1.更新制の導入の基本的な考え方

  • 教員免許制度ワーキンググループにおいては、平成17年12月の中央教育審議会「中間報告」で示された基本的方向を踏まえ、一般の方や関係団体から寄せられた意見等も考慮しながら、「中間報告」でさらに検討が必要とされた課題を中心に検討を行ってきたが、このたび、以下のとおり、これまでの検討結果をとりまとめた。

(1)導入の必要性及び意義

  • 「中間報告」では、教員に必要とされる資質能力は、近年、学習指導要領の不断の見直しや、子どもの学ぶ意欲や社会性、コミュニケーション能力等の低下、LD(学習障害)・ADHD(注意欠陥/多動性障害)など子どもに関する新たな課題の発生等に見られるように、教員免許状の取得後も、常に変化していることが示された。
     また、このような変化に対応しうる資質能力を確実に保持するためには、個々の教員の自己研鑽や現職研修に委ねるだけでなく、恒常的に変化する教員に必要な資質能力が常に保持されていることを、免許制度上担保するため、教員免許状の在り方を根本的に見直すことが必要とされたところである。
  • 「中間報告」で示された考え方を基本としつつ、教員をめぐる社会状況の激しい変化や、教員の幼児児童生徒の教育に果たす役割等を考慮すると、教員として最小限必要な資質能力は、本来的に、時代の進展に応じて更新が図られるべき性格を有しているものと考える必要がある。
  • 一方、教員免許状は、学校教育法で規定される初等中等教育段階の学校における、いわゆる公教育を適切に実施する者に授与される資格である。また、教員免許制度は、このような免許状を有する者の資質能力を一定水準以上に確保することを目的とする制度であり、これらの点に鑑みれば、教員免許制度は、その本来的な在り方として、教員として必要な資質能力が更新されるものとして、制度設計が行われることが必要であると考える。
  • これまで、教員として必要な資質能力の保持と向上は、教員の自己研鑽と現職研修に負うところが大きかった。今後とも、現職研修の充実が重要であることは言うまでもないが、上述のような、今日の公教育が直面している課題や急激な変化、教員の果たす役割等に鑑みれば、国民の期待に応える公教育を実現していくためには、教員免許制度を、恒常的に変化する教員として必要な資質能力を担保する制度として、再構築することが必要である。
  • これにより、設置者の別や地域のいかんに関わらず、我が国全体における公教育の改善・充実が図られることが期待され、また、教育の機会均等の保証にも、より適切に応えることができる。さらに、現職教員以外にも、多数の免許状保有者がおり、民間企業経験者等、多様な人材の登用が進んでいる現状を考慮すると、更新制を導入することは、公教育の目的を実現する上で不可欠であるとともに、公教育に対する保護者や国民の信頼を確立する上でも、大きな意義を有するものであると考える。

(2)他の教員政策との関係

  • 「中間報告」では、平成14年の答申において、更新制の導入に慎重にならざるを得ないとされた理由を、1)分限制度との関係、2)専門性向上との関係、3)一般的な任期制を導入していない公務員制度との関係、4)我が国全体の資格制度との関係の4つに分類し、それぞれの課題について、今回、提言された更新制との関係を整理したところである。
     「中間報告」で示された整理の方向を基本としつつ、一般の方や関係団体から寄せられた意見等を考慮すると、特に分限制度や専門性向上との関係については、なお整理が必要であると考えられる。
  • 今回検討している更新制は、その時々で必要な資質能力に刷新(リニューアル)することを目的としたものであり、平成14年の答申で検討された更新制とは、基本的性格が異なるものである。今回の更新制は、いわば、教員として日常の職務を支障なくこなし、自己研鑽に努めている者であれば、通常は更新されることが期待されるものである。その意味で、いわゆる不適格教員の排除を直接の目的とするものではなく、大多数の教員にとっては、今後も専門職としての教員であり続けるために、最新の知識・技能を身に付け、その後の10年間を保証された状態で、自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を得ていくという前向きな制度であることを明確にする必要がある。
  • 特に、専門性向上との関係については、後述するように、免許更新講習が、およそ教員として共通に求められる内容を中心に、その時々で必要な資質能力に刷新(リニューアル)するものとして構成されるのであれば、当然、当該講習の受講により、教員としての専門性の向上が期待できるものである
  • 他方、更新の要件を免許更新講習の受講・修了とする場合、それが修了できない者は、その時点で最小限必要な資質能力を有していないこととなり、免許状は失効するため、更新制は、結果として、教員として問題のある者は教壇に立たせないようにするという効果を有している。
  • このように、今回の更新制は、その効果に着目すれば、専門性の向上や適格性の確保に関わる他の教員政策と関連しており、したがって、これらの政策を含む教員政策全体の中に適切に位置付けることが、その必要性や意義を明確にする上で、重要である。
     この点について、今回の更新制は、基本的には教員としての専門性の向上に資する政策であるが、更新の要件を満たさない場合には、免許状が失効するという更新制の性格上、教員としての適格性の確保に関連する側面も有しているものである。
  • 既存の教員政策に加え、このような更新制を導入することにより、免許制度上、生涯にわたり教員として最小限必要な資質能力を保証するという制度的基盤が確立されることとなる。また、こうした確かな資質能力を基盤として、個々の教員の能力、適性等に応じた多様な現職研修が行われることにより、教員全体について、専門性の一層の向上が期待できる
     一方、適格性の確保は、「中間報告」でも指摘されたように、基本的に分限制度等により対応すべき事柄であるが、更新の要件を満たさない場合には免許状が失効することから、更新制の導入により、教員として問題のある者は教壇に立たせないようにすることが、これまで以上に確実に行われることが期待できる。
  • このように、今回、新たに更新制を導入し、専門性の向上や適格性の確保に関わる他の教員政策と一体的に推進することは、教員全体の資質能力の向上に寄与するとともに、教員に対する信頼を確立する上で、大きな意義を有するものであると考える。

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