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公立社会教育施設の所管の在り方等に関する生涯学習分科会における審議のまとめ

平成30年7月9日
中央教育審議会生涯学習分科会

はじめに~検討の背景~

○ 我が国は、少子化による人口減少、急速な高齢化、グローバル化、第4次産業革命の進展など大きな変革の中にあり、地域社会においても、地域経済の縮小や医療・介護の需給逼迫、財政の悪化、人と人とのつながりの希薄化による社会的孤立の拡大など、様々な課題に直面している。

○ 今後より多様化・複雑化する社会的課題を解決しつつ、新たな社会像を実現をするためには、地域の運営においても、「行政=サービスの提供者」、「住民=サービスの享受者」という二分論の役割分担によるのではなく、住民自らも担い手として主体的にかかわり、それぞれが多様な力を発揮しながらともに新しい価値を創造していくことが求められる。同時に、多様で複雑な社会的課題の解決のためには、行政分野の枠を超えた幅広い連携を強化することも必要である。

○ このような状況の中で、公民館、図書館、博物館等の公立社会教育施設には、一人一人の生涯にわたる学びを支援するという役割に加え、地域活性化・まちづくりの拠点、地域の防災拠点などとしての役割も強く期待されるようになっており、住民参加による課題解決や地域づくりの担い手の育成に向けて、住民の学習と活動を支援する機能を一層強化することが求められるようになっている。また、施設の設置・運営についても、例えば、過疎化や高齢化の著しい地域で社会教育施設と高齢者福祉施設の複合化が進んでいることに示されるように、複合的な課題により効果的に対応するため、社会教育行政部局とまちづくり、福祉・健康、産業振興等の他の行政部局、教育機関、企業、NPO等の多様な主体との連携を強化することが欠かせない状況となっている。

○ 現在、公立社会教育施設については、教育委員会の所管とすることが関連法令において定められているが、地方公共団体からの提案を踏まえ、「平成29年の地方からの提案等に関する対応方針」(平成29年12月26日閣議決定)において、公立博物館について、「まちづくり行政、観光行政等の他の行政分野との一体的な取組をより一層推進するため、地方公共団体の判断で条例により地方公共団体の長が所管することを可能とすることについて検討し、平成30 年中に結論を得る。その結果に基づいて必要な措置を講ずる」こととされた。

○ これらを踏まえ、公立博物館をはじめとする公立社会教育施設について、地方公共団体の判断で条例により地方公共団体の長が所管することを可能とすること等に関して、 専門的な見地から検討を行うため、平成30年2月、中央教育審議会生涯学習分科会の下に「公立社会教育施設の所管の在り方等に関するワーキンググループ(以下「WG」という。)を設置した。

○ WGでは、平成30年3月に文部科学大臣から中央教育審議会に対して行われた「人口減少時代の新しい地域づくりに向けた社会教育の振興方策について」の諮問も踏まえ、5月までの間に、6回の会議を開催し、17の関係機関から表明された意見も踏まえつつ、論点整理を行った。その論点整理を基に、中央教育審議会生涯学習分科会(以下「本分科会」という。)においてさらに検討を行い、以下のとおり審議のまとめを行うものである。

1.社会教育を教育委員会が所管していることについて

○ 戦後、地方における社会教育に関する事務は、政治的中立性や継続性・安定性の確保等の観点から、教育委員会の所管とされ、今日まで約70年の歴史を刻んできた。この間、公民館、図書館、博物館等の社会教育施設の充実と社会教育主事をはじめとする社会教育行政の推進体制の整備が図られ、社会教育は、学校教育以外の場における学習の機会を提供し、国民が自己の充実と生活の向上を図り、豊かな人生を送る上で大きく貢献するとともに、地域における「人づくり」を通じて社会の発展に寄与してきた。特に、学習活動を通じて、地域住民をつなげるとともに、地域の課題解決等に主体的に関わり、地域の持続的発展を支える人材を育ててきたことは、教育委員会が社会教育行政を所管することの強みが発揮された点と言える。

○ 今後、我が国においては、人口減少の進行や人生100年時代の到来、Society5.0に代表されるような社会の大きな変化が予想されている。こうした中で、個人の人生の充実のためにも、社会の持続的な発展のためにも、学びを通じて一人一人がその能力を不断に高め続けることが重要であり、誰もが生涯にわたり必要な学習を行い、その成果を個人の生活や地域での活動、職業等に生かすことのできる「生涯学習社会」実現への取組をより強固に進める必要がある。

○ そのためには、行政としても、国・地方を問わず、学校教育・社会教育の振興を通じた生涯学習社会の構築の取組をこれまで以上に強力に展開する必要がある。その際、(1)新学習指導要領において、子供たちが未来社会を切り拓くために必要な資質・能力とは何かを学校と社会が共有し相互に連携する「社会に開かれた教育課程」の実現を目指していることや、(2)平成29年の社会教育法改正により「地域学校協働活動」が新たに規定され、学校と地域の一層の連携が求められていること、さらには、(3)社会人の学び直しによる生涯を通じた能力の開発や、地域で心豊かに活動するための学び、多様な人々と共に生きる社会を作るための学び、高齢者が健康で自立して暮らしていくための学び等の充実が求められていることを踏まえれば、学校教育と社会教育との連携・融合を図りながら、横断的・総合的な視点で教育行政を展開していくことが一層重要と考えられる。

○ このような観点から、社会教育に関する事務については、今後とも教育委員会が所管することを基本とすべきと考える。教育基本法第17条に規定される教育振興基本計画の策定等を通じ、国・地方の双方において、学校教育・社会教育を通じた総合的な教育政策に今後一層注力することが求められる。

○ また、「はじめに」でも述べたように、これからの社会においては、地域の運営の在り方を、行政のみならず様々な団体や住民自身が主体的に参画し、知恵を出し合い責任を分かち合いながら進めるものに進化させることが求められる。このような地域を担う力を持った人づくりを進める上で社会教育の果たすべき役割は極めて大きく、今後、地方公共団体の長が所管する行政分野においても、社会教育行政とも密接に連携しつつ、その施策の中に学びを通じた人づくりの視点を明確に組み込んでいくことが重要と考えられる。

○ 社会教育を含めた教育の分野と地方公共団体の長の所管する他の行政分野との横断的な連携を効果的に図るためには、総合教育会議の活用が重要である。特に、総合教育会議の協議事項については、福祉部局と連携した総合的な放課後対策等を設定した例は見受けられるが、その他の社会教育に関する事項を設定している例が少ない現状にあり、同会議のより積極的な活用を通じ、分野を越えた連携による効果的な施策の実現や、あらゆる分野における住民の主体的な参加の促進につなげていくことが期待される。

2.今後の社会教育施設に求められる役割

○ 社会教育施設は、平成27年10月現在、全国に公民館が14,171施設(別に公民館類似施設が670施設)、図書館が3,331施設、博物館(博物館相当施設、博物館類似施設を含む)が5,690施設、青少年教育施設が941施設、女性教育施設が367施設存在し、地域住民に身近な施設として、大きな強みを持っている。歴史的にも、人が育ち、人がつながる拠点として、学習手法や学習領域等における豊富な蓄積と、貴重な教育財産を有し、地域における社会教育の拠点として機能してきた。

○ 近年においては、施設の管理に関して、施設の設置の目的を効果的に達成するための措置として、指定管理者制度が導入され、株式会社など民間事業者に管理を行わせることができることとなっており、各地方公共団体においてはこうした制度なども活用した柔軟な取組も行われるようになっている。

○ 一方で、社会教育施設の現状には厳しい意見もあり、少子化による人口減少、高齢化の急激な進展、地域経済の縮小等の社会情勢の急激な変化が進む中で、社会教育施設が真に地域の学習と活動の拠点として機能するためには、それぞれの施設が今後果たすべき役割を明確にするとともに、求められる役割を果たすために必要な具体的方策について制度面も含めて検討し、着実に実現していく必要がある。

○ さらに、今後の社会教育施設は、地域の学習と活動の拠点としてのみならず、住民主体の地域づくり、持続可能な共生社会の構築に向けた幅広い取組の拠点となる施設としても位置付けられるべきである。近年、社会における人と人とのつながりの重要性が見直されるとともに、例えば、新たなテクノロジーも積極的に活用しながら、情報やモノ等を共同で活用しつつ、小さな単位で地域の課題解決に積極的に取り組もうとする活動などが注目されるようになっていることも踏まえ、こうした住民による主体的な活動に社会教育施設がより積極的な役割を果たすための方策などについても検討を行うことが重要と考える。

○ さらに、いずれの社会教育施設についても、障害の有無にかかわらず、全ての住民に開かれた施設としてユニバーサルデザイン化を進めるとともに、幅広い年齢層にわたる多様な人々のニーズに応え、あらゆる地域住民の社会的包摂に寄与するとの視点に立ち、運営の充実を図ることが求められる。

(1)公民館

○ 公民館は、社会教育法に規定される目的を達成するため、地域の学習拠点として、地域住民の学習ニーズに対応した講座、講演会、展示会等を実施してきている。

 (参考)社会教育法(昭和24年法律第207号)
 (目的)
 第20条 公民館は、市町村その他一定区域内の住民のために、実際生活に即する教育、学術及び文化に関する各種の事業を行い、もって住民の教養の向上、健康の増進、情操の純化を図り、生活文化の振興、社会福祉の増進に寄与することを目的とする。

○ 公民館については、近年、館数が減少傾向にあるほか、主催事業が減少し、実態として利用者が固定化しているところも見受けられるなどの指摘もある。より効果的な事業展開に向け、住民参加の下での議論の活性化や、首長部局が所管するコミュニティセンター、NPO、民間企業等との多様なネットワークの構築などを通じ、その機能の強化を図ることが急務となっている。

○ 地域コミュニティの衰退が社会全体の課題となる中、今後は、特に、住民が主体的に地域課題を解決するために必要な学習を推進する役割や、学習の成果を地域課題の解決のための実際の活動につなげていくための役割、地域コミュニティの維持と持続的な発展を推進するセンター的役割、地域の防災拠点としての役割、地域学校協働活動の拠点としての役割などを強化することが求められる。また、中山間地域における「小さな拠点」の中核となる施設としての役割も期待される。

○ なお、公民館は、昭和21年に「公民館の設置運営について」(文部次官通牒)で設置が奨励されることとなったが、その当時、公民館の機能としては、社会教育機関であるとともに、社会娯楽機関、町村自治振興の機関、産業振興の機関、新しい時代に処すべき青年の養成に最も関心を持つ機関としても期待されていたところである。

○ これまで公民館が培ってきた地域との関係を生かしながら、地域の実態に応じた、学習と活動を結び付ける機能を有する新しい地域の拠点施設を目指していくことが望まれる。

(2)図書館

○ 図書館は、図書館法に規定される目的を達成するため、図書等の貸出、読書会、レファレンスサービス等を実施してきている。

 (参考)図書館法(昭和25年法律第118号)
 (定義)
 第2条 この法律において「図書館」とは、図書、記録その他必要な資料を収集し、整理し、保存して、一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーシヨン等に資することを目的とする施設で、地方公共団体、日本赤十字社又は一般社団法人若しくは一般財団法人が設置するもの(学校に附属する図書館又は図書室を除く。)をいう。

○ 今後は、一人一人の人格を陶冶し、人生を豊かにする読書や調査研究の機会を提供する役割を強化するとともに、「社会に開かれた教育課程」の実現に向けた学校との連携の強化や、商工労働部局や健康福祉部局等とも連携した個人のスキルアップや就業等の支援、地域課題の解決や地域の先駆的・主体的な取組の支援に資するレファレンス機能の充実など、地域住民のニーズに対応できる情報拠点としての役割の強化が求められる。さらには、まちづくりの中核となる地域住民の交流の拠点としての機能の強化等も期待される。

○ 今後の図書館には、知識基盤社会における知識・情報の拠点として、公文書館等との連携による資料の充実を図るとともに、市民生活のあらゆる分野に係る関係機関との連携の下、利用者及び住民の要望や社会の要請に応えるための運営の充実を図ることが望まれる。

(3)博物館

○ 博物館は、博物館法に規定される目的を達成するため、様々な学術資料・芸術作品等を収集・保管し、それらについての調査研究を行い、資料や調査研究の成果を用いた展示・教育事業を行ってきている。博物館の対象とする分野は極めて多様であり、個々の博物館を見ても、美術館、歴史館、科学館、動物園、水族館等幅広く様々な事業活動が行われていることがその特徴の一つである。また、教育委員会が所管する登録施設のほか、博物館相当施設として教育委員会でなく長が所管するものも多数ある。

 (参考)博物館法(昭和26年法律第285号)
 (定義)
 第2条 この法律において「博物館」とは、歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料を収集し、保管(育成を含む。以下同じ。)し、展示して教育的配慮の下に一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資するために必要な事業を行い、あわせてこれらの資料に関する調査研究をすることを目的とする機関(社会教育法による公民館及び図書館法(昭和二十五年法律第百十八号)による図書館を除く。)のうち、地方公共団体、一般社団法人若しくは一般財団法人、宗教法人又は政令で定めるその他の法人(独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。第二十九条において同じ。)を除く。)が設置するもので次章の規定による登録を受けたものをいう。

 (博物館に相当する施設)
 第29 条 博物館の事業に類する事業を行う施設で、国又は独立行政法人が設置する施設にあつては文部科学大臣が、その他の施設にあつては当該施設の所在する都道府県の教育委員会(当該施設(都道府県が設置するものを除く。)が指定都市の区域内に所在する場合にあつては、当該指定都市の教育委員会)が、文部科学省令で定めるところにより、博物館に相当する施設として指定したものについては、第二十七条第二項の規定を準用する。

○ 今後は、上記のような博物館法に定める役割をより充実した形で果たすよう、「社会に開かれた教育課程」の実現に向けて、地域の学校における学習内容に即した展示・教育事業の実施や、教員の授業支援に繋がるような教材やプログラムの提供等を強化することや、地域住民はもとより、国内・国外の多くの人々が知的好奇心を満たしつつ広く交流することのできる場としての役割を強化することが期待される。

○ また、各種の講演会、研究会等の開催を通じて、各分野におけるボランティアの養成や、友の会等のネットワークづくりを展開することや、住民参加のワークショップ等
を通じて、博物館の事業やその地域の在り方、課題解決の方法等についてともに議論し、博物館の事業の改善や住民の主体的な活動につなげていくことも一層重要である。

○ 特に、近年の訪日外国人旅行者数の増加等により、博物館は新たに経済活性化に資する資源としての観点からも期待が高まっている。その際、単なる観光資源としてではなく、その本来の役割を基本に置きつつ、旅行者に日本や地域について理解を深めてもらい、親近感を醸成してもらう場や、旅行者と住民とが交流する場として、博物館の機能をより幅広く発揮するという視点が重要である。また、住民が自らの地域について学び、誇りを持つこと(シビックプライド)や市民のキャリア(生き方)支援などの観点からも博物館は重要な役割を果たすと考えられる。なお、各博物館の目的や性格に照らした場合、経済活性化に資する事業を展開することがなじまない地域博物館があることにも十分に留意する必要がある。

(4)青少年教育施設

○ 青少年教育施設は、青少年を対象に研修事業や体験活動プログラムの提供を行うとともに、青少年団体等の利用に供するために設置される社会教育施設であり、体験活動の機会と場を提供する中心的な役割を担っている。また、職員等の指導による自然体験活動のみならず、集団で食事や入浴をするなどの団体宿泊訓練を通じて協調性を養ったり、規則正しい生活体験の機会を提供する場でもあり、青少年の成長に大きな影響を与えている。

○ 今後は、上記の役割に加えて、次代を担う青少年の健全育成を総合的に推進し、さらには、青少年が社会の担い手となることを支援する拠点としての役割を担うことも期待される。例えば、これまでの取組に加え、様々な悩みを抱える若者を対象とした相談、引きこもりや非行少年の自立支援、地域における防災拠点等の役割を青少年教育施設が担うことも考えられる。

○ 青少年教育施設において、上記のような取組を地域住民のニーズに沿った形で分野横断的に推進することにより、青少年が地域や社会に主体的に参画し、その将来を担っていく力を育てることが期待される。

(5)女性教育施設

○ 女性教育施設は、女性や女性教育指導者を対象に各種の研修・情報提供等を行うとともに、その施設を女性や関係団体等の利用に供するために設置される社会教育施設であり、女性教育の振興に大きく貢献している。また、「男女共同参画センター」や「女性プラザ」等として、社会教育にとどまらず幅広い活動を行っているものも多く、女性向けのキャリア形成支援やリーダー育成等に係る講座を展開するとともに、女性に関する各種相談窓口を設置するなど、男女共同参画の推進にも大きく貢献している。こうした施設には、教育委員会でなく長が所管するものも多数ある。

○ 少子高齢化や生産年齢人口の減少、地域コミュニティの衰退等の社会の変化の中で、労働市場や地域社会において、女性の一層の社会参画が期待されており、例えば、出産・育児等により離職した女性の就業支援や地域活動への参画を支援するための多様な学習機会の確保や情報提供等が求められている。

○ 地域において女性の社会参画を支援し、将来の地域づくりへ貢献していく観点からも、今後、女性教育施設には、地域の多様な課題を踏まえながら教育委員会、首長部局(まちづくり部局、労働部局、福祉部局等)、学校、関係機関・施設等との連携・協働により総合的に取組を進めることが期待される。

3.公立社会教育施設の所管に関する特例を設けることについて

○ 「1.」で述べたとおり、総合的な教育行政推進の観点から、社会教育に関する事務については、今後も教育委員会が担当することを基本とすべきと考えるが、一方で、「2.」で述べたような社会教育施設の役割に対する期待が高まる中、地方公共団体からは、地方公共団体の判断により、地方公共団体の長が公立社会教育施設を所管することができる仕組みを導入すべきとの意見が提出されており、政府としての検討が求められている。

(1)特例を設けることについて

(他行政分野との一体的運営による質の高い行政の実現の可能性)

○ 公立社会教育施設の所管に関する特例を設け、地域の実情に応じて、地方公共団体の判断により公立社会教育施設の所管を地方公共団体の長とすることができることとすることにより、当該施設を活用して、当該施設における事業等と、まちづくりや観光等の他の行政分野の社会教育に関連する事業等とを一体的に推進することで、より充実したサービス等を実現し、地方行政全体としてより大きな成果を上げる可能性がある。

○ また、社会教育は、福祉、労働、産業、観光、まちづくり、青少年健全育成等の地方公共団体の長が所管する行政分野とも大きな関わりを持つものである。公立社会教育施設を地方公共団体の長が所管することとなる場合、長の所管する他の行政分野における人的・物的資源や専門知識、ノウハウ、ネットワーク等を公立社会教育施設においても新たに活用できるようになることで、当該施設の運営のみならず、社会教育行政全体の活性化にとってもプラスの効果が生まれる可能性がある。

○ 地域によっては、まちづくりや地域の課題解決に熱意を持って取り組んでいる人材を社会教育施設の行う諸活動に必ずしも十分に生かし切れていない場合があるとの指摘もあり、社会教育の新たな担い手として、これまで社会教育と関わりがなかった、幅広い世代の多様な専門性を持つ人材等の参画も強く期待されるところである。長が施設を所管することにより、そのような人材を育成・発掘することにもつながる可能性がある。
○ 公立社会教育施設を地方公共団体の長が所管することを可能とする場合、例えば、公民館については、地域コミュニティの維持や中山間地域における「小さな拠点」に必要な施設としての観点からもその意義が改めて見直されている中、様々な行政分野が交わる地域づくりの拠点としての機能強化や運営の活性化につながることが考えられる。また、首長部局の所管施設として地域住民をつなぐ拠点となっているコミュニティセンターや交流センターといった施設との連携が進むことにより、社会教育を支える拠点が強化される可能性がある。

○ 図書館については、他の行政分野の施設との連携を強化することで、運営の活性化や、住民交流の拠点、まちづくりの拠点、さらには様々な分野の情報拠点等としての機能のより効果的な発揮につながる可能性がある。

○ また、働き方改革が進む中で、例えば、公民館・図書館等がテレワーク等新しい働き方の場や起業支援、仕事に関する学び直し講座等の場としての機能を強化することとなれば、これまで以上に多様な人々が集まり、新たなコミュニティ形成や地域課題解決活動に繋がる可能性もある。

○ 博物館については、観光などの振興にも一定の役割が期待されているところであり、関連する行政分野とのより密接な連携が運営の充実や地域振興につながることが考えられる。また、地方公共団体の長が所管する博物館相当施設等が新たに博物館登録制度の対象となることで、首長部局における当該施設の充実に向けた気運の高まりや、教育委員会側においては登録博物館が増えることによる社会教育の一層充実が図られる可能性がある。

○ このほか、青少年教育施設や女性教育施設についても、例えば、引きこもり、非行少年の自立支援、青少年や女性の社会参画支援等について、教育行政の枠組みを超えてより効果的な取組が実施しやすくなることが考えられる。

(施設の効果的・効率的な整備・運営の可能性)

○ また、施設の整備に関して、社会資本整備計画や地方版総合戦略等は首長部局が中心となって行っており、これらに関連する国の支援方策に関する情報等も一般的には首長部局に集約される。こうした計画等に社会教育施設の整備も位置付けることにより、施設のより戦略的な整備が推進される可能性がある。

○ 施設の運営の面についても、様々な分野の施設が複合した形で設置されている場合に、その所管を一元化することで、当該複合施設の運営がより効率的に行える可能性がある。現状において、公立社会教育施設の複合化の状況は、図書館については65.0%、公民館は31.6%、博物館は19.2%となっている。その割合は年々高まるとともに、例えば、図書館と医療・福祉施設の複合化など人口の高齢化を見据えた新たな取組も進められる状況となっている。

○ WGや本分科会におけるヒアリングにおいても、図書館について、多様な世代の住民をひきつけるという図書館の強みと、地域の抱える課題(例えば、住民の健康づくり中心市街地の活性化等)に係る行政の機能を、複合施設において適切に融合させることにより、新たな学習のきっかけづくりや仲間作りなどの側面と、地域の課題解決の側面の双方において成果を上げている例が紹介された。

(2)社会教育の適切な実施の確保の在り方について

○ 公立社会教育施設の所管を地方公共団体の長とすることができることとすることについては、上記のような意義がある一方で、社会教育の適切な実施の確保の在り方について十分な検討が必要となる。

○ 学校教育、社会教育の別を問わず、教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われるものである。

○ 特に、学校教育は、児童生徒の発達段階に応じた体系的な教育を行うことにより、社会を生きる上での基礎的な素養を身に付けさせるものであり、教育を受ける者の人格形成に直接影響を与える度合いが特に強いものであることから、教育基本法、義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法及び教育公務員特例法において、政治的中立性の確保に特に配慮する規定が置かれている。

○ 社会教育行政においては、政治的中立性を確保することは極めて重要である一方、社会教育は、随時かつ任意で参加できるものであり、事業内容に応じて自由に参加を判断するものであることなど、学校教育とは異なる側面も多い。

○ これらのことを考え合わせれば、社会教育行政における政治的中立性の確保については、学校教育と完全に同一の措置を講ずる必要があるとまでは言えないものの、その確保のためには、例えば、教育委員会による関与など一定の担保措置を講ずる必要があると考えられる。したがって、社会教育に係る事業を展開する社会教育施設の所管を地方公共団体の長とする場合には、政治的中立性を確保するため、上述のような一定の担保措置を講ずることについて検討する必要がある。

○ このことは、社会教育行政に広く住民の意向を反映させ、個人の要望や社会の要請に応えた取組を推進する上でも、社会教育施設としての専門性を確保するとともに、社会教育と学校教育との連携を推進する上でも重要と考えられる。社会教育においては、個人の要望や社会の要請に応じた多種多様な学習機会が整備されることが重要であり、行政による学習機会の提供に当たって、行政的な視点が優先され、学習に関する住民の自主性・自発性が阻害されることのないよう、地域住民の意向の反映に留意することが重要である。

○ さらに、本件特例が設けられる場合、それを活用することにより長が新たに所管することとなる公立社会教育施設についても、住民の主体的な参画により、学びと活動を通じたより良い課題解決と、その過程における人々の成長という社会教育の意義が実現されるよう運営されることが重要である。そのためには、これらの施設に対し、教育委員会が、教育に関する専門性を生かし、一定の関与を行うことが適切と考えられる。特に、社会教育主事は、社会教育法の規定により、広く社会教育を行う者に専門的技術的な助言と指導を与えることとされており、公立社会教育施設の所管に関する特例を活用する場合においては、一層重要な役割を担う必要がある。

○ WGのヒアリングにおいても、公立社会教育施設の所管について、上述のような一定の担保措置を講ずることを条件に、地方公共団体の長が担当する特例を認めることを肯定する意見が多く述べられた。

 (参考)
  平成25年答申において、首長が任免を行う教育長を地方教育行政の責任者とすることについて検討が行われた際、教育行政の政治的中立性、継続性・安定性を確保するため、教育長による事務執行に合議制の教育委員会が必要な歯止めをかけられるような制度的措置を講じることが議論された。その中では、教職員や事務局職員の人事、教育内容等、教科書その他の教材の取扱いなどの特に重要な個別の事務については、教育委員会の議に基づいて、教育長が基本方針を策定することとする(議に「基づいて」とは、法的拘束力があるものと解されている。)とされた一方、社会教育に関する事務を含めたその他基本的な事項については、教育委員会の議を経ることとする(議を「経る」とは、従う義務まではないが、強い拘束性があるものと解されている。)とされ、特に重要な個別の事務とは明確に区別した扱いがなされていた。

○ 地方公共団体の長が公立社会教育施設を所管することとなる場合の社会教育の適切な実施の確保のための担保措置については、例えば、地方公共団体の長が公立社会教育施設を所管することについての条例を定める際には、スポーツ、文化及び文化財保護に関する所管についての場合と同様に、教育委員会の意見を聴くことを義務付けることのほか、以下のような新たな仕組みを導入することが議論された。なお、具体的な在り方については、これらも含め、法制化のプロセスにおいてさらに詳細に検討する必要がある。

(分科会及びWGで議論された担保措置の例)

・ 地方公共団体の長が公立社会教育施設の管理運営の基本的事項について規則を制定する際には、あらかじめ教育委員会の意見を聴くこととする。
・ 教育委員会は、公立社会教育施設の設置・管理・運営について必要と認めるときには長に意見を述べることができることとする。その際、総合教育会議や社会教育委員の活用も考慮することとする。
・ 公立社会教育施設の事業の実施内容については、社会教育に関し見識のある者から構成される会議を設置し、地方公共団体の長又は教育委員会に意見を述べることとする。
 なお、当該会議を設ける場合の運用については、教育委員会が委嘱する社会教育委員の会議を活用し、その委員の委嘱に係る参酌基準において公民館、図書館、博物館等の社会教育施設について見識を有する者についても明記することや、地方公共団体が社会教育施設の管理運営に関する委員会組織を設置し、その委員の委嘱に係る参酌基準において社会教育委員、公民館運営審議会、図書館協議会、博物館協議会の委員及び教育委員会が推薦する者について明記すること、会議は公開で行い、議事録を作成し公表することなどについても議論があった。また、このような会議の役割については、教育委員会自身が担うべきとの意見もあった。

○ あわせて、当該公立社会教育施設について、運営状況の評価や情報発信を一層推進するとともに、各施設に設置された審議会や協議会等を積極的に活用することなども重要と考える。

○ 上述のような担保措置を講ずることにより、政治的中立性の確保のみならず、継続性・安定性の確保、地域住民の意向の反映、学校教育との連携に関しても、その確保が可能となるものと考えられる。

(3)本分科会としての考え方

○ 以上の検討を踏まえ、本分科会としては、社会教育に関する事務については今後とも教育委員会が所管することを基本とすべきであるが、公立社会教育施設の所管については、当該地方の実情等を踏まえ、当該地方にとってより効果的と判断される場合には、地方公共団体の判断により地方公共団体の長が公立社会教育施設を所管することができることとする特例を設けることについて、「3.(2)」で述べたような社会教育の適切な実施の確保に関する担保措置が講じられることを条件に、可とすべきと考える。

○ その場合に地方公共団体の長が担当することとなる事務には、公立社会教育施設の設置とその運営に関する事務(例:規則の策定、各種事業の実施、職員の任命、審議会等の設置・委員の委嘱、運営状況の評価・情報提供等)が含まれることになるものと考えられる。

(4)地方公共団体において特例措置を活用する場合に留意が求められる点

(教育行政としての一体性・専門性の確保)

○ 「1.」で述べたように、今後、行政としては、国・地方を問わず、生涯学習社会の実現に向けた取組をこれまで以上に強力に展開することが求められる。その中で、教育委員会には、教育基本法に基づく地方公共団体における教育振興基本計画の策定等を通じて、域内における社会教育の一層の振興を図ることが求められる。

○ 公立社会教育施設における事務は、地方の社会教育行政の重要な柱となるものであり、地方公共団体の判断により地方公共団体の長がこれを所管することとなる場合においても、社会教育施設としての専門性を発揮することはもちろん、公立社会教育施設に関する事務以外の社会教育に関する事務との一体性を保ち、さらには、学校教育とも強固に連携しながら進めることが重要である。このため、公立社会教育施設の所管に関する特例を活用する場合においても、教育委員会には、総合教育会議等を積極的に活用しながら、首長部局やNPO等の多様な主体との連携・調整を行い、社会教育の振興の牽引役としての積極的な役割を果たしていくことが求められる。さらに、地方公共団体の長の策定する、当該地方公共団体の地域活性化プランや観光振興計画等においては、公立社会教育施設に関する事項はもとより、広く社会教育、学校教育との連携等についても留意した記載を行うなど、相互の連携に基づく総合的な行政が進められることが重要と考える。

○ 公立社会教育施設の所管に関する特例を活用する場合において、都道府県教育委員会においては、専門的な知見を活かし、広域的観点から域内の社会教育行政の総合的な推進を図るとともに、都道府県域内全体を俯瞰した上での学校教育との調整役としての役割も担うことが期待される。また同様に、市町村教育委員会においては、域内の社会教育行政を推進するとともに、社会教育と学校教育との連携が一層重視されるようになっていることも踏まえ、社会教育主事も活用し、地域学校協働活動の推進や社会教育関係団体との連携等について積極的な役割を果たしていくことが求められる。

○ 加えて、公立社会教育施設を首長部局で所管する場合にも、社会教育施設として求められる専門性を確保する観点から、首長部局において、教育委員会との連携の下、当該社会教育施設の中核を担う存在である司書や学芸員等の専門的職員に対する研修を充実することが求められる。こうした専門的職員の研修については、国や都道府県教育委員会も積極的な役割を果たすべきである。さらに、当該施設に関し、社会教育主事が専門的技術的な助言と指導を積極的に行うことなども重要と考えられる。

○ なお、社会教育主事には、今後、多様な主体と連携・協働して、学習者の多様な特性に応じた学習支援を行い、学習成果を活動につなげていくためのファシリテーション能力やコーディネート能力等を身に付け、人づくりや地域づくりの中核的な役割を担っていくことが期待されていることを踏まえ、平成30年2月の社会教育主事講習等規程の改正において、その養成プログラムの質的充実が図られた。あわせて、社会教育主事講習の修了証書を授与された者又は社会教育主事養成課程の修了者については、教育委員会のみならず、首長部局、NPO、企業等幅広い分野で活躍することを期待して、社会教育士と称することができることとされた。今後、地方公共団体において公立社会教育施設の所管に関する特例を活用しようとする場合には、その職員等として社会教育士を積極的に活用するなど、社会教育に専門的な知見のある人材の積極的な登用を推進すること、さらには、地域の課題解決に熱意を持って取り組む様々な分野の人材を巻き込み、こうした人材と協働しながら、地域を担う人づくりを進めていくことが望まれる。

(地方自治法に定める事務委任・補助執行の活用の検討)

○ 地方公共団体においては、地方自治法第180条の7の規定による事務委任・補助執行により、首長部局が公立社会教育施設に関する事務を行う事例も増えている。事務委任・補助執行を行っている地方公共団体からは、権限と責任の所在の曖昧さや執行上の手続きの煩雑さを指摘する声がある一方、公立社会教育施設の運営を首長所管の他の行政分野と一体的に行うことができる等の点については評価されている。

○ 各地方公共団体において公立社会教育施設の所管に関する特例の活用を検討するに当たっては、事務委任・補助執行のような既存の制度の活用についても併せて十分に検討の上、より適切な方法を選択することが望まれる。

4.社会教育の一層の振興について

○ 公立社会教育施設の所管に関する本件特例の導入により、地方公共団体の判断により首長部局に所管が移った場合であっても、それぞれの施設が、社会教育法、図書館法、博物館法等に基づく社会教育施設であることに変わりはなく、当然のことながら、各社会教育施設には、それぞれの法律に定める目的に即し、必要とされる専門的職員を配置する等各種の基準等を遵守して、社会教育の振興に努めることが求められる。教育委員会においては、首長部局と密接に連携を図りながら、当該地方公共団体における社会教育の一層の振興に努めることが求められる。

○ 本件特例を導入する場合には、首長部局も社会教育行政の一翼を担うこととなることから、国においては、関係省庁間での連携を一層強化するとともに、公立社会教育施設を担当する首長部局とも十分な意思疎通を図りながら、連携関係を構築していくことが求められる。また、都道府県教育委員会においても、市町村の首長部局に対して、同様の対応が求められる。

○ 公立社会教育施設の所管に関する本件特例は、社会情勢の変化の中、公立社会教育施設が求められる役割をよりよく果たすことができるよう、地域の実情等を踏まえ、教育分野以外の分野の専門的知見、経験や人脈、情報発信に係る資源を有する首長部局が、社会教育行政の新たな担い手として加わることを可能にするものと考えられる。すなわち、多様な主体の参画により地域における社会教育の振興がこれまで以上に図られるようになることを期待して導入しようとするものであり、このことを国、地方公共団体、関係団体等の全ての関係者が十分に認識し、社会教育の充実に向けた具体的な取組を進める必要がある。その際特に、各地方公共団体において組織体制の強化を図るとともに、社会教育主事や社会教育施設の専門性を担う職員(公民館主事、司書、学芸員等)の資質の一層の向上や社会教育士の積極的な活用等に取り組むこと、さらには、地域づくりに対する住民の関心を高め、一層の参加を進めるための環境整備を図っていくことが望まれる。

○ また、今回の検討の過程では、学びを通じて地域を担い、課題解決に主体的・持続的に取り組む住民を支援するという社会教育の意義が改めて確認されるとともに、地域の課題が一層多様化・高度化する中で、社会教育行政が本来期待される役割を果たすためには、教育を司る教育委員会と様々な専門分野のエキスパートを擁する首長部局との協働が不可欠であること、一方で地域の様々な分野で熱意を持って活動している人々の力を社会教育に巻き込んでいく取組は未だ十分でないこと、さらには、首長部局の所管する行政分野においても、学びを通じた人づくりの視点をより重視する必要があることなどが指摘された。住民参加による地域づくりに向け、社会教育はどのような役割を担うべきか、そのために専門的職員にはどのような資質・能力が新たに求められるかなど、新たな時代の社会教育の在り方について今後さらに議論を深める必要がある。

○ なお、WGでは、博物館について、委員や関係機関から、今後の博物館に求められる役割を踏まえ、博物館登録制度の在り方を含めた博物館法の総合的な見直しについての検討を進めるべきとの意見があった。平成31 年秋にはICOM(国際博物館会議)京都大会2019が開催される予定となるなど、博物館の振興に向けての機運は高まってきている。平成29年の日本博物館協会「博物館登録制度の在り方に関する調査研究」報告書においても「ICOM京都大会の開催こそ、国際的視野に立って我が国の博物館制度を見直す絶好のチャンス」との指摘もあることから、今後、専門家や関係機関とも十分に意思疎通を図りつつ、現場の状況を十分に把握した上で、博物館の一層の振興に向けて、より専門的な検討が行われることを期待したい。

(参考)WGにおけるヒアリング実施団体・機関

3月5日
 公益財団法人日本博物館協会
 全国科学博物館協会
 公益社団法人日本動物園水族館協会
 鹿児島県霧島アートの森
3月26日
 東北歴史博物館
 三重県・三重県教育委員会
 全国都道府県教育長協議会
 北海道(全国知事会推薦)
 全国町村教育長会
 岡山県鏡野町(全国町村会推薦)
 全国都市教育長協議会
 福島県いわき市(全国市長会推薦)
4月16日
 公益社団法人日本図書館協会
 公益社団法人全国公民館連合会
 郡山市教育委員会
 枚方市
 荒川区

お問合せ先

総合教育政策局生涯学習推進課

(総合教育政策局生涯学習推進課)

-- 登録:平成31年03月 --