資料3 栄養教諭の養成・免許制度の在り方について(報告案)

教員養成部会
平成 年 月 日

はじめに

  • 平成15年9月10日の中央教育審議会「食に関する指導体制の整備について(中間報告)」(以下「中間報告」という。)において、学校における食に関する指導を充実する観点から、栄養教諭制度を創設することが提言されたことを受けて、初等中等教育分科会教員養成部会においては「栄養教諭免許制度の在り方に関するワーキンググループ」を設け、栄養教諭免許制度の内容や栄養教諭の養成カリキュラムの在り方等について専門的な調査審議を行ってきた。
  • 栄養教諭の免許状を創設するためには、他の教諭等と同様に、教育職員免許法上に、免許状の種類、各免許状の授与にあたっての基礎資格、大学等で修得することが必要な科目の内容と単位数などを新たに規定することが必要である。
  • 栄養教諭は、食に関する指導と学校給食の管理を一体的に担う職員として、教育に関する資質と栄養に関する専門性を併せ有し、学校給食を生きた教材として活用した効果的な指導を行うことが期待される。
  • こうした栄養教諭の資質能力を確保するため、栄養教諭の免許状を創設するに際しては、保健指導と保健管理をその職務とする養護教諭の例を参考としつつ、栄養教諭の職務の特性を十分踏まえるという観点から行うことが必要である。
  • このような認識の下に、栄養教諭の養成・免許制度の創設に関係する地方公共団体、大学等の養成関係団体、教職員団体等から意見等を聴取しつつ検討を行った結果、以下の結論を得たところである。

1.栄養教諭の職務内容と専門性

  • 中間報告においては、栄養教諭は、以下のような食に関する指導と学校給食の管理を一体のものとしてその職務とすることが適当であるとされている。

(1)食に関する指導

1.児童生徒への個別的な相談指導

 生活習慣病の予防や食物アレルギーへの対応などの観点から、児童生徒の個別の事情に応じた相談指導を行うことが、児童生徒の健康の保持増進のために有効である。その際、保護者に対する助言など、家庭への支援やはたらきかけも併せて行うことが重要である。

2.児童生徒への教科・特別活動等における集団指導

 学級担任が作成する年間指導計画の下に学校給食の時間や学級活動、総合的な学習の時間などにおいて、食に関する指導を行う。なお、食に関する指導は、学校教育活動全体の中で広く行われるものであり、学校において食に関する指導に係る全体的な計画を策定するに当たっては、栄養教諭がその高い専門性を活かして積極的に参画し、貢献していくことが重要である。

3.食に関する教育指導の連携・調整

 食に関する指導を効果的に進めるため、学校内外を通じて教職員や保護者、関係機関等の連携を密接に図るため、食に関する指導のコーディネータとしての役割を果たすことが期待される。

(2)学校給食の管理

 学校給食における栄養管理や衛生管理、物資管理等の学校給食の管理は、栄養教諭としての主要な職務の柱の一つである。

  • このような職務内容に照らし、栄養教諭には、学校栄養職員と同等以上の栄養に関する専門的知識・能力に加え、児童生徒の心理や発達段階に配慮した個別又は集団での指導、学校教育全体に参画し、学級担任や養護教諭、学校外関係者と連携・調整を行うことができる教育の専門家としての資質が求められる。

2.栄養教諭の免許状の種類及び養成の在り方

  • 栄養教諭の養成段階においては、栄養教諭としての職務内容を適切に行うための資質能力の基礎として、栄養に関する専門性と教職に関する専門性を身に付ける必要がある。
  • その際には、現在の教員養成・免許制度の基本理念を踏まえ、以下のような制度とすることが適当と考える。

1.免許状の種類

  • 栄養教諭の免許状の種類は、大学院、大学、短期大学等の学校種別、修業年限や修得単位数に応じて多様な教員養成機関から栄養教諭になる途を開くことにより、教員組織全体の活性化を図るとともに、上位の免許状等の取得を目指すことによる現職教員の自発的な研修を促すため、複数の種類の免許状を設けることとし、普通免許状として専修免許状、一種免許状、二種免許状の3種類とすることが必要と考える。
     このうち他の教諭等と同様に、一種免許状は普通免許状の中で標準的なものと考える。
     栄養教諭の配置についての中間報告における考え方、栄養教諭の職務内容として給食の管理が含まれていることなどの栄養教諭制度の性格等にかんがみ、臨時免許状や特別免許状は設ける必要はないと考える。

2.免許状取得のための基礎資格

 免許状取得のための基礎資格としては、大学における教員養成の基本原則を踏まえ、専修免許状については修士の学位(大学院修士課程修了程度)、一種免許状については学士の学位(大学卒業程度)、二種免許状については準学士の称号(短期大学卒業程度)を有することを原則とすることが必要と考える。

3.栄養に関する専門性の養成

  • 栄養に関する専門性として、免許状の種類にかかわらず食に関する指導を行うための資質能力を身に付けるため、基礎資格として栄養士の免許を取得することが必要と考える。
  • さらに、栄養に関する深い専門的知識・技術を養うために、標準的な免許状である一種免許状の取得のためには、管理栄養士養成のための教育課程と同程度の内容・単位数を修得することとすべきである。このため、一種免許状を取得するための基礎資格としては、栄養士の免許に加えて管理栄養士免許を取得するために必要な程度の専門性を有することとすることが適当と考える。また、専修免許状を取得するための基礎資格としては、管理栄養士の免許を有することとすることが適当と考える。
     二種免許状の取得のためには、上記のように基礎資格として栄養士の免許の取得を求めることにより、栄養士養成のための教育課程と同程度の内容・単位数を修得することとすべきである。
     また、いずれの免許状の取得においても、栄養教諭としての使命の自覚や、職務内容について理解を深めることが必要と考える。
     なお、これらの管理栄養士養成のための教育課程、栄養士養成のための教育課程のうち、教職に関する科目との類似等があるものについては、重複して課すことのないよう配慮することが考えられる。

4.「教職に関する科目」の内容と単位数

  • 教育の目的・原理、教育の内容・方法、児童生徒の心身の成長・発達等についての深い専門的知識・技術といった教職に関する専門性を修得するための「教職に関する科目」は、養護教諭の養成課程と同程度の内容・単位数を基本として、教職の意義等に関する科目、教育の基礎理論に関する科目、教育課程に関する科目、生徒指導及び教育相談に関する科目、総合演習、栄養教育実習について修得することが必要と考える。

5.養成課程

  • 大学における開放制の教員養成の基本原則に照らし、栄養教諭の養成においても、文部科学大臣の課程認定を受けた大学の課程において、必要な科目・単位数を修得することを基本とすべきである。
  • 一方、現在の管理栄養士、栄養士の養成課程として、大学以外に専門学校等においても、学校栄養職員等として教育現場に優れた者を輩出していることにかんがみ、他の教諭等の養成において指定教員養成機関の制度を設けていることと同様に、専門学校等について文部科学大臣が指定を行い、栄養教諭の養成を行うことができるようにすべきである。
     また、専門学校において修得した栄養に関する科目について、栄養教諭の養成を行う大学等が単位認定を行うようなことも考えられる。

3.栄養教諭の上位の免許状等の取得のための方策

  • 教員免許制度上、現職の教員が研修によって、自ら資質能力の向上を図ることが期待されており、これは栄養教諭についても同様である。このため、栄養教諭の二種免許状や一種免許状を有する者が、それぞれ一種免許状や専修免許状を取得しようとする場合に、栄養教諭としての一定の在職年数と、免許法認定講習等において一定の単位を修得することにより、都道府県教育委員会が行う教育職員検定を経て取得できる措置を設けることが必要と考える。
  • この場合、二種免許状を有する者には、養護教諭の場合と同様、標準である一種免許状取得の努力義務を課すとともに、栄養教諭としての在職年数等に応じて修得が必要な最低単位数を一定程度まで逓減する措置を講ずることが必要と考える。
  • その際、栄養教諭は生活習慣病の予防や食物アレルギーへの対応等についての児童生徒に対する個別指導を担うことから、管理栄養士免許を取得することが望ましく、管理栄養士免許を取得した者には、栄養教諭としての在職年数や免許法認定講習等における単位修得について配慮することが必要である。
     なお、管理栄養士免許、専修免許状や一種免許状の取得が促されるような環境づくりにも留意が望まれる。

4.学校栄養職員に対する措置

1.教員免許を有しない学校栄養職員に対する措置

  • 現在、学校栄養職員である者が栄養教諭の免許状を取得する場合には、職務を行いながら円滑に必要な資質を身に付けるため、特別非常勤講師としての活動実績も含め、学校栄養職員としての一定の在職年数と、長期休業期間中などに実施される免許法認定講習等において一定程度の単位修得により、教育職員検定を経て授与することが必要と考える。

2.他の教員免許を有する学校栄養職員に対する措置

  • 他の教諭や養護教諭の免許状を有する学校栄養職員が、栄養教諭の免許状を取得する場合には、教職に関する科目は既に修得したものとして扱い、栄養教諭としての使命の自覚や、職務内容について理解を深めつつ、管理栄養士免許を有する程度の専門性を有する者については一種免許状を、栄養士免許を有する程度の専門性を有する者については二種免許状を取得できるようにすることが必要と考える。

5.その他

  • 栄養教諭としての資質能力は、その養成・採用・研修の各段階を通じて形成されていくべきものであり、大学における養成課程の整備とともに、都道府県教育委員会等における現職研修の促進を図ることが必要である。また、食に関する指導の重要性にかんがみ、栄養教諭以外の教諭等に対しても、必要な資質能力を身に付けることが必要であり、現職研修の促進を図ることが望まれる。

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初等中等教育局教職員課

-- 登録:平成21年以前 --