生涯学習分科会(第126回) 議事録

1.日時

令和5年8月8日(火曜日)14時00分から16時00分

2.場所

文部科学省3階第一講堂 ※WEB会議

3.議題

  1. リカレント教育の推進について
  2. 社会教育人材の養成及び活躍促進の在り方について(中間的まとめ)について
  3. 日本語教育の質の維持向上について
  4. その他

4.出席者

委員

(分科会長) 清原分科会長
(副分科会長) 萩原副分科会長,牧野副分科会長
(委員)内田委員,清水委員
(臨時委員)熱田委員,大久保委員,沖畑委員,金子委員,小路委員,古賀委員,澤野委員,関委員,辻委員,野田委員,野津委員,浜田委員,松本委員,綿引委員

文部科学省

(事務局)望月総合教育政策局長,里見大臣官房審議官,滝波政策課長,石橋生涯学習推進課長,高木地域学習推進課長,中野国際教育課長,西リカレント教育・民間教育振興室長 他

5.議事録

【清原分科会長】 
 皆様,こんにちは。定刻になりましたので,ただいまから第
126回中央教育審議会生涯学習分科会を開催いたします。

 今年の夏は全国的に酷暑が続き,しかも水害による多くの被害が出ておりまして,現時点でも台風等による深刻な被害を受けている地域がございます。心からお見舞い申し上げますとともに,一日も早い復旧,復興を願っております。そうした中,委員の皆様におかれましては,大変御多用の中,御参加いただきまして,誠にありがとうございます。

 本会議は,本日もYouTube上で報道関係者等の傍聴を受け入れております。報道関係者等より,会議の全体について録画を行いたい旨の申出がありまして,許可しております。どうぞ皆様,御承知おきください。

 次に事務局から,本日の会議の運営に当たりまして,留意事項の説明及び配付資料の確認を簡潔にお願いいたします。

【中村生涯学習推進課課長補佐】 
 事務局の中村でございます。本日は,オンラインを併用する形で開催させていただきます。御不便もあるかと存じますが,何とぞ御理解のほどよろしくお願いいたします。

 オンライン会議を円滑に行う観点から,4点ほどお願いをさせていただきます。

 1点目,御発言に当たっては,インターネットでも聞き取りやすいよう,はっきり御発言いただくようお願いいたします。

 2点目,御発言の際には,お名前をおっしゃっていただきますようお願いいたします。

 3点目,御発言時以外は,マイクをミュートにしていただくようお願いいたします。

 4点目,発言に当たりましては挙手ボタンを押していただき,御発言後はボタンを解除いただければと思います。

 本日会場にお越しの委員の皆様におかれましては,御発言の際に,挙手又はネームプレートを立てていただくようお願いいたします。お手数をおかけいたしますが,御協力のほどよろしくお願いいたします。

 続きまして,資料の確認をさせていただきます。本日の資料は,議事次第のとおり,資料1から資料5までの資料,加えて参考資料1から参考資料3までの資料となっております。

 なお,本日の資料4につきましては,本日御審議は頂きませんが,先日書面にて委員の皆様に御審議を頂き,承認を頂いておりました,社会通信教育の変更及び廃止等について答申を頂いたもので,本日の会議において書面で御報告させていただくものです。委員の皆様の御協力に感謝申し上げます。

 資料の確認は以上でございます。

【清原分科会長】 
 それでは皆様,お手元の資料の御確認,よろしくお願いします。

 もう1点,議事に入ります前に,本日,88日付で文部科学省における人事異動があり,ほとんどの方が新たに就任されていらっしゃいます。そこで,事務局から御紹介をお願いいたします。

【中村生涯学習推進課課長補佐】
 事務局の中村でございます。事務局に人事異動がございましたので,新たに参りました職員を御紹介させていただきます。

 総合教育政策局長の望月禎でございます。

【望月総合教育政策局長】 
 本日付でこのような人事異動になり,申し訳ございません。当分科会の担当局長,望月でございます。よろしくお願いいたします。

【清原分科会長】 
 よろしくお願いいたします。

【中村生涯学習推進課課長補佐】 
 総合教育政策局政策課長の滝波泰でございます。

【滝波政策課長】 
 滝波です。よろしくお願いします。

【清原分科会長】 
 よろしくお願いします。

【中村生涯学習推進課課長補佐】 
 生涯学習推進課長の石橋晶でございます。

【石橋生涯学習推進課長】 
 石橋でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【中村生涯学習推進課課長補佐】 
 地域学習推進課長の高木秀人でございます。

【高木地域学習推進課長】 
 高木でございます。よろしくお願いいたします。

【中村生涯学習推進課課長補佐】 
 国際教育課長の中野理美でございます。

【中野国際教育課長】 
 中野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【中村生涯学習推進課課長補佐】
 事務局からは以上でございます。

【清原分科会長】 
 それでは,生涯学習分科会御担当の総合教育政策局長の望月様はじめ,就任された皆様,どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは,本日の議事に入らせていただきます。

 議題の1は,リカレント教育の推進についてです。前回の生涯学習分科会では,小路委員と金子委員のお二人の御発表を頂きました。そこで本日は,職業能力開発やキャリア形成の専門でいらっしゃいます大久保委員から話題提供を頂き,リカレント教育の推進について,さらに私たちの共通認識を深めたいと思います。大久保委員におかれましては,御多用の中,御準備いただきましてありがとうございます。

 それでは,早速,社会人のリスキリングの現状と大学のリカレント教育への期待について,株式会社リクルートフェロー・リクルートワークス研究所アドバイザーの大久保委員から話題提供をお願いいたします。15分程度でよろしくお願いいたします。

【大久保委員】 
 ありがとうございます。大久保幸夫と申します。今日は御指名を頂きまして,社会人のリスキリングの現状と大学のリカレント教育への期待ということで,少しお話をさせていただきたいと思います。

 それでは,2ページめくっていただいて,3ページ目です。最初に,企業内に広がるリスキリングの仕組みの図をお示しいたしました。

 御承知のとおりリスキリングは,もともとDXをきっかけとして始まっているものでございます。デジタルトランスフォーメーションが進む中で,デジタル人材が圧倒的に不足する。このデジタル人材が不足することに対して,広範囲にデジタル化の波がやってくるものですから,多くの社員がデジタル関連スキルを身につける必要が出てきた。こういうことで,社内における再教育,リスキリングというものが導入されてきたわけでありますけれども,現状のリスキリングというのはもう少し幅の広いものになっておりまして,この図を見ていただくとお分かりになるかもしれません。

 今,政府が人的資本経営ということを推進して,旗を振っております。人的資本という言葉自体は大変古くから使われている言葉でございますけれど,従業員が持つスキルとか知識のような能力,こういったものを重く見て,そこに戦略的に投資をしていく。そのことから価値創造へつなげていく経営と言えると思います。つまり人的資本経営そのものが,従業員のリスキリング,教育投資というものに戦略的にウエートをかけていく,そういうものを含んだ概念だということになるかと思います。

 一方で,ジョブ型人事制度の導入が進んだ。ジョブ型人事制度という言葉は,何かねじれて使われた傾向がございますけれど,非常に多義的なものでございまして,もともと日本は職能資格制度を長く使っておりましたけれど,徐々にそこから役割等級であるとか職務等級といったものを交ぜた,ハイブリッド型の人事制度に変えていっている。その中でも特にジョブというのは職務というものを立たせて,全体の制度設計をしていく。言わば,旧来の日本型経営とは少し違ったスタイルの企業内の人事制度というものを導入する会社が増えてきているということがございます。

 これはアメリカで行っております職務型は少し違うもので,ジョブディスクリプションを細かく記載するといったものではなく,どちらかというと職務と役割,スキルと役割を交ぜたような形で運用している会社が,今のところ多いのではないかなと思います。そういう軸を明確に出していくことによって,従業員自らが自分のキャリアをどういう形にこれから展開していくのか,そういう展望を描きやすくするとか,あるいは経営的に中長期の経営戦略を描いたときに,それを人材戦略に落としやすくしていくといったような,そういう狙いがあって導入しているものかなというふうに思います。

 こういう制度を導入している企業に幾つか話を聞いてみますと,典型的にこの人事制度と自己申告型の人事異動,ジョブポスティングと呼んでいますけれど,そういう人事異動を組み合わせている会社が多いなというふうに感じます。賃金を上げたいと思ったとき,自分自身が応募して別の仕事に替わる。ただ別の仕事に替わるときには,新しいスキルがどうしても必要になりますから,そこで新しい仕事に就任直後に,自己学習するためのコンテンツを準備する。

 それが一つのリスキリングの流れですし,あるいは,応募したときに必ずしも皆さんが迎え入れられるわけではなくて,落ちることもあるのですけれど,そのときも,こういうところが足りないので,あなたは今回の希望はかなえられませんでしたとフィードバックすることによって,学習のきっかけにしていく,こういったことが動いてリスキリングと結びついている流れがございます。

 また人的資本経営の中には,人材ポートフォリオという言葉が出てきます。これは経営的に近未来に必要となるスキルとか,そういうものを明確にするということでございまして,それは人員計画ではなくて,もう少しスキルとかロールとかに踏み込んだものになりますけれども,こういうところからまたリスキリングの動きが出てくるということで,企業の中にリスキリングの波が二重三重にという形で,今広がってきていると言えるのじゃないかというふうに思います。

 次のページにしてください。このリスキリングの大きな特徴を2つ目に書いたところです。活用の必要性に迫られた学習というふうに私は書きましたけれど,つまり人事異動とリスキリングがセットになっているということなのです。今すぐに必要となるスキルを学ぶということなのです。学習して,それから活用するまでしばらくブランクがあると,なかなかその学習についても本腰が入らなかったりとか,学習に意欲が湧かなかったりするのですけれど,必要に迫られてする学習というのは,学習習慣が身についていないといった壁を越えることができる。

 こういうことで大変合理的な学習促進になっているのかなというふうに思いますし,もう一つは,リスキリングと賃金が人事異動を通して連結していくということです。学習したからといって賃金が上がるわけではないというのが今までの姿だったんですけれども,これに人事異動がセットになってくると,賃金増に連結していく。こういうことが,個人にとって学習の壁を越えさせる一つのきっかけになっているのかなというふうに思うわけであります。

 私がアドバイザーをしているリクルートワークス研究所で調査をやっているのですけれど,学習に関する調査をやったときも,学習行動を取っている人とはどういう人なのかというのを見てみると,学んでよかったと思ったことがあるというふうに語っている人とか,あるいは,学んだことをすぐに役立てる機会があったと回答している人が,傾向として学習行動を取っている,そういう結果が出てまいりました。

 こういう形で,必要に迫られた,あるいは学習したことによって結果的に自分の給料が上がった,こういったことが学習習慣につながっていくのかなと,そんなふうに感じているわけで,個人の学習に関してリスキリングの動きは大きな変化ではないかなと思っているわけであります。

 次のページ,お願いします。一方で,今,内部労働市場の話をしたのですが,外部,転職市場で,このリスキリングはどういうふうに扱われていくのだろうか。これはまだ緒に就いたばかりでございまして,むしろこれから近未来に展開されていくであろう流れということで,今日はお話をさせていただきたいというふうに思うのですけれども,今この転職市場人材サービス産業で,求職者の保有スキルの可視化ということが大きなテーマになっており,関心が集まっております。

 以前はなかなかできないことだったんですけれども,AIを活用したことによって,保有スキルの可視化が随分できるようになってきた。国際的にはたくさんプログラムが既にできておりますし,日本語版のものも今導入されつつある,こういった状況でございます。

 そして一方で,先ほど申し上げたとおり,各企業は人材ポートフォリオを描くということで,どういうスキルを持った人たちが必要なのかというのを,経営戦略を実現する流れから考えるという方向づけがされつつあるということでございまして,そういうことが多くの企業に広がってくると,企業側が求めるスキルも見えてくる。自分の持っているスキルの可視化についても,テクノロジーの支援を受けて,スピーディーにやることができる。

 これは私も実際に教わってやってみたことがありますけれども,普通に自分の職務経歴書に書くようなことをずっと書いていくと,テクノロジーの方は,この経験があるんだったらこんなこともやっているのじゃないのということで,いっぱい質問を投げかけてくれて,そういうのに答えていくうちに自分のスキルのリストができていきます。あるいはまた社内の人事管理システムと結びついて,社内の情報から,その社員が持っているスキルを可視化するといったようなプログラムも最近はできてきていまして,それに上司が加筆すると,結構な分析ができる,こういうことになるわけでございまして,やはりテクノロジーの進化というのは非常に大きな影響があるわけでございます。

 こういうものを結びつけてAIを活用したマッチング,ここには人材としてのキャリア・アドバイザーが関与することが多いですけれども,そこで生成系AIを使ったようなプログラムで,スピーディーに,今までよりも本当に何分の一かの短い時間でそういうことができるようになっていく。

 これは円滑な労働移動ということにも貢献するのだろうなというふうに思いますし,またこういうスキルをベースとしてマッチングを図っていくわけですから,その転職希望者がこういう職を得たい,こういう会社でこういう職に就きたいと思ったときにも,じゃ,こういうスキルを新たに身につけるとその可能性が大きく高まりますよねということがテクノロジーを使ってできる状況にもなりつつある。

 リスキリングというものが,企業内,企業外と,両面から進んでいきそうな,そういう動きになってきているわけであります。

 次のページ,お願いします。この外部のところを少し補足させていただきますと,今,転職を希望する人たちは結構多いのですけれど,実際に転職する人はごく一部です。転職には3つの壁があるというふうに私はいつも言っていまして,1つは,転職活動ってすごく大きな手間がかかるのです。自己分析をしてとか,エントリーして企業を探してとか,面接を受けてとか,これはすごい手間で,仕事をしながら同時にやっていくのは結構大変です。

 それから2つ目には,自分自身がどんな仕事に向いているかとか,自分がどんなスキルを強みとして持っているのかが,自己認知できないということがあります。

 3つ目には,転職しようと思っても,希望どおりの賃金とか,あるいは労働環境がなかなか得られないという,この3つの壁があるので,それに直面するとやめてしまうという人も多くいるわけなのですけれど,先ほど申し上げたとおり,テクノロジーを使って,少しずつこの壁が壊せそうな,そういう見通しが立ちつつあるということかなと思います。

 また,最近はキャリア・クッショニングというような動きがございます。これはアメリカで流行している言葉でございまして,日本の人たちにもこの感覚が少しずつ入ってきているのかなと思うのですが,今すぐ転職しようと思っているわけではないのだけれど,未来に賃金が低下する可能性とか失職する可能性がある人たちについては,あらかじめリスキリングのようなものに取り組んでみようとか,あるいは転職する,しないにかかわらず,自分の市場価値を診断するプログラムを受けてみようといったこと,あるいはSNSを通じて自分の人脈をメンテナンスしていこう,こういった行動をキャリア・クッショニングというふうに言うのだそうですけれど,そういった動きも出てきておりますので,転職市場でリスキリングが進んでいく可能性はあるのではないかと思っています。

 次の次のページまでそのまま飛んでもらえますか。これは,社会人はなぜ学習しないのかというところの補足説明なのですけれど,2つ目の箱にあるとおり,理由がないのです。社会人の調査をやって,リカレント学習,リスキリング,そういう自分自身の学習の取組をしないのはなぜですかと聞くと,一番メインで出てくる理由は,そもそも学習する必要性を自分は感じていないというのが出るのです。

 2つ目には,自分が何を学ぶべきかがよく分からない。学んだ方がいいとは思うのだけれど,何を学ぶべきかが分からない。3つ目には,周囲とか上司が学習を阻害しているということなのです。この1番目,2番目は,今申し上げたようなリスキリングの流れの中で,もしかしたら壊していけるものなのかもしれないと,そんなふうに期待をしているところであります。

 じゃ,次のページです。その上で,大学のリカレント教育に対してどういう期待があるのか,あるいは,もっとこうした方がいいということがあれば話してほしいという御要望を頂いておりましたので,この4点に整理をいたします。

 1つは,リスキリングの動きへの適応というふうに書きました。リスキリングの今の一連の話と,それから大学のリカレント教育というのが,同じことをテーマにしているようでいて,実は似て非なる文脈の話をしているように私には見えるわけであります。これまでのリカレント教育の議論に閉じずに,リスキリングの動向を取り込んで議論できるような形をつくっていただきたいというのが1番目です。

 それから2つ目は,ニーズを満たす学習コンテンツの効率的な開発。実際にリスキリングのテーマになっているのは,これからの事業戦略,あるいは経営戦略の中で必要となってくるスキル,今現在不足しているスキルというものを明らかにし,それに取り組んでいくということなのですが,じゃ,それを身につけるためのコンテンツがどこにあるかというと,あまり社内に用意するという考え方は多くなくて,どちらかというと外部に求めるということが中心になってくる。

 ただ,これについてはどんどん進化もしているし,また大学のリカレント教育の側で全部が用意されているかというと,そうでもないというふうに思います。大学側の方は,独自にカリキュラムに合った講義とかコンテンツを積み上げていくわけですけれども,そこで積み上がったものと,今社会人や企業が求めているものの中には,ギャップがあると思います。実際には大学がつくっているコンテンツは,それぞれつくっておりますので,似たものをたくさんつくっている。それなのに足りないものがいっぱいあるという状況を,どこかで全体的にニーズを俯瞰(ふかん)して効率的につくっていこうという取組をする必要があるのではないかというふうに思います。

 3つ目は,いつでもどこでも手軽に学びたいものだけを学べる仕組みという話になりますけれど,コロナ以降,リモートワークの習慣が進みまして,家で隙間時間に学習するというスタイルが大分定着しつつあるかなというふうに思います。そのスタイルに合ったコンテンツが求められていますし,そういうラーニング・マネジメント・システムが求められている,こういうことでございましょう。

 特に先ほど申し上げたとおり,ニーズに迫られて学習するという側面が強いので,プログラムとしてたくさんの時間をかけなきゃいけないものは,ほぼ適応しないのです。コンパクトにそこの部分だけを切り取って学べるものは非常に重宝されるということで,その辺りもニーズのミスマッチを起こしているところがあるのではないかなというふうに感じています。

 そして4番目,学習成果を保証する講座の開発です。学習時間の投資をする以上,確実にできるようになりたい,確実に理解できるようになりたい,確実にスキルを身につけたいというふうに思っているので,講座の仕立てとか教え方の技術みたいなものに大変強い要求があると思います。簡単に言って,もっとうまく教えてほしいということでしょうか。

 ということで,講座を修了することが,ただちに自分自身の能力になるような,そういった効果に関する期待があると思っております。リスキリングのスピードが今すごく早いので,大学の動きとどこかできちんとかみ合っていくといいなというふうに感じて,期待しているところでございます。

 一旦私の話は終わりにして,皆さんから御質問いただきながら進めたいと思います。

【清原分科会長】 
 大久保委員,大変ありがとうございます。社会人のリスキリングについて,企業内と企業外,とりわけ転職市場の観点から整理していただいた上で,大学のリカレント教育への期待を御報告いただきました。

 それでは,これから質疑応答,意見交換を行いたいと思います。本日はこの後の議事もございますので,少し短く感じるかもしれませんが,10分から15分程度,これから質疑応答,そして意見交換をさせていただければと思います。御発言のある方は,挙手ボタンを押していただくか,会場の委員の皆様はネームプレートを立ててください。

 それではどなたからでもどうぞ,挙手ボタンを押してください。そしてネームプレートを上げてください。それでは,綿引委員,よろしくお願いいたします。どうぞ。

【綿引委員】 
 大久保委員,大変貴重なプレゼンテーション,ありがとうございます。資料を拝見しながら大久保委員のお話をお伺いして思ったことから,御質問を少しさせていただきたいと思います。

 まさに我々が考えなきゃいけないことというのは,AIが実装された社会で教育の在り方を考えて社会に発信していく役割が,中教審の中にあるというふうに私は思っております。そういう意味では企業も,知識の研修の時代から,知恵をいかに伸ばすかという研修の時代にシフトし始めている中で言うと,社会構造とか歴史とか,そういうものが全く違う米国型のリスキリングを中心に社会にメッセージを出していくということは,やはり学びの意欲を失わせることに影響してしまうのではないかと。

 やはり生涯学習の大切さとか,1つのスキルで専門性とともにもっと幅広い知識を勉強して,それで幅広い問題を解決できる人材が我が国の中で求められているのだ,だからリスキリングが必要なのだという,その米国型リターンに発したリスキリングの延長線上のメッセージではないメッセージが必要じゃないかなというふうに,大久保委員の今のお話を聞いて感じました。いかがでございましょうか。

【清原分科会長】 
 綿引委員,ありがとうございます。

 大久保委員,ただいまは,AIが実装されるような時代に,リスキリングの中身として,知恵ということも重要になってくるのではないかという観点からの御質問ですが,いかがでしょうか。

【大久保委員】 
 綿引委員,ありがとうございました。冒頭に人的資本経営が盛んに議論されているというお話もしたのですけれど,そのときに出てくる人物像は,多様な知識を持った多様な人たちなのです。同じ技術を持った人がたくさんいるのではなくて,違う技術や知識を持った人がそろっているのが企業を強くする要素なのです。

 知識や技術,それからその人の持っている価値観とか,その人が実現したいと思っている仕事上の思い,パーパスなんていう言葉も最近は使われますけれど,そういったものまで全部ひっくるめて,その人の持つ多様な能力というふうに考えるのでしょう。

 ですから,先ほど知恵という言葉を使われましたけれど,私からすると,だから知識とか技術だけではなくて,もう少しその人の思いとか価値観みたいなものを含んだ,そういったものを,一人一人の強さ,一人一人の個性として育んでいく。そういうことに生涯学習が寄り添っていければいいなと,そんなイメージを持っております。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。

 綿引委員,大久保委員からのそのようなお答えですが,いかがでしょうか。

【綿引委員】 
 全く賛成でございます。ありがとうございます。理解いたしました。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。

 そのほかいかがでしょうか。ウェブ上ではまだです。牧野委員,お願いします。

【牧野副分科会長】 
 どうもありがとうございます。大学で学生を教えている身としましても,とてもどうしようかなと思うといいますか,身につまされたような話で,考えさせられました。1つだけお尋ねしたいことがあります。大きな話から小さい話になるかもしれませんが,このリスキリングという場合,それから先ほどお話がありました人的資本主義,人的資本経営の話なのですけれども,人とか人材というものがある種,何か個人といいますか,個体といったものをベースに捉えられているような感じがするのです。

 前回の小路委員の御報告の方にもありましたけれども,企業価値の在り方が変わってきているとのことでした。利益,収益を上げていくということだけではなくて,むしろ企業の社会の中における位置づけや,価値のようなものが変わってきているのだというお話があったかと思います。そんなことの中で,例えば個人が,自分が何が学びたいのかよく分かっていないとか,実は昨日もある自治体で議論をしていたのですけれど,そこでも,生涯学習とか学びたいと思っている市民が7割ぐらいしかいなくて,3割は学ぶ必要を全く感じていないという回答があったということが話題になったりしました。

 それを少し深掘りしていきますと,どうなっているかというと,例えば欲しい情報はネットで取れるからそれでいいのだと言っているような感じになっているのです。それは言い方を変えると,知の主体になっていくというか,自分でそれを活用して新しい価値をつくるというよりは,消費して終わってしまうような感覚になってしまっていて,自分の力がどのように発揮されるのか,イメージがつかないのではないか,と思うのです。

 それで,個人が孤立して,互いに分断されてしまっているこの社会の中で,消費者になっていってしまうと,何を学んだらいいのかすら分からなくなってしまいますし,それから先ほど御指摘がありました,自分といったものが,ある意味では先ほどのキャリア・クッショニングでしたか,そうしたことも含めて,自分とは一体どんなものなのかといったことが分からなくなってしまっている。そういうことの中で,学びといったことが次へ行けないような状態になっているとすると,その個人とは,個体ということではなくて,むしろ関係の中に置かれることによって力が引き出されていくといいますか,そういう在り方はないのかとも思うのです。

 それと,先ほど綿引委員がおっしゃったような,日本的なというか,日本の社会における必要といったことともかかわりがあるように思います。それは多分,ずっとこの間こちらの中教審で議論しています,例えばウエルビーイングの在り方も,獲得的なウエルビーイングだけではなくて,むしろ協調的なというか,また日本型のウエルビーイングの在り方があるのではないかということもありましたけれども,一面でやはり個人が大事なのですが,もう一面で,関係の在り方そのものや,またその関わりといったことの中で,個人がどう価値づけられていくというか,また引き出されていくのかというような,そういう観点からこのリスキリングを考えた場合に,どのような在り方があるのかというのを,もしお考えがあれば教えていただきたいと思ったのですけれども,いかがでしょうか。

 すみません,長くなりました。

【清原分科会長】 
 ありがとうございました。

 それでは,大久保委員,お願いいたします。

【大久保委員】 
 牧野委員,ありがとうございます。大きな意味では,どちらかというとこれまでは,組織と言ったときに,そこにいる人たちは,ある程度均一な粒ぞろいの人たちということが念頭に置かれて考えられてきた。それがこれからということでいくと,一人一人が違うということを前提に置いて考えるというふうに変化しつつあるのだと思うのです。ですからその人が持っている独自性,個性,おっしゃるとおり知識の消費者ではなく,小さいながらも生産者として,自分らしく生き生きと働いている個人という姿になってくるのだというふうに思うのです。

 私も特に牧野さんがおっしゃる関係性みたいなところでいくと,個性ってどうやって自分自身で感じるのかといえば,それは他者との関係の中で,お互いに違いを認め合うことによって自分の個性はつくられていくということがありますから,そういう意味の関係性というのと,それからもう一つは,そういう違う個人,一人一人異なる個人が,本当に学習を進めたりとか,あるいはそれを結果的に生産活動に生かしていったりするということは,支援が必要なのです。

 この人的資本経営の中でも,やはりマネジメント,上司の人たちの行動というのが,今までとは随分異なるものが期待されていく。個別マネジメントが期待されていく。マネジメントは管理ではなくて,支援とか配慮というものに変わっていくというふうに私は感じているのです。そういったような支援者ということと,この2つが,その関係性の中でフォーカスされるのではないかと,そんなふうに感じています。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。よろしいですか。

 綿引委員,そして牧野委員の御質問の中から,大久保委員からは,多様性とか,学ぶ人の独自性とか,個性とか,そういうことを尊重していくのが,今のリスキリングをめぐる状況で重要だということと,知識の消費者ではなくて,知識の生産者を生んでいくような関係性と,それから支援,配慮が必要であるということをお答えいただきました。

 それではこのコーナー最後となると思います。萩原委員,どうぞ。

【萩原副分科会長】 
 ありがとうございました。20年近く,社会人大学院で社会人とともに学んできた立場から,少しコメントと,それから質問をしたいと思います。

 まず,これからのAIというか,この資格だけ――資格というか,目に見える資格というだけでなくて,経験というものを,AIを通じてしっかりと保有スキルを可視化していくのは,非常に重要なポイントになってくるかなと。そこら辺,大学等でのリカレント教育というもの,そこで何を学んだというのが,特にそこに反映されていくのではないかなというふうに思いましたが,それでよろしいですかということが1つ。

 それから,今回頂いたこのキャリア・クッショニングという考え方もとても大事で,自分の人脈をメンテナンスするといったときには,新たな人脈をつくっていくということも含めてだと思うと,やはり今おっしゃったような関係性をどうつくっていくのか,その中で,自分の価値観であるとかそういったものを学んでいくといった意味でも,非常に重要なのだろうなというふうに思いました。

 それから,社会人はなぜ学習しないのかというところの3番目に,うっかり学習行動をしている姿を見せると「勉強オタク」という評価や「暇か?」と言われてしまう。これは実はずっと私たちも,議論というか,なぜそうなってしまうのかと。つまり大学院にせっかく来ているのだけれども,絶対に会社には分からないようにしてくださいという要望が必ず出てまいります。

 ですので,今だとSNSとかいろいろなところで出てしまいますので,例えば懇親会とかがあったときに,絶対に写真を出さないようにとか,そういったことを言わなければならないような環境にまだ日本があるということを認識して,そうならないような教育は,もしかしたら初中局から,小さい頃から学び続けること,まさに生涯学習が重要になるのだということを共有していく必要が絶対あると思います。

 もう一つ大学の中で面白い事象があったのは,先に部下が大学院に来ていたのです。何かすごく楽しそうにしているということ,それから非常にスキルが上がって能力が上がっているので,何をしているのだというふうにその上司の人が聞いたら,いや,実は黙っていたのですけれど学んでいますと言ったら,翌年その上司の方が入ってこられました。それで企業では上司と部下なのですけれど,大学院に来ると先輩,後輩に変わるわけです。そうするとやはりこういう関係性というのは非常に職場においてもいいようにいっているということが,実際に分かりました。

 それからもう一つ,大学のリカレント教育をするために,2つ,要するに専門性を学んですぐに活用していくということと,先ほどから出ている価値観であるとか,生き方であるとか,そういったことを学ぶためには,例えば私がいた大学院では,必ず哲学の先生は正規のしっかりとした専任の先生を雇用しています。雇用っておかしいですけれど,しっかり存在しています。

 つまり哲学というのは非常に重要なので,誰々の哲学を学ぶというだけじゃなくて,自分はどう生きるのか,どう働くのか,どう社会に貢献していくのかという意味でも,哲学を学んでいくことは非常に重要になってくるので,恐らくリカレント教育でも,先ほど牧野先生もおっしゃったように,いろいろな種類と言ったらおかしいですが,例えば専門職大学院ですぐにスキルを学べる,そして活用できるものと,それから,これからどう生きていくのかといったときに,どう働いていくのかということをしっかり自分でクッショニング的に学んでいく。多分そういった大学のリカレントも,いろいろな種類というか,あれが出てくるのかなというふうに思いますけれど,その点いかがでしょうか。

 少し長くなりました。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。

 それでは大久保委員,いかがでしょうか。

【大久保委員】 
 ありがとうございます。実感が伝わってきます。私もビジネススクールで授業を持っているので,自分自身にも跳ね返ってくることを自分で言っているような感じなのですけれども,生涯学習といいますか,継続的な学習については,このリスキリングというのは象徴的に言うと職務直結型なのです。

 そういうものと,もう一つやはりキャリア形成型の長期ビジョンに基づく学習というのとは,やはり少し違う。今ビジネススクール等に通っている社会人というのは,どちらかというとキャリア形成型が多いと思いますので,少し目的が違うのだろうというふうに思うことがあります。

 それから先ほど言ったとおり,学習することを隠している人もいるということなのですけれども,残念ながらまだ状況としてはそういう実態があることも確かでございまして,これはやはり日本の中で継続学習している人たちのパーセンテージが上がっていくことが非常に重要です。自分自身が学習して仕事で成果を上げてきたという感覚がない上司は,どうしても部下の学習に対する理解が進まないということがあるのです。

 ですから一定程度それが膨らんでいけば,そういう肯定的なムーブメントというのが出てくるのだろうというふうに思いますので,そういうことを通じて解決していくしかないのかなと思いますし,あともう一つは,学習する行動を取るきっかけになったことというのは,これもデータで分析してみると出てくることがあるのですけれど,職場以外の全く価値観が異なる人と一緒に何かをやった経験というのが,その人の学習行動のきっかけになっているということがよく出てくるのです。ビジネススクールみたいな場がその一つになっているということなのかなと思います。

【萩原副分科会長】 
 ありがとうございました。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。

 ただいま大久保委員の話題提供を踏まえて,3名の委員の皆様からの御質問,意見交換の中から,大分内容が深まってまいりまして,リスキリング,リカレント教育というのは,生涯学習分科会として議論しておりますが,先ほど萩原委員も言われましたように,初等中等教育段階から重要な学びのキャリアをイメージするということも重要ですし,高等教育局,あるいは中教審大学分科会においても,今日の大学のリカレント教育に期待したいことなどをお届けして,共に各局が連携しながら,望月局長につないでいただいて深めていきたいというふうに改めて思いました。

 大久保委員には,引き続き,今期においてはリカレント教育,リスキリングの議論が重要なテーマとなりますので,審議への積極的な御参画をお願いいたします。本日はありがとうございました。

 それでは次の議事に入ります。議題の2は,「社会教育人材の養成及び活躍促進の在り方について(中間的まとめ)について」です。

 4月に本分科会の中に設置を決定いたしました社会教育人材部会では,第11期中央教育審議会生涯学習分科会の議論を引き継いで,今年の5月以降,専門的で集中的な議論をこれまで4回,大変タイトなスケジュールの中で行っていただきました。そして資料2のとおり,中間的に取りまとめをしていただきました。現在,社会教育人材部会長であります牧野委員へ御一任の段階となっております。

 生涯学習分科会長としては,社会教育人材部会で行っていただいた専門的な御議論を最大限尊重したいと思います。その上で,中間まとめを踏まえて実施される制度改善やその運用,さらには社会教育人材部会における今後の審議に役立てていただく観点で,ぜひ本日,委員の皆様にコメントを頂きたいと思います。

 それでは,まず事務局から資料の説明をしていただきまして,その後,質疑応答や委員の皆様からの御意見を頂く時間を取りたいと思います。それでは,まず事務局から説明をお願いいたします。

【高木地域学習推進課長】 
 地域学習推進課長でございます。御説明させていただきます。

 資料2でございますけれども,まず1枚おめくりいただきまして,1ページ目,目次を御覧いただければと思います。これまで4回の部会で御議論いただきました内容を,中間まとめとしましてこのたび整理させていただいたものでございます。

 全体構成としまして,大きく分けて3本立てとなっておりまして,まず「社会教育士」創設までの主な議論と生涯学習分科会の議論との関係を整理した上で,2つ目でございますけれども,社会教育人材部会におけるこれまでの議論の内容を整理しております。さらに3ポツ,3つ目としまして,今後の検討事項として考えられる項目を列挙しております。

 まず,1ポツ,第11期生涯学習分科会での議論等との関係ということでございます。2ページ目でございます。2ページ以降で説明させていただきます。

 (1)では,「社会教育士」創設までの主な議論といたしまして,1段落目にございますように,平成25年の生涯学習分科会の中でのワーキンググループの議論の整理におきまして,社会教育主事について必置廃止の要望が全国市長会などから提出されておりましたが,その重要性に鑑みまして,社会教育主事は必置を原則とすることが望ましいということにされたところでございます。

 その上で,2段落目でございますけれども,社会教育主事講習で学んだ学習や主事として得た知識や経験というのは様々な場面で役立つということで,さらに検討を加えた上で,最後の段落でございますけれども,社会教育士の称号の付与の制度創設に至ったといった経緯をまとめております。

 続きまして(2),3ページでございますけれども,こういった流れを受けまして,さらにどうあるべきかということで,昨年の8月に生涯学習分科会において議論の整理を頂いたところでありまして,この中で大きな方向性としまして,3行目に書かせていただいているところでございますけれども,社会教育人材の量的な拡大と質的な向上を進める必要があるということで,具体的には,社会教育士の配置促進,社会教育士の活躍の機会の拡大,そのための継続的な学習機会の確保などの方向性が示されているところでございます。

 こうした流れを受けまして,(3)でございますけれども,今後の生涯学習・社会教育の振興方策ということで,本年3月に生涯学習分科会で方向性を取りまとめているところでございます。大きな柱としまして,2段落目でございますけれども,丸1から5までの項目を整理させていただいておりまして,ここで掲げている項目を工程表とともにお示しさせていただいております。

 そのうち,社会教育人材に関する取組については専門的な議論や検討が必要ということで,(4)で整理させていただいているとおり,今期の生涯学習分科会において社会教育人材部会を設置いただいたところでございます。

 その上で,社会教育人材部会において,これまで4回御議論いただいているところでございますけれども,社会教育人材の養成に関する事項については,可能な限り早急に取り組んでいく必要があることから,現時点で考えられるものについて,本中間まとめとして整理いただいております。文部科学省としましては,本中間まとめを踏まえ,速やかに制度改正に着手し,可能なものは令和6年度から実施していきたいと考えているところでございます。

 4ページに行きまして,2ポツ,社会教育人材部会におけるこれまでの議論でございます。

 まず,(1)で社会教育人材を取り巻く状況の認識について触れております。ここで重要なのが,括弧書きで書かせていただいてございますように,社会教育人材が果たす役割への期待です。1行目から書いてございますように,社会教育は,住民が共に学ぶことを通じて地域づくりを進めるための基盤であるという基本的な性格を踏まえた上で,これ以降,様々な取組を記載しております。

 とりわけ1段落目の後ろから2行目,3行目にもございますように,社会教育を基盤とした住民自治の強化という観点で言うと,福祉・農村振興・防災・まちづくりなど,これまで首長部局を中心にやってきた分野においても地域コミュニティに着目した施策が展開されており,社会教育との連携が重要であるという旨も触れています。

 さらに2段落目以降でございますけれども,その担い手としましても,これまでの社会教育団体やNPOにとどまらず,民間企業,あるいは首長部局など,様々な方々が主体となっているということや,オンライン化の進展に伴い,地理的な地域にとどまらず,テーマによっては特定の地域だけではなくて,日本全国,あるいは国内外の取組も期待されるといった,地域の広がりもあり,さらにニーズの広がりとしましては,昨今リカレントやリスキリングの学習ニーズの高まりも見られます。

 総じて言えば,最終段落にも書いてございますように,社会教育の裾野の拡大ということが非常に期待されているところであり,この中で社会教育人材が果たし得る役割が大きいというところでございます。

 続きまして,5ページになりますけれども,その裾野の拡大を踏まえた人材確保の必要性についてです。5ページの図にも記載がありますように,社会の様々な行政分野において社会教育との連携が模索されている一方で,社会教育主事の自治体への配置率は5割を切っており,社会教育人材の質的な向上・量的な拡大を図っていくことが極めて大であるということに触れてございます。

 こうした状況を踏まえまして,今後の施策の基本的な方向性として幾つか整理させていただいております。

 まずは,アの様々な場で活躍する社会教育人材の確保についてです。6ページに行っていただきまして,2段落目の3行目から書いてございますように,首長部局やNPOなどの多様な主体が担う,福祉・農村振興・防災・まちづくりなど,様々な領域において広がりが見られるので,社会教育人材を確保することが必要であるとともに,社会教育主事講習を受講することで,社会教育行政を含めた社会教育の専門性も身につけて,地域コミュニティにおける学びを基盤とした自律的・持続的な活動を,課題解決に向けていくという方向に持っていくことが重要ということでございます。

 また,そうする中で,最後の段落ですけれども,そのためには,今ある社会教育主事講習について,幅広い多様な人材にとって受講しやすいものとする必要があるということでございます。

 そのために欠かせないのが,次のイになります。社会教育主事と社会教育士の役割の明確化と配置促進ということで,1段落目に整理しておりますが,社会教育主事の役割でございます。総じて言えば,地域の社会教育の行政の企画・計画や,様々な関係者との連絡・調整も含めて,社会教育行政及び実践の取組全体をけん引する役割,言わば多様な分野と社会教育をつなぐ,地域全体の学びのオーガナイザーとしての役割が求められていると整理しております。

 また,社会教育士については,2段落目の5行目から記載しておりますけれども,従来の社会教育の分野に加えて,学校教育,首長部局,NPO,民間企業などにおいて,まさに現場レベルの活動において,各々の専門性と社会教育の知見を生かしながら,様々な活動に社会教育としての学びの色彩を加えるような工夫やコーディネートを行ったり,7ページでございますけれども,社会教育的な手法を用いて人々の活動を支援することで,それぞれの分野の活動を活性化させたり,その意義を深めたりする役割,言わば専門性を様々な場に生かす学びのオーガナイザーとしての活躍が期待されていると整理しております。

 その上で,3段落目でございますけれども,こうした中で,社会教育士をはじめとして担い手が多様化して,数も増えていくということを想定すれば,そういった社会教育全体を俯瞰(ふかん)し,調整することを職務として担う社会教育主事の役割は重要性を増すことから,各取組の相乗効果的な充実が図られる体制を各教育委員会で整備することが望まれるという点についても触れてございます。

 さらにその次の段落までは,まさにその最適化の方策として,社会教育人材ネットワークをしっかり構築して活発化することも大事だということについても触れているところでございます。

 その上で,7ページの中段にあります,ウですけれども,ここでは,そういった中でそれぞれの人材に求められる能力や知見,あるいはその養成の在り方はどうあるべきかということを整理しております。

 まず,1)でございますけれども,こちらは社会教育主事と社会教育士の養成・確保の在り方ということで,特に1段落目の5行目からですが,社会教育士の称号は社会教育主事の任用に必要な講習等を修了した場合に称することができる,言わば履修証明として社会教育主事の任用に当たって必要なものであるとともに,当該称号を,それ自体汎用性のあるものとして活用されていくことが考えられます。

 今後,社会教育の裾野の広がりを見せるということでいえば,その後の記述でございますけれども,多様な人材の様々なニーズに対応していくためには,多様な機関によって選択肢が提供され,受講者が自身のニーズに応じて選択し得る環境を維持・拡充していくことが重要ということでございます。

 一方,その上で基本的なことはしっかり押さえないといけないということで,8ページで社会教育主事講習の内容について触れさせていただいてございます。

 まず講習の内容に関しては,社会教育とは何かという基本的理解を図るべきであり,その上で,学びと実践の活動を効果的に進めるために必要なコーディネート能力,ファシリテーション,プレゼンテーション能力については,社会教育主事としても,また多様な分野で活躍する社会教育士としても共通する汎用的な能力ということで,その辺りはしっかりと講習の中で身につけていただくことが必要ということでございます。

 また,社会教育士であれば社会教育行政の知見は必要ないのかといったら,必ずしもそうではないということで,行政に関する知識も一定程度あることが必要であるということも記述してございます。

 またその上で,次の段落ですけれども,社会教育主事への任用が具体的に予定されている者,こういった方々にとっては,社会教育計画の策定,社会教育関係団体の育成など,行政的な専門的な知見を学ぶ必要性が相対的に高いということで,その辺りについてはその次の段落でも書かせていただいてございますが,現在の講習科目を見直したときの検討の中でも議論があったところですが,実務経験や研修などによって適切に補完されることが望ましいとしているところでございます。

 次の段落でございますけれども,こうしたことを踏まえまして,主事講習や養成課程については,社会教育主事の任用を見据えながら,社会教育士としての経験を積む上で必要となる,言わば社会教育人材としてのエントリーに当たっての必要条件であり,前述の基本的な理解などを踏まえ,様々な実務経験を積んでいき,必要に応じて研修などによって社会教育主事として必要な能力を高めたりする中で,社会教育主事として任用されていくことが,一つの望ましい方向性である旨整理しています。

 それとともに,2)でございますけれども,養成段階でなく,養成後の取組がやはり大事ということで,9ページになりますけれども,特に中ほどに3つの黒ポチを書かせていただいております。1つ目が,職務上,あるいは地域活動を実践することで経験を積む機会をしっかり確保して,2つ目,それとともに様々な社会教育人材のつながりの中で,お互い,あるいは自主的に学べるような機会を得られるようにすること,そして3つ目でございますけれども,多様な研修の機会をしっかり提供していくこと,こういったことが大事であるという旨を整理しております。

 以上の基本的な方向性を踏まえた具体的な改善方策を,9ページの中段から(3)として触れているところでございます。

 まず,アでは,やはり量的な拡大が非常に重要でありますので,それに向けた社会教育主事講習の定員の拡大をしっかり図るべきということでございます。

 続きまして,イでは,受講生の多様なニーズに応え得るためにも,10ページに行きますけれども,受講者の選択肢の拡大を図ることが必要だということで,まず1つ目は,受講形態の多様化。例えばオンライン化や夜間,休日の開講,一部科目のオンデマンド化,あるいは,こうしたオンラインとリアルのベストミックスを図ることが必要だということでございます。

 また,社会教育主事講習の委嘱に際しては,こうした取組の実施に配慮するとともに,こうした様々な取組を行っているという情報に適切にアクセスできるような,情報発信の充実が必要であるということにも触れております。

 2つ目は,柔軟な履修方法による選択肢の拡大で,先ほど申し上げましたように,受講者のニーズに応えるということであれば,オンラインなどと同時に,例えばいわゆる分割履修のように,それぞれ受講生のニーズに応じて複数の講習を受講するなど,柔軟な履修方法も必要ではないかということに触れております。

 11ページに参りまして,このためにも,次にありますように,講習科目の提供方法の弾力化ということで,2段落目に記載しておりますけれども,現在,一部科目指定の社会教育主事講習として,社会教育経営論と生涯学習支援論の2科目の開設を大学等に委嘱しているところでございますが,受講生のニーズに応えたり,あるいは各大学における様々な特色ある展開を図るという観点からすれば,3段落目の中ほどぐらいに記載しておりますけれども,大学の判断によっては,現在の2科目ではなく1科目から4科目までの開設を,ある程度柔軟に認めるということが必要ではないかと考えております。

 また,国の委託費を活用しないで実施する社会教育主事講習については,委嘱の期間を最大で5年間まで延ばして委嘱できるようにするようなこともやってはどうかということ,さらには,その次の段落でございますけれども,現行制度上,一部科目指定講習については受講料の徴収を認めているところでございますが,今後の講習の開設に当たっては,国の委託費を活用しないで実施する主事講習については,大学の判断で受講料を徴収できることとしてはどうかというところでございます。

 ただ,その場合にはできるだけ高額にならないような配慮が求められるということで,その旨記載させていただいているところでございます。

 続きまして,ウですが,先ほど申し上げたような内容については,社会教育主事養成課程の取組においても参考にしていただく中で,できるだけ受講者のニーズに沿った取組が行われるようしていただくといったことについて記載しております。

 12ページに行きまして,エでございます。各機関の取組の共有ということで,先ほど来御説明しているアからウまでの取組の結果,各大学で様々な取組が行われるようになることが期待されますが,そういった中で,どこの大学が,どのような受講形態で,どういった内容の講習を行っているのかは,ある程度分かりやすく見えるような形にする必要があるということでありましたりとか,そういった取組をお互いに共有することで,さらなる質の向上を図っていくということが必要でございます。

 また,続きまして,オの受講資格の明確化でございますけれども,制度の上では,3段落目にも記載させていただいておりますように,PTAや子供会なども含めて,様々な方々が受講できるようになっておりますけれども,13ページに行きまして,実際の運用としましては,どういった活動実績があれば受講できるのかということが必ずしも明確ではないところが指摘されております。

 そういった内容が次の段落で書いてあるのですが,もう少しその辺りを明確にすべきではないか,あるいは海外大学の受講者が受講できるかどうかということが,必ずしも現行制度上明らかになってございませんので,この辺りも明確化する必要があるだろうということで整理しているところでございます。

 続きまして,カでございます。民間資格等取得者の一部科目代替ということで,例えば,下の注の15にも書いてありますけれども,生涯学習コーディネーターという資格がございますが,場合によっては社会教育主事講習と一定程度関わりが深い部分,内容が同種である場合は,例えば部分的に一部科目を代替して認めることも検討すべきではないかということで,その内容を書かせていただいてございます。

 以上がこれまでの議論の整理とともに,国としてしっかり速やかに進めないといけない内容でございます。

 15ページでございます。3ポツ,社会教育人材部会における今後の検討事項ということで整理したものでございます。

 1つ目が,社会教育人材の活躍促進ということで,これまで社会教育人材の養成の在り方を中心に御説明させていただきましたが,その結果,多数の社会教育人材が輩出されるようになっても,活躍する場がないと社会教育の振興につながりません。そのため,社会教育以外の分野,例えば学校運営協議会と地域学校協働活動の一体的推進を含めた学校教育や,首長部局,NPO,民間企業などで,社会教育の知見と当該分野の知見を組み合わせながら生かしていくような活躍の場などについて,促進方策を検討してはどうかといったことが(1)でございます。

 続いて,(2)がネットワーク化でございます。地域の社会教育人材がそれぞれの専門性と相互のつながりを生かして活躍する上で,お互いがつながり合う機会というのは極めて大事ではないかということで,さらに具体的な手法を検討してはどうかというところでございます。

 (3)が旧制度における受講者への積極的な社会教育士への称号付与についてでございます。旧制度の主事講習や養成課程の修了者の方の中でも,既に主事として活躍されている方々がいらっしゃるといったことで,16ページにもありますけれど,こうした方々につきましても,社会教育士の称号を付与する方向で検討すべきではないかということもございましたので,さらなる検討を進めるということで整理しております。

 (4)が修了証書の在り方ということでございます。これまでの議論の中で,社会教育士であることを証明できるようなものがあった方が,より活動しやすいといった意見もございましたので,その発行体制も含めて,さらに検討を進めてはどうかということでございます。

 (5)が社会教育主事の配置促進ということで,社会教育主事とともに社会教育主事補というポストもございますが,この2つについて配置できていない理由を事務局の方でしっかりと調査して,詳細をヒアリングする中で実態把握して,さらなる配置促進に向けて検討していきたいというふうに考えてございます。

 最後でございますけれども,継続的な学習機会の確保についても,先ほど御紹介したネットワークの活用でありましたりとか,国や地方が行う研修のオンデマンド配信等の推進も含めて,さらに検討を進めてまいりたいというところでございます。

 以上でございます。

【清原分科会長】 
 高木地域学習推進課長さん,御説明ありがとうございます。

 ここで,社会教育人材部会長を務めていただきました牧野委員にも,ぜひ補足の説明があればお願いいたします。

【牧野副分科会長】 
 どうもありがとうございました。

 高木課長さん,着任早々御説明どうもありがとうございました。先ほど御説明がありましたように,この第12期の生涯学習分科会で社会教育人材部会をつくっていただいて,5月からほぼ2か月間ですけれども,社会教育の人材,特に社会教育主事,それから社会教育士の在り方について検討してまいりました。

 今回この中間的まとめ案を出しましたのは,ちょうどこの時期が,来年度以降の政策へどう反映させるかということと,それから予算化の問題もありまして,特に重点的に議論してきました社会教育人材と言われている方々の養成の在り方,それから活躍の在り方について,来年度以降の政策に反映させていただきたいということもあって,今回この中間的まとめ案を出させていただくことになりました。委員の方々には,2月で4回という,とてもハードな議論をさせていただいたのですけれども,御尽力いただき,まとめていただくことができました。

 先ほども御説明はありましたが,社会教育主事という資格といいますか,ポストがあります。これは社会教育法上に規定されている社会教育の専門職,行政の専門職です。言い方を変えますと,同じ社会教育の資格であります,図書館司書や博物館学芸員という資格があるのですけれども,それに準ずるというか,それと並んで重要な社会教育主事という行政職上のポストが法的に置かれています。

 実はこの社会教育主事は任用資格なのです。つまり,社会教育主事の課程,大学の授業で課程を取った場合と社会教育主事講習という講習を受けることで,そのいわゆる資格というものが取れることにはなっているのですが,少しこれは複雑で,受講して,又は課程を終えたから,では教員のように免許が出て,私はその教職の免許を持っていますと言えるかといいますと,そうではなくて,社会教育主事に任用されないと主事とは言えないという資格になっています。

 ですから,受講して終わっただけでは,任用資格はあるのだけれども,表向きは見えないのです。さらに社会教育主事は,社会教育法上は,都道府県と市町村の各教育委員会に配置される,必置ということになっているのですけれども,主事になった後,例えば任期が来て交代,異動ですといって主事ではなくなった場合に,この人が主事課程をきちんと終えているかどうかが分からないわけです。

 それで,多くの方々が主事の課程を終えられたり,又は講習を受けられたりしていて,しかも非常に汎用性の高いといいますか,社会で様々な形で活躍ができるスキルですとか,いろいろな能力を持っていらっしゃるということもあるので,そういう方々がきっちりと講習を受けられたり,また課程を終えているといったことが分かるようにということで,社会教育士という称号を授与しようということになって,4年前からですけれども授与されることになりました。

 そして4年前,2020年度からですが,養成課程と講習において,課程や講習を終えられた方々に関しましては,社会教育士という称号が授与されることになったということです。

 そしてこの3年間で約4,500名という方が,社会教育士を取られたというか,称号を受けられたのですけれども,その過程で主事を養成している大学であったり,講習を持っている大学,又は教育機関の方から,様々な議論が出てきていまして,社会教育士をどう扱ったらいいのかですとか,また受講者が増えることに対してどう対応したらよいのか,そんなこともありましたので,今回この部会を設けていただいて,きっちりと社会教育主事,それから社会教育士といったものについての考え方をまとめておいて,きっちりと政策に反映していただけるようにできないかということで議論してきたということになります。

 社会教育,特にその人材に関してですけれども,例えば少し関連することを申し上げますと,現行の教育振興基本計画においては,基本的な考え方の中で,教育こそが社会をけん引する駆動力の中核を担う営みであるということが書かれてあります。先ほどの人的資本経営との関わりも出てくるかもしれませんし,さらにウエルビーイングの観点で,一人一人の豊かで幸せな人生と社会の継続的な発展を実現するために,教育の果たす役割はますます大きくなっているということが規定されています。

 さらにその上で社会教育に関しましては,特に地域におけるということがベースになるわけですけれども,地域において人々の関係を共感的・協調的なものとするために,社会教育による学びを通じて,人々のつながりや関わりをつくり出すということが書かれてあったりですとか,さらには人々が協調し合える関係としての土壌を耕しておくという表現が入っております。

 そして,そうしたものが社会全体の基盤になるのだということが指摘されていまして,そういう意味で社会教育というのが,いわゆる教育行政の中のものではあるわけですけれども,むしろ社会全体の基盤をつくる,とても大事な営みなのだといったことが,教育振興基本計画の中に書かれてあるのです。

 そして,先ほどこちらの中間まとめ案の御報告にもありましたけれども,今や社会教育は,むしろ教育行政の範ちゅうだけではなくて,様々な,例えば福祉ですとか,防災ですとか,まちづくりですとか,又は農山村振興ですとか,そのところと結びついていって,住民の方々が自主的に自分たちの地域をつくっていく,コミュニティをつくっていくといったことと深く結びついている。その意味では教育行政,社会教育行政であるわけですが,一般行政ともうまく連携を取りながら,それらをコーディネートしていって社会基盤をつくっていくことが大事になってきた。そんなことが共通認識としてあるということになります。

 その上で,社会教育人材と呼ばれている,特に専門職である社会教育主事の方々の役割,そして主事にはならないけれども,又は,発令はされていないけれども,例えば様々な社会の現場で,社会教育主事的な訓練を受けた方々がきっちりと人々を結びつけていく,コーディネートする役割を担っていく,社会教育士を名のっている人々がいて,活躍している。そうしたことが社会全体で広がっていくような社会の在り方を構想できないかということで検討してきて,今回のこのまとめ案になったということになります。

 基本的には社会教育主事というのは,行政的にきっちりと発令されていて,教育委員会の中にあって,社会教育行政を担うということ,企画することと同時に,社会教育実践を支えて助言するということ,さらにほかの行政領域,いわゆる首長部局の行政領域とも連携を取りながら,社会基盤をきっちりとつくっていく,特に人的なつながりをきっちりつくっていく役割を担う専門職です。さらに,同じように養成を受けている ――養成というのは教育や講習を受けているのだけれども,社会教育主事には発令はされてはおらず,社会教育士として,実践現場で,それぞれが持っている様々なフィールドで,人々の学びを組織していきながら,社会基盤を豊かに形成していく役割を担う方々がいる。こういうことを,きっちりとここで整理したということになります。

 その上で,今後,社会教育主事や社会教育士の配置の在り方,基本的には社会教育主事は,法的には必置ですから,全都道府県と全市町村の教育委員会に配置されていなければいけないわけですけれども,今,実は配置件数が下がってきている。これに対して,重要性に鑑みて,やはり拡大していただきたいということと,さらには社会教育士の方々が活躍できるようなフィールドをどんどん広げていくということも行政的な役割になるのではないか。こういうことが議論されました。

 そのためには養成の在り方をどうしていくのか。簡単に言えば,質を確保しながら量的な拡大をどうするのかといったことを検討しました。そして今回のまとめでは,ある意味で弾力化といいますか,定員を広げていく中で,様々な形で社会教育主事任用資格,社会教育士称号を得ることができるような仕組みをつくっていったらどうかということになっています。

 さらにその上で,まだここで終わりではなくて,今後まだしばらくこの部会が続いて,さらにその社会教育主事,社会教育士の在り方についての検討を進めていく予定になっておりますので,最後のところで今後の検討の方向性について書かせていただいているということになります。

 これは個人的な思いではありますけれども,やはり社会がどんどん変わってきていまして,先ほどのリスキリングのお話もありますけれども,いわゆる教育,又は講習を終えたということだけでは終わらない社会になってきています。こういう社会の中で,どうやって現場で学びつつ新しいスキルを身につけて,さらに自らを向上させていくのか。そうしたことと社会全体のつくられ方といったことが,ある意味で表裏一体な形になってきているのではないか。そこにおいて社会教育人材の在り方といいますか,重要性といったことが,今後どんどん増えてくるのではないかというふうにも考えています。

 そしてそうしたことを基本にしながら,この社会を,人生100年,学び直しをしながら,一人一人が豊かな,又は価値高い生活ができるような,そういう社会に組み替えていく。それこそが新しい,ある意味で生涯学習の社会にもなるのではないか。そのような形で人材論を基本にしながら,新しい社会の在り方についての議論が広がっていくとよいなと考えております。

 そのための基本的なまとめ案になるかと思いますので,長くなりましたけれども,よろしく御審議いただきまして,またコメント等いただければと思います。どうもありがとうございます。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。

 それでは,事務局からの説明に対する質疑応答と,今,牧野部会長も背景や意義について御説明いただきましたが,社会教育人材の養成及び活躍促進の在り方について,皆様からぜひコメントを頂きたいと思います。御発言のある方は,挙手ボタンを押していただくか,会場の皆様はネームプレートを立ててください。どうぞよろしくお願いします。どなたからでも。いかがでしょうか。

 それでは,松本委員,野田委員,そして澤野委員とお願いします。では,松本委員,お願いします。

【松本委員】 
 お取りまとめ,ありがとうございます。内容を見せていただきまして,全面的に賛同しております。

 本当に,この個人,あるいは協調型のウエルビーイングという言葉もございましたけれども,その地域全体のウエルビーイングを考えていくときに,まさに地域が学びでつながり合う,そして地域コミュニティが豊かになっていく,ある種のコレクティブインパクトをつくっていく上でも,やはり非常に大事な人材ではあるということを,再確認させていただきました。

 活躍の促進,あるいは継続的な学習の確保という視点でも書いていただいていますけれども,その中で,私たちが日々現場におりまして大切にしていきたい観点も,少しお話しさせていただきたいと思いました。それは,いわゆる実践知であったり,身体知のようなところです。その辺りの共有をどのように図っていくかということも視点として盛り込んでいけると,もっと充実した内容になるのではないかというふうに思いました。

 私たちはまちぐるみの教育,保育を進めているわけですけれども,そこにコミュニティコーディネーターという人材を配置しておりまして,まさにまちと子供たちの学びをつないでいったり,あるいはまち同士をつないでいきながら,地域のコミュニティを育んでいくということをまさに目指しておりまして,今回のこの社会教育人材と共通する部分が多いなというふうに感じているのですけれども,その中で私たちも現場でやりながら,何人かのコミュニティコーディネーターがおります。もう20人近くなってきているんですけれども,そのコミュニティコーディネーターで一番私たちとして学びが深い,そして充実してくるのが,やはりその先ほど申しました実践知であったり,身体知であると思いました。

 理念とか理論とか,そういったことの学びももちろん大事でありまして,その基礎的な部分があった上で,やはり現場の肌感覚であるとか地域の実情に合わせて,その現場の悩みであるとか,あるいは課題であるとか,それから可能性についてどのように向き合っていくかということです。

 具体的な事例から,もちろんいわゆる個人情報とか,そういったことをお互いに配慮しなければいけないところがありますので,お互い契約を結び合ったりするような状況があるのですけれども,そういったことを配慮した上で,現場で実際にどのような工夫をしてそれを乗り越えたかとか,あるいはその可能性を引き出したかとかいったことを,まさに現場の実践知,身体知から共有していくことが,私たちとしてはとても価値があるというふうに感じていますので,その辺りを私の考えとして述べさせていただきたいなと思いました。

 その中で比較的,何をやるかという,ある種のドゥーイングの部分よりも,ビーイングというのですか,どのように我々は社会教育人材として社会教育士があったらよいのかというビーイングの領域,どちらかというと,先ほど萩原先生がおっしゃっていた哲学の領域にも少し近いのですけれども,そういったことを共有していくことが結果的にうまくいくということも,我々は感じているところもありまして,そういった点からも述べさせていただきたいというふうに思いました。どうもありがとうございます。

【清原分科会長】 
 御意見として承ることでよろしいかなと思いますが,大変重要な,哲学というか,理念というか,そのお話を頂きました。

 それでは,野田委員,お願いします。

【野田委員】 
 どうもありがとうございます。自分の立場からいくと,今お示しをされた文というのが,少しどうも分かりにくいところがある。何が分かりにくいかと申し上げたら,自治体職員が担っていくのか,あるいは住民がこういった資格を得て取り組んでいくのかというのが,少しこの文全体では,どうなのというところがすごく分かりにくいです。もちろん行政職員がずっと読んでいけば分かるのでしょうけれども,それを住民の皆さんにも説明するときに,果たして,言わばすとんと腹に落ちるのかという,その辺がすごくどうも混在しているように,まずこれはもう印象としてそういう思いを持ちました。

 2つ目は,市職員がここまでやらなきゃならないのかということです。我々の立場から言うと,もう職員の定数を定めて採用計画をやって,うちは人口約49万近いまちですけれども,それでも1人,2人の採用をいかに抑えるかを必死になってやっているところに,この専門職を養成して,要るのと。現実の自治体ではよほど財政が裕福な自治体でないと,もう図書館司書でも学校の数そろえることができないのに,これは少しあまりにも。理想を追求するということは大事だと思うのですけれども,自治体としてこれをどうぞと言われたときになかなか大変かなと思います。

 それとこれも全体文のイメージで,例えば地域全体の学びのオーガナイザーとか,地域全体を俯瞰(ふかん)したとかの,この地域というのはどういう概念なのかというのをみんな持たないと,これは1つの自治体なのか,あるいは自治体の中の,例えば中学校区なのか,小学校区なのかとか,これによってもう全くこのマンパワーの必要性というのが違ってくると思うのです。それぞれ自治体の性格もあると思うので,市の職員が地域全体の学びのオーガナイザーなんてやると,もうはっきり言って自治体は人件費だけで破綻してしまいます。夜もやらなきゃならないし,土曜,日曜もやらなきゃならないし。地域に1人でできるはずないですよね。

 だから私の立場から言うと,ぜひとも地方自治体の現実をもう少し見ていただいて,そこで,こういう人材活用をしていけば,まさに人生100年時代の生涯教育というものにつながっていくのじゃないですか。そして私もこの会に最初に出たときには,地域コミュニティの希薄化というのがありましたけれど,この地域コミュニティを醸成するには,こういうふうにつながっていきますよというところがあると思うのです。

 マンパワーに頼るというのは,すごくある意味では自治体としては負担になってくるし,もう手が出せないと思うので,もっと公民連携だとかそういったところで,みんなが飛び込める,逆に民間がここに飛び込んでくると何らかの,税も含めてインセンティブがあるよというような,何かそんなイメージで一つ一つつくり上げていった方が,結果としては,こういった社会教育,誰もが生涯教育のチャンスがあるのだよというふうにつながっていくのじゃないかなと思います。

 それぞれ専門のお立場でみんな意見があるとは思うのですけれども,地方自治体を預かっている立場とすれば,何かすごく,ごめんなさい,お金と人がかかるような話になってしまっているような気がしてならないので,意見として申し上げたいと思います。

【清原分科会長】 
 野田委員,ありがとうございました。現職の市長として,自治体経営の観点から,財源,そして人材のこと。これについては,15ページ以降の社会教育人材部会における今後の検討事項(案)にもありますように,(1)に社会教育人材の活躍促進,あるいは(2)の社会教育人材のネットワーク化の中に,必ずしも公務員としての自治体職員だけではなくて,まさに民間の皆様とのネットワークの中で,地域全体の住民の皆様のウエルビーイングを考えていくという具体的な方向を,さらに検討していただけるものと期待しています。

 野田委員がおっしゃってくださった,現実的な状況や課題から目をそらさないで,今後の検討をしていただければと思います。貴重な御意見ありがとうございました。

 それでは,澤野委員に御意見を伺って,その次に,オンラインで熱田委員,辻委員と続いて御発言をお願いします。それでは,澤野委員,お願いします。皆様からたくさん手が挙がっておりまして,次にもう一つ,日本語教育に関する議題もありますので,皆様,ぜひ簡潔な御発言に御協力お願いいたします。

 それでは,澤野委員,お願いします。

【澤野委員】 
 聖心女子大学の澤野です。ありがとうございます。この5ページにありました図がとても分かりやすかったのですけれども,私もあまり知識がないところで,文言などでまず質問したいところがあります。

 1点目は,16ページ目の社会教育主事補というもののことです。配置の促進ということで,先ほどの予算との関係でも,社会教育主事の配置については大変重要なことかと思うのですけれども,この社会教育主事補というのは,やはり社会教育主事の資格が要るのかどうか,どういう人材が期待され,実際にどのように配置されているのか,少し教えていただきたいというのが1つです。

 それから,研修のプログラムとか,それを見直すのが今回の重要なところだとは思うのですけれども,いろいろお話を伺って,これを読んでますます思いましたのが,社会教育主事というのは,これが実現するとしたら,どうも社会教育士の方がより大きな集合で,その社会教育主事を卒業しても社会教育士として活躍できる可能性もあるし,社会教育主事講習を受けた人で,社会教育主事のポストがなくても社会教育士になれるということならば,社会教育士講習といっそのことしてしまった方が分かりやすく,社会教育士の中のほんの一部の人が社会教育主事になるというイメージなのかなと思ったのですけれども,間違っていたら,そういう理解でよろしいかどうか,少し伺いたいと思いました。

 それで特に,その汎用的なスキルとしてのコーディネート能力とかそういったものなどを見ると,かなりこのネットワークの中で,民間の方ですとか,社会教育指導員とかボランティア,また生涯学習コーディネーターという民間の資格もありますけれども,NPOとして地域の生涯学習活動を行っている団体などでも,独自の授業づくりコーディネーターを設けている場合が多かったりもしますので,そういったボランティアとして活躍している方たちや,民間のCSRで学校や社会教育施設と連携した教育活動などをやっている会社の方たちも,コーディネーターと称している場合もあります。そういった人たちの実務経験のようなものも,評価というか,単位の中で,この科目は免除できるように,そういういわゆる本当にインフォーマルな学びの成果を,こういった資格や研修を受ける際の従前学習の評価のような形で認定できるような仕組みも,何かあったらいいのではないかなと思ったのですけれど,その辺りが検討の項目に入っているかどうか知りたいのです。

 以上です。

【清原分科会長】 
 御質問ありがとうございます。それでは,事務局から御回答をお願いします。

【加藤地域学習推進課課長補佐】 
 事務局から回答させていただきます。

 まず,1点目の社会教育主事補に資格は要るのかという点については,資格等は不要でございます。

 2点目の社会教育主事講習と社会教育士の関係ですけれども,おっしゃるとおりでございまして,社会教育主事講習養成課程の修了者が社会教育士ということで,その中から社会教育主事が任用されるということでございますので,御認識のとおりかと思います。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。そして民間の皆様の活躍について視野に入れているかということについては,社会教育士の取組について注目していくとき,必ずそれは行政職の人だけではなくて,まさに多様な住民の皆様,あるいは企業の,先ほど例示されたCSRというような中で取り組んでいるものも視野に入れていると認識していますが,牧野委員,よろしいですか。

【牧野副分科会長】 
 すみません,どうもありがとうございます。やはり分かりにくいのでしょうか。社会教育主事の講習があり,社会教育主事の課程があって,それを修了した方々に対して社会教育士という称号が出るということになっているのです。社会教育主事は,行政で発令されて任用されないと社会教育主事ではないということになっていて,ただその主事の講習の中身というのが汎用性があるので,いろいろな方々に社会教育士というのを名のっていただいて,社会的に活躍できるような制度がつくれないかということで動いてきたということがあります。

 その意味で,野田委員が御心配になっていることもよく分かるのですけれども,行政職員として全て任用せよという議論ではなくて,むしろ民間で,例えばNPOで関わっていらっしゃったり,又はその地域学校協働活動の推進員を民間で担っていらっしゃったり,いろいろな形で住民の中の学習のコーディネートをされている方がいらっしゃるので,その方々が社会教育士という専門職の称号を使って活動できるように,そしてそこで社会教育主事の講習内容等が汎用性があるものであるので,そうしたものを活用しながら社会で活躍していただけるようになっていくと,住民の様々な学習が組織されていって,自主的なコミュニティがたくさんできていく中で,社会の基盤がつくられていくのではないかという議論をしてきたということになります。

 実は部会の方でも議論をしていますと,社会教育主事と社会教育士が何か上下関係みたいに見えてしまったりですとか,いろいろなことが起こるのですけれども,社会教育主事というのは任用された方々のことであって,社会教育士,社会教育主事双方とも,社会教育主事講習を終えられていたり,また社会教育主事のいわゆる課程を終えられていて,それなりのきっちりとした能力を身につけていらっしゃることが前提の議論になっているということなのです。

 そこを御理解いただくと,例えば民間の方々であっても,先ほど紹介がありましたが,例えばそこで受講されていれば社会教育士を名のっていただくことも可能ですし,さらには民間が出している資格の中で,社会教育主事講習と中身が重複しているところがかなりありますので,そうしたものは,例えば今後単位認定していったらどうかという議論をしているということになります。こんな説明でお分かりになりますでしょうか。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。

 ここで皆様にお諮りいたします。今後,辻委員,そして清水委員,古賀委員,関委員,沖畑委員,綿引委員から手が挙がっておりまして,御意見,御質問いただきたいと思うのですが,もう1つ,先ほど申し上げました日本語教育に関する議題がございますので,ひょっとして10分程度延長になる可能性がありますが,お許しいただけますでしょうか。ぜひ全員の皆様の御意見,御質疑をお聞きしたいと思いますので,そのようによろしくお願いいたします。

 それでは続きまして,辻委員,お願いいたします。

【辻委員】 
 辻です。オンラインで失礼しております。

 2点あるのですけれども,1点は,4ページ目の書き出しというか,そこの辺りは,どうもやはり社会に貢献するということがとても強く出ているように,私には思えました。前期のここの会議では,ウエルビーイングということでいろいろなことを話し合って,その中で確かに,社会に関わる,そこに貢献するというのも重要なことだと思うのですけれども,私がさんざんお話しした障害のある方々の場合,やはり豊かな生活,文化国家として成熟した社会として,そういう文化的な活動を楽しめる,こういうようなこともあると思いますし,それから何かすごく理不尽な目に遭っているような方々が,仲間と話し合いながら,自分たちの置かれている状況を確認して,権利の回復というようなことも,ウエルビーイングだと思うのです。

 そういう前期のウエルビーイングでいろいろ考えたことが,少し一面化されているのではないか,もう少し多様なウエルビーイングというようなことを4ページに書いていただけるとありがたいなと思っております。

 それから2点目は,9ページなのですけれども,9ページの下の方の(3)のイ,しかもその中の本文の終わりから2行目のところに,多様な教育機関によって養成される必要があると,そういうふうに書いていただいているのですけれども,多様な機会があってそれを受講される方が選ぶことが,今ふうの考え方だとは思うのですが,1つこれだけはやってはいけないのじゃないかなと。

 要するに,職員が足りないから多様なところで養成しようというあまり,やってはいけないことになることをしてはいけないと思って少し発言するのですけれども,それは,社会教育主事は行政の職員ですよね。それから社会教育士も,指定管理者を受けたり,あるいは学校との関わりを持ったり,首長部局の何か仕事をしたりということで,行政とすごく関わりがある。そこに公費がやはり流れ込んでいく,そういうふうに思うのです。

 そういうときに,お金を出す元の自治体,都道府県が,もしも社会教育主事の養成をするというようなことになると,これはとても不公平感というものが出てくるし,いろいろなところで問題を指摘される可能性があるというふうに思います。例えば学校の先生の教員免許を都道府県教育委員会が出して,都道府県教育委員会が採用するといったら,それは大事になると思うのです。それと同じように社会教育主事や社会教育士というのも,公費が流れていく仕事であることが多いわけですから,その養成を行政がやるというのはよくない。社会教育士だって同じだというふうに思っています。

 公費が投入されるところには客観的な立場で養成する。そういうところで養成された方がそういうところで採用されて,研修の方は採用した方がどんどんやっていただければいいと思うのですけれども,養成を行政がやるというのは,この多様な教育機関と書いた勢いで,もしそんなことが起きたらよくないなと思って発言しました。

 以上です。

【清原分科会長】 
 辻委員,ありがとうございます。2つの重要なコメントを頂きました。

 それでは続きまして,清水委員,古賀委員,関委員の順で御発言をお願いします。清水委員,お願いします。

【清水委員】 
 ありがとうございます。

 まず社会教育の裾野の広がりというのは大賛成です。私どもは特別支援の教育をしている学園でして,学園を巣立っていった卒業生の今の様子を見ると,学びの場が社会の中に皆無に近いです。ですから,学園として卒業生講座を開いたり,また学園のいろいろな行事に卒業生が遊びにいくのは,ウエルカムにしております。今度学園祭が秋にありますから,学園祭のシーズンになると,高等専修のホールのステージショーの会場を見ると,半分以上が卒業生,それも障害のある卒業生が並んでいます。そういった観点で裾野が広がることは大賛成です。

 しかし,共生社会の実現という大きなテーマがあるわけで,裾野が広がるのはいいのですが,社会教育主事の養成課程の科目の中に生涯学習支援論というのがございます。学習者の多様な特性に応じた学習支援に関する知識及び技能の習得を図るというのがありますけれども,私はこの中を深く知らないので教えていただきたいし,もし私のこれからするものが入っていないのであれば,ぜひ科目の中に入れていただきたい。

 それは障害のある方の個性を知る,障害理解の部分についての単元を入れていただきたい。発達障害でも非常にいろいろな多様性があります。多様な子たちがいます。やはり地域での共生社会の実現には,支援する教育,社会に携わっていただく方に,まず知っていただかないと進んでいかないと思っていますので。私はその辺の具体的なものを知りませんので,もし入っていなかったら,障害理解というところを入れていただくとありがたいと思います。

 以上です。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。辻委員からも清水委員からも,障害のある方も含めた多様性共生社会ということについての配慮の御意見を頂きました。

 それでは,ごめんなさい,先ほど私,熱田委員を御指名しようと思って,お声がけしながらきちんと御指名しなかったですね。すみません,オンラインの熱田委員,御発言をお願いいたします。その後,古賀委員,関委員です。

【熱田委員】 
 すみません,ありがとうございます。戸坂公民館の熱田です。人材部会の皆様,お疲れさまでした。私は社会教育に携わる者として,本当に身の引き締まる思いがしたと同時に,とても心強く感じながら聞いておりました。

 広島市という,少し小さい話をさせていただくのですけれども,私たちの広島市の公民館は71館ありまして,そのうち職員が常勤,非常勤合わせて約300人います。その300人のうちの半数近くが市のOBの職員になります。OBの職員さんの中でも,やはりそういう公民館という現場の中ですごく力を発揮される方もいらっしゃいますし,全く今まで関心のない,全然社会教育に携わったことのないところから来られた方というのは,すごく戸惑っていらっしゃるというような現状があります。

 社会教育主事講習を,できれば受けていただいたりとか,その来られるOBの方も,そういったものに関心のある方に来ていただけると,私たちもとてもやりやすいなというふうに,日々少し思っているところです。ですので,OBの方なので,ぜひそういう社会教育とかに関心のある方は,社会教育主事講習を受けて現場の方に来ていただければすごくいいなというふうに思いながら,少し聞いていました。

 社会教育主事のこのリスキリングとか行政職員のリスキリングというのは,やはりとても必要なことだなというふうに思って聞いておりました。これから公民館の方でも,そういう社会教育主事講習を受けた方がやはり増えていくと,そういったのに関心のある方がいらっしゃれば,地域と行政といろいろなところをコーディネートする役割が,すごく発揮できるんではないかなというふうに聞いておりました。ありがとうございます。

【清原分科会長】 
 熱田委員,ありがとうございます。まさに公民館の現場の御経験からの率直なコメントを頂きました。ありがとうございます。

 それでは,古賀委員,お願いいたします。

【古賀委員】 
 古賀です。ちょうど昨日,九州・沖縄地区の社会教育主事講習を担当してきたところでして,そこでの所感と,改めてここが大事だなと思ったところを話させていただきます。

 九州・沖縄地区の社会教育主事講習を20年以上担当している中,昨日,恐らくその中でも最多と思われるぐらいの民間の参加者がいらっしゃいました。多くは,やはり指定管理者として日頃業務に携わっておられるNPOの方で,異口同音におっしゃるのが,「これまで自分がそれぞれやってきたことを,講習を通じて自分の地域での立ち位置を確認できた」とか「もっと社会教育とつながって,自分たちがやっていることを地域にアウトリーチしていきたい」といったことです。前向きなコメントが多くて,一種,異業種交流的なつながりもできているなと実感したところです。

 一方,開催地は福岡県の九州大学だったんですが,開催地以外の市町村行政の関係者の参加者が減っているとのことで,やはりそこが気掛かりだなというふうには思ったところです。

 先ほどの野田委員の御発言とも少し重なるのですけれども,改めてここが重要だなと思ったのが,市町村行政に対して,政策的に社会教育を位置づけて推し進める意義を再整理してアピールしていくこと,恐らく「公民連携」とか「官民協働」という側面で,やはり行政の中で腹落ちして取り組まれる人材がいらっしゃると,民間としても心強いなと思うところが多々あると思いました。資料で言うと16ページの(5)のところになると思います。

 それから,今回「キャリア形成」とかの話もあるのですけれども,社会教育士なり社会教育主事なりを取得することが,自らのキャリア形成とか力量形成の助けになるというところも,やはり改めてアピールする必要があるなと,これに目を通しながら思いました。

 その上で,今年度,既に準備に取りかかられているということなのですが,15ページの(2)にありますネットワークづくりには非常に期待するところがありまして,恐らくそれぞれの人材が現場で大変お忙しくなられると思うのですが,その分自らをアップデートさせる動機づけにもなると思いますし,それこそ市町村行政に対しても,人事的な研修以外で研さんするという側面も出てくると思いますので,このネットワークづくりということも今後大いに期待するところです。

 以上です。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。まさに社会教育主事講習に民間の方が最多数参加されたという動向の中から,公民連携,官民協働というキーワードも頂きましたけれども,そうしたものがより充実したネットワークの中で,今回の取りまとめの中身が充実していくことという御提案です。ありがとうございます。

 それでは,関委員,お願いいたします。

【関委員】 
 ありがとうございます。関でございます。

 既に何回も言っているかもしれないのですけれども,自分も長年にわたって社会教育主事を務めさせていただきました。最初に資格を取って社会教育主事になると。これはあくまでも資格をもらい,スタートラインに立ったのがこの段階だったということを,改めて今感じます。その後,いろいろな形でいろいろな経験を積みながら,社会教育主事に育っていった。どうしても行政職員若しくは教職員の方がその職責を担うことが多いかと思うのですけれども,その方々は役所生活や,あるいは教育事務所等で勤務する中でそのマインドやスキルを身につけていく。

 人との信頼関係を身につける場が,私は社会教育主事の一番の醍醐味(だいごみ)だったような気がするのですけれども,それは,自分が仕事の中にいるときだけではないのですね。退職してから,社会教育主事だった方々が,我々のまちの中でも,コミュニティのいろいろな活動の中で活躍してくれるようになってきております。社会教育主事として自分が身につけたことが,多分社会をつくっていくための基盤になるすばらしい仕事であるということを,今日のこのレポートを見ながらも感じさせてもらいました。

地域におられる社会教育人材,社会教育士の方々も活動することを通じていろいろな地域との関係性をつくっていくと思いますので,そういったものを大切にするようなメッセージをこれからみんなに送っていけたら,社会教育士になろうという人がもっと増えていくのではないかと,改めて感じております。間違いなく私どもは,ここで育った人材が将来的には当事者となってまちをつくっていくはずと信じていますし,そういう人が増えることが,社会をより前に向いて進めていくエネルギーに変わっていくのではないかなと感じております。

 以上です。

【清原分科会長】 
 関委員,ありがとうございます。社会教育主事として活躍されてこられた御経験から,地域社会を共につくっていくという,社会教育人材の誇りが重要だということだと思います。ありがとうございます。

 それでは,オンラインで御参加の沖畑委員,そして綿引委員まで,これから御意見を伺いますので,沖畑委員,お待たせしました。御発言をお願いします。

【沖畑委員】 
 よろしくお願いいたします。たくさん御意見を頂きましたが,私も先ほどのお話にありました「社会教育の裾野の広がりと,社会教育人材を果たすべき役割」という,5ページにあるこの図でございますが,本当にこのとおりだなと感じているところです。

 と申しますのも,本市では,学校教育のこれからを考えたときに,学校と社会の協働ということをメインにして今進めているわけですが,社会教育がその大事な大事なつなぎとしての役割を果たし,地域振興でありますとかまちづくりといった,分野としては首長部局が今行政では担っているところですが,この分野でも本当にそういった視点が必要だなと感じています。そしてそういった視点が広がっていくことによって,人々の意識がどんどん変わっていくのを感じているからでございます。

 そこで,様々な分野において社会教育人材の配置やネットワークの構築が重要だなと思うのですが,ただ,すみません,野田市長さんが御心配されているように,その人材をどこにどう配置して,その経費はということを考えたときに,とても大変だなということも思っています。自分のところの配置においてもなかなかうまくいっていないところです。

 それは,社会教育主事という役割を担うには,勉強してきたというだけでなくて,中心となって本当に動くには,それなりの経験でありますとか,そして資質も備えていないとなかなかうまくいかないところがあって,難しいことです。ただ,いろいろなところに,その社会教育士を学ばれて,そしてそうした考え方を持った人たちが増えていくということが,本当にまちづくりには重要であるのではないかと考えます。

 学校の教員にも,ちょうど岐阜県で講習があったときには受けさせるようにはしているのですけれども,これを受けてきますと視点が変わります。本当に広い視野で物事を考えて,教育の質もどんどん向上していきます。

 ただ,時間とお金がかかります。1か月ほど拘束もされます。遠いところでありますと,なかなかその時間,学校を離れたり職場を離れたりすることが難しいところがありますので,ここをオンライン等も含めながらうまくやっていただけると,さらに増えるのではないかと考えます。

 この地域と学校の協働を始めてから,主体的に,自分で費用も出して,時間もつくって,この講習を受けられる方々が何人も出てまいりました。本当にうれしいことでありますし,そうした思いを持って,これから自分たちのまちをつくっていこう,教育を行っていこうという人が増えることが,本当にいいことではないかと思いますので,こうしたことがいろいろな課題を一つ一つクリアしながらできていくことを非常に望んでおります。

 以上でございます。

【清原分科会長】 
 沖畑委員,ありがとうございます。教員が社会教育主事講習を受けることによる視野の広がりなどのメリット,また地域学校協働活動を通して社会教育に関心を持つ住民の皆様等が増えていくことなど,現場の声を伝えていただきまして心強く思います。ありがとうございます。

 それでは,大変お待たせいたしました。綿引委員,御発言をお願いいたします。

【綿引委員】 
 ありがとうございます。これを拝見させていただきまして,やはり地域の核となる学校教育と社会教育の連携を持つというのは,本当にそうだと思います。すばらしい御提言だと思います。そういう観点で改めて考えると,社会教育というのは様々なリソーシーズとかスキームがやはり社会の中にあるなと。これをばらばらに進めるのではなくて,やはり効果的に組み合わせれば,さらにもっと大きなポテンシャルの効果が出てくるのじゃないかなと。

 そういうふうに考えると,今日,委員の方も教育委員会の方がたくさんいらっしゃるのですけれど,教育委員会が社会主事を有する組織であって,果たしていいのだろうかというふうに思いました。学校教育についてはもちろん教育委員会の皆様方が全力で取り組んでいただいているのですけれども,国民目線とかコンセンサスを取るという観点で,ある意味教育委員会というのは,社会教育全体の中で言うと少し距離が遠いのではないかと。

 よって,野田委員がお話のとおりの現場の意見は本当にそのとおりだと思うのですけれども,やはり市長部局にこの機能を置いて,住民のコンセンサスを取りながら進めていくという考え方もあっていいのではないかななんていうふうに思った次第です。人材については,企業の退職者,OBでまだまだ働きたい人たちがたくさんいるわけであって,そういうリソースを社会から求めて,知事部局に投入して,企業も巻き込んで地域社会を形成するという考え方はどうでしょうかというふうに思いました。

 以上です。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。まさに教育行政というのは,教育委員会と市長部局との緊密な連携の中で進められるべきものですので,そういう観点からまとめていただいて,私たちも視野がまた広がり,確認できたと思います。

 今日は多くの委員の皆様から,質疑,そして御意見いただきましたので,ここで部会長から一言いただいてから,確認をしたいと思います。

【牧野副分科会長】 
 皆さん,たくさんの意見をどうもありがとうございました。今回のこの中間的まとめをまとめさせていただいた部会長としまして,本当に感謝をしております。

 いろいろな見方ができるのだなということを改めて確認いたしましたけれども,一番私たちが考えなければいけないのは,今新しい社会に変わっていく中で,やはり草の根の自治といいますか,住民が自分たちでまちをつくっていく,コミュニティをつくっていく,担っていく当事者になっていくといったことを,どう私たちが励まし,支援ができるのかということ。それと行政との関わりがどういう在り方になっていくのか。さらにもう一つは,実は今の綿引委員の御議論とも関わってくると思いますけれども,次の世代の育成をどうしていきつつ,この社会を次へつなげていくのかといったことも考えなければいけないだろうということです。

 その意味では教育委員会の役割といったものが,狭い教育という範囲の議論ではなくて,もう少しやはり学習であったり,又はその草の根のまちづくりであったりといったところとも関わりながら,新しい形へと組み替わっていくといったことも,今後あり得るのではないか。それは今回のこの部会の役割ではありませんけれども,そんなことも少し見通しながら,新しい社会の在り方について,特に人材という観点から議論ができればと受け止めております。

 今回ここで皆さんに御意見いただきまして,中間的なまとめですし,また部会長一任ということになっておりますので,引き取らせていただく中で,次の議論に,皆さんの御意見を参考にしながら展開したいと思っておりますので,引き続きどうぞよろしくお願いいたしたいと思います。どうもありがとうございました。

【清原分科会長】 
 それでは,ここで皆様に確認をさせていただければと思います。皆様からは大変緻密にお読みいただいて御意見も頂いたのですが,まずは部会長一任になっている,この本日報告を受けました社会教育人材部会の中間的まとめについて,分科会としては一定の了承をさせていただければと思いますが,それでよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【清原分科会長】 
 今,牧野部会長からも,皆様から頂いた御意見をしっかりと受け止めて,今後部会長として反映していきたいというお言葉を頂きましたので,ぜひそのようにしていただければと思います。

 そして,本日委員の皆様から頂きました大変多様な視点と,また誰一人も取り残さない,一人一人を大切にする住民視点,そして地方自治,民主主義の視点からの御意見については,中間まとめを踏まえて実施される制度改善や運用,さらには部会における今後の審議に大いに役立てていただければと,分科会長としてもお願いを申し上げます。

 それでは御了承いただきましたので,牧野部会長にもう一言だけお願いします。

【牧野副分科会長】 
 御了承いただきましてどうもありがとうございます。今後まだこれから部会の議論も続きますので,今日皆さんから頂きました御意見等を参考にしながら,より深い議論をしていきたいと思いますので,ぜひともよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

【清原分科会長】
 引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

 それでは予定の4時になりましたが,中段で皆様にお諮りいたしましたように,もう一つ重要な議題がございますので,10分程度延長させていただきます。よろしく御協力のほどお願いいたします。そしてどうしても御予定があって退席される方は,後ほどまた事務局まで御意見をお寄せいただければと思います。

 それでは,議題3に入ります。「日本語教育の質の向上について」です。

 今年の62日に,「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律」が新たに公布されました。第11期生涯学習分科会の議論の整理におきましても,共生社会を実現する上で,外国人を含む様々な状況の方,そのお一人お一人を誰一人として取り残すことのない社会的包摂の実現が重要である。そのためにも,生涯学習,社会教育の機会を提供する必要性,重要性を議論してまいりました。

 このため,生涯学習分科会として,今後新たに制度化される日本語教育機関の認定や,日本語教員の登録などに関する課題や議論についても取り扱うことが必要だと考えます。今後の生涯学習分科会は,この法律をはじめとして,日本語教育に関する議論を行っている文化審議会国語分科会日本語小委員会の主査を務める浜田委員にも御参画を頂いております。後ほど御発言をぜひお願いいたします。

 それではまずは,私たちの認識を共有したいので,法律の制定や目下の課題等について,事務局から御説明を頂きます。ぜひよろしくお願いします。ここで文化庁国語課日本語教育推進室長の小林室長に来ていただいておりますので,御説明をお願いします。すみません,時間がない中,よろしくお願いいたします。

【小林日本語教育推進室長】 
 それでは,資料3に基づきまして手短に説明させていただきます。

 それでは,1枚おめくりいただきまして,2枚目を御覧いただければと思います。日本語教育,日本語教育界に関する現状・課題についてまとめております。

 現状でございますけれども,外国人の方が非常に増えてきているということもありますが,国内の日本語学習者は非常に増加しておる,そして,そうした日本語教育実施機関も増加しているということもございました。

 その一方で課題がございます。課題としてやはり一番大きいのは,1つ目,こちらの資料の課題というところに書いておりますけれども,一番上,教育の質の確保のための仕組みが不十分である。そしてそこにつながりますけれども,専門性を有する日本語教師の質的・量的確保が不十分であるという課題がございましたので,そうしたことを解決するということで,新たな法案をつくるということで,先の国会で法律が整備されたところでございます。

 それでは,次の資料を御覧いただければと思います。正式名称は少しこのような長い法律なのですけれども,一般的には日本語教育機関認定法と呼んでおりますが,ポイントとしては2つでありまして,まず日本語教育機関を認定するという仕組み。これが1つ。そうした認定日本語教育機関の教員について資格をつくる。これがもう一つのポイントになります。

 それで,すみません,2ページおめくりいただいて,資料のこのページで4ページを御覧いただければと思いますが,今後の日本語教育機関の認定の図でありますけれども,今現在は,例えば法務省告示校と言われている,留学生を受け入れている日本語学校や,様々地域の日本語学校もございますけれども,一定の質を担保する,目指すところはこの認定を受けるという形になってまいります。

 認定日本語教育機関は,この資料で図示しておりますけれども,国に対してまず申請を行いますが,現在省令を検討しておりますけれども,認定基準というもの,それは教職員の体制や教育課程の編成など,そうしたものを国で今後審査することになりますが,それを満たすところを認定するということになります。そして認定された日本語教育機関を,国は,一番下の矢印でございますけれども,インターネット等で多言語で公表するということで,外国の方にも読んでいただけることを想定しております。また日本語教育機関は,自己点検評価や定期報告,そして情報公表を行っていただく,これも義務づけとなりました。

 次の資料を御覧いただければと思います。今度は日本語の登録,日本語教員ということで,今後は日本語教員が資格化されるということなのですが,どのような形でなるかということで,まず日本語教師を目指す方,左の欄でございますけれども,日本語教育能力を判定する試験ということで国家試験ができました。

 これは法律でできまして,日本語教員試験というものを受けていただき,実践研修という,教育実習に近いものでありますけれど,そういうものを受けていただいた後に,登録ということでございますが,多くは現在,こちらの資料の右でございますけれども,大学等に設けられた養成課程で学んでいらっしゃいますので,そうした方は,日本語教員試験の一部を免除させていただいて,恐らく養成課程の中で実践研修を行う場合も多いので,そうした形で登録を受けていただくということになります。

 そして,すみません,2ページ後を御覧いただければと思います。今後のスケジュールということでございますけれども,法律は62日に公布されまして,法律では,来年の令和6年度から施行となっております。現在は,文化庁の方で設けられている審議会,浜田先生中心に,今頑張って検討しておりますけれども,政省令を取りまとめることを今年度中に行うということでございまして,来年度からは,まさに先ほど法律にありました日本語教育機関の認定や養成機関の登録,そして一番下にございますけれども,国家試験となります日本語教員試験というものを,ついに実施していくことになります。

 現在の報告ということで説明させていただきました。ありがとうございます。

【清原分科会長】 
 小林室長,ありがとうございます。よろしいですか。

【小林日本語教育推進室長】 
 すみません。少し1つ,すみませんでした。資料の3ページを御覧いただきたいと思います。失礼しました。少し説明を忘れてしまい,すみませんでした。

 この法律では,実は先ほどの認定基準の制定・改廃等につきまして,審議会等の意見を聞くということでございます。現在政令でこれを定めることとなっておりますけれども,この政令を定める審議会等については,教育機関の認定等に関する専門的知見が必要になるということで,実は日本語教育の所管が来年度からは文部科学省に移管となっておりますので,中央教育審議会とすることを想定しております。すみません,こちらの説明を加えさせていただきます。ありがとうございました。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。大変重要な変化が法律の内容として示されていて,今後この日本語教育機関の認定など新たな制度がスタートすることにおいて,中央教育審議会がその責務を担うということで,現時点ではひょっとして生涯学習分科会がその責を担うことになるということで,皆様にこの内容を共有していただきました。

 それでは,現在,文化審議会の国語分科会日本語教育小委員会の主査を務めていらっしゃいます浜田委員から,ぜひ御発言をいただければと思います。浜田委員,よろしくお願いいたします。

【浜田委員】 
 失礼いたします。分科会長,清原先生,どうもありがとうございます。ただいま御紹介にあずかりました浜田と申します。専門は日本語教育でして,先ほどありましたように,文化審議会国語分科会日本語教育小委員会の主査を務めさせていただいております。この分科会にも,この年度の初めから加えていただいていたのですけれども,本務の関係で今日が初回の出席となります。どうもこれまで大変失礼いたしました。

 もう時間もありませんので,ごく手短にコメントさせていただきたいと思います。私が現在主査を務めます日本語教育小委員会は,2007年にその第1回が開かれているわけなのですけれども,その辺りで現在につながるような基本的な認識というのがつくられたのではないかと考えています。

その基本的な認識とはどういうことかといいますと,外国人の受入れ拡大の議論がずっと進んでおり,それは疑いなく,経済,あるいは産業面でのニーズから出てきているものです。ただ,その受け入れる彼ら,彼女らというのは,当然人間です。機械のねじや部品ではありません。ですので,外国人を単なる働き手という見方で見るのではいけないと。日本社会への包摂というお話が先ほどもありましたけれども,やはり外国出身の彼らが日本社会で生活するに当たって,地域の人々としっかりコミュニケーションを行いながら,また安心・安全に社会生活を行っていくことが求められるということを考えると,彼らが「生活者である」という見方が重要であるということです。また日本社会の側も,そういった多様な人々との交流を通して,より豊かな社会になっていくことを考える必要があるであろうと。

 そのためには,当時からずっと地域のボランティアの方が外国人の日本語学習を支えるということが行われてきたわけですけれども,それでは決して十分とは言えない。やはり外国人の方がきちんと専門家に日本語を学ぶことを可能にするような仕組みが必要であるという認識です。

 外国出身の地域住民である彼ら,彼女らが日本語を学ぶことで,防災ですとか,福祉ですとか,あるいはまちづくり,そういったものにも参画できるようになっていくと,様々な課題の解決にもつながっていくのではないかと考えられます。先ほどから社会教育人材の養成に関する議論を伺っている中で,まさしく外国人に対する日本語教育の課題は,社会教育の課題と地続きの課題であるなということを感じて,非常に意を強くしているところでございます。

 その後の議論の成果の一つとして,またこの流れを大きく後押しするものとして,2019年には,日本語教育の推進に関する法律,いわゆる日本語教育推進法というものもできております。その中では,日本語教育の水準の維持向上を図るということが国の責務である,また地方公共団体についても,その地域の実情に応じた施策の実施をすることが努力義務であるということが定められております。

 ただ,その2007年からもう15年以上経つわけですけれども,当初の課題が完全に解決したかというと,残念ながらまだまだ不十分なところがございます。そこで,現在その課題を解決するための非常に重要なポイントとして2点を議論しています。1つは,日本語教育の教育機関の質の維持向上。そのために,日本語教育の機関を認定する制度をきちんと整備しようということ。そしてもう1点が,その認定された機関で日本語を教える日本語教員の資格をきちんと整備しようということです。

 日本語教育機関の質につきましては,きちんと認定の制度をつくり,日本語を学びたい人が適切な機関を得られるようにしようということで,現在議論を進めております。またそういった認定された日本語教育機関で日本語を教える先生にも,きちんと資格を持っていただいて,必要な専門性の整備,あるいは担保をしていこうということで,国家資格として登録日本語教員という資格を整備しようというのが,今回の法律,日本語教育機関認定法の趣旨ということになります。

 法律そのものは5月末に公布されているわけですけれども,この法律を実際に動かして,日本語教育の質の維持向上を実現していくために,政省令を整備するということで,現在非常に精力的に,事務局の皆さんも委員の皆さんも議論を進めていただいているところです。

 実は今回の日本語教育機関の認定制度は,先ほどの事務局からの説明にもありましたように「留学」という在留資格に関わる,いわゆる日本語学校が行っているものを最初の一歩の大きな足がかりとしまして,さらには仕事をするための日本語,いわゆる就労の日本語ですとか,あるいは冒頭申し上げた「生活者」として求められる生活の分野についても,きちんと日本語教育の質が維持向上されるような仕組みをつくっていけるよう,そういったところにまで広がっていくとよいなというふうに,関係者一同考えている次第です。

 また,日本語教育の教師の質ということに関しましては,これは私の個人的な思いにもなりますけれども,今,日本語教師として,職業として日本語を教えておられる方の処遇というのは,非常に厳しいものがあります。文化庁の調査によりますと,いわゆる日本語学校の先生の場合,非常勤でお勤めになっている方が非常に多い。その方の時給は,2,000円から3,000円という非常に限られた額の時給というのが実態でございます。また常勤の方でも,年収が300万円から400万円というのが一般的な先生の像ということです。

 私自身はずっと日本語教育の道を歩んできまして,日本語教育は非常に魅力的な分野である,魅力的な仕事であるということを信じてやってきましたけれども,残念ながらこの実態を見ますと,後に続く若い人たちに,魅力ある仕事として新たにこの分野に入って研さんを積んでほしいというふうに言うのは,非常に厳しいのが現状でございます。

 したがいまして,今回の制度整備を通じまして,日本語教育というものに対して,より社会的な認知が広まり,その質が維持向上されるような,そういう仕組みが広がっていくということ,そのことの第一歩がうまく歩み出せるようにということを今願って,議論を進めているところでございます。

 以上でございます。ありがとうございました。

【清原分科会長】 
 浜田委員,ありがとうございます。皆様,浜田委員の御説明,そして小林室長の御説明で,日本語教育の質の維持向上に関する取組の経過,そして現状,また今後の方向性と生涯学習分科会の役割について認識をしていただけたのではないかと思いますが,時間がもうないわけでございますが,ここでどうしてもこれだけは確認したいというような御質問はおありですか。大丈夫でしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは本日は,リカレント教育の推進について,大久保委員から話題提供していただき,「社会教育人材の養成及び活躍促進の在り方について(中間的まとめ)」について,牧野部会長をはじめ課長さんよりの御説明を共有し,了承していただき,日本語教育の質の維持向上についても,私たちとして共通認識を持つことができました。いずれも重要な議題で,しかも共通して重要な視点,観点が共有できたと思います。皆様の熱心な御審議に分科会長として心から感謝を申し上げます。

 とはいえ,18分も超過しております。皆様の貴重なお時間を頂きましたことを改めて感謝いたしますし,ぜひ今日共有したことを,今後の分科会の審議に共に生かしていければと思います。

 それでは,事務局から報告事項がありましたらよろしくお願いします。

【中村生涯学習推進課課長補佐】 
 事務局の中村でございます。

 資料5,今後の審議スケジュールでございますが,次回の開催日程は928日,木曜日,10時から12時を予定しております。以降の開催日程につきましては,別途日程調整の上,委員の皆様にお知らせしたいと思います。

 事務局からは以上でございます。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。それでは,本日の生涯学習分科会をこれにて閉会といたします。

 皆様,2時間あまり熱心に御参画いただきましたことを感謝し,この夏まだまだ酷暑が続くと思います。何よりも御自愛いただきまして,御健勝に過ごされますことを願います。傍聴していただいた皆様も,どうぞこの夏をお健やかにお過ごしください。本日は長時間の御審議,どうもありがとうございました。失礼します。

 

―― 了 ――

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