「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会基本問題小委員会(第3回)・ 初等中等教育分科会教員養成部会(第128回)合同会議

1.日時

令和4年2月21日(月曜日)15時00分~17時00分

2.場所

WEB会議(Webex利用)

3.議題

  1. 教員養成フラッグシップ大学について
  2. 教師に求められる基礎的な資質能力と教職課程の見直しについて

4.議事録

【加治佐部会長】  定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会第3回基本問題小委員会・初等中等教育分科会第128回教員養成部会を開催いたします。本日もウェブ会議システムを活用しての開催です。

 それでは、本日の会議の進め方等について、事務局から説明をお願いいたします。

【中村教育人材政策課長補佐】  文部科学省教育人材政策課の中村です。会議の進め方について確認させていただきます。本日もウェブ会議システムを活用していますことから、御発言に当たりましては、聞き取りやすいようはっきり御発言いただきたいこと、御発言の際は名前をおっしゃっていただきたいこと、発言時以外はマイクをオフ、ミュートにしていただきたいこと、御発言に当たっては「手を挙げる」のボタンを押していただきたいことについて御協力をお願いいたします。Webexのチャット機能につきましては、傍聴者が閲覧することができませんので、マイクがうまく機能しない場合の緊急連絡手段としていただくなど補助的な使用としていただくようお願いいたします。本会議の模様は、報道関係者と一般の方向けにライブ配信をしております。

 配付資料は、議事次第に記載のとおりとなっております。

 ここで、参考資料について1点補足がございます。参考資料5につきまして、本日議事としては扱いませんが、教員養成部会に設置されている課程認定委員会からの報告となっております。令和2年度教職課程の認定の後、令和3年度の教職課程が開始するまでの間に、やむを得ない事由により専任教員の変更が生じた大学について書類審査を行い、最終的に可と判定した旨が報告されておりますので御紹介させていただきます。

 私からは以上です。

【加治佐部会長】  ありがとうございました。今回は、2つの議事があります。議事1は、教員養成フラッグシップ大学についてです。これは、教員養成部会の議事として取り扱います。議事2は基本問題小委員会の議事として、教師に求められる基礎的な資質能力と教職課程の見直しについてを用意しております。この議論を深めるためのヒアリングとして、立命館大学教職研究科、森田先生、北海道教育大学、浅利先生、山中先生に御発表をお引受けいただいております。お三方の先生は議事2の頃に接続をいたしますので、よろしくお願いいたします。

 さて、議事の1についてですが、本件は、初等中等教育分科会教員養成部会運営規則第6条の審議事項に該当するため、非公開とさせていただきます。そのため、教員養成部会の委員以外の方については、一旦控室でお待ちいただきたいと思います。また、ユーチューブのライブ配信は議事1の間は停止させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 

~議事1は非公開議事につき省略~

 

【加治佐部会長】  それでは、議事の2に入ります。冒頭申し上げましたように、基本問題小委員会の議事として、教師に求められる基礎的な資質能力と教職課程の見直しについて議論を行いたいと思います。

 本日はヒアリングとして、立命館大学大学院教職研究科、森田先生、北海道教育大学、浅利先生、山中先生に御協力をいただきます。先生方、どうぞよろしくお願いいたします。

 最初に、事務局から説明をお願いいたします。

【小畑教育人材政策課教員養成企画室長】  教育人材政策課教員養成企画室長の小畑と申します。私より、教職課程の見直しに係る検討の方向性等について御説明をさせていただきたいと思います。資料につきましては、資料2-1に全体の概要をお示ししてございます。事務局から、この説明では資料2-2に基づいて御説明をさせていただきたいと思います。必要に応じて資料2-1の概要も御覧いただければと思います。

 まず、教職課程をめぐる状況についての御説明でございます。現行の教職課程でございますが、平成28年の免許法改正、平成29年の免許法施行規則改正、教職課程コアカリキュラムの策定を踏まえた見直しが行われたところでございまして、令和元年度入学生から実施をされ、4年制大学におきましては、令和4年度末に第1期の卒業生が輩出されることとなっているところでございます。

 また、令和3年度にはGIGAスクール構想に基づく1人1台端末の整備などを踏まえまして、来年度から実施される教職課程におきまして、ICT活用に関する内容の習得促進に向けたカリキュラム改正が行われることとなってございます。

 また、令和4年度からは、先導的、革新的な教員養成プログラム、教職科目の研究開発などに取り組みます教員養成フラッグシップ大学の取組が開始され、コアカリキュラム、教職課程の見直しなども念頭に、学習観・授業観の転換を担う教師の育成のためのプログラム開発などといったものが展開される予定となってございます。

 こちら、概要資料なので割愛させていただきます。

 こちらは、教職科目として履修することが必要な単位といったものを整理したものになります。この後、論点としても御提示させていただく形になりますけれども、特別部会におきまして御議論、御指摘のございました、学校現場で教育実践を経験する学びといったものにつきましては、教育実践に関する科目に位置づけられております教育実習5単位ということになりまして、ちょっと小さい字で恐縮ですが、注意書きにございますとおり、このうち2単位までは学校体験活動の単位を含むことができることとされているというところでございます。また、大学におきましては、一番下にございます大学が独自に設定する科目の中で、学生の希望に応じて学校体験活動などの実習系の科目を履修できるようにしているところもあるといった状況になってございます。

 こちら、教員養成フラッグシップ大学の資料でございますが、重点的なテーマといたしまして、学習者中心の授業デザイン、ファシリテーターとしての教師の役割についての資質向上、学校現場における教育データサイエンスの活用やSTEAM教育を先導する人材の育成、こういったものに取り組むということになってございます。

 次に、令和答申、いわゆる令和答申におきましては、2030年代を通じて実現すべき令和の日本型学校教育で目指す学びの姿ということで、個別最適な学びの姿と協働的な学びといったものを一体的に充実をし、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善につなげるということとされたところでございます。また、こうした内容も踏まえながら、先般、特別部会においてお取りまとめをいただきました審議まとめにおきましては、新たな教師の学びの姿といったものが示されたというところでございます。

 これは資料ですので、今日は割愛させていただきます。

 現状、最後でございますけれども、こちらの特別部会におきましても御指摘のございました、教職課程における学校現場での教育実践を経験する学びといったものに目を向けてみますと、一般に、教員養成大学学部におきましては大学3年後期に、一般大学学部におきましては大学4年前期に教育実習が実施をされているというところでございまして、学校現場での教育実践を経験する機会は主に教職課程の終盤に設けられているといった状況にある一方で、教育実習の履修時期が民間の採用活動と重なるといった課題もございまして、教職課程の履修を断念する傾向が顕著に見られている例といったものも出てきているところでございます。

 他方、教育実習などの学校現場での教育実践は、大学と学校、教育委員会が共同して次世代の教師を育成するとともに、学生自らが教職への適性や進路を考える貴重な機会となるものであり、近年、各大学の教職課程におきましては、学校インターンシップや学校ボランティアなどといった名称で、学校現場における体験を重視した活動といったものが展開されるようになってきているというところでございます。

 また、学校教育全般に様々な支援人材といったものが参画されるようになってきたという中にありまして、教職課程で学ぶ学生がこれらの活動に参加する取組といったものも広がりつつあるといった状況でございます。

 こちら、特別部会でもお示しをいたしましたある開放制大学の教員免許状の取得状況の推移に関する資料でございます。

 こちらの資料でございますけれども、本年1月に学校体験活動等の開設状況に関しまして、教職課程を置く国公私立大学及び指定教員養成機関に対して実施をしました調査の結果が概要になります。こちらの幼稚園でございますけれども、幼稚園教諭の教職課程における開設状況を見ますと、全体の約4分の1に相当する大学におきまして単位化された授業科目を開設しており、単位化された授業科目ではないけれども準ずる取組を行っている大学も合わせますと、全体の約57%の大学におきまして教育実習以外で学校現場を体験する取組といったものを実施しているところでございます。

 なお、右側の帯グラフになりますけれども、単位化された授業科目についての開設の方法でございますけれども、教育実習の単位の一部に代替できる形として教育実践科目の中で開設している大学よりも、大学独自科目といった形でこれらの科目を開設している大学のほうが多いといった状況がございます。また、資料下でございますが、活動内容に着目いたしますと、授業補助を行う学習指導員としての活動が比較的多い状況となってございます。

 こちら、小学校教諭の教職課程における開設状況となってございます。単位化された授業科目を開設している大学等につきましては約半数、単位化されていないが準ずる取組を行っている大学、こちらと合わせますと約4分の3の大学におきまして、教育実習以外で学校現場を体験する取組を実施しているというところでございます。小学校の教職課程につきましては、他の学校種に比べまして、比較的取組が進んでいる状況にあると言えるかと思います。

 こちら、中学校教諭における取組ということでございます。先ほど御覧いただきました幼稚園の状況とおおむね近い結果となってございます。

 最後でございます。高等学校についてでございますが、こちらも、先ほど御覧いただいた幼稚園あるいは中学校の状況とおおむね似通った状況ということでございます。

 こちらは、教育課程外の単位化されていない取組、多様なものがあるかと思いますので伺ってみましたところ、その事例についてまとめたものでございます。学校内の自習室で学習補助を行う取組であったり、大学学生の専門性を生かした学習支援を行う取組、あるいは教育委員会等と連携をいたしまして、学校教育活動全般を体験するような取組、特別支援学校の活動に参加する取組と、こういったものが単位化されていないものとして展開されているものの例として挙げられたところでございます。

 本調査に関連する資料、最後でございますけれども、こうした学びを教職科目として単位化することの利点、課題、こういったものについて各大学から回答のあった内容を御紹介をさせていただきます。

 まず、開設する利点ということでございますけれども、教育実習がより深い学びと経験の場になる、あるいは教育実習とは異なる視点から学校現場を経験することができる、学生の気づきを促し教員になるための準備を行うことができるといったような利点が挙げられております。

 他方、課題でございますが、受入れ校の確保、受入れのための調整、こういったものが挙げられているところでございます。

 また、大学が把握をしている学生の意見ということでございますけれども、モチベーションが高まった、あるいは視野が広がった、学びの意味を実感できた、課題が明確になった、さらには取組が進んだ現場の状況というものを知り、意欲が高まったというような声があった一方で、現場の厳しさを実感した、思うように対応できずに不安になった、順応性を身につける必要性を実感した、こういった声が上がったというところでございます。

 最後、一番下でございますけれども、教職科目として単位化していない大学に対しましてその理由を伺ったところ、カリキュラムに余裕がない、他の科目の中で同様の取組を行っている、単位によらないフレキシブルな運用を志向している、学校体験活動等の成果を踏まえて教育実習の調整をすることが困難である、自治体が実施するプログラムへの参加を促している、こういった回答があったというところでございます。

 次に、特別部会において示された検討の方向性における関連の記載について、改めて確認をさせていただきます。理論と実践を往還した教職課程を実現するための教育実習の実施時期、実施方法の見直しなどについて、学生の状況に応じた弾力的な運用にも配慮しつつ、教育実習における学習指導員等としての活動の位置づけなども含め、検討を行うと言われたところでございます。

 こちらは資質能力の構造化試案のイメージとなります。

 こうした特別部会での御議論も踏まえまして、本日の基本問題小委員会における御議論、御審議に際しまして、改めて検討の方向性といったものをお示しさせていただいているところでございます。本資料にございますとおり、自ら仮説や見通しを持って学校現場での実践に挑み、その結果を振り返るというプロセスにつきましては、学びの深まりや学習意欲の向上といったものにもつながるものであり、新たな教師の学びの姿を実現していく上で重視すべき視点であると考えられるところでございます。

 こうした点も踏まえまして、教職課程において新たな教師の学びの姿を実現するための基礎的な資質能力の育成といったものを図る観点から、教職課程の終盤に長期間まとめて教育実習を履修するこれまでの履修スタイルから、学校体験活動を効果的に活用して、学校現場の教育実践を段階的に経験する学びへと転換を図ることとしてはどうかといった検討の方向性をお示しさせていただいたところでございます。

 この検討の方向性について御審議いただくに当たりまして、想定される主な論点の例と、イメージで少しお示させていただいてございます。教職課程と学校現場の教育実践を相互に関連づけながら学びを深める取組の促進方策についてどう考えるか、あるいは大学・教育委員会の連携の在り方についてどう考えるか、教職課程の履修負担が過大なものとならないよう、教育実習の実施時期、実施方法の見直しと履修の適正化のバランス、さらには学校体験活動と教育実習の役割分担を踏まえたそれぞれの学習内容や実習期間の在り方についてどう考えるか、実習校の確保、専門分野の学修との調整といったものが困難であるなど、段階的に教育実践を体験する学びを実施することが困難な場合に配慮した柔軟な対応を図るといったことについてどう考えるかといったような内容を挙げさせていただいているところでございます。

 こちら、見直しの方向性のイメージ図でございます。また、こちら、現行の教職課程において修得が必要な教育実習科目の単位、学校種、職種別にまとめたものでございます。既に御紹介させていただいたとおりでございますが、現行の教職課程から教育実習の単位数の一部に学校体験活動を含むことができる取扱いとなってございます。

 こちら、コアカリキュラムの内容になっておりまして、教育実習の一部に学校体験活動を含む場合に、学校体験活動において目指す目標というものに下線を引いてございます。

 こちら、現行の教職課程の中に学校体験活動に係る科目を導入した際の示された実施イメージ図でございます。

 また、学校を取り巻く人材の全体的なイメージと関連する予算ということになってございます。

 こちら、1点目でございまして、次にもう一つの検討の方向性といたしまして、教職課程における貴重な現場経験の機会である介護等体験につきまして、近年、学校現場において特別支援教育の充実が強く求められている状況なども踏まえまして、特別支援教育の充実に資する観点から積極的に活用を図ることとしてはどうかといったことで内容を示させていただいているところでございます。

 なお、注意書きにございますが、介護等体験につきましては、小中学校の教諭の普通免許状の授与を受ける際に、7日間以上、障害者や高齢者に対する介護、介助、交流等の体験を行うものということでございますけれども、令和3年に見直しが行われまして、この7日間の内訳については、従来、社会福祉施設で5日間、特別支援学校で2日間体験するということが望ましいとされていたところ、特別支援学校における体験については必ず行うようにすることが望ましいとしながら、その日数の内訳については柔軟に設定して差し支えないというふうにされるとともに、体験する施設につきましても、特別支援学級を設置する小中学校等を対象とするなど、その対象範囲の拡大ということがなされたところでございます。

 この検討の方向性につきまして御審議いただくに当たりまして、想定される主な論点の例といたしまして、大学での学びと相互に関連づけながら、学校現場での教育実践を段階的に経験する取組といったものを推進していくということを念頭に、体験をより充実したものとするため、現行の教職課程から1単位以上を修得することとなりました特別の支援を必要とする児童等に対する理解、あるいは学校体験活動などの教職科目の学習と関連づけながら理解を深める取組の促進方策についてどう考えるのか、また、地域の小中学校において多くの障害のある児童生徒が学んでいる現状といったものを踏まえまして、特別支援学校のみならず、特別支援学級等での体験機会を充実させるといったことについてどう考えるのかといったような内容をお示しさせていただいているというところでございます。

 以降、関連のデータ等々を入れてございますので御参照いただければということと、あと、最後に中教審の答申、中学校の教育実習の単位数を増加させたときの方針、あるいは現行の教職課程の中に学校体験活動を導入することになりました中教審の答申、関連部分をアンダーラインを引いてお示しをしているところでございます。適宜御参照いただければと思います。

 事務局からは以上でございます。

【加治佐部会長】  どうも小畑室長、ありがとうございました。

 それでは、ヒアリングに入ってまいります。お三方の先生に御発表いただいた後に、全体を通して意見交換を行います。

 初めに、立命館大学の森田先生にお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。

【森田氏】  よろしくお願い申し上げます。立命館大学、森田でございます。本日、このような貴重な機会をいただきまして誠にありがとうございます。

 時間の関係ございますので、早速資料のほうを共有をさせていただき、スタートさせていただきたいというように思います。画面のほうよろしいでしょうか。

 それでは、スタートさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 本日は、立命館大学の教職課程、特に学部でございますが、中等教育の教員養成で行っています学校インターンシップと、それから、初等課程の分散型での教育実習ということでお話をさせていただければというように思っております。

 まず、本学の教員養成ですけれども、一応、総合大学ということで、16学部21の研究科がございますけれども、一つの特徴としましては、京都、それから滋賀県、そして大阪府と、府県をまたがるキャンパスで展開をしているということでございます。ただし、16学部ございますけれども、その中でも、御覧いただいて、今、青色で示しているところでございますが、現時点で教職課程を設置する学部は9学部ということでございます。そして、赤で記載している4学部につきましては、再課程認定のときを一つの契機にして教職課程を廃止をしているということでございますので、現在は9学部での教員養成ということになっております。

 産業社会学部というところの中で子ども社会専攻というものを置き、そちらのほうで小学校の教員養成もやっておりますので、現時点では、そちらの画面にございますような免許種での教員養成を行っているということでございます。

 履修者、簡単に御紹介させていただきますと、最近ですと全体、1年生から4年生まで合わせて大体2,000人程度ということになっています。2015年のときは3,300おりましたけれども、やはり全国的な傾向と同じように、本学でも履修者がかなり減ってきているという状況にございます。免許の取得者も同じように、10年ほど前から比べますと半数ぐらいに減ってきているということでございます。

 ただし、教員採用のところで見ますと、履修者の落ち込みと同じように落ち込んでいるわけではなくて、若干減りつつあるかなという状況でございますので、大体現役ですと100から120程度、それから一、二年、講師を行ってから採用されます既卒者で言いますと百四、五十名程度ということで推移をしている経過がございます。こちらのほう、およその概数でございますけれども、ただし、この一、二年ぐらいでは若干、履修者にも回復の傾向が見られるかなという傾向でございます。

 こういった中で幾つかのものを提示させていただきますけれども、御承知のとおり、学校体験の場ということで記載をさせていただきましたが、教育実習以外の学校体験をさせていただく場が非常に多様化してきているというのが現状かというふうに思います。

 2番目にございます学校インターシップということで、本学の場合は教職科目に位置づけて単位認定をする形で行っているというものでございます。

 同じように、丸の3にあります学校ボランティアということも行っています。御承知の先生方も多いかというふうに思いますが、割と私の知っている限り、関西圏の学校ですと、教育実習以外で様々に学生が学校に入れていただく機会というのは、かなり早い段階から進んでいるような気がしております。

 学校ボランティアにつきましては、募集の主体が、例えば教育委員会であったり、京都で言いますと教育局、いわゆる教育事務所、それから各学校だったり、様々な形での募集がありまして、必ずしも大学を通した募集でなくてもいいということになっていますので、なかなか全て大学でコントロールすることが難しい状況になっています。ですから、こちらのほうは学生のほうが任意に自分の意思で参加をしなさいということを促しておりまして、大学として単位として学生をつかまえて行っているのは、丸の2番にあります学校インターンシップいうもので単位認定を行っております。

 また、京都府、それから神戸市等、近隣の教育委員会様のほうが様々に学生を受け入れていただくプログラムを提供いただいております。そういった、例えば京都府教育委員会様が実施しております教員養成サポートセミナーというような事業と大学が連携しながらインターンシップを行うという、そういったこともございますので、これも、インターンシップの中も幾つかの種類があるということでございます。

 それから、介護等体験もありますし、それから教育委員会が行っているいわゆる教師塾、名称は様々でございますが、そういった中でも実地の研修等ございますので、こういった意味で、学生たちを見ておりますと、本当に様々な機会を利用して学校現場に関わっているというのが現状かというように思っています。

 インターンシップの概要ということですが、本学の場合、2004年度から本格的にスタートしております。当初は教職科目ではなくて、企業等含めた全体として国内インターンシップという科目がございましたので、そちらのほうから単位認定するところからスタートをして、2010年度の入学者、平成22年度の入学者以降は、教職科目の、現在で言うと独自科目、以前の免許法で言いますといわゆる又は科目という、その枠の中で単位認定をしてまいりました。

 こちらのほうもいろいろと検討はしてまいりましたけれども、学校インターシップ自体をどこに置くかということだったんですが、一応、本学では、一、二年次の辺りではボランティアとしていろいろなものに関わってみましょうということを奨励していると。そして、この学校インターンシップ単位認定するものについては3年次に配当をしておりまして、その後の4年次の教育実習につながっていくような流れを一応の履修モデルとして構想をしております。

 インターンシップのほう、事前事後指導を含めてということになりますけれども、研修の時間数によって3種類の科目を置いているということで、一番多いものについては年間100時間以上の現場体験を行うということでやっています。

 それから、右側のほうにあります長期分散型、短期集中型、これはよくある分け方かというように思いますけれども、年間通して毎週1回ずつ行くようなパターンから、短期、一番多いのは、9月の大学が休みで学校が動いているというときが一番多いんでございますが、こちらのほうで集中的に行うという、そういったものがございます。

 インターンシップの場合は、できるだけ特定の業務に偏るのではなくて、教師としての仕事を広く体験できるように大学のほうから依頼をさせていただいて、応募のあった学校に学生を送り出すような形を取っております。

 募集方法の詳細につきましては、資料のほうとして別途提示させていただいていますので、後ほど御参照いただければというように思います。

 こういった中で、簡単に流れを説明させていただきますと、まず受入れの希望校が集約されていきます。下のほうになりますけれども、開始当初はやはりなかなか学校現場様のほうも、学生を受け入れるといっても、どういった形で受け入れていいかというのがよく分からないということでいろいろなプログラム内容がございましたので、現時点では、次のページにございますような、我々の大学のほうから幾つかの活動の事例を提示させていただいて、その中から、できるだけ複数の内容を組み合わせた研修を提供してくださいという依頼の下で行っております。

 それから、その後、学生の許可、選考等を行っていきながら、事前指導なども行い、実際の研修を行っていくということでございます。研修期間中は研修日誌を作らさせて、しっかりと記録を残していくというようなこともさせております。

 およその参加者ですが、過去10年ほどやってみました。平成24年のところは配当改正が1年上がりましたので少し減っておりますけれども、大体、平均すると70名程度が、毎年、中等の免許を取得者として参加しているということでございます。

 それから、インターンシップに参加した学生の声ということで、これ、先ほどの御説明の中でも学生たちの声として紹介されたこととほぼ重なるんですけれども、最新の様々な学校の事情が分かったというようなことでありますとか、それから、今後、教職の勉強をよりしっかりと取り組んでいかないといけないというような意識が出てきたというようなことを、学生たちがかなり積極的な前向きなコメントを残してもらっているということでございます。

 こちらも同じように、こちらの学生は小学校で特別支援学級で行った学生ですけれども、同じように、かなり本人、いろいろな課題意識を持って大学に戻ってきてくれているというようなことでございます。こちらも同じような形ですので、また後ほど資料のほうを御覧いただければというふうに思っております。

 ざっと成果と課題ということで、多くの学生にとっては非常によい機会になっているということと、それから学校の経験と大学の学びを往還させようとする意識が芽生えていると、こういったところは確認をできるかなというふうに思いますし、それからインターンシップという単位としての期間が終わっても、同一の学校にボランティアとして残っていく学生も非常に多いかなということも確認はできております。

 ただ一方で、課題としまして、学校種ごとのバランスに配慮しながら、希望する学生のニーズや数に見合うだけの学校がどこまで確保できるかというところは少し課題があるかなという部分でございます。それから、もう一つは、やはり受け入れていただく学校の先生方の対応の仕方によって、やはりインターンシップ等の充実度というのは変わってくるという課題もありますので、その辺りをどういうふうに乗り越えていくのかというようなことでございます。

 また、こちらのほう、御参照ください。

 それから、初等課程のところでございますが、こちらのほうは、2年生のところで学校ボランティアというものに全学生を行かせております。キャンパス近隣の京都市立の小学校のほうにお世話になりまして、全員を行かせて、そして、その後、3年生のときに2週間の実習、そして4年生のときに2週間の実習という、こういう分散型で行っているということでございます。

 学校ボランティア等は先ほど申しましたとおりです。学校等によって少し受入れ時間数は変わってきますけれども、基本的には全学生が行うと。

 それから、3年生の実習につきましては、先ほど申しました京都市立の学校と本学の附属小学校どちらかにマッチングさせて実施をすると。それから、それを踏まえて4年生の実習につなげていくと、こういった流れになっております。

 学生の声ということでございます。少し時間の関係もございますので、また御覧いただければと思いますが、こちらのほうも、やはりインターンシップと同じように、やはり一度、3年生で行くということで、自分たちの学びを1回、現場に出た上で振り返りながら、さらに、自分の課題を意識してさらに学んでいかなきゃいけないというところに気づいて帰ってくる学生が非常に多いということがこういった学生の声からも分かる部分でございます。

 この辺り、成果、同じような形でございますけれども、インターンシップと同じように、学生が個々の段階で課題に気づいて、大学の学習で補いながら次の実習に向かう、そういったことができているということが挙げられておりますということです。ただ、その一方の若干の課題として、それぞれの実習期間が短くなってしまいますので、その辺りをどういうふうに乗り越えていくのかという課題でございます。

 それから、2つ目としまして、受け入れてもらう学校の先生方に、3年生のときの実習と4年生のときの実習の違いというものをどう理解いただくかというようなところも課題であるということ。

 それから、一番最後になりますけれども、大きな流れの中でやっていますので、例えば、留学をしたいなど、そんな希望を持っている学生については、こういった流れの中では履修ができないので、必然的に5年生までやってくださいということになりかねないという、この辺りの課題が挙げられております。

 最後になりますけれども、先ほど申しましたことの繰り返しになりますが、インターンシップや実習の分散型というのは、学生にとっての効果があるというのは我々としては確認できている部分であります。他方で、先ほど申しましたようないろいろな学びをする学生がおります。特に我々の大学のように、教育学部がなくて開放性の教員養成で学ぶ学生たちにとっては、いろいろな学部のプログラムが用意されていますので、そういったものに参加できなくなってしまうという難しさもありますので、一方での効果を確認できながら、なかなか、そちらのほうに全てのワークを一本化するということが難しいという部分がございます。

 それから、同じように、様々なものが併存しておりますので、その辺りの目的や内容の差異化というものをどう明確にしていくのかという課題。そして、4つ目として、それぞれの自治体や学校によって若干受入れ方法が異なっておりますので、この辺りにどういうふうに対応していくのかというのは大学としての課題も挙がっております。

 最後になりますけれども、先ほどの介護等体験等も含めまして、いろいろな形で学校で活動する学生が増えているんですけれども、逆に言いますと、これは大学によっても方法が異なりますから、受け入れていただく学校現場のほうも、なかなか、それぞれの大学の活動内容に区別しながら指導するということが非常に大変になっているのではないかなというところが推測されますので、学校現場、教育委員会等と大学との理解、合意形成を図っていくことが必要ではないかと、そういった現状でも確認をされているということでございます。

 少し急ぎの発表になりましたけれども、御清聴どうもありがとうございました。以上でございます。

【加治佐部会長】  どうも、森田先生、ありがとうございました。

 それでは、続きまして、北海道教育大学の浅利先生と山中先生、御発表をお願いいたします。

【浅利氏】  こんにちは。北海道教育大学釧路校のキャンパス長の浅利でございます。本日は、北海道教育大学の教員養成の大きな特徴であるところの学校現場体型実習と教育実践力向上CBTについて御報告する機会を与えていただき、誠にありがとうございます。

 まず、学校現場体験について私のほうから、続いて、CBTに関しては、旭川校の山中先生のほうから御報告させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、最初のスライド、次のスライドを御覧ください。教育大学の釧路校におきましては、このように様々な学校現場体験実習を実施しております。釧路校のある道東地域には、もともと僻地小規模校が数多く存在していましたが、都市部においても人口減少に伴う小規模化が急速に進みまして、義務教育学校あるいは小中併置校が増加する傾向にあります。また、教員の流出も多く、地域に定着する教員が育たない状況もあります。さらに、教員数の少ない小規模学校におきましては、若手の教員であっても1人で多くの役割を担当しなければならない。

 これらの教育課題がございまして、これらの地域ニーズ、教育課題に応えるために、釧路校におきましては、2019年に教育課程を改組しまして、小、中、高、特支、複数免許取得の奨励、地域学習の充実、教育実践力の向上などを目指す地域学校教育実践専攻を発足させました。本日は、この釧路校の取組について御紹介させていただきたいと思っております。

 次のスライド……。最初のそのスライドで。すいません。戻してください。

 この中で、いろいろな様々な実習の中で、特に、今日は、4つの特徴的な実習について中心に説明させていただきたいと思います。1つ目は、1年生の5月に実施する新入生研修です。それから、2つ目としては、2年生の夏休みに実施する基礎実習。それから、3つ目としては、1年の前期の学校体験から始まり、1年の後期、2年の前期と続く教育フィールド研究Ⅰ・Ⅱについてです。そして、最後には、選択科目ですが、僻地校体験実習の1から3について御紹介させていただきたいと思います。

 次のスライドを御覧いただきたいと思います。今申し上げました特徴的な実習の1から3、すなわち、新入生研修、学校体験、教育フィールド研究Ⅰ・Ⅱ、基礎実習はいずれも必修科目です。周辺的参加から教壇実習へと段階的にステップアップしていくように工夫しております。すなわち、まず、新入生制研修は、1年生の5月のときに、1日ですが、道東地域の僻地校に学校訪問をして、そこで感動体験、子供たちと触れ合う中で教師になりたいという気持ちを強くする実習となっています。

 それから、次に、1年時の前期から学校体験、それから、教育フィールド研究Ⅰ、教育フィールド研究Ⅱと2年の前期までかけて進むのですが、段階的に、遠足や運動会など学校行事の補助や手伝い、それから、図書の整理、カダン、授業観察で子供理解、そして、最後、3番目として、基礎実習におきましては、3年生の主免実習に一緒に2年生が参加することによって、主免実習に対する極めて強い動機づけが予定されております。

 それらの形で実習プログラムを構成していますが、さらに具体的に見ていきたいと思いますので、次のスライドを御覧ください。まず、特徴の1として挙げさせていただきたいのは新入生研修です。これは、そこにありますように、僻地校の訪問が多くの学生にとっては初めてなので、そこにショックを受けるということです。

 それから、児童・生徒と触れ合うことによって、『二十四の瞳』のような感動体験を味わうことができる。例えば、バスで帰るときに、子供たちが「また来てね」と叫びながら追っていくような姿を見た学生たちは、強く先生になりたいという意識を持つようになります。自由記述のアンケートからもうかがえますように、僻地校で教員として働いてみたいという気持ちが大きくなった等々、その教職に対する強い意識が学生の自由記述からかいま見られるところです。

 次のスライドを御覧いただきたいと思います。特徴の2として挙げたいのは基礎実習です。これは2年生の基礎実習、1週間ですが、実はこれは3年生の主免実習と同時期に開催します。3年生の主免実習の最後の1週間に2年生の基礎実習を充てることになっています。そのことによって、3年生の主免実習の最後の1週間というのは、研究事業をつくる、そのプロセスを2年生も一緒に経験することができる。言わば体系的な事前指導というような位置づけで、翌年の主免実習に対する強いイメージと意欲を持つことがうかがわれています。

 この主免実習と同時に開くという実施方式は、実は、学校現場から提案していただいたものであって、学校現場もこの実習を負担として捉えるというよりもむしろ、よりよい教員養成の在り方を大学と一緒に考えてくれるというようなスタンスを持って臨んでいただいているところが釧路校の非常に大きな強みだと思っております。

 次のスライドを御覧ください。教育フィールド研究なんですが、これは1年の前期に学校体験、1年の後期に教育フィールド研究Ⅰ、それから、2年の前期に教育フィールド研究Ⅱという形で、市内の小中学校に、公立学校のほうに学生を派遣します。

 余談ですが、それがバスで行くときの図ですけれども、今年は、コロナで密を排除するために、大変多くのバスをチャーターしましたが、毎週金曜日に行くんですが、フィールド研究Ⅰ・Ⅱがあって、3年生が主免実習で、4年生も副免実習なんかがあったりすると、金曜日には大学に誰も学生がいないような状況もあったりするぐらいの状況になってきます。

 学校体験、フィールド研究を通じて、まず最初には、学生は、要するに、さっき言ったように、行事を通じて学校現場を体験することができます。教師の教壇、多くの1年生にとっては教師が授業するところしか見てないわけですが、それについては、授業以外のところでの教師の役割ですとか、そういうものについても経験することができます。

 その結果、自由記述のアンケート、次のスライドを御覧いただきたいと思いますけれども、そこにもかいま見られるところで、授業以外の教師の仕事にも触れさせていただいたという声のほかに、大学で学んだ理論を小学校での実践につなげることができた、先生がやっていたことはどういうことなのか考え直したと大学の授業との往還について言及する記述も多く見られるところです。

 また、学校現場からも、大学の先生が活動の様子を見に来てくださっていますとの好意的なコメントを寄せています。このコメントにありますように、学校も、1年生から3年生の教育実習、主免実習に至るまで学生を見ていただいておりますので、学生の成長を、一人一人を大学と一緒に見守る中で、協働して教員養成に取り組んでいるというのが実態でございます。

 最後に、僻地校体験実習について御紹介させていただきます。スライドをもう一枚めくってください。これは僻地に学生が一、二週間、住むところが問題なんですが、学校側の好意で、使っていない教員住宅ですとか地域の施設とか、そこに一、二週間住み込みながら僻地を体験します。その中で少人数の子供たちや地域の人たちと密接な触れ合いをする中、それから、共同生活を通して学びを深めることによって、教職意識が非常に向上するということが有益であるということが報告されております。そこにアンケート等も御紹介されていますので、御覧いただければと思います。

 時間もないので、これで終わりますが、学校現場体験の実習によって教育実現を目指す釧路校の取組は、まだまだ改善の余地があると思いますが、今申し上げたように、地域と連携しながらそういうような取組を進めているところでございます。

 本日はどうも御清聴ありがとうございました。引き続き、山中先生のほうでお願いいたします。

【加治佐部会長】  山中先生、ちょっと声が聞こえておりませんが。

【山中氏】  聞こえますでしょうか。

【加治佐部会長】  はい。今、聞こえます。どうぞ。

【山中氏】  失礼いたしました。

 次に、教育実践力向上CBTの教職課程での活用状況につきまして、北海道教育大学旭川校の山中が説明いたします。どうぞよろしくお願いいたします。

 画面の左下に示しますように、学校現場での教師の子供との関わり方は、1つの決まった法則で成立するものではなくて、臨機応変に対応する必要があると考えています。そのような難しさが学生の教員志望の低下の要因の1つだと言えます。この課題に対して、本学では、学生が意欲と自信にあふれた豊かな教育実習を通して、経験主義を超えた普遍的な指導方法を習得するために、学校現場で起こり得る実践場面を題材とした問題に取り組む教育実践力向上CBTを開発いたしました。

 CBTはComputer Based Testingの略ですが、本学では、トレーニングとしての機能も併せて持たせています。画面右側に示しますように、学生が4年間の学びのうち、テスティングとして教育実習前に実習で必要となる基本的な法令や指導方法、実際の場面で求められるにふさわしい対応などを確認します。

 トレーニングとしては、ガイダンスをきっかけとして、学生自身がこれまでの学びをチェックし、CBT検定に向けて自学、実習を進めます。検定後には、検定で明らかになった苦手な内容について学び直しを行い、実践水準や意欲の向上を図った上で実習に臨みます。

 実習終了後には、課題解決型の事業である学校臨床研究で、実習での課題の解決を図りながら、CBT問題で示される内容の本質的な諸相への気づきを生み、実践の選択肢を拡大させると同時に、学生自身が自己を見詰め直し、自分の強みやよさを見極めながら、教師になるための学びをより豊かにしていきます。

 CBTで扱う問題は、基礎編、応用編、発展編を合わせて1,052問あります。内容は教師論、学級経営、学習指導、生徒指導などで構成され、学校現場でのあらゆる場面での求められる対応をカバーしており、中教審本特別部会で議論されている教師に求められる資質・能力の再整理の内容とリンクしています。問題作成者は、長年学校現場や行政での経験がある、学校臨床研究を担当している教諭です。また、扱う問題につきましては、教育実習受入れ校に対してCBT問題集を配付し、内容の理解を求めた上でアンケートを実施し、その内容を反映するように随時更新しています。さらに、特別支援教育や感染症対策など今日的な課題に対応するために、専門家からのアドバイスを受けながら、問題を追加しています。

 次に、学校臨床研究における教育実践力向上CBTの活用について詳しく説明いたします。学校臨床研究は3年生を対象に、画面の左下に示しますように、拠点校などで実際に行われている授業を視聴し、授業者とのオンラインによる交流などを通して新たに見つけた課題の解決を目指した授業研究や省察活動を行い、画面の右上に示します、段階を見ながら実践に必要な知見のさらなる習得及び能力の一層の伸長を図るようにしていく。このような学校現場での実際を扱いながら、学習指導や生徒指導など関連するCBTの問題を位置づけ、問題で示された選択肢以外の内容を考え、ふさわしい対応の選択肢を拡大するようにしています。

 画面左上に示しますのは、学習指導において子供が全員参加することを求めた場面での問題です。「発問に対して一部の児童・生徒しか反応しないときの対応としてふさわしくないものを1つ選びなさい」という問題に対して、正答はアの「全員が拒否するまでいつまでも待つ」になります。これを選択することは難しいことではありません。常識的に判断できるものです。学校臨床研究では、なぜふさわしくない対応なのかを考えた上で、ふさわしい対応について確認します。

 また、学生自身の教育実習での実践で、そのとき自分はどのような対応をしたのか、なぜそのような対応をしたのか、そのときの子供の反応はどうだったのかを想起し、話合いを通してその妥当性を検討します。それによって、実習のときには無意識だった学生自身や指導教諭の対応が、理論や授業感に裏打ちされた価値のある行為だったことに気づくことになります。この気づきが子供一人一人の学びを最大限に引き出し、主体的な学びを支援する伴走者としての教師の役割といった、本質的な諸相への気づきをつなげ、新たな実践の試行や、ほかの学習への主体的、能動的な学びに向かうことが期待できます。

 CBTと授業との連携による教師の実践指導力の形成事例として、学生のアンケート結果で説明いたします。左側に示しますCBTに関する内容で、「教育実習への心構えができたか」では9割近く、「指導上求められる基礎的な知識や考え方の獲得」では8割近くの学生が肯定的に回答しています。また、右側に示します学校臨床研究に関する内容では、課題設定力の向上の手応えや課題解決力の向上の手応えについて、9割を超える学生が肯定的に回答しています。CBTを活用する前の学校臨床研究における同じ内容の質問に比べて、肯定的な回答が増加していることから、CBTとの相乗効果がうかがえます。

 自由記述では、「身につけて実践して改良するという考え方を持って実習を望むことができた」のように、教育現場で課題解決に必要な能力の獲得について実感したものや、「同じ課題意識を持つ仲間とともに追求することで、1人で考えるよりもいろいろな角度から見ることができ、自分のシェアが広がったように感じる」のように、他者との対話を通して、多面的な視点から考えを深めることに手応えを感じたといったものがありました。

 このような学びの成果は、複雑で不確実な要素を多様に含む学校現場で、どのように判断し対応することが求められるかを1人で悩み考えるのではなく、協働的に解決を図るといった現場の教師に求められる資質を身につけることにつながったと考えられます。詳しい成果の内容は、今月発刊いたしました書籍にもまとめて、全国の教員養成に携わる関係者で共有できるようにしてあります。

 CTに対する学生の評価での自由記述では、実習に必要な学びへの動機づけとして捉えたものや、「実際に学校現場で実施をしているときにも、どんな対応をするべきかということがより明確になった」のように、実習に必要な実践方法をイメージできたもの、また、普遍的な実践理論の獲得に向けた意識化につながるものがありました。これらは、学生がCBT問題から現場で起こり得る複雑な事象を捉え、実習に向けての自身の課題の自覚につなげ、そして、課題の克服に向けたトレーニングを通して、自身の実践水準や意欲の向上、ひいては教育実習の質保証につながるものだと考えており、CBTの活用が教員養成の質の向上に大きな役割を果たしていると考えています。

 今後は、これらの学びの成果を学校での体験活動で最大限発揮できるようにし、学校現場で即戦力となる教師を育成するために、実習と大学での学びをつなぐ役割として、教職科目などとの連携を一層深めていくことが必要であると考えます。

 ここまで、本学における教育フィールド研究の取組と教育実践力向上CBTの活用について説明いたしました。教員養成段階において、自ら仮説や見通しを持って学校現場での実践に挑み、その結果を振り返る新たな教師の学びの姿の実現を目指して、今後とも学びを充実させていただきます。

 御清聴ありがとうございました。

【加治佐部会長】  浅利先生、山中先生、本当にどうもありがとうございました。

 それでは、これから、全体を通しまして質疑応答と意見交換を行ってまいります。挙手のボタンを押していただきたいと思いますが、いかがですか。まずは、4人の方ですね。5人ですね。順番を申し上げます。押される方は押してください。よろしいですか。それでは、順番を申し上げます。坂越委員、木村委員、戸ヶ﨑委員、橋本委員、益川委員、松田悠介委員、それから、中原委員、森山委員ですね。もう4時半になろうとしていますので、特に、委員からの質問と御意見はできるだけ簡潔にお願いいたします。

 それでは、まず、木村委員、お願いいたします。

【木村委員】  私からよろしいですか。木村からよろしいですか。

【加治佐部会長】  木村先生、どうぞ。

【木村委員】  分かりました。失礼いたします。

 3人の先生方、御発表ありがとうございました。教育効果も含め分かりやすく説明していただき、大変よく理解できました。

 教育実習等を経験することによって教育志望者が増えることはよく耳にしてきました。教職を体験的に学ぶことで志願者が増えることは大いに結構なことなのですが、一方で、教育実習前まではどのような学びをしてきたのだろうかという一種疑問のようなものがずっと生じていました。山中先生の御発表から、教育実習までの学びにおいて、例えば、主体的・対話的で深い学びや、ICTを活用した個別最適な学びと協働的な学びなど、学生たちの学びの姿、在り方を目的とした、簡単に言うと、学ぶ内容を学生自身が使いながら身につけていくという、そういう教育活動の展開が教育実習または体験活動の前にあることで、そこに向かう学生は自ら仮説や見通しを持って体験等に臨めたり、結果をリフレクションしたりできるんだろうというふうなことを今思った次第でした。

 一方で、私の耳に入ることとしては、先ほど感想の中にもあったんですが、教育実習等様々な学校体験を通して、現場教員との関わりが学生は増えてきます。その中で、現職教員からはネガティブな情報もたくさん入ってきて、教職屋が心が折れるという一方でのエピソードもよく聞きます。

 これは森田先生、浅利先生からのお話にあったんですけれども、学生自身が学校現場で出会うポジティブな情報もネガティブな情報も自分なりに整理、判断できるようにしていくということがとても大切で、そういう視点から言うと、大学と学校現場の協働は重要になるのかなというふうにも思います。

 一方で、こういうのが全国的に広がると、学校現場はどういう状況になるんだろうかというようなことも考えました。学校現場は確かにいいこともたくさんあるんですが、マンパワーが入ってきて、若い人が入ってきて、いいこともたくさんあるんですが、そこで指導する先生方の負担は間違いなく増える。随分、地域性はいろいろなところが出てくるのではないかなというふうに思います。仮にこれを展開するとすれば、学校の先生方が目的や方法を一定理解しながらできるということをしていかないと、それはもちろん、学校現場で行けば、学生たちは子供たちとの関わりを中心に意欲が高まると思いますが、大学の仕事と学校現場に任せる仕事の折り合いというんでしょうか、そういうところには、いささかどういうふうに展開するだろうかということを思いました。

 最後にですが、出会う学校現場の先生たちが教職の未来に明るさを持てるような、そういう施策というのは、ここでは関係ありませんが、国には大いに実行していっていただきたいというふうに思いました。

 私からは以上です。

【加治佐部会長】  森田先生、浅利先生、山中先生、恐らくお答えになられることがあると思いますが、時間も限られておりますので、たくさんの方からも手も挙がっておりますので、もう少し質問や御意見をお伺いしてから、またお答えいただきたいと思います。

 それでは、坂越先生、お願いします。

【坂越委員】  御三人の発表ありがとうございます。簡潔に、感想めいたことを1つと、質問を1つです。

 北海道教育大学さんの2つの取組は本当にすばらしくて、すごく先進的なんですよね。ただ、これは、小学校教員というか、そういう教員養成大学として、そこに特化した仕組みとしてはすごくすばらしいんですけれども、これがまた、ある意味、今言われているような多様な人材を小学校も含めたところに取り込もうということとこれはどういうふうに兼ね合いをしたらいいのかなというのがちょっとここは難しいなというふうに思いました。本当にすばらし過ぎて、先走り過ぎてということです。

 もう一つは、森田先生の質問になるかなと思うんですけれども、こういう話をするときに必ず、先ほどとつながりますけれども、目的要請のところと、それから、そうじゃない開放性のところの違いといいますか、大学のミッションと学部学科のミッションがぴしっと一致しているような北海道教育大学さんなんかは、すごくいいと思うんですよね。ただ、他学部なんかで、また違うミッションで学生を養成しているようなところ、具体的に言うと、例えば、他学部の学生をこういうボランティアとかフィールドに出すときのお世話はどこがされるのかなとか、それに対して、その他学部の教員がどれぐらいかかるのかなと。そんなところが少しお聞きしたいところです。

 以上です。

【加治佐部会長】  戸ヶ﨑委員までお伺いして、お答えいただきたいと思います。戸ヶ﨑委員、お願いします。

【戸ヶ﨑委員】  3人の御発表、大変勉強になりました。ありがとうございました。

 学校現場に近い立場として、大きく3点、短めに申し上げたいと思います。1つは、教育実習の在り方ということで、先ほど木村委員の御意見にもありましたけれども、現状は、教育委員会はともかくとして、多くの学校では、正直あまり歓迎されていないというのが本音ではないかなというふうに思います。卒業生であるということが多いので、受け入れているという現状もあるのかなと。また、実習先の学校がどのような学校なのかということで、その後の教職に対するイメージ等も大きく左右されてしまうという可能性もあるのかなと思います。

 また、3年生、さらには4年生で集中的に実習をするという方法が、ある意味、先ほどありました理論と実践を往還した教育課程といった観点から本当にふさわしいものなのかどうかということの一考の余地があるのかなというふうに思います。1年次から、多様な学校体験活動、それも複数の学校で活動を充実させることで、これまで行われてきた教育実習の役割の、最近の経済学の用語で言うところの補完的代替と、そういったものを果たせるのではないかなというふうに思います。これが1点です。

 それから2点目は、特別支援教育の充実に資する介護体験ということですけども、この件については、特支学校、また特別支援学級、社会福祉施設、介護体験などが入っているわけですけれども、今後はぜひ関連のNPOなどとも連携した単位の取得なども考えられるのではないかなというふうに思っています。それに関してですけれども、これは特別支援教育に限らず、教育関連の企業とかゼミ生が一体となって、教師だけでなく、同時に教育関連のベンチャーをも養成するようなものもあっていいのではないかと。そのようなゼミの中で、学生のうちに様々な体験することもできますし、逆にそのようなゼミを経て教師になっていくということになれば、まさに社会の変化する動きを学校に取り入れるというマインドを持った教師が、学校、大学、企業などと積極的に組んで、ソサエティー5.0の時代に見合った、言うならばイノベーティブな教育の様々なアクションを起こしてくれるものというふうに期待をしたいなと思います。

 最後、3点目、これはちょっと今までにないことではあるんですけれども、初任者教員の学生の指導という観点です。初任者の1年目というのは、私、現状を見ていると、担任は持たないで、校務分掌にも配慮して、まさに実務課のインターンシップ教員として、学校内でOJTを通して様々な体験と貢献をしていくのがよいというふうに思っています。その際、学校体験活動をする学生を指導する役割を初任者に持たせるというのも一考なのかなというふうに思っています。それは、教育でよく言う、教うるは学ぶの半ばなりという言葉にあるように、また、あの有名なラーニングピラミッドの話でも有名なように、他者に教えるというプロセスを通しながら、自問自答として自身の学び、それを理解を深め成長するような機会にもなり得るのではないかなと。それをもって初任者研修の一環とするというようなことも考えられるのかなというふうに思います。

 長くなりましたが、以上です。

【加治佐部会長】  分かりました。それでは、今お三方から様々な御意見いただきましたが、森田先生、浅利先生、山中先生、全てじゃなくても結構ですので、特に御関心持たれた、あるいは明確に答えられるとか、そういうことを中心に、ちょっと簡潔にお答えいただきたいと思うんですが、まず、森田先生、お願いします。

【森田氏】  よろしくお願いいたします。

 まず、坂越先生から御質問いただいた件ですけれども、本学の場合は、いわゆる共通開設に当たるような科目として開設していますので、いわゆる全学的な組織の教職センターというところに関連する教員が担当していると。3年生のときに、我々のところは、教職履修者に対して、教職版のゼミのような演習を独自科目として置いております。ですから、20名程度の少人数で担当教員が主導していく体制にしていますので、その教員がこういった学生たちの面倒なんかを見て、そのまま教育実習の指導にも持ち上がっていくというような構造で考えているということでございます。

 まず、以上でございます。

【加治佐部会長】  それでは、浅利先生、お願いします。

【浅利氏】  浅利です。いろいろな御指摘ありがとうございます。

 多岐にわたるのでなかなかお答えできないところがありますが、歓迎されるのかと、学校現場にとっては大変じゃないかという点について、若干ちょっとお話しさせていただきたいと思います。

 これは20年前ぐらいだと思うんですけど、当初始めたときは、やっぱり学校現場も受け入れるのに大変抵抗がありました。そういう中で、ですから、先ほどちょっと触れさせていただきましたけれども、環境整備だとか学校業務のお手伝い、いわゆる戦力として、そういうようなところを中心に受け入れていただいたという経緯がございます。

 その中で、いろいろとやっていく中で、やっぱり大学の学校現場のほうも、もうちょっと学生をきちっと指導したいという意見の先生方も出てきていただきましたし、学生のほうからも、下働きばっかりさせられるというような不満も出たりもして、いろいろ改革を試行錯誤しながら続けてきました。その中で、実は10年ほど前に、単位の問題もあって少し減らしたんですけど、そのときに、学校現場からむしろ困ると。今までいろんな当てにしていたのが、来れなくなったらすごく困るという御指摘いただきまして、それで一部、学校体験と先ほど御紹介しましたけど、そういうものを取り入れたという経緯もございます。

 あと、学校現場のあれからいうと、学校体験と教育フィールド研究、1年生と2年生セットになって行っていますので、2年生が1年生に指導する形になって、学校としてのやることは半減されるといいますか、そういうような見方をする中で、要するに共同的な学びといいますか、2年生から1年生を指導する中で、学校としては、それでもやっぱり負担だと思いますが、負担感なく、それから、一定図書の整備だとか体力測定だとか遠足だとか、そういう補助的な任務としてむしろ必要とされているところもあって、ウィン・ウィンとまで言えるかどうか分かりませんが、やっぱりいろんな道を模索しながら、現場と対応しながら、今あるような形をある程度つくり上げてきたということです。一朝一夕に当然できたわけではなくて、そういうような形を繰り返しながらいろいろと工夫して今現状に至っているというところでございます。

 ちょっとお答えになっているかどうか分かりませんが、実情として、そういうことで報告させていただきます。

【加治佐部会長】  山中先生、何かございますか。よろしくお願いします。

【山中氏】  山中でございます。

 先ほど坂越先生のほうから御指摘ありました、学校現場で多様な人材の輩出等に応じるということですけども、本学で行っている学校臨床研究という授業では、学生は非常に多様な意見を持っているなという実感をしております。様々な教科専攻の学生が1つのクラスに入っているわけですけども、そこである場面を議論するわけですけども、1つの考えに終息することなく、例えばある子供に対してはこういうアプローチの仕方があるけども、こういった子にはこういったアプローチが必要じゃないかというようなことで、幅広く、こういった対応が求められるねということで授業を終えるようにしていますので、様々な状況に対応できるというようなことにするように私も意識しながら、学校で基礎研究の授業では対応することにしています。

 また、受入れ校の負担ということでもお話がありましたけども、私も小学校教員の経験が18年あります。たくさんの学生を受け入れてまいりましたが、一言で言いますと、非常にありがたかったです。小学校担任として、やっぱり様々な子供がいる中で1つの見方しかできない中で、学生さんが気付くこともたくさんありました。そのことで救われた子供たちもたくさんいたなということで、先ほど来からフィフティーフィフティー、ギブ・アンド・テイクというところまではいかないかもしれないんですけど、受入れに対しては、負担よりもありがたさのほうを非常に感じたという、私個人の感想も持っております。

 以上です。

【加治佐部会長】  ありがとうございました。

 それでは、委員の方、お願いします。

 橋本委員、お願いします。

【橋本委員】  ありがとうございます。京都府の橋本です。

 まず、2つの大学のほうからは、学校インターンシップを含め、様々な教育、教員養成の具体的な取組、詳細に報告いただきまして、ありがとうございました。

 今日の論点整理に示されました、教育実習以外に早い段階から学校現場に関わる体験等の機会を設けようとする、このことは、学校のリアルな状況や、また教職の魅力、そして場を知る、また様々な気づきを与えられるという意味で、総論としてはよく理解ができる方向かなというふうに思います。

 ただし、教職課程に位置づけて厳格に運用するとなると、かなりいろんな課題があるんじゃないかなというふうに思いますので、先ほどの大学からの報告も踏まえまして、大きく4点ほど、主に受入れ側の立場からですけども、意見を申し上げたいと思います。

 最初に、現在どの教育委員会も人材確保に大変苦労しておりますけども、新たな取組の方向によって、かえって教員志願者を逃すことにならないかという懸念が少しあります。現在の大学生、大変忙しくて、我々が実施しております様々な教員養成の事業に関しましても、前回も申し上げたんですけど、受講の負担が重いことから、希望者のほとんどが教員を目指す大変気持ちの強い学生ばかりになってきて、教員になるかどうか迷っている学生、あるいは、取りあえずまずは免許を取得しておこうと、こういった層の志願者がかなり減少してきているように感じております。

 したがいまして、早い時期からインターンシップ等を教職課程に位置づけるといったことは、教員を強く希望する層には有効だと思うんですけども、そうでない層にとっては、免許取得に向かわせるハードルをさらに高めかねないな、そういう可能性があるように感じました。論点の整理の中にも、履修負担が過度とならないようにとありますけども、この点、大変重要かなと思います。

 それから2点目なんですが、求められる資質の校種間に差があるんじゃないかなという点です。小学校と異なりまして、中高、特に高等学校については、現場体験ももちろん有益ではありますけども、どちらかというと教職ばかりに打ち込むような学生ではなくて、大学時代に様々な専門分野の研究や部活動、アルバイトなども含めて、多方面の分野で深く取り組んできた経験というのが、先ほどの多様な人材という話もありましたけども、より重要じゃないかな、そんなふうに考えております。学校現場で、学校現場と異なる経験を豊かに積んできた学生が、最後、教育実習をやって、先生もいいかなと思って高校の教員になった、これは昔からそういう例は多いわけですけど、案外採用されてみますと、そうした先生のほうがより活躍をされているという話もよく聞きます。

 そういう意味において、どこまで高校の教員に、志願者に対しては、学校の現場体験に多くの時間を費やすのが適当なのか、この辺はちょっと校種間の差というものを考える必要があるんじゃないか、これが2点目です。

 3点目は、受入れ側の学校の課題です。先ほど来、いろいろ御意見ありましたけども、総じて言いますと、学生を学校現場に受け入れることで、業務補助など助かる面というのは確かにあるわけですけども、反面、ほったらかしにしておくわけにはいきませんので、負担と捉える可能性も否定はできないと思います。両面があると思います。

 実際に我々も大学と連携して取り組ませていただいている教員サポートセミナーについては、ここは受入れ校の教員に指導役もお願いしておりますので、その部分について加配という措置もした上で、学校現場で対応していただいております。

 それともう1つ、校種による文化のような差があるなと思います。学校のインターンシップ含め、学校現場での学生の活用については、小中学校、取りわけ小学校ではもうかなり一般的になっておりまして、恐らく小学校は比較的ウェルカムという姿勢の学校が多いんじゃないかと思います。それは、担任以外に、例えば教室で見守りのような形で担任と一緒に入っている、これだけでも助かるという面もありますし、業務の性格として補助的な内容のものが多いと、こういったことが背景にあるんじゃないかと思います。一方で、教科指導の専門性の高い高校においては、そのような文化がこれまであまりなくて、学生が学校現場に入ってくること自体に負担感を感じられるようなところもあるかなと思います。

 しかし、一方で、授業以外で積極的に学生を活用している高校で、自分の学校の現場の先生にもよい刺激となって学校の活性化につながっている、こんな話も聞きますので、要するに、これまでの文化がどう変わっていくかということと、校内体制の確保も含めて、負担を上回るような受益が感じられるか、ここがポイントではないかと思います。

【加治佐部会長】  橋本先生、大変申し訳ないんですが、時間が大分減っていますので、簡潔にお願いします。

【橋本委員】  簡単にちょっともう1点申し上げたいのが、教育委員会から見た課題です。

 教育委員会が学校現場と調整しながら大学に実習校を提供すると思うんですけども、かなり府県の大学設置状況で負担面に大きな差が出るなと思います。例えば、我々のような京都府、大学が多いわけですけど、他府県から京都に学んでいる学生が多く、そうした学生は、本府の教員になるならまだいいんですけども、相当多くの学生は他府県で教師をする。そんな中で、多くのインターンシップの場を提供するということに少し割り切れない思いというのが正直あります。

 こうした受入れをしようとすれば、かなり受入れのメリットが感じられないと、多くの人数の学生を受けるというのはしんどいんじゃないかなというふうに思いますし、もう1つ、同じ学校に、これも先ほどあったかもしれませんけど、複数の学校からインターンシップの依頼があった場合に、指導方法と各大学で依頼内容が異なる、こうしたことも受入れ側の学校からすると大変負担ですので、調整としてもなかなか難しいのかな、そんな思いがございます。

 以上です。

【加治佐部会長】  ありがとうございました。

 それでは、これから益川委員、松田委員、中原委員、森山委員、高橋委員にちょっと御発言いただきますけれども、全て受けられて、お答えできることがあれば、今日のプレゼンテーターの森田先生、浅利先生、山中先生にお答えをお願いしたいと思います。

 それで、もう10分余りしかありませんので、極めて厳しい状況なわけです。ですから、大変申し訳ないんですけど、予定していた内容の半分ぐらいか3分の1ぐらいで、ちょっと進ませていただきたいと思います。御協力をお願いします。

 ということで、益川委員、まずお願いします。

 益川さん、ミュートを解除されていません。益川先生、ちょっと聞こえないんですけど、どうしたんですか。益川先生、大変申し訳ないんですけど、なかなかちょっと難しいようですので、御意見、御質問は、またメールか何かでお寄せください。すいません。申し訳ないです。

 それでは、松田委員、お願いします。

【松田委員】  ありがとうございます。

 本当に木村委員と戸ヶ﨑委員がおっしゃったことを私も強く共感しますし賛同いたしました。

 木村委員のおっしゃっている、学校現場をより経験することによって、それこそ教職離れであったりだとかというのは本当に実態として起こっていると思います。特に、民間企業と学校現場、これ、両方の中で悩んでいる生徒なんかは、学校現場を経験すると、民間企業から学校教育改革に取り組んだほうがやりがいがあるしいいんじゃないかというふうに思って離れていく人たちは大変多くいますので、これは、これから教職課程を志している、もしくはいる学生に、実際にヒアリングであったり調査を行って、こういった長期化であったり期間を増やしていくことが本当に効果があるのか、求めているのかというところに声を傾けていくこと、耳を傾けていくことが大事なんじゃないかなと思っています。

 2点目の戸ヶ﨑委員おっしゃられていた民間企業、NPOでの体験を、ぜひとも実習であったり学校体験に組み込んでいくということは本当に大切だと思っておりまして、私、十数年前に、ラーニングフォールという学習支援の団体、これは経済的に困窮している子供たちに対して学習支援を行う団体で、学生を巻き込んで行っておったんですけれども、やはりこの場がすごくよくて、我々ビジョンをつくることに徹していたりだとか、あとは本当にしんどい状況に置かれている子供たちと向き合うのでビジョン設計が非常に進んでいったりですとか指導力が磨かれていくということが実際にありましたし、そこから教職をさらに志していきたい、教員になっていった人たちも大変多く輩出をしております。

 なので、こういった必ずしも全ての活動が、クオリティコントロールをどうするのかというところは問題としてあるかもしれませんけれども、こういったある程度教育委員会と既に連携をしているNPOであったりだとか民間企業も、1つ教育実習の場として含んでいくということが重要なんじゃないかなと。特に、教職課程の学生は、テクニカルな知識であったり指導力を磨くというのは本当に大切であるんですが、ビジョン設計がとても重要だと思うんですよね。学校現場が必ずしもビジョンを育んでいく場として最適だとは限らないので、そういった形で学校外の現場を見ていくと。こういった経験をした人材というのは、その後教員になっていくと、教員になってから、民間企業であったりNPOの連携の仕方であったりだとか性質が分かるので、連携が進んでいくということも全然あると思うんですよね。中長期的な視点を見ても、こういった学校外の体験というのはいいと思いますので、御提案させていただきたいと思っております。

 以上でございます。

【加治佐部会長】  ありがとうございました。

 それでは、中原委員、お願いします。

【中原委員】  今日御発表いただいた内容、非常にすばらしいなというふうに思いましたが、一方で現状と、将来のギャップをもう1度分析して、より包括的な見直しが必要なんじゃないかなと思います。長くなるので、短く言います。

 まず、やっぱりハードルが高い学生もいるなと思いますので、もっともっとハードルを下げて魅力を伝える事業を増やしていかなきゃならないということが、まず1点あるんじゃないかなというふうに思いました。

 あとは、実践的かつ理論的でもある教職課程の実現のため、資源の問題が一番大きいのかなと思います。初任者が教えると、先ほどアイデアがありましたが、4年生が3年生の面倒を見る。いろんな資源の確保の仕方があるんだと。その資源問題をやっぱり十分議論する必要があるんじゃないかなと思います。

 もう1つは、教職教育手法のアップデートです。今回、個別最適な学びと協働的な学びというものが子供の学びの中心だという話になりましたが、これはやはり教員が体験しておく、教員養成系大学においても教員を体験しておくというのは極めて大事な課題なんだと思います。これに関する見直しもやはり必要だと思います。

 あとは、内容に関するアップデートです。伝手も、ICT、教育格差の様々の問題を、今の教員養成系大学は扱えているのかどうかという点も、やはり本格的に見直していく必要があるんじゃないのかというふうに思いました。

 以上です。

【加治佐部会長】  ありがとうございました。

 それでは、森山委員、お願いします。

【森山委員】  失礼します。今日の報告の3名の先生方、御発表ありがとうございました。

 1点目は、橋本先生の御指摘にもありましたように、やはり大学において、学校現場のインターンシップとか教育実習とかボランティアとかという、いわゆる学校現場での体験を充実すればするほど、大変な時間的に、これによって、全体として大変な学生忙しくなるという、そういうところがあります。そういうところでは、やはり単位の実質化といいますか、開放性の場合の、そこにある程度カリキュラムの検討が必要なのではないかということを感じました。

 それと、加えて、学部の教職課程カリキュラムの柔軟性がやはり必要ではないかと。この2点を、今日先生方のお話を伺いながらすごく感じたところです。いわゆる基礎、基本、基盤を固めるという教職課程の学部の教職課程の要件ではありますけれども、そこからやっぱりある程度の検討がなされなければならないのではないかというふうに思いました。

 それから、もう1件だけお伝えします。森田先生の御報告にもありましたように、教員指導者の減少について、やはり大学として考えるということも必要だと思っています。あとで、もし加えて、また両先生方からもお話をいただければありがたいと思いますが、やはり教職課程を履修する学生が就活に入ってしまいますと、現在新たな魅力的な職業が多く出てきています。こちらが比較的採用の間口が広いということもあって、教員の前に就職が決まるというところも大きいわけです。積極的に教員がブラックだからとかという理由で回避するものはそれほど多くない印象ではありますが、これは教職課程を履修するかどうかを決める、いわゆる1、2年生の場合は、さらに新たな職業動向に敏感でありますので、結局教職課程履修者が経年的に減少が続いてしまうという。これに対処するには、やはり教職が21世紀にふさわしい力を備えた職業に転換する必要があるのではないかということを痛感いたしました。

 すいません、最後1点だけ、インターンシップ等について、やはり学校現場においては、北海道教育大学等の御報告にもございましたような系統的なものになっていないという、そういうことが実際にあると思います。学校では、当然慢性的な人手不足というか、そういうことに悩んでもいますし、そこに教職志望の学生がいれば、やはり1日でも、1人でも多くの学生にボランティアに来てほしいというのが実態だと思います。そういう意味では、やはり実効性の高い学校にするためには、あるいは学校ボランティアにするためには、校長先生等への研修を通して理解の徹底も図る必要があるんじゃないかということも感じたところです。御示唆いただければありがたいです。

 以上です。

【加治佐部会長】  それでは、最後に高橋委員、お願いします。

【高橋委員】  よろしくお願いします。ありがとうございました。

 お時間もありませんので、CBTのことに関して少しお尋ねしたいなと思うことがございました。

 今日の論点で、教育実践を段階的に経験するということでインターンシップとかを行う際に、やはり学校に迷惑、現場に負担が強いんじゃないのかというお話ありました。私自身も、学部低学年の学生と関わっておりますと、正直言ってこんな用語も知らないのかとか、こういう基本的なことも分からないのか、そこで現場に送ってしまっていいのだろうか、指導する時間が足りないなというふうに感じているときに、このCBTみたいな仕組みで、ある意味基礎基本をしっかり指導するということは非常に有効じゃないのかなというふうに思いました。

 実際にこの実践をしておりまして、特に学生が変わったなと、CBTで変わったなというようなことや、他大学への展開みたいなことも少しお話あったかもしれませんが、他大学の状況、どのような受けがあるというか、反響があるのかあたりについて教えていただきたいなと思っております。学部低学年のうちに現場に送るに当たって、やっぱりこういう基礎的な勉強をどこでやるのかというのは大事だと思っております。貴重な取組、ありがとうございました。

 以上です。

【加治佐部会長】  ありがとうございました。

 それでは、お三方にちょっと御発言いただきたいところではあるんですが、なかなかちょっと時間的に厳しいですので、これは事務局への相談ではあるんですけど、先ほどちょっと声が出ないアクシデントがありました益川先生を含めまして、まず、委員の方からちょっと足りなかったところの御質問、あるいは御意見、それとお三方のそれに対する回答なり御意見、こういうものを本当に簡潔で結構ですので、事務局のほうにメールで送っていただけませんか。今から話いただくと、まだかなり長くなって、かなり時間オーバーしそうですので、一応5時で終わるということになっておりますので、小畑室長、よろしいですか、それで。

【小畑教育人材政策課教育養成企画室長】  承りました。よろしくお願いいたします。

【加治佐部会長】  ということで、本日ちょっとイレギュラーになって大変申し訳ないんですが、そのようにお願いいたします。

 本当に森田先生、浅利先生、山中先生、大変有意義な御発表ありがとうございました。本日の議事は以上にいたしたいと思います。

 令和の日本型学校教育を担う教師の在り方につきましては、引き続き本基本問題小委員会を中心としながら検討を深めていきたいと思います。

 本日は、皆様、どうもありがとうございました。これで終わります。

 

―― 了 ――

 

<終了後に寄せられた御意見>

【益川委員】

 3件のご発表を踏まえ、今後の理論と実践の往還を重視した教職課程への転換に向けたコメント、意見を述べる。

学校現場ならびに学生の負担と、効果的で着実な基礎的な資質・能力の育成を図る観点から、学校現場体験の選択と集中が必要なのではないか。そして、ご発表の中や他の委員のコメントにもあったが、学校現場と大学側(学生側)双方がWINWINの関係を構築できる仕組みが必要ではないか。基礎的な資質・能力の育成のために、フラッグシップ大学の取り組みに挙げられているように教員志望性の「学習観・授業観」の転換が求められる。しかし観の転換は時間がかかる上に転換を求められる場面に遭遇する必要がある。この転換を4年間で実現するためには、学部1年生早期の段階から、新しい学習観・授業観のもとで実践されている学校で、教師の指導や、子供たちの学ぶ姿を参観できる機会がほしい。それによって、高校まで経験してきた学習観・授業観(現状まだ多くは古い観だと思われる)を「揺さぶり」、4年間でどのような教師を目指すのかの姿を見通せるようになってほしい。しかし、学校現場と大学側双方がWINWINとなる必要があるため、学校現場も「先生方の学び」につながるような関係を大学と構築し、大学知が学校現場に提供されたり、教育委員会による研究指定校が訪問先となるなどの工夫が必要であろう。そうすることで、学部学生も、現場教員も、互いに学びながら進んでいくことができる協働的な学びとなるだろう。ご発表や他の委員からも指摘があったが、1年生だけに限らず、多様な学年が関わることができると、多層的な学びが生じて、「生涯学び続ける教師」として良いスタートを切ることができるようになるのではないか。そして学年を重ねる中での学校インターンシップやボランティアも目標を持った実りあるものになるのではないか。

 

【安家委員】

養成大学での教育実習やインターンシップ、ボランティア活動などについて、各校の事例発表、様々な先行事例やアイディアなど参考になりました。やはり、現場での教育実習や体験が理論や演習の土台になることが重要であることを再認識しました。

時間の関係で意見の発表が難しい状況でしたので、幼稚園教諭教員免許受講者についての実態と意見を記します。

筆者は現在、梅花女子大学心理こども学部こども教育学科の客員教授を拝命しており、授業や実習などに関わる身であります。この経験から、この教員免許課程と保育士資格取得問題は本学だけの問題ではなく、多くの教員養成大学が抱える問題と感じています。

多くの養成大学で、幼稚園教諭の教員免許取得と共に保育士資格の取得が進められています。国では平成27年度より施行された子ども子育て支援法によって、全国的に認定こども園化が進み、公立幼稚園・保育所はもとより、全国私立幼稚園連合会傘下の約7500の園の半数以上の幼稚園が認定こども園化しています。

それら園では、必要な免許資格として「保育/教諭」が求められ、幼稚園免許と保育士資格の併有(加えて小学校教員免許取得希望者もいる)の必要があります。

幼稚園教諭免許については、当然のことではありますが文科省から厳格な単位取得が求められるのと同様に、厚労省からも保育士資格単位の厳格化が要求され、各養成大学では、両資格/免許の重複する単位取得によって授業履修が非常に窮屈になるなど、時間的に余裕がない状況です。同僚の大学教員たちの疲弊も気になります。

いざ現場に立った時に必要なスキルとして、子どもの関りや心情をとらえることは非常に需要ですが、実際に子どもとの関りが持てる機会は多くありません。また、インターンシップを単位化することや、ボランティアを推奨することなどは課程の履修が多いため物理的に難しく、結果的には大学生活の魅力や多様な学びが損なわれ、キャンパスライフが阻害されているのが現状です。

原因はそれだけではありませんが、高校の進路指導の際も幼稚園教諭や保育士、保育教諭は進路として魅力が損なわれ、担当の方も他の学種や職業を進めるような傾向にあると聞き及んでいます。現在顕在化している幼稚園教諭・保育士不足を加速させている一因とも考えられます。

小学校以上の他学種とは違った環境にある幼稚園や認定こども園です。部会の際にはなかなか議論がかみ合いにくい案件かとも思われますが、一意見として共有いただければ幸いです。


(総合教育政策局教育人材政策課)