【資料3】全国都道府県教育委員会連合会資料

全教委連第283号
平成30年3月22日


中央教育審議会生涯学習分科会
公立社会教育施設の所管の在り方等に関する
ワーキンググループ座長明石要一様


全国都道府県教育長協議会
会長中井敬三


公立社会教育施設の所管の在り方等に関する意見について



 公立社会教育施設の所管の在り方等については、平成30年2月9日に開催された中央教育審議会生涯学習分科会において「公立社会教育施設の所管の在り方等に関するワーキンググループ」の設置が決定され、公立博物館をはじめとする公立社会教育施設について、地方公共団体の判断によって条例により地方公共団体の長が所管することを可能とすること等に関して今後検討する方針が示されたところである。
 同ワーキンググループにおける検討の結果、地方公共団体の長が公立社会教育施設を所管することが可能とされた際には、これまでの政治的中立性の確保や、学校教育との連携など教育委員会所管で担保されていた仕組が損なわれることが懸念されることから、留意いただきたい事項などを下記のとおり申し述べたい。



1基本的な考え方
 教育委員会制度の意義は、1政治的中立性の確保、2継続性・安定性の確保、3地域住民の意向の反映にあり、そのため教育委員会は1首長からの独立性、2合議制、3住民による意思決定(レイマンコントロール)の3点の特性を有している。こうした制度の下で、社会教育は、学校教育と同様に人格形成に直接影響を及ぼすものであることから政治的中立性や継続性・安定性が確保される中で推進されてきた。
 特に、これまでの社会教育行政は、社会教育施設を設置し、その施設を活用して住民に対する社会教育事業や学習活動支援サービスを提供することを通じて展開されてきたという経緯を踏まえると、社会教育行政から公立社会教育施設を切り離して首長が所管することを可能とすることは、社会教育行政を所管している、教育委員会の施策や組織の在り方に多大な影響を及ぼすことになる。
 公立社会教育施設は、地域の課題解決のために積極的に貢献していくことが求められているが、それはあくまでも社会教育施設が有する本来の意義や役割を損なうことなく行われるべきものと考える。
このため、公立社会教育施設に関する事務の首長への移管を検討するに当たっては、博物館、図書館、公民館それぞれが有している本来の意義を再検証するとともに、例えば、チェック機能を付与された審議会の設置について検討するなど、社会教育行政推進の視点に立った慎重な検討が必要と考える。


2博物館について
 公立博物館が首長の所管となると、まちづくり行政、観光行政その他一般行政分野間での連携・協働が促進され、首長のリーダーシップの下、一体的・総合的な施策の推進を図ることができるようになることが期待される。
 一方で、教育委員会の所管でなくなることによって学校その他の教育機関との連携が図りにくくなるとともに、継続した専門的調査研究、公平・中立な資料収集及び保存・活用が行われなくなるなど博物館の運営において政治的中立性や継続性・安定性の確保に影響を来す可能性がある。
 このため、首長への移管に当たっては、博物館協議会や文化振興に関する審議会等にチェック機能を付与するとともに、条例の制定等重要な意思決定を行う際には、首長が教育委員会から十分に意見聴取を行うなど、博物館運営における専門性や政治的中立性、教育との連携等を確保する必要がある。


3図書館について
 公立図書館が首長の所管となると、まちづくり行政、その他一般行政分野間での連携・協働が促進され、首長のリーダーシップの下、一体的・総合的な施策の推進を図ることが期待される。
 その反面、公立図書館が首長の所管となると、公平・中立な資料収集が行われなくなるなど政治的中立性の確保が懸念されるとともに、政策課題に左右され安定的・継続的な運営が妨げられる恐れがあることや、学校図書館等との連携が図りにくくなる可能性がある。
 このため、首長への移管に当たっては、図書館協議会や文化振興に関する審議会等にチェック機能を付与するとともに、条例の制定等重要な意思決定を行う際には、首長が教育委員会から十分に意見聴取を行うなど、図書館運営における政治的中立性や教育との連携等を確保する必要がある。


4公民館について
 公民館を首長が所管できることとなると、「公民館の設置及び管理に関すること」(社会教育法第5条第3号)を所管する市区町村教育委員会の在り方に大きな影響を与える可能性があるため、特に市区町村教育委員会の意見も十分に聴いた上で慎重に検討することが不可欠であると考える。
 なお、公民館が首長の所管となると、まちづくり行政、観光行政等の展開により地域経済の活性化や地域課題の解決に取り組む首長部局内の関係各部署との連携が緊密になることにより、施策の複合化が促進され公民館の機能の充実が図られることが期待される。
 その一方で、社会教育施設としての機能及び地域の人材育成に係る教育機能が低下することや、学校その他の教育機関との連携が図りにくくなること、また、政治的中立性の確保に影響を来す可能性があること、社会教育行政が首長部局の他の行政分野の中に埋没し、公民館本来の教育の目的が見失われることなど、市区町村における社会教育行政への影響が懸念される。
 このため、首長への移管に当たっては、専門性の維持のため社会教育主事の有資格者の配置を進めることや、公民館運営審議会を設置してチェック機能を付与すること、また、条例の制定等重要な意思決定を行う際には首長が教育委員会から十分に意見聴取を行うことや、地域課題に応じた公民館の在り方を協議するなど、首長が定期的に教育委員会の有する社会教育に関する専門的知見を活用できる仕組みを導入することなど、公民館運営における政治的中立性や教育との連携等を確保する必要がある。

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