中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会(第139回)議事録

1.日時

令和5年12月26日(火曜日)16時00分~18時00分

2.場所

5F4会議室(WEB会議)

3.議題

  1. 優れた教師人材の確保に向けた教師の奨学金返還支援の在り方について有識者からのヒアリング
  2. 令和6年度における新型コロナウイルス感染症に係る介護等体験特例の期間延長等について
  3. その他

4.議事録

【白水委員】  皆さん、こんにちは。定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会第139回教員養成部会を開催いたします。
 本日、秋田部会長が御欠席となりましたため、会場内におります白水が司会進行を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。
 それではまず、事務局のほうから会議の開催方法と資料について説明をお願いいたします。
【重親教育人材政策課課長補佐】  事務局の教育人材政策課、重親でございます。本日もよろしくお願いします。
 会議の進め方について確認させていただきます。
 オンライン参加の委員の皆様におかれましては、発言時以外はマイクをオフ、ミュートにしていただくこと、また、御発言に当たっては、手を挙げるというボタンがございますので、そちらを押していただくことに御協力をお願いいたします。
 本会議の模様は、報道関係者と一般の方向けにライブ配信をしております。Zoomのチャット機能につきましては、傍聴者が閲覧することができませんので、マイクがうまく機能しない場合の緊急連絡手段として活用いただくなど、補助的な使用としていただきますよう、よろしくお願いいたします。
 配付資料は、議事次第に記載しているとおりでございます。
 事務局からは以上です。
【白水委員】  ありがとうございます。
 それでは、本日の議事について申し上げます。議事は2つございます。議事の1つ目は、前回に引き続き、優れた教師人材の確保に向けた教師の奨学金返還支援の在り方についてということで、本日は、有識者からのヒアリングを行います。1人目が兵庫教育大学の加治佐学長、2人目が国立教育政策研究所の濱中部長、この2名からヒアリングをお願いします。議事の2つ目は、令和6年度における新型コロナウイルス感染症に係る介護等体験特例の期間延長等についてになります。議題の1つ目を90分程度、17時半頃まで、残り時間で議題の2つ目という予定でございます。
 それでは、議事1に入りたいと思います。まず、前回の会議、皆さんのブレストの御意見についてまとめた資料を用意しておりますので、事務局から御説明をお願いいたします。
【重親教育人材政策課課長補佐】  教育人材政策課、重親でございます。資料1-1を御覧ください。まず私のほうから、前回の会議でいただいた御意見を論点ごとに整理した資料を準備しましたので、かいつまんで幾つか御紹介させていただきます。
 まず1つ目、奨学金返還免除の意義・目的に関する御意見といたしましては、1つ目の丸、量的にも質的にも人材確保を進める観点から重要な役割を果たす取組ではないかという御意見、また、続いて2つ目の丸、教師が真に尊敬されて、高度専門職としての地位を確かなものにしていくためには、教師の質の向上と一体的に考えていく必要があるのではないかという御意見がございました。
 続いて、同じ資料の下段ですけれども、返還免除の効果に関する御意見といたしましては、1つ目の丸、教師の高度専門職としての社会的地位の向上、安定的な教師志望者の確保が期待できるのではないかという御意見、また、続いて2つ目の丸、高度な学習を行って教師になった者に支援していくことで、大学院で学ぶメリットが生まれ、そのことが指導の高度化、さらには高度な人材の確保につながる効果があるのではないかといった御意見がございました。続いて2ページで、効果に関する御意見の続きですけれども、上から2つ目の丸、一方で、今の若い人たちにとっては、奨学金が返還免除になるからという理由だけでは教員を志望するということにはならないのではないかといった御意見、関連して、働き方改革や処遇改善も併せて行わなければ返還免除だけで教師になろうとする人材は増えないのではないかといった御意見もございました。
 続いて、同じページ下段ですけども、返還免除の対象や範囲等に関する御意見といたしましては、2つ目の丸、教職の専門性の向上や、貸与率の高い層、教員養成以外の専攻からの教職への誘因、また、現行制度の活用による速やかな支援といった観点からは、まずは修士取得者から始めるのがよいのではないかといった御意見や、4つ目の丸の2文目ですけれども、教職大学院に加え、それ以外の大学院についても対象となるよう条件を考えていくべきではないかといった御意見がございました。続いて3ページ目、対象範囲等の御意見の続きですけれども、1つ目の丸では教職を目指す社会人について、2つ目の丸では現職の教師についての言及もございました。また、4つ目、5つ目の丸ですけれども、こちらは在職要件に関するものですが、複数の視点からの御意見がございました。
 最後、その他検討すべきことについての御意見といたしましては、2つ目の丸、奨学金返還免除制度で教師の志願者が増え、当面の教師不足が解消に向かうのか検証が必要ではないかといった御意見や、4つ目の丸、奨学金を返済してきた世代には不公平な仕組みとなってしまうという視点があることも認識すべきといった御意見、最後、5つ目の丸ですけども、なぜ教師だけ対象にするのかといった、国民に理解されるようにしていくことか必要ではないかといった御意見がございました。
 資料1-1の説明は以上でございますけれども、続けてで恐縮ですけれども、事務局のほうから、今回参考資料の2から4として御準備してございますけれども、昨日公表いたしました3つの調査の結果、1つ目が、教員採用選考試験の実施状況について、2つ目が、教員採用選考試験の実施方法について、3つ目が、国立教員養成大学・学部及び教職大学院の就職状況についての調査でございますが、こちらは、今回の本議題においても参考となる資料かと思いますので、簡単ではございますけれども、このタイミングで御報告させていただきます。
 まず、参考資料2-1を御覧ください。こちらは、公立学校教員採用選考試験の実施状況についてでございます。今回公表いたしましたものは、今年度、令和5年度に採用された教員に対する選考試験、すなわち、昨年度、令和4年度に実施した選考試験の採用倍率等を取りまとめたものでございます。ポイントを申し上げますと、今見ていただいている資料1ページ目の上のほうに書いていますけども、全学校種での総計での採用倍率は3.4倍、また、少し下に移っていただいて、小学校の採用倍率が2.3倍と過去最低の数値を更新しております。採用倍率の低下や受験者数の減少の傾向が続いているというような状況にございます。
 2ページ目に少し分析もしており、上のほうの1ポツのところですが、このような採用倍率の低下の要因といたしましては、大量退職等に伴う採用者数の増加と既卒の受験者数の減少によるところが大きいと考えられます。例えば、その下の小学校について少し比較いたしますと、採用者数については、平成12年度に3,683人であった採用者数が、令和5年度においては1万7,034人と4倍以上に増えている一方で、受験者については、前年度と比べまして、新規学卒は582人増えているんですけれども、既卒者については2,265人減少しまして、総数としては1,683人の減少となっております。結果として、小学校の採用倍率は2.3倍に低下しております。
 中学校と高校につきましても、採用倍率の数値自体は過去最低というわけではないですが、小学校と同様の傾向にございます。
 続いて参考資料3-1を御覧ください。こちらは公立学校教員採用選考試験の実施方向についての調査でございます。こちらも先ほどの調査と同様に、令和4年度に実施した採用選考試験に関して、選考の実施方法等を取りまとめたものでございます。
 ポイントを申し上げますと、今見ていただいているページの1つ目の丸、特別の選考の状況につきましては、特に、右の上から3番目のところですけれども、情報処理技術等の資格に対しまして特別選考を実施する自治体が増えているのが特徴でございます。こちらは、高校での情報1の必修化が始まったことなどが影響しているのではないかと思われます。
 同じページの3つ目の丸ですけれども、秋募集等の特別選考を実施した自治体が20の自治体ありまして、令和3年度選考のときの7つから増加し、こちらは選考の多様化が進んでいるものと捉えております。
 参考資料3-1は以上でございまして、最後に、参考資料4を御覧ください。こちらは、国立の教員養成大学・学部及び国私立の教職大学院の就職状況等をまとめたものでございます。こちらの調査については、令和5年3月の卒業者、修了者の就職状況を取りまとめたものです。今見ていただいているところの3、調査結果概要というところを御覧いただければと思いますが、国立教員養成大学・学部を卒業した学生の教員就職率、こちらは卒業者数から大学院等への進学者と保育士への就職者を除いた数を母数としたもので申し上げますが、3年連続で増加しまして、67.8%となってございます。教員就職率が増加した大学・学部においては、教育委員会と連携した教員志望者確保や、教育実習、模擬授業の充実など、そういった取組が実施されていると承知しております。
 続いて、資料の2ページの下段になるんですけれども、こちらは国私立の教職大学院の修了者の教員就職率でございますが、90.4%でございまして、制度創設以来、引き続き9割を超える高い水準を維持してございます。
 以上、3つの調査について御報告申し上げました。
 私からは以上です。
【白水委員】  ありがとうございました。今の調査結果に関する御質問、あるいは前回の意見をまとめたものについて、さらに発展的に考えられた御意見等あるかと思いますが、これから2件のヒアリングが終わった後、まとめてのディスカッションの場でご発言願いたいと思いますので、御承知ください。
 それでは、早速ヒアリングに移りたいと思います。今回の目的は、ヒアリングにクラリファイするだけではなく、そこからまた発展的にディスカッションするという形にしたいと思いますので、前回に引き続きブレインストーミングのモードでお聞きいただければと思います。
 まず1件目として、兵庫教育大学加治佐学長から御発表いただきます。それでは、どうぞよろしくお願いします。
【兵庫教育大学加治佐学長】  よろしくお願いいたします。
 骨太方針2023で、質の高い教師を確保するために奨学金の返還支援に係る速やかな検討、こういうことが明記されました。それを具体的な制度に具現化していかなければいけないわけですけれども、そのことについて私の考えを述べたいと思いますが、基本的には、令和の日本型学校教育を進めるためには、教員養成の高度化、これが不可欠だと思います。これは喫緊の課題だと思っています。その高度化によって教職の魅力を図る、そういう考え方が要るのではないかということです。具体的には、大学院を修了して教師になった者に対して奨学金の返還支援をしていくといった方向の制度化を図るべきであるというふうに考えているところです。
 具体的には3点のことをお話ししたいと思います。
 1点目は、今お話ししたことの意義とか目的とか、そういうことです。教員養成の高度化による教職の魅力化の方策としての教員就職する大学院生への奨学金返還支援ということです。
 それから2つ目は、具体的な仕組みを簡単に提案したいと思うのですが、ポイントは、大学院の修了時に返還免除を認定するのか、それとも、教員就職した後に一定の条件をつけて返還免除を認定するか、であると思います。また、今の大学院を修了して教員になる人の数を基に、これは最低額になると思いますが、必要経費を試算しました。
 それから3番目が、学部のときに受けた奨学金の返還の支援についてどう考えるかということを最後に述べてみたいということであります。
 まず1番目ですね。これまでの答申、例えば昨年12月の教員の養成・採用・研修の一体化の答申等々、幾つもの答申が明言していますように、やはり学校教育が高度化、複雑化しているということです。Society5.0時代に対応するためには、やはり教員に求める資質・能力がこれまで以上に高度化していくということは、もう明確に打ち出されているし、それはもう明らかなわけです。そうすると、やっぱりこれに対応できる教員を育成しなきゃいけないということで、教員養成の高度化が必要です。これを格段に推進する必要があるんだということであります。
 そのためには、やはり教員の標準を大学院レベルに持っていくということです。昨年12月の中教審の答申は、教職員集団のダイバーシティを高める、こういうことを言っているわけです。これはもちろん図らなければいけないんですが、そういう人々の中にあって、そういう人をまとめて一緒に新しい学校教育をつくっていくような中核人材は、やはり大学院レベルの学び、教職大学院の学びをした方にしていくべきだというふうに思うんです。これが高度化ということであります。
 ところが、この教員養成部会でも資料が出ていると思いますけれども、日本の大学院修了の教員というのは、もともとOECD平均よりもかなり下なんですけども、私もびっくりしたんですけども、何か近年もっと減っているらしいですね。教職大学院が増えてきたので増えているのかと思ったら、実は減っているということで、ちょっとびっくりしています。そういう状況にあるということです。現実は逆行しているということです。
 これから教員採用数は減っていきます。これもこの部会でデータは出ていると思いますが、これから五、六年で33%、3分の1減るという見通しなんです。かなり減ります。それ以後もまた減っていくんだと思うんですけども、そうすると、現在、大学の教職課程というのは物すごくたくさんあるわけです。その中の幾つかが大学院レベルの教員養成を行っているわけですけれども、採用数が減るということは、養成する側にある意味余裕が出ますので、やめるところも当然出てくるとは思うんですけど、出てきますので、そういうところは大学院レベルの教員養成にも乗り出していっていただいて、養成期間が長期化した中でじっくり教員養成をやっていただく。量から、時間をかけた質の高い教員の養成へより転換していくということが行いやすくなっているんだと思うんです。教職大学院の増設とか、そういうことはぜひ図られていくべきだというふうには思います。
 そのためには、やっぱり相当のインセンティブが必要だと思います。教員養成する側に高度教員養成に乗り出す意欲を持たせる、あるいは大学院に通いたいと思う学生を増やすという方策が要るわけです。いろんなことが考えられますが、今回のこの奨学金の返還の支援、返還免除、これをぜひその中に位置づけていただきたいということです。有力な方策になり得ると思います。
 それで、もう少し考えてみますと、生産年齢人口も物すごく減っていくわけです。その中で、やっぱり教職には質の高い人材が求められるということになると、生半可の対策では効果がなくて、やっぱり相当思い切った政策、方策を取らないといけないんだと思います。残念ながら、残念ながらという言葉は適切じゃないかもしれませんが、公教育を担う教職は、外国人にそんなに頼るということにはいきませんので、今も制限がありますので、なかなか外国人には頼れないという事情もあるということです。
 それで、結果的に、この大学院の奨学金返還支援によって、教職大学院入学者が増える。そのことは、結局は教職大学院が増設され、教員養成が学部主体から大学院主体に移っていくということにつながることを非常に期待したいということです。大学院レベルの知識とかスキルが教師の資質・能力の標準となって、ある意味、高度専門職として確立したことになる。大学院修了者が多数となりますと、おのずと教員の社会的地位が上がることになりますので、そのことによって、教職の魅力が感じられるようになって、そして質の高い人材を教職に引きつけることができるようになればというふうに思うところです。
 具体的な制度設計なんですけども、大学院修了時に認定する、これも一つの考え方として十分にあり得るし、私どもも大学院で教員養成をやっていますので、教職大学院、修士課程でやっておりますので、ぜひ本当はこれを採用していただきたいんですが、これを採用するとすると、第一種奨学金については、現在、特に優れた業績による返還免除制度というのがありますので、これを活用するのがいいんじゃないかということです。法改正も必要ないので、すぐにできるという利点もあるんだと思います。まあ、いろいろ課題はありますけど、後で述べますように。
 この制度というのは、第一種奨学金をもらった学生が、修了時に一定の評価項目、その評価項目は後で出てきますけども、それに照らして、自分がそれをクリアしているとすれば、大学に申し出て、大学から学生支援機構に推薦して認められる、そういう方式なわけです。修了時に認められます。その貸与される者なんですけど、教員就職する人、あるいはした人、これはもう当然なんですが、学部卒の大学院入学者がいいのかなということです。現職教員の大学院入学者は私は加えてもいいと思いますが、なかなかハードルが高いかなということです。それから、民間企業等を退職して入学された方、これは所得基準を満たすということを言っていますけど、そんなに気にしなくていいんじゃないかと、別に所得基準はなくてもいいんじゃないかという気はしています。
 それで、ではその大学院課程をどうするかで3つ考えられると思うんです。教職大学院だけなのか、これは文字どおり、教員養成の高度化を志向した、そのためのカリキュラムが組まれている、そのための大学院ですから、これはいいと思うんですが、それだけだとちょっと足りないんじゃないかという気もします。修士課程でも専修免許状は当然出していますし、教員養成をやっていますので、特に高校教員が多いということがあります。ですから、bのところは専修免許状を取得する課程ということです。ただ、修士課程で専修免許状が取れるからといって、それだけで認めていいのかという意見もあると思うんです。ちゃんと大学院レベルの教員養成をやっているということが認められるもの、つまり、そういうカリキュラムを持っているということです。例えば大学院レベルの実習、学部実習とは違う、大学院の実習というのをちゃんと修了要件にしているかとか、そういうことを満たすところに限定するという考え方もあるのかなというところです。
 それで、特に申し上げたいのは、先ほどのa、b、cのどれかを採用するとして、そこに入学した教員志望の学生に対しては、全員に貸与するということです。全員にです。その場合に、現在の仕組みというのは、先ほど申し上げましたように、ここに1から11まで書いてありますけど、これに照らして、これで一定のレベルにある者だけが免除されているわけです。教職大学院とかに入学した学生に対して、これをそのまま認めるとなったときに、これをどう改正していくのかということです。私は、修了時に、またこの基準に照らして、あるいはこれに何かまた評価項目をプラスして、それで判定するというのはあまり望ましくないんじゃないかというふうに思います。
 2つ目は、教員就職後に返還免除を認定する場合です。どうですかね、これから高度化が必要だということで、学校の中核となる人材に返還免除しようということが意図なわけですけど、教職大学院とかの大学院を修了しただけで、それをさっと納得していただけるかどうかということです。同じ業界にいる者にとってはありがたいですけども、ちょっと一般的にどうかということがあると思います。財務省の財政制度審議会は、建議の中で、早速、免除が確定後すぐ離職する者の防止を図らなければいけないというようなことを言っていますので、それに応えるためにも、やっぱり入職後における一定の要件を課すべきじゃないかということです。例えば在職年数です。これは何年にするかですけど、取りあえず10年から15年と書いてあります。ただ、臨採の期間とか、指導主事等の教育行政職の経験、あるいは最近は、現職のまま交流で大学に行って、教職大学院とか学部で教員養成を行う教員も結構いますので、そういう期間も当然含むということです。ただ、臨採期間は、含むという考え方と、これを外すという考え方もあるんじゃないかと思います。ただ、臨採期間を外すのであれば、その間は返還は猶予するということになります。
 それから良好な勤務状況です。当然教員としてちゃんとした職務、不祥事を起こすとか、そういうことがあると、もう当然外れるということになります。
 問題は次なんです。これを課すかどうかということです。これをやるのは大変だと思っているんですけど、入職後、学校の中核的な人材として、高度専門職として高度な能力を発揮したことをちゃんと証明する必要があるかどうかということです。例えば経歴、主任とか指導主事になったとか、管理職だともっと分かりやすいと思いますけど、それから学校改善、授業改善等の実績があるとか、研究授業・発表あるいはいろんな実践報告とか、そういうものでもいいし、あるいは、一番よく分かっている校長による人事評価とか、こういうものを例えばポイント化して、それを日本学生支援機構の委託を受けた専門機関が評価・判定するとか、こういうことをやるべきなのかどうかということです。非常に大変な仕組みになってくるとは思いますが、ただ、説得力は出るのかなという気はします。当人にも一定の緊張感を与えることは間違いないです。まあ、そのことがいいのかどうかは別にしてです。
 それでは、この経費なんですけど、ざっとやってみました。これは最低額なんですが、2020年度に教員就職した大学院修了者数で計算してみました。1人当たりの年間貸与額は、第一種奨学金の最高額が今8万8,000円ですので、この12か月分ということで、105万6,000円です。これが、教員就職者数1,498名、これは新卒です。大学院を修了して一定期間たって教員になった方は入っていないということです。これよりも多いということになりますが。教職大学院修了が894人、修士が604人です。1,498人です。これを1人分と掛け合わせると、総額が約15億8,000万です。教職大学院だけが対象だと9億4,400万ぐらいです。この額というのは、日本学生支援機構の貸与奨学金総額は、2022年度は8,477億円だそうですけれども、この0.1から0.2%程度です。だから、これを免除したとしても、この分、国の歳入が減ったとしても、そんなに全体的には大きな影響ないのかなというふうには思います。
 それでは最後に学部についての私の考えです。学部卒で教員就職した方への奨学金の返還支援というのは、なかなか課題が多いのかなと、なかなか理由が難しいなという感じはしています。よく出てきます旧返還免除制度が廃止された理由は大きく2つあるわけです。採用倍率が低くなったということですが、それを上げるためということなんですけど、先ほども言いましたように、教員採用数はかなり減ってきますので、採用倍率は向上すると思われます。それから、他職種との公平性ですけど、学部段階では、なかなか他と違えるという理由はちょっと難しいんじゃないでしょうか。これからの日本の学校教育は、やっぱり高度な人材が必要である、大学院レベルの人材が必要なんだということ、しかもそれが減っているということを出さないと、教職のみを奨学金免除していくというのはちょっと難しいような気がします。
 この部会でもよく資料が出ていますけど、やっぱり今の教師不足の主因というのは、臨採になる人が減っているということなので、もちろん、学部卒に奨学金返還免除すれば、採用試験を受ける人は増えますので、その方が採用試験に落ちたら臨採に行くという効果がないとは言えませんけれども、ただ、これについては、今、教育委員会でも、教員免許を持っていて教員に就いていない人を登用するための研修をするとか、あるいは免許がなくても採用していくとか、そういうことをやっていますし、文科省も今年度の補正予算で、大学や民間企業と教育委員会が連携して教職に就く人を増やすような対策を取ろうとしていますので、そういう特化した対策を取るべきだと思います。
 それから、就学支援制度が本当に拡充してきています。それから、第3子までいると授業料を免除するとか、そういうことも出てきています。高等教育の無償化がかなり進んできていますので、そういう中で、教師になる者について奨学金の返還を免除することの意味というのを、こういうことも踏まえながら考えるべきじゃないかという気はします。
 最後です。もし学部段階も免除をすべきだということであれば、私はやっぱり教員養成の高度化のためにこの方策はあるべきだと思いますので、学部から教職大学に進学して教員就職した学生の学部時の奨学金の返還免除を行うべきだと考えます。これで教職大学院進学者が増えることはもう間違いないと思うんです。
 それから、最短5年で学部卒業・教職大学院修了、4プラス1ですけども、これが制度化されています。先取り履修による教職大学院在学期間短縮制度です。これを活用する大学と、それでもって5年で教職大学院を修了しようとする学生がまた増えてくると思うんです。ですから、そのことは、教員養成の高度化を推進する、つまり大学院修了者で教員になる者をまた大きく増やしていくということになりますので、学部卒者にも行うのであれば、まずはこちらが望ましいんじゃないかというふうに思っています。
 私からは以上です。どうもありがとうございました。
【白水委員】  加治佐学長、御提案、御報告ありがとうございました。
 それでは引き続き、濱中学部長のヒアリングに移りたいと思います。濱中先生、お願いします。
【国立教育政策研究所濱中部長】  ただいま御紹介いただきました国立教育政策研究所高等教育研究部の濱中と申します。簡単に自己紹介しますと、ここ10年ほどの間、私は所得連動返還型奨学金制度とか、来年度から開始予定の大学院修士課程の授業料後払い制度の導入、そういう場面で調査研究協力者会議のメンバーとして参画してきました。本日は、奨学金制度の側から、今般の教員に対する返還支援制度をどう捉えるかということについて、私見を述べさせていただきたいというふうに思います。
 本日の資料については、前回の議論を、12月4日の会議ですか、一応傍聴させていただいて、そのときの議論も念頭に置きつつまとめてきました。
 まず、以前の制度が廃止になったときの経緯はどうだったのかということでございますが、御案内のとおり、1998年に学部入学者に対する教育職の返還免除が廃止されました。ただ、これはこの頃急に出てきたというわけではなくて、歴史を遡っていくと、1970年代の後半ぐらいからずっと言われていまして、財政当局から奨学金の有利子化、返還免除制度の見直し、それから返還期間の短縮、こういう話がずっと出ている中で、1984年に、今につながる有利子貸与の奨学金の導入があり、御存じの方がいらっしゃるかもしれませんが、昔は特別貸与制度という、貸与額の半分を返さなくていいという大きな返還免除のついた奨学金制度があったのですが、それが廃止されました。このときは、たしか国会の附帯決議までつけて教育職の返還免除は廃止を免れたわけですが、それから10年たって、実際に廃止となる際の経緯において非常に大きかったと思うのが、ここにある総務庁の行政監察局の報告書です。何が重要だったかというと、このとき、かなり細かいデータを監察局のほうは出してきました。前回の会議でも話が出ていましたが、一般の公務員よりも教育職のほうが給料が高いというのも、このとき出てきたデータですし、特に私が重要かなと思ったのは、教員として採用された者のうち返還免除の適用を受けている者は20%しかいないというデータです。しかも、奨学金適格者のうち返還免除の対象となる第一種奨学金の採用者というのは半数程度だということで、そもそも教員になる人の中で奨学金を利用できている人が少ないと。他職種との不公平の問題もあるんだけど、教員になった人の中でも非常に不公平がある制度だということが非常に大きかったのではないかと思われます。そのことをもって、資料にあるとおり、人材確保のインセンティブとして公平かつ合理的に十分機能しているとは言い難い面もあると、かなり遠回しな言い方ですけど、こう指摘されました。
 併せてこの報告書では、文部省に対して、文部省は返還免除制度は当面存続させることが適当だとしているものの、その必要性の裏づけとなる実証的な根拠を示していないというふうに指摘されてしまいまして、その後、裏づけとなる根拠資料を出せたのか、出せなかったのかは分かりませんが、結果的に、報告書の3年後から教育職の免除制度が廃止になったということです。
 免除制度の廃止後、国立の教員養成学部の奨学金受給率が大きく減少したという研究もあるにはあるのですが、一方で、前回の会議でも出ていましたけど、採用試験の受験者数が大きく減少してはいないところを見ると、教員志望のインセンティブになるというよりも、免除がある、つまり奨学金を返還しないで済むことによって、奨学金を借りられるものなら借りておこうという形で、奨学金の受給者を増やすインセンティブにはなるんだろうけど、必ずしもそれが教員志望には結びつかないだろうというのが前回の廃止のときのデータから読み取れることになります。
 次のページに参りますが、さらに2004年になりますと、研究職の返還免除とともに、大学院の教育職の免除は1998年以降もしばらく残っていたんですが、研究職の免除と道連れと言ったら変な感じがしますが、実際あまり議論はなかったような気がしますけど、研究職の返還免除が廃止されることに伴って一緒に廃止されます。このときも、特定の職に対してのみ返還免除を行うことによる不公平感ということが指摘されておりました。先ほどのご報告にも出てきましたけど、免除職の廃止に伴って、特に優れた業績による返還免除というものに移行いたしまして、令和4年度の実績ですと、修士課程だと、基本的には貸与終了者の30%がこの免除制度を受けられています。大体そういう予算措置になっているので、規模感としてはこんな感じだということです。ただ、かつての返還免除制度の廃止は、特に研究職のほうに効いたんだと思いますが、実は大学院生の奨学金受給率がここ10年ちょっとの間にものすごく減っていて、もう今は学部生の受給率より低くなっています。確かに、免除制度の有無というのが、奨学金の受給をするかしないか、受けるかどうかというのに非常に大きな影響を与えているという証左にはなろうかと思います。
 というわけで、これまでの経緯を踏まえると、かつては優秀な人材確保にある程度寄与していたのかもしれませんけど、現状、学部卒業者に対する免除制度の復活というのはかなり難しいというか、現実的ではないと思います。
 最大の理由は、次のページに、国研と文科省の学生支援課で令和3年度に高3生の保護者を対象に行った調査の結果を示していますが、グラフ中のⅣとⅤという緑色の線が、高校の偏差値でいうところの学力上位30%ぐらいに相当するわけですが、学力上位層においては、何らかの手段でほとんどの人が大学に進学しているので、教育機会はかなり均等であることが分かります。もしこのⅣとかⅤの層で、低所得層の大学進学率がもっと低ければ、そこに給付型の奨学金を出すことで大学進学需要を掘り起こすということが起こり得るんでしょうけど、そういう効果は現状では恐らくほとんど期待できないということになります。
 そうだとすると、免除制度が教員志望のインセンティブとするためには、現状ですでに大学に進学している層に対して、かつての教育奨学生制度のように、教員養成学部の奨学金枠を拡大して奨学金を受給しやすくしてあげる必要がある。奨学金の受給率は現状では3分の1程度ですから、仮に免除制度を入れたとしても、対象者は3分の1にとどまり、3分の2には全然関係のない仕組みになります。そこでもっと奨学金を受けやすくするというふうになるわけですが、今度は、教員のみを対象にする根拠が乏しいという問題がある。人材不足が言われていて、なおかつ投資効果が大きいと思われる分野はほかにもありますので、そことの競合は避けられませんし、ほかの分野にも広げればいいじゃないか、そのことによって教育費が下がるから良いという考え方もあるかとは思いますが、どんどん広げていけば広げるほど、教員志望のインセンティブを高めることにはならない、そういう問題もあるかと思います。
 それから、2020年度より始まった高等教育の修学支援新制度では、経済的に特に困難な学生、所得が400万未満ぐらいの層に対して、給付型の支援が行われています。こちらは専攻分野の限定がありませんから、どの奨学金制度を利用できるかによって選べる進路の選択肢が異なってくるというのもおかしな話ではありますので、やはり現状では、かつての制度の復活というのは難しいだろうと。
 奨学金の返還困難が社会問題となっていることは御承知かと思いますが、返還支援策というのは、返還が困難な者に対してあまねく適用できるような制度として充実していくべきであって、そちらのほうが政策としての優先度が高い。実際、様々な施策をここ10年ぐらい導入してきました。冒頭に申し上げた所得連動型返還もそうですし、減額返還制度とか猶予期間の延長とか、様々なことをやっていますが、むしろそちらの拡充がやはり優先されるべきだろうと。それは教員にとっても同じでして、かつてのように常勤の教員として採用された者を優遇するよりも、教員を志望しつつも、不安定な雇用機会にしか就けない者、臨時採用という人が不安定なのか、給料面がどうなのかというのはあまりよく知らないんですが、あとは教員採用試験を再度受けるためにほかの職に就いているとか、そういう方へのセーフティーネットを設けるほうが、結果的には教員志望者の確保につながるという意味でも、教員になったから免除というよりは、学部卒業生についてはもっと幅広く返還支援策を検討する必要があるのではないかと思います。
 いずれにしても、新たな返還支援策等を導入するためには、職種による不公平感という問題は必ずついては回るわけですけど、それを上回るだけ質の高い教員を確保することのメリットが示されること、それが最低限必要な条件ではないかというふうに考えます。そう考えたときに、大学院修了者を対象にするということには一定の合理性があるかもしれない。ここで、かもしれないというのは、現時点ではいずれも仮説であって、それを裏づけるだけの十分なデータなり根拠を私が持ち合わせているわけではないから、こういう言い方になっているわけですが、若干素人考えっぽくて申し訳ないですけど、例えば理系の学力上位層では大学院進学がほぼ一般化していますので、理科とか数学のような科目だと、大学院修了者から採用していかないと優秀な人材が取れなくなるだろうとか、これは前回の会議でも言及されていますけど、教育課題が多様化、複雑化する中、より高度な専門知識を有する教員を一定数確保することが必要であるとか、探究的な学習の指導を効果的に実施するためには、大学院において自ら研究の経験を一定持っているような教員が増加することが望ましい、こういったことは理屈としては考えられます。
 一方、奨学金制度の側から見ても、大学院生の奨学金受給資格は、保護者の経済状況ではなくて、学生本人、結婚している場合には、それに加えて配偶者の年収で決まりますので、学部生の場合よりも多くの学生が受給対象になり得る。実際に受給する資格を有している者の数は、たしか85%ぐらいになると、以前参加した検討会議のときはそういうデータになっていました。
 有利子貸与を含めて学部生の3分の1ぐらいが現在貸与奨学金を利用しているわけですけど、そうした学生にとっては、大学院で貸与奨学金の返還支援策があることは、教員志望の学生も含めて、借入額が過大になることを気にして大学院進学をちゅうちょするようなことを避けられるという意味で、大学院の分だけではありますが、支援策のメリットというのはそれなりに大きいのではないかというふうに考えます。
 次のページに参ります。ただ、返還支援策というと、かつての制度のイメージがあるために、みなさん返還免除ありきというか、返還免除を前提に考えられているように見えるんですが、奨学金制度にいろいろと関わってきた、調査研究を含めてやってきた立場からいうと、私自身は免除である必要はないというか、免除でないほうがむしろ望ましいのではないかというふうに考えています。幾つか理由はありますけど、1つ目の理由は、現行の、特に優れた業績による返還免除との関係が非常にゆがんだものになるということです。大学院修了後に教員に従事している者の中に、現に同制度の対象になっている者が含まれているはずなので、それとは別に、教員に採用された者を別枠で免除するとなると、特に優れた業績を有する者への免除とはもはや言えないのではないかという問題が生じます。
 教員採用試験に合格することを条件にするといった考え方もあるんでしょうけど、それが特に優れた業績に該当するのかというのはちょっと言いにくいですし、合格しても辞退されてしまった場合には、その人は免除されるのかされないのかとか、非常に複雑な問題が起こると思います。
 法改正なしですむという議論が前回の会議でもあったんですけど、現行のJASSO法では、返還免除というのは、特に優れた業績免除と、死亡または障害の場合のみですので、教員について何か別枠で免除するとなったら、法改正は必至だということになろうかと思います。
 そうしたこともあって、私自身は、免除ではなくて、教員の人事権を持っている都道府県あるいは政令市を通じた代理返還のような仕組みとするほうが望ましいと思っています。つまり、毎月の返還額を本人に代わって都道府県等がJASSOに納付する。返還はするんだけど、本人ではなくて代理で返還するということです。ただ、課題は、都道府県に対して国からどのように補助をするか、その仕組みを検討するというのが別途難しい問題してはあります。
 現在、修士課程の貸与額は月8万8,000円で、2年間通うと24か月、210万ぐらいになりますが、今のJASSOの規程だと、この返還期間が13年なんです。この期間をかけてずっと少しずつ代理返還していくと、かつての15年で全て免除されるという制度とほぼ同じだけの効果が得られる。なおかつ、かつての制度を単に復活したというだけではなくて、新しい制度としてアピールできるという側面もあるのではないかと思います。
 次のページに参りますが、実際この仕組みはそんな突拍子もないことを言っているわけではなくて、類似の返還支援の仕組みというのは既に行われています。地方創生のための政策として、奨学金を活用した大学等の地方定着促進の取組というのが平成27年度から行われています。奨学金の返還の一部を支援するために、都道府県等が設置した基金等への出捐額等を地方交付税を通じて支援するという仕組みになっているわけですが、現状、この制度は公務員として就職する者は支援対象としないとされていますので、公立学校の教員にはそのまま適用することができません。この部分を何とかできないのか、あるいはこれに類似する基金みたいなものをつくって運用するということは考えられるでしょう。
 一方で、企業の奨学金返還支援(代理返還)制度というのも、既に2021年度から導入済みですので、これらを組み合わせることによって、返還免除ではない形で似たような効果を生み出すことは可能だと思われます。先ほども言いましたけど、国から地方への補助をどういう仕組みでおこなっていくかというのが課題ですけど、こうした仕組みも考えてもいいのではないでしょうか。
 最後に、残された幾つかの論点ということですが、前回の会議の議論で、恒久的な制度にすべきではという御意見がありましたけど、私は必ずしもそうではなくていいと考えています。ある程度修士課程修了の人がたくさんになってきたら、いつまで続けるんだという議論が当然また出てくるわけで、教員における大学院修了者あるいは専修免許取得者の割合を高めることを目標とするのであれば、例えば都道府県ごとに目標値を設定して、それが十分達成された場合には、いきなり中止しなくてもいいですけど、額を減らすとか、見直しをすることをあらかじめ設定しておいたほうが社会からの理解も得やすいのかなと。都道府県ごとに修士課程卒の率がどれぐらい異なるのか、これはデータもないので分からないんですが、そうした不均衡が生じないためにも、ある程度枠を設けたほうがいいのではないかと思います。
 それから、返還支援の対象範囲も、今まではあまり議論になっていませんが、かつての制度は、所定の年限以内に常勤の教員に就職した者全てを対象にしていましたけど、私立学校の教員を対象に含めるかということも少し考えてもいいのかなと思っています。これもやはりデータがなくて、私立学校の教員の給与水準とか、専修免許の保有率とか、データが一切ないので議論はできないわけですけど、そうしたことも勘案して制度設計する必要がある。
 それから、有利子貸与奨学金への適用というのも、以前の免除制度では、もう全然話にもならない感じで駄目だったわけですが、これもちょっと考えなきゃいけないのではないかというふうに思っています。利子分に公的な資金をという、利子補給の問題もあるんですが、元本についても、もともと原資が財政融資資金なので、それの返還に公金を入れるというのは問題になることは多分にあり得ます。ただ、次に示している現職教員が大学院進学した場合への適用というところでは、この二種奨学金の扱いが非常に重要になってくると思います。
 教員における修士保有者を増やす、修士課程卒の人を増やすという目的を考えると、現職教員の大学院進学も支援できるほうが明らかに望ましいわけですが、大学院の第一種奨学金の貸与基準というのは、今現在、年収300万円未満ということになっていて、教員の給与水準を調べてみましたけど、明らかに現職教員は対象外であろうと。来年度開始予定の大学院の授業料後払い制度では、当該年の収入見込額を基準にすること、つまり前年の収入ではなくて、当該年の収入見込額を基準に支援の可否を決めるという案が検討されています。というか、私はかなり検討会議のときに強く主張したのですが。ただこれも、今後の予算編成過程で決まるということでしたから、どうなるかは分かりません。これが実現すれば、休職して今年度給料ない人には適用可能なわけですが、配偶者が働いている場合、学校の先生同士で結婚したりすると、その基準を満たせない可能性も高そうです。そうなると、第二種奨学金の利用を考えないといけなくなりますので、それへの返還支援の適用が可能かどうかということも併せて検討していくことが必要かなと。私が思う残された論点というのはこういうところでございました。
 報告は以上になります。どうもありがとうございました。
【白水委員】  濱中先生、誰を対象にするかだけではなくて、どうするかというところまで考えていただいた報告、ありがとうございました。
 それでは、各委員からの御質問、御意見に移りたいと思います。1人3分ほど時間がございます。まず簡単な確認と、加治佐学長、それから濱中部長に質問がおありの方はそこから始めていただいても結構です。それでは、対面の方、オンラインの方、御質問、御意見等あれば挙手をお願いいたします。
 木村委員、それから戸ヶ﨑委員も挙げていただいていますね。では、木村委員、戸ヶ﨑委員の順に行きます。お願いします。
【木村委員】  木村と申します。よろしくお願いいたします。
 濱中先生にお伺いしたいことが1点あります。
 最後のところの新たな返還支援策の件について質問です。代理返還ということで、都道府県が代理返還すればよいという御提案だったと思います。それに対して国からどのような補助をするかというようなことで、ここはもちろん具体的なことはまだないのかもしれませんが、例えばこれをするときに、自治体の格差というんでしょうか、自治体の体力によって、その返還の範囲とか、量とか、人数が変わるというような心配はないのでしょうか。
 というのは、今、採用試験の前倒しというのが進んでいるのですが、もともとは民間企業の内定期が早いということで、それに合わせて教員も前へ行こうということになってはいたわけなんですけども、やっぱりパイは限られているということで、どちらかというと、自治体が自分のところを何とか確保したい、これは当然のことなんですけども、そういう動きも感じられなくはない。こういうときに、この返還支援策というのが、仮に自治体の格差があるとすれば、自治体によって採用の潤うところとか潤わないところとかというような新たな課題も生まれないのかなと素朴に思ったものですから、この辺り、もし御見解があれば教えていただきたいということです。
 以上です。
【白水委員】  木村委員、ありがとうございました。それでは、濱中部長、お願いします。
【国立教育政策研究所濱中部長】  返還支援に係る額を全額国が補助すれば、それ自体は、自治体間の格差にはならない。ただ、その基金とかを国が全額出資して大丈夫なのかとか、その辺の制度的な問題は、私もそんなに詳しいわけではないですが、基本的には、必要な額を全額国が補助をすることを前提に、どこから返還してもらうかという、そういう考えで、今日は提案させていただいたものになります。よろしいですか。
【木村委員】  はい、承知しました。
【白水委員】  ありがとうございました。それでは次、戸ヶ﨑委員から松田委員の順に行きます。戸ヶ﨑委員お願いします。
【戸ヶ﨑委員】  まず、お二人の御発表、大変勉強になりました。ありがとうございました。今回はもちろん、前回の会議においても、返還免除の対象や範囲については、教職大学院を含めた大学院段階がよいのではないかという意見がほとんどだったように思います。それ自体は、高度な人材を教職に導き、教職の専門性や質を高めることにつながるという観点からすれば大切なことであり、十分に理解できます。
 一方で、優れた教師人材の確保に向けたこの審議の場においては、専門性や質を高める視点だけではなく、より幅広い視点からの議論も重要であると考えます。学部段階への支援については、前回も私から発言させていただきましたし、先ほどの濱中部長の御発表にもあったように、過去にこの制度が廃止された経緯や支援制度の充実等の状況の変化を踏まえると、今後乗り越えなくてはならない課題が多いことも重々承知をしています。しかし、この部会において、学部段階からの支援の可能性を閉ざしてしまうことに疑問があり、引き続き追求していく姿勢があってもいいのではないかと思います。
 その大切な視点が、教師を目指す人材の確保という視点です。最近、「数年先には教師不足は自然解消に向かう」という楽観的な声を耳にすることがあります。しかし、今、数年先まで待っていられない教師不足の現実があります。現在、教員養成に限らず、私学を含めた各大学において、奨学金制度を利用する学生がどんどん増えている現状があるようです。確かに、今後、返還免除による人材確保の予測は当然難しいですが、一人でも多くの人材に教職を目指してもらうことにもっと危機意識を持って、大学院とは言わず「学部段階」から実施すべきではないかと思います。
 また、私は、「奨学金返還免除を利用して大学院進学を促す」という考え方は、優れた教師人材の確保という喫緊の課題から鑑みて、あくまでも現場の感覚として、的外れと受け取られてしまうことを危惧しています。もちろんそのような制度もあってもよいとは思いますが、優先すべきは「学部段階」からの実施だと思います。教育委員会や学校現場に近い立場からすると、優秀であるに越したことはありませんが、少しぐらい荒削りであったとしても、子供が大好きで人間的な魅力のある人物に一人でも多く教壇に立ってほしいとつくづく思っています。
 また、繰り返しになりますが、そうした学部段階からの経済的なインセンティブに加えて、志ある優れた人材に教職を目指してもらうためには、教職そのものの魅力を高める必要があります。そのためには、今議論されている、学校における働き方改革のさらなる加速化や処遇改善、指導・運営体制の充実等をセットで推進していくことが必要だと改めて感じています。
 以上です。
【白水委員】  戸ヶ﨑委員、ありがとうございました。私たちが例えば修士を対象にしようと言っているときには、優秀な苦学生みたいなことをイメージしていると思うのですが、一方で、学部卒なんだけれども、濱中部長の御意見にあったような不安定な雇用機会に直面する方もいるかもしれない。そう考えると、各々の人物像に当てはまる方が現在どれぐらいいらっしゃって、それがどう増えていくかということも考えていく必要があるのだなと思いました。続けて松田委員のターンに移りたいと思います。
 松田委員、お願いします。
【松田委員】  よろしくお願いいたします。戸ヶ﨑委員とコメントもかぶってしまうところがあるかもしれませんが、強調するという意味合いを含めて発言させていただきたいと思っております。
 教員養成の高度化と教員の人材の確保や多様性の担保など、複数の議論を交ぜながら奨学金免除の議論を進めるのではなくて、今回改めて優先順位を明確にして議論を進めることを強く求めていきたいと思っております。大学院修了者に対する奨学金返済免除は、恐らく教員養成の高度化に貢献することはあれど、既に教職大学院卒業生の9割が教職に就職しているので、即時の人材確保の効果は期待しにくいのではないでしょうか。もちろんこれから新しく大学院進学を目指す人が増えて、結果として教員は微増するかもしれませんが、全体としてあまり効果は期待できなさそうです

 また、教職を目指す者が大学院まで学ぶことをスタンダードにしてしまうと、そもそも教職に就くハードルを高くするだけで、これから本当に教職を目指していく人たちのハードルとなってしまうことをちょっと危惧していますというところです。教員養成の高度化は目指していかないといけないことは明確なことなんですけれども、併せて今もうほかで議論を進めている教員研修プラットフォームの構築や教員研修センターの運営、そして各教育委員会が実施している教員研修もあるわけです。大学院レベルの学位の修学そのものが、教育委員会や教員研修センターが実施している研修よりも、教員の資質向上に効果があるのかどうかというところも明確になっているわけではないと思うんですよね。
 さらに大学院に通学している期間、その間も教員は欠員になることも忘れてはいけないと思っております。今は教員の人数の確保であったり多様性の確保が喫緊の課題だと思っていますので、大学院修学者に特定した奨学金免除の議論を集中させるのではなくて、大学院生以外への支援もバランスよく議論すべきであるということを主張しておきたいと思います。むしろ学部生の中でも教職を目指す人材に対して奨学金免除したり、社会に出ているペーパーティーチャーが再度教職を目指す際に奨学金を免除にしたほうが、これまで確保できなかった人材の確保につながると思いますし、多様性の担保に貢献するのではないかと考えております。
 ただ、もしこのまま大学院修了者の教職就職時の奨学金免除を進める場合は、教職課程以外に在籍している修士課程や博士課程の大学院生も対象にしていただくことをお願いしたいと思っております。これらの人材は教職免許を持っていない可能性もありますので、特別免許状をうまく活用しながら教職に就けるようにサポートしていくこともポイントになりそうです。奨学金の返済のみならず、特別免許状の運用も並行して検討する必要が出てくる案件かもしれませんが、いずれにしてもポイントは、教職大学院生に限った支援ではなくて、幅広く支援をしていくことで、これまで確保できなかった人材の確保につながる制度を設計することが大事なのではないかということを主張しておきたいと思います。
 以上でございます。
【白水委員】  ありがとうございました。トータルデザインの中でこの手をどうやって打っていくかという御意見だったかと思います。
 それでは、荒瀬委員、お願いします。
【荒瀬委員】  ありがとうございます。加治佐先生、濱中先生、ありがとうございました。大変丁寧な御説明をいただいて、本当に私も勉強させていただきまして、ありがとうございました。それを伺いながら、今、戸ヶ﨑委員と松田委員がおっしゃったことにもつながるかと思うんですけれども、我々、中央教育審議会の教員養成部会としてはどういったことを考えることで、今後、日本の学校教育が充実していくことを実現していくのかということを改めて思った次第です。私も、学部の段階からの免除ということは、いろんな課題があるとしても、今後検討していく必要はあるだろうと思っています。
 経済格差で、苦しい中でも学びを続けていこうとしている若者がいて、その若者の率とかいったようなことで言うと、そんなに多くないのかもしれないんですけれども、一人一人の若者に視点を置いて考えていくと、そういう人の中で、チャンスがあれば学びを深めて、しかも教職に就こうとする人が出てくるという、そういう可能性を重視したいという気持ちが私にはあります。
 また、学部を卒業して教師になった後で、勤める中でさらに学びを深めたいと思って、教職大学院や、あるいはほかの大学院に進むことが考えられます。あるいはまた、教師の学びの充実ということでは、サバティカルとかいったことも考えていくことが必要だと思います。私は中教審の教員養成部会としては、今後そういうことも視野に入れながら議論ができればと思っています。
 具体的に理解を得られるか、あるいは財源がどうなのかといったことを無視して話をしていっても意味がないことになってしまいますので、現行の制度でできることについては積極的にしていくということを一方で具体に進めつつ、もう一方で、どういったことが考えられるかについて幅広く議論していくことの両方が大事だということを思った次第です。ありがとうございます。
 言いっ放しで大変申し訳ありません。私、別の用件がありまして、これで失礼いたします。どうもありがとうございました。
【白水委員】  荒瀬委員、ありがとうございました。
 それでは、山辺委員、御発言ください。
【山辺委員】  よろしくお願いします。まず、2つの発表ありがとうございました。伺っていて思ったことは、戸ヶ﨑委員と松田委員の御発言にも重なるんですけれども、やはり大学院を前提とするというところにまず少し引っかかりを感じまして、優れた教師人材の確保に向けたというところで、それを本当にすぐに高度化と読み替えていいのかというのが1つ疑問でして、必ずしも大学院を設置している教員養成課程を持つ大学ばかりではなく、学部の段階で特色を出す教員養成をデザインしている大学もありまして、そこを出た学生たちは、そこを出てすぐに就職できて教職に就いたとしても奨学金等が返還免除にならないというふうになってくると、その大学自体の魅力も下げてしまうことになり、大学独自の取組というものが魅力が減らされていってしまうということをちょっと懸念しております。
 もう一つは、日本の大学院に進学することを推進するような議論になっているかなと思うんですけれど、特に中高の英語の教師の方々なんかはTESOLなんかを取るために海外の大学に進学することもありまして、そうしたときにはどのような支援がなされるのか、あるいは、なされなくて、やはりこれは日本の大学院進学を支援するものなのだというふうになるのかというところが少し疑問に思いましたので、海外の大学院で専門性をより多く身につける先生たちに対しても、何かしらの支援策を検討し得るのではないかということをちょっと思いましたので、発言させていただきます。
 以上です。
【白水委員】  ありがとうございました。また一歩視野を広げられる御発言をいただきました。
 それでは、貞廣委員、お願いします。
【貞廣委員】  ありがとうございます。千葉大学の貞廣と申します。まずは、お二方の御報告をいただきまして、ありがとうございます。その上で2点意見を申し上げたいと思います。
 意見の前にですけれども、そもそもこの議論は、前回のこの会議でも発言させていただきましたけれども、どういう規模を想定するのかということと強く連動しているので、例えば学部の学生まで考えるとか、今、海外の大学院でというようなお話もありましたけれども、我々、ここにいる部会のメンバーとしては、できるだけ広くという考えるところではありますけれども、試行錯誤しながら検証しながらいくということで言うと、少ない間口から始めることもあるでしょうし、または優先順位をつけてということもありますが、規模の問題によって議論の道筋が全く違ってくるという気がいたします。
 その上でですけれども、意見を申し上げるのも難しいとは思うんですが、懸念している点が2つありました。1つは、前回のこの会議で松田委員がおっしゃったことです。松田委員は、1回制度がなくなったことはすごく大きなことで、なくなった制度をもう一度復活させるのは相当の根拠が要るとご指摘されました。それと恐らくは連動すると思うんですけれども、個人ベースで免除するということは、他職種も含めて、社会的公正という面から若干の懸念があるという点です。これらのことを考えると、前回の制度と差別化をするという点からしても、個人ベースではなく自治体の政策と連動させるという点からしても、本日、濱中先生が御提案をくださった自治体の代理返還という選択肢は制度として非常に有望であると考えます。
 ただし、予算を安定的に確保できるのかということや、制度を新たに設けることのハードルの低さ、高さの問題、それと比較考慮したときにどっちがいいのかという問題にもなりますので、その点も両にらみで考えなければいけないと思います。
 2点目です。そのときに、恐らくは今日、濱中先生の御提案であれば、現行の類似制度を前提として地方交付税でということで、できれば必要な額を国が全額ということでしたけれども、その様な制度ですと、木村委員がおっしゃったように、地方によって対応の違いが生まれる可能性は十分あると思います。地方交付税ですので、積算をして地方自治体に渡すわけですけれども、それをどういうふうに使うのかは地方によりけりですので、非常に体力があって、教員をしっかりと確保したいという自治体はしっかりとそれを使われるでしょうし、そうではない自治体については別の形があるかもしれませんので、この点についても若干の懸念があるということです。
 2つと言ったんですけど、3点目です。冒頭で申し上げた規模の問題ということを考えると、やはり学部の学生だけではなく、現職の先生方が教職大学院に進学をして学ばれるときの授業料に対応できるような奨学金のありようも併せて広く考えたいと思ったりもいたします。ただ、これは希望的なものですので、最初の話になりますけれども、どのような規模で考えるのかという前提を共有しないと、皆さんの意見を集約して案を練り上げていくということになかなかならないのかなと思ったりもしました。
 以上でございます。
【白水委員】  ありがとうございました。この「規模」に関する話は事務局からも少し御意見を聞けると、この先クリアに進んでいくことができるところかと思いますので、ちょっと確認させてください。例えば、今日、加治佐学長試算の院生に免除したときに必要な15億円というのは、分母をJASSOの貸与奨学金総額から見ると0.1から0.2%になります。しかし、これを濱中先生の代理返還策を取ったときに地方交付税で充てていくのか、それとも文科省から払っていくかによって、もし文科省の予算で考えると、15億は相当大きいなという気もします。ですので、濱中先生が「代理返還」といったときに、自治体を補助する国の財源をどんなふうに考えられているかというのと、事務局のほうで、規模感、どんな立てつけのどれぐらいの規模感でお考えかというのを、現状のアイデアで結構ですので、御披露いただければと思います。
 それでは、濱中部長、お願いします。
【国立教育政策研究所濱中部長】  地方交付税という現行の奨学金を活用した大学生等の地方定着促進の仕組みがそうだというだけで、今度の仕組みとして地方交付税でやらなければならない理由は特にないです。むしろ、教員の返還支援制度のための基金みたいなものを別途用意すればいいんじゃないかと思っています。地方交付税だと、東京都とか不交付団体はどうするんだという問題も出てきますので、それは無理だろうと僕も思っています。そういう意味では、全額返還支援をするのであれば、国からそれに必要なだけ毎年予算措置をするということが必要になります。ただ、加治佐学長さんがおっしゃったように、都道府県で人事評価みたいな仕組みを、もし間に入れるのであれば、その分は減るとか、いろんな使い方はできるのではないかと思っています。よろしいですか。
【後藤教育人材政策課長】  事務局の教育人材政策課長でございます。お尋ねいただきました規模ということについて、ずばっとお答えできる状況が今あるわけではありませんけれども、今日の御議論でもありましたように、現実的に、これは政策として前に進めていかなければいけない。骨太の方針にも明記をされていて、速やかに検討していくべき課題だとなっていますので、現実的に考えていかなきゃいけないことだろうと思っております。そのときに、前回、本日の議論でもありましたが、前に昭和から平成にかけてあった制度がどのようにして始まり廃止されていったのかという経緯でありますとか、今日のプレゼンでもありましたような、現行の就学支援の制度の枠組みとの関係性でありますとか、そういった点を踏まえて、事務局といたしましては、できますれば、規模ということでかちっとこの枠で考えていただきたいということはありませんけれども、できれば優先順位的なところは、養成部会の先生方の御意見として、最終的にはめり張りをつけたような形で示していけるといいのかなと思っております。
 もう一つは、せっかく今こういう議論をしているということもありますので、できることからできるだけ早く、教師不足という現状もありますので、早めに取組を社会に対してしっかり発信していくというか、実施に移していく視点も大事かと思っておりまして、時間的に早くできるか、時間がかかることかということと、それから、政策的な意義といいますか、そういった観点からの優先順位づけというようなところで、養成部会の議論ということで、対応の方向性ということで、この先、整理していければと考えております。
 十分な回答でなくて恐縮ですが、現時点では以上でございます。
【白水委員】  貞廣委員、よろしいでしょうか。
【貞廣委員】  はい。ありがとうございます。
【白水委員】  ありがとうございます。それでは、今、挙手していただいている方、いらっしゃいませんので、今日はこちらの議題がメインでございますので、最後、岡本委員から順にオンラインであいうえお順でいきたいと思います。その後、対面の方から御意見をいただこうと思いますので、お一人2分ほどで。もしパスということであれば、パスしていただいても結構ですので。
 それでは、岡本委員、お願いします。
【岡本委員】  岡本でございます。加治佐先生、濱中先生、勉強になりました。ありがとうございます。137回の教員養成部会において、教師のなり手不足が取り上げられていました。その要因をいろいろと考え、対応していかなくてはいけないという前提で、本日は奨学金に焦点を当てたお話を伺いました。私は、教職大学院生に対する奨学金の返還支援がフィットすると考えております。本日は、学部も、あるいは海外の大学院で学び、教職に就く方も、対象となるような話がありました。さらに、支援の規模をどう考えるかに至ったところで、やはり、大学院生を対象とする奨学金の返還支援が妥当ではないか、と思いました。
 支援の限定というか、優先順位をつける場合には、どういう理由で大学院生のみの支援をするのか、あるいは、返還支援の内容、例えば、院生だけを全額免除とするのではなく、学部生まで網羅して支援するべきというような、基本的な検討も必要と考えます。予算が限られているならば、教職に就こうとするすべての方に支援をというのは、現実的ではなく,難しいと思いますので、その点が課題と考えます。
【白水委員】  ありがとうございました。
 それでは、次、木下委員、お願いします。
【木下委員】  木下です。よろしくお願いいたします。加治佐先生、濱中先生、本当にありがとうございました。大変勉強になりました。私、現場にいるものですから、教職大学院のほうがどうなっているかということはなかなか分からない部分ではあるんですけれども、今日、お二人の先生のお話を聞いて、学校で何ができるのかなということを考えながら聞かせていただきました。やはり私も、大学院ということだけでなくて、より幅広い視点でと考えます。そういう点では、今回対象としている教職大学院、それから、先ほどスポーツ競技における成績とか、音楽と芸術発表の成績等なんていうことも出てきましたけれども、教職に就いたならば、その成績を収めてきたことが指導力を持って発揮されるというふうに考えています。そこに、生徒に対する教育的愛情ですとか、知識、技能だけでなくて、心を育てるということ、子供と共感できるか、そこに使命感や責任感を持って指導に当たるという気持ちを大事にしてほしい、そういう力もつけてほしいと思っています。
 現在、私の学校には、一般の主婦から教員になった職員がいますけれども、この方、一般企業の経験もあって、意外と企業で経験してきた会計ですとか、そういう事務処理能力が非常に高いんです。そういうところは職員も大変勉強になっているところです。やはり学校はいろんな人材があって、いろいろ切磋琢磨しながら、教職員がコミュニケーションを取りながら、チームとして学校をつくっていくということもあります。ぜひ幅広く見ていただいて、今のは一例を言ったまでですけれども、ぜひ教職を目指したいという人たちの、教職を目指そうという気持ちを大事にできる制度になっていただけたらと思っています。ぜひ志のある人間的魅力ある人に教壇に立ってほしいと思っています。まとまらなくて申し訳ありません。
 私からは以上です。
【白水委員】  ありがとうございました。
 それでは、次、高橋委員、お願いします。
【高橋委員】  ありがとうございます。加治佐先生、濱中先生のプレゼンテーションを聞かせていただきまして、大変勉強になりました。ありがとうございました。なぜ奨学金がという話を考えてみますと、皆様の御意見も同じなんだと思いますが、2つぐらいが大きな観点なのかと思っております。人材確保、教員不足の問題の解消と教職を一層高度化していくべきという、この2つが大きな観点なんだろうと思いながら私も考えております。
 優先順位をというお話で言えば、私はまず、教職の高度化のほうなのかもしれないとも少し思っております。というのは、人材確保のほうは、両先生とも多分、臨時講師への手当の重要性ということをおっしゃっていますので、こことのてんびんを少し検討しなきゃいけないのではないかと思っています。ただ一方で、加治佐先生のお話の中で、教員の採用数が少なくなる見込みで、場合によっては教員不足が解消するのではないかというような、予想されるようなプレゼンテーションをいただいたようにも思いますが、ただ私も感じるのは、定員が満たされる人数だけ教員が養成されれば十分なのかと考えていけば、一定程度競争が生まれて切磋琢磨していくことが大事だと思いますので、人材確保というのも、一定数を超えれば高度化につながる話なんだと思っていますから、そういうふうに考えていけば、教員養成系に限らず、開放制の様々な教員養成の中で、学部生も含めて、教員を志望する学生を増やしていくことが最終的に高度化につながるというような解釈もあり得るんじゃないのかとも思っております。
 また、教職の高度化そのもののお話で考えますと、高度化というのは様々な意味や観点があると思いますけれども、近頃で言えば、子育て支援といいましょうか、保護者が安心して子供を学校に預けて教育できるような環境づくりが、当時に比べて非常に強く求められていると思いますので、子育て支援の観点からも学校教育の高度化と考えていくことが必要ではないかと思っています。
 教職大学院に関しては、9割教員になっているのでというお話がありましたが、まだまだ定員の充足率に余裕があるのではないかとか、教職大学院に限らない他の研究科から教員を目指す方々を御支援したり、スポーツ選手であるとか、社会でいろいろ御活躍の方が大学院に入学して、教員免許状を取りながら、大学院で高度な教職についても勉強していただくみたいな、そういう観点から見ても、大学院による教職の高度化、そのために奨学金の免除制度が有効であれば、私はぜひともと思っているところでございます。財源等については専門ではないので分かりにくいんですが、高度化に向けた取組が最も重要じゃないのかと考えている次第です。
 私からは以上です。
【白水委員】  ありがとうございました。学校教員の全体をどんな方が占めるかという分布・割合(プロポーション)をどうしていくかというのと、その際の分母をどこに求めているかが難しいのがこの論点かと思います。高橋委員は、そのプロポーションを考えた上で、現在の教職大学院生だけではなくて、ほかの専攻にも「分母」を拡げるという御意見だったかと思います。
 それでは、真島委員、お願いします。
【真島委員】  お願いします。今回、いろいろと加治佐委員と濱中委員のお話を伺って、大変勉強になりました。ありがとうございました。私のほうでは、大学院の奨学金制度と、喫緊の教員不足という課題の2つから考えてみたいと思います。一番支えるべきは、不安定な雇用、非常勤の方や、教員を目指しているんだけれども、なかなか採用につながらない方です。現場で一生懸命やっているがゆえに試験まで手が回らない方。本当に誠実な方でそういう方がいらっしゃいます。現場だと目の前に子供がいるので、そこに応えよう応えようとしていけば、当然、採用試験の勉強までなかなか手が回らないということもあるかと思います。不安定な雇用の方には、セーフティーネットという濱中部長さんのお話は大変重要な観点だと思っています。これから10年間はだんだん教員採用数が減っていきますが、教員を目指していて不安定な雇用の方に手厚くサポートするというのはすごく必要です。もっと言えば、現場の先生方からすれば、正規の職員、教員を増やしてほしいということが今一番必要なサポートです。
 臨時の方はもちろん大事なんですけども、1人、2人余分に、プラスアルファで学校現場にいることで学校現場に余裕が生まれて、産休に入っても育休に入ってもいいよと温かく送り出せる、介護休職したいと言ったときにも、正規の職員として、2人、3人の教員が余裕に現場にいれば、教職員の事情に応じて、十分に送り出せますし、臨時採用が足りない!足りない!ということを言わなくても、まず正規を増やしていくというのがもちろん一番大きな解決策だと思います。いろいろ財源のこともあるので一気に解決することは簡単にはいかないので、まずはそういった人材の不足に関しては、不安定な方へのサポートを充実させ、給料を上げていくなど、待遇の改善が必要だと思います。
 また、それとは別に中長期的には、教員養成の高度化といった点においては、大学院への奨学金制度が、私の考えでは最もふさわしいのではないかと思っています。今の学校現場に大学院を経験されている先生方が圧倒的多数を占めていけば、大学院に進学して教員になることや、教員になってから大学院に進学することが当たり前になってきますが、現段階では、大学院を修了した教員が学校現場に多数を占めていません。教員養成において、専門職修士の学位の取得が当たり前になれば、その段階においては、奨学金制度をだんだん縮小してもいいと思います。今日、濱中部長様から、奨学金を地方公共団体で目標を設定してはどうかという話があったんですが、そういった点でも、一部の人が大学院に行っている学校現場だと、なかなかその有用性や意味が、普及しづらいんですけども、教員の過半数以上が大学院を修了した職場になってくれば、そこがスタンダードになってきた時点では、だんだん縮小もあり得るかなと思います。
 ただ、現状の教育改革の中で、探究的な学びとか、これからの新しい時代に対応していく学びというところを鑑みれば、当然教員養成の高度化は必要になってきますので、そういう研究的な視点を持った教員が幅広く活躍して、大学院で奨学金を得て、十分にそこで力を発揮できる、そういった仕組みをつくっていくのが、国の政策として最も重要だと思っています。
 以上です。
【白水委員】  ありがとうございました。
 それでは、松木委員、お願いいたします。
【松木部会長代理】  松木です。お二人の先生方、ありがとうございました。今日のお話の論点は2つ、1つは人材確保という点、もう一つは高度化という点ではないかと思います。人材確保という点の話では喫緊の課題、目先の今すぐに対応しなくてはいけない課題ですが、もう一方の高度化ということに関しても、教員養成に携わる者としては極めて、すぐ取り組まなければならない課題になっていると思います。
 具体をあげます。今、学校では、障害を持った子供さんやデジタル化の問題、外国籍の子供の問題、あるいは学校に行けない子供たちの問題など、今までにない状況が生まれてきています。それと、超スマート社会に突入した今日、やはり先生が生涯にわたって学び続けてもらうような仕組みを早い段階で実現しなきゃいけない。そういうようなことを考えますと、高度化といった問題についても本当に喫緊の課題ではないかと思います。そう思ったときに、現職の先生方についても、現在のところ制約条件があって、奨学金返還免除はなかなか難しいというお話がありましたが、現職の先生方の多くは管理職になる前に大学院に入学する方が多いと思います。その方々は、子供も大学へ進学するという時期とも重なっておりまして、財政的に非常に厳しい状況に置かれている というふうにも思います。そうしたことをいろいろ考えていくと、たくさん問題もありましたが、各都道府県の範囲で考えられる幅を残してくださるような在り方はすごくいいなと思っております。
 以上です。
【白水委員】  ありがとうございました。人材不足と高度化という2つの大きな山に対して、この奨学金の手をどう打っていくかかと思います。
 それでは、森田委員、お願いします。
【森田委員】  ありがとうございます。森田でございます。加治佐先生、濱中先生、大変貴重な御発表ありがとうございました。参考になりました。他の委員の先生と意見が重なってしまうかもしれませんが、冒頭にありました先回の議論のまとめのところの意見にも少しありましたように、私自身としては、本当に様々なことを考えていかないといけないし、対象もできるだけ広くして考えていくというのは大事だろうとは一方では思っています。しかし、他方で、先回の議論で、対象を広げ過ぎずに小さくスタートしていくというような御意見もあったと思いますので、そういう視点も必要ではないかなと考えています。もちろん財源の問題等はあると思います。
 それから、いつの時点から誰を対象にするかという議論とセットになるような気がするのです。例えばある年度に採用試験に合格した人は全て免除の対象になるという形になるのか、ある年度に入学して奨学金を借り始めた人が教員になった時から対象となると考えるのかによって変わってくると思いますけど、制度設計をしても、それが動いていくまでに5年、10年かかってしまうような、該当の人材が出てくるまでにかなりのタイムラグが生じてしまうことになると、また、それはそれでその時の状況がどう変わっているかということも関わってきてしまうと思います。さらに、私個人としては、もちろん、いろいろなところにできる限りの目は配りながらも、やはり先ほどの議論にありましたような教員養成の高度化という面で、これからは人材を確保することとともに、どう高度な力のある人が教員に向いてもらえるかというところを、私たちは、本当に真剣に考えていかないといけない時代になってきている気がしています。
 御承知のとおり、これは私が言うまでもなく、民間企業も含めて少子化を迎えていく中で、本当に優秀な人材の奪い合いといいますか、様々な方法を使って、様々な業種が様々に工夫を凝らして優秀な人材を確保しようとしている中で、本当に優秀な人材が教師という職業に向いてもらうという仕組みを私たちがどう考えていくのかというのは大事な視点だと思っていますので、そういった中で、奨学金というものをもし位置づけるとすれば、加治佐先生が御発表いただいたような、教職大学院だけにするのか、それとも専修免許状課程ということで限定するのかという論点はあるとは思いますけれども、やはり高度専門職としての教師というところを前面に出して、まずは大学院レベルの専修免許のところからスタートするという制度設計があってもよいのではないかと個人的には考えているところでございます。
 簡単ですけれども、以上でございます。
【白水委員】  ありがとうございました。
 それでは、対面で吉田委員は御遠慮されましたけど、森山委員、どうぞ。
【森山委員】  本日、加治佐先生、濱中先生、この点に関して非常に重要な点を示していただきまして、ありがとうございました。私からは、質的な意味での人材確保については、やはり優れた人材あるいは専門性を持ったイコール大学院ではないというのは分かりますが、それに代わる要素を決定する必要があると思います。その場合に、それをどのように検討するのかというところが、なかなか難しいのだろうと思いました。
 加えて、量的な意味での人材確保、これは直近の課題だと思いますが、当然ながら学部生まで対象にすれば、その点は非常に有効に働くというのは事実です。しかしながら、今日、大きな課題の一つとして挙げられている教職の高度化とか、教師の高度専門職としての社会的地位の確保の観点となりますと、どうしても方向としては、まずは大学院での専修免許からこれを実現するのがよいのではないかと思います。
 さらに、大学院での専修免許課程だけ取っても複雑な点があると思います。例えば、教員養成系以外の国公立の教職課程学生に対して、教職大学院および一般大学院の専修免許課程進学を前提とした、支給期間4(学部)プラス2(3)(教職大学院)一貫型支給奨学金の設定、またさきに述べた一部でもありますが、一般大学院専修免許課程学生への支給型奨学金の設定など、大学院一つ取ってもいくつかのケースが考えられると思います。そういう意味では、この辺りのところから検討するのも必要はないかとも思います。
 最初に戻りますが、量的な人材確保はある程度トレンド的なものかもしれません。ただ、質的な人材確保については、この時代の中で、大学院での専門的な学習を通して教師になるということについては、これからも重要な要素となる不易的なもののようにも感じます。そういう意味では、まずは大学院から進めることも一つの考え方ではないかと思う次第です。
 以上です。
【白水委員】  ありがとうございました。この件は量や予算だけではなくて、質も一緒に考えていかなければいけないという非常に大事なポイントを御指摘いただきました。議題1について十分議論をありがとうございました。加治佐学長、濱中部長、ありがとうございました。
 それでは最後、議事の2に入りたいと思います。事務局より御説明をお願いします。
【石川教員免許・研修企画室長】  議題2につきまして、教員免許・研修企画室長の石川より説明をさせていただきます。資料2を御覧ください。令和6年度におけます新型コロナウイルス感染症に係る介護等体験特例の期間延長についてでございます。
 丸の1個目にございますとおり、小学校及び中学校の教諭の普通免許状授与に係る教育職員免許法の特例等に関する法律によりまして、特別支援学校や社会福祉施設におきまして、7日間以上、障害者や高齢者等に対する介護、介助、これらの者との交流等の体験を行うことを、小学校、中学校の普通免許状の授与要件としてございます。
 他方で、令和2年度から令和5年度までの間は、新型コロナウイルス感染症の影響によりまして、介護等体験の実施が困難な場合は、介護等に関する大学の授業科目や講習の受講等によって介護等体験を免除することを可能とする特例を設けてございました。他方で、御案内のとおり、令和5年5月8日より新型インフルエンザ等感染症、いわゆる2類相当から5類感染症に新型コロナウイルス感染症は移行されておりますので、来年度、この特例についてどうするのかということを検討する必要がございます。
 現状の特例を使っている状況についてが丸の4つ目になりますけれども、介護等体験につきましては、特に介護施設などにおきましては、重大な健康被害が生じ得ます障害者あるいは高齢者等への配慮があることから、5類移行後も、まさしく今年度の5月-9月分の実施分をデータとして載せておりますけども、特例の適用割合が6割を超えるという依然として高い傾向にございます。また、令和2年度から令和5年度までは特例期間であったこともありますので、仮に再開する、特例がなくなって介護等体験をやらなければいけなくなるとなったときには、改めて介護施設等との調整にかなり時間も要するという意見も聞こえているところでございます。
 こうしたことを踏まえまして、2ページ目になりますけれども、令和6年度については、5類相当にはなってございますが、引き続き介護等体験の実施が困難な場合が想定されるということで、介護等体験の特例の適用期間を延長することとしたいと考えてございます。
 他方で、5類に移行しているということもありますし、また、特別支援学校や介護施設等においての交流は大変重要な機会と考えておりますので、適用期間の延長はするのですが、施行通知などにおきましてですけれども、3つ目の丸ですが、令和6年度におきましては、特例の延長は行うものの、可能な限り対面で実施することを推奨することとともに、令和7年度以降は基本的には特例の延長は行わないつもりであることを併せて周知をしていきたい、かように考えてございます。
 なお、教育実習につきましても、同様に令和2年度から令和5年度までは特例があったのですけれども、こちらについては、もう既に令和3年度の時点で、教育実習実施者のうち98.7%が通常どおり教育実習を実施しております。こちらは、学校かあるいは障害者や高齢者の施設かという違いがあると思いますけれども、教育実習はほとんど特例がもう既に使われてない現状がございますので、令和6年度については特例の延長は行わないこととしたいと考えてございます。
 私からの説明は以上です。
【白水委員】  ありがとうございました。この件について御意見、御質問等ございますでしょうか。よろしいですかね。それでは、本件は案のとおり進めることにしたいと思います。これで議事2を終了いたします。ありがとうございました。
 それでは、議事は以上になりますが、何か御意見等ございましたら挙手でお願いいたします。
 戸ヶ﨑委員、お願いします。
【戸ヶ﨑委員】  時間がないところで申し訳ございません。今回の議事とは直接関係ありませんが、次回出席できませんので、高度化の話について1点、情報提供させていただきます。
 今年度、本市は文部科学省の「教員研修の高度化に資するモデル開発事業」に採択していただき、実証校において、産官学と連携した校内研修の高度化などを推進しています。この事業の効果が予想以上に大きいことを、日々、学校現場と教育委員会とで実感し、大変ありがたく思っています。そのことにも関連しますが、本市では、教員研修を高度化するために、夏季休業中の研修の仕組みをこれまでと変えて、選択で全教師が参加できる形としました。研修後には、振り返りの調査を行っていますが、難易度について問う項目で興味深い結果がありました。
全てのキャリアステージのうちで、6年目から25年目あたりの教師にとっては、それらの内容が特にちょうどよいものであり、1年目から5年目の経験の浅い教師と26年目以降の教師にとっては難しさがあったという結果です。
 経験の浅い教師にとって難易度が高く感じられることは分かりますが、26年目以降の教師、つまり50代を中心とした教師にとっても難易度が高いということは、考えようによっては、これまでの指導方法を経験や勘のみに頼り、あまりアップデートできてなかったという可能性があります。これは、他の自治体でも起こり得る状況なのではないかと思います。
中央教育審議会の他の部会でも、「教師の学びは子供の学びと相似形であるべきである」という考え方を浸透させる努力を、学校と教育委員会とが一体となって続けていますが、いずれにしても、教師の資質向上に関する指標、いわゆるルーブリックに基づいて、ニーズやキャリアステージに応じた個別最適な教員研修が実施できるよう、今後も工夫、改善をしていく必要性を強く感じます。この部会等でも今後議論ができるといいと思いましたので、情報提供させていただきました。貴重な時間をありがとうございました。
【白水委員】  戸ヶ﨑委員、ありがとうございました。教員研修高度化モデル事業は、1年で終わるのがもったいないぐらいの、私の周辺でも非常に評判がいい事業ですので、成果の共有を進めていければよいかなと思います。ほかの委員から御発言ございませんでしょうか。
 それでは、これで今日の議事等全て終了しましたので、最後、事務局よりお願いいたします。
【重親教育人材政策課課長補佐】  次回の日程についてでございますけれども、委員の皆様には事前にアナウンスさせていただきましたが、次回は1月15日を予定しております。
 事務局からは以上になります。
【白水委員】  それでは、本日は以上とさせていただきます。どうもお疲れさまでした。
 
―― 了 ――

(総合教育政策局教育人材政策課)