に変わりがない。したがって,障害の状態等に即した適切な指導や評価上の工夫は必要であるが,一方で,評価そのものへの信頼性にも引き続き十分配慮することが求められる。

(3) 特別支援学校に在籍する児童生徒への学習評価の工夫

○ 特別支援学校に在籍する児童生徒については,学習指導要領において自立活動の指導だけでなく各教科等の指導に当たっても個別の指導計画を作成することが義務付けられたことを踏まえ,それに基づいて行われた学習の状況や結果を評価する必要がある。

○ なお,知的障害及び重複障害のある児童生徒に対する指導や自立活動の指導を行う場合には,児童生徒一人一人の実態に即して,個別に指導目標や指導内容を設定し,個別に評価することになるが,設定した指導目標が高すぎたり,指導内容が具体性を欠いたりするなどにより,結果として,効果的な指導につながらないことも考えられる。このため,設定する指導目標や指導内容については,その妥当性の向上に十分配慮する必要がある。

(特別支援学校に在籍する児童生徒に係る指導要録上の工夫)

○ 特別支援学校(視覚障害,聴覚障害,肢体不自由,病弱)の指導要録については,小・中・高等学校の指導要録の改善に準じた改善を図ることが適当である。

○ 特別支援学校(知的障害)の指導要録については,各教科,特別活動,自立活動,総合的な学習の時間の記録に関して,各学校において,一人一人に応じて設定する具体的な指導内容を踏まえるとともに,教育課程や実際の学習状況を考慮して記述することが適当である。

○ 交流及び共同学習については,効果的かつ継続的に進めていく観点から,「総合所見及び指導上参考となる諸事項」に相手先の学校名や学級名,実施期間,実施した内容や成果等を記述することが適当である。
 なお,交流及び共同学習は,児童生徒の在籍する学校における教育活動として実施していることから,在籍する学校において評価を行うことになるが,その評価に当たっては,在籍する学校と相手先の学校との間で十分連携を図っていくことが重要である。

○ また,以下の事項については,引き続き,記述をすることが適当である。
 ・ 「自立活動の記録」については,個別の指導計画を踏まえ,指導の目標,指導内容・方法,指導の結果の概要に関すること等を記述すること。
 ・ 学習指導要領に規定する重複障害者等に関する教育課程の取扱いにより指導上の配慮を行った場合には,必要に応じてその状況を記述すること。例えば,各教科の指導に当たっては,その目標・内容を児童生徒の在籍する学年の前学年の目標・内容の全部又は一部によって替えることができるが,その評価を前学年の各教科の目標に照らして行うことが適当な場合は,観点別学習状況の評価や評定として記述した段階の意味を的確に表す観点から,前学年の各教科の目標・内容によって替えて指導している事実について,「総合所見及び指導上参考となる諸事項」に記述すること。

(4) 小・中学校等に在籍する様々な障害のある児童生徒に対する学習評価の工夫

○ 小・中学校に在籍する障害のある児童生徒については,必要に応じ個別の指導計画を作成することなどにより,個々の児童生徒の障害の状態等に応じた指導の工夫を行い,適切な学習評価を行うことが求められる。

(特別支援学級に在籍する児童生徒に係る指導要録上の工夫)

○ 小・中学校の特別支援学級の児童生徒の指導要録の様式は,特に必要がある場合には,特別支援学校の指導要録に準じて作成することが引き続き適当である。その際,記述の仕方については,特別支援学校における評価方法等を参考にすることが考えられる。

(通常の学級に在籍する児童生徒に係る指導要録上の工夫)

○ 通級による指導を受けている児童生徒の指導要録については,「総合所見及び指導上参考となる諸事項」に,通級による指導を受ける学校名,通級による指導の授業時数,指導期間,指導内容・方法や指導の結果の概要に関すること等を記述することが引き続き適当である。
 なお,通級による指導における学習の評価に当たっては,担当教師間において十分連携を密にする必要がある。

○ また,通級による指導の対象となっていない児童生徒で,教育上特別な支援を必要とする場合については,必要に応じて,「総合所見及び指導上参考となる諸事項」に,効果的と考えられる指導方法や配慮事項を記述することが考えられる。

8.学習評価に係る学校における組織的な取組と国や教育委員会等の支援による効果的・効率的な学習評価の推進

○ 各学校で学習評価を効果的・効率的に推進し,学習評価の妥当性,信頼性等の向上を図るとともに,教師の負担感を軽減するためには,学校における組織的な取組を進めていくとともに,国や教育委員会等による支援を充実することが重要である。

(1) 学校や設置者における組織的な取組

(学校における組織的な取組と教師の役割)

○ 学校や教師は,国や教育委員会等が示す評価の観点とその趣旨,評価規準,具体的な事例等を踏まえつつ,具体的な学習指導の目標や内容,使用する教材に合わせて評価規準等を設定するとともに,児童生徒の学習評価やそれを踏まえた学習指導の改善等を実践する役割を担っている。このため,学校や教師は,評価の実施者として,個々の児童生徒の学習評価に関する妥当性,信頼性等を高め説明責任を果たすとともに,児童生徒や保護者との間で必要な情報の共有を進め,教育の効果の増進を図ることが重要である。

○ 各学校においては,各年度の学校全体の指導目標などを校長が中心となって作成するなど,学習指導における組織的な取組がなされている。学習評価についても同様に,例えば,小学校にあっては各学年において,中学校や高等学校にあっては各教科において,評価規準や評価方法等を明確にすること,評価結果について教師同士で検討すること,実践事例を着実に継承していくこと,授業研究等を通じ教師一人一人の力量の向上を図ること等に,校長のリーダーシップの下で,学校として組織的・計画的に取り組むことが必要である。このような組織的な取組が定着していくことにより,学習評価の妥当性,信頼性等の向上や,教師の負担感の軽減につながるものと考えられる。

○ 今回の学習評価の改善の基本的な方向性の一つは学校や設置者の創意工夫を一層生かしていくことである。そのためにも,学校や設置者は学習評価に係る以上のような取組を進めていくことが求められる。

(保護者の理解の促進等)

○ 学習評価に関する信頼を確保するためには,各学校等において,評価規準など評価に関する仕組みについて事前に説明したり,評価結果の説明を充実したりするなどして,評価に関する情報をより積極的に提供し保護者や児童生徒の理解を進めることが重要である。

○ 特に,通信簿は,学校から保護者に児童生徒の学習状況を伝えるとともに,今後の指導方針を共有する上で重要な役割を果たしている。通信簿の扱いや様式は各学校の判断で定めるものであり,通信簿が児童生徒の学習の過程や成果,一人一人の進歩の状況などを適切に示し,その後の学習を支援することに役立てられるものとなることが重要である。このため,通信簿は,学校から児童生徒の学習状況を伝えることに加え,保護者や児童生徒の考えも伝えられるものとするなど,情報を共有する手段として記載内容や記載方法,様式などを改善充実することが求められる。

○ また,評価に関する情報を積極的に提供する具体的な方途としては,例えば,総合的な学習の時間等において導入している例が見られるポートフォリオ(※1)等を活用してより丁寧な情報提供を行うことも考えられる。

○ このように,各学校から保護者に対し丁寧な情報提供が行われることにより,保護者が児童生徒の学習状況を把握し,家庭学習の充実につながることも期待される。

○ 目標に準拠した評価の妥当性,信頼性等を確保していくためには,学校における組織的な取組の充実や,保護者の理解の促進を更に図っていくことが重要である。
 その際,評定等の学習評価の結果について,学年等を単位として,結果として段階ごとにどのような割合になったかを公表することも考えられるが,あらかじめ割合を定め,それに児童生徒を割り振るものではあってはならないのは,目標に準拠した評価の趣旨からみて当然のことである。

(学校の設置者である教育委員会等の役割)

○ 学校の設置者である市町村教育委員会等は,地域や学校の実情を踏まえながら学習評価の基本的な事項を定める役割を担っている。
 また,市町村教育委員会等は,国や都道府県教育委員会等の示す資料を踏まえながら,各学校が具体的に定める指導と評価の計画,評価規準や評価方法に関して指導・助言を行うことが求められる。さらに,都道府県等と連携しながら,教師の実践的な研修等を行っていくことも重要であり,例えば,一つの学習活動や児童生徒の作品等を複数の目で評価することによって評価規準や評価方法を見直す研修等も考えられる。

○ また,地域の教育研究会などと連携を図り,評価についての実践的な研究を深めたり,地域で単元計画や評価規準を共有したりするなど学習評価の妥当性,信頼性等を向上させる取組なども見られるところであり,地域や学校の実情を踏まえながら,このような取組を今後とも継続して進めていくことが求められる。

○ さらに,新しい学習指導要領は学校間の接続を重視していることから,設置者としても,進学時における指導要録の授受により,児童生徒の学習評価がより適切に継承されるよう努めていくことが重要である。

(2) 各学校における学習評価の円滑な実施のための国や都道府県教育委員会等の取組

○ 学習評価の意義等を踏まえ,国や都道府県教育委員会等においては,これまでと同様,学習指導と学習評価の在り方,評価の観点とその趣旨,評価規準,評価方法等について参考となる資料を示すとともに,具体的な事例の収集・提示等を行っていくことが重要である。

○ その際,国においては,これまでの研究指定事業の成果や都道府県の取組の状況等を踏まえつつ,それぞれの観点にふさわしい評価規準や具体的な評価方法を示すことなどにより,学校や教師にとって一層使いやすく分かりやすい資料を作成することが求められる。

○ また,学習評価において,各学校における創意工夫を生かすことは重要であるが,異なる学校段階において児童生徒の学習状況を円滑に伝達するため,評価の結果が進学等において活用される都道府県等の地域ごとに評価の在り方等を適切に考え,一定の統一性を保つことが必要な場合もあると考えられる。

○ さらに,国や都道府県教育委員会等においては,保護者等に対し,新しい学習指導要領の趣旨と併せ,学習評価についても,集団に準拠した評価ではなく,目標に準拠した評価を行うことが求められること(※2)や,観点別学習状況の評価の趣旨等について,十分な説明を行い,周知していくことが重要である。

(評価規準・評価方法の研究開発の推進)

○ 評価規準や評価方法については,近年諸外国においても様々な研究や取組(※3)が行われており,例えば,「思考・判断・表現」に関する評価規準としては,学年等ごとに細分化したものを定めるのではなく,複数年を見通して,児童生徒の学習状況の段階を複数設定し,長期的な変化・成長・発達をとらえるような評価規準が用いられている場合もあるとの指摘があった。

○ 我が国においても参考となる評価規準や評価方法を紹介することや,我が国の教育課程に合った評価規準や評価方法を研究していくことは極めて重要である。その際,「思考・判断・表現」や「関心・意欲・態度」について課題を感じている教師が多いことから,それらの観点に関する評価規準や評価方法,学習評価を通じた学習指導の改善方法の研究を進めていくことが必要である。
 特に,「思考・判断・表現」等に係る能力を育成するために,各学年単位ではなく長期間を掛けての成長のレベルを幾つか想定して評価規準を設定していくことなどを研究していくことが求められる。

○ そのため,国立教育政策研究所や独立行政法人国立特別支援教育総合研究所において積極的な研究を推進することが期待される。また,大学等の研究機関においても,評価規準や評価方法,学習評価を通じた学習指導の改善方法の研究開発を行い,各学校の評価に関する取組の支援等を進めることが期待される。

(3) 学習評価における情報通信技術の活用

○ 各学校において学習評価に当たり,その妥当性,信頼性等を高めるとともに,教師の負担の軽減を図るためには,情報通信技術を活用していくことも重要である。
 例えば,学習活動の目標や内容,評価規準,評価方法等も含めた,指導計画や指導案等について,学校内で一元的な管理・活用を図ったり,同一地域の学校間で共有したりすることにより,関係者による資料の共同利用が可能となり,評価の妥当性,信頼性等の向上や,教師の負担の軽減につながっていくことが考えられる。

○ 一方,情報通信技術を活用して評価資料を記録・整理することについては,各地方公共団体の文書取扱い規定や個人情報保護条例等との整合を図るとともに,特に外部に対する証明等に役立たせるための原簿となる指導要録については,原本の真実性の保持,改ざん防止,長期保存への対応等にも配慮する必要がある。また,個人情報保護等の観点からデータの流出や消失等の防止に配慮することも重要である。

○ 法令に基づく文書である指導要録について,書面の作成,保存,送付を情報通信技術を活用して行うことは,現行の制度上でも可能であり,現在,地方公共団体においては,指導要録の記入・活用やその際の電子認証,成績処理を含めた教務事務全体の情報化とともに,学習評価の改善を行っている例も見られる。

○ このような情報通信技術を活用した場合の効果や具体的な活用事例等を踏まえつつ,学習評価における情報通信技術の活用について,指導要録及びその抄本や出席簿等の関連する文書の様式を含めて,各学校の設置者においても検討を進めていくことが重要である。 


(※1) 学習評価におけるポートフォリオの活用とは,児童生徒の学習活動の過程や成果などの記録や作品を計画的に集積したファイル等を保存し,そのファイル等を活用して児童生徒の学習状況を把握するとともに,児童生徒や保護者等に対し,その成長の過程や今後の課題等を示すことである。

(※2) 本報告4ページ脚注2に示しているとおり,平成12年12月4日教育課程審議会答申は,評定についても目標に準拠した評価に改める理由を5つにまとめている。

(※3) 思考力・判断力・表現力等を評価するに当たって,「パフォーマンス評価」に取り組んでいる例も見られる。パフォーマンス評価とは,様々な学習活動の部分的な評価や実技の評価をするという単純なものから,レポートの作成や口頭発表等による評価するという複雑なものまでを意味している。または,それら筆記と実演を組み合わせたプロジェクトを通じて評価を行うことを指す場合もある。

お問合せ先

初等中等教育局教育課程課教育課程企画室

電話番号:03-5253-4111(内線2369)

Adobe Readerのダウンロード(別ウィンドウで開きます。)

PDF形式のファイルを御覧いただく場合には、Adobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、まずダウンロードして、インストールしてください。

-- 登録:平成22年04月 --