生涯学習分科会(第127回) 議事録

1.日時

令和5年9月28日(木曜日)10時00分から12時00分

2.場所

文部科学省3階第一講堂 ※WEB会議

3.議題

  1. リカレント教育の推進について
  2. 日本語教育の質の維持・向上について
  3. その他

4.出席者

委員

(分科会長) 清原分科会長
(副分科会長) 萩原副分科会長,牧野副分科会長
(委員)内田委員,清水委員
(臨時委員)熱田委員,大久保委員,沖畑委員,小路委員,古賀委員,澤野委員,関委員,辻委員,野田委員,野津委員,浜田委員,山内委員,綿引委員

文部科学省

(事務局)望月総合教育政策局長,里見大臣官房審議官,滝波政策課長,石橋生涯学習推進課長,高見高等教育政策室長,小林日本語教育推進室長,西リカレント教育・民間教育振興室長 他

5.議事録

【清原分科会長】 
 皆様,おはようございます。定刻になりましたので,ただいまから第
127回中央教育審議会生涯学習分科会を開催いたします。まだまだ残暑の残る御多用のところ,御参加いただきまして,どうもありがとうございます。

 本会議は,対面とオンラインのハイブリッド方式で開催させていただきます。本日もYouTube上で報道関係者等の傍聴を受け入れております。報道関係者等より,会議の全体について録画を行いたい旨の申出がありまして,許可しておりますので,どうぞ皆様,御承知おきください。

 次に,事務局から,本日の会議の運営に当たりまして,留意事項の説明及び配付資料の確認をお願いします。

【合田生涯学習推進課専門官】 
 最初に,事務局の人事異動について御紹介します。

 私,91日付で生涯学習推進課に着任しました事務局の合田でございます。

 また,右隣,925日付で生涯学習推進課に着任した粟津でございます。よろしくお願いいたします。

 さて,本日は,オンラインを併用する形で開催させていただきます。御不便もあるかと存じますが,何とぞ御理解のほどよろしくお願いいたします。

 オンライン会議を円滑に行う観点から,4点ほどお願いさせていただきます。

 1点目,御発言に当たっては,インターネットでも聞き取りやすいよう,はっきり御発言ください。

 2点目,御発言の際には名前をおっしゃってください。

 3点目,御発言時以外はマイクをミュートにしてください。

 4点目,発言に当たっては挙手ボタンを押していただき,御発言後はボタンを解除いただければと思います。

 お手数をおかけいたしますが,御協力のほどよろしくお願いいたします。

 本日,会場にお越しの委員の皆様は,御発言の際には挙手又はネームプレートを立てていただくようお願いいたします。

 続きまして,資料の確認をさせていただきます。本日の資料は,議事次第を御覧いただければと思いますが,議題1,リカレント教育の関係で資料1から4,議題2,日本語教育の関係で資料5及び参考資料1,議題3,その他の関係で資料6を御用意しております。また,参考資料23として,前回御議論いただいた社会教育人材の養成及び活躍促進の在り方についての中間的まとめのセット版を御参考まで配付しております。

 資料の確認は以上でございます。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。

 それでは,本日の議事に入ります。

 議題1は,リカレント教育の推進についてです。前回までに小路委員,金子委員,大久保委員から話題提供を頂いてまいりました。本日は,事務局から,令和6年度概算要求や,これまでの生涯学習分科会で出されました御意見につきまして,御説明いただきます。その上で,放送大学の皆様に御多用の中,お越しいただきましたので,リカレント教育についての御発表を頂きます。その後,委員の皆様との質疑応答,意見交換を行います。その後,事務局から,高等教育に関する中央教育審議会への諮問についても話題提供いただきたいと思います。

 放送大学の内藤敏也理事と加藤和弘副学長におかれましては,御多用の中,御準備を頂きまして,誠にありがとうございます。心から感謝を申し上げます。

 それでは,議事の最初といたしまして,令和6年度概算要求や,リカレント教育,リスキリングに関するこれまでの生涯学習分科会における主な御意見につきまして,生涯学習推進課の石橋課長から御説明をお願いいたします。

【石橋生涯学習推進課長】 
 ありがとうございます。御説明させていただきます。

 資料1を御覧いただければと思います。まず,令和6年度の概算要求の説明ということで,ここは概略のみでございますけれども,御説明させていただきます。

 まず1ページ目,これは当局の全部の予算ではございませんで,関係するものを抜粋させていただいておりますが,まず目次のところでございますけれども,生涯を通じた障害者の学びの推進,それから,日本語教育・外国人児童生徒等への教育等の充実,そして,地域と学校の連携・協働による地域の教育力の向上や体験活動の充実,学校安全体制整備の推進,そして,4番目,リスキリングを含めたリカレント教育と社会人の学び直しの機会の拡充ということで,柱で御説明をさせていただきたいと思います。

 めくっていただきまして,3ページ目になりますけれども,学校卒業後における障害者の学びの支援推進事業ということで,これは障害のある方々が,その後,社会に出られた後も,リカレント,学び直しということ,また,一生涯学び続けていくという御支援をしたいということで,このような事業を進めさせていただいております。

 次のページ,5ページ目でございますけれども,今日も日本語教育の関連は議題で取り上げていただきますが,外国人等に対する日本語教育の推進ということで,2つ大きな柱といたしまして,日本語教育の全国展開・学習機会の確保,それから,日本語教育の質の向上ということで,この二本立てで予算の準備をしているところでございます。

 少し飛ばせていただきます。資料の9ページ目でございますけれども,外国人児童生徒等への教育の充実ということで,これは入国・就学前,それから,義務教育段階,高等学校段階ということで,就学している外国人児童生徒への教育の充実を当局の方で図っているということでございます。

 それから,また少し駆け足で恐縮でございますけれども,11ページを御覧いただきますと,学校を核とした地域力強化プランということで,大きく6つのメニューをさせていただきます。

 すみません。画面が縦書きになってしまっていて,多分これを横にするのは,今,事務局,手間取っているかもしれません。大変恐縮ですが,お手元の資料を御覧いただければと思います。今後は,これ,調整させていただきます。申し訳ありません。

 11ページの説明に戻させていただきますと,学校を核とした地域力強化プランということで,6つの事業を挙げさせていただいております。コミュニティ・スクール,2つ目の家庭教育支援チームの組織化による家庭教育への支援,学校安全体制,高校中退者を含めたステップアップ支援事業ということ,体験活動,そして,キャリア教育と,この大きな6本柱で予算も組ませていただいているところでございます。

 少し飛ばせていただきまして,15ページでございますけれども,やはり読書ということも大事でございまして,読書活動総合推進事業というもので,子供たちの読書活動を支えるということで,学校図書館等の,あと,司書教諭の講習等,このようなことも対応させていただいております。

 16ページでございますけれども,社会教育デジタル活用推進事業ということで,社会教育施設のデジタル機能の強化ということも大事でございますので,これも進めさせていただいております。

 17ページからは,学校安全ということで,171819ページということで,学校安全の関係の取組でございます。

 最後の項目になります。21ページからでございますが,リカレント教育に関しましては,我々も補正予算で,実はもうこれで3回ほど,このリカレント教育については予算を考えてきたところでございますけれども,やはり一番ポイントになるのは,実際企業の方が学び直しをしてくださった後に,どういうふうに企業の中で評価していただけるかというところが大事かなというふうに思っておりまして,実際,プログラムをつくって,そこに企業の方々に来ていただいて,その後,人事評価にどうつなげるかということで,複数年の事業ができないかということが,1つ目の,新時代の産学協働リカレント教育モデル開発支援事業となります。

 駆け足で恐縮です。22ページは,専門学校でリカレント教育を行う場合の支援ということでございます。

 そして,また駆け足で恐縮ですが,プラットフォーム事業ということで,26ページを御覧いただければと思います。

 これは,地域において,大学,産業,そして,行政,そしてまた,ポイントかなと思っているのは,この地方金融機関ということで,この四者が連携をしてプラットフォームを各地域でつくっていただいて,そこでプログラムを開発し,実際学んでいただいてという好循環をつくっていきたいということで,この支援事業の方も予算を獲得したいと思って準備をしております。

 以上,駆け足でございますが,令和6年度の関係する概算要求の御説明でございます。

 それから,資料2の方を御覧いただければと思います。先ほど分科会長からも御紹介いただきましたが,ここまで小路委員,そして,金子委員,大久保委員の3委員の先生方から,リカレント教育,リスキリングに関して御意見を頂戴するということを,これまでの2回で進めてまいりました。その御意見ということで,これはもう事務局の方でまとめさせていただいたものになりますので,その点,御容赦いただいて御覧いただければと思っておりますけれども。

 まず小路委員の御発表の中では,やはり非常に大事なこととして,学びは手段であって目的ではなく,学びを発揮する出口,つまり仕事を用意することが非常に重要であるということ,それから,3点目でございますが,どうしても人材を囲い込みたいという企業と,会社に居続けたいという働き手の本音はあるけれども,やはり越境経験などを通じて,企業の制度改革や働き手の意識改革を進めていくことが必要ということ,4点目も大事な点で,年齢層に応じたキャリアプランの設計などが必要ではないか。そして,5点目,経済界の視点としては,スキルの棚卸し,金銭的・時間的支援の充実,そして,主体的なキャリア形成を支援していくということをやっていくべきではないか。一方,政府・教育機関側としては,やはりセーフティーネットをどうつくっていくか,それから,退職所得税制の見直し,そして,円滑な労働移動を阻害する法制度の見直しなど,まだ取り組むべき課題があるのではないかと。教育機関に関しては,起業家精神の学びなどを含めたキャリア設計に必要なカリキュラムを設定することが必要という御意見を頂きました。

 その際の意見交換として,各委員の方々からは,やはりそのスキルというものが,実は会社の外でも使えるということを実感することが重要である。

 あと,やはり中小企業にどうするかということですね。

 それから,マイクロクレデンシャルのような仕組みをつくっていくことも大事ではないかということ。

 めくっていただきまして,「学び」とは何なのかということを改めて考え直す必要があるのではないかという御意見を頂きました。

 金子委員の御発表の中では,働くことを軸とする安心社会ということの実現が大事ということで,やはりその「費用」と「時間」の壁があるということではございますが,2点目の中に,専門職大学,それから,教育訓練休暇制度の活用,そして,夜間や休日などに学べるようなカリキュラムの充実等々,具体的な御指摘を頂いたところでございます。

 一番最後の5点目でございますけれども,働く側としても,自分の存在価値や働きがい,人間らしい生活を求めていくということで,幅広いジャンルが必要なのではないかという御指摘を頂きました。

 この金子委員の御発表の際には,各委員の御意見のポイントとしては,大学がサードプレースとしての学びの場を提供することが大事。それから,地方と都市部の状況もまたいろいろ違うのではないか,ここをしっかり見ていく必要があるという御指摘も頂きました。

 最後に,大久保委員の御発表の中では,実際,ジョブ型人事制度,これも日本型というのだということでございましたけれども,ジョブ型人事制度が入ってきていたりとか,スキルを明確にするポートフォリオ,こういうことが,実際企業の中では進んできていると。

 一方で,リスキリングと人事異動がセットとなっているという,こういうことを意識しながら考えていく必要があるのではないかと。

 転職市場では,やはりAIを活用した保有スキルの可視化,それから,企業の人材ポートフォリオとのマッチングなどが今後スピーディーに行われていく可能性が出てきていると。

 一方で,アメリカでは,雇用不安や賃金低下が予想されるので,「キャリアクッショニング」という観点が入ってきていると。

 他方,日本を見ると,社会人が学ばない理由として,そもそも必要性を感じない,何を学ぶべきか分からない,周囲や上司が学習を阻害しているというようなことが起こっているということで,これが解消されていくことを期待されると。

 大学側への期待としては,ニーズを満たすコンテンツの効率的な開発,どこでも手軽に学び続けられるということが必要ではないか。あと,何が身につくのかということをきちんと保証しなければいけないという御指摘がございました。

 委員からは,この際には,リスキリングの延長ではなくて,非常に幅広い専門性を持っていくことも大事ではないかというようなこと。

 それから,個人ベースだと一人ではなかなかできないから,人との関わりの中で,どういうふうに考えていくかということも必要ではないか。

 また,最後に,初等中等教育段階から,生涯にわたって自ら学び続けることの重要性を共有する必要があるということを御発言いただいております。

 簡単ではございますが,これまでの議論のまとめをさせていただきました。

 私からは以上でございます。

【清原分科会長】 
 石橋課長,御説明ありがとうございます。

 生涯学習分科会における第11期の審議の取りまとめや,この間,第12期になりまして,委員の皆様と意見交換をしてまいりましたリカレント教育,リスキリングの問題意識について,反映した概算要求をしていただいているということが分かりました。

 また,皆様とのリカレント教育,リスキリングに関する意見につきまして,資料2でまとめていただきましたので,これをまた共有しながら,本日の議題に深まりを増していきたいと思います。

 それでは,大変お待たせいたしました。本日お越しいただいております放送大学の理事でいらっしゃいます内藤様,そして,副学長でいらっしゃいます加藤様から,「放送大学におけるリカレント教育」について15分程度話題提供いただきます。昭和58年,1983年設立ということですので,ちょうど40年を迎えていらっしゃいます。

 その後,委員の皆様に質疑応答,そして,意見交換をお願いしたいと思います。

 それでは,内藤様,加藤様,よろしくお願いいたします。

【内藤理事】 
 それでは,放送大学より,「放送大学におけるリカレント教育」についての説明をさせていただきます。

 説明は,放送大学の加藤和弘副学長及び私,放送大学学園理事の内藤敏也より行わせていただきます。

 本日の説明する内容は,今画面に映しているとおりでございます。よろしくお願いいたします。

 まず,放送大学の特徴についてでございます。皆様,あるいは御案内かと思いますけれども,放送大学は,テレビ・ラジオ放送,インターネット,あるいは,対面による授業により授業を提供する正規の大学でございます。学部には学力試験はなく,書類選考のみで誰でも入学可能なことから,現在,約85,000人の学生が在籍しております。また,全国に57か所,対面の授業や学生の交流を行う学習センターを設けてございます。これらのことから,「いつでも,だれでも,どこでも」,大学の学習を行えるのが本学の特徴になってございます。

 放送大学は,放送大学学園法に基づき,昭和58年に設立されました。先ほど清原先生から御案内のとおり,本年は創立40周年を迎えてございます。当初は地上波放送により,主に首都圏に授業を提供していたのですが,衛星放送への転換及びインターネットの活用により,現在は全国に授業を提供してございます。この間,大学院の開設,ICT技術の革新による新たなサービスの提供を進めております。

 本学とリカレント教育の関係でございますけれども,設立当初は,広く生涯学習機関としての役割を果たすことが求められてまいりました。ただ,年々リカレント教育への対応の必要性が認識されてございます。現在では,ここにお示ししておりますように,4つの大きな役割の一つとして,職能開発・キャリアアップのための多様な教育の機会の提供を位置づけているところでございます。

【加藤副学長】 
 放送大学副学長の加藤と申します。

 前回の分科会で,大久保委員より,大学のリカレント教育についてお話があったと承知してございます。資料の中で,大学のリカレント教育へ期待される点として,今ちょうど画面に表示されております,御覧の各点が挙げられていました。

 3番目の点につきましては,放送大学での達成状況から,2つに分けてお示ししてございます。放送大学のリカレント教育が,この御期待にお応えできているかという形で,ここから説明をさせていただきます。

 リカレント教育の充実に向けた放送大学の主な取組には,今ちょうど画面に表示されているような,御覧のものがございます。私からは,インターネット配信公開講座による取組について御説明申し上げます。

 放送大学で行っている教育は,大学の正規の授業として行うものと,そうではないものに分かれます。それぞれ表の中の単位科目,非単位科目に対応します。時間をかけて教材を用意し,学生に対して質を保証しつつ体系的に提供するものと,柔軟な構成で学生に限定せずに提供するものとお考えください。どちらにも,放送を利用するもの,インターネットで教材を配信するもの,講義室等で学生と対面して行うものがあります。最後のものが面接授業と公開講演会ですが,これもオンラインで行うライブWeb授業及びオンライン講演会にも取り組んでいます。インターネット配信公開講座は,正規の授業ではない形で,インターネットを介して学習用の教材を配信するものでございます。

 インターネット配信公開講座の例として,数理・データサイエンス・AIに関する教育を取り上げます。

 放送大学では,インターネット配信公開講座として,学生ではない方も対象として,数理・データサイエンス・AIに関する学びの機会を提供しております。インターネット配信公開講座とすることで,いつでも,どこでも,学ぶ方のそれぞれの御都合に合わせて学んでいただけます。教材は,基本的には,15分程度の映像と小テストの組合せでつくられ,一まとまりの内容を短時間で学んでいただけるようになっています。

 学びの目標や水準は,国の「AI戦略」を踏まえて,御覧の図のように設定しています。このうち,大学・高専卒業者全員が学ぶことを想定するリテラシーレベル,その半数が学ぶことを想定する応用基礎レベルの学習については,数理・データサイエンス・AI教育強化拠点コンソーシアムが策定したモデルカリキュラムに準拠して教材を制作,提供しております。さらに高度な内容については,学びたい方がそれぞれの必要や安心に応じて講座を選択できるように,多様な分野の教材を制作し,公開しております。

 以上の講座は,放送大学が独力で開発したものではございません。外部の機関との連携,学外の先生方の御協力があって初めてこうした教育が可能となっております。適切な協力,連携体制の構築は,放送大学が今後リカレント教育を展開していく上で,ますます重要になるものと考えております。

 本学の学生に対しては,正規の授業科目により,数理・データサイエンス・AI教育を行っています。モデルカリキュラムに適合する「科目群履修認証制度」のプラン2つを学生に提示しており,両プランは,文部科学大臣が認定及び選定する「数理・データサイエンス・AI教育プログラム」として認定を頂いております。

 このほかにも,教職を目指す方々を対象とした教職支援講座や,初等中等教育におけるプログラミング教育法の講座など,リカレント教育への取組を進めております。

【内藤理事】 
 続きまして,リカレント教育の充実に向けた放送大学の取組の2つ目として,Web単位認定試験の導入についてお話ししたいと思っております。

 ウェブにより単位認定試験を実施するものでございまして,コロナ禍で,それまで行ってきた集合型の試験の実施が難しくなったことから,2020年より導入したものでございます。一定の試験期間を設けまして,その期間中は,24時間受験可で,自宅など,どこからでも受験ができ,忙しい方でも生活スタイルに合わせることができます。まさに本学の特徴であります,「いつでも,どこでも,だれでも」を加速する取組です。これにより,この資料にお示ししていますように,学生の単位認定試験受験率も大きく向上してございます。

 取組の3つ目といたしまして,学習センターによる面接授業・ライブWeb授業の充実を挙げてございます。

 冒頭でお話ししましたように,放送大学は,全国に57の学習センター,それから,サテライトスペースを設けてございます。47都道府県全てにはあるようになっております。面接授業はここで実施する対面型の授業でございまして,放送授業等では実施が難しい実習・実験型の授業を実施するほか,それぞれの地域の特性を生かした授業を実施できるものでございます。また,学生間の交流なども,対面授業を通じて行うことができます。

 実際,各地域ではかなり特色のある授業が展開されているところでございます。各57学習センターは,それぞれの地域の国立大学等と結びつきを持って運営されているわけでございますが,それぞれの国立大学等の教授等を講師として面接授業を開講してございます。

 中には,その地域の大学の強みを生かした授業を開講している例もございます。例えば,宮城学習センターで,東北大学の研究に基づく環境放射能の講義を行ったり,近畿大学と連携した水産養殖の授業を行ったり,あるいは,九州地域で頻発する地震や洪水等に係る第一線の研究者のリレー講義,さらには,ビジネスへのデザイン思考の応用に関する九州大学の研究に基づく講義などが実施を現にされているところでございます。

 また,地域の産業との連携も行っておりまして,例えば,航空ビジネス,それから,酒蔵,そういった地域産業に関する講義も実施しているところでございます。

 一方,特色ある面接授業といたしましては,ここにありますように,様々なフィールドワーク,それから,特異な言語といいますか,非常に学ぶ方が少ない希少言語などに関する授業も,多くの学習センターで実施されているところでございます。

 しかし,このように多様な面接授業,実は面接授業全体で年間3,000ほどやっているのですけれども,その多くは,現在のところは,各地の学習センターに実際に行かないと受講ができません。どんなに,興味があっても,やはりその実施している期間に,その場所に行かないと受講できないというのがネックになってございます。特にとがった授業などは非常に関心のある方が多いかもしれないのですけれども,それぞれの通える範囲で十分な受講者を確保できないといったところもございます。

 そこで,2022年,コロナ禍を契機に,ライブWeb授業という,Zoomによる同時双方向授業を新たな教育形態として導入いたしました。これにより,各学習センターの特色ある授業の一部を全国に配信することが可能なとなり,例えば,先ほど申し上げましたような地域の大学の優れた研究等の講義を全国に届けることも可能となります。本学では,各学習センターと連携し,そうしたプログラムの開発の準備を現在進めているところでございます。

 ここで,本学として,職能開発・キャリアアップのためのリカレント教育として,実際にどのような機会を提供しているかを少し見てみたいと思います。少し話題が変わって恐縮でございます。

 まず,本学,放送授業とか様々な形態の授業を実施しているわけでございますが,そういったものの積み重ねにより,特に正規の課程を卒業・修了することにより,学位を取得することができます。放送大学が提供しているのは,学士(教養),修士・博士の場合は,修士(学術),博士(学術)でございます。

 学生の中には,より専門的な学位を取りたいという方もいらっしゃいます。そういった方々は,放送大学だけではなかなか難しいのですけれども,他大学,あるいは,専門学校などの単位も組み合わせることにより,学位授与機構に申請することで,その他の学位,例えば,学士(看護学)などは比較的多く取られているところでございます。

 また,仕事等に必要な資格の取得を目指す方もいらっしゃいます。中には必要な全ての科目を本学で履修できる資格もございますが,一部のみ履修可能というものもございます。

 そのほか,こういった資格とか学位ではなく,知識を取得したいという方,ただ知識の習得の証明が欲しいという方に対して,通常の授業科目であれば,単位の授与という形で提供してございますし,一定のまとまりについては,一定の科目群の履修に対する履修認証制度,これは文科省で設けている制度なのですけれども,これを提供することも行っております。

 それから,正規の授業外であれば,インターネット公開講座,先ほど加藤先生が御説明しましたような,それを通じて,それをデジタルバッジという形で認証するような仕組みも設けているところでございます。

 ただ,こうしたリカレント機会の実際の提供に対する学生側の活用ですけれども,多くは個人の自主的なステップアップ,キャリアアップのために使われることが多くございます。先ほども委員の御発言の中でございましたように,日本の場合は,それを次の職業に生かすという場面がなかなか多くなく,この広がりも少し限界があり,企業等が実際に研修等で活用していただくということがより必要かと思っておりますが,現状としては,その例が少ないような状況になってございます。

 そこで,本学,これを非常に大きな課題といたしまして,企業,地域のニーズの積極的把握や反映,これを行ってまいりたいということで,現在,企業や地方公共団体の訪問を進めているところでございます。

 このページに掲げてありますのは,最近私どもの幹部職員が参ってお話を伺ってきました,静岡県にある三栄ハイテックス株式会社というエンジニアリング企業の事例でございます。

 この会社では,ボリュームゾーンとなる中堅社員向けの研修制度の充実が課題になっており,このために,放送大学の授業科目の受講による研修制度を開設されたところでございます。本年2学期には,88名の社員が科目履修生として入学いただいてございます。

 この企業が放送大学を選ばれた理由としては,学びやすさ,費用面のほか,コンテンツの豊富さ,カリキュラムが安定していることで,社員の視野を広げる研修としての評価を頂いてございます。

 一方,専門の最先端の部分,そういったもののスキルを広げるという意味では,社会に頼るというよりは,企業内の研修等で育成,ブラッシュアップを行われるということで,放送大学に対しては,そこは期待しないので,放送大学の研修上の位置づけを明確にして使わせていただくというようなことでございました。

 社員の育成については,このような方針で臨まれている企業も多いのではないかと思っているところでございます。

 ここで先ほどお示ししました,前回の分科会で大久保委員が示されました大学のリカレント教育への期待を振り返りまして,本学の達成状況を見てみたいと思っております。

 先ほど申し上げましたように,いつでも,どこでも,という面ではかなり進んでいるかと思っておりますが,最新のニーズの反映,効果的なコンテンツの開発,手軽に,学びたい事項を学ぶ仕組み,学習成果の保証については,それぞれ現在進めている途上でございます。これらを順次システム化してまいりたいと思っております。

 これらを進めるに当たっても,やはり企業等のニーズの反映,これは非常に重要な課題だと思ってございます。その際に,先ほどの企業が言われたような本学の特徴,これを本学としても認識いたしまして,本学が企業の連携等で果たし得る役割を提示していくことが必要であると考えてございます。

 現在,学内で検討しております,本学が提供するリカレント教育・リスキリングの在り方の考えをここでお示ししたいと思っております。

 企業が必要とするリカレント・リスキリング教育の段階を幾つかに分けまして,例えば,真に専門性の高い知識,これは先ほども言われた社内の研修が中心になってくると思いますが,例えば,大学で提供できるとしても,共同研究等で最先端の知識・技術を提供するという形でないと,なかなか難しいのかなと思ってございます。

 一方で,この三角形の底辺にあります専門性の知識の基盤となる知識,これは,カリキュラムが安定し,分かりやすく提供できるものであれば対応可能でありまして,むしろ我々の放送授業・オンライン授業の特徴を生かして活用いただけるのではないかと思ってございます。

 この真ん中の丸2のところでございます。最新の知識を含む専門的な知識,最先端の知識まではいかないのですけれども,その一歩手前の部分の専門的な知識でございます。これにつきましては,独力で研修等を行われるという企業もあろうかと思いますけれども,外部教育機関におけるリスキリングのニーズのある企業もあろうかと思っております。これについては,最新の知識の提供という意味では,なかなか放送授業等では限界がありますことから,新しい授業形態であるライブWeb授業,あるいは,面接授業も含めて,提供体制を強化してまいりたいと考えてございます。

 本学では,企業・地域等のニーズの把握に一層努めまして,これを反映することにより,リカレント教育・リスキリングへの活用をますます充実してまいりたいと思ってございます。

 これで放送大学の説明を終了いたします。どうもありがとうございました。

 

【清原分科会長】 
 内藤理事,加藤副学長,御説明ありがとうございます。

 本日,資料38ページにポイントを整理していただきましたが,リカレント教育の充実に向けた放送大学の取組の5点について詳細に御説明いただき,28ページで,具体的に企業との連携のイメージも御提案いただきました。

 それでは,11時頃までを目途に,ただいま頂きました御説明を受けて,皆様からの質疑応答,そして,意見交換を行いたいと思います。

 御発言のある方は,挙手ボタンを押していただきますか,会場にいらっしゃる方はネームプレートを立てていただくようにお願いいたします。

 いかがでしょうか。どなたからでも結構でございます。

 それでは,澤野委員,お願いいたします。

【澤野委員】 
 放送大学に関して,大変充実した御報告ありがとうございました。

 一つ質問があるのですけれども,MOOCsのようなタイプのリカレント教育の方法は,いつでも,誰でも学べるということで,数年前から随分話題になっていたのですけれども,結局,やはり修了率が非常に少ない,悪いというようなことで,少しブームが沈静したように思います。特に欧米なんかですと,無償で何万人もが一つの講座を履修するみたいなタイプのものが多くて,非常に期待されたのですけれども,結局,有償のコースでないと資格とか学位授与に結びつかないというようなことも多分あるのかもしれないのですけれども,修了率の低さというのが問題になっているのですが。

 放送大学の場合は,そういったデータとか把握されているのかどうか。あるいは,コースによっていろいろ違うと思うのですけれど,単位が取得できるように,何かサポートシステムのようなものがあるのかどうかというのは,一つ伺いたいと思います。

 放送大学は40年も続いていて,大変コンテンツも多くて,MOOCsのような形で,インターネット配信などができるようになれば,リカレントやリスキリングとして活用する期待ができるのではないかと思います。よろしくお願いします。

【清原分科会長】 
 修了率というような把握をしていらっしゃるかどうかという御質問です。よろしくお願いします。

【内藤理事】 
 まずMOOCsとの関係で言いますと,実は,JMOOCを立ち上げた際に,放送大学は,その一つの一角といいますか,その推進の一角を担ってございまして,現在もJMOOCは提供してございますし,それとは別に,OCW,オープンコースウェアも無料で提供している。これはまた別の機関が事務局になっているのですけれども。そういったコンテンツの提供はしているところでございます。

 ただ,先生がおっしゃるように,若干,一時期の部分から薄くなっているのは,一つは,無料ということで,提供した後のフォローアップがなかなかできていないのと,それから,本当に学習者任せになってしまっていて,例えば,JMOOCの中で,どれをどういうふうに取っていけば自分の専門性が身につくのか,そういったガイドラインのようなものがまだまだやはりできていない部分があろうかと思っております。

 学習する方というのは,単純な関心だけではなくて,一定の,特にリカレント・リスキリングとかだと,これを学ぶことによってどういう専門的なものが体系的に身につくかというところが求められているものも多くございますので,そういったものについては,例えば,放送大学であれば,カリキュラムポリシーに基づいた学習体系に基づく提供,それから,エキスパートと言っていますが,履修証明であると,一群の専門性が身につくというようなゴールを示して,それで提供いただく。その際に,やはり一里塚のように単位履修であるとか,エキスパートの取得であるとか,最終的に学位の取得,つまり,学習する側に取得の目標がないと,なかなか継続は難しいのではないか。

 最近ある方に放送大学に入学いただいたんですけれども,その方は放送大学を非常に御存じでいらっしゃって,いや,放送大学は実は非常に難しいのよ,誰でも入れるけれども,これを卒業するのは相当大変なのと。それが伝わり過ぎている感はあるのですけれども。本当に卒業まで,学位取得まで至るのは結構大変なので,少しずつ目標を達成いただくというような形の仕組みを入れる必要があり,それは放送大学が十分かというと,まだまだ途上ではないかと思っています。

 実際の学生の履修状況については,加藤副学長から御説明いたします。

【加藤副学長】 
 学生がこの科目を受講する,履修すると言って履修の申請を出した場合,その科目の単位を取得する確率は,大体現時点では8割から9割だろうと認識しております。試験の難易度によって単位の取得率はかなり変わってきます。

 問題は,個々の科目についてはそうなのですが,124単位,必要な単位を全て取得して卒業する学生の比率というのは,かなり少なくなってしまいます。ただ,正確にこれがどのくらいの割合かというと,この数字,残念ながら正確なものは把握してございません。ただ,毎年毎年6,000人程度の卒業生がいます。それで,在校生は8万何千ですから,それを考えていただくと,決して高い割合での卒業比率ではないということが御理解いただけるかと思います。

 これは,理由といたしましては,卒業を目的とする学生ばかりではないということ,つまり,大学にだらだらと言ったら少し失礼ですけれども,できるだけ長い間いて,自分のペースで学びたいという学生が少なからずいるということが関係していると思っております。

 無料ということに関連いたしますと,放送大学では無料で提供できる教材も幾つか用意してございまして,一般の方から御利用いただけるものとしては,オープンコースウェアといって,放送授業をそのまま映像若しくは音声の形で配信するもの,それから,教職関連の講座についても無料で公開してございます。

 こういったものの利用率,実はそれほど高いようには見えておりません。これ,アクセスログなどを取っておりませんので,正確な把握ができていないという点ではやはり問題はあるのですが,こういったものをうまく活用することで,何かお役に立てることはないかということで,例えば,教職に関連する講座につきましては,千葉県の教育委員会と先日連携協定を締結いたしまして,そういった先生方のリスキリングのために活用するといったような形を現在検討中でございます。

 また,少し話はリスキリングとは外れてしまうかもしれませんが,放送大学で現在,高大連携の取組を進めています。それの関連で,私,先日,千葉県立のある高校に行ってきたのですが,そこの校長先生とお話しさせていただいて,高校生に大学の授業を学んでもらう,そのときにお金がかかるとやはり大変ですよねというような話をいたしましたら,先生の方で,ただだと,ただだからやめてもいいやという気になってしまう生徒が結構出てきてしまって,多少なりともお金を取った方がむしろ生徒にとってはいいのではないかというようなお話を頂きました。無料ということがとかくもてはやされる今日ですけれども,お金を払うということで,自分の自覚を高めることができるという効果もあるのではないかなということに思いがあった校長先生からの話でした。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。

 澤野委員,よろしいでしょうか。

【澤野委員】 
 ありがとうございます。

【清原分科会長】 
 これから,小路委員,古賀委員,関委員,大久保委員,綿引委員,野田委員の順で御発言いただきます。恐れ入ります。次の議題もございますので,簡潔な御発言に御協力をお願いします。

 それでは,小路委員,よろしくお願いいたします。

【小路委員】 
 ありがとうございます。

 私は産業界,経済界の立場で参加させていただいておりますので,そういった立場で質問を2点ほどさせていただきます。

 その前に,今日の御説明,大変ありがとうございました。放送大学について大変理解が深まりました。

 企業,産業界として,大学の方に,先ほども少し触れました卒業方針,ディプロマポリシーについて,もう少し明確にしてほしいということを求めつつあります。放送大学としてのディプロマポリシーについて,どういう考え方をお持ちなのかということをお聞きしたいのが1点です。

 大学で何を身につけたのか。履修という実績ではなくて,それをどう生かすのかということを,経済界としては知りたい。いわゆるアウトプットできるインプットは何なのかということを知りたいので,卒業方針についていろいろ求めるところなのです。

 それから,もう1点は,博士人材について。御存じのように,この8年ぐらい激減しています。やはり日本の国際競争力というのは,経済界でも,御存じのように,今落ち続けております。技術立国,知財立国を経済界としても目指したいのですけれども,そのためには,高度専門人材の博士の人数そのものが減少しているということに対して,非常に危機感を持っています。今日も博士の御説明ありましたけれども,こういった博士人材を放送大学としてはどのような形で育てていきつつあるのか,その辺,簡単で結構でございますので,お教えいただければと思います。

 以上です。

【清原分科会長】 
 小路委員,ありがとうございます。

 経団連の副会長をお務めというお立場から,2つ質問を頂きました。よろしくお願いします。

【内藤理事】 
 ディプロマポリシーですけれども,どうしても放送大学は,生涯学習も視野に入れていることから,学部段階では総合的な理解力を身につけ,簡単に言いますと,こういったことで職場や日々の生活などで生じる様々な課題について問題の本質を見極め,それらの課題を解決するための糸口を見いだす人材を養成すると,かなりふわっとした形になってございます。

 ただ,放送大学,修士・博士それぞれございますので,より上に行くほど,このディプロマポリシーとかが少しとがってくるような状況でございますが,学部段階では,やはり少しふわっとした形に現在はなっているところでございまして,それは,どちらかというと,ポリシー全体というよりは,提供するカリキュラム,それから,その提供の仕方でやっていくのかなというふうに思ってございます。

 それから,博士については,開設いたしましたけれども,実は博士は,教育の内容から,放送とかに頼る部分が当然一部はあるわけですけれども,やはり対面の部分が多くございまして,実は,開設時に期待したほど増えていない状況でございますけれども,ここを,やはり博士をより放送大学を通じて取っていただくということに,我々,考えていかなければいけないと思っております。

【小路委員】 
 ありがとうございました。

【清原分科会長】 
 小路委員,よろしいですか。

 それでは,続きまして,古賀委員,お願いいたします。

【古賀委員】 
 御発表ありがとうございます。古賀でございます。

 私自身,NPOの活動と併せて,専門職大学院,いわゆるビジネススクールで講義を担当している中で,学習ニーズがかなり多角的になっていることを実感しております。放送大学でも,様々な関係機関と連携しながらリスキリングのニーズを反映されているということだったんですが,当の受講生も恐らくニーズがかなり多岐にわたっておられると思われます。受講生からのフィードバックの仕組みなどがおありでしたら,お聞かせください。

 それから,もう1点ですが,放送大学は残念ながら企業での利活用が進んでいないということでしたが,一方で,各地に57の拠点がおありということでした。地方都市では地場企業による経済団体や地場大手から中小まで様々な企業があり,その辺りへのプロモーションはされているのでしょうか。

 以上です。

【清原分科会長】 
 古賀委員,ありがとうございます。

 2点御質問いただきました。いかがでしょうか。

【内藤理事】 
 フィードバックについては,学生アンケートという形もあるのですけれども,私ども,学生からのお問合せ窓口を,かなりきちんとした窓口を設けまして,専門のスタッフを設けて,そういったところで,苦情みたいなものが結構多いのですけれども,そういうものを対応してございます。大きなところはアンケートを使って,そこもやはりもう少し体系的に反映させていきたいと思っております。

 学習センターを通じた企業等の連携,あるいは,地域も含めてなのですけれど,やられているセンターと,あまり十分にやられていないセンターがある状況でございます。やられているところは,かなり地域の企業のところに出かけていって,いろいろニーズを伺って,それを面接授業に反映したりというようなことをやられているセンターもあるのですけれども,全体的には,これから企業,地域の連携の中で進めていく必要があると考えてございます。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。

 古賀委員,ありがとうございました。

 それでは,続きまして,関委員,御質問,御発言お願いします。

【関委員】 
 関でございます。放送大学の貴重な現状を教えていただきまして,誠にありがとうございます。

 振り返ると,私も平成元年に千葉の幕張メッセで生涯学習フェスティバルがあったときにお伺いさせていただいき,いろいろな情報を頂いたことを思い返します。

 その時,私どもは地方の生涯学習センターなのですけれども,放送大学で取り組んでおられる内容に非常に関心を持ちましたが,当時はテレビ等を通じての映像をビデオに録画して,それぞれのセンターで保管しなければなかなか対応ができないということで諦めたのですけれども,今であれば,デジタルのコンテンツで対応しておられるかと思うので,例えば,愛媛であれば松山にセンターがございますけれども,その下に私どものような市町村が,もう一つ下の段階のサテライトとして共につながることができないものかと考えております。地方はどうしても学びのコンテンツが少ない状況なので,放送大学の貴重なコンテンツを共に活用させていただくような,そういうふうな手当てができるものかどうか,放送大学のお考えをお伺いできたらありがたいなと思います。

【清原分科会長】 
 放送大学と地域の公民館等との連携について,いかがでしょうか。

【内藤理事】 
 これも結構まちまちです。

 実は,学習センターやサテライトによっては,生涯学習センターに入居させていただいているところがございまして,そこはかなり活用いただいてございます。

 少し距離が遠い場合は,なかなか連携が進んでいない地域もあるのですけれども,要は,地域で提供する生涯学習センターの講座と放送大学の提供する授業との役割を少し明確にしながら連携していくのかなと思ってございます。どちらかというと,生涯学習センターは入門編みたいな形で,放送大学の場合,少し高度ですので,それで物足りないような方をこちらに誘導するような仕組みができないかということで,例えば,千葉県などとはそういうお話をさせていただいているところで,これも少し全国に広げていければと思っております。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。

 関委員,どうぞ。

【関委員】 
 ぜひ一緒に検討させていただけたらと思いますので,今後ともよろしくお願いいたします。

【清原分科会長】 
 それでは,大久保委員,御発言をお願いいたします。

【大久保委員】 
 ありがとうございます。大久保でございます。

 先ほど,私のプレゼンにつなげてお話をさせていただきまして,ありがとうございました。

 放送大学には以前から関心を持っておりまして,何年か前にも研究目的でヒアリングにお邪魔したこともあるのですけれども,放送大学ならではの役割とか機能というところがリスキリングに役に立つのではないかなというふうに思っております。

 そこで,幾つか,私なりにこういうことを期待しているのですけれど,どうでしょうかということを二,三お話ししたいと思うのですけれど。

 1点目は,小さなニーズに応えていただきたいということです。どうしてもたくさんの人が学びたいと思っている講座しか提供されない傾向が,一般の教育ビジネスにはございまして。しかし,それぞれ個人の学びたいものというか,仕事上必要なリスキリングのニーズって細分化しているのですよね。ですから,人数は少ないかもしれないけれども,それに対するニーズは深いというものが多くなってきている。こういうものに応えるためには,講座の多様性が必要ですし,講師の多様性も必要だということで,そういうことを放送大学が担っていただけるとうれしいなと思うのが1点目です。

 2つ目には,先ほど御説明やポリシーと若干反するかもしれないのですが,実は放送大学は,出たり入ったりできる場だといいなと思っていまして,そういう意味で,一生の生涯の中では,学習ニーズが発生するところってまちまちに存在しますので,そういうときにふと放送大学のことを思い出して訪ねてみる,そういう存在であるとうれしいなというのが2点目です。

 それから,3つ目は,これは以前にヒアリングさせたときにすごく実感として思ったのですが,実際,現在の放送大学って,結構年齢が高い方々が多いですよね。私は,50代とか60代ぐらいの年齢になった人たちが一番気軽に参加できる教育機関と思っていまして,そういう意味で,50代の方々で,これから定年を迎えようとしている人たちが,一般教養ではなく,自分のキャリアのために,もう一回追加的な学習をする場としての役割を果たしていただくということは大事かなと思っています。

 最後,4点目なのですが,企業の研修について言えば,研修を丸ごと放送大学でというのって一般が発想しづらいところもあるのですけれど,ただOFFJTを提供すると,OFFJTを受けた従業員たちが,OFFJTを受けたことによって自己啓発ニーズが発生するのですよね。つまり,OFFJTをやった後のプラスアルファの自己啓発的なものを受け止めるといいますか,そういうOFFJTを補完するような役割を放送大学が担っていただけると,非常に企業にとって活用の場面が広がるのではないかなというふうに思います。

 以上4点,好き勝手なことを申し上げましたけれど,お願いできると非常にうれしいなと思っております。

 ありがとうございました。

【清原分科会長】 
 大久保委員,ありがとうございます。

 4点について御提案いただきました。受け止め方,いかがでしょうか。

【内藤理事】 
 それぞれ簡単に。

 小さなニーズを拾っていくというのは,まさに重要かと思っています。放送授業だと,受講者1,000人とか,そういう単位になってしまいますので,それだけだとなかなか厳しいところなのですが,先ほど申し上げましたライブウェブ授業とかを使えば,今後そういうこともできるのではないかと思っております。

 出たり入ったりというのは,まさに本学で科目等履修生であるとか,先ほどのインターネット公開講座,これをやはりもっと活用していかなければいけないと思っております。

 50代,60代の方のキャリアの再構築のため,例えば,放送大学,修士とかを持っていますので,これを機会に,例えば,定年近くなったことを機会に修士を取っていただいたり,あるいは,別の分野の学位を取っていただくということでは適していると思うのですけれど,そこの広報をやはりしていかなければいけないかと思っております。

 OFFJTの役割については,先生が御指摘いただいたことを受け止めまして,今後充実してまいりたいと思っております。

【大久保委員】 
 ありがとうございました。

【清原分科会長】 
 加藤副学長,どうぞ。

【加藤副学長】 
 すみません,お時間のないところ。

 最初の,小さな,しかし多様なニーズに応えていくということにつきましては,今,理事から話がありましたように,面接授業,ライブWeb授業でも対応していくつもりでございますが,面接授業をさらにインターネットを通じて発信して,いろいろなところで受講できるようにするという,ハイブリッドというか,ハイフレックスというか,そういった形態の授業についても今年度取り組む予定にしております。

 これもまた放送大学が,そういったローカルな,あるいは,規模としては小さいのだけれども重要なニーズというものを拾っていく手段になるのではないかと考えております。

 また,生涯を通じて放送大学を学びの場にしていただくための試みとして,先ほど触れた高大連携が重要な役割を担ってくるのではないかと考えています。若い時期に放送大学というものがあって,そこでこんなことができるのだという経験を持ってもらうことで,大きくなって何かあったときに,そういえば放送大学ってあったなというのを思い出してもらう,そういう機会にしていただくことができれば,これはいろいろな形で,放送大学にとっても,また,放送大学で学んだ方々にとっても示唆になっていくのではないかと期待しているところです。

 以上,補足させていただきます。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。

 それでは,綿引委員,御発言をお願いいたします。

【綿引委員】 
 綿引でございます。

 私は少し視点を変えまして,先ほど石橋課長からお話しいただきました総合政策局関係の概算要求の中で御説明いただいたところで,少し気がついたことを,御質問も含めてやらせていただきたいと思います。

 先ほど御説明ございました,9ページの外国人児童生徒への教育の充実というところで,現状の時間軸が書いてございますけれど,この入国・就学前の児童に対して,現地で,いかに日本語に対して興味を持ってもらって,それを支援して,そして,日本に入国をして就学に備えてもらう,こういうサイクルが必要なのではないかなと思っておりまして。

 例えば,私ども,海外の日本人学校を担当しておりますけれども,メキシコの日本メキシコ学院というところは,もう50年近く,メキシコ人の子供たちに日本語を教えております。現在でも生徒は1,000名おります。そこに現地の日本人の永住組の方々が,自助努力で日本語を教えているわけですが,例えば,この子たちをしっかり支援する,その子たちを受け入れることによって,日本に入ってきて日本で働きたいと思うような動きにつながっていくのではないかなと,こんなふうに思うところでございまして,ぜひ入国前の支援策も一連の政策としてお考えいただいたらいかがかなというふうに思ったというのが1点目でございます。

 それから,地域連携のコミュニティ・スクールのところで,先ほどの御説明の中で,これは御質問なのですが,12ページを拝見していて,上の現状のところで,学校運営協議会を置く学校が令和4年で15,221校,これに関する全体の予算で約70億円と,大変すばらしい支援策だと思うのですけれども。一方で,例えば,先ほどと同じ日本人学校というのは,50年間,学校運営委員会というのをずっと続けてきております。そこにはいろいろな歴史がございまして,学校側の運営委員会側が口だけ出して汗もかかないと,こういう運営委員会の時代は,学校側がやはり運営委員会,ここでいう協議会と距離を置き始めて,結局,教育の質が上がらないという時代を変遷してきているのですね。

 なので,次の予算額も増額を要求していらっしゃるのですけれど,数を追いかけということも大事なことだと思うのですけれども,ぜひ教育の質を上げていく,そういう活動をしている協議会,そこに厚めに重点配分をすると,こういった考え方を取り入れていくというのも大切なポイントではないかなと,こんなふうに思うところでございます。

 以上でございます。

【清原分科会長】 
 綿引委員からは,概算要求について御意見いただきましたので,それは承らせていただきまして,放送大学さんへの質疑応答,意見交換に戻らせていただきます。

 それでは,野田委員,御発言をお願いいたします。

【野田委員】 
 ありがとうございます。

 放送大学について,改めてお話を聞かせていただきました。個人のスキルアップとか,様々な学び直し,そういったところで大変すばらしい取組というのか,存在であると思います。

 ただ,それを社会全体というのか,もう少し広げていくということになってくると,現実に日本の社会というのは学歴社会であり,偏差値評価社会であるので,そこに放送大学がきちっと乗っからないと,社会全体の認知って,もう無理だと思うのですよね。だから,先ほど関委員も言われましたが,地方自治体と連携しながら,生涯教育にとって非常に必要な立場だとか,あるいは,個人とか,自治体とかというふうに,特化して,さらにそこに私たちもうまく活用できるというか,乗っかっていくというところをもっと進められた方がいいと思うので,卵と鶏みたいな話になりますけれど,多分,放送大学さん,幾ら頑張っても社会認知というのはなかなか大変だと思うのですよね。これも意見として申し上げたいと思います。

 あと1点だけ。総合政策局から資料1で御説明ありましたが,例えば,令和4年度の予算で既に決算が出ていると思うのですけれども,不用額というのは総合政策局で一体幾らなのかということで。

 なぜその質問をするかというと,いろいろと政策はあるのだけれど,市町村から見ると,非常に使いにくいとか,使いたいけれども使えないとか,あるいは,国,都道府県,市町村,3分の13分の1だけれど,都道府県,出さないよというところもあるのですよね。そうすると,じゃ,何も使えないねというのもあったりして,やはり予算と不用額って,何で不用額が出たのというところが全然市町村に,私も実は16年首長をやっていますけれども,全く伝わってこないので,今度,そこは徹底的にいろいろお聞きしたいなと思うところなので。

 僕らは,決算委員会で結構不用額,なぜ不用額が出たの,その理由は何というのは,割と決算委員会ではしっかりと,議会では聞かれるので,そのことを踏まえながら,次年度の予算編成とか予算執行には非常に気を遣うのですけれども,どうもその辺りが,国会もあまり決算委員会は熱心では……。ごめんなさい。少し不謹慎な発言をしましたけれど,決算委員会での議論ってどうもすごく大きくて,市町村から見ると,それぞれの事業の制度設計まで入ってこないので,我々としたら,せっかくついた予算って,できるだけ使いたい,活用したいという思いがあるので,その辺りのことはどうなのかなと。

 もし時間がこの後,押しているんでしたら,別に今,御回答はいいのですけれども,意見として2つ申し上げておきます。

【清原分科会長】 
 野田委員,御意見ありがとうございます。

 またお時間のあるときに,事務局から個別に対応していただければありがたいと思います。

 それでは,放送大学さんへの質疑応答,意見交換に最後の御発言,牧野副分科会長。

 ごめんなさい。少しお待ちくださいませね。私の方で把握がしっかりできていなくて,ごめんなさい。

 山内委員,御発言の手が挙がっていたのを,私,見逃しておりまして,山内委員,いらっしゃいますか。御発言,どうぞ,御遠慮なくされてください。

【山内委員】 
 時間があるところ,申し訳ございません。

 今日,放送大学さんがすばらしい試みをされていらっしゃることが分かって,私としても大変うれしく思いました。

 1つ確認させていただきたいのが,数理・データサイエンス・AI講座の履修者数と修了者数がどれぐらいなのかというのは,すぐ分かりますでしょうか。

【清原分科会長】 
 御質問いただきました。事例として御紹介いただきました数理・データサイエンスの履修者の数について,お分かりになりますでしょうか。

【加藤副学長】 
 今御質問くださいましたのは,数理・データサイエンス・AIのインターネット配信講座のことでよろしいでしょうか。

【山内委員】 
 そのとおりです。

【加藤副学長】 
 そうしますと,令和5331日時点までの延べ受講者数が,4,441名という数字が上がってきています。

【清原分科会長】 
 4,441名だそうです。山内委員,どうぞ。

【山内委員】 
 そのうち,修了者数は,今の話だと,分からないということですよね。

【加藤副学長】 
 はい。配信講座の受講者数であって,完全に修了した,つまり,証明書が発行された数ではないです。

【山内委員】 
 分かりました。そうすると,経験上,最後まで修了している人は少ないと思います。

 すみません。なぜこの質問をしたかというと,そのスケールをどう上げていくかということが,多分これから非常に重要になってくると思うのですね。

 これは放送大学さんがどうこうではなく,実は,我々も,日本語で日本人に対して抗議を配信すると,なかなかその数字が上がっていかないというところがあって,それを上げていくために,やはり単独の大学やコンテンツベンダーができることがもう限界に来ているのではないかところが気になっております。一方で,グローバルムークの方は順調に伸びていて,英語で出している方は,実はどんどん修了者数も伸びているのですね。

 この差は,実は,最初に澤野委員がおっしゃったところに関係しますが,修了証があまり価値がないと,やはり履修率が上がらないのですね。実は,東大も,有料講座で出しているコースは,全然修了者数とか率が低くなくて,50%とか70%いくのです。普通の通信教育と全く変わらないぐらいの数値になります。それはやはり修了証に価値があって,みんな履歴書やリンクトインに記載するというのが,当たり前になっており,転職に有利になるから頑張ってやるし,そういう修了証だから,企業が社員に取得を奨励していて,助成金を出しているのですよね。

 そういうエコシステムみたいなものを,放送大学をある種リーダーにしていいと思うのですが,日本の大学全体,生涯学習機関全体がそのようになるように,しっかりやっていかなければいけないと思いますし,そのためには,場合によっては,企業が,例えば,放送大学さんのそういうプログラムを取ると,企業内教育の一部がそこに移るわけだから,その分,企業が有利になるように,場合によっては助成金を少しインセンティブとして出すなど,教育訓練交付金のような直接的なものに加え,そういうエコシステムをつくるための日本全体の仕組みづくりみたいなものがこれから重要になってくると感じました。

【清原分科会長】 
 山内委員,ありがとうございます。

 この御意見は,先ほど小路委員もディプロマの方針という問題提起されましたし,澤野委員も最初に履修との関係で御発言いただいたことと関係することで,私たち生涯学習分科会としても,今後,この辺り,放送大学の皆様も含めて,御一緒に考えていければなと思っているところです。御意見ありがとうございます。

 辻委員,御発言をお願いいたします。

【辻委員】 
 ありがとうございます。

 御報告ありがとうございました。特に,企業の研修として放送大学を活用したらどうかというところに,私,大変関心を持ちました。

 そう言いますのも,前のこの審議会のテーマで,誰も取り残さない社会をつくるというのを大切にしたと思うのですね。それと,今議論しているリカレント教育においても,誰も取り残さないようにどうすればできるのだろうかと考えたときに,中小企業にとっては大変負担にもなるし,非正規の方々もいる。これに訓練給付金を出すとなると,膨大なお金にもなるだろうし,時間もそういう方々はあまりないというようなときに,放送大学で学ぶ,これを企業の方が応援をするという仕組みは,大変効率もいいし,可能性のあることだなと思って伺いました。

 それから,もう一つ,取り残されがちな人たちというのは,社会に一旦出たけれども,うまく適応できずに,例えば,ひきこもりになっているような若者がいる。そういう若者がもう一回社会に出ようとするときに,例えば,居場所のようなところで少し自分に自信がよみがえってきて,そこから改めて学び直そうかということになってくると思うので,こういう居場所に来ている若者と放送大学が結びついていくというようなことも大変大事かなと思っております。これは放送大学さんにお願いするというよりも,もう政策的な課題として,てこ入れをしていただいて,進めていただきたいなと思って伺いました。

 質問ではなくて感想です。よろしくお願いします。

【清原分科会長】 
 辻委員,貴重な視点を提起していただきまして,ありがとうございます。

 放送大学さんから,このやり取りの全体を通して,御発言がありましたら,どうぞ。

【内藤理事】 
 今の御発言の中で,ひきこもりだった方の受皿というお話がございまして,先ほど申し上げました単位認定試験をウェブにし,それから,ライブWeb授業を導入したことにより,学習センターに一切通わず,自宅で全ての124単位を履修することも可能になりました。実は,放送大学の中には,やはりそういうひきこもり等の背景を持った方もいらっしゃいます。

 ただ,放送大学が今少し困難を抱えておりますのは,例えば,そういう方々,高校での受皿ではスクールカウンセラーとかスクールソーシャルワーカーといった方が手厚く支援をしているのですけれども,これが大学になった瞬間に,そういった支援がかなり十分でなくなる。そこは放送大学も同様でございまして,高校で手厚く支援されていた部分を,大学で,形としては受皿になり得るのですけれども,そこの対応は非常に課題となっておりますし,多くの遠隔教育系の大学でも同様の課題は抱えておられるのではないかと思っております。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。

 それでは,このコーナーの最後に,牧野副分科会長,御発言をお願いします。

【牧野副分科会長】 
 すみません,お時間のないところ。

 御発表どうもありがとうございました。

 少し観点が変わるかもしれませんけれども,私からは1点だけ,少し大きな枠組みでお聞きしたいと思います。

 今年,放送大学が40周年ということで,1983年に設立された,そこを少し重視をしたいと思いました。いわゆる飲み屋談義風には,1983年というのは,日本社会が,従来の製造業中心の社会から消費社会に入っていく入り口であったと言われたりするわけです。特にその頃に,例えば,今,舞浜にあるレジャーランドが造られたりですとか,個性化ですとか個別化の時代に入ったと言われていて,しかも,その時に放送大学が設立になったということは,従来のいわゆる通信教育と言われている,例えば,郵送で行う教育であったりですとか,ラジオ講座のようなものから,テレビを中心にした教育に切り替わっていく時期に入ったのであろうと思うのです。

 そして,ちょうどその辺り,83年,84年ぐらいから,日本社会がいわゆるイースタリンの逆説ということでいきますと,物の豊かさをベースにすることよりは,心の豊かさを重視するような社会に入っていったということが言われていまして,その意味で,社会が大きく変化するとば口で放送大学がつくられたと言ってよいのではないか。

 その後の84年に臨教審が設立されて,そして,学校が荒廃していくといったことをてこにして,いわゆる学歴社会から学習社会,又は学習歴の社会へ,さらに,それに加えて,雇用構造も変えていこうと議論が起こったのですけれども,それがバブル経済の中で消えていったといったことがあったかと思いますが,その後,バブルがはじけて不況に陥っていく中で,平成を終え,現在に至っているということです。

 そして,2023年,コロナ禍を経たところで社会の大きな構造転換を,私たちはそれを目の当たりにしなければいけなくなってしまっていて,そして,いわゆる少子高齢・人口減少と人生100年を生きる社会が出現している。さらに,今,気候変動等で,ある意味では大きな社会的な,また世界的な大きな構造変化を,私たち自身が日常生活で引き受けなければいけなくなってしまった時代に至っているわけです。

 すみません,少し大きな話になってしまいましたが,その中で,例えば,この40年間,放送大学が新しい取組をされてくる過程で,ある意味で,大学とは何かとか,先ほど山内委員もおっしゃったと思いますけれども,また高等教育とは何かといったことが問われてきた,その先端にいらっしゃったのではないかと思うのです。この40年間の過程で,受講者の変化ですとか,また,ニーズ等の変化等を見ながら,印象論で結構なのですが,大学って一体どんなものなのだろうかですとか,高等教育って一体どんなものなのだろうかといったようなことを,放送大学内で議論等がおありでしたら,少し御紹介いただけないかなと思ったのです。それらは次の議題となる大学教育に関する諮問にもつながってくると思いましたので,一言お聞きしたいと思ったのですけれども,いかがでしょうか。

【清原分科会長】 
 いかがでしょうか。

【内藤理事】 
 まず,放送大学ができたときに大きな役割として位置づけられたのが,今手元にないので,イメージで言いますけれども,当時から言われていました高等教育改革の様々な試みをここでやってほしいというような話がありまして,それは,今に至るまで一つの柱になっているところでございます。

 特に,社会のニーズに対応した教育を提供していくという部分では,それを意識しながら進めてきたというところはありますし,それから,放送大学が,大きな役割としては,取りあえず授業のやり方を最初から考えている。40年前,よりよい授業の提供というのが,多分そこまで議論になかったと思うのですけれども,より学生に分かりやすい授業の提供ということで,当時からNHKのプロデューサーを連れてきて,片方向の教育の配信ではあるわけですけれど,その中で,よりよく学生に届けられるような授業の在り方をずっと進めてきて,その間にICT技術が発達して,オンライン授業も進められるようになって,オンライン授業の提供の仕方も相当議論をしながら進めてきているところでございます。

 そうした中で,どちらかというと,最初はマスの教育,やはり放送中心ですから,先ほど言いましたように,1,000人とかいうニーズがあるようなものについて,どちらかというと,やはりカリキュラムの基本となるような講義を中心にやってきたところなのですけれども,オンライン講義は大体100人から300人単位,それから,さらにライブWebとか面接授業になると100人以下,それこそ50人とか,そこらあたりの単位の授業をいろいろ展開していく中で,細かなニーズも対応できるようになった。そこで,細かな,例えば,リカレント教育とか,そういったものにも対応していかなければならないというような,雰囲気というか,考え方がずっと来ているのですけれども。考え方とするとやはり趣味とか教養で学ぶ方と,実際に自分の仕事に役立つということで学んでいる方と大きく分かれていて,それにリスキリングということで,最新の技術も知りたいという方が最近入ってきたような状況になっているかと思っています。

 教養を求める方は,実は少し減ってきているというのは,定年年齢の変化というのは大きくて,60歳を過ぎた方は,大体趣味教養ということで入ってこられる方が多かったんですけれども,60歳過ぎた方でも,やはり第二の人生を踏まえたキャリアアップという方がだんだん多くなってくる。

 そうした中で,やはり趣味教養,どちらかというと基本のカリキュラムを中心にやっていた放送大学に物足りなさを感じる方がだんだん増えてきていて,そこをやはり放送大学としても変わっていかなければいけないというのが大きな課題になっているところで。

 ただ,そこは,つくった当初がカリキュラムの基本を教えていくのだという考え方の先生もいらっしゃるので,そこはやはり学内の先生方の中でまだまだ議論が必要なところかと思っております。

 少し副学長に替わります。

【加藤副学長】 
 今,理事から説明があったことの背景として,放送大学設立当初は,何らかの事情で大学の学位,学士を取ることができなかった,そういった方々に学士取得の機会を提供する,こういった役割が放送大学にそれなりに期待されていたのだろうと考えます。ただ,今日この役割がだんだんと低下していて,学位にとらわれない学びというものを求めるニーズというのが拡大している。このことが,今,内藤理事から説明された事柄の背景にあるのではないかと考えているところです。

 これから問題になっていくであろうことが,若い人たちの学びに対する姿勢というのが目に見えて昔と違っているということです。具体的には,これも先日,千葉県内のある高校に行って生徒さんから話を聞いてきたところで出てきたのですけれども。映像,あるいは音声のラジオ講座みたいなもの,45分は長過ぎるという答えが,ほぼ全員から上がってきていて,どのくらいだったら集中して聞いていられると聞いたら,人によって違うのですが,20とか25とか,一番長い生徒さんで30分。何かほかのことをやりながら一緒に聴きたいので,実はテレビよりもラジオの音声の方が使いやすいなんていう生徒さんもいて,要は,最近のはやりのタイパですか,タイムパフォーマンスであるとか,あるいは,何かしながら同時に別のこともやりたいとか,こういったことがいいというふうには,私も,あした還暦なもので,古い世代になっておりまして,あまり個人的には受け入れたくないなという気はするのですが,そうも言っておられなくて,そういった方々の物の見方,考え方に合わせた学びのやり方というのを大学として考えて,提供していかなければいけないのかなというところを考えております。

 これはこれまでの流れではないですけれども,これからの流れということを考えていくに当たっては,念頭に置かなければいけないと心しているところです。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。

 牧野委員,よろしいでしょうか。

 ありがとうございます。放送大学の内藤理事,そして,加藤副学長の御報告をきっかけに,私たちといたしましても,改めましてリカレント教育について重要な視点,論点が委員の皆様から提起されたと思います。

 放送大学創立40周年を祝福いたしますとともに,引き続き,また私たちの分科会に情報提供いただく機会をと願っております。よろしくお願いいたします。

 

 それでは,高等教育に関しまして,牧野副分科会長御紹介のように,中央教育審議会総会において,盛山正仁文部科学大臣より諮問がございました。その内容につきまして,高等教育局の髙見高等教育政策室長から情報提供していただければと思います。よろしくお願いします。

【髙見高等教育政策室長】 
 よろしくお願いします。先ほど御紹介いただきました高等教育政策室長の髙見と申します。

 私から,お手元の資料4の中央教育審議会への諮問ということについて,簡単でございますが,御説明したいと思います。

 こちらの諮問文でございますが,今週月曜日,925日に中央教育審議会において,盛山文部科学大臣から諮問がなされたという内容でございます。

 タイトルは,「急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方」ということでございまして,まず1つ目の高等教育の在り方を検討する背景・必要性というところを御覧いただきたいと思いますけれども,左の部分でございますが,これはもう言わずもがなでございますけれども,急速な少子化が進んでいるということで,18歳人口が大幅に減少していると。ピーク時は250万人ぐらいいたのですけれども,今はその半分以下,2022年で112万人となっております。一方で,大学進学者数自体は増加しておりまして,1966年では29万人だったんですけれども,2022年には64万人というふうになっております。

 それから,2022年の出生数,これは80万人を割ったというのが大きなニュースになっておりましたけれども,統計開始以来最少ということで,18年後の18歳人口というのは,この数字を中心に進んでいくということは明らかになっているといったところでございます。

 今後,大学進学率の伸びを加味してもとございますけれども,これは中央教育審議会の大学分科会の方で7月に試算を出してございますが,2040年,2050年までを推計しても,大体50万人前後で推移するといった試算が出ているところでございまして,少子化の影響というのは,今後高等教育に大きな影響が出てくるということが見込まれております。

 それから,右側の部分でございますが,グランドデザイン答申以降の高等教育を取り巻く変化でございます。

 このグランドデザイン答申というのは,2018年に中央教育審議会の方で,高等教育の今後の在り方ということで大きな方針を出していただいたわけでございますけれども,その後数年経った中でも,例えば,コロナ禍を契機として遠隔教育が格段に普及したりですとか,それから,ロシアとかウクライナ,こういった中で国際情勢の不安定化が進んでいること。さらには,研究力が低下しているというのが非常に大きなニュースになっているところでございますが,そういった変化というのもより進んでいっているといった状況もございます。

 そのような中,政府としてもいろいろな取組を進めてきております。例えば,このグランドデザイン答申を受けまして,学修者本位の教育への転換を進めていくということで,高等教育の質をしっかり高めていく,こういった取組というのも進めてきておりますし,また,10兆円ファンドに代表されるような研究力強化策を行っていったりとか,高等教育機関に入ってくる子供たちの変化ということに着目すれば,初等中等教育段階でもICT環境の整備を急速に進めていったりですとか,また,小中高で探究的な授業というのが進んでいく中で,そういった学びを経験した子たちが高等教育機関には入っていくといった変化も生じております。

 また,経済的支援という観点では,高等教育の修学支援新制度という給付型奨学金,授業料減免の取組というのが2020年度から導入されておりまして,そのような中で,低所得世帯の高等教育への進学率というのも上がってきたといった背景もございます。

 そのような中,矢印の下の部分でございますけれども,今後の高等教育機関の役割というのは一層重要化している中で,先ほど来お話しいただいたようなリカレント教育,こういった視点も重視しながら,今後,新たな高等教育の在り方について御議論いただく必要があるということで,大臣から御諮問いただいたといった内容でございます。

 それで,2つ目の2ポツのところ,真ん中より少し下の部分でございますが,主な検討事項ということで4つの柱を立てております。

 まず,(1)の部分でございますけれども,2040年以降の社会を見据えた高等教育が目指すべき姿となっておりますが,これは先ほど申し上げたグランドデザイン答申,5年前の答申でもかなり掘り下げて御議論いただいておりますが,先ほど申し上げたように,その後の変化も出てきておりますので,そういったことも踏まえた上で,今後の目指すべき姿というのを改めてここで御議論いただくということを考えております。

 それから,(2),(3)というのが今回のこの諮問の大きな核となる部分と考えておりますけれども,まず(2)の部分でございますが,高等教育全体の適正な規模,こういったものも視野に入れながら,地域における質の高い高等教育へのアクセス確保の在り方,こういったことについて,この2番目の柱で御議論いただきたいと考えております。

 具体的には,小さな字で少し書いておりますけれども,地域ごとの高等教育機関を取り巻く状況というのは違いますけれども,そういったものもしっかり踏まえながら,高等教育全体の適正な規模を視野に入れながら,アクセス確保の在り方を検討いただくということで,特に下に書いておりますけれども,例えば,大学等の連携強化ですとか,また,再編・統合を促進していくこと,情報公表を進めていくこと等についての方策について御検討いただきたいと考えているところでございます。

 また,その際ですけれども,地方の高等教育機関が様々ございますけれども,そういった高等機関が果たしている多面的な役割,こういったものも考慮いただきながら,この(2)の部分について御議論いただきたいと考えているところでございます。

 それから,(3)の部分は,高等教育機関,国立,公立,私立ということで,設置者別にも様々な役割はございますし,また,機関別,大学以外にも,短大,高専,また専門学校等がございますけれども,そういった設置者別・機関別の役割分担の在り方ですとか,果たすべき役割・機能についても,この(3)の中で,2番目の諮問事項も踏まえながら御議論いただきたいというのが(3)の部分でございます。

 また,(4),高等教育の改革を支える支援方策の在り方と書いておりますが,これは制度的な支援ですとか,財政的な支援,(1)から(3)まで御議論いただいた内容も踏まえながら,全体的に,この支援の在り方というのをどうしていくべきかということも御議論いただきたいと考えているところでございまして,こういった内容について大臣から諮問いただきました。

 今後,大学分科会中心に御議論いただきたいと考えておりますけれども,こちらの生涯学習分科会も非常に関係する事項は多うございますので,しっかり連携を図らせていただきながら,今後議論を進めていきたいと考えているところでございます。

 私からは以上でございます。

【清原分科会長】 
 髙見室長,御説明ありがとうございました。

 急速な少子化を含めた大きな社会変動の中で,高等教育に関するこのような諮問が出されましたことは,大変重要なことだと認識しております。

 総会において,私からは,生涯学習分科会では,今期,リカレント教育・リスキリングについて重点的な検討を始めており,経団連を代表する委員,そして,連合を代表する委員,そして,大学と企業との関係について実践されている委員,さらには,本日放送大学の皆様からもヒアリングをさせていただくことを報告して,できる限り生涯学習分科会としてもこの諮問に応える取組に貢献していきたいと発言をいたしました。

 今後,日本の発展は,生涯学習社会の在り方,学び続ける社会をどうつくっていくかということに本当にかかってくると,分科会のメンバーの皆様と共有しているところでございます。従いまして,生涯学習分科会でも,この諮問の大学分科会を中心とした審議に注目しながら,適宜,意見交換をさせていただく機会も設けたいと思っております。本日は御報告のみとさせていただきます。

 それでは,以上で,議題1を終了させていただきます。

 残り時間がもう少なくなってまいりまして,本当にいつもながら,文化庁国語課の皆様には,慌ただしい中での御説明となることを,分科会長としておわび申し上げます。

 議題2は,日本語教育の質の維持向上についてです。

 前回の生涯学習分科会でもこの議題を扱いましたけれども,このたび,それの前進があるということでございます。本日,文化庁国語課の今村課長,そして,国語課日本語教育推進室の小林室長に御出席いただいております。小林室長から,この内容について,日本語教育の質の維持向上について,まず説明をお願いいたします。よろしくお願いします。

【小林日本語教育推進室長】 
 では,文化庁から,資料5に基づきまして説明をさせていただきます。

 前回の分科会で,法律の関係で御説明させていただきました。

 日本語教育機関認定法の中では,日本語教育機関の認定に関する基準を定める際に,政令で定める審議会の意見を聴くという規定がございます。ちょうど現在,パブリックコメントを昨日から始めているところですが,政令の中では,審議会については中央教育審議会を想定したものとしておりまして,今後,国民の皆様の意見を聞いた後,政令ができた後には,正式にまたお伺いをさせていただくというプロセスを踏みたいと考えております。

 それでは,資料5に基づいて説明をさせていただきます。

 それでは,1枚次のスライドで,政令の全体像でございますけれども,法律で,日本語教育機関を今後,認定していくということの中で,どのような柱で基準をつくるかということでございまして,こちらの資料の上の方ですけれども,認定日本教育機関認定基準の方向性というところで,総則の後に,教員・職員の体制,施設及び設備,そして,教育課程,そして,学習上及び生活上の支援体制という,こういう項目について基準を設けなさいということが法律で規定されておりますので,それに基づきまして省令案というものを策定しようと考えているところであります。

 それでは,次のスライドを御覧いただきたいと思います。

 今回の日本語教育機関,どんなものを対象とするかというのを考えておるのですけれども,留学と就労,生活,この3つの関係で,日本語を学ぶ機関を認定していきたいと考えております。

 留学については,これまでも,日本語教育を学びに来るということで,在留資格の関係で,法務省の方で実は告示の基準というのを既につくっておるところですので,留学に関しましては,そちらの現在ある法務省の基準をベースに,教育の内容というところが今回この法律で加わってきたということでありますので,そうしたところをこれまでの基準に加えていると。

 就労や生活。就労ですと,働いている方向けの日本語,そして,生活ですと,まさに地域で暮らしている外国人の方向けの日本語ということで,こちらは,例えば,今,何らかの基準があるとか,そういうものではないので,今回の制度で新たにつくったというような形になっております。

 今回の省令でも,留学・就労・生活の3つの類型に分けまして,基準をそれぞれつくっていくということで考えております。

 これが総則の考え方でありまして,次のスライドを御覧いただきたいと思います。

 認定基準については,基本的には,留学,今,留学・就労・生活,3つの類型でと申し上げたのですけれども,大きくは大体同じような基準となりまして,その中で就労・生活は,例えば,留学生,留学の日本語学校は,基本的には毎日平日に昼間に生徒さんは来られるのですけれども,就労や生活者の場合は,お仕事が恐らくあるので,例えば,夜間であるとか,土日であるとか,そういうことも想定されるということで,そうした観点で少し基準が異なるということでありますけれども,まず基本的には,留学のものをベースに説明させていただければと思います。

 先ほど最初に少し申し上げたように,法務省の基準が既にあるところにオンする形で今回教育の内容をそろえてきたということでありますので,そういった観点で説明をさせていただければと思います。

 まず最初に,教員や職員の体制ということであります。ここは基本的にこれまでの基準をベースにと考えておりまして,今の基準でもそうなのですけれども,例えば,1つ目の丸,校長を置くであるとか,2つ目,3つ目の丸で,どのぐらいの先生が必要であるかということの基準を設けることとしておりまして,例えば,教員数ですと,課程の収容定員と呼びますけれども,生徒さん20人に1人ぐらいの先生を置いてくださいと。

 日本語教育機関の特色としましては,非常にいろいろなところの教員を兼ねているという,一条校とはまた違う特色もあるので,「本務等教員」というように,そこの機関を中心に働いていただいている先生という,このような概念を設けまして,本務等教員の方は,課程の収容定員40人に1人という基準を設けたいと考えております。

 次のスライドを御覧いただきたいと思います。

 それで,今回,実は法律の国会審議の中でも,例えば,日本語教員の方,これからやはり研修,専門性を高めていきたい。それはなぜかというと,教育の質にまだまだばらつきがあるので,このような法律をつくって,今後精度を高めていくということでありましたけれども,この省令の中でも,5つ目の丸ですが,研修をする体制をしっかり備えていただきたいということで,それは自分の学校の中でやることもありますし,外部のところで研修を受けさせるということもあります。いずれにせよ,そのような研修をどのように職員,先生たちに受けていただくかというような,ここでは体制としておりますけれども,そうしたことを省令の中でもしっかり盛り込みたいと考えております。

 それでは,スライドの5ページを御覧いただきたいと思います。

 施設と設備は,基本的には今の留学の告示校の基準と同じでありますけれども,教育機関,文部科学大臣は今後認定をするということでありますので,1つ目の丸にありますように,やはり場所は適切な場所,教育上及び保健衛生上適切なもの。

 2つ目の丸ですけれども,校地,校舎も同じですけれども,ある日突然その学校がなくなっていましたなどということはあり得ない話ですので,学校の継続性・安定性という観点から,校地・校舎は基本は自己所有でありますけれども,そうでない場合も,しっかりと運営ができるということをしっかり確認をさせていただきたいと考えております。

 続きまして,次のスライド,6枚目を御覧いただきたいと思います。

 教育課程というところが,これまで法務省さんで行っていた考え方から少しオンしてくるところであります。それが最初の1つ目のところですけれども,留学に関しては,様々な課程を設ける中で,B2以上の課程を1つ置くこととあります。

 このB2というのが,言語教育の中で行われる参照枠というものがあります。CEFRでありますけれども,大体B2以上のレベルになった方というのは,例えば,大学へ進学ができる留学生の方と思っていただければよくて,イメージとしては,専門的なこともある程度やり取りができるくらいの日本語能力ということですけれども,留学の日本語教育課程を行うところは,B2までたどり着けるような教育課程を組んでくださいということで,必ずそういうところまで行ける者が,そういう教育を準備できるところをしっかり認定をしていきたいと考えております。

 この資料の中の5つ目の丸ですけれども,授業時数ということで,1年にわたり760単位時間以上としておりますけれども,今回の認定される学校の想定されるものは,先ほど申し上げた法務省のこれまで見てきた日本語学校と,あとは,大学で行っておられる留学生の別科もございます。そうした大学で行うような場合でありますと,その後,学生さんは恐らく大学に進学するということが想定されるので,特例措置として,760単位の時間の中で,160単位まではその後の学習につながるものとして,そこの一番下の丸の丸1でありますけれども,例えば,アカデミック・ジャパニーズの修得に資する科目などということで,その学部等の基礎科目なども行っていただいて構いませんというような形で基準を設けさせていただきたいと考えます。

 それでは,次のスライドを御覧いただきたいと思います。

 こちらの中で御覧いただきたいのは,3つ目の丸ですけれども,課程全体の中で,語学教育ということでありますので,「聞く」・「読む」・「話す(会話)」・「話す(発表)」・「書く」の全てを盛り込むということであります。

 これはどういうことかと申し上げると,日本語教育の中でも,例えば,試験がございますけれども,例えば,試験に出るところだけやるということではなく,やはり日本語能力をバランスよく身につけるような教育の内容を用意していただきたいということを考えております。

 この資料の中の下から2つ目の丸でありますけれども,授業の形態ですが,講義,演習,実習若しくは実技のいずれかにより,又はこれらの併用により行うということで,これは裏の意味から申し上げると,基本的に対面で行っていただきたいということであります。日本語を学びに外国から来られるということで,オンライン教育の効果というのはあるわけでありますけれども,基本的には対面で行っていただくことを想定して,このような基準としております。

 では,スライドの9枚目を御覧いただきたいと思います。

 学習上及び生活上の支援体制ということで,こういう分野特有の話がございますけれども,例えば,1つ目の丸ですが,母語支援等の学習に困難を抱える等の生徒の支援のために必要な体制を整備ということで,来日後当初は,やはりまだ日本語があまりできないということもありますので,例えば,母語で支援をするといったこと。また,やはり学習の中で少し追いつけないような生徒さんもいらっしゃるかもしれないので,そうした補習をしっかり行っていただきたい,そういう支援体制を設けていただきたいということであります。

 3つ目の丸ですが,教育の継続が困難になるような場合,災害等としておりますけれども,こうしたところ,留学で来られる方は,教育が継続できないような場合に学校がなってしまった場合は,そもそも日本にいられるかというような問題まで発展してしまうので,転学支援の計画,どこまでやっていただくかは今後の御議論ですけれども,例えば,姉妹校へ転学するなど,生徒の学習の継続にしっかりとした措置を事前に講じていただきたいということをお求めしようと考えております。

 留学に関しては以上でございますけれども,次のスライドを御覧いただきたいと思います。

 就労や生活の日本語教育機関というのも,今後は新たに認定ということを考えていただきたいと思っております。先ほど少し申し上げたように,就労・生活の方は,空き時間であったりとか,週末に来られる,様々な形態がございます。そこを象徴しておるのは,2つ目の丸ですが,教員数はとありますけれども,課程の同時に授業を受ける生徒20人に2人以上ということで,これは,実際に,例えば,月曜から金曜はこうしたところはやっていない可能性もあるので,そうしたところは,その時間帯,時数に関して,同時に授業を受ける時間帯に関して先生がいてくださいねということをお願いしたいと考えております。

 それでは,スライド14ページを御覧ください。説明はあと少しでございます。よろしくお願いします。

 日本語教育課程,就労・生活のところの一番上ですけれども,最終的に,留学の方はB2と申し上げましたが,こちらの方はB1B1というのはどのぐらいかというと,日常のやり取りができるというような範囲,そこの辺りをお願いしていきたいと考えております。

 4つ目の丸,授業時間数は,B1の課程は350とかございますけれども,こちらは,これまで文化庁の審議の中で,このぐらいの時間数があると大体日本語ができるようになるという経験則がございますので,そうした時間を求めたいと考えております。

 それでは,次のスライド15ページを御覧ください。

 御覧いただきたいのは2つ目の丸ですが,就労・生活に関しては様々なやり方があるということで申し上げておるのですけれども,就労・生活に関しては,同時双方向の遠隔事業を,こちらは4分の3まで可能ということとしておりまして,こちらは,例えば,いろいろな場所で受けられることも想定されるので,オンライン授業もかなり広く認めていきたいというように考えております。

 それでは,最後に,18ページのスライドを御覧いただきたいと思います。

 法律では,今後,認定されたところが,情報公表であったり,自己点検・評価を行うことが義務とされました。この中で,自己点検・評価のところで御覧いただきたいのは,いろいろなことを自己点検していただくわけですけれども,最後の一番下のポツですけれども,財務に関することということで,実際に生徒さんを募集する際に,いろいろな仲介料を日本語教育機関は支払っているということもあると思うのですけれども,実際に生徒に不当なものにならないかというのを,しっかりと教育機関も自己点検をしていただきたいということで,そうした鑑定も自己点検・評価の中に盛り込んで,しっかり自分の中で見詰め直していただきたいと考えております。

 このような内容の認定基準を今後策定しまして,来年度から,いよいよ日本語教育機関を新たに認定するという取組を進めてまいりたいと思っております。

 説明は以上でございます。

【清原分科会長】 
 御説明ありがとうございます。

 それでは,文化審議会国語分科会日本語教育小委員会の主査を務めていらっしゃいます浜田委員から,補足がありましたら,御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。

【浜田委員】 
 ありがとうございます。

 ただいま小林室長の方から御説明があったとおりでございますけれども,委員の先生方御承知のように,従来,日本語学校といいますと,非常に多様な機関がございまして,大学の別科も含めて,例えば,就労の抜け道になっているのではないかというような問題の多い機関もある中で,在留管理ということが前面に規定がされてきたわけですけれども,今回,日本語教育の質を高めるための法制化ということが行われる中で,教育の中身についてもしっかりと整えていこうといった趣旨での今回の法制化でございます。

 日本語教育の内容については,別途の議論の中で体系化を高めるためのいろいろ工夫を,議論を重ねてきたわけですけれども,その議論に基づいた日本語教育ができる機関であることということで,今回御説明ありましたように,かなり細かい項目立てになっておりまして,お分かりになりにくいかと思うのですけれども,教育の質をいかに確保していくかということで,日本語教育関係者のこれまでの思いというものが籠もった項目立てということになっております。

 ぜひいろいろ御意見をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【清原分科会長】 
 浜田委員,ありがとうございます。背景についての認識を確認させていただきました。

 それでは,事務局や浜田委員の御説明について,もちろん予定の時刻まであと限られてはいるのですが,御質疑あるいは御意見おありになる方,挙手ボタンを押していただくか,会議室の方は名札を立ててください。いかがでしょうか。

 それでは,沖畑委員,御発言をお願いします。

【沖畑委員】 
 沖畑でございます。よろしくお願いします。

 一つ,すみません。私,このことについてよく分かっていないものですから,的外れなことを申し上げたら失礼をお許しください。

 教育の質を高めるって本当に大事なことで,夢を持っていらっしゃった方々にきちんと本当に力をつけたいと思うのですが,この教員の質については何か定義をされるのでございましょうか。

 また,その質を向上させるための組織的,計画的な研修を実施する体制を整えるとございますけれども,このことについてもきちんとした定義がされるのでございましょうかということでございます。

 以上です。

【清原分科会長】 
 沖畑委員から教員の資質についての御質問ですが,これは小林室長さんでしょうかね。お答えいただけるでしょうか。

【小林日本語教育推進室長】 
 すみません。説明の時間もありましたので,少し言及できなかったのですが,法律では,今後,登録日本語教員という制度になります。登録日本語教員というのは,今後試験を受けていただくということになりますので,一定の質を担保するというのは,そこの辺りで考えていきたいと。

 研修に関しましては,こちらの文化庁の予算事業で,実際になった後,初任者研究と呼んでおりますけれども,それは留学や今回の就労・生活,それ以外にも,例えば,様々なものを用意しておりますけれども,そうした研修授業を受けていただいて,専門性を高めていただくということ,これも予算事業で今後充実させていきたいと考えております。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。

 沖畑委員,よろしいでしょうか。

【沖畑委員】 
 ありがとうございました。

 制度が整えられ,広がっていくのを期待しております。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。

 そのほか,皆様から御質問,御意見ございますか。

 綿引委員,お願いします。

【綿引委員】 
 ありがとうございます。

 質問というか,先ほど私が石橋課長に申し上げたところと重なるのですけれども。質問としては,この認定機関の法律の対象とか,今御説明いただいた内容というのが,やや日本国内にフォーカスしているのではないかという印象を持っております。

 皆様方,海外駐在員に出るときを想定していただきますと,駐在員になりたいから,事前に語学学校に行って英語をしっかり勉強して,手を挙げて,現地へ行って,また英語についていけないのでさらに勉強すると。これが普通の人間が考えることでありまして。よって,日本に留学をしたい,日本で働きたいという人たちは,現地にいる間に,ある程度のサービスをサポートしていくということがとても重要なのだと思うのですね。それをすることの日本語教育機関を,海外でもしっかりとした質が担保できるように,文化庁が御指導いただくということがとても大切だと思っているので,よろしくお願いしたいという点と,日本に来てから,今度は認定いただいた機関で勉強していくわけですが,子供は,例えば,公立学校に入っていくときに,公立学校が受け止められるような,海外の子供たちの気持ちが分かる日本語教育をできる先生を育成しないと,日本語の日本人による独善的な教育では,学校に不登校になってしまう。これは包摂的な社会にならないのではないかと。

 そして,働くお父さんの立場に立ってみると,これはもうまさに日本語学校の認定されたところでしっかり勉強してもらう。さらに,お母様は,日本に来たら大変忙しいので,先ほど御説明いただいた放送大学の公開講座のようなものを使って,生活者としてのレベルを上げていく。

 こういったことが,先ほどの急速な少子化の高等教育の在り方にもつながっていく,全体として施策を組み合わせると,とても包摂的な社会としての日本語教育の必要性ということができるのではないかなということを,今,御説明を聞いて思ったというコメントで結構でございます。

【清原分科会長】
 綿引委員,重要な視点のコメントありがとうございます。

 それでは,野田委員,御発言をどうぞ。

【野田委員】 
 ありがとうございます。

 今,文科省の考え方として,全国47都道府県に一つの夜間中学という方向性があるのです。この夜間中学の現状でいくと,恐らくほとんど外国人,たまたま本市は2校設置をしているのですけれども,この夜間中学校の方向性と今の御説明というのは,もう全く別物だよというお考えなのか,どこかで何か連携させるとか,そういう考え方はあるのかどうか,そこだけ教えていただけますか。

【清原分科会長】 
 いかがでしょうか。夜間中学と日本語教育の質の向上との関係性です。

【小林日本語教育推進室長】 
 夜間中学,実際に日本語が難しい方というのがたくさんいらっしゃるというのは,私たちも承知をしております。将来でも,夜間中学を所掌する局,別の局にはなるのですけれども,私たちも一緒に,例えば,いろいろな会議とかにこれまでもずっと参加させていただいております。

 この登録日本語教員を様々な場所で活用いただく,そういうやり方は,先ほど綿引委員からも頂いた海外もありますし,そうした子供の視点もございますので,その登録日本語教員をどのように活用していただくかという議論は,しっかり省内でも進めていきたいと考えております。

【清原分科会長】 
 よろしいでしょうか。ありがとうございます。

 それでは,ただいまの御質問までとさせていただきます。

 皆様から日本語教育の質の向上について御質疑ございましたが,925日の中央教育審議会総会でもこの御報告はございまして,今後は,中央教育審議会が,この法律に基づく審議会として位置づけられていること,そして,具体的には,生涯学習分科会が担当することが確認されましたので,今後も適時適切に私たちがきちんと情報を共有して,役割を果たしていきたいと思います。

 それでは,本日はここまでとしたいと思います。

 日本語教育機関の認定などの取組についての,ますますの皆様の御理解をお願いします。

 本日も熱心な御審議をしていただき,ありがとうございました。

 時間を少し過ぎておりますけれども,皆様のお手元の資料について,最後に申し上げます。

 参考資料23としてお配りしておりますのは,社会教育人材部会の中間まとめでございます。これについても,牧野副分科会長が部会長としておまとめいただきました内容を925日の総会で,私と地域学習推進課長さんとで報告させていただきました。そうしましたら,おかげさまで,多くの委員の皆様から応援のメッセージを頂きました。

 もっともっと社会教育人材の重要性についてPRするように,しかも,小さな子供から長寿の方に至るまで多世代の軸の中で,社会教育人材の活躍というのが地域づくり,地方創生にも大いに貢献できるのであるから,もっともっと,とにかく幅広い皆様に認知していただくようにという応援を頂きましたので,生涯学習分科会でも,そのように更なる検討をしていきますと私の方でお答えしたところでございます。

 今日は,時間の関係で,牧野部会長,遠慮されておりますので,また次の機会に御発言をお願いいたします。

 それでは,事務局から,今後のスケジュールについて御案内をお願いします。

【合田生涯学習推進課専門官】 
 事務局から,今後のスケジュールについてです。

 資料6を御覧ください。次回の開催日程については,124日月曜日10時から12時を予定しております。

 事務局からは以上です。

【清原分科会長】 
 本日も,皆様,熱心な御審議ありがとうございます。

 一般には暑さ寒さも彼岸までと申しますが,とんでもございません。全国的にまだまだ30度を超す日が続いていたりしておりますが,しかし,着実に秋の訪れはあるようでございます。寒暖差にお気をつけいただきまして,皆様御健勝で次の12月,また元気に御参集いただきますようにお願いいたしまして,閉会といたします。

 傍聴してくださった皆様も,どうぞ夏の疲れが出ませんように。

 どうもありがとうございました。

 

―― 了 ――

 

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