生涯学習分科会(第125回) 議事録

1.日時

令和5年7月10日(月曜日)16時00分から18時00分

2.場所

文部科学省3階第一講堂 ※WEB会議

3.議題

  1. リカレント教育の推進について
  2. その他

4.出席者

委員

(分科会長) 清原分科会長
(副分科会長) 萩原副分科会長,牧野副分科会長
(委員)内田委員,金田委員,清水委員
(臨時委員)熱田委員,大平委員,金子委員,小路委員,古賀委員,澤野委員,関委員,辻委員,野田委員,野津委員,松本委員,山内委員

文部科学省

(事務局)藤江総合教育政策局長,池田高等教育局長,森友社会教育振興総括官,神山生涯学習推進課長,西リカレント教育・民間教育振興室長 他

5.議事録

【清原分科会長】 
 皆様,こんにちは。定刻になりましたので,ただいまから第125回中央教育審議会生涯学習分科会を開催いたします。

 本日,九州では大変な豪雨で被害も出ているということでございますし,文部科学省のあります東京都では,もう既に35℃を超す酷暑となっております。全国的に大変厳しい7月となっておりますが,そんな中,大変御多用のところ,皆様御参加いただきまして,心から感謝申し上げます。

 本会議は,対面とオンラインのハイブリッド方式で開催させていただきます。本日もYouTube上で報道関係者及び一般の皆様の傍聴を受け入れております。報道関係者等よりは,会議の全体について録画を行いたい旨の申出がございまして,許可をしております。どうぞ,皆様,御承知おきください。

 次に,事務局から,本日の会議の運営に当たりまして,留意事項の説明及び配付資料の確認をお願いします。それでは,中村補佐,お願いします。

【中村生涯学習推進課課長補佐】 
 事務局の中村でございます。本日は,対面とオンラインのハイブリッド方式で開催をさせていただいております。御不便をおかけすることもあるかと存じますが,何とぞ御理解のほどよろしくお願いいたします。

 オンライン会議を円滑に行う観点から,4点お願いをさせていただきます。

 1点目,御発言に当たっては,インターネットでも聞き取りやすいようはっきり御発言いただくようお願いいたします。

 2点目,御発言の際には,お名前をおっしゃっていただくようお願いいたします。

 3点目,御発言時以外は,マイクをミュートにしていただくようお願いいたします。

 4点目,発言に当たっては挙手ボタンを押していただき,御発言後はボタンを解除していただくようお願いいたします。

 また,本日会場にお越しの委員の皆様には,御発言の際には挙手又はネームプレートを立てていただくよう,よろしくお願いいたします。お手数をおかけいたしますが,御協力のほどよろしくお願いいたします。

 続きまして,資料の確認をさせていただきます。本日の資料は,議事次第にございますとおり,資料1から資料5,そして,参考資料1から参考資料3までとなっております。

 参考資料2は,5月のG7広島サミットに合わせて開催されましたG7教育大臣会合の概要でございます。生涯学習の推進につきましても,「社会課題の解決とイノベーションを結びつけて成長を生み出す人材の育成」のセッションで取り上げられてございます。本日は時間の関係上,参考配付とさせていただきます。

 事務局からは以上でございます。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。

 それでは,早速本日の議事に入ります。

 本日の議題は,「リカレント教育の推進について」です。このテーマは,生涯学習分科会において,一貫して重要なテーマとして位置づけてまいりました。そして,前回の生涯学習分科会におきましても,リカレント教育,リスキリングに関する御意見を多くの委員の皆様から頂きました。そして,生涯学習分科会には,経済界及び労働界のお立場でこの議題に関わりの深い小路委員,金子委員に御参画いただいております。そこで,このテーマについて審議をするに当たりまして,最初にぜひお二人の委員から話題提供を頂きたいとお願いをしたところでございます。小路委員,金子委員におかれましては,大変に御多用の中,御準備を頂きまして,まず御礼を申し上げます。ありがとうございます。

 そして,各委員からの御発表を頂く前に,本日の議事に関連する内容について,まず委員の皆様に基本的な情報提供をさせていただきたいと思いまして,事務局に資料を準備していただきました。その資料をまず神山課長から説明していただくことから始めさせていただきます。

 それでは,神山課長,資料1に沿ってお願いいたします。

【神山生涯学習推進課長】 
 それでは,資料1,リカレント教育に関する参考資料の方を御覧いただきたいと思います。

 1枚おめくりいただくと目次がございまして,資料かなり大部にはなっておりますが,最初の方でリカレント教育のデータ的な現状と,その次の固まりといたしまして,最近の中教審の議論のおさらい,そして,3つ目といたしまして,政府の最近の動向ということで,教育未来創造会議ですとか諸般の閣議決定,あるいは,最近のリスキリングを含めた労働市場改革のお話について御紹介をしたいと思っております。その後,4としまして,文部科学省におけるリカレント教育の取組,予算事業などについても御紹介をし,最後,産学協議会というか,経済界と大学とが合同で議論をしてまとめた報告書がございますので,これについては,後ほどの御発表でも言及があるかと思いますので,簡単に御紹介したいと思います。

 それでは,最初にリカレント教育の現状ということで,データについてですが,3ページ目を御覧いただきますと,大学や専門学校で学んでいる社会人の全体の人数というのを書かせていただいておりまして,こちらが約41万人,そのうち正規課程,長期の課程で学んでいるのが68%,短期プログラムが31%ということになってございます。

 また,そうしたものだけではなくて,下の方では,もう少し一般の方がアクセスしやすい大学の公開講座というものもございまして,これは1年当たり118万人ぐらいが受けているといった状況にございます。

 次の資料を御覧いただきますと,先ほど言ったのが人数ではあるわけですが,諸外国と比較をいたしますと,日本では社会人が大学で学ぶ割合というのが低いわけでございまして,3つグラフがございますが,左上が学部,右の方が修士,そして下が博士となっております。特に,左上の学部,学士課程に関しまして,社会人が学ぶのは,OECD平均では16%ぐらいなのに比べて日本では1%,また,修士では,OECD平均が26%に比べて,日本では10%というふうに,社会人が学ぶ割合が低くなっておるという感じでございます。

 それから,その次には,生涯学習に関する世論調査とかというものを次のページで入れてございまして,昨年の7月に調査をしたものということになってございます。これは政府がやっているいわゆる世論調査のうち,生涯学習に関するものということなのですが,6ページからが具体的なその内容になってございます。

 最初の6ページは,1年間に月1日以上学習した状況について聞いたところ,約7割の方が何らかの学習をしているということでございます。内訳を見ますと,一番上にくるのが赤枠で,仕事関連ということで赤枠にしておりますが,仕事に必要な知識や技能や資格に関することを学んだという方が一番多いということにはなっておりますが,緑の方の枠に関しましては,もう少し教養ですとか健康スポーツなど,単に仕事だけではない学びについてもかなりのニーズがあるというのが伺えます。

 次のページを御覧いただきますと,学習をした理由についても聞いておりまして,これも,仕事において必要性を感じたということが一番上ですけれども,その次の枠,緑の枠のところを御覧いただくと,2つ目には人生を豊かにする,あるいは,4つ目で教養を深めるといった,仕事以外の理由での学びというのも多いということになってございます。

 次の8ページの方は,学習していない理由ですけれども,きっかけがつかめない,特に必要がない,仕事が忙しくて時間がないといったものが上位にきておるという状況でございます。

 9ページを御覧いただきますと,こちらは,社会人となった後に学校における学び直しというのをやっておるかどうかということを聞いたわけですが,緑色のところは,やっていないけれども,やってみたい,学び直しをしてみたいということで,やっているという人に加えて,その緑の部分まで含めますと,40代では6割ぐらい,30代,50代,60代では5割ぐらいまで,学校における学び直しをやっている又はやってみたいという人も多いという状況になっております。

 また,10ページ目の方は,学び直しの理由ですけれども,こちらも仕事の関係のみならず,人生を豊かにするや,教養を深めるといったものも一定程度挙げられているといった状況になってございます。

 11ページを御覧いただきますと,学び直した成果については,2つ目の資格を得られた,あるいは,3つ目も仕事の話でありますけれども,4つ目辺りでは,幅広い教養を得られたということもございます。

 それから,12ページは,時間について聞いているところでは,1年間で60時間程度というのが一番山が高くなっておるという感じでございます。

 それから,13ページについて,学び直す場合に適当な期間などということですけれども,この中では,学生として入学するといったことについては,60代以前の年代について年代が下がっていくと増加するというような感じになっています。

 それから,14ページ,学び直す場合の場所に関してですが,インターネットなどが一番多くなっておりますけれども,2つ目には,図書館や公民館など社会教育施設が出てまいりますし,3つ目には,学校の校舎で学ぶといったものも出てくるという感じでございます。

 15ページを御覧いただきますと,情報収集については,一番上の学校のホームページですとか,講座情報の検索サイトなどを使うというのが一番多くなっているという状況でございます。

 16ページを御覧いただくと,学び直しをしやすくするために必要な取組ということで,経済的な支援ですとか,受講しやすさ,短期プログラムの充実や,土日や夜間などの開講といったもの,それから,就職などに役立つ内容といったことですとか,その役立つ内容のすぐ下の辺りは,職員が学び直しをしやすくする仕組みですとか,成果が適切に評価される仕組みといった,企業ですとかの取組についても期待を持たれているという状況になってございます。

 以上が世論調査の関係の状況ということになります。

 次のページからが,中教審の議論ですが,おさらいになりますので,ごく簡単に申しますと,18ページを御覧いただくと,中教審生涯学習分科会での議論では,下の4つの箱がオレンジでありますけれども,ウェルビーイングを中心として,デジタル社会のへ対応ですとか,社会的包摂の実現,地域コミュニティの基盤への対応といったことを柱に御議論を頂いたということになってございます。

 その結果,進めるべき施策が次のページに挙げられてございまして,5つの柱,部会を設けて議論しています社会教育人材なども2つ目に挙がっておりますが,4つ目では,リカレント教育についても柱の一つということで挙げてございます。

 具体的な中身を次のページから2ページにわたって入れてございますけれども,リカレント教育の意義といたしまして,生涯にわたる学習を支えるという意味で重要だといった御指摘と,学習習慣を身につけることの重要性などにも触れていただいてございます。

 また,用語につきましては,リカレント教育については,非常に広い意味で使ってございまして,職業上のスキルを身につけるリスキリングだけではなく,教養を高めたり自己実現を図るといったものもリカレント教育に含めるということで議論していまして,大学のみならず,公民館,民間企業,NPOなどの様々な主体が提供しているといった状況について言及してございます。

 次のページに参りますと,充実方策ということで,主に大学におけるリカレント教育に関して,①として,プログラム開発の充実が大事だといったことですとか,②として,オンラインでの学習効果的に活用しようといったこと,また,③として,より社会人が受講しやすい時間帯などの工夫をしたりする,受講者の負担軽減が大事だといったことも御指摘いただいております。

 さらに,情報発信といたしまして,情報発信の充実に加え,学習履歴を可視化する,その際,オープンバッジなどのデジタル技術を活用することの重要性についても御指摘を頂いてございます。

 また,環境改善ということで,リカレント教育については,職場環境,企業さん側でも職場環境の改善をしていただくということですとか,処遇などへの反映といったことも重要でございますので,文科省だけではなくて,厚労省,経産省との連携を進めて実施をしてくださいということも言及いただいております。

 22ページの方では,先ほど申し上げたリカレント教育と,最近,リスキリングという言葉も使われておりますけれども,リカレント教育の方が,学校教育終了後に一旦社会に出てから行われる教育は広くリカレント教育,職業のものもあれば教養のものもあるという広い意味で使っております。一方,リスキリングの方は,職業関係のスキルを獲得する学び直しのことを指しているということでございます。

 また,中教審では,その次のページから,教育振興基本計画,6月に閣議決定をしておりますが,この中でもリカレント教育について言及してございます。関連部分を全部載せていますが,かいつまんで御説明いたしますと,25ページを御覧を頂くと,25ページでは,5つの基本的な方針というものの中で,学び続ける人材の育成を挙げておりますので,ここでリカレント教育について,先ほどの生涯学習分科会でも議論したような内容についても言及を頂いてございます。

 また,27ページまで行きますと,その具体的な目標というのを全体で16個掲げる中の8個目の目標として,3行目にありますように,生涯学び,活躍できる環境を整備という,これを示しまして,基本的な施策として,産業界との連携によるリカレント教育の充実,それから,働きながら学べる環境の整備のほか,次のページに参りますと,一番上にありますような,経済支援・情報提供といったものの重要性と,一番下の方にありますけれども,成果を適切に評価することが重要だといったことに言及を頂いておるというのが基本計画の中身となってございます。

 続きまして,そのほか,政府関係の動向につきましては,31ページを御覧いただきますと,令和4年5月になりますけれども,政府全体で教育未来創造会議というもので教育を議論した際の最初の第一次提言の中の3つの柱の一つとして,提言を頂いてございます。

 この中では,適切な評価ですとか,支援の充実,女性の学び直し,それから,企業や教育機関,地域団体,地方公共団体との連携の体制整備が大事だということを御指摘いただいてございます。

 その後ろでは,教育未来創造会議で使われたデータを幾つかお示ししておりまして,例えば,人材投資について,OJT以外では,他の国に比べて日本の企業は人材投資をしていないですとか,右側では,個人も社外の学習や自己啓発を行っていない人の割合が多いといったものを挙げてございます。

 1ページちょっと飛ばして,34ページを御覧いただくと,学び直しをするときにも,大学などを使う割合が低いといったデータですとか,右側には,3つ目にありますように,他の機関に比べて,実践的な内容ではないのではないかといった理由で,大学を使っていないといったことが挙げられてございます。

 それから,2ページほど飛ばせていただいて,37ページを御覧いただきますと,社会人が職場に希望する内容と企業が実際に取り組んでいることのギャップとして,枠囲みがございます,大学等で修学したものを評価してほしいということを希望はしているけれども,企業側ではなかなかしていただけていないという実情がある言ったことになってございます。

 それから,閣議決定ものがその次のページから並んでございますが,いわゆる骨太の方針,昨年のものにもリカレント教育の重要性が言及されてございます。

 次の39ページに参りますと,昨年の10月ぐらいから,言葉としては,リスキリングという言葉を使うようになっておりまして,下の段にもございますように,リスキリングによって能力を向上させ,また,職務給に移行する,それから,労働移動を進めるといった,労働市場改革の文脈で議論されることが多くなっておりますが,より長期的な学び直しも重要だといったことにも言及されているといった状況でございます。

 その次のページでは,先ほど言った,賃上げ,労働移動の円滑化,人への投資といったもの,3つの課題への取組を一体的に進めていくぞといったことを,昨年の10月に閣議決定をしてございます。それを受けて,その次のページ,新しい資本主義実現会議などでも,三位一体の労働市場改革の議論がなされてございます。

 42ページでは,いわゆる骨太の方針,今年6月のバージョンでございますが,こちらでも,リスキリングの重要性といったもの,それから,下の方では,大学などでの役割といったものも言及されているという内容になってございます。

 それから,その次のページでも,同じように,リスキリングなどの重要性といったことに触れられておるということになってございます。

 以上が閣議決定などということで,続きまして,文部科学省におけるリカレント教育の取組について御紹介したいと思います。

 45ページが全体の図になっておりまして,左の上の方では制度が書かれてございます。上の方に制度が書いてあって,下以下で予算事業などが書かれている。左側には長期の,通常の課程といいましょうか,正規課程といったものが並んでおり,右の方に行くと短期的なもの,一番右には公開講座が並んでおる。それに対応する形で,予算事業などでは,真ん中のオレンジのところでは,基盤経費などの話が左側にありますけれども,オレンジで書かれている予算事業に関しては,短期的な受入れのところの支援ということで,プログラム開発ですとか,その他の事業で支援をしているというような内容になっていますし,厚労省の教育訓練給付などとも連携しながら進めておるという感じになってございます。

 一番下のところは,それらを支えるものとして,その地域のプラットフォームということで,産学官の連携を進めるようなものを支援することですとか,一番下ポータルサイト「マナパス」ということで,情報提供についてもやっておるというものが全体の取組となってございます。

 1枚おめくりいただくと,プログラム開発の事業について触れておりますが,これは,その右側,デジタル・グリーンなどの最近の成長分野の話もございますが,それ以外,重要分野とBのところで言っているように,様々な分野を支援するような形で進めてございます。

 47ページ以降は採択の状況ですので,少し飛ばせていただいて,そのほかの事業といたしまして,例えば,50ページを御覧いただきますと,新たな価値創造をするようなものも支援すると。目的のところテクノロジー,アート・デザイン,ビジネス,全方位指導体制といったことも書いていますが,こういった先進的な取組についても,東京工業大学さん,それと,京都大学さんにも委託をしておるといったものも取り組んでございます。

 それから,51ページの方では,専修学校,専門学校に関しても支援をしてございまして,左下の方の人が並んでいるイラストのところに例として書いていますが,自動車整備工さんなどが,例えば,電気自動車のことを学び直すといったようなことを支援するといったことも,こうした事業で支援をしてございます。

 また,予算ではないのですけれども,その次のページでは,「職業実践力育成プログラム」という大臣が職業の実践につながる過程,プログラムを400ほど認定しておるというような取組をやってございまして,この認定を受けると,次のページにございますように,厚労省さんの教育訓練給付の指定などが受けやすくなるといった連携もしておるといった取組もしてございます。

 それと,54ページは,同様の仕組みを専門学校でもやっている,CPと呼んでいるような認定の仕組みをやってございます。

 予算事業いろいろありますので,若干飛ばせていただくと,59ページのところでは,先ほど少し触れましたけれども,地域,地方で産学官が連携する体制をつくるということで,左下の方にございますニーズの調査ですとか,シーズとニーズのマッチング,広報などを地域ぐるみでやっていただく取組も進めており,次のページ,60ページにある12地域を採択して,今年進めていただくというような内容になってございます。

 最後,64ページを御覧いただきますと,「マナパス」という情報ポータルサイトのことを入れさせていただいております。これについては,リカレント教育のプログラム等の検索ができるというもので,基本的には個人による検索なのですけれども,企業さん側がオーダーメイドに応えてくれるような講座がないか,大学がないかといった検索ができたり,右側の方のマイページの機能のところで,各個人がマイページを登録するとリコメンドなどが得られるのですけれども,最近,オープンバッチなどの張りつけ機能なども実装したということになってございます。

 次のページ以降は,企業向けのページの具体の話ですとか,マイページにデジタルバッジをつける話などが並んでおりまして,67ページでは,デジタルバッジの活用について,調査研究のような形でも支援を進めてございます。

 それから,最後,69ページからが,経団連さんと大学等の産学協議会というものの報告書ですけれども,ページとしては,73ページを御覧いただきますと,大学の強みを生かしたリカレント教育をやってくださいということで御提言を頂いておりまして,7つの類型のうち赤枠で囲っておるような地域課題の解決ですとか,社会実装に必要能力,あるいは,分野を横断する総合知,あるいは,高度経営人材の育成など,単に旬のニーズに合わせたスピード重視のものではなくて,大学の強みを生かせるリカレント教育を推進してくださいということを経済団体側からも御指摘いただいておるといったような状況になってございます。

 私の方は以上でございます。

【清原分科会長】 
 神山課長,どうもありがとうございました。

 この資料1の「リカレント教育に関する参考資料」につきましては,これから皆様とリカレント教育について,審議をしていく際の基本的な資料としておまとめいただいたものですので,ここでは,この資料についての質疑は行いませんので,次の全体の議論の中で生かしていただければと思います。

 今日の進め方でございますが,まず,これから小路委員,金子委員にそれぞれ15分から20分程度御報告をしていただき,それぞれの御報告の後に5分から10分程度,質疑応答の時間を用意するとともに,その後は,先ほどの神山課長からの報告資料や小路委員,金子委員からのお話を受けて,それぞれの委員の皆様から意見交換の時間を40分程度取りたいと思っております。

 それでは,早速小路委員の御報告をお願いいたします。「経済界から見たリカレント教育の重要性」について,アサヒグループホールディングス株式会社取締役会長兼取締役会議長,一般社団法人日本経済団体連合会副会長の小路委員でございます。ぜひ,そのお立場から話題提供いただければと思います。

 皆様,資料2を御用意ください。

 それでは,御報告よろしくお願いいたします。

【小路委員】 
 御紹介ありがとうございます。小路と申します。まずもちまして,このような場で,発表の機会を頂きましたことを御礼申し上げます。

 時間が20分から25分ということで限られておりますので,少し早口になったり,多少経営サイドの似通ったお話になるかもしれませんが,その辺,御容赦いただければと思います。

 資料は,御紹介いただきましたが,2つにまたがっております。1つは,産学連携によるリカレント教育の推進というパワーポイント,これは経団連中心につくっております資料でございます。もう一つは,経済界から見たリカレント教育の重要性ということで,ワード的な資料で,この2つについて,御説明させていただきたいと思います。

 まず,このパワーポイントのリカレント教育の推進という資料の1ページを御覧いただければと思います。

【清原分科会長】 
 参考資料の3でございますね。よろしくお願いします。

【小路委員】 
 参考資料の3ですね。

 この1ページの内容に入る前に,経済界として人材育成ということについて少し冒頭申し上げたいと思います。経済界としては,価値創造力を持った人材を育成するために,当然ですけれど,民間の研修,人材育成サービスを活用するということは大変スピーディ,また効率的ではありますが,同時に社会における知の拠点と言われている大学をはじめとする,いわゆる高等教育機関との連携が極めて重要だと経済界は捉えております。

 現状では,それぞれの企業も,学び直しにおける大学等との連携の在り方を模索しているというのが経済界の現状であります。言い換えれば,両者の連携,企業とか経済界と大学の連携の余地は大変大きいということで考えておりまして,皆さんもぜひ注目を頂きたいということでございます。

 この1ページの下のところで,新しい時代に対応する教育というところを見ていただければと思います。この左に円の台形を積み重ねたところ,これを皆さんに御理解いただきたいと思いますけれども,一番下の素質,基礎学力,リテラシーと,このリテラシーは一部なのですけれど,ここが右側を見ていただくと,初等中等教育との連携で,築き上げていくと考えているところでございます。

 そのうち,その上の理論的思考力,あるいは,規範的判断力,それから,課題発見・解決力と。特に青色の未来社会の構築・設計力と。私は個人的には,ここがこれから非常に重要になってくると考えておりまして,ここのところの円の台形の右側を見ていただくと,産学連携によるリカレント教育,あるいは,高等教育との連携によって築き上げて,新しい時代に対応する教育を築き上げていきたいなと考えておるところでございます。

 全体としては,仕事と学びの好循環ということを,経済界,経団連でも非常に重要視しておりまして,その下に書いてあるSociety 5.0 for SDGsという社会を目指しております。

 このSociety 5.0について御存じの方もいらっしゃるかと思いますけれども,政府の第5期科学技術基本計画で発表された言葉でございまして,少し硬い単語になりますけれど,サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させた,いわゆる人間中心の経済・社会の発展を目指す未来社会と。工業,情報化社会に続く社会という意味でございます。

 次,10ページを御覧ください。先ほど神山課長からも触れていただきましたが,経団連と国公立・私立大学のトップが直接対話する場として,2019年に設立されました採用と大学教育の未来に関する産学協議会というのがございまして,昨年度,産学連携によるリカレント教育の今後の展開について,大学ならではのリカレント教育の意義や価値にフォーカスし,検討を深めてきました。

 その過程で,31の大学から,企業側のニーズを踏まえつつ,大学の強みを活かしていると考えられるリカレント教育の好事例,ここには記載ありませんが,124件収集し,分析をしました。社員に受講を勧めるプログラムの検討,あるいは,大学と共同開発する際の参考となるような,大学の強みを生かしたリカレント教育プログラムということに着目をいたしまして,7つに類型化いたしました。

 中でも,先ほど少し触れていただきましたけれども,社会実装に必要な能力の向上を目指す,このイロハニホヘトのホのところ,ここを経済界では一つ重要視しているということが1点です。中身については,後ほど御覧いただければと思います。

 それから,2つ目は,分野横断的な知識・能力の育成を目指す,類型へというところ,ここも重要視しています。

 それから,3点目は,その下の高度経営人材の育成を目的とする類型トです。

 併せまして,大学の強みを生かしたプログラムのほかに,地域における知の中核を担う大学としての類型ロ,これは2番目に書いてありますが,ここも重要だと。個人的には,ここが非常に重要だと考えております。

 こういったことをベースに,リカレント教育の推進における最大の課題ということにいて少し触れてみます。企業から見てみますと,企業側のニーズと,それから,大学側のシーズとのマッチング体制の構築・拡充ということが課題として挙げられます。政府には,私ども,経団連を中心に経済界としては,こういったことに関するデータベースの構築,あるいは,コーディネート人材の育成・確保,またコーディネート機能を強化するということをお願いしてあります。

 一方,企業の課題に関しては,職務に求める知識,技能,能力などの明確化に加えまして,受講成果を社内で適切に評価する仕組みの構築と,適切な処遇・配置が挙げられます。

 こんなところをこの資料で触れておきたいと思います。以下の部分につきましては,後ほど御関心のあるページを御覧いただければと思います。

 次に,ワード資料を御覧ください。経済界から見たリカレント教育の重要性ということについて,これは私見がかなり入っておりますけれども,御参考いただければと思います。これは資料2ですかね。

 1ページ目を見ていただきまして,この「はじめに」ということ,少しここを説明させていただきたいと思います。点の1行目でございます。

 我々は経済界の人間ですので,日本経済を持続的に成長させて,国民生活の発展を導くために,私は,最も重要なことは,人的成長投資だと考えております。人への投資というのは,人が成長するということが投資の大前提であると。併せまして,私は,人の成長というのは,年齢を経るということではなくして,人としての付加価値をつけて高めていくこと,これが人の成長であると思っています。

 さらに,経営者視点で言うと,こういった経済の持続性や生活の発展ということを考えると,事業投資や資本投資が大事になってきますけれど,これからはやはり企業側でも,経済界でも,投資については,人的成長投資を非常に重要視していきたいと考えております。

 それから,2点目の黒点の中頃ですけれど,学びというのは手段であって,目的ではないと,私はあちこちで公言しております。例えば,新しい技術を獲得するだけでは,私は価値がないと。その獲得した技術を発揮して使われて初めて価値が生まれると,そういう考え方に立ってのものでございます。

 その下を見ていただきますと,大切なことは,学びを発揮する出口,つまり,仕事を用意するということが併せて大事な,これは企業とか経済界の,一部政府ですけれども,責任ということになります。

 次に,この黒点の3,特に成長分野の労働移動と書いてありますけれど,これはリカレント教育,あるいは,リスキリングが前提の労働移動と捉えていただければいいと思います。成長分野へのリカレント,リスキリング,労働移動ということはよく言われていますけれども,2番目の生活基盤分野への労働力の充足,これは,例えば,医療・介護・保育やサービス,教育,こういった生活基盤分野へのリカレント,リスキリングによる労働力の充足が,私は足元で非常に重要だと感じております。

 3点目は,これは大変僣越でありますけれど,教育等公共機関への民間活力の提供ということも,リカレントに関連して非常に重要だと考えております。

 一つ例を申し上げます。茨城県の教育委員会を中心に,県立の中高一貫校をつくっていこうと,高校での受験をなくしてということでつくりまして,5校の県立中高一貫校の校長先生を民間から募集したら,何と1,700人近くの応募があったと。300倍ですね。民間企業なり,社会人からすると,こういったところへの関心が非常に高いということです。特別免許制度なども使って,大変僣越ではありますけれど,民間活力の提供ということも考えていきたいと考えております。

 それから,点の5点目,制度改革というところを見ていただきたいと思います。制度改革,意識改革が,リカレントだとか労働移動について,私や一部経済界でも進まないと見ている部分もございます。これは一つには,これは言い過ぎかもしれませんが,人材を囲い込みたい企業,そして,同じ会社に居続けたいという働き手の本音。こういった,深く解決が難しい問題が,私はこの深層心理に,まだまだあるのではないかなと。やはり人間というのは,やはり仕事のやり方を変える,新しい分野に挑戦するというのは,本音で言うと,まだまだ気が進まないというのが一部まだ心の底に残っているのではないかなと。あるシンクタンクのデータで,仕事のやり方を変えるのは大変だというアンケートは,3人に1人と,こんなデータも出ております。また,イノベーションは,場合によってははた迷惑だというような声も一部出てきております。

 これに対しては,私は,越境学習,越境経験や越境業務というところに一歩足を踏み出していくことによって,こういったリカレント,それに伴った労働移動という部分,あるいは,企業の制度改革,働き手の意識改革が進んでいくのではないのかなと。越境というのは,自分の知っている,あるいは,経験した分野を超えてと,こういった意味であります。

 最後に,今申し上げたことを踏まえまして,活力ある雇用社会,これをどう築いていくのか,そして,そのためのリカレントを経た労働の流動性と安定性,これをどうつくり出していくのか。こういったことを経済界としても新しい時代に即して考えていきたいと。やはり労働の流動性と安定性と,この2つをセットで,日本社会では進めていかなければいけないと考えているところでございます。

 次のページを見ていただきまして,解決していくべきことというのは,これは皆さん専門家の方がお集まりですので,問題提起とか課題提起ということで,リカレント,リスキリング,その結果の労働移動ということに関して,まだまだ課題がたくさんあるということで幾つか挙げさせていただきました。

 1点目は,働き手視点で,2つ記載いたしました。

 一つは,変化を前提にしたキャリアプランの設計ということを個々人がこれから積極的にしていかなければいけない,大事なことは,この変化を前提にしたキャリアプランの設計ということです。

 経営者として,では,どういう変化があるのだということを少し口頭で申し上げます。世界情勢を見ていただくと,これは皆さんお分かりのように,世界の分断,あるいは,権威主義国の台頭,西側の論理,リーダーシップの行き詰まりということがあります。これが日本経済とか国民生活に少なからずの影響を今与えつつあります。

 それから,一方,国内の情勢を見てみますと,円安と国力の低下,これは我々の責任ではありますけれども。それから,潜在成長率,これはゼロプラスアルファと,こんなような見通しを持っております。

 今までの変化の少ない時代とは違うという認識を持って,キャリアプランをどうするかということが大事なことだと思います。特にここに若年層,中堅層,シニア層と書きましたが,一言で言うと,若年層は,私は,変化を前提にしたキャリアプランの設計する力を持つと,こういうことでまず十分だと思っています。それから,中堅層,これはやはりプライベートとビジネスをどう生き抜くかということで,キャリアプランを考えなければいけないと思っております。それから,シニア層,先ほどの茨城県の例ではありませんけれど,教えることは学ぶこと,学びと教えの両方,これをやはりやっていくということをシニア層には,特にキャリアプランの設計では考えてもらいたいと,少し私の考え方を含めて問題提起です。

 それから,2つ目は,リカレントを前提にした労働移動に対する心構えです。終身一社雇用,キャリアプランは会社が示すという意識が心の底に少し残っているのではないのかと思っております。当然,先ほど申し上げました雇用のセーフティネットの整備はしっかりしていかなければいけないのですけれども,こういった意識から変わっていかなければ,あるいは,変えていかなければいけないのではないかなと思っています。

 雇用のセーフティネットと言いましたけれど,例えて言うなら,荒海に乗り出したらどこにもサポートの船がいないということでは駄目なので,私たちのキャリアというものは,これから変化にあふれているということで,心構えを重要視していきたいと思っています。

 それから,経済界視点ということで申し上げますと,3つ挙げております。企業・経済界によるリカレントに対する支援,これは当たり前のことですけれど,必要な支援,枠組み,取組をしていかなければいけないと思っております。

 特に,これはもう皆さん御存じかと思いますけれども,保有するキャリアとかスキルの棚卸し,あるいは,自身の目指すべき姿の言語化などのお手伝いをしたり,それから,心構えで言いますと,幅広く様々な分野に挑戦し続けていくという,こういう強い意思,姿勢を持っていくということが必要になります。それから,企業の支援ということで申し上げますと,金銭的・時間的支援の充実,あるいは,一部企業としては,企業風土改革,こういったものをしていかなければいけないのではないかなと。環境整備も同じことです。

 特に,この1行目の中段から後半に書いた主体的なキャリア形成を支援,評価ということで,企業としては,このキャリアプランをつくる,あるいは,この設計を自らつくっていくことに対する評価を企業はこれから与えていかなければいけないのではないかなと。仕事のプロセスや成果に対する評価と併せまして,キャリアプランに対する会社としての評価をしていかなければいけない,そんな時代に入ったのではないのかなと思います。

 それから,次に,仕事と学びの好循環,これはもう先ほど少し触れましたけれども,一言で言うと,学びという入り口に対して,仕事という出口,これをセットで用意していくということが,リカレント,リスキリングの大前提だと考えております。

 それから,最後に政府・教育機関の視点ということで,1つ目,ここに書いたような「労働移動推進型」のセーフティネットの移行ですとか,退職所得税制の見直しとか,副業・兼業の時間管理に対する法整備とか,この辺は今も,文科省さんを含めて,政府の方でかなり進めていただいているので,あとは成果を早く出すように,経済界としても応援をさせていただきたいと考えているところでございます。

 それから,2つ目は中小企業・地域に根差す企業への,リカレントを中心にした労働移動。先ほども少し触れましたけれど,ここが今足元では非常に重要だなと。御存じのように,中小,それから地域企業というのは,人材が大変不足をしております。特に大手企業の経験を積んだ人間が,リカレント,リスキリングをすることによって,中小,それから,地域に根差す企業への応援と言ったら失礼かもしれませんけれど,応援をしていくということが,私は,ある意味では経営者の視点としては,地域経済にとって大変重要だと思っておりまして,特にこの2点目は,力を入れて経団連としてもやっていきたいと考えております。

 3点目は,新たな産業創出に向けてということです。

 新たな成長産業の創出という観点から政府に求められること。これ,一言で申し上げますけれど,イギリスではネットゼロ戦略というものをとっておりまして,先ほどの出口戦略ではないですけれども,いわゆる環境関係の新しい新事業に対して,政府として雇用目標を出してくれているのですね。理想的には,日本も新しい産業,事業に対して雇用目標を出せるようにということが,この成長産業の創出ということで求めていきたいということでございます。

 それから,アカデミア含めた協議機関においての,キャリア設計に向けたカリキュラムやプログラムの設定。

 ここは,一つ例を申し上げると,起業家,アントレプレナーの育成ということで,御存じかもしれませんけれど,北欧を中心に,欧州は初等教育からアントレプレナーのカリキュラムが組まれております。日本も緒に就いたというところでございますけれども,こういったところに力を入れて,拡充をしていくことです。いきなり社会人になってから,学び加えをしていくということでは,これは少し大変なことなので,やはり初等中等教育から起業家をいかにしてつくっていくのか,あるいは,起業家精神というものをいかに学んでもらうかというところに手をつけることによって,社会人の学び直しということがより効果的になってくるというところでございます。

 以上でございまして,少しまとめて3点ほど申し上げます。重複いたしますけれど,リカレントの目的は,一つ,私は,自分自身の価値を高めるということ。自分と企業,国家が人的成長投資に力を入れて,個々の企業で雇用を守るということに併せて,社会全体での雇用を守っていくというふうに変えていき,それで,個人としては生涯成長ということをしっかりと目標として持っていくということが大事なのが1点目ではないかと思います。

 それから,2つ目は,これも極端な言い方なのですけれど,日本の雇用文化を変えていくと,こういった究極的な目的というものを持っていかなければいけないのではないかなと。リカレントをより効果的にするためには。企業は,先ほど申し上げた社員の囲い込みというところを変えていかなければいけませんし,働き手は,一社終身雇用に,これはもちろん言葉が間違ったら恐縮なのですけれど,固執しないと。羽ばたける者は,大きく羽ばたくと。

 もちろん先ほど申し上げました経済界・企業,それから,政府で,雇用の流動性と安定性の確保と,こういったセーフティネットが大前提だということを申し上げておきたいと思います。

 それから,3点目は,私は個人的な好きな言葉があって,人間は強くなければ生きていけない,優しさがなければ生きる価値がないとアメリカの劇作家が言ったのですけれども。私は,リカレント,リスキリングというのは,よく学び直しと言われています。この学び直しプラス,学び加え,年輪を重ねる大木のような学び加えということ,それから,日本独特の学び合いという,この直しと加えと学び合いと,この3つがセットになって初めてリカレント,リスキリングのいいところが出てくるのではないのかなと思います。

 特に学び合いというのは,異論とか異文化,これを知っていくと。それによって,私は,強さと優しさを,少し飛躍しますけれど,備えていくのではないのかなと思います。

 変化する社会や経済の中で,変化適用力を身につけて,人間としての強さを身につけていくと。一方,変化の時代にあって,普遍的な道徳とか倫理とか正義,プラスリベラルアーツも年齢に応じて学んでいくと。そして,人間としての器を常に大きくしていくということが必要だなと思います。

 私は,道徳とか倫理,リベラルアーツは前輪で,スキルは後輪ではないかなと,そんな個人的な思いを持っているところでございます。

 雑ぱくですけれど,私から以上でございます。

【清原分科会長】 
 小路委員,大変にありがとうございました。

 ただいま,「経済界から見たリカレント教育の重要性」ということで,たくさんのキーワードを頂きました。価値創造,仕事と学びの好循環,そして,人的成長投資,そして,学びは手段,生涯成長とか,日本の雇用文化を変えることが必要である,学び直し,学び加え,学び合いというキーワードも頂きました。

 それでは,小路委員の話題提供につきまして,皆様から質疑応答の時間を頂きたいと思います。

 会場で参加の皆様は,ネームプレートをその場にお立てください。そして,ウェブ参加の委員の方は,挙手ボタンを押してください。よろしくお願いします。

 どなたからでも,どうぞ。ウェブ参加の皆様,挙手ボタンを押してくださいませ。

 ありがとうございます。それでは,関委員,お願いいたします。

【関委員】 
 小路先生,ありがとうございました。

 これは素朴な質問なのですけれども,今まで日本の社会というのは,終身雇用で一つの会社で頑張っていくことをよしとしてきたと思っていました。社会が変わり,今回このような形で,労働移動等も含めて,一人一人が自分のキャリアを磨いていくために学びをずっと続けていこうという方向性を今お示しいただいたかと思います。この場合に,民間企業であれば,当然個々の企業が営利を追求していくということを最優先され,人材を育ててきたと思います。それを手放してしまうことも許容しながら,様々な企業間で連携,協力して,このような形で個々のキャリアを形成していく学びの場をつくっていくことはかなりハードルが高いのかとも考えます。大学等,あるいは,企業相互の連携の中でこういうものを組み上げていくということは,これから可能性としては十分あるものなのかどうか。御意見をお聞かせいただけたら非常にありがたいです。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。

 関委員から御質問がありました。小路委員,どうぞお答えください。

【小路委員】
 御質問いただきまして,ありがとうございます。

 的確な回答になっているかどうか分かりませんけれども,先ほど申し上げましたように,これからの社会というのは,情勢によって非常に大きく変化をしていくと。まさか戦争が起こるなんて誰も思っていませんでしたですよね。そういったことがある日突然起こって,それも長期化の様相を呈していると。それは日本の経済界にも国民生活にも大きく影響を与えます。

 その影響と変化の波の中に我々は生活をしているということを考えると,企業とか,経済界とか,労働組合だとか,そういった組織とともに,個人も変化適応力,変化に対応するのではなくて,もっと能動的に変化を読み取って,それにいかにして適応していくのかということを個人も考えなければいけない。それをキャリアプランの中に個人として具体化して,企業なり,それから,上司と合わせていくということが,私は個人にとってこれから非常に有用ではないかなと思います。

 大きな変化の波,それがプラスの波であればいいのですけれども,マイナスの波になったときに,それは,組合のせいだ,会社のせいだ,国家のせいだと言っても,なかなかそこはよくならないので,自分自身と家族を守るためにどうしていくのかということから,やはりこの変化の時代に変化適応力をどうつけるか,そのために,個人のキャリアプランを主体的にどう組み立てていくかと,これがこれからの時代,非常に重要ではないかと思います。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。

 個としての主体的なキャリア形成や社会を読み取っていくという,個という存在の再確認ということでます。関委員,よろしいでしょうか。

【関委員】 
 はい。ありがとうございます。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。

 それでは,オンラインの内田委員,そして,次に野津委員,お願いいたします。

 内田委員,お願いいたします。

【内田委員】 
 大変貴重な内容のお話を聞かせていただき,本当に感銘を受けました。小路先生に改めてお礼申し上げます。京都大学の内田と申します。

 日本の社会の働き方の流動性の低さというものは,ほかの国と比べても相当レベルに低いということについて,心理的な障壁についても研究を今進めているところです。そのうちの一つが,自分のスキルというものがどこでも使えるという感覚が,どうやら日本では低いようであるということが見えてきておりまして,具体的に言いますと,自分が使っている,例えばコミュニケーション能力であれ,事務処理能力であれ,自分の働いているこの今の部門や職場に特化していると捉えられており,ほかのところに行ったときに,うまく適用できるのかという感覚が,仕事の流動性が高い国の人たちと比べると,弱いのだということが分かってきております。

 これが,おっしゃっていただいたような,リカレント教育を通して,いろいろなスキルが実は外でも使えるのだと実感していただくことと同時に,企業の中でも,転職されてきた方のスキルの発揮の方向性であるとか,企業内トレーニングについても内容を検討していかないといけない時代になってきているのかなと感じています。

 スキルというものをどれだけ外でも使えるのだというような感覚を持っていただけるようなトレーニングができるのかということに関して,もしも御示唆があれば教えていただきたく思います。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。

 個人のスキルが他の組織では応用できないという意識が高いので,雇用の流動性が乏しいのではないかという観点からの御質問です。

 小路委員,お願いいたします。

【小路委員】 
 御質問ありがとうございます。

 私も,おっしゃるとおりだと思いますね。

 一つは,企業のOJT,もちろんOJTは大事なのですけれども,ひょっとしたら,このOJTに力を入れ,ウェートをかけているところに対して,経験値とか,その企業の中での必要スキルだけに目が行きがちになっているかもしれません。ですから,私は,そのOJTそのものも若干変えていかなければいけないし,それはある意味では,新たなスキル,能力を身につけるOff-JT,これがリカレントということになろうかと思いますけれども,そういったところのウェートを大変大きくしていくということが必要ではないかなと考えています。

 OJTについても,自分の経験値を学ばせるという,こういう時代は去ったと思うのです。常に仕事も質の変化をしていますので,メンターもメンティも,やはり未来を見て一緒にどういうスキルを身につけたらいいかということを考えるのがこれからのOJTではないかなと思います。

 それから,学びというのは,やはり福澤諭吉が言った言葉で,実学だと。先ほども少し触れましたけれど,学んでいるだけでは駄目で,その実学というのは,自社,それから,自分がやってきた仕事が通用するということではなくて,ある一定の分野,社会に通用すると。これが学びや実学だと思っております。

 私から以上です。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。

 OJT,OFF-JT,未来志向のというお答えでした。内田委員,いかがでしょうか。

【内田委員】 
 ありがとうございました。

 多角的かつ一挙に進めないと,なかなか意識が変わらないのだろうなと思っております。様々な働き手の方々に,自分たちの能力の活躍可能性を感じてもらうこと,社会に開かれていくということが重要だなということを改めて感じました。

 ありがとうございました。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。

 それでは,野津委員,お願いいたします。

【野津委員】 
 島根県の野津でございます。

 参考資料の10ページの「大学の強みを活かしたリカレント教育プログラム」のところで,これって,すみません,田舎なものであまりリソースがない中で,リカレント教育を中央からやれやれと言われて,大変苦労する身としてはお伺いしたいのですけれど。

 これって,学部を横断した取組なのでしょうか。それとも,学部学科で考えていることに,例えば,会社からもそこへ行かせているとか,どちらなのでしょう。それとも,大学が,しっかり学部を超えてリカレント教育のためにプログラムをつくってくれているのか,そこら辺が分からなくて。

 身近な大学で言うと,よくて学部のまとまりで限界,それ以上の学部横断をしたようなプログラムってなかなか難しいのが現状なのですけれども。ここに書いてあるのは,そこの辺がよく分からなくて。

 それと,両方あれば,実際に企業としてはどういうプログラムに多くの人を行かせているのでしょう。あるいは,学ぶことを奨励しているのでしょう。

 すみません,少し雑ぱくな質問ですけれども,よろしくお願いします。

【清原分科会長】 
 学部横断ということの中身と,それから,企業が社員を出すことをしている取組の具体例などについての御質問です。よろしくお願いします。

【小路委員】 
 御質問ありがとうございます。

 当然,産業界,経団連から,どこどこ大学のどこどこ学部でリカレント教育のプログラムを組んでくださいと,こういったことはしておりません。我々として,産業界,経団連として,こういったリカレント教育を協力いただけませんかということを大学に投げかけて,では,どの学部なのか,あるいは,新しい学部なのか,学部横断なのか,その辺はそれぞれの大学にお任せするということであります。これが1点ですね。

 それから,経済界としてというのは,端的に言うと,やはりDX人材,GX人材,ここを早急にリカレント,リスキリングで育成をし,もちろん,その質と,それから,量ですね。特にDX人材は。これを高めていかないといけないなという,ここら辺は危機意識を持っています。

 GXはグリーンテクノロジーということで,環境関係ですね。これも政府のCO2ゼロの目標が出ております。CO2ゼロということを産業界も力を入れてやっているのですけれど,いわゆる環境関係の取組が,欧米を見ると,新産業を生み出しているのですね。少し時間がないので,どういう産業かということは割愛しますけれど,そういった新産業が,それぞれの国の経済を引っ張っているという状況が今もう出てきております。これが日本は非常に遅れているということですね。

 それから,もう1個は,先ほど申し上げた起業家人材,アントレプレナーですね。これは初等教育からということで,DX,GX,アントレプレナー,端的に申し上げると,この3つの人材を早急に質量ともにつくっていかなければいけないというのが,大学への要望を含めた強い思いでございます。

【清原分科会長】 
 デジタルトランスフォーメーションとか,環境であるとか,経営者育成ということですが,野津委員,いかがでしょうか。

【野津委員】 
 ありがとうございました。我々の地方でも,最優先はDXという声を企業から聞いております。日本全体と一緒だなというふうに思いまして。

 ありがとうございました。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。

 それでは,野田委員,続けて,牧野委員をお願いいたします。

【野田委員】 
 ありがとうございます。大変示唆に富むお話を聞かせていただきました。

 私の立場から申し上げると,日本の企業というのは,大企業は0.3%,99.7%が中小企業ということで,従業員数でいくと,約70%が中小企業で働く人たちで,約30%が大企業で働く人たち。じゃ,その99.7%の中小企業で働く日本の言わば従業員数の7割の人たちが,今,この場に出されているリカレント教育のところに行けるかというと,こんな行けるはずがないわけ。やりたいという気持ち,行きたいという気持ちは,かなり人たちが,あるいは,経営者の方たちも行かせてあげたいという思いはあると思います。じゃ,従業員20人の企業で,週に1日~2日,優秀な従業員を数時間,就業時間から授業の方に,学びの方に行けるというと,現実無理だし,1人の人が行くことによって,残り19人の従業員の人たちのモチベーションがどんな状態になるのか。

 これ,やっていこうと思ったら,やはり我が国の企業の在り方とか,労働の在り方とか,そこと一対でやっていかないと,リタイアした人たちはいいと思うのですよね。そういう人たちは,いろいろな場面をつくればいいと思うのだけれども,現に働いている人たちにリカレントなんて言っても,7割の人たちは,99.7%の経営者の人たちは,そんな無理言うなよというのが,これはもう現場だと思う。

 だから,そこを一対で,国としての計画をつくっていかないと,どんどんある意味では民意が離れてきてしまうので,ここはぜひとも現実ときちっといわばつながる計画,あるいは,あるべき姿というものをぜひとも誘導していくように,あるいは,つくっていくようにと思いますので,ぜひとも,この後の恐らくお話もそこにはつながると思いますけれど,私の立場からは,特に私自身は中小企業のまちでございますので,ぜひとも,そういった観点を持っていただくようにお願いを申し上げたいと思います。

【清原分科会長】 
 野田市長さんは,まさに中小企業のまちの市長さんとして,大企業ではできる可能性があるけれども,中小企業ではなかなか難しいという現実の中で,それを実現するための全体としての政策の適合性を提案されたと思うのですが。これは小路委員にお答えいただきましょうか。どうしましょうか。

【野田委員】 
 恐らくこの後のお話にも共通するのかなと思って,お任せします。

【清原分科会長】 
 どうしましょう,小路委員,コメントがございますか。

【小路委員】 
 では,少しいいですか。

 今の野田さんのお考えと,実は私も同感なのです。ですから,中小企業の地域など,特に有期の人たちですよね。こういった契約,あるいは,立場に置かれている人たちに,大変失礼ですけれど,経済的な困窮状態の中で,学び直しなんて言ったって響かないと私も思っています。

 ただ一方では,中小,地域,有期を雇用している経営者が,やはり学びは喜びであると。それから,学びによって,やはり自分自身の能力を,10人の企業でも生き残っていくためには,10人で高めていかなければいけないと。こういう呼びかけは,私は非常に重要ではないかなと思っています。

 受け取る側は,何を言っているのだというふうに思っても,やはり学びってそういうことだと思うのですね。私も含めて,経営者が率先してリカレントをやらなければいけないと思います。その背中を見て,社員,従業員,働き手は,やはり半歩踏み込んでみようかとなるので,そういった風土をつくっていくことが,私は,雇用文化の改革だということで申し上げたつもりです。

 御指摘の分は十分分かっていますけれど,しかし,ここは引き下がってはいけないのではないかなということを申し上げておきたいと思います。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。

 実は,この後,金子委員からの話題提供もあるのですが,小路委員の御発言に触発されて,まだ古賀委員,金子委員,そして,山内委員からもお手が挙がっておりまして,小路委員,少し早めにお帰りになることもありますので,少し予定を変えまして,ここでしっかりと,せっかくですから,質疑応答,お答えを続けていただければと思います。

 じゃ,古賀委員,そして,山内委員,お願いします。

【古賀委員】 
 御発表ありがとうございます。

 資料2の2のところの「最後の仕事と学びの好循環」について,主に働き手と雇い入れている企業という2点からのお話だったように記憶しているのですが,一方で,世論調査のデータから,大学・公民館等,学びを推進する機関が多元化していることが伺え,恐らく企業の従業員の方も今後外部機関で学ぶ機会も増えてくるのかなと思っております。

 そういう場合,働き手と企業以外の学びを推進する機関が,この法循環を生み出すためにどういう役割を担うべきか,何か具体策としてイメージされているものがありましたらお聞かせいただきたいです。

【清原分科会長】 
 具体的な対応についてお願いいたします。

【小路委員】 
 端的にということで,先ほど少し触れましたように,例えば,企業と大学の関係で少しお話をさせていただきましたけれども,やはりそれぞれのニーズとシーズがまだまだアンマッチングだと感じます。

 我々は,大学のリカレントプログラムの中身をよく十分に理解しているかというと,まだまだそこまではいっていません。一方では,教育機関,アカデミアの方は,我々の働き手なり企業のリカレントに対するニーズというものについて,まだまだ大学の教育プログラム,カリキュラムのスケールから見ていると。こんなところが,少し抽象的なのですけれど,まだまだ溝としてあろうかと思っていますので,まずそこを,多少時間はかかっても埋めていかないと思います。それぞれが自分たちはこういうプログラムつくりました,我々はこういうことを望んでいますということをいっても,成果というものが出てきません。学んだ,また,それを仕事に活かして成果を上げるという実感が出てこないと感じております。

 具体的なお答えではありませんが,申し上げておきます。

【古賀委員】 
 ありがとうございます。

【清原分科会長】 
 それでは,金田委員,お願いします。そして,続いて,山内委員です。

【金田委員】 
 小路委員,ありがとうございました。

 リカレント教育の部分の中で,学び直しというところになると思うのですけれど,通常の大学のカリキュラムに関して,そこに最初からもっと働きかけるということは考えるということはないのかなと。

 リカレントと言うことで,一度社会に出た上で学び直すことに重要性があるのか,それとも,大学の授業のカリキュラムの中だけでは不足しているので,さらに学び直し,スキルアップということが必要だと思っていらっしゃるのか企業側の観点から,もし考えがあればと思っております。

【清原分科会長】 
 なるほど。先ほど知の拠点である大学とリカレント教育は密接な関係があるという御報告もございましたので,改めて大学と,そして,卒業後のリカレント教育との関係について,経営者側としてはどのように分けて考えていらっしゃるかと。

【小路委員】 
 2つあろうかと思うのですね。現行の大学のカリキュラム,これは私もそれなりに見てみましたけれど,そこに行っていわゆる学び直しということで,社会に役立つということは結構あろうかと思います。

 大学で学んで,社会に出ました,仕事をしました,そうしたら,経営も経済も法律も文学も,もう一回社会の視点,仕事の視点から見たら,もう一回こういったところを学んでみたいと。そうしたら,現行の大学のカリキュラムに入って学びます。これ,結構多いです。うちの会社でも多いです。

 もう一つは,先ほど申し上げました,いわゆるビジネススクール的なカリキュラムというものも,これから非常に重要になってきます。それは学びは実学であるということで,これは大学の先生方にもお願いしていますけれど,社会の変化,産業界の変化,世界の経済界の変化はどうなっているのだと。その波の中に適応力を持って乗り越えていくためのビジネススクールってどうあるべきかと。そういったものも,新しいカリキュラムとしてつくっていただいて,そこに人が入っていくと。

 やはりこの2つは重要だなと思っています。

【清原分科会長】 
 金田委員,いかがでしょうか。

【金田委員】 
 ありがとうございます。

 大学での通常カリキュラムで学んだけれども,社会に出た後さらにもう少し自分のスキルアップのために,違う分野のものも学んでみたいという,そういうところがリカレント教育の一つの柱になってくるのではないのかなと思ったものですから,質問させていただきました。ありがとうございます。

【清原分科会長】 
 先ほど野津委員が質問されたこととも関係しますし,実は,今のやり取りの中で,生涯学習分科会として,大学分科会が検討するリカレント教育の視点とは違う,生涯学習の視点からのリカレント教育における大学等との関係性をどういうふうに構想して提案をしていくかという,大変重要な視点に関わる問題を皆様からも頂いたと思います。

 それでは,山内委員,お願いいたします。

【山内委員】 
 ありがとうございました。

 学びの出口に仕事が必要だというのは,私も本当にそのとおりだなと思っております。私は東京大学でオンライン学習について研究しておりまして,アメリカで社会人のオンライン学習が非常に普及しているのに対して,日本ではなかなか普及しないのですが,その差がどこから来るかというのを,訪問調査等もしたことがあります。

 アメリカの場合,学んで学位を取得したら職位が1個上がったり,給料が上がるというケースがありました。最近は学位ではなく,マイクロクレデンシャルのような評価が普及しているので,ポジションを変えて新しいことにチャレンジができるということが,インセンティブになっているところがあって,そういう意味では,今回は会社を超える人材の流動性のお話にストレスポイントがあったように思いますが,同時に,それと連続して,会社の中でも,学んだ人に対して挑戦を促すよう調整できるような人事的な流動性を担保することが,これからの生涯学習,リカレント教育を考えていくときに重要だと思うのですが,この辺りに関してのお考えを伺えれば幸いでございます。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。

 同一企業内での昇進等との関係でのリカレント教育の意義についての御質問です。

【小路委員】 
 先ほど少し触れましたけれども,やはり評価という分野に,キャリアプランを自らつくるということをまず評価するという項目を設けていかないと,なかなか実績にはと思っています。

 それから,企業の人事制度というのは,サイクルとして,評価・育成・活用・人材活用・処遇と,こういったサイクルがありまして,その評価・育成・活用・処遇の中に,新たな求めるスキルというものを明示していくということがやはり必要ではないのかなと思います。

 今,ジョブ型が話題となっていますけれど,私は,メンバーシップ型,ジョブ型,ハイブリッドというのもありますし,どれがいいとは言いません。ただ,必要なのは,メンバーシップであっても,いわゆるジョブ型のジョブディスクリプション,職務定義書というものをやはり上司や企業がしっかり示していくことは大事です。また,それをブラッシュアップしていくということが,私は必要ではないかなと思っているところでございます。

【清原分科会長】 
 山内委員,いかがでしょうか。

【山内委員】 
 もちろんメンバーシップ型,ジョブ型の差はあるのですが,特に生成AIが出てきて,ホワイトカラーに非常に大きい影響があることを考えると,学び直しはいずれのタイプでも喫緊かと思いますので,ぜひその辺の文化づくりをお願いできればと思いました。

 以上でございます。

【小路委員】 
 ありがとうございます。

【清原分科会長】
 山内委員,ありがとうございます。

 やはり評価とか,処遇とか,重要なキーワードをいただけたと思います。

 それでは,牧野委員。一旦牧野委員の御質問で,この小路委員への御質問は最後にさせていただきます。
では,よろしくお願いします。

【牧野副分科会長】 
 どうもありがとうございました。とても貴重なお話,ありがとうございました。

 大学の中にいる者として,少し原理的な話になるかもしれませんけれども,考えをお聞きしたいなと思っていることがあります。

 今日のお話も,個人的にはとても悩み深い話をされたのではないかと受け止めています。例えば,今までの市場社会は,生産要素市場と生産市場,簡単に言えば,労働の場所である企業と,生活をする場所である家庭とが切れていて,その間を労働力の市場と商品を買う市場がつないでいて,従来であれば,基本的に企業内で学ぶといったことを基本に積み上げていけば,それが生産につながっていって,消費につながるという形で循環をしていたのだと思うのですね。

 その意味では,そこにあるのは所有欲求ベースの社会といいますか,ものを持つことが幸せであるし,経済の規模が大きくなることが幸せであるという社会が続いてきたのだろうと思います。しかし,今,特に先ほどの資料1の御説明でもありますように,リカレント教育がなかなか進まないとか,リスキリングに関心があっても手が出ないという層が若年者に移ってきている感触があって,その若年者たちがどのような生活をしているのかというと,むしろ,生産要素市場と生産市場が重なりつつある中で,生産と消費から撤退を始めているような状況になっているのではないか,そう思います。

 言い方を変えると,所有欲求ではなくて,むしろ承認であったり,また存在欲求と言われているような,認めてもらうことであったり,自分の居場所がきっちりあって,役割を果たしていったことに価値を見いだすような生活の在り方になってきているのではないでしょうか。

 そうなりますと,例えば,教育の在り方であったり,学習の在り方であったりといったことも,技術を学んで身につけて生産に役立つようにということよりは,むしろ学び続けることで自らが変わっていく中で,自分がどんな役割が果たせるのかといったことに関心を持ち始めているというか,そのように移ってきているのではないでしょうか。

 そこに,例えば,最近ですと,生産要素市場と言われているところ,つまり企業の中に,情報であったり,アントレプレナーシップといったものを織り込んでいって,承認欲求を満たそうとするような教育の機会を設ける企業が増えてきているように見えます。

 私が関わりがある大企業ですと,多くが,もう今このDX化で個別対応が可能になってくる中で,例えば,公募制の様々な働き方を準備しています。それに対して,従業員一人ひとりに合った教育機会を提供して,自ら変革していくことを可能にするような仕組みを取り入れ始めているわけです。

 先ほど野田委員がおっしゃいましたけれど,今,ほとんどそれは大企業なのですが,全労働者の3割がそこで働きつつ,企業内で所有要求から承認要求に移行できるような仕組みができつつあるのではないでしょうか。それは,逆に言えば,日本企業の一つの特色かもしれないと思います。そういう動きの中で,どのようなリカレントやリスキリングといったことを,私たちは,生涯学習という観点から引き受けていったらよいのでしょうか。

 中小企業の方々,特に従業員は,どちらかというと,ある意味では,生活に忙しいといったこともあり,なかなか社会に出ていくことがしにくいということの中で,企業の中で,つまり企業社会という大きな社会を考えると,学習機会と承認欲求の実現という点で,大企業とそれ以外というような形での,ある意味で分断とまで言えないかもしれませんけれども,分かれてきているようなところがあるのではないかと思います。

 そういうことの中で,学びとは一体何なのかといったことを,社会全体で考え直しておかなければいけない時期に入ったのではないかと思うのです。それが先ほど小路委員がおっしゃったような,一人ひとりがキャリアプランを考えていって,自らが自分の人生設計をすることと,企業で働くことであったりとか,又は,社会が変わっていくといったことをどう重ね合わせながら学んでいくのか。そうした学びをどう保証するか。こういうことを,公的に考えなければいけない時代に入ってしまったのではないかと思います。

 その意味で,今日の御発表の中で,今,企業もいろいろ苦慮されているのだろうということが伝わってきたのですけれども,経団連,又は小路委員として,状況はこうなのだ,こうしたらどうだろうかというようなことが,もしありましたら一言お聞きしたいと思いました。

 すみません,長くなりました。

【清原分科会長】 
 小路委員,よろしくお願いいたします。

【小路委員】 
 ありがとうございます。

 これも少し抽象的なお答えになるかもしれませんけれども,私は2つの視点が必要だと思っています。

 一つは普遍的な視点ですね。学びというのは,人間の成長に必ずつながります。その成長というのは,本質的・本能的な喜びにつながると思います。自分が成長してつまらないという人は,まず本音で言うと,僕はないのではないかと思うのですね。学びは成長,成長は喜びだと。この普遍的な人間の欲求というものを,常に自分自身も強く持ち,また,これ,刺激するということが大事だと思うのですよ。

 それから,もう一つは可変的なところで,少しこれは極端な例ですけれど,最近,企業の価値って何だろうということを投資家からも様々に問いかけられて,我々も考えたのですね。

 今までは持続的に利益を上げて,そして,それを還元することでした。しかし,利益成長も必要なのですけれど,企業の存在意義が明確で,その存在意義を達成するために,経営事業を行っているかどうか。これは利益成長より,最近の投資家は重要視しているのですね。これが可変的なところ。

 ですから,我々経営者は,もちろん利益を上げて,それを分配して,生活の向上を図り,投資家にも還元をしてと。これはもう,ある意味では当たり前のことで,その上に,今申し上げた企業の存在意義,パーパスとよく言いますけれど,パーパス経営という言葉最近言われてきて。そういったことをある意味では利益より重要視するというのですかね,そういう経営にしていかなければいけない。それほど可変的な,変わるということが,経営にも私は出てきていると。

 あるいは,成長社会と循環社会と,どちらが大事なんて,これ禅問答で,私も答えを申し上げませんけれど,そんなところも経済界も企業経営者も,今,自問自答しているというところです。

 そういった可変的な価値の変遷というものをどう見て,それを学びに落とし込んでいくかということを考えなければいけないのではないかなと,そんなことを感じます。

【牧野副分科会長】 
 そこをお聞きしたかったです。どうもありがとうございます。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。

 小路委員の話題提供に触発されて,多くの皆様からの質疑応答の中で,これからリカレント教育を考えていく上での視点が明確になったと思います。リカレント教育についての個人の視点,組織の視点,そして,働き手の視点,企業の経営者の視点,そして,政府や自治体の視点,あるいは,大学・教育機関の視点ということがあぶり出されてきたのではないかなと思います。大変にありがとうございました。

 それでは,大変お待たせしましたが,これから金子委員に御報告を頂きたいと思います。金子委員には,「連合におけるリカレント教育に関する考え方」について伺います。

 金子委員は,日本労働組合総連合会副会長,私たちは連合と略称させていただいておりますが,そして,全日本自動車産業労働組合総連合会会長でいらっしゃいます。ぜひ,働き手,労働者の視点からリカレント教育について御発言をお願いいたします。

 資料に基づいてお願いいたします。

【金子委員】 
 ただいま御紹介いただきました連合副会長を務めております自動車総連の金子と申します。大変盛り上がったところですが,改めて,このリカレントのベーシックなところに立ち返って,基本的な連合の労働組合の考え方を少し紹介させていただきたいと思いますので,どうかよろしくお願いします。

 記載の通り,資料に沿って3つについて順に説明したいと思います。

 リカレントの前に,まず,そのベースとなります連合の2035年の社会を展望した,中長期の羅針盤となる連合ビジョンというものを2019年に策定をしておりますので,そこをまず紹介をしたいと思います。

 そもそもの連合は,資料左下ですが,1989年に結成しておりました。当時4つほど大きな労働組合があったのですけれども,そこが統合し結成された,いわゆる日本のナショナルセンターという位置づけになっているわけです。

 いろいろ答申を出してきたのですけれども,結成以来,働きがいのある人間らしい働き方のもとで,希望を持って安心して暮らしていける社会をつくり上げていくため,節目節目で目指すべき社会像の策定をしてきたということです。直近が,2019年に策定したこの「連合ビジョン」ということになります。

 まず,私ども連合がどのような社会を目指しているのかということについて申し上げたいと思います。

 我々の目指す社会像に,「働くことを軸とする安心社会」ということを掲げておりますが,これは,働くことに最も重要な価値を置き,誰もが公正な労働条件のもとで,多様な働き方を通じて社会に参加でき,社会的・経済的に自立することを軸としています。また,持続可能性と包摂性を基底において,多様性を受け入れ,互いに認め合い,誰一人取り残されることのない社会というものであります。

 そして,その社会を実現するために,働くことにつなげる,記載のような5つの安心の橋というものを整備していくということが必要だと考えております。特に教育に関して言うと,少し見づらいですが,左上のところの橋のⅠ,学ぶことと働くことをつなぐと記載しておりますが,ここには4点書いております。

 全ての子供たちに学ぶ機会を保障すること,全ての子供を包摂する教育を推進すること,連帯,共生による発展を目指す教育,学ぶ場から働く場への円滑な移行のための環境整備,そして,生涯を通じて学び続けられる環境の整備が必要だと考えています。

 そして,この連合ビジョンを踏まえて,5つの安心の橋を支える社会保障,教育,税制の一体的な改革に向けて,それぞれの理念と改革の方向性も示しているところです。

 その一つ,教育に関する中長期的な政策が,次のスライドで,教育制度構想というものを示しています。

 上の方の囲みには,2019年当時の教育制度構想の検討の背景ということでまとめております。

 技術革新の一層の進展により予想される超スマート社会や,人生100年時代到来といった変化に対応して,誰もが取り残されず,生涯を通じてやりたいことを続けられる社会,包摂的な社会の実現が重要と考えています。

 また,社会変化や長期化する人生設計に対応するため,個人がどのような状況にあろうとも,学びたいときに学べる機会が保障される社会の実現が求められているとしております。

 そして,下の囲みになりますけれども,その改革の方向性として,持続可能で包摂的な成長を支える教育制度と記載しております。

 少し見づらいですが,下から2行目,各論の3,リカレント教育というふうに赤文字で右に書いてありますが,そこに,個人が社会に出てからも働く場と学ぶ場を自由に行き来できることということを求めております。

 次,お願いします。

 教育制度構想の各論3,今申し上げたリカレント教育・人材育成の概要がこれになります。

 左上の現状と課題として,社会人の学び直しに当たっての「費用」と「時間」の壁があるというふうに指摘しております。

 その右側に,目指すべき未来として記載がありますが,学びたいときに学べる環境の整備,個人が生涯にわたって学び続ける社会の実現,そして,働く場と学ぶ場を行き来できる環境整備を目標としています。

 下の箱には,連合が提起する改革として,具体的な政府などへの要求項目を5点記載いたしております。

 1点目は,要は,能力開発に必要な一般財源を確保して,専門職大学をはじめとした働くことに直結する学びの機会の拡充を求めています。また,専門職大学における長期のインターンシップは労働として,いわゆる労働諸法を適用すべきとも考えているところです。

 そして,2点目は,企業が長期の教育訓練休暇制度を導入しやすいように,「人材開発支援助成金」の拡充を求めています。

 そして,3点目は,社会人が企業に在籍しながら通学できるカリキュラムの編成,夜間や休日に開講する講座などの充実を求めています。先ほどの質疑の中でもあった観点かと思っています。

 そして,4点目は,教育と技術を組み合わせたEdTechを活用して,誰もがいつでもどこでも学べるプラットフォームの構築を求めています。

 そして,最後,5点目は,放送大学や大規模な公開オンライン講座の「MOOC」を活用した学びの拡充を求めているということです。

 次のページをお願いします。こちらはリカレント教育のイメージ図であります。労働組合として重要なポイントとして2点指摘をしたいと思います。

 右の「ココがポイント!」のところですが,まずは,学び直しの成果を確実に個人のキャリアアップやキャリアチェンジにつなげる仕組みが重要ということであります。これには,企業の理解と政府の支援が必要であると考えています。

 そして,受講をしやすい環境整備として,これは下の「ココがポイント!」ですが,先ほども申し述べた「費用」と「時間」の壁の解消が必要だということです。

 これらの課題については,次のページにアンケート結果をまとめておりますが,冒頭の事務局からの説明の資料の中にも入っておりましたので,ここでは割愛をしたいと思っています。

 いずれにしても,特に下の図で言うと,日本は就労経験をしてから高等教育機関で学び直す人の割合が極めて低い。こういった現状は共有できるかと思います。

 次のページをお願いします。

 最後に,リカレント教育に関する連合の政策・制度,要求と提言について紹介します。

 こうした様々幅広い政策集を持って連合は政府への働きかけを行っているところでありますが,上の段は,雇用・労働政策として,リカレント教育システムを構築して,受講促進のための財源確保を求めています。

 そして,下の段は,教育政策として,先ほどもありましたが,教育政策構想で提示したものも含めて,6点を掲げているということであります。こうしたことが連合のリカレント教育の考え方ということで御理解いただければと思います。

 そして,最後ですが,もう1点,先ほども冒頭の資料にあったのは,リカレント教育の内数としてリスキリングがある。仕事に関わるところでは,特にリスキリングと最近は呼んでいるという認識ですが,最近の政府の考え方でいうと,成長分野への必要な労働移動の文脈の中で,リスキリングを推進していると認識をしているのですが,人材育成というのは,本来,各企業の責任で実施すべきであると考えております。そして,人材育成をしていくには,リスキリングだけではなくて,従来の能力開発だとか,リカレント教育など,様々なスキルアップに資する選択肢を確保して,総合的に推進していかなければならないとも思っております。

 労働者個人への直接支援の拡充もさることながら,そういった意味では,企業を通じた支援の維持・拡充も重要だろうと思っております。

 そして,労働者の方は,主体的に自分事として能力開発に取り組めるようにする必要があると思っていますが,それを実現する上でも,長時間労働の是正だとか,企業による有給の訓練研修休暇などの環境整備も不可欠だと考えております。

 したがって,リスキリングという言葉で言えば,まずは社内での活躍を念頭に置いた新たなスキルの開発が優先されるべきであって,必ずしも社外への労働移動の手段のみを目的に実施すべきではないということを,最近の政府の発信を踏まえて,少し課題提起をし,説明とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。

【清原分科会長】 
 金子委員,どうもありがとうございました。

 日本労働組合総連合会として,リカレント教育に関する考え方を「連合ビジョン」と「教育制度構想」や,様々改革について提案されている内容から御説明いただきました。

 キーワードとしては,学ぶことを働くこととつなぐということを強調されるとともに,学びたいときに学べる機会を保障される社会というのを目指していくということ,そして,働く場と学ぶ場を自由に行き来できるということも強調されました。

 ちょうど5ページに提起されている,連合が提起する改革という中には,例えば,EdTechであるとか,MOOCであるとか,デジタルの技術を活用したいろいろな手法の提案についても含まれていましたし,最後には,リスキリングについての認識についてのコメントも頂きました。

 それでは,これから金子委員の話題提供について,質疑応答に移りたいと思います。どなたからでも,会場の方は名札を上げていただくとともに,オンラインの方は挙手ボタンをお願いいたします。どなたからでもどうぞ,よろしくお願いします。

 それでは,澤野委員,お願いいたします。

【澤野委員】
 ありがとうございます。今日は情報をたくさん頂きまして,勉強になっております。

 文科省の方から出されたデータにもありますけれども,先ほどの7ページ目の25歳以上の入学者の割合について,私もよくこのデータを使って,日本がリカレント教育が遅れているという根拠にしていました。昨年は半年間ですけれども,私の大学では研修年というのがありまして,1年間,通常業務を離れて研修ができる制度が勤続7年目と10年目,その後10年ごとにあるのですけれども,まさにその教育休暇制度が保障されないとリカレント教育が成り立たないと。特に職業人の場合はと思っております。しかし,大学によって実はかなり条件が違って,私の場合はかなり幸運な例の方だと思うのですが。それで半年ほどスウェーデンで在外研究もしていたもので,そこで気がついたことがありましたので,申し上げたいと思います。

 日本が25歳以上の入学者が少ない理由としては,やはり高校を卒業して,浪人するにしても,ほとんどの人が直後に大学に進学しているからです。スウェーデンとかフィンランドなどはギャップイヤーのような形で,高校を卒業する年齢も19歳なのですけれども,その後すぐに大学に進学しない人が圧倒的に多くて,15%ぐらいしか高卒ですぐには進学していないのですね。大学も大学院も無料なので,いつでも入れるということで,まずは就職したり,アルバイトをしたり,海外でボランティアをしたりというような選択をするというのもありますし,多分スイスとかフィンランドなど,スウェーデンも最近はそうですけれど,兵役もあったりするので,男子学生の年齢がどうしても高くなってしまうということもあるので,このデータをもとに,日本がリカレント教育が進んでいないことの問題点を考える材料にしていいのかなと最近思うようになりました。

 OECDの方では,人口に占める大卒者のデータも,こういうデータと併せて示していて,それだと日本はかなり大卒者の人口がスウェーデンやフィンランドのように25歳以上の学生の割合では上位の国々よりも多いので,労働者の,特に新卒の若年層の職業人の学歴が極めて高いということもあるのかなと思います。

 それとともに,雇用の面でも,流動性が本当に高い国々がスウェーデンとかフィンランド,デンマークなどの北欧諸国については言えると思います。それも,日本に比べると,就職の仕方は一斉にリクルートされるわけではないですし,給料も,毎年のように,公務員でさえも年俸制のような感じで,上司と交渉しながら上げていかなければならないという面もあったりもします。日本型の職場のいい面は,なるべくそこは残した方がより安定するのではないでしょうか。リカレント教育は,そういう意味で,日本で大学に戻ってまでリカレント教育をするニーズというのが低い理由の一つにそういう面もあるというのを少し考えておかなければいけないと思ったのですけれども。

 それから,大学生もそうなのですけれども,特にコロナ後,ヨーロッパの国々でもかなりメンタルが不安定になる人たちの対応みたいなものも求められるようになってきていて,生涯学習的な意味でのリカレント教育では,もちろんリベラルアーツのような人間性を高めるための教育ということもあるのですけれども,カウンセリングとまではいかないですけれども,そういう心の面のケアのような形での学び直しということも,職業人に関してはかなり重視されているのですが,日本の場合は,その辺りはいかがでしょうか。

【清原分科会長】 
 澤野委員,ありがとうございます。

 冒頭の御質問の,高等教育機関への25歳以上の入学者の割合ということだけを捉えて,リカレント教育が国際的に進んでいないと断言するのではなく,もっとほかの調査なども活用すべきという点については,私たちが共有しながら,文部科学省の皆様と検討していきたいと思います。

 2点目の御質問は,金子委員に伺いたいなと思ったのですけれど。コロナ禍で,やはり働き手の皆様がメンタルの面でいろいろ直面している課題もあると思いますが,そうした面への対応として,リカレント教育というか,あるいは,研修の在り方というか,カウンセリング等のニーズに対して,どのようにお考えかという点について,所感を伺えればと思います。よろしくお願いします。

【金子委員】 
 ありがとうございます。

 先ほど,年齢のグラフは私も提示をしたのですが,それ自体が問題というよりは,硬直的かつ学びたい人が学べないという環境になっていないかどうか。将来の日本の社会を考えたときに,そういった硬直性的なものがこのままでいいのかどうかという問題提起をしたので,この数字をもっていかないということではないと思います。日本の高等教育の進学率の高さというのは,むしろ今増えてきたと思います。

 それと,メンタルの方が,コロナになってやはり増えてきているというのは,全体に当時ありました。それは,いわゆる先ほど申し上げた中で言えば,教育訓練休暇制度というのは,いわゆるリカレント,若しくは,会社としてのリスキルを持って,さらなる質の高い人材を求めるための制度に対する休暇制度ですけれども,それと,いわゆる傷病に関わる休業制度と併せて,どちらにおいてもそういったことを柔軟に使えるような制度とすることで,誰一人取り残されることのないような社会制度をつくっていくということが重要だと思っております。

【清原分科会長】 
 金子委員,ありがとうございます。

 澤野委員,よろしいでしょうか。

【澤野委員】 
 はい。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。

 それでは,オンラインで,辻委員,お願いします。続いて,関委員,古賀委員でお願いします。

【辻委員】 
 オンラインで失礼しております。名古屋大学の辻です。

 御報告を伺いまして,教育訓練休暇制度の充実をという御提案を頂いたことに触発されて思い出したのですが。1974年だったと思いますが,有給教育休暇に関する条約というのがILOで採択されたと思うのですね。それは,それこそ私などが大学に入る前の,もう50年前の話でありまして,教育のために給料をもらって勉強できるって,少しびっくりするような話で記憶に残っているのですけれども。これがもう五十何年,日本は批准をせずにきていると思うのですけれども,一方で,職業能力開発促進法なんかでは,こういう教育休暇というようなことも書き込まれているというふうに思っております。

 そのILOの条約に批准できない理由は何なのか。もう50年前の条約なので,もう無視してよい条約なのか。あるいは,EUの国なんかだと,どれぐらいが加入しているのだとか,そういうことを少し教えていただいたりしながら,労働組合の運動にもしていただいたり,政策立案の方に活用していただけるといいなと思いまして。すみません。そんなことを,もし何かの機会がありましたときに情報提供いただければと思ってお話しました。

【清原分科会長】 
 辻委員,ありがとうございます。金子委員から触発されて,大変重要な記憶を呼び覚ましていただきまして,1974年の教育休暇に関する有給化のILOの条約に関して,これは事務局に調べていただければなと思います。

 現状について私も承知しておりませんし,委員の皆様で御存じの方もいらっしゃらないかと思いますので,今の辻委員の問題提起については,少し調査させていただいて,私たちにとって共有すべきことかなとも思いますので,よろしいでしょうか。

【辻委員】 
 突然の質問で失礼いたしましたが,機会がありましたら,よろしくお願いいたします。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。

 それでは,関委員,続いて,古賀委員です。

【関委員】 
 関でございます。金子委員さん,本当にありがとうございました。

 これも素朴な疑問になりますが,実際に現職の中で一所懸命に仕事をしておられる方,時間的にも,精神的にも厳しい環境の中で働いておられると思います。そういった方々にとって,学ぶということがどういうふうな受け止め方をされているのかというのをお伺いできればと思います。あと,どうしても企業であれば,将来の中心的な人材として育成したい人をある程度ターゲットを絞って,その人にいろいろな育成の場を投げかけることが結構あるのではないかなと思います。それらが実際に学びたい方の思いとミスマッチすることも結構あろうかと思うのですけれども,そういったときに,公平性を担保するルールみたいなものを設定しておられるのかどうか,その辺をお伺いできたらと思います。

【清原分科会長】 
 学ぶ人の視点に対する御質問ですが,いかがでしょうか。

【金子委員】 
 関委員,ありがとうございます。

 なかなか一概に言えることはないのかもしれませんけれども,すごく長い日本の戦後以降の歴史から言えば,もう本当にせっぱ詰まった生活のためから,もう少し余暇も含めた余裕,人間らしい生活を求めた,働く側としてもそういうことを求めている中で,やはり実入りももちろん大事なのですけれども,自分の存在価値であったり,働きがい,やりがいといったものが,いかに自分の今いる働く場所で評価されるか,そういったところ求めているというのは非常に高まっているのではないかなと思っています。

 そういった意味で,それをさらにブラッシュアップするための個人のリカレントというものに対しては,やはり社会全体で支えていくということが重要かと思っています。

 それと,人材育成する人,しない人,ミスマッチは,これは企業ごとにそれぞれルールがあるとは思いますけれども,基本的には,企業で言えば,リカレントの中の,先ほどの資料にもありましたけれども,趣味に大半に及ぶところと,本当に企業としてリスキリングしてほしいといったところでは,若干条件は変わってくるとは思っています。

 今後の考え方としては,社内にいる人たちをどうしていくかという次元以前に,日本全体としては,やはり労働力が減っていく中で,新卒から最後定年退職まで走り切れば全体の仕事が回る時代からは,やはり変わってきていると思いますので,ここに一定のルールが必要だと思いますし,このミスマッチを起こさないための制度構築というものも,法整備も含めて考えていく必要があるのではないかと思っています。

【清原分科会長】 
 関委員,いかがでしょうか。

【関委員】 
 ありがとうございます。

【清原分科会長】 
 公平さとか,なるべくミスマッチを起こさない今後の在り方というのは,雇用環境の急激な変化の中で,本当に重要になってくると思います。

 それでは,古賀委員,お願いいたします。

【古賀委員】 
 御発表ありがとうございます。

 資料の4ページを拝見しながらの質問ですが,人生100年時代とか生涯を通じて学び続けるということについて2つ思い出すことがあり,それに関連しての質問です。

 一つが,2007年に団塊世代が大量退職するということで,地域デビューを進めようという趣旨で,公的機関も含めて地域デビュー準備講座みたいなことを多くやられていた記憶があります。私もNPO・ボランティア絡みで,よくそういうところへ登壇していたのですが,その後それをきっかけに活躍される方々が結構いらっしゃいました。「幸福度」に関する様々な調査データを見ていても,「地域活動」とか「ボランティア」とか,そういう場面を持つことで幸福実感度が上がるのだなということも感じています。

 もう一つが,行政機関でも,「仕事人」に加えて,「家庭人」,「地域人」という側面も推し進めるべく,研修カリキュラムにそういうものを織り込む自治体も結構増えたなという印象があります。

 リカレント教育について,労働者団体のお立場として「個人が社会に出てからも」と位置づけられているのですが,先ほどの小路委員さんのお言葉を借りると,「実学」に直結はしない内容も含めての教育をイメージされているのか,ぜひお聞かせいただきたいです。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。

 ボランティアとか,あるいは,家庭生活,地域生活も大事という御視点からの御質問ですね。いかがでしょうか。

【金子委員】 
 我々の立場で言うと,労働組合ですので,実利を求めた打算的なものというよりは,人間らしさ,ディーセントという観点から,非常に求めるジャンルは幅広く,何でもいいというふうには思っていますが,企業に属する労使の関係で言えば,先ほど申し上げたように,いわゆる狭義の意味で,リスキリングに関わるところは,これは双方のウィン・ウィンでなければ成り立たないと思いますので,そこはもう少し詰めて,もっと言うと,社会や制度も含めて整備をしていく必要があると思うのですけれど,ここでいうリカレントというのは,どんなことを学んでもいいと思うのです。そういったことに制限をかけるというのは,むしろ間違っているのではないかなと思っています。

【清原分科会長】 
 古賀委員,いかがでしょうか。

【古賀委員】 
 恐らく働く側としてのスキルアップとか人間性向上に直接的に変わりがなくとも間接的に関わりがある領域もあるのかなと思いますので,私もそこら辺は掘り下げていきたいなと思いました。

 ありがとうございます。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。

 それでは,金子委員への最後の御質問,萩原副分科会長,お願いします。

【萩原副分科会長】 
 手が挙がっています。

【清原分科会長】 
 ごめんなさい。では,大平委員,お願いします。見えなくてごめんなさい。失礼しました。

【大平委員】 
 大平でございます。

 私どもでは,専門学校と専門職大学を運営しております。その専門職大学並びに専門学校でインターンシップ等も随分取り組んでおり,企業との連携というのは非常に深いと思っておりました。ほかにも社会人教育,講座の方を設けたりしており,企業様との連携,ふだんから人事並びに経営の方といろいろと交流をさせていただいておりますが,それでも,この4ページの方に書かれている,個人が社会に出てからも働く場と学ぶ場を自由に行き来できるという,この視点が我々の方は少し欠けておりました。

 これについてどういった制度が今後必要なのか,どういうふうにお考えなのか,少し教えていただければ幸いでございます。

【清原分科会長】 
 学びの場と働く場の行き来について,金子委員お願いします。

【金子委員】 
 ありがとうございます。

 これからの論議の中でいろいろ出てくると思うのですけれども,やはりまず阻害要因を打ち消していくということだと思います。そういった意味では,時間と費用の負担というものをどう解消していくかというのは,企業単位でもあり,先ほどの助成金の話もありますけれど,そういったことと,あとは,先ほどの小路委員のプレゼンにもあったのですけれども,そもそもみんな変わることに対する拒否感というか,抵抗感というのは全員にあると思います。それをいかに自分にとってメリットがあるものかというような社会情勢であったり,実際のベネフィットをどう提供していくかということも大事だと思います。もう一つ言えば,変えるときにはなるべく労力を要したくないというのも人間の性ですので,そこをどう合理的に社会として軽減していけるかというような観点からも考えていく必要があるのではないかなと思います。

【清原分科会長】 
 時間,費用,それから,社会意識ということですが,大平委員,いかがでしょうか。

【大平委員】 
 ありがとうございます。ぜひ,参考にさせていただきたいと思います。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。

 じゃ,最後に,萩原委員,お願いします。

【萩原副分科会長】
 時間のないところで申し訳ございません。

 まず,40年前に一度大学を出て企業に就職し,その上で,もう一度学び直したいと思い,学士入学をし,妊娠中,その後赤ちゃんを連れて大学に行ったという経験をしております。やはり一度社会に出て,学びの必要性を認識してもう一度学び直すということは,とても大事だと自分の実体験として思っています。それがあって今の私がここにいると思います。

 そのときに多くの方たちと出会い,いろいろな方たちと学び合い,そして,助けていただいたことによって,自分自身,先ほど内田委員がおっしゃっていたように,自分ってこういう力を持っているのだとまさにエンパワメントするという,その意味でも,リカレント教育って非常に重要だと思っています。

 もう一つは,昨年3月まで立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科で教べんをとっておりました。20周年を迎えた社会人向けの大学院で教えていた立場としていわゆる学び直しの推進を果たす役割としての大学はとても大事だと思います。サードプレースなんていう言い方もされますけれど,そういう場を今後,都心だけではなくて,全ての大学がそういったものを設けることによって,大企業だけではなく,地域の中小企業も含めて,学び場を提供していくことにつながるのではないかと思います。

 その際,金子委員がおっしゃったように,やはり費用と時間の問題。大学院に行きたいけれども,やはり学費が高額ですから。しかし,奨学金というのも後で借金になってしまうというようなことで,まだまだ先ほどのお話のように,スウェーデンとかフィンランドのように無償ではないために,そこで学びの場が阻害されてしまっているということがあると思います。

 それから最後になりますけれども,大学の方でオンラインとか,夜間とか,大学はやってきたのですけれども,今度は大学の教員の働くワークライフバランスということも考えていかなければいけません。先ほど清原委員がおっしゃったように,生涯学習分科会としてのリカレント教育と,それから,大学分科会の方のリカレント教育が,きちっと議論の内容を共有しながら進めていくことが大事だと思います。いずれにしましても,金子委員からの御提案というのは非常に重要だと思いました。

 ありがとうございました。

【清原分科会長】 
 以上はコメントでよろしいですか。

【萩原副分科会長】 
 よろしいです。結構です。

【清原分科会長】 
 皆様,お気づきと思いますが,予定の時間は超過しておりますが,小路委員,そして,金子委員の話題提供から,リカレント教育について,本当に重要な視点,論点が提起されたと思います。

 もう一つ報告がございますので,10分程度の時間延長をお許しいただければと思いますが,リカレント教育についての検討を始めた初日でございまして,本日,藤江総合教育政策局長,そして,池田高等教育局長も私たちのこの場にいてくださいました。

 もし御発言ありましたら,一言いただければ幸いです。

【藤江総合教育政策局長】 
 ありがとうございます。

 今日は本当にリカレントについて,充実した御提言,御発表と,そして,非常に深い御議論,ありがとうございました。

 最初に説明しましたように,リカレントとかリスキリング,非常に声高にということを言われてきていまして,政府の方針の中でもいろいろ提言がされていますけれども,その中で,改めて教育機関としてしっかり受け止めて議論しようという清原分科会長からの御提言も踏まえて,こういう会を設けさせていただきましたが,今日は特にニーズとシーズ,小路委員がおっしゃっていただいたマッチングしていかないといけないという意味では,まずニーズ側の企業,それから,労働者の方の視点から有意義なお話を頂いたと思いますし,具体的な議論が非常に深まったと思います。

 こうした御議論を踏まえて,提供者側である大学や専門学校といった点についても議論していかなくてはいけないと思います。今日,そういう意味で,高等教育局長にも出てもらったところでございます。

 また,生涯学習分科会として,労働関係ということで,最後に御議論にありましたけれども,より広い意味でのリカレントということも視野に入れていく必要があるのかなと感じたところと,あと,さらに教育の分野だけではなく,雇用の文化を変えていくというような点から言いますと,各省とも連携していかなくてはいけないなというところを痛感したところでございます。

 本日は本当にありがとうございます。また,引き続き御議論いただければと思いますので,よろしくお願いします。

【清原分科会長】
 ありがとうございます。突然でしたが,池田局長も一言。その後は,すみません,沖畑委員から一言いただきますので,少しお待ちくださいませ。

【池田高等教育局長】 
 今日,後半のみ聞かせていただきましたが,大変充実した内容の濃い御意見を頂いたと思っています。

 先ほど萩原副分科会長をはじめ,何人かの先生方から,大学教育におけるリカレントと,あと,こちらの生涯学習の観点からのリカレント,うまく連携していく必要があるというお話もございましたけれども,私どもとしても,大学分科会も第12期に入って,実は少子化が急速に進む中で,大学の規模も含めた在り方をどう考えていくかというのが今期の非常に重要なテーマでございまして,その中で,留学生交流で優秀な留学生をどんどん大学に入ってきていただくというのと,それから,リカレントが進むことによって,若者の集う場ではない,多様な年齢層や国籍の方々が集う多様な大学のキャンパスということで議論を始めたところでございますので,ここでの御意見も,分科会長をはじめ,お伝えして,連携をとりながら進めさせていきたいと思います。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。

 総合教育政策局長,高等教育局長からは,文部科学省の局を横連携して,リカレント教育について検討するとともに,他の省とも連携をして,より実践的な内容について検討していくということでございますので,今後もよろしくお願いしたいと思います。

 それでは,沖畑委員,お待たせしてごめんなさい。どうぞ,御発言ください。

【沖畑委員】 
 すみません,あまりにも議論が白熱しておりましたので,最後に回ってくるのかなと思いながら,時間が来てしまって申し訳ございません。2点だけ私の方から。

 1点目は,私は地方の代表かなと思っていますが,地方にあってのリカレント教育とはどうあるべきなのだろうかということです。先ほど大企業と中小企業の状況や感覚が違うようにとありましたが,地方と都市部との状況というのは全く違うものですから,その中でどのようにして進めていくと,地方に住む皆さんのニーズに応えるような,そして,先ほどから委員の皆様が議論されている目指す方向に向かっていけるのかなということを考えておりました。

 幸い,オンラインというものが進んできましたので,たくさんのことが学べるかと思いますが,私の姪が東京におりまして,ちっとも帰ってこないのですが,その理由の一つにというか,最も大きな理由として,「東京は学べる場所がたくさんあるの,いろいろな学べる内容もすごく充実しているの。」と言いながら,彼女はずっとリカレント教育で,いろいろな大学に,夜間の部に入学したり,それから,公開講座受けたりしています。そして,「オンラインもいいけれどね,やはり行って学ぶのは違うのよね。」と言うのですね。そうしたものがどうやってつくっていけるのかなということを考えてまいりたいと思っております。

 2点目ですが,先ほどリカレント教育を進めるに当たっては,費用と時間ということと,そしてもう一つ,社会意識というふうに最後おっしゃいました。本当に私も,費用と時間を解決することは大切だと考えます。しかし,それだけで今本当に社会人の学び直しが進んでいくのかなと思うことがあります。やはり社会意識というか,人々の意識というものの,これが重要で,これは先ほどから出ている初等教育から主体的に学ぶことを考えながらやっていくべきもので,全部がつながっているのではないのかというふうに考えました。

 そのことを最後お伝えしていきたいと思いましたので,ありがとうございました。

【清原分科会長】 
 沖畑委員,すばらしいおまとめを頂いたような気持ちで聞いておりました。

 やはり野津委員も野田委員もおっしゃいました,地域の実情に応じて,リカレント教育というのは,それぞれ適合的に考えていかなければいけないということ,そして,山内委員も提起してくださいましたけれど,やはり適切なオンライン,あるいは,生成AIの領域のことも含めて,リアルとデジタルの適正化ということも重要な課題だというふうに受け止めました。ありがとうございます。

 それでは,申し訳ございません,皆様。重要な報告がございまして,お時間超過して恐縮ですが,お許しいただきまして,ただいまから,議題2,その他として,前回,4月の生涯学習分科会において設置を決定いたしました社会教育人材部会の審議状況について,まず事務局から簡単に御報告いただき,その後,部会長の牧野副分科会長にご報告をお願いしているものですから,皆様と共有をしたいと思います。

 すみません,お時間を超して。失礼ですが,よろしくお願いいたします。

【神山生涯学習推進課長】
 事務局でございます。資料4を御覧いただければと思います。

 社会教育人材部会,これまで5月から7月にかけて3回実施をしてございまして,1回目では,社会教育人材の基本的な方向性ですとか役割について議論をしたり,社会教育人材のネットワークについて調査検討を進めていくといった方向性について御審議を頂きました。

 第2回は,講習を実施している機関4機関からヒアリングを行い,オンラインをはじめとした特色ある取組についてヒアリングをして議論をしたということでございます。

 また,第3回が,7月3日にございましたけれども,ここでは資質・能力を向上するための講習の内容ですとか,学習機会を拡大するために,受講しやすい環境の整備,あるいは,受講者の負担の軽減について議論したということになってございます。

 次の第4回を7月26日に開催予定しておりまして,4回目を経ますと,またさらに議論がまとまってくるかと思いますので,次の分科会でも御報告ができるのではなかろうかというふうに見込んでございます。

 以上でございます。

【清原分科会長】 
 課長,ありがとうございました。

 それでは,牧野副分科会長,部会長として補足をお願いします。

【牧野副分科会長】 
 どうもありがとうございます。

 あまりにも簡単にご報告いただいたので,少し驚きました。言葉が過ぎましたら,すみません。少しお時間を頂きます。

 こちらの社会教育人材部会ですけれども,基本的には社会教育主事の在り方をどうするかということで,部会が設けられたものです。

 2017年ですけれども,社会教育主事の養成を受けた者,又は,その講習を受けた人たちに対して,社会教育士という称号を授与することになりまして,そして,この制度が移行措置を取った後,2020年から実施をされています。この3年間で約4,500名の方が社会教育士の称号を取られているといったことも含めて,今後,この社会教育人材と言われている,特に社会教育主事の方々,また,社会教育士で活躍されている方々の在り方について,どうすべきかということを検討する目的で設けられたのがこの部会です。

 先ほどお話がありましたように,3回議論をしてきまして,大枠としましては,社会教育行政の立場に立ちながら,幅広くほかの行政とも連携をとって,さらに各自治体,又は各教育委員会が管轄をしている地域において社会教育行政と学校教育さらに他の行政領域とも調整をとりながら,新しい社会教育や生涯学習の在り方に対して指導・助言をしていくという立場にある方々が社会教育主事であり,他方,社会教育士は,行政のことも理解していながら,様々な人々の学びの実践の場所において,その学びを組織し,また支援をする役割を果たす専門職として活躍していただこうということになってきています。

 その意味で,部会での議論は,社会教育行政の専門職ではありますけれども,やはり幅広くほかの行政領域,特に自治体であれば,いわゆる首長部局における様々な行政領域とも連携をとりながら,さらには学校教育とも連携をとって,その地域における次世代の育成ということと,その地域におけるまちづくりですとか,さらには,今日の議論にもありましたようなリカレント教育を通した経済的な活性化といったことにも関われるような人材として,社会教育主事,また,社会教育士を受け止めていけないかというようなことになってきているかと思います。

 今後,次回,7月26日に,さらに社会教育主事の養成課程と社会教育主事講習の在り方についての議論を進めまして,一旦ここで中間取りまとめをしたいと思っています。これが来年度以降の政策にも反映されていくと思いますけれども,さらにその後,この部会は,何回か開催をさせていただいて,社会教育主事,また,社会教育士の在り方について,今後どういうようなルートを通って社会教育士になり,また,社会教育主事になっていくのかといったことも含めて議論を進めたいというふうに考えています。

 今日のリカレント教育もそうなのですけれども,先ほど議論がありましたように,例えば,この文科省の中でも,高等教育局と総合教育政策局が一緒になって,局横断的に議論しなければならない状況に,社会が変化してきています。

 これは言い方を変えますと,例えば,少し古い話になりますけれども,臨時教育審議会(1984年~1987年)で議論されたような,いわゆる学習社会論といいますか,そんなことにも関わってくるだろうと考えています。

 臨教審でも議論されましたのは,単に学校教育の改革だけではなくて,就労の在り方ですとか,企業の在り方も含めて,経済構造も考えて教育改革の議論をしていく。その中で,従来の学歴社会から,いわゆる学習社会へ,さらには,学習履歴を尊重できるような社会に切り替えていこうという議論になったわけですけれども,なかなか次へ行けない状態が続きました。ようやく,と言ったら語弊があるかもしれませんが,それが改めて今回,人材論という形の中で議論をしながら,リスキリングですとか,リカレントといったことをベースにして,新しい学習社会論を検討できるのではないかなとも思っております。こちらの親分科会といいますか,生涯学習分科会での議論と社会教育人材部会の議論を絡めて,今後分科会で来るべきリカレント教育の社会といいますか,又は,生涯学習の社会についての議論ができるとよいと考えております。

 また,皆さんの方からもいろいろ御意見いただきたいと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

【清原分科会長】 
 牧野副分科会長,ありがとうございました。

 ただいま御報告ありましたように,4回目が7月26日に開催されるということですので,そこで中間取りまとめのような内容が固まります予定ですので,次回の生涯学習分科会では,少し時間をとらせていただいて,この教育人材部会の検討の内容について共有,そして,意見交換をしたいと思っております。今日のところは,今の御報告をお聞きするということで御了承ください。

 それでは,最後に,事務局から伝達事項がありましたらお願いいたします。

【中村生涯学習推進課課長補佐】
 事務局の中村でございます。今後の審議スケジュールについて,資料の5を御覧ください。

 次回の生涯学習分科会は,8月8日火曜日14時から16時の開催を予定しております。

 事務局からは以上でございます。ありがとうございます。

【清原分科会長】 
 ありがとうございます。

 本日は,リカレント教育につきまして,小路委員,金子委員には御丁寧な話題提供を頂きまして,ありがとうございました。感謝いたします。おかげさまで,委員の皆様から本当に多数の重要な視点・論点が提起され,私たちが共有できたことを感謝いたします。

 また,人材の部会につきましても,濃密な御検討ありがとうございます。次回を楽しみにしております。

 なお,天候が不順でございまして,線状降水帯による洪水や土砂崩れの被害,本当に心からお見舞い申し上げます。酷暑による熱中症も多く出ているようです。皆様の御健康を心から願いまして,本日,オンラインで御参加の委員の皆様,そして,傍聴の皆様の御健康を願って閉会とさせていただきます。

 本日は誠にありがとうございました。お気をつけてお帰りくださいませ。

 

 

―― 了 ――

 

お問合せ先

総合教育政策局生涯学習推進課

電話番号:03-5253-4111(内線3273,2972)
メールアドレス:syo-bun@mext.go.jp

(総合教育政策局生涯学習推進課)