資料10 中央教育審議会総会(10月21日開催)における主な意見

1.教員養成における専門職大学院の在り方について

  • 学校教育をめぐる危機的な状況の中で、教育をより良いものとしていくためには、教員の資質能力の向上が不可欠であり、養成段階から改善を図ることが重要。その意味で、修士レベルで養成教育を行うことは良い。
  • 高等教育をめぐる議論の中で、学部と修士との関係が変わってきており、専門職大学院の構想は、時代の流れに合っている。社会的に他の分野でも大学院の修了者を採用するようになってきている。
  • 将来、教員になりたいという子どもは多い。動機付けや、教員養成のための教育をしっかりすれば、教員にもっと優秀な人材が集まってくるのではないか。その意味で、専門職大学院は結構なこと。
  • 専門職大学院で養成する教員像をどのように描くのかを議論して欲しい。教員養成は、師範学校から始まり、現在は幅広く一般大学においても行っているが、これらをきちんと評価した上で、専門職大学院を議論することが必要。
  • 教員としては、教養を子どもたちに示すことができ、また自ら考えることができる人が大切であり、この点をきちんと議論して、教員養成の仕組みを考えるべき。
  • 教員養成系大学・学部と異なり、一般大学・学部では、教職課程を履修するのは相当困難。児童生徒への接し方など、教職の様々な問題について、学ぶ必要がある。このため、専門職大学院でさらに学び、そこを出れば教員になれるというように、教員免許制度の抜本的な改正が必要。
  • 全ての現職教員が一度は専門職大学院において学ぶことにしても良い。
  • 全員が専門職大学院の修了者になる必要はないが、各学校に何人かは専門職大学院の修了者がいるようにすべき。
  • 専門性や指導法は大切だが、児童生徒の人間力の向上の前に、先生自身の人間力の向上が大切。教員が自らの後姿を児童生徒に見せ、人生を語ることが大切であり、知識だけでは不十分。
  • 「生きる力」や「人間力」を身に付けさせるためには、知識だけではなく、体験に基づいた問題解決能力を身に付けた人が教える必要がある。教職課程において、実習や、学校教育以外の場面も体験できるようにして欲しい。

2.教員免許制度の改革、とりわけ教員免許更新制の導入について

  • 平成14年の中教審答申で、適格性の観点からは指導力不足教員の認定等で対応し、また専門性の観点からは10年経験者研修の創設等で対応することとなった。この答申で一定の結論を出しており、更新制の検討は必然的なものなのか。また、現在、財政的な理由から、正規の教員ではなく、非常勤や臨時採用の教員で補っており、教員の資質向上のためには、こちらの解決の方が先決。
  • 平成14年の答申では、「導入には、なお慎重にならざるを得ない」となったが、中教審としては、引き続き検討すべき課題という認識であったと理解している。
  • 2年前に答申として示したものを、再度検討というのが不思議。結論が出ていないのに議論をやめてしまったというのはおかしいし、結論が出ているのに再度検討というのもおかしい。
  • 指導力不足という時に、教科の指導力以上に大切なのは、児童生徒の扱いができるかであり、この点は、ペーパーテストでどこまで見ることができるのか疑問。技術的な面が難しいが、これをクリアしなければ、教員免許更新制を導入する意味がない。
  • いわゆるペーパーティーチャーの教員免許状について、終身有効とするのは問題。
  • 既に教員免許状を取得している人の扱いや、教員免許状を授与する際の要件等についても検討が必要。

3.その他

  • 教員免許状の種類の見直し、初任者研修や10年経験者研修の制度化等、改革は良い方向に向かっていると認識。
  • 現職教員の資質能力の向上には、研修で対応すれば十分ではないか。また、勤務評価等に応じて、給与等の処遇面で優遇するなどのインセンティブが必要。
  • とりあえず教員免許状を取っておこうという人がいるのは問題であり、思い切って改革しなければならない。

中央教育審議会初等中等教育分科会(11月2日開催)における主な意見

1.平成14年の中教審答申との関係について

  • 14年答申では、更新制については見送ることとなったが、再検討することもあり得る事を鮮明にしていた。当時は、更新制を導入しない理由が中心となり、政策論議が欠けていた。
  • 14年答申では、更新制については、なお慎重にならざるを得ないとなり、適格性については、その後、指導力不足教員の認定など、政策的対応をしている。また、専門性については、10年経験者研修を導入している。今回の諮問は、2年前の答申をきちんと検証した上で、それでも更新制が必要ということなのか。
  • 2年前にこだわらずに議論しても良いのではないか。国際化、グローバル化の中で、日本の義務教育や高等教育がどのように対応していくのかを考えた時、教員の在り方についても根本的に考え直す必要があるのではないか。
  • 教育改革国民会議の議論で問題となったのは、学校の閉鎖性であり、更新制は、これにショックを与えるという意味があった。平成14年答申の時点では、10年経験者研修を新たに創設する等により、更新制を導入するまでの必要は無いとなったが、一方で、いまだ更新制導入という声があるのは、学校現場がまだ変わっていないということであろう。14年答申にこだわらず、再度、議論する必要がある。
  • 朝令暮改という見方もあるが、様々な外的要因があり、国民の間には教育の質を上げて欲しいという声がある。また、世界中が教育の質の向上に取り組んでいる。そのような視点で議論すべきである。
  • 14年答申を受けて、更新制に代わる重要なものとして、10年経験者研修が導入されたが、実際にどの程度機能しているのか、実態を明らかにする必要がある。
  • 2年間で教員の質が変わったとは思えず、更新制について、また同じ議論になるのではないか。
  • 公務員制度改革の議論が盛り上がっているということが、この2年間の変化の一つではないか。更新制は、更新しない場合、教員としての身分を失うことになり、公務員制度との問題が出てくるため、この改革の方向を見ながら議論する必要がある。

2.教員免許更新制を含む教員免許制度改革について

  • 更新制について、再度、中教審で議論することとなったのは、教員とはいかなるものか、また、いかに教員を養成すべきかを議論するためである。教員とは、1.児童・生徒の人格形成の支援、2.基礎知識の学修の支援、3.学習の方法を教える、4.人生の支援、に関わる職業である。将来的に、教育の質をアップグレードするには、教える力をより高める養成、再教育のシステムをつくる必要がある。原点に戻って、教育の質を高めるために、いかに教員の質を高めていくかを議論し、その結果として、免許制度をどうするか、チェックポイントとして更新制はどうかという議論をする必要がある。
  • 更新制導入が必要なのは、教員のレベルが低いからではなく、社会状況の変化の中で、教員自身が努力していく意欲に乏しいことが問題だからである。更新制のみに目を奪われるのではなく、養成・採用・研修の中で、更新制がどのような位置づけとなるのかを、高い立場から議論すべきである。
  • 教員としての適格性や専門性に加えて、信頼性というのが免許制度全体における一番大きな問題であり、更新制もこの観点から議論する必要がある。
  • 更新制だけでなく、教員の養成や採用の根本的なところを議論しなければいけない。基本的にペーパーテストと若干の面接だけで公務員となり、終身雇用となるが、これは直していかなければいけない。
  • 議論の視点として、1つには、課程認定の在り方がある。開放制の原則は大切だが、節度ある開放制を前提にした上で、更新制を議論すべきである。2つ目には、米国の免許には、プロベーション、リミテッド、パーマネントの3段階があるように、更新制だけでなく、免許制度の抜本的な改革も視野に入れた議論が必要である。
  • 実際に更新制を導入するのであれば、教員の質をペーパーテストで判定するのでは意味がなく、どういう方法で判定するのかを考える必要がある。
  • 免許状の取得者が20万人であるのに対して、採用者数が2万人というのは、数の面からして問題であり、いわゆるペーパーティーチャーの問題なども検討しなければならない。

3.その他

  • 教員の資質に問題があるということが前提となっているが、教員の現状や、国民がどう見ているのかをきちんと把握しているのか。現場を見ると、圧倒的多数の教員はしっかりやっており、指導力不足教員は全体からすれば少数である。
  • いじめや不登校の問題などは、教員だけに帰する問題ではなく、教員がきちんと教育に専念することができる環境をつくることが大切である。
  • 社会状況等の大きな変化の中で、例えば国際機関等に勤務した人で、教員としての適格性があるような人が教員になれるよう制度を柔軟にすべきである。
  • 教育実習生については、演習や実習、実技などが苦手で、教材開発ができない学生が増えてきている。知識だけでなく、演習や実技等の技術を高めていかなければいけない。また、児童・生徒理解や教育愛も大切である。

お問合せ先

初等中等教育局教職員課

-- 登録:平成21年以前 --