資料5‐2 教員の資質能力に関連する審議会委員の主な発言

(最近一年の間に開催された中央教育審議会総会、初等中等教育分科会、教育行財政部会、地方教育行政部会、学校の組織運営に関する作業部会の議事要旨から、関連する主な発言をリストアップ)

1.教員の資質能力全般に関するもの

  • 教育の質の向上で一番の問題は、やはり人、教員、指導者である。特に義務教育の場合は、子どもは学校の先生に依存して育つため、教員、人が重要。
  • 今回の答申案(「初等中等教育における当面の教育課程及び指導の充実・改善方策について」)の基本的な考え方の一つに、教える人間、教師、教えるサイドの抜本的な取組の充実が必要であるというメッセージを読み込んでほしい。
  • (生涯学習に関連して)何のために学ぶのか、何で生きるのかという哲学・思想、あるいは学習観、人生観、こういったものを持たない教師あるいは親が非常に多いと思う。これはやはり背骨を教えてこなかった、学ばせてこなかった戦後の教育の1つの足りなかった部分だと思う。
  • ゴーイングコンサーン(イコール存続し続ける)は教員の質の維持にも大きく影響する。すなわち、日本の教育というのは、諸外国と比べれば教員の質が非常に高く、教員は社会的にもステータスがあり、かなり優秀な人材が集まっているといえる。その職場がゴーイングコンサーンであることは、よい人材が集まる条件となっており、いつ潰れるか分からないのであれば、よい人材は集まらない。
  • 現場の教員の質の低下は、目を覆うばかりのものがあると思う。これに対する学校の管理運営能力の部分についても、非常に不安を覚える深刻な事態である。教育の質をもたせるには、一人一人の現場の教師としての人格、見識が最も大事であるが、そこに期待できないとすれば、制度でせめて担保することはできないか。
  • 「総合的な学習の時間」のさらなる強化と個に対応した学習ということで、多様性を尊重した学習の進め方がうたわれているが、現実の教育現場では、教員の資質や、適性、能力も大きく関わってくる。多様性を明確に打ち出すのならば、教員の任用部分で今までと違う評価の観点があるのか等、教員政策にも言及する必要がある。
  • 指導要領の実践をする教師に十分な理解がなければ、言葉の上で基準性と言っても、本質的なものが抜け落ちてしまう。現場の教師の人たちと指導要領の理解について、是非きちんとした論議の場を持つべきではないかということを非常に強く感じる。
  • 学校評議員会等が行っているアンケート内容を分析すると、教員の授業の進め方について、子どもたちや保護者のシビアな意見も出されている。これを全部公開することにより、個々の教職員がきちんとそれを受け止めて、工夫・改善するものはどんどん工夫・改善するということが現在、行なわれている。
  • 中学校の教員は、自分の担任の教科の指導のみに特化する傾向があり、校長になった時などに戸惑うことが多い。

2.管理職の資質能力に関するもの

  • 現在の教育改革の中での、教育現場の苦労は理解できる。最近の校長にはトップとして必要な人事、服務関係の法律・規則、予算管理、財務、地域との連携等といった能力が求められる。アメリカの大学院では学校経営という教育が受けられるように、日本でも校長という専門職の訓練や教育機関が必要ではないか。
  • 教頭、校長がどれだけ「卓越性」を持つかが重要であり、管理職として必要な幅広い力を身につけていくシステムを作ることが必要。

3.教員の身分・資格・処遇に関するもの

  • 義務教育の国庫負担は国として人材を確保する上でも大切である。また、財政側だけではなく質の向上を図るため、教員の資格は国家資格に引き上げるべき。
  • 教員というのはいったん雇ったら、なかなか首切れないため、一旦ある傾向を持った教員がでると、影響が何十年にわたる。制度を変えるとしたら、むしろ教員の身分制か何かで、10年に一遍くらい再任するなどしてはどうか。
  • 教職員のインセンティブ・メカニズムがうまく働くような、給与体系等について検討してはどうか。
  • アメリカでは、校長格の教諭(イコールマスターティーチャー)がいて給与上も処遇されており、そのようなことを行ってはどうか。現状では、良い先生は指導主事になり、子どもから離れてしまう。

4.教員の評価に関するもの

  • 教員の質については、それが我が国の教育を支えてきたという意見もあるが、他方、日本の教員の質がそれほど良いものかという疑問もある。非常に良い先生もいれば、かなり問題のある先生もいる。問題のある先生も良い先生も一緒にして、雇用が安定することが本当に望ましいことなのかどうか。教員についても、学校についても、きちんと評価すれば、中には退出してほしいような教員、学校があるのではないか。ある程度の競争によって、好ましくない方が淘汰される方が望ましいのではないか。
  • 日本の教員は、世界各国と比べて、潜在的資質は大変高いものがあるのではないかと思っているが、今のままで良いとは思わない。評価が悪ければすぐリストラされるといったシステムは極端で、望ましいとは思えないが、やはり多くから望まれる人材はより尊敬を受け、より自分の意向を広げられるような立場にたち、逆に、よい評価をうけず、教員に向いていない人には教員をやめてもらうというような入れ替わりがなければ停滞してしまう。

5.採用に関するもの

  • 教員は入口の採用が一番重要である。免許取得者のうち10分の1の者しか教員になっていないため無駄が多い。本人が教員の適性があるか判断するのに、条件附採用期間が一年であるのは短いのではないか。
  • 教育委員会において、教員の採用並びにそのアフターサービスがどのような形で保障されてきているのかが非常に危ない。新採用で右も左も分からない人間が、教員として教室を専制君主のようにとってしまう場合だってあり得る。この問題を解決するには、県の裁量で、採用に当たっての人事考課と同時に、教員として持つべき資質を事前に与える必要がある。全く生のままの教員を送り込んできて、小さな市町村において、もう一度研修するというのには、多額のお金と時間を必要とする。

6.研修に関するもの

  • 教員の中には、長期休業期間は自分たちも休業日だと思っている者もいる。長期休業期間中には、研修や家庭訪問など、普通の授業日にできないものをやっていく必要があり、一年間を構造的に研修計画を立てる体制が必要である。教員の意識改革と同時に、文部科学省から教育委員会を通じて指導すべき。
  • 教員は、夏季休業期間を利用して、学校の仕事から離れて、全く違う世界をのぞくこと等により、資質を高めるということもあるのではないか。
  • あまり役に立たない研修の乱用が問題である。講義して終わりではなく、評価して処遇に反映させることが必要。このため教育委員会主催の研修の充実が必要。

7.教員養成大学・学部に関するもの

  • 教員の問題に関連して、全国の教育大学や教育学部の在り方が、今、大きな壁にぶつかっている。教育大学や教育学部は昔の師範学校からの優れた伝統を持つ貴重な存在であり、将来に向けての教員養成、あるいは教員の研修に生かしていくのかについて、個別の大学の工夫だけでなく、全体の問題として考えていかなければならない。

8.その他

  • 10年答申のフォローアップをしてほしい。教員には、養成、採用、研修に、分限も加える必要がある。条件附採用後の正式採用については、温情的にではなく厳格に扱わなければならない。教員として不適格な者の事務職等への配置換えは無理なこと。教員でだめだった者は、知事部局でもだめ。

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-- 登録:平成21年以前 --