2001年に「落ちこぼれをつくらないための初等中等教育法(No Child Left Behind Act of2001)」が制定された。この法律では、2005年度の終わりまでに全教室に「教員免許を持った優秀な教員」を配置することを州に義務付けている。このため、各州では、優秀人材の確保と引留めのため、教員給与の引き上げを行うとともに、免許の交付・更新要件を厳しくする施策を行っている。
以前は、大学の教員養成課程卒業者に新規(第一段階)の教員免許を発行していたが、教員の学力向上を図るため、1980年代以降、教員免許交付の要件に筆記試験を課す州が増えた。
民間団体が実施している全国共通の認定制度である「優秀教員認定」を受けた者に対して、免許更新(46州)や、給与(40州)において優遇措置とる州が多い(2002年)。優秀教員の認定を受けると、免許更新の際に教員研修の受講や学校長による勤務評価などの他の免許更新要件が免除されたり、他の教員の指導資格を持つ上級免許の交付の要件となっている州などがある。
1980年代から多くの州で教員免許取得要件を満たしていない学部卒業者に一定の訓練を通じて教員資格を与える制度が設けられたが、2002年10月までに、9州を除く全米各州で、このような制度を実施している。多くの場合、教員志望者に一定の研修を受けさせたのち教員に採用し、その後、教員として働きながら大学の夜間授業などでの教職課程の履修、及び試験によって正規の教員免許を取得させている。
アメリカ最大の教職員団体である全米教育協会(NEA)の調査結果(2003年)によると、全教員中、勤続年数5年以下の教員が23%に達する一方、勤続年数20年以上の教員が43%を占めた。また、調査開始時(1961年)には、15%が学士号を取得していなかったが、2001年の調査では、学士号を取得していない教員は0%、修士号以上の学位の取得者は57%(修士号56%、博士号1%)に達した。
2003年4月、初等中等教育教員養成の改革について基本方針が閣議決定された。教員教育大学センター(IUFM)と大学、初等中等学校の連携強化によって、養成と現職教育の活性化を図るとし、具体的にはIUFMのカリキュラムの改善、研修機会の充実などを提案している。年度内に2004年度実施の具体策が策定される見通しであったが、教員組合の反対運動により、現在までのところ定められていない。
今回の方針では、IUFMで行われる養成は、理論教育と実践教育が均衡を欠いていると現状を批判、また現職教育についても、それまで担っていた「大学区国民教育職員養成課」(MAFPEN)を1998年に前政権が適当な代替措置なしに廃止したために後退したと批判している。こうした分析に立って、以下のように改革の指針が示されている。
初等中等教育局教職員課
-- 登録:平成21年以前 --