資料5‐1 中間報告に対する意見募集の概要

1.意見募集について

 平成17年12月9日から、文部科学省のホームページ等を通じ、国民の皆様に対し、中間報告に対するご意見をお寄せいただくようお願いした。
 平成18年1月10日までに、722件のご意見が寄せられている。

2.意見提出者の属性による分類

(1)応募方法による分類

  総数 はがき 封書 電子メール FAX 電報
件数 722 66 73 398 181 4
100.0パーセント 9.1パーセント 10.1パーセント 55.1パーセント 25.1パーセント 0.6パーセント

(2)性別による分類

  総数 男性 女性 団体 不明
件数 722 399 277 41 5
100.0パーセント 55.3パーセント 38.4パーセント 5.7パーセント 0.7パーセント

(3)年代による分類

  総数 10代以下 20代 30代 40代 50代 60代以上 不明
件数 722 0 13 110 359 118 12 110
100.0パーセント 0.0パーセント 1.8パーセント 15.2パーセント 49.7パーセント 16.3パーセント 1.7パーセント 15.2パーセント

(4)職業による分類

  総数 学生 教職員 公務員 団体職員 会社員 自営業 主婦 無職 団体 その他 不明
件数 722 2 482 119 16 3 2 4 3 41 2 48
100.0パーセント 0.3パーセント 66.8パーセント 16.5パーセント 2.2パーセント 0.4パーセント 0.3パーセント 0.6パーセント 0.4パーセント 5.7パーセント 0.3パーセント 6.6パーセント

中間報告に対する一般の方からの意見の概要

 意見募集は、中間報告に対し、幅広くご意見を伺ったものであり、中間報告の内容に対し、直接賛否を問う形は行っていない。以下では、中間報告の内容に対していただいた意見の傾向を知るための参考とするために、ご意見の趣旨を踏まえて、各項目に積極的か、消極的か、そのどちらか不明あるいは異なる提案等についてはその他として、便宜上分類した。
 なお、◎は比較的多く寄せられた意見である。

1.教員養成・免許制度の改革の基本的な考え方

 積極的な意見として、開放制の下で多様な教員が教員養成にあたるべき、教育改革を進める上で、教員の資質向上と免許制度改革は不可避の課題等の意見があった。消極的な意見として、十分な検証なしの新たな制度改革は学校現場に混乱をもたらす、更新制の導入や教職大学院は、教職を敬遠させ人材不足をもたらす等の意見があった。その他、信頼回復のためには、養成・採用・研修の一体的改革が必要等の意見があった。

積極的な意見

  • ◎ 開放制の原則の下、多様な教員がチームとして教員養成にあたるようにすべきである。
  • ○ 教育改革が必要であり、教員の資質向上と免許制度改革は避けて通れず、その中で更新制を導入することも必要である。
  • ○ 時代の要請で、より質の高い教育を国民に提供できるようにする趣旨は理解できる。
  • ○ 志の高い若い教員が多く入ってきているが、現場経験による要領の良さが欠けている者が多い。年配教員の中にも、教員に向いていない者が多くいる。これらの者に対する意識改革の刺激が必要である。

消極的な意見

  • ◎ 既施策の十分な検証もせずに新たな制度改革を行うことは、学校現場の混乱を助長し、教育行政への信頼を損なうことになる。
  • ○ 教員を取り巻く問題の本質は、免許状や教員養成の在り方にあるわけではなく、社会環境の著しい変化にある。このうねりを変えなければ、本質的な改革にはならない。
  • ○ 中間報告では、個々の教職員の資質を高めることを理念としており、「現場で育つ」や「学び合い」の観点を軽視している。
  • ○ 更新制の導入や教職大学院の創設は、教職を敬遠させ、人材確保の面で問題を引き起こす可能性が高い。
  • ○ 教員が雑務や会議に追われ、教育に専念できず、研修機会もないことを放置したまま、熱意と愛情にあふれる教員を養成しても、モチベーションの持続が難しい。

その他の意見

  • ◎ 養成・採用・研修の一体的・抜本的改革が必要であり、教職大学院の創設や更新制の導入等の一部の改革では、教員の資質能力の向上と教育への信頼回復は図れない。
  • ○ 免許状が真に教員になる者にしか与えられないから、尊敬される職種になるというものではない。免許状の有無に焦点化せず、見直すべきところを見極めて欲しい。
  • ○ 免許状に対する信頼が薄らいでいるのは、現職教員に対してであり、免許状の種類により信頼感が揺らいだり、能力に著しい違いがあるわけではない。
  • ○ 教職課程が最低の資質能力を確実に身に付けさせることが実現できていないのであれば、伝聞調の事例を挙げて議論するのではなく、学術的調査に基づいて根拠を示すべきである。
  • ○ 学級崩壊を起こしている教員は、ベテラン教員といわれる年齢層に多い。

2.教員養成・免許制度の改革の具体的方策

1.教職課程の質的水準の向上

(1)教職課程の改善・充実

 積極的な意見として、教育実習の充実が必要、科目相互の結びつきにより教職課程全体を改善すべき、どの大学でも同じ結果が出るシステムづくりが必要等の意見があった。消極的な意見として、改革案の提案が拙速である、教員養成大学と一般大学の条件を無視した改革は開放制を阻害する、画一的な制度を作るべきではない等の意見があった。

積極的な意見
  • ◎ 現行の教育実習の条件整備を行い、長期化することが、教職への適格性を自己評価し、教育現場の複数の教員による評価と指導も行えるため有効である。
  • ○ 教職課程の科目相互の結び付きを問い直し、教職課程全体を改善していくべきである。科目の趣旨を徹底し、身に付けさせる事項を再確認することで、中間報告の内容を実現してもらいたい。
  • ○ 教職課程の改善・充実を図るためには、大学の組織的指導体制の整備、教育実習の改善・充実、モデルカリキュラムの開発・研究を積極的に行う必要がある。
  • ○ どの大学で免許状を取得しても、同じ基準に基づき同じ結果が出るシステムづくりが必要であり、また、教職経験のある教員が指導にあたり、養成段階から教員としての適性を判断していくシステムが必要である。
  • ○ 課程認定大学は、学生に教職に就く意思を事前確認した上で、免許状を取得させるべきである。
  • ○ 教員養成学部以外の教員は、教職科目や教職課程全般に対して関心を持っていない。このような状況下で、教職指導の充実を図るためには、必修科目に教職指導の内容から構成される科目を含めることも必要である。
  • ○ 教育現場の考えや経験に即して教員養成が行われることが必要なので、現職教員が一定期間、大学の非常勤講師となる機会を拡充したらどうか。
消極的な意見
  • ◎ 新しい教職課程を履修した学生の卒業から2年しか経過していない段階で、このような改革案を提案するのは拙速であり、教職課程担当教員の意気を損ねるものである。
  • ○ 適格性を判断するためには、教員が学生と十分に対話・交流できるクラス・サイズが必要である。教員養成大学と一般大学との条件を無視した改革案は、開放制を阻害する。
  • ○ 教員養成は、開放制の下に、教員として幅のある人格が養われる。学校現場も様々な大学の出身者がいるから活性化するのであり、画一的な制度をつくるべきではない。
  • ○ 教職指導の概念を満たすためには、カリキュラムの体系化を進めなければならないが、一般学部の教職課程に教職指導をどのように組み込むかは難しい問題である。
その他の意見
  • ◎ 人間性は、大学だけで学べるものではないので、様々な経験ができるよう、教職課程もゆとりあるものにしなければ、知識のみが先行し、人間性の伴わない教員が増えていく。
  • ○ 教員自身が担当教科に関わる学問について深く修め、学ぶ喜びを体験していなければ、子どもに伝えることはできないので、教員養成は、担当教科の学問的な力量向上を中心にすべきである。
  • ○ 大学院や試補制度の導入により、教員をじっくり養成する方向に向かうべきで、このためには、大学における科目履修を最低限に留め、教育実習を核にして専門的に深めるべきである。
  • ○ 「学習指導要領学」のような科目を設けることにより、学習指導要領をきちんと認識させることが必要である。
  • ○ 言語リテラシーの育成と課題探求的な学習指導法を教職課程の必修としてほしい。
  • ○ 国語の教員は、言語聴覚に関する基礎的な教育を受けるようにし、養護学校の作業学習の担当教員は、作業療法に関する基礎的な教育を必須とするようにしてもらいたい。
  • ○ 教育実習に不足している部分があるのであれば、実習協力校に対する財政的・人的なバックアップをするべきである。
  • ○ 大学教員は、教育者としての意識が低い者が多い。実践は給与や昇進において不利な扱いが行われているので、格差是正を指導してもらいたい。
  • ○ 中・高教員の養成は、専門知識は学部・大学院で学び、実践力の養成は、教職教育と実習を兼ね備えた専門教員集団(センター)や教員養成学部の担当教員に委ねれば良い。
  • ○ 免許法別表第3~第8までの単位は、課程認定大学等での単位に限るようにしてもらいたい。
  • ○ 今日の問題は、例えば、高校の教科選択制の拡大により、理科教員となるのに必要な科目を学習していない場合があることで、主要科目は全て学習させるなど、高校までの教育を充実しなければならない。
(2)「教職実践演習(仮称)」の新設・必修化

 積極的な意見として、教職実践演習(仮称)の実施のためには、大学教員の資質向上や授業内容の充実が必要、優れた実践を行っている大学の取組を普及すべき、教職実践演習(仮称)は2単位とすべき等の意見があった。消極的な意見として、教育実習の充実の方が有効、教職課程の各科目の評価の厳格化が先決、使命感や責任感の評価は大学の科目になじまない等の意見があった。

積極的な意見
  • ◎ 指導する大学教員の資質向上及び授業の内容面における充実を望む。
  • ○ 担当教員の力の差が大きいため、例えば、教員研修のワーキンググループをつくり、教員養成教育の充実を図ったり、実務家教員としての実績を評価して、教職実践演習(仮称)を充実してほしい。
  • ○ 優れた実践を行っている大学から学ぶなど、大学間の横のつながりを生かしながら、教職実践演習(仮称)の担当教員の資質向上を図ることが必要である。
  • ○ 教職実践演習(仮称)は2単位とし、1、2は学校種によらず1単位(複数免許状取得の場合に、共通で使用可)、3、4は学校種ごとに1単位として良いのではないか。
  • ○ 養護教諭を養成する大学においても、教職実践演習(仮称)を導入してもらいたい。
  • ○ 教職実践演習(仮称)の内容の一部に、教科指導の中での情報活用、そのための学校図書館の活用法についての演習を含めてもらいたい。
消極的な意見
  • ◎ 教育的愛情や対人関係能力は、実際に子どもと接する中で培われるので、現行の教育実習を充実させることが有効な手立てである。
  • ◎ 教員として求められる4つの事項は、現行の教職課程のカリキュラムを工夫改善することによって指導可能であり、科目を新設してまで学ばせる必要はない。
  • ○ 教職の適格性は、教職課程の全科目を通じて判断すべきであり、総仕上げの科目としても、1つの科目にその判断を委ねることは妥当ではない。
  • ○ 教職課程の各科目の評価を厳格にするように求めることが先決で、評価が甘いままなら、教職実践演習(仮称)を新設しても意味がない。
  • ○ 教員として求められる4つの事項の2、3は学校ボランティアとも重なっているので、科目の新設より、学校ボランティアの推奨又は義務化の方が良い。
  • ○ 教職課程の履修により必要な資質が形成されたか確認することは、教育実習後の個人面談や試験である程度可能だが、それを科目とするには、従来の科目概念から難しい。
  • ○ 教科指導力は教育実習における実習校の意見を尊重することで判断できるし、事前事後の指導や教育実習の評価と比較考量して判断できる。
  • ○ 教職実践演習(仮称)は、教育実習の事前事後指導と重複するので、科目の新設ではなく、事前指導1単位(3年次)、事後指導1単位(4年次)とした方が良い。
  • ○ 指導案作成や模擬授業、事例研究等、実践的指導力に重点が置かれすぎると、個性的な教員や視野の広い教員の養成が困難になり、子どもへの対応に柔軟性がなくなる。
  • ○ 現職教員の協力体制を築けるのか疑問である。指導力のある教員を現場から引き離すこととなり、若手教員への指導や新しい教育実践等に影響を与える可能性がある。
  • ○ 使命感や責任感、教育的愛情を評価する内容は、大学の科目としてなじまない。それらを伸ばすための動機付けや実践の機会を設定し、その支援をするのが大学でできることである。
  • ○ 教員養成の最終段階の一時期のみで、適格性を評価し、その後の採用や現職研修における必要要件とすることは、教職志望者にとって、プラスにはならない。
  • ○ 観点として、「子どもが抱える課題の改善に向けての根気強い指導の実施」とあるが、これを1~2単位の新設科目で行うことは難しい。
  • ○ 教職実践演習(仮称)の新設は、再課程認定につながり、大学側の負担増となる。指導教員の確保が困難であり、課程認定を困難にする科目新設は、大学経営を脅かしかねない。
その他の意見
  • ○ 4つの事項の順序は、第1に4、第2に3でなければならない。2は、社会生活や様々な体験から獲得していく力だし、1は授業で扱うべきことではない。
  • ○ 教職実践演習(仮称)が、教職への意識を高める手立てになる可能性はあるが、スキルの向上と一体でなければ人材育成につながらないので、教育実習の在り方も含めて、総合的に見直してもらいたい。
  • ○ 教職実践演習(仮称)は、採用時の研修で実施すべき内容であり、初任者研修の在り方も含めて見直しが必要である。
  • ○ 学生段階で、保護者や地域を対象にした取組みを任せるには限界があるので、養成段階の内容と初任者研修で充実できる内容を整理することが必要である。
  • ○ 教員養成大学では免許状取得が卒業要件となるため、教職実践演習(仮称)の単位を取得できないことが卒業延期に直結する。この科目は卒業要件に含めない位置付けにできないか。そうすることが、科目の実効性につながる。
(3)事後評価制度の導入や設置審査の充実

 積極的な意見として、事後評価の導入や認定審査の充実、基準の明確化等に賛成する意見があった。

積極的な意見
  • ○ 事後評価制度の導入や認定審査の充実は望ましい。第三者評価は、しかるべき専門家が担当することが望ましく、認定審査の基準等も明示してもらいたい。
  • ○ 課程認定では、設備や講師の配置状況などの形式ではなく、当該大学の学生が本当に教壇に立つ能力があるのかを判断して、厳格に認定してもらいたい。
  • ○ 高校の教員は、専門的知識が相当必要であるため、課程認定にあたっては、申請大学における各科目の単位認定試験の内容を吟味してもらいたい。
  • ○ 養護教諭の教職課程の中には、読み替えの科目で認定されているところも多いので、第三者評価・外部評価を厳密に行って欲しい。

2.「教職大学院」制度の創設

(1)制度の創設の基本的な考え方

 積極的な意見として、国際レベルの質の高い教員養成、実践重視の大学院、現職教員の研修機会の充実等の観点から、教職大学院の創設に賛成する意見があった。消極的な意見として、既存の大学院の改善が先決、学歴を高めても資質向上につながらない、特別扱いの教員の存在は学校づくりを困難にする等の観点から、教職大学院の創設に反対する意見があった。

積極的な意見
  • ○ 国際的なレベルの知識のある教員を養成することは急務であり、教職大学院の創設は日本の発展に貢献する。
  • ○ これからの日本の教育を担う人材育成のための実践化の大学院として期待している。
  • ○ 教職大学院が軌道に乗り、教員の大量採用が一段落すれば、量よりも質を重視した教員養成を行うことができる。
  • ○ 現職教員の資質向上の場として、教職大学院が活用されることをもっと明記すべきである。
消極的な意見
  • ◎ 教職大学院の創設ではなく、既存大学院等の改善が先に必要なことである。
  • ○ 既存の教員養成大学院のカリキュラムや教員の担当科目の精選により再編を図る方が、停滞気味の教員養成学部・大学院を目覚めさせるのではないか。
  • ○ 現職教員が、学校での教育実践を生かしながら、現場を離れて専門性を高めることは、既存大学院の改革によっても達成できる。
  • ○ 教職員は、子どもとともに活動する中で力量を高めるのであり、特別なスクールリーダーの養成、有力な新人教員の育成を目的とする教職大学院は不要である。
  • ○ 学歴を高めることを奨励し、修了者の処遇を優遇しても、教員の資質向上につながらず、現場で実践的な対応ができないリーダーや管理職を増やすことになるだけである。
  • ○ 様々な学問を学んだ多様な教員がいるからこそ、多様な個性の生徒に対応できるのであり、教職大学院で学んだエリートだけが教員になれば、学校は息苦しいものになる。
  • ○ 制度設計そのものが差別的であり、特別扱いされる教員の存在は、教職員が力を合わせた学校づくりを困難にする。
  • ○ 教職大学院の創設は、戦前の師範学校を思い起こさせ、違和感を感じる。
  • ○ 教員は若いということだけで、子どもを惹きつけるものがあるので、大学院を推進する方向には反対である。
  • ○ 教職大学院になると、免許状の取得が中心となり、研究レベルが低下する可能性がある。
その他の意見
  • ○ 教職大学院を創設するとしても、既存の学部や修士課程の変革に重点を置いたものとし、担当教員の資質や内容も含めた教職課程の大幅な変革にしてもらいたい。
  • ○ 新教育大学の大学院生の実態が、教職大学院の先行事例となるので、調査する必要がある。
  • ○ 教育実践の研究者養成として、連合大学院博士課程の構想と教職大学院構想との関係が十分に述べられていない。
(2)具体的な制度設計

 積極的な意見として、現職教員や社会人のための短期や休日における履修、実務家教員の積極的登用、柔軟な学習形態等に関する意見があった。消極的な意見として、免許状未取得者の受け入れに反対する意見があった。

積極的な意見
  • ○ 現職教員や、他業種から教職を目指す者のために、2年次編入制度を導入し、土日や夏期における受講で、教職修士(専門職)が取得できるようにしたらどうか。
  • ○ 必要な単位のうち、一定数の単位(30~40単位以上)を修得済みの者には、標準年限で免許状を取得できるようにして欲しい。
  • ○ 実務家教員を4割以上としているが、少ない。
  • ○ ベテラン・中堅の教員、やる気と情熱、問題意識の高い若手教員を教授・講師として迎え、より良い教育者を目指す学生とともに切磋琢磨し、そこで得たものを子どもに還元できる大学院であって欲しい。
  • ○ インターネット等を通じて、職場や家庭等どこからでも、いつでも学習ができ、サポートしてもらえるよう、様々な学習形態や学習時間帯を用意して欲しい。
  • ○ 養護学校教諭や養護教諭も、教職大学院で履修できるようにしてもらいたい。
  • ○ 養護教諭の教職大学院として、心的障害やLD・ADHD等の子どもに視点を置く大学院ができるよう、設置基準の緩和や開発的な試行を検討してもらいたい。
消極的な意見
  • ○ 免許状未取得者を受け入れることで、教職大学院の課程編成が曖昧になる。少なくとも教員免許状の既取得者、現職経験5年以上を入学資格として、実践的な研究を行わせるべきである。

3.教員免許更新制の導入

(1)導入の基本的な考え方

 積極的な意見として、時代の変化への対応や指導力不足教員への対応等の観点から、教員免許更新制の導入が必要との意見があった。消極的な意見としては、過去の中教審答申との関係、教員の多忙化、社会人活用や他の資格制度との関係、指導力不足教員に対する措置が既に取られていること等との関係で、更新制の導入に反対する意見があった。

積極的な意見
  • ○ 更新制は、生涯学習社会における時代の変化への対応を考えた場合、必然性はある。
  • ○ 指導力不足教員は、教員としての自覚を持っていないと感じられるため、教員の立場を再認識するための更新制であって欲しい。
  • ○ 更新制は、多くの国民に学校教育への関与を呼びかけるものとして活用する未来志向の制度にする必要がある。
  • ○ 養護教諭を含めた全ての普通免許状に同等に更新制を適用する方針は良い。
  • ○ 更新制導入のメリット・デメリットや、運営コストをもう少しわかるように説明してもらえれば、国民の誤解もなくなる。
  • ○ 不適格教員への対応は、別制度できちんと対応していることを、もっと知らしめる方が良い。
消極的な意見
  • ◎ 過去の中教審答申で否定された更新制を導入する必要はない。更新制の代わりに10年経験者研修が導入されたのだから、その検証なしに更新制を導入する整合性がない。
  • ◎ 更新制によるこれ以上の研修は、教員の多忙化につながり、子どもと接する時間を減らすことになる。教職に対する意欲を失わせることにつながる。
  • ◎ 教員のみに更新制を導入することは、免許を有しない民間人校長や、特別免許状による社会人教員等と整合性が取れず、医師や弁護士等、他の制度との整合性が取れない。
  • ◎ 指導力不足教員に対する研修制度等が整備されているので、更新制の導入は、屋上屋を重ねることになる。
  • ○ 教育に対する様々な要求や問題を解決するのは、免許状の問題ではなく、教育条件や子どもを取り巻く環境にあるので、その問題の解決が優先である。
  • ○ 日本の教員は、教育現場での実践を通じた研修や相互の学び合いによって資質向上を図っているので、教育行政はその支援に徹するべきで、新たな負担を課すべきではない。
  • ○ 免許状は、ある一時期に知識技能試験に合格したという意味しかなく、実際の資質能力の向上は、業務を遂行する中での経験や研修でしか行えない。免許状は、過去の証明に過ぎず、現在及び未来の保証とはなり得ない。
  • ○ 教員は学校全体で子どもを育んでくれるのであり、それが親としても安心につながる。単に、機械的に更新制を導入すれば済むという考え方は、親の願いに無縁である。
  • ○ 雑務や種々の対応に追われ、教科指導に落ち着いて取り組むことができず、教職員が教材研究や授業実践について話し合うこともなくなってきた中で、更新講習を行っても、資質向上にはつながらない。
  • ○ 単なる講習を受講するだけで、日々の教育実践が良くなり、意欲が喚起されるとは思えない。
  • ○ ペーパーティーチャーが大幅に減少するだろうが、山間へき地を抱える地域では、これらの者を頼りに臨採や非常勤講師を採用しているので、導入すべきではない。
  • ○ 採用試験を受ける意思のない者は更新しないので、臨時講師に来てもらえる者は、採用試験を受ける30歳半ばの者ばかりとなり、教員不足に陥ると思われるため、導入すべきではない。
(2)具体的な制度設計

 積極的な意見として、柔軟な制度設計、現職教員にも適用すべき、免許状の有効期限は10年が適当、更新講習の受講に加えて試験の実施を求める意見等があった。消極的な意見としては、膨大な事務量や費用負担が予想されること、現に免許状を有する者への適用は反対、更新講習の量・質に対する懸念等の意見があった。

積極的な意見
  • ○ 更新制は一律に適用するのではなく、専修免許状取得者については、専門教科を免除したり、現職教員については内容を簡素化する等、柔軟な制度にした方が良い。
  • ○ 更新制の目的は、不適格教員のふるい落としではなく、教員の能力のブラシュ・アップなので、現職教員へも適用した方が良い。
  • ○ 更新制により、ペーパーティーチャーに教員としての資質があるかどうかを確認する必要はある。
  • ○ 免許状の有効期限を10年に設定する必要性は認められる。更新制に伴い、課程認定大学の責任も大きくなるので、大学の質的向上を望みたい。
  • ○ 任命権者が実施する更新講習では、判断が甘くなるので、受講後、全国一律の試験を実施し、合格者のみが更新できる制度にしてもらいたい。
  • ○ 小学校教員については、新たな教育技術の知識を持たせるための再教育の観点から、技術力検定制度的要素を持った更新制とすべきである。
  • ○ 複数免許状に係る更新講習を1回とすることは良いが、手続きの面でも配慮してもらいたい。
消極的な意見
  • ◎ 数百万人にもなる免許状取得者の更新手続は、都道府県教育委員会等の事務量を膨大なものにし、費用負担も膨大になる。
  • ◎ 現に教員免許状を有する者に更新制を適用することは、法制度上の整合性が取れない。
  • ○ 現職者がペーパーティーチャーと同じ更新講習を受けることに反対である。
  • ○ ペーパーティーチャーへの更新制の適用については、教職に就いた後にするべきである。
  • ○ 課程認定大学における更新講習について、一定水準以上の質が確保できるのか、疑問である。
  • ○ 15回2単位程度の講義では、時代の変化に対応する力量が付かないのではないか。
  • ○ 更新講習を受講すれば、全ての教員が更新できるようにすべきである。テストやレポートを課し、その評価で更新を決めるのであれば、教員に大きな負担がかかる。
  • ○ 複数免許状保有者の取扱いについては、複数免許状保有者は有利であると誘導したい提案と感じる。
  • ○ 教員が更新に係る費用を負担するとなると、生活に大きく影響する。
その他の意見
  • ○ 育児休業により更新講習を受講できずに免許状が失効する可能性もある。病気や家族の介護によって休職する場合もあるため、工夫が必要である。
  • ○ 例えば、免許と登録の二段構えとし、登録に有効期限を設けて、登録の更新時に知識更新を行うのはどうか。更新対象者が現職に限られるし、現職教員の既得権(免許が無期限)を侵害しない。
  • ○ グレード(ポイント)制を導入したらどうか。良い取組みや成果を挙げた教員にはポイントを加算し、一定のポイントに達すれば、休暇を付与したり研修に参加できるといったものが良い。

4.教員養成・免許制度に関するその他の改善方策

 教員養成の大学院修士レベルへの移行に賛成、二種免許状や臨時免許状は廃止すべき、免許状が失効・取上げとなった者に対する対応の厳格化等について、意見があった。

(1)教員養成・免許制度の在り方
積極的な意見
  • ○ 教員養成を将来的に大学院修士レベルにしていくことは良い。現行の養護教諭養成は二種免許状が多いので、一種免許状取得者を増やすことが課題である。
  • ○ 専門性が問われてきているので、一定程度のことを学んでから免許状を取得できるようになれば良い。
その他の意見
  • ○ ニーズがあるとしても、二種免許状は教職大学院の創設と逆の位置関係にあるので、廃止すべき。
  • ○ 臨時免許状は、多くの普通免許状所有者がいるにもかかわらず、安易に授与されており、廃止しても良いのではないか。制度を残すのであれば、普通免許状と同様に免許更新講習を受けさせ、更新させる制度にしてもらいたい。
  • ○ 大学評価・学位授与機構の認定している教育施設(大学校)には、教職課程の設置が認められていないが、整合性を検討して欲しい。
(2)免許状の取上げ
積極的な意見
  • ○ 懲戒免職により免許状が失効・取上げとなった者は、再度教壇に立たないように、例えば、懲戒免職前に取得した単位を使用できないようにすれば良い。

5.採用、研修及び人事管理等の改善・充実

 積極的な意見として、採用試験における教員としての資質確認の厳格化、大学院修学休業制度の拡充、臨任教員に対する研修の充実等があった。消極的な意見として、評価を処遇に反映することに反対する意見等があった。その他、教育行政の支援充実、教員政策における年齢バランスの重視、個に応じた研修の充実等に関する意見があった。

(1)採用の改善・充実
積極的な意見
  • ○ 新採教員の中には、教員としての資質に欠けている者がいるので、採用試験におけるチェック方法を研究することが、不適格教員の激減につながるのではないか。
  • ○ 優秀教員を確保するための採用の役割と責任を明確にすべきである。資質能力が不十分な教員が入ったのであれば採用の責任であり、優秀教員を採用したのに問題行動が起きたのであれば、その間の勤務状況や職場環境等を点検すべきである。
その他の意見
  • ○ 現在、最も深刻な問題は、教員の年齢バランスである。数年後には大量採用期となるので、経験未熟な若い教員に偏った学校が登場しないように、採用政策として「学校における教員の年齢バランス」に触れた方が良い。
  • ○ 臨任で教職に就き、現場で実績をあげている者をもっと適切に評価できるシステムづくりをしてもらいたい。
  • ○ 正規教員になるには、講師で1年以上働き、本人や周囲が教職への適性を見極めることを義務付けることが良い。
(2)現職研修の改善・充実
積極的な意見
  • ◎ 大学院修学休業制度等を拡充し、現職教員が学び直しできる機会を保証すべきである。
  • ○ 新卒の臨任教員の業務は、正規採用教員と同じであることから、臨任教員に対しても研修の必要性があるのではないか。
その他の意見
  • ◎ 教職員は、教育現場で実践を通じた研修や相互の学び合いで資質向上を図っているので、教育行政はその支援を行うべき。
  • ○ 研修には、子どもに直接触れることが最も優れている。技能面や教授法に偏った研修は、教員の多様性や危機に際した判断力を失わせる。
  • ○ 現在行われている画一的な集団研修ではなく、一人一人に必要な研修を随時受けられるような制度が必要である。
  • ○ 養護教諭や栄養教諭を初任者研修や10年経験者研修の対象に含めて、現職研修の充実を図ってもらいたい。
(3)人事管理及び教員評価の改善・充実
消極的な意見
  • ○ 評価を処遇に反映させれば、競争社会に組み込まれ、教員は子どもよりも管理者に目を向けることになり、今まで以上に歪みをもたらす。
  • ○ 問題教員は全体の一部に過ぎない。それらの者が、当初から問題があったのなら、現場での指導や管理体制が問われるべきである。

6.その他の意見

  • ○ 義務教育の質の向上は、教員の信頼回復だけでは解決できない。教育予算の問題や、学校施設の充実も重要である。
  • ○ スクールカウンセラーの派遣は、教員の責任回避の道具となっても、実践力や教育経営能力のある教員を養成することの妨害要因である。
  • ○ 食育を謳いながら、なぜ幼稚園には、栄養教諭の配置や努力規定がないのか。
  • ○ 教員免許状に司書教諭資格を必須とすること、初任者研修に図書館を使った授業を必須とすること、免許更新の際、図書館を使った授業をどの程度実践してきたかをレポートとして提出させるなど、教員養成と学校図書館を関係付けることが効果的である。
  • ○ 司書教諭は、情報図書館学及び教育学の両方を学び、専任の司書教諭として活躍できるようにしてもらいたい。

お問合せ先

初等中等教育局教職員課

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-- 登録:平成21年以前 --