2.更新制の具体的な制度設計

(1)基本的な考え方

  • 更新制の制度設計に当たっては、教員免許状は職業資格であるとともに、学校の教員としての雇用(任用)資格でもあることから、教員の職業生活をいたずらに不安定なものとしない合理性のある制度とすることが必要である。こうした観点から、更新の要件については、教員免許制度や更新制の趣旨・目的を達成するために必要とされる最小限のものとし、客観性を担保するとともに、更新のための負担も合理的範囲内のものとなるようにすることが必要である。

(2)教員免許状の有効期限

  • 教員免許状の有効期限について、「中間報告」では、一律に10年間とすることが適当であるが、最初の有効期限を例えば5年間程度とすることにも一定の意義があるとの意見もあり、この点については、さらに検討することとされたところである。
  • この点については、その時々で必要な資質能力に刷新(リニューアル)するという更新制の目的や更新の具体的要件、教員のライフステージのほか、既卒者の採用が増えている(免許状の取得後、一定期間を経過した後に採用される者が増えている)状況等を総合的に考慮すると、最初の有効期限を含め、免許状の有効期限については、一律に10年間とすることが適当である。

(3)更新の要件と実施主体

  • 更新の要件については、「中間報告」で示されたように、免許状の有効期限内に、免許更新講習を受講し、修了の認定を受けること(以下「受講・修了」という。)とすることが適当である
  • 免許更新の実施主体(更新の申請受付、免許更新講習の修了確認、更新された免許状の発行等免許更新に係る業務を行う者)については、現行の教員免許制度との関係や具体的に想定される業務等を考慮すると、免許管理者である都道府県教育委員会とすることが適当である。

(4)免許更新講習の在り方

1 講習の実施主体と国による認定

  • 免許更新講習については、「中間報告」で示されたように、受講機会を幅広く確保する観点から、課程認定大学のほか、大学の関与や大学との連携協力のもとに都道府県・指定都市・中核市の教育委員会等も開設することができるようにすることが適当である。
  • また、「中間報告」では、免許更新講習の開設に当たっては、これらの実施主体からの申請に基づき、一定水準以上にあることを国が認定するとともに、認定後も講習が適切に運営されているかどうかを定期的にチェックするなど、講習の質の確保に留意する必要があるとされたところである。
  • 免許状が更新されるかどうかは、資格の得喪に関わる問題であり、また、更新されれば全ての都道府県で公証力を有するものとなることを考慮すれば、更新に当たっては、免許状の授与時に相当するような基準を設定することが適当である。
  • このため、免許更新講習の内容・方法等については、「中間報告」の趣旨を踏まえ、全国的に一定の水準が維持されるよう、あらかじめ、国が免許更新講習の認定基準(例えば、講習内容、方法、修了目標等に係る基準)を定め、それに基づき認定を行うことが適当である。
     また、認定後も定期的にチェックを行い、認定基準を満たしていないことが明らかになった場合には、認定の取り消し等の措置を講ずるなど、免許更新講習の質の確保に努めることが必要である。

2.講習内容と修了の認定

  • 免許更新講習の内容について、「中間報告」では、教職実践演習(仮称)に含めることが必要な事項(注)と同様の内容を含むものとすること、また、社会状況や学校教育が抱える課題、子どもの変化等に応じ、その時々で求められる教員として必要な資質能力に確実に刷新(リニューアル)する内容を含むものとすることが適当とされたところである。
  • この点については、更新制の趣旨に鑑みれば、基本的に学校種や教科種に関わらず、およそ教員として共通に求められる内容を中心とすることが適当である。具体的には、教職専門(例えば、教職の今日的役割、学校における同僚性の形成、家庭や地域社会との連携、子どもの発達や課題の理解、学級経営、生徒指導、教育相談、教育課程の動向と指導の在り方等)を中心に、講習内容を構成することが適当である。
     なお、上記の共通の内容は、あくまで免許更新講習としての認定基準上の内容であり、免許更新講習の実施主体が、認定基準で定める内容以外の内容や認定基準以上のレベルの内容を盛り込んで、多様な講習を実施することは可能である。
  • 免許更新講習の修了の認定については、その実施主体が、国が定める認定基準に基づき、あらかじめ各講習科目の修了目標を定め、受講者の資質能力を適切に判定した上で、修了の可否を決定することとすることが適当である。
  • いずれにしても、免許更新講習の内容をいかに質の高いものにするかは、更新制の成否を左右する重要な課題である。このため、今後、免許更新講習が、学校現場のニーズに即した、教員にとってもその後の10年間を保証する質の高いものとなるよう、現職研修との関係にも留意しながら、課程認定大学や教育委員会、学校等関係者の協力を得て、速やかにモデルカリキュラムの検討を行うことが必要である。

(注)「中間報告」では、教職実践演習(仮称)に含めることが必要な事項として、(1)使命感や責任感、教育的愛情等に関する事項、(2)社会性や対人関係能力に関する事項、(3)幼児児童生徒理解に関する事項、(4)教科等の指導力に関する事項の4つの事項が示されている。

3.受講時期と講習時間

  • 免許更新講習の受講時期や講習時間について、「中間報告」では、当該講習の受講の有効性や、計画的な受講の促進、受講者の負担等を考慮し、有効期限の満了時の直近1~2年間程度の間に、全体で20~30時間程度の講習を受講する方向で、検討することとされたところである。
  • 免許更新講習の受講に当たっては、受講者が自らの事情等を考慮して受講時期を決定したり、学校内に対象者が複数名いる場合でも、計画的に受講できるよう、受講時期にある程度の幅を持たせることが必要である。このため、免許更新講習の受講時期については、有効期限の満了前の直近2年間程度の間に受講することとすることが適当である。
  • 受講時期に一定の幅を持たせる一方で、免許更新講習を刷新(リニューアル)としての中身を伴った、教員にとってもその後の成長に意義のあるものにするためには、一定程度の講習時間を確保することが必要であることから、講習時間については最低30時間程度とすることが適当である。

4.講習の受講の免除等

  • 現職教員については、「中間報告」で示されたように、教員としての研修実績や勤務実績等が、免許更新講習の受講に代替し得るものとして評価される場合には、当該講習の受講の全部又は一部を免除することを可能とする方向で、検討することが適当である。
  • また、教員が、例えば基準時間以上に免許更新講習を受講した場合や、より高度な内容の講習を受講した場合には、各任命権者の判断により、その実績を教員評価の一環として評価し、処遇にも反映させるなどの措置を講じることも検討する必要がある。

(5)教員免許状の失効と再授与の在り方

  • 更新の要件を満たさない場合、「中間報告」では、教員免許状は更新されず、当該免許状は失効すること、また、現職教員は引き続き教員としての職務に従事することはできなくなり、公立学校の教員の場合、教育公務員としての身分も失うことになることが示されたところである。
  • 教員免許状を有することは、教育職員としての資格要件であり、この要件を欠くに至った場合、公立学校の教員であれば、地方公務員法上の失職に該当することになるものと考えられる。失職は、免許状の失効という事由が発生した時点で、公務員としての身分を自動的に失うものであり、分限免職のような処分行為を前提としたものではない。したがって、法律上、何らかの行政行為が必要になるものではないが、実際上は、当該者に、通知等により失職の事実や発生時期等を知らせることが適当であると考える。なお、「中間報告」で示したように、このような失職となった者を、改めて他の職として採用するかどうかは、基本的に任命権者の判断である。
  • 免許状の再授与について、「中間報告」では、免許状が失効しても、学士の学位等の基礎資格や大学等において修得した単位の効果は終身有効であり、教職を志すような場合に、免許更新講習と同様の講習を受講・修了しさえすれば、いつでも再授与の申請は可能とすることが適当とされたところである。
  • このような取扱いとした場合、免許状の「失効」とは、学士の学位等の基礎資格や大学等における単位修得という過去の実績が全く無効になる状況ではなく、これらの基盤となる部分は終身有効であることから、いわば免許状の「部分失効」とでも言うべき状態である。
  • 今回の更新制では、多数のペーパーティーチャーも対象になることから、国においては、更新制による免許状の「失効」の意味が正しく理解されるよう、十分な周知に努めることが必要である。

(6)教員免許状の種類ごとの更新制の取扱い

  • 教員免許状の種類ごとの更新制の取扱いについては、「中間報告」でも示されたように、すべての普通免許状に、同等に適用することが適当である。また、特別免許状については、普通免許状に準じた取扱いとし、臨時免許状については、既に有効期限が付されていることから、引き続き、現行と同様の取扱いとすることが適当である。

(7)複数の教員免許状を有する者の取扱い

  • 複数の教員免許状を有する者について、「中間報告」では、それぞれの免許状について更新制が適用されることとなるが、免許状保有者の負担や、複数免許状の保有促進等を考慮し、一の免許状について更新要件を満たせば、他の免許状についても併せて更新されることとするなど、一定の配慮をすることが適当とされたところである。
  • 免許更新講習については、上記のように、学校種や教科種に関わらず、およそ教員として共通に求められる内容を中心に構成するとすれば、複数の教員免許状を有する者については、「中間報告」の方向で、一の免許状に係る免許更新講習を受講・修了すれば、他の免許状の更新も可能とすることが適当である。
     ただし、養護教諭、栄養教諭及び特殊教育諸学校の教諭の免許状については、それぞれの職務の特性等を考慮し、当該免許状に対応した免許更新講習の受講を課すことが適当である。

(8)教員となる者及びペーパーティーチャーの取扱い

  • 以上が、更新制を導入する場合の具体的な制度設計であるが、このような更新制が、教員となる者(更新制の導入後に免許状を取得して、教員になる者。以下同じ。)やペーパーティーチャーにどのように適用されるのか整理する必要がある。
     この点について、教員免許状は教員としての雇用(任用)資格であることから、教員となる者が将来的にも教員であり続けるためには、定期的に免許状を更新しなければならない。この点を考えると、今回の更新制は、主として教員となる者を対象として想定したものであると言うことができる。
  • 一方、ペーパーティーチャーについては、「中間報告」では、ペーパーティーチャーも免許更新の申請は可能であること、また、仮に更新しなかった場合でも、学士の学位等の基礎資格や大学等において修得した単位は終身有効であり、教職を志すような場合に、免許更新講習と同様の講習を受講・修了しさえすれば、いつでも再授与の申請は可能とすることが適当とされたところである。
  • 今回の更新制の目的が、教員として、その時々で求められる最小限必要な資質能力に刷新(リニューアル)することであることに鑑みれば、教員となる者とペーパーティーチャーでは、自ずと更新制の意義が異なるものと考える。
     すなわち、ペーパーティーチャーについては、教職に就いていない間は、その時々で教員に必要な資質能力に刷新(リニューアル)すべき現実の必要性は必ずしもなく、教職に就く時点で、そのような刷新(リニューアル)を図り、教員として必要な資質能力を身に付けることが必要とされる
  • したがって、ペーパーティーチャーについては、教員希望者などの免許状の保持が必要と考える者を除く大多数の者は、定期的に免許状を更新する必要はなく、新たに教職を志すなど免許状の再取得が必要となった時点で、免許更新講習と同様の講習(以下「回復講習」という。)を受講することが望ましいものと考える。(なお、回復講習は、制度上の位置付けは免許更新講習と異なるものの、受講の趣旨は同じであることから、上記(4)1~3と同様に考えることが適当である。)
  • 国においては、前述の免許状の「失効」についての正しい理解促進とともに、ペーパーティーチャーと更新制との関係や、ペーパーティーチャーが免許状を再取得する場合の取扱いについて、十分な周知に努めることが必要である。

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