学習成果活用部会(第8回) 議事録

1.日時

平成28年1月15日(金曜日)10時30分~12時30分

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.議題

  1. 有識者からの意見発表
  2. 審議経過報告骨子素案について
  3. その他

4.議事録

【菊川部会長】
 ただいまから第8回中央教育審議会生涯学習分科会学習成果活用部会を開会させていただきます。本日は,検定試験の質の向上のための評価の活用及び審議経過報告骨子素案について審議したいと思います。
 最初に,本日の検定試験の質の向上のための評価の活用において御発表いただきます有識者の方を御紹介いたします。
 日本英語検定協会の木村専務理事です。

【木村理事】
 木村でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【菊川部会長】
 同じく御発表いただきます,女子栄養大学生涯学習センターの佐々木事務部長です。

【佐々木事務部長】
 佐々木でございます。よろしくお願いいたします。

【菊川部会長】
 審議経過報告骨子案において発表いただくため,総務省情報流通行政局情報通信利用促進課の御厩課長からも後で御発表いただく予定となっております。
 まず,議事に入ります前に,人事異動がございましたので,事務局から御紹介いただけますか。

【竹下生涯学習推進課課長補佐】
 1月に事務局の体制が変わりましたので,御紹介させていただきます。
 生涯学習政策局局長,有松育子です。

【有松生涯学習政策局長】
 どうぞよろしくお願いいたします。

【竹下生涯学習推進課課長補佐】
 大臣官房付,河村潤子です。

【河村大臣官房付】
 12月まで生涯学習政策局長をしておりました河村でございます。委員の方々には大変御熱意のある御審議を頂きましたこと,厚くお礼申し上げます。ありがとうございました。

【菊川部会長】
 ありがとうございます。続いて,事務局より配付資料の確認をお願いします。

【竹下生涯学習推進課課長補佐】
 お手元の資料を確認させていただきます。議事次第,座席表,資料1-1が「検定試験の質の向上等に関するこれまでの審議のまとめ」になります。資料1-2は,本日発表いただく日本英語検定協会の発表資料となります。資料1-3が,本日同じく発表いただきます,香川栄養学園からの発表資料となります。資料2-1が,総務省からの発表資料となります。続きまして,資料2-2が,「審議経過骨子案(素案)」となります。資料3が,「今後の審議スケジュール(案)」となります。

【菊川部会長】
 それでは,議事に入ります。まず,検定試験についての審議をし,その後,審議経過報告骨子素案全体について議論を進めていくという構成になっております。
 事務局でこれまでの議論を踏まえた資料1-1を御準備いただいておりますので,事務局より説明をお願いいたします。
 その後,具体的な方策,取組について,先ほど御紹介しました日本英語検定協会専務理事の木村様,それから,女子栄養大学生涯学習センターの佐々木様から,それぞれ15分程度で御発表いただき,お二人の御説明を踏まえつつ,資料1-1を基に意見交換を行いたいと思います。
 それでは,事務局から資料1-1について御説明をお願いいたします。

【岸本生涯学習推進課長】
 資料1-1を御用意いただければと思います。ページをおめくりいただきまして,2ページから御説明させていただきます。
 主な点につきまして簡潔に御説明をさせていただきますが,2ページはまず冒頭,検定試験の意義についてということで,これまでの議論で頂きました皆様からの議論をまとめ,記述しております。2ページの上から8行目から13行目にかけて,「検定試験」という用語について,平成22年の「検定試験の評価ガイドライン(試案)」の中で,このような形で用語を整理しておりますが,このような用語の整理でいいかどうかということも含めて御議論いただければと思っております。
 あと,同じく2ページの29行目からですが,「検定試験の評価について」ということで,検定試験を評価することの意義について書かせていただいております。平成22年のガイドラインにおいては,評価を自己評価と外部評価に分類し,更に外部評価について関係者評価と第三者評価に分類したことを書いております。
 同じ2ページの39行目から40行目にかけて,「各検定事業者は,自己評価・外部評価を実施し,公開することにより,実施する検定試験の質や信頼性を表明することが望まれるのではないか」ということを書いております。
 3ページですが,先ほどの評価の体系のうち,まず自己評価について記載しております。3ページの9行目から,受検者数5,000名以上の検定試験を実施する団体等90団体に対し,平成26年度に実施したアンケートが記載されておりますが,それによると,既に7割の団体において,自己評価シートを活用した評価を実施しているということです。
 それらを踏まえまして,16行目からですが,「自己評価を実施し,利用者や受検者にも分かる形でその結果を公表することが望まれるといえるのではないか」と書かせていただいております。
 ここまでの意義及び自己評価に関する部分については,これまでの御議論を踏まえて,事実関係については言い切りで書いておりますが,それ以外の内容については,「のではないか」ということで,疑問形の形で書かせていただいております。この表現については,これまで御議論いただいた中,余り異論のなかったところですので,特段なければ,この次の段階では,これらについては言い切りの文に変えていく形で修正していきたいと考えています。
 同じく3ページの19行目から外部評価の話をまとめております。この部分については,まだ十分な議論がなされていないため,四角囲みの中にこれまで頂いた御議論をある程度整理させていただき,書かせていただいている形をとっております。
 1点目は,3ページの30行目の部分からです,第三者評価の対象とすべき検定試験,これは対象とならないもの,することが必要なものなどを区分する必要があるのではないかという問題意識かと思います。また,その評価項目の在り方についてはどう考えるかという観点です。
 続きまして,4ページ目の2行目ですが,第三者評価の実施機関の在り方についてどのように考えるか。同じく4行目には,質保証の在り方についてどのように考えるか。また,6行目には,先ほどの評価の体系のうち,現在既に行われているところもある関係者評価についてどのように考えるか。あわせて,自己評価,関係者評価,第三者評価ということで現在,ガイドラインにおいて整理しておりますが,この体系についてどう考えるかという形でまとめさせていただいております。
 続きまして,5ページ目の7行目からですが,こちらは検定試験の社会的な活用についてということで,これまで頂いた御議論をまとめさせていただいております。
 16行目からの部分ですが,活用の促進を図るためにということで,主に検定事業者様に期待する取組について,人材を求める側に期待する取組について,その他,活用の現状についてなどをまとめております。ここには明示して論点を出しておりませんが,例えば,企業あるいは学校の方から検定試験実施団体に求めることもあるかと思います。また,こういったようなことにつきまして,これまで頂いた御議論を整理しておりますので,これから後,御議論いただく際の御参考にしていただければと考えております。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。
 では,具体的な事例ということで,初めに木村専務理事からの御発表をよろしくお願いいたします。

【木村理事】
 本日はこのような場に御招待いただき,誠にありがとうございます。
 私からは主に前半,日本英語検定協会の事業の概要や,また,検定の質の確保についての取組,それからその活用についてお話します。そして後半で,今,岸本課長からお話がありました第三者評価についての我々の考えを述べさせていただければと思います。
 まず,資料1-2の2ページから見ていただければと思います。まず,「英検」と申しますと,恐らく実用英語技能検定という検定は,皆さん御存じかと思うのですが,実は昨今,「英検」以外の事業もいろいろと取り組んでおります。まず,「英検ファミリー」と申しまして,「英検」以外でも「英検IBA」,「英検Jr.」という検定試験を行っております。「英検IBA」というのは,基本的には「英検」の問題をベースにして,いつでもどこでも試験を受けたいという,主に中学校・高校や大学のニーズに応えまして,いつでも受けられるようなテストです。主にプレースメントの目的で受けていただいております。それから,「英検Jr.」というのは,主に児童向けのテストで,リスニング中心の,児童が楽しくチャレンジできるような,ゲーム感覚の育成型のテストです。この「英検ファミリー」で,昨年度,約263万5,000人の受検者がいます。
 また,「TEAP」という試験は,大学入試を想定した4技能型のアカデミック英語能力判定試験で,2014年度より実施しています。主な対象としては大学受験生,高校2年生以上を対象としまして,この試験を受けていただくことで,いろいろな大学に応募するとき,一般入試で英語試験が免除になったりするような試験です。こちらの方も,いろいろな大学で採用が進んでおり,志願者数も2014年度で1万人になってきております。
 続きまして,「IELTS」ですが,こちらも留学の世界では,今,世界のデファクトスタンダードになっているテストです。海外では約200万人が試験を受けており,主な大学や教育団体で留学の際に受けるテストとしては世界標準となっています。5年前から日本英語検定協会が日本でのテストの実施,運用をやらせていただいております。こちらの方も志願者数が非常に伸びており,私どもが始めたときから受検者数が四,五倍ぐらいになり,昨年度は約3万1,000人の受検者がおりました。
 次に,「BULATS」というビジネス英語検定がありまして,こちらの検定は4技能を個別に測るような試験で,主に企業の方々に受けていただいているテストです。主に大手商社のような,実践的な英語を学ぶ必要がある企業での採用が進んでおり,現在約1万1,000人の志願者がいるテストになっております。
 このようにテストが多くなっていく中で,いろいろなポートフォリオが増えています。ただ一方で,それぞれの尺度が分かりにくいという部分もありますので,「CSE」という1つのスコアスケールを作成し,このスコアスケールに全てのテストがひも付く形で英語能力を見られるような取組を行ってきております。
 こういった取組を行う中で,例えば,大学入試等で利用する際,このテストでは何点,このテストでは何点と非常に分かりにくいということがありましたが,「CSE」を活用することで,一つの尺度で,全てのテストが換算すると何点になるということがより分かりやすくなるというメリットも出てきております。
 また,我々の検定試験の中では,昨今,スコア化とともに全てのテストの「4技能化」をより進めておりまして,「英検」は1級,準1級で今までライティングがありましたが,平成28年度から2級に関してもライティングを導入します。将来的には準2級,その下の級も含めてライティングの導入を検討しているところです。また,スピーキングに関しては,3級まであったのですが,平成28年度から4,5級に関してもスピーキングを導入する予定になっております。今,日本の英語教育に4技能が求められるようになってきておりますので,そういったものへの対応も進めているという状況です。
 続きまして,検定試験の質の確保について簡単に御説明します。まず,実用英語技能検定では,いろいろな品質管理の仕組みを整えております。まずは学習指導要領,検定教科書の内容への配慮,制作過程において複数のチェックを入れる,外部の有識者を入れて必ず内容のチェックを行う,IRT等々の数値結果を利用して,いろいろな結果の分析を行う,また,合否判定に関しても専門家の集団で妥当性の検証を行うというような動きをしております。
 「TEAP」では,試験自体の設計を中心に,まずは「CEFR」を中心としたテストを設計しておりましたので,世界的にもテストで著名な団体である英国の研究所と共同で,いろいろなテストに関する開発を受けるアドバイザーになっていただきながら,いろいろな分析,そして,テスト自体のレポーティングを行っております。
 また,制作過程においても,先ほどの「英検」と同様のいろいろなチェック,それから外部のチェックを,有識者を集めて行っております。
 次に,実施面の取組です。
 我々は先ほどお話がありました自己評価に取り組んでおり,その中でいろいろな改善に取り組んでおります。
 また,いろいろな受検機会の拡張にも対応しておりますし,もう一つの特徴として,障害者の方の受検にも対応しております。恐らく検定試験の中でも障害者に対応した取組に関しては,日本でもかなり進んでいるのではないかと考えております。
 また,セキュリティーの担保についての取組,面接試験の質担保のための,いろいろな規定の整備・トレーニング,それから,統一的な対応のためのマニュアル整備等,様々な取組を進めております。
 続きまして,検定試験自体の外部活用について御説明します。10ページに,「英検」がどのように活用されているかを示しております。
 まずは入試です。「英検」の資格取得者を優遇する,例えば,加点,英語の試験の免除など,各大学・高校によって取組はまちまちですが,いろいろな形で優遇が進んでおります。
 それから,英語科目の単位認定ということで,「英検」を取ることで単位が取得できる学校もあります。
 国家公務員の採用試験での点数加算,国家試験である通訳案内士試験の試験免除,また留学時の英語力証明として,主に北米の大学やオーストラリアの高校で採用されています。
 また,高等学校卒業程度認定試験の英語試験免除,英語教員の採用時の優遇措置など様々なものがあります。
 また,「英検」以外のものでは,「TEAP」について,上智大学,青山学院大学,東京理科大学など26大学での一般入試において,一つの外部試験のみを出願基準とするTEAP利用型入試がスタートしております。
 また,「IELTS」に関しても,スーパーグローバル大学創成支援や,経済社会をけん引するグローバル人材育成推進事業に採択された大学の約9割が,各種入試に「IELTS」を利用しております。
 また,海外留学でも,先ほどお話しさせていただきましたが,オーストラリアの約800の中学校・高校で英語力を示す資格として,また,アメリカやカナダの大学でも活用されております。
 続きまして,第三者評価についての我々の考えを,お話しさせていただこうと思います。
 まず,自己評価についてです。自己評価というのは,いろいろな新たな気付きを促すなどの観点から必要だと我々は考えております。もちろん,自らいろいろなことを良いことだと思ってやってきていますが,なかなか客観的な評価というのは指標がないと分かりません。その意味で,実際自己評価をやって良い評価を得られると,自分たちのやってきたことは,こういったところでは間違っていなかったという自信にもつながりますし,また,自分たちが思っていなかった観点で,「こういう指摘もあるのか」というのが評価の中で見えますと,そこで新たな気付きが生まれると思います。我々は自己評価をやってきて本当に良かったと思いますし,自己評価自体はすごくいい仕組みだと考えております。
 続きまして,関係者評価ですが,少し難しいところはあると個人的には考えております。例えば,受検者から見たときに,仲間うちで評価していることがどのようなイメージでとられるのか。透明性は確保されているのかという疑問に応えるのは,難しいと思います。また,自己評価であれば,このような取組をやっていますということで終わりますが,実際に関係者評価をやるとすれば,外部の方にきちんとやっていることを説明するのは難しいと思います。例えば,昨年,第三者評価の試行をしましたが,外部の方に証明しようと思うと,きちんとした証明書を出すとか,いろいろな情報を出さないと,なかなか説明がし切れなくなってきます。そういった労力というのは,やはり関係者評価とはいえ,きちんとやっていかないと,多分難しいと思います。しかし,そこまで労力を掛けたときに果たして受検者の方が,質が保証されていると見てくれるのかという部分で,個人的にどうなのかということです。
 次に,第三者評価ですが,受検者の皆様に,社会的に安心して受検できる信頼性の高い検定試験と認めていただくためには,必要不可欠なものではないかと感じております。実際,弊協会も昨年度試行審査を受けてみましたが,外部の方に御理解いただけるように,先ほどお話ししましたように,いろいろ苦労もありましたが,その中できちんと評価をしていただくと,我々もやって良かったと感じました。また,こういう部分はなかなか伝わらなかったというか,もっと内部資料を整理しなければいけないというような,新しい気付きもありましたので,そういう意味では,第三者評価というのは非常にいい仕組みなのではないかと考えております。もしこういった第三者評価が世の中に出てきて,正式に実行されるようなことがあれば,是非ともやってみたいと考えております。
 次に,自己評価と第三者評価については,まずは皆さんで自己評価をやられて,その中でもし次の段階ということであれば,第三者評価を受けるというのがいいと思います。そういう意味では,幅広く自己評価をやっていただくのがいいと感じております。
 それから,第三者評価を実施すべき検定試験はどういうものがいいかということですが,広く外部でいろいろな活用をされるものというのは,外部の目に触れて,きちんとした質の担保をしているということを受検者側から分かるようにすべきではないかと思います。そういう試験に関しては,第三者評価の対象としていった方がいいと考えております。
 あと,評価項目については,昨年度,全国検定振興機構が実施された第三者評価の試行の評価項目は非常によく練られていて,内容的にはすごく厳しいものもありますが,良い内容なので,そういったものをベースに考えていくといいと思っております。文部科学省の有識者会議で策定された「検定試験の評価ガイドライン」をベースに作成しているとお聞きしておりますので,非常に多面的で内容も豊富になっておりましたので,それを参考にしていけばいいと考えております。
 第三者評価の実施機関については,内容的な特性を考えると,個人的には,営利団体ではなくて非営利団体で実行されていった方が,受検者からの信頼は担保できるのではないかと思います。また,もし第三者評価機関が乱立していった状況があったときに,我々検定団体や受検者の方々が一体どれを選んでいいのか,どの評価機関にお願いしていいのか,分からなくなると思います。そうすると,第三者評価機関を評価するための第三者評価機関が必要になってくるということで,本末転倒になってくると思います。そういった団体が乱立するようなことはやめた方がいいと,個人的には考えております
 それから,第三者評価機関の質の保証という意味で言うと,これは最も大事で,検定試験団体の質を保証する第三者評価の質を保証するのは当然です。ただ,誰がその機関を評価,認証,保証するのかというのは,非常に大きく難しい問題だと思っています。これについても個人的な印象ですが,第三者評価機関に何らかの国のお墨付きやクレジットがあった方が,恐らく受検者の方々は安心できるというのが,今までの私の経験から感じております。例えば,全く等品質の団体があったとして,一方に国のお墨付きがあり,もう一方になかったとして,ない方が品質を担保できていると考える方というのは多分いらっしゃらない。何かしらの国の認証や認定があった方が,受検者の皆様は安心して,また,社会的な信頼性,客観性が担保できるのではないかと考えております。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。
 続きまして,佐々木事務部長からよろしくお願いいたします。

【佐々木事務部長】
 ただいま御紹介にあずかりました佐々木でございます。
 私どもは,今御発表がありました,日本最大の検定実施団体である日本英語検定協会とは違いまして,すごく小さな団体です。検定の受検者は年間約3,600人です。今,資料を拝見しますと,90団体では5,000人以上の年間受検者がいるようですが,私どもは,もっとその下,100団体から200団体目ぐらいの順位の小さな検定を実施しているところです。この検定だけで実は職員の給料が出ているわけではない,小さな検定ですから,そういう検定の責任者をしている者の考え方として,少しお時間を頂ければと思います。
 私ども学校法人香川栄養学園というのは,女子栄養大学と女子栄養大学短期大学部,それから,香川調理製菓専門学校という三つの学校を運営しておりまして,これが運営母体になっております。その下に付随事業として,女子栄養大学の生涯学習センターがありまして,文部科学省認定の社会通信教育を生涯学習課で行っており,文部科学省後援の家庭料理技能検定を家庭料理技能検定課で実施しています。そのほかに,収益事業で,女子栄養大学出版部を持っておりまして,総発行点数1,000点以上,毎月『栄養と料理』という雑誌も発行しており,こちらの方にもかなり力を割いて,日本全国に栄養学を普及している団体です。
 家庭料理技能検定は,健全な食生活を支える家庭料理に係る技能の普及を図り,その振興を期するとともに,健康と食生活の向上,食育の推進を目的としております。
 1963年ですから60年以上前ですが,女子栄養大学調理技術検定を開始しました。1987年に,文部省認定家庭料理技能検定となり,日本技能検定協会連合会へ1988年に加入し,2006年に文部科学省後援となり,2009年には全国検定振興機構正会員となりました。そして,今年第30回を迎え,年に1回試験を行っている小さな検定です。
 現在は,4級,3級,2級,1級とやっており,これを筆記試験,実技試験同日に実施しております。同日に筆記試験,実技試験を全て行っています。全国約80会場,受検者総数は3,600名程度です。
 受検者は右肩上がりで増えており,特に3級と2級の受検者が徐々に増えているという状況です。
 私どもは小さな検定ではありますが,質の確保ということで,毎年検定試験の自己評価は実施しており,評価結果をホームページで公表しております。小さな検定であっても,しっかりやっておかなければいけないということで,自己評価を行っております。実施主体が学校法人であるため,財務状況なども積極的に情報公開しております。一昨年,第三者評価の試行調査を受けまして,指摘事項も受けました。それについては今,改善を図っています。このようにして質を確保しているということです。
 実技試験の評価判定については,実技試験の評価判定を第三者評価に入れるべきかどうかという議論もあるようですが,私どもとしては,実技試験の評価判定について,試験の2か月前に会場責任者,試験監督者を対象として,当年度の実技試験の判定の基準説明会を実施しております。基準説明会では,「実技試験問題評価判定の基準」という,写真等で基準を示したものを配付しまして,実技試験の判定基準の確認を,試験監督同士で行っています。包丁技術である「切る」,「むく」,「魚や肉をおろす」などは,基準に沿った見た目で判定をします。調味の評価につきましては,調味パーセントを守って調理をすれば同じ味が出せるという考え方があります。これは創設者の香川綾がそういう考え方を出して公表しておりますので,それを判定基準にしております。
 自己評価や関係者評価,第三者評価について,私の個人的な考え方を述べさせていただきたいと思います。自己評価につきましては,私どものような小さな団体ですと,実は非常に労力を掛けてしまいますので,毎年行う必要性は感じておりません。しかし,隔年に一度は,検定が的確に実施されているかどうかを確認するためにも,自己点検,自己評価は行うべきであると考えております。小さな改善はもちろん一回一回,検定があれば反省し,改善していくのは当然ですが,きちんとした自己点検,自己評価をもし行うとしたら,隔年に一度ぐらいでいいのではないかということです。
 関係者評価は必要性を感じておりません。理由は,類似する検定事業者はそもそも実施主体が違っていることです。検定試験の実施目的や内容,規模,考え方は様々です。評価が適切に行われない可能性がありますし,先ほど日本英語検定協会の御発表にもありましたが,一方では,なれ合い評価になる可能性もあると思っております。
 第三者評価については,実施主体にメリットがあれば受けるのではないかと思います。ただ,第三者評価を受けることにより,検定の実施主体にとっては緊張感を持って業務に取り組むことができます。もちろん,私どももそうです。自己評価では気が付かないことについて第三者からの指摘を受けることで,質の向上や改善につなげることができるので,積極的ではないが,否定するものではないと思います。なぜ積極的ではないかというのは,後ほどお話ししたいと思います。ただし,消費者である受検生の保護の観点から言えば,第三者評価は必要であると思われます。いいかげんな検定をやっているところもあると聞いていますので,そういった意味では,第三者評価をやる必要はあると考えられます。
 検定試験は,各実施主体が独自の審査基準を作り,問題を作成し,判定を行っております。第三者評価が必要であるかどうかは,その検定試験がどのような場面で活用されるかによって判断されるのではないかと思っています。民間検定試験が大学入試等で活用できないかという議論がありますが,大学入試,学校での単位認定,民間企業や公務員採用試験等で広く活用される検定であれば,第三者評価を実施すべきであると思われます。また,第三者評価を受けた検定は広く活用されるべきであると実施主体からだけではなくて国からも広報されるのであれば,対象となりたい検定は積極的に第三者評価を受けることになると思われます。第三者評価が単に検定の質の向上,信頼性の確保,透明性確保等のみを目的に実施されるのであれば,少人数の職員で検定を実施する実施主体にとっては,積極的に受けたいと考えないのではないか。私どもが一昨年,第三者評価の試行調査を受けたときもそうでしたが,第三者評価は準備にマンパワーを要します。ですから,そこまでの労力をかけても受けたいと思われるような第三者評価であってほしいと思います。
 第三者評価の評価項目についてです。私ども家庭料理技能検定は,一昨年,全国検定振興機構による第三者評価の試行調査を受けました。調査内容は,実施主体,実施内容,実施手段,検定結果の活用促進,継続的な学習支援,情報公開にとどまっております。この評価項目について,問題の内容及び実技試験の実施内容を含めるべきであるかどうかというものが,今,論じられていると思います。問題の内容とか実技試験の実施内容,判定基準について,評価項目に加えたとしても,判定者がそれを評価する知識や能力を相当持ち合わせていなければできるものではないと考えています。なお,大学や短期大学が現在行っている第三者評価においても,大学が実施する推薦入試や一般入試の試験内容や問題の質,レベルまでは踏み込んでおりません。問題の内容及び実技試験の実施内容,判定基準まで評価項目に入れることは民間検定では必要ないと思われますが,もしこれらを判定基準に入れるのであれば,第三者評価を受けた検定を準国家資格くらいに格上げするなどという検定側のメリットがあれば,各団体が積極的に実技試験等の評価を受け入れるのではないかと考えております。
 第三者評価の実施機関についてです。第三者評価を受けるというのは,検定の実施主体の財務内容も含めて,全て実施機関に公開するということです。ですから,機密性,信頼性が求められます。本学園は,既に大学や短期大学で第三者評価を二度も受けております。学園の具体的内容を公開するということについては,抵抗は全くありません。しかし,実施主体によっては,それを好ましく思わないところもあるように思われます。そういった意味では,実施機関について,例えば,文部科学省がお墨付きを与えた,質の保証がなされた団体であることが好ましいと思われます。また,評価を受ける団体数が数少ないであろうことから,評価を行う実施機関を複数存在させる必要はないと思われます。
 検定試験の活用事例についてです。私どもは規模の小さな検定ですが,実は女子栄養大学では積極的に活用しております。女子栄養大学の入試や短期大学部のAO入試,推薦入試で,書類審査点の加点対象としております。高校時代の評定にプラスアルファで点が付与されまして,評定を押し上げる仕組みです。高等学校時代の授業以外の取組を評価しております。
 本学では,栄養士養成,管理栄養士養成を行っておりますけれども,座学だけではなく,実際に調理や料理ができる技術力も養成しておりまして,既にこれらの力を兼ね備えている目安として,家庭料理技能検定4級の合格者を加点対象にしています。実際,こういう方々が入学されてこられますと,他の学生の模範となって,調理実習等でリーダーシップを発揮してくれています。
 また,本学の調理実習助手などの採用条件では,家庭料理技能検定1級取得が義務付けられております。調理技術の高い助手が,授業で教員のサポートに回る役目を果たしています。
 検定試験の今後の活用についてです。女子栄養大学での導入事例を現在は家政系の大学,栄養系の学部学科を持つ大学へ示し,家庭料理技能検定の活用をお願いしているところです。また,現在,福島県の相馬地区食品衛生協会と協力し,ホームヘルパーに家庭料理技能検定4級若しくは3級を取得させることも始めており,ホームヘルパーの質の向上,これに家庭料理技能検定を役立てる,そういう活用方法も始めました。さらに,家庭科教諭を目指す被服系の学部学科の学生に,家庭科教諭として料理技術の習得が必要であることを説いて,大学で検定の導入を図る努力もしております。
 今後,家庭料理技能検定の活用を促進するためには,活用事例を数多く作っていく必要があると思っております。家庭料理技能検定がメジャーにならない限り,検定の活用事例の増加は見込めません。検定試験自体の信頼を得ることはもちろんですが,同時にこの検定がどのような場面で活用されているのか,また,活用される可能性があるのかを数多く示すことで,受検者予備軍が興味を示して,受検者が増えていくように思われます。
 次に女子栄養大学での検定試験等の活用事例についてです。女子栄養大学では,AO入試,公募推薦入試で数種類の加点対象の資格があります。また,資格とは言えませんが,高校在籍中の皆勤も加点対象に入れております。それから,英検の準2級以上や,大学では全国高等学校家庭科教育振興会が行っている食物調理技術検定1級を加点対象にしております。短大では,それの2級以上,調理師免許,高校3年間にスポーツとか文化活動を頑張った人,こういう方々を推薦入試やAO入試では優遇しております。
 最後に,私ども香川栄養学園が家庭料理技能検定に取り組む姿勢です。もちろんこれは大学でも同じような考え方でやっております。香川栄養学園は,家庭料理技能検定の普及を通じて,健康と食生活の向上,食育の推進を図っており,私たちは社会から検定取得者が高い評価を得るために努力を重ねております。本学園では,自己点検,自己評価を第一者評価と捉えておりまして,消費者である受検者の評価,これを第二者評価と言っております。そして,今話題になっております第三者評価は,客観的に外にいる人,ステークホルダーでない人の評価です。今,これが議論されているわけですが,私どもが今一番大事にしているのが,第四者評価,社会的評価です。検定の取得者が社会的に信頼を得て評価されるために,コンプライアンスを遵守して,自己点検,自己評価を重ねて,検定の改革や改善を図り,質を高めていく必要があると考えておりまして,そのように努力をしております。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。
 では,お二人とも引き続き議論に加わっていただくということですので,発表いただいた事例,それから,特に資料1の括弧書きのところ等を議論させていただきたいと思います。
 どうぞ,高見委員さん。

【高見委員】
 株式会社イトクロ取締役管理本部長の高見と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 佐々木部長に少し御質問ですが,今,栄養系の話をよく存じ上げなかったので,少し調べていて,栄養士法という法律があるようですが,管理栄養士・栄養士と,この検定との位置付けを少し教えていただいてもよろしいですか。

【佐々木事務部長】
 資格と検定は,基本的には関係性はないです。検定は検定で独立しているもので,管理栄養士・栄養士というのは,国で定められた法律に基づいてその資格があり,これは国家資格です。家庭料理技能検定というのは飽くまでも民間検定試験です。
 ただ,私どもの方では大学で管理栄養士,栄養士養成をしておりますが,実は調理技術に力を入れている学校は非常に少ないです。ですから,管理栄養士として,例えば,栄養学の知識があったとしても,実際,包丁さばきができないという方も非常に多いと言われております。例えば,現場に栄養学の臨地実習に行ったときに,「栄養士さん,作ってみてください」と調理担当者が言ったら,実は料理が作れないという人たちが多い。そういうことのないように,この家庭料理技能検定で測っている調理技術というものを管理栄養士・栄養士に身に付けてもらうために,いろいろな大学の方にも栄養士,管理栄養士養成プラス家庭料理技能検定を利用してくださいとお願いしているところです。

【菊川部会長】
 ほか,いかがでございましょうか。
 どうぞ,萩原委員。

【萩原委員】
 資料1-1の,4ページに記載されている関係者評価の文言ですが,今,二つの団体からお話があったように,実際に,関係者評価を実施していくことは非常に難しいだろうと思います。検定事業者が,個々に類似した検定を探してマッチングさせていくことと,やはり,お互いに厳しく評価することはやはり難しいかと思います。現実的ではないと思います。
 また,評価の取組のプロセスとして,まず,自己評価から始めて,その後に関係者評価をして,ある程度,成熟したら外部評価という過程かと思います。そのプロセスの一つの段階として関係者評価は必要であったかもしれません。ただ,現時点では,自己評価を実施している事業者も増えており,自己評価すべきであるという事業者が多数を占めており,成熟してきています。ですから,関係者評価を経ずに,自己評価が一定の基準できちんと評価されているか否かという外部評価に,直結した方が分かりやすいと思います。
 また,第三者評価の実施機関についてです。現在,本当に様々な検定が存在しています。専門的な検定,汎用性のある検定,歴史の浅い検定,規模の小さい検定や大きい検定と様々です。そのような状況の中で,第三者評価の実施機関に期待したいのは,審査をする機能に加えて,検定事業者を育てていくという観点があるといいと思っています。それは,相談機能や助言機能等のプラスアルファがあるということです。このような機能があると,第三者評価を受けてもいい,受けてみたいという検定事業者が増えていくと思います。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。
 藤田委員,どうぞ。

【藤田委員】
 今回は評価の話と,それから,活用の話かと思いますが,活用のことでお話をさせていただきたいと思います。今,「英検」のお話がありましたが,やはり活用ということを考えていきますと,シニア世代がどのように活用していくかが重要です。シニア世代が「英検」に挑戦していくという姿に関連しますが,本学でも公開講座プログラムの中で「英検」を目指す講座というのは開催しております。しかし,問題はその後です。活用がどのような形で展開していくのかということでは,若い世代であれば,就活とか入試のためとか,いろいろな形の活用法というのもあります。また,別の資格のために,というところもあります。70代,80代の方も,とても熱いエネルギーを持って合格を目指していきます。しかし,その後の活用方法が,いろいろな形で視覚的に捉えられるように示していただければ,私たちもプログラムが作りやすくなると思います。というのは,語学の習得だけを目指していくより,文化を学ぶためや,70代でも就活のための資格という形で目指す方もいらっしゃいます。そのような活用の事例を出していくことがとても大切になるのではないかと考えております。シニア層がどういう形で「英検」を取得した後に活用していらっしゃるのか,もし情報があれば,少し提供していただきたいと思います。
 もう一点,香川栄養学園が主催されている資格の方ですが,食育ということを出されておりまして,私は食育も専門にしているので少し伺いたいと思います。今,食育の裾野を広げていくために取り組んでいるところです。その中で,通信教育からいろいろな考えが出てきて,この検定につながったと察しております。その上で,食育アドバイザーとか,コーディネーター,食育推進員という方たちがいらっしゃいます。その方たちがこの検定を活用していくとなれば,質の保証という観点で活用していけるのではないかと思います。そのような形が視野に入っていらっしゃるのかどうかというところと,全国高等学校家庭科教育振興会が主催している検定とのすみ分けをされているのかどうかも,今後活用を広げていくという面でポイントになっていくのではないかなと思いますので,お伺いしたいのです。実際,高校で高等学校家庭科教育振興会の検定を随分授業の中で取り入れていらっしゃると思います。ですから,その上に今,香川栄養学園の検定をどのように広げていくのか,お考えもお伺いできたらと思います。

【菊川部会長】
 木村理事からお願いいたします。

【木村理事】
 「英検」はもう五十数年の歴史がありまして,既に延べ1億人近い受検者の方に受検いただいております。本来であれば,1億人のネットワークというものがあったら,例えば,来る2020年の東京オリンピック等でいろいろなボランティア組織をネットワーク化できるのではないと思いますが,残念ながら,私どもは,受検した後の状況把握は完璧にはできておりません。総体として今,どういう状況だということに関しては,お答えすることができません。
 個別にいろいろな話を時折聞く,というレベルでお答えしますと,シニア世代の方は,「英検」を受けること自体を一つの生きがい,目標にされている方がいます。例えば,「英検」の1級に合格されているのにずっと受け続けられている方は,御自身の能力を測るとより,それを生きがい,目標にされている方もいらっしゃいます。また,地元やそのほかの地域で,ボランティア活動の中で活用されているというような事例もお聞きします。
 ただ,先ほど申し上げたとおり,残念ながら,総体として皆様の個々の合格後の動きが捉えられていないというのが,ある意味,我々の弱点です。ネットワーク,プラットフォームのようなものを私どもは持っておりませんので,もしかしたらそういった1億人のネットワークみたいなものができていったときに,恐らく何か世の中の役に立てるような動きができるのではないかと,先ほどお話をお聞きしながら思いました。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。
 では,佐々木事務部長,お願いします。

【佐々木事務部長】
 私は昨年の3月まで女子栄養大学の入試の責任者をしておりまして,4月から検定部門の方に異動してきました。この検定の目的をよく見ますと,食育の普及というのがあります。これについて,改革をしなければいけないということで,実は今,文部科学省にも御相談しており,第31回から検定の改革を行う予定です。それはどういうことかといいますと,今の検定は,パンフレットを御覧いただくと分かると思いますが,4級,3級,2級,1級に必ず実技試験が付いてきます。しかも受検料が非常に高い。例えば,4級は9,000円,3級は1万2,000円で,普及の足かせになってしまいます。
 これを何とかしたい,香川栄養学園が考える食育というものをもっと全国に普及したい,その思いがあり,5級の新設や,5級と4級から実技試験を抜いて,受検料も2,000円や3,000円にして,また団体で受けていただく場合には1,600円や2,500円に受検料を抑えるようにしく予定です。そのような取組を通じて,皆様に食事についてしっかり考えていただき,また検定を,栄養教諭や学校栄養職員の方々に受検していただき,子供たちへの食育の普及のための一つの材料にしていただけるように変えていきたいと考えており,細かな作業をしているところです。今御指摘いただいたところは,まさしく私どもでも課題としているところで,今後2年で改革の準備をしているところです。
 もう一つの質問で,全国高等学校家庭科教育振興会の検定と,食物調理技術検定とのすみ分けですが,検定内容そのものが,若干似てはおりますが,前者は高等学校の在籍者の方々を対象にしているものです。私どもは,小学生からシニアの方まで幅広く対象にしており,内容そのものも変わっております。高校生にとっては,食物調理技術検定が受検料も安く,全国校長会が主催されているとのことで,高校の先生方が取り入れていらっしゃるという認識はしております。

【菊川部会長】
 続いて宮井委員,益川委員,西辻委員の順番でお願いいたします。

【宮井委員】
 第三者評価についてですが,第三者評価機関による質保証,関係者評価,自己評価の三つの段階があり,私どもも検定試験の実施団体で,自己評価を行っております。自己評価は自分たちの実施している検定を客観的に見ようとする機会で,大変良いことだと思っております。第三者機関による評価も,社会的に見たときに,当協会の検定を実施していることについて客観的な評価を頂くということで重要だと思っておりますし,ちょうど今,全国検定振興機構の調査研究に御協力させていただいて,当協会の検定を試行で評価いただく準備をしております。そんなことから,自分たちの自己評価と,第三者が見ている視点の違いが浮かんできており,第三者評価はやはりやるべきと実感しています。まだ途中過程なので,結果が出ておりませんが,今の段階でも,やはりやるべきではないかと思っています。
 もう一つの関係者評価についてですが,日本英語検定協会も香川栄養学園も御発表されていたように,難しいところがあると思います。私も,ずっとそのような意見を持っておりました。もし関係者評価を生かせる場面があるとすると,一つ考えられるのが,第三者評価機関ですと,検定試験の実施団体自体のこと,例えば,実施内容,実施手段や実施主体の組織としての評価をすることが中心になって,全体的な保証をすることになります。例えば,実技の内容,その審査をどうやっているかというところまで,専門的に踏み込んでいくと,なかなか第三者評価機関では見ることができないのではないかと思います。その点,関係者評価となると,例えば,当協会の場合はコンピューターグラフィックスの検定ですが,同じような試験を行っているところであれば,内容についてはよく御存じなので,それぞれの試験実施方法があるけれども,試験の中身,評価基準や審査方法は,相互に評価し合うこともできる。そこの範囲であれば,団体としてのいろいろな情報を関係者に提示する必要がなくなりますので,そういう役割を分けるという考えが浮かびました。現実にそれが実行できるかどうかというのは,いろいろ検討しなくてはいけないと思いますが,内容については関係者間で,検定実施団体としての評価は第三者評価機関と分ける方法もあると思いました。

【菊川部会長】
 続いて,益川委員。

【益川委員】
 私も宮井委員に続いて,ただ少し違う視点のアイデアを出そうと思います。いろいろなお話を伺って,評価というラベルが付いた途端にいろいろな制約が付いてしまうので,今回の目的は検定試験の質の向上なので,評価と呼ぶ範囲は限定してしまってもいいのではと思いました。具体的には,組織の運営等に関しては,実施団体の規模にもよりますが,ある程度自己評価に加えて第三者評価のようなものが必要かもしれません。しかし,今議論になっている関係者評価は,評価という名前を付けるのではなくて,例えば,今後生涯学習プラットフォーム等が出ていくので,中身についてお互いの強みを出し合って比較するなど,情報交換ができる場を作っていくことで,ボトムアップ的に質の向上を支えていくという形でやっていく形もあり得るのではないでしょうか。最終的には,そこで学習者がプラットフォームに載せている成果や,いろいろな学習者同士のコミュニティ作りにもつながっていくと思いました。

【菊川部会長】
 続いて西辻委員,お願いします。

【西辻委員】
 今,宮井委員と益川委員の御意見と重なる部分もあると思いますが,検定試験の活用の促進ということを考えたときに,やはり問題の内容や質は,避けて通れないと思います。そこを評価しないでもいいのではないか,というようなニュアンスを,御発表から感じましたが,やはりそこはしっかりと評価していかないといけないのではないかと思います。それが,今回のこの議論の大きなポイントではないかと思いました。
 関係者評価はかなり難しい,という御意見がありましたが,自己評価と外部評価という大きな分け方をして,外部評価を第三者で,専門的な知識を持った方も入れて行い,その際の視点を大きく二つに分け,一つを問題内容の評価,もう一つを質の評価というところを明確に打ち出すことも必要ではないかと思います。「英検」の場合だと,既に学習指導要領なども踏まえているし,CEFRとの関連性も当然考えられていることもあり,各大学や高等学校で「英検」を単位認定していく動きにつながっているのだろうと思います。単位認定は,高等学校ですと,学校外の学習という位置付けでプラスアルファの単位とされている学校が多いと思いますが,もっと自主的,主体的な生徒の学びということを考えたときに,単位制高校であれば,「英検」の合格を一定の科目の単位認定とすることも考えられると思います。それを卒業要件にも入れていく。大学の方が取組は少し進んでいるかと思いますが,就職とか,プラットフォームを利用した人材のマッチングなどを考えるときにも,この検定だとこれだけのことができるんだということがはっきり出てこないといけないと思います。ですから,これだけのことができるということがうまく証明されていくというか,評価という言葉を使うのが難しいというのもあるとするならば,こういうことができるということを証明するという動きも考えてもいいのではないかと思います。平成22年の「ガイドライン」で評価を三つに分類していますが,大きく自己評価,外部評価というような形でいったん整理し,更に外部評価の中を整理していくのかということも考えてもいいのではないかと思いました。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。
 では,高見委員,柴山委員,お願いします。

【高見委員】
 皆さんの御意見を聞いておりますと,第三者評価は行いたい,クレジットがあった方が検定実施団体にもメリットがある,ただ,非常に第三者評価は難しいし,誰がやるか,どうやるかが難しいということかと思います。ジャストアイデアでしかないですが,J-SOXのような仕組みがあるといいと思いました。非常に専門的な技能を要するものなので外部の方が評価するのが難しいということであれば,自己点検,自己評価というものの質を高めていく。それを,網羅性が高いものにしていくという努力は可能だと思います。例えば,昨年のアンケートで言うと,90団体のうち7割の方々が自己評価をしておられるというような御回答があったということは,自己評価シートを全部集めるだけでも60団体分ぐらい集まってきて,そこの中で項目出しをしてある程度固まりを作って,それがMUST条件なのかWANT条件なのかというような評価の仕組みを作ることができると思います。私たちの会社は事業会社ですので,毎年J-SOXという形で,自己チェックシートを作ってチェックをするということはずっとしております。それに代わるようなものをこういう団体にも取り入れるということをしておけば,自己評価がある程度信頼できるものになり,そこに対してクレジットを付けていくということが可能なのではないかなと思います。その評価が適切かどうかというところを,独りよがりではなく,受講者の方にとってもそれが適切であるということの評価はある程度はしていけると思いました。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。
 では,柴山委員お願いします。

【柴山委員】
 本日お話をお聞きして思ったのは,教育学から言うと,パフォーマンスアセスメントをされていると感じました。パフォーマンスアセスメントで問題になるのは二点あります。一つがコスト,もう一つが評価者の適格性,あるいは認証評価機関の適格性です。後者の適格性の方については,これは結局,最終的には誰が質を担保するかという話になります。恐らくこれは,国民は今まで文部科学省に対して信頼を持ってきていますから,そこのいわば最後のとりでというのは文部科学省にお任せして,認証評価の評価者の方の資格を担保すればいいのではないかというのが大きなところでの意見です。
 それからもう一つ,コストの問題ですが,企業として見たときにすごく大変なところだと思います。それで,先ほどの佐々木事務部長の御意見に近くなりますが,審査基準とか,「英検」の試験内容の方の審査基準等は,言い替えれば,こういうスキルを持った人間を検定できちんと見ているか否かという話になるかと思います。したがいまして,余り細かいところを分析的に見るよりも,先ほど第四者評価というのが言葉で表現されておりますように,この検定を受けた人が,本当にそれができているのかどうかという,それだけを見て,評価に必要なコストはなるべく下げる方向で考えていったらいいと思います。

【菊川部会長】
 ありがとうございます。
 私からも一点ですが,実は2ページの8行目のところの二つ目の丸の,「検定試験の定義」ですが,ここでは,「社会一般で通称的に使用されている『検定』や『資格』,『認定試験』などの用語も含め,広く学習成果を測定する,いわば物差しとしての役割を果たしているものを包括的に『検定試験』という」という,平成22年のガイドラインの定義ですが,これをそのまま引き継ぐかどうかについては,議論した方がよいのではと思います。平成22年と,今我々が立っている時点は少し違ってきているのではないかと思いますので,ここで使う検定試験というのをもう少し狭く定義した方が正確になるのではないかという点について,皆様の御意見を今後伺いたいと思っているところです。

【木村理事】
 いろいろ貴重な御意見を伺いまして,本当に勉強になりました。先ほどのパフォーマンステストで,コストとか,適格かどうかというところが重要になるというのは,私もそういう視点がなかったものですから,本日参加させていただいて,非常に勉強になったと考えております。
 問題の質については,もし可能であれば問題の質に関しての評価というのも,やることはいいのではないかと個人的には考えております。ただ,一方で,それをどうやってやるかといったときに,例えば,いろいろな試験がございまして,より実技に近くて,より専門性が高いようなものについて,果たしてどうやって問題の質をジャッジしていくのかというのは,なかなか難しい部分もあると思っております。しかし,もし可能であるならば,質の評価というのも入れていった方が,恐らく受検者の方にとってはより良いと個人的には思っております。

【佐々木事務部長】
 本日はこのような機会を与えていただきまして,ありがとうございました。
 先ほど柴山委員もおっしゃいましたけれども,やはり第三者評価を受けるには非常にコストが掛かります。人を一人から二人,半年ぐらいその仕事に充てて,自己点検をしていき,しかも文書を作っていかなければいけない。大学の第三者評価を受けるときは,一年ぐらい前から実は準備をしている,そのようなことも経験をしております。自己点検はもちろん必要だと思いますけれども,その積み重ねがすぐに第三者から見てもらえるという簡単なものではなく,きちんとした書類整備等もしなければいけません。そういった意味では,それに見合う結果が公表され,世間的にも第三者評価を受けたことが評価されるというような仕組みができれば有り難いと思います。
 あと,先ほど「英検」の方もおっしゃいましたが,実技試験とか試験問題の中身の評価というものは,非常に難しい部分もあると思います。ただ,外部からいろいろな御指摘を受けることは,検定にとっては本当に身が引き締まり,緊張感の中で検定をやっていくことになりますので,とてもいいことだと思います。評価を受けたときに,多少のメリットがあれば,例えばそれが大学入試で使っていただけるとか,大学で単位認定ができる等を文部科学省が周知していただければ,検定としては積極的に受けていくのではないかと思います。

【岩本生涯学習総括官】
 行政の方に身を置く立場として,意見の一つとして御指摘をしておきたいと思います。二点ありまして,一つは,検定試験の社会的な信頼ということに関してですが,長いいろいろな経緯で考えていくと,やはり基本的には,検定を受ける側の立場あるいは社会の方でそれを活用する側の立場の評価というものが長年積み重ねてこられたのではないかと思います。そういう意味からすると,それを第三者とか国などがこうだと決めつけるのは,なかなか難しい面があると思います。
 こういう検定の内容や質とか採点の方法,そういうものについての評価というものに関しても,検定実施者の方がある程度いろいろ工夫をされていて,それを社会にどれほど情報発信されて,社会の中で評価が積み重ねてこられているのではないかと思います。御発表があった中で,第四者評価という言い方がありましたが,そこが一番基本になると思います。そこをうまく助けていくような仕組みとして第三者評価があるのであれば,非常に存在意義があると感じております。
 それから,国の方が最終的に第三者評価の主体等をある程度認証していくという議論も,なかなか難しそうだと感じます。実際,どの程度実務的に,国ができるかという点について,非常に疑問を感じている部分があるということを申し上げておきたいと思います。今,現実の世界で全く第三者評価について何も行われていない中で,検定を育てていくという視点が必要だという御意見がありましたけれども,そのとおりだと思っております。第三者評価がいい悪いというところよりも,第三者評価自体がある程度社会に受け入れられてこなければ結局意味がないわけでありまして,そういうことからすると,少し育てていくという観点も必要だという御意見には賛同したいと思っております。それは飽くまで行政の中の関係する者の意見の一つとして受けとめていただければと思います。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。
 では,次の議題に入ります。本日は,昨年7月にまとめた中間まとめを踏まえ,答申に向けた審議経過報告骨子案について審議いただきたいと考えております。まず,事務局より御説明をお願いいたします。

【岸本生涯学習推進課長】
 資料3ということで,今後の審議スケジュールというのを御用意しておりまして,第9回部会の後,2月10日に中央教育審議会総会が開催される旨書いております。こちらの総会におきまして,これまでの本部会,生涯学習分科会における議論につきまして,その骨子を御審議いただくことになっております。これに向け,既に2015年9月に中間まとめを取りまとめていただいているところでございます。中間まとめについては,生涯学習プラットフォームに関する部分が中心となっております。先ほどまで御議論いただきました検定試験の部分も含めまして,この部会の審議事項の全体について,今後答申として取りまとめるべく,その骨子という形で議論の全体像を明らかにする必要がございます。
 そのために,内容の詳細につきましては,この後,別途詳細に説明させていただきますが,さきの中間まとめにつきまして,現在御議論いただいております検定試験部分を含めた上で,改めて骨子として全体を整理していく予定です。まず,検定試験部分に関しましては,本日の御議論を踏まえまして,次回1月25日の部会において,論点を明確にしました審議経過報告骨子案としてお示しをさせていただき,更に御議論をいただければと思っております。
 また,中間まとめでその在り方について集中的に御議論いただきました,生涯学習プラットフォームの部分につきましては,来年度の国の予算案の状況等も踏まえまして,今後,現実にこの構想を実現していくためにどのような方策をとるべきか,今後の答申の取りまとめに向けて更に具体的な方策について議論を深める必要があるのではないかと考えております。
 その観点から,今後の検討を進めていく上で,国における重要な先行事例として,既に平成26年度より教育の情報化を文部科学省と連携して進めております総務省の担当部署におきまして,この生涯学習プラットフォームと基本的な発想を同じくするプラットフォーム事業を進めているところでございます。本日は,その取組につきまして委員の皆様に御説明いただくべく,総務省の担当者の方にお越しいただいているところです。どうぞよろしくお願いいたします。

【菊川部会長】
 それでは,総務省情報通信利用促進課の御厩課長,御説明よろしくお願いいたします。

【御厩情報通信利用促進課長】
 本日は,私どもで進めております教育クラウド・プラットフォームについて御説明の機会を頂き,ありがとうございます。
 資料を1枚おめくりいただき,そもそも教育クラウド・プラットフォームを一言で言いますと,ICTを活用した教育の基盤となるクラウドベースのシステムということでございます。なぜクラウドなのか,ということですが,企業においては既にクラウドの利用が相当進んできておりまして,その理由を総務省で調査したものが,その下のグラフでございます。一番多い回答は,サーバーなどの資産や保守体制を自社の中で持つ必要がなくなる,そこから解放されるというメリットを一番多く挙げておられます。そのほかにも,初期導入コストが安価,どこでもサービスを利用できる,既存システムよりもコストが安い,あるいは,安定運用,可用性が高い,そういったような理由を挙げて,クラウドの導入を企業においては進められているところでございます。
 また,このような理由は,学校現場でも同じようなことが当てはまるのではないかと考えております。1枚おめくりいただきますと,今申し上げましたようなクラウドのメリットを生かしたプラットフォームに求められる要件として,5点挙げております。一つは,低コストで全国展開していけるようにということで,教育ICTを進めていく上でコストの問題は大きいですが,低コストで利用できること,あるいは,多様な端末に対応できる,端末・OSを選ばないということです。また,個のニーズへの対応ということで,特別な支援の必要な子供も含めて,多様な教材・サービスの中からニーズに応じたコンテンツを利用できる,そういうプラットフォームにしていくことが求められます。あと,安全性・使いやすさということで,セキュリティーやユーザビリティーを確保していくこと。こういうプラットフォームは多様な主体の参画の下に自走していくべきことという,以上5点挙げて考えております。
 もう少し細かく見ていきますと,プラットフォームの機能としてどういう機能を持つべきかということで,8点挙げております。これは後ほど具体的なユーザー画面で御紹介していきたいと思っております。特にポータル画面からどういう流れで行くのかということで,後ほど詳しく御紹介したいと思っております。いずれにせよ,こういう機能が整ったプラットフォームを今後確立していきたいということで,文部科学省と連携して取り組んでいるところでございます。
 1枚おめくりいただき,教育クラウド・プラットフォームの確立に向けてということで,先ほど岸本課長から御紹介がありましたように,先導的教育システム実証事業ということで,3か年の事業として取り組んできておりまして,来年度が最終年度ということで,予算案では3億円を計上しております。こちら,2本の柱で取り組んでおりまして,一つは,先ほど来申し上げておりますような教育クラウド・プラットフォームの在り方を検証して,それを技術的な仕様として取りまとめて,オープンにし,それを普及していくという取組が1点あります。
 2点目は,そういうクラウド・プラットフォームを基盤としながら,多様な主体の参画の下で,ここに書いておりますような三つの事柄の実現に資する具体的なモデルを実施していこうということで,ドリームスクールと呼んで実証しているところでございます。
 次のページでは,この事業はどこで取り組んでいるのかということで,日本地図の上にプロットしたものでございます。メーンの実証校は文部科学省と同じ地域と学校を指定して取り組んでいるものでございまして,佐賀,荒川,福島県新地町の3地域12校,そこと比較対照して,検証に協力していただいている32校,そして,2本目の柱のドリームスクールの多様な実践のモデルとして25校ということで,取り組んでいるところでございます。
 小学校,中学校がほとんどでございますけれども,中にはフリースクール,あるいは隠岐の学習センターですとか,地域の学習施設なども一部入っているところでございます。
 どういう実践が行われているのかということで,一つの例を8ページに挙げております。学校・家庭をシームレスにつないでのアクティブラーニングということで書いておりますけれども,このケースでいいますと,最初に教員が自作の動画を作っておりまして,左側の女性が英語の教員,右側がALTの先生です。お互いが英語で会話している,そういう短い動画を作りまして,こういうものを事前に見ておくようにと,SNSを通じて生徒に連絡する。生徒はそのリンクをクリックして,動画を視聴する。教員は子供がアクセスしたのかどうかということは即時に職員室にいながらでも分かりますので,どれぐらい事前にちゃんとアクセスして見ているのかということが分かります。
 そして,この動画を見た上での課題を生徒から送信してもらう。それを踏まえて授業を準備しまして,実際の授業では,宿題を見ていなかった子供,出していなかった子供もいるということで,一斉に最初に動画を振り返って,視聴をする。個別に学習をし,班で協働学習をし,結果を前でプレゼンをし,最後に先生がまとめをするという,シームレスにネットワークの上でつながって展開されているという事例でございます。
 9ページを御覧いただきますと,この教育クラウド・プラットフォーム,今の事業でポータル画面というのはどうなっているのかということで,学習者,すなわち子供にどう見えているのかという画面がこの図でございます。タイムラインとして,連絡事項などが時系列に並んでおります。掲示板・SNS等の機能を持っているということで,6時間目はここをやりますということで予習を促すとか,あるいは,ここをやりましょうということで宿題を提示するとか,そういうことができます。特に大事な周知事項は,読んだ後に「読みました」ということをクリックさせることができます。
 右側を御覧いただきますと,利用するアプリがアイコンとして挙がっています。これらは1回のログイン,シングルサインオンで利用できる状態になっております。
 そして,その下,「学習ログをみる」というボタンがあります。これはクリックすると,自分がどれだけ学習してきたのかという,パーソナルなデータが分かるということになっています。
 その下が行動履歴ということで,「いいね」をクリックしたとか,新しい投稿をしたということが並んでまいります。
 そして,「学習ログをみる」というボタンをクリックしたらどういう状態になるのかということが,10ページでございます。学習者z6901君の利用グラフということで,これは1週間から期間を選ばない期間まで,それぞれの期間に応じてどのアプリを何回アクセスしたのかということがグラフになって出てまいります。その下が,最終アクセス日時ということで,これは時系列に並んできますけれども,どのアプリ,最終アクセスしたのは何時何分ですということが画面に表示される状態になっております。
 次に,管理者,教員にとってはどういうポータルになっているのかということで,それが11ページでございます。タイムラインのところでいいますと,「ここをやりましょう」,あるいは「テスト延期のお知らせ」などを見たのかどうかということが表示されます。この状態だと2人の生徒が読んだことが分かります。実際,ここにアイコンを置きますと,名前まで分かります。
 左側,自作教材の共有ということで,これは自分が作った教材を上げておいて,学校内,あるいは全国の,先ほど挙げておりましたような実施校でお互い共有し合う,そういう機能がございます。
 右側の「学習ログをみる」は,管理者の側でここをクリックしますと,クラス全体,あるいは各生徒個々の学習ログを確認することができます。それが12ページの図ですが,左側が,今の3年9組の状況ということで,アプリごとの生徒のアクセス回数というのが,期間を捉えて出てまいります。横軸に学習者,生徒の名前が並ぶというイメージですけれども,誰が何回アクセスしたのか。例えば,夏季休業期間中ですと,夏休みの間に誰がどのアプリ,何回使って学習しているのかということが,ここを見ると分かります。
 右側が,個々の生徒はどうしているのかということで,個々の生徒ごとのアプリごとのアクセス状況と,最終アクセス日時と,そもそもポータル画面にいつアクセスしたのかというマイポータルの利用履歴ということで,アクセス日時も分かるような状態になっております。
 以上,学習ログについてまとめたものが13ページでございます。各社のアプリごとに,それぞれの種類でプロバイダーがデータを蓄積しておりますけれども,それだけではなくて,一定のデータについては,全ての会社のアプリを通じて統一的に蓄積をして,生徒なり教員なりに提供しております。ドリル系のアプリ,学習支援系のアプリ,映像系,その他ということで,アプリを4種類に分けておりますけれども,統一的にとっているデータとしては,誰がいつどのアプリにアクセスしたのかということは統一的に蓄積をしまして,先ほどの画面のような状態で,学習回数,起動回数,最終学習日時を生徒,教員に提供していくということでございます。今後,この二つの項目,データの蓄積,提供範囲というのを拡大していく方向で,今,検討しているところでございます。
 最後,まとめますと,教育クラウド・プラットフォームの標準化に向けて,あるいは標準化したものをオープンにしていくことに向けて,標準化で言いますと,四つの観点で取り組んでおります。コンテンツの標準化,アプリの連携の標準化,学習記録データの標準化,基盤となる認証の標準化という四つの側面で技術的な標準化を図りまして,その技術的な仕様をオープンにしていくということでございます。こういう状態で,この事業での取組,技術標準,オープンにしてまいりますので,学校教育で今実証しておりますけれども,幅広い学習・教育への応用が可能ではないかと考えております。その意味で,今後,生涯学習プラットフォームの実現ということの御検討を頂く際の一つの参考材料にしていただければと思っております。
 最後に,ICT CONNECT21という団体,これはみらいのまなび共創会議ということで,教育の情報化を推進していくためのオールジャパンの協議会です。昨年2月に発足しまして,ちょうど1年を迎える段階でございます。会長は赤堀さんという方で,日本教育情報化振興会の会長でいらっしゃいます。本部会の委員である栗山委員には代表幹事をしていただいておりまして,実質的な中心ということで,大変お世話になっております。
 また,具体的な組織としましては,ビジョン委員会というものがありまして,その下に二つの大きなワーキンググループがあります。普及推進のワーキンググループというのは,こういうプラットフォームの普及をしていこうという活動をメーンにしております。右側の技術標準化ワーキンググループというのは,先ほど来申し上げましたような標準化をするに当たってのアドバイス,レビューをしていただくことにしている,そういうワーキンググループです。特に学習履歴,学習成果の蓄積のところは,大畑委員に事業の中でも大変協力していただいておりまして,ありがとうございます。
 こういうことで,こういうICT CONNECT21などとも連携しながら,もちろん文部科学省とも連携しながら,教育クラウド・プラットフォームの確立と普及に取り組んでまいりたいと考えておりますので,今後ともよろしくお願いいたします。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。
 引き続いて,資料2-2について,事務局の方から御説明いただいてよろしいでしょうか。

【岸本生涯学習推進課長】
 それでは,資料2-2をお出しいただければと思います。こちらにつきましては,冒頭に審議経過報告骨子(素案)といたしまして,目次を掲載させていただいております。これにつきましては,昨年9月の中間まとめの目次を基本としつつ,18行目のところでございますが,4番に「検定試験の質の向上等」ということで,検定試験を含めた全体の骨子という形で構成をさせていただいております。
 1ページおめくりいただきまして,1ページの下,40行目のところから2ページにかけての部分でございます。基本的にこの骨子の内容につきましては,昨年9月の中間まとめを要約させていただいておりますけれども,その際,記述については基本的にそのまま内容を踏襲する形をとっておりますが,一部記述が重複しているような部分につきましては整理をしたり,あるいは場所を移動したりといったことを行っております。
 それらに加えて,今回新たに書き加えた部分につきまして簡単に御説明させていただきますが,まず1ページの40行目のところからの部分でございます。この部分は,先般の生涯学習分科会に中間まとめにつきまして御報告申し上げた際に,特に昨年12月に中教審の答申で出ております学校と地域の協働に関する答申,こちらとの関連性を図るべきではないかとの御意見を頂戴しておりました。その観点から,18行目以下でございますけれども,昨年12月の答申を踏まえまして,そちらにおける地域学校協働本部,あるいはコミュニティ・スクールの取組,こういったものにつきましては,地域住民がこれまでの学習成果を活用し発揮する場面を拡大していく,そういう部分に関する話であるとしております。そして,本部会において検討しております内容,これらを示すことで,学習活動が活性化されていくということで,学習活動の活性化,その成果を活用する場,この二つのものが両輪となって更にこの循環が発展していくのではないかという記述を加えさせていただいているところでございます。
 続きまして,3ページでございます。3ページの上から4行目から6行目にかけての部分でございます。先ほどの学習の成果を活用していくという部分と両輪となって進むという観点から,学習すること自体に価値を求めるということももちろんございます。同時に,それを学習したことを通じた成果を通じて,社会課題について解決に生かしていくということの意義についてもまた改めて考えていく,理解を深めることは大事なのではないかという1文を追加させていただいております。
 続きまして,4ページの22行目からの部分でございます。4ページの22行目から33行目までの部分でございますが,これは今回,検定試験等も含めまして,全体の総論として構成した関係から追加させていただいた部分でございます。まず,22行目の部分から,学びの成果につきまして,それが社会的に適切に評価される環境整備が大事だということ。その次の丸の部分で,学習した成果の評価として,これまでに履修証明でございますとか,あるいは国家資格等,様々な制度化されているものを踏まえ,これらのもののほかにも,更に適切に評価される環境整備をすることが大事であって,例えば,検定試験ということについても,その活用を更に促す上で,情報開示あるいは質の確保ということが課題なのではないかということで,この後のそれぞれの課題に関する記述につなぐ頭出しの部分という形で構成させていただいております。
 続きまして,5ページ目でございます。5ページの15行目の部分でございますが,これは先ほど触れさせていただきました検定試験の部分につきまして,本日の御議論を踏まえて更に骨子という形で構成しましたものを,この部分に入れさせていただくことを考えております。
 続きまして,少しページが飛びますが,7ページをお開きいただければと思います。7ページの39行目から,その次,8ページの31行目まで,この部分が生涯学習プラットフォームにつきまして,ここに定義されております機能等を実現していくために当面取り組むべき課題として書かせていただいている部分でございます。この部分につきましては,先ほどの総務省の発表等も踏まえまして,かなり大きく加筆をさせていただいている部分でございます。
 まず,8ページの5行目から御説明いたします。8ページの5行目から9行目までにつきましては,先ほど御説明がありましたとおり,既に総務省におきまして,28年度末までの3か年間で,クラウド・プラットフォームの構築と,その標準化に向けた実証事業を文部科学省,また,ICT CONNECT21等,様々な団体・企業等と連携をしながら進めているということを書かせていただいております。
 続きまして,11行目からの部分でございますが,生涯学習プラットフォームにつきましても,技術的な基盤,これは総務省で進めております教育クラウド・プラットフォームと非常に共通する部分が多いところがございます。また,生涯学習という観点で,これは当然全員が通る初等中等教育段階もその概念の中に含まれる部分でございますので,初等中等教育段階を対象とする教育クラウド・プラットフォームとの連続性,接続性を担保していくということも大事な観点になると思います。そういう観点から,今後,生涯学習プラットフォームの検討に当たりましては,総務省と連携し,教育クラウド・プラットフォームの実証事業から得られた技術標準,知見等の成果を有効に活用すべきであるということ,そして,生涯学習プラットフォームを実現するため,様々な団体等の協力も得て,非常に広い生涯学習全般にわたって必要な部分,その拡張すべき付加的な技術標準化等の技術的検討を進めることが大事であるということを書かせていただいております。
 その次,18行目からの部分でございます。このプラットフォームを実現していく上で,先ほど日本英語検定協会様の方からも,例えば,これまで受講されてきた1億人の方をプラットフォームの中でネットワーク化することができれば,いろいろな可能性があるのではないかというお話もございました。そういった思いをお持ちの民間の様々な企業様,団体様はたくさんおられると思います。そういった様々な民間の団体,そしてまた,国をはじめとする官が協力し,官民が協働して知恵を出し合っていくことで様々なことを実現していける可能性があるだろうということと,あわせて,生涯学習プラットフォームにつきましては,非常に長期間にわたりまして,何十年,さらには何百年という規模でデータを持ち続け,運営していく必要がございます。そういう観点から,生涯学習プラットフォームを持続的に運営可能な民間の主体が中心となって進めることなどによりまして,これが安心して継続的・安定的に運営を確保するということ,そういう観点が重要ではないかということを書かせていただいております。
 併せまして,23行目からの部分でございますが,当面,国において進めることということで,来年度の予算を念頭に置いておりますけれども,生涯学習プラットフォームを実現していくために,その前提といたしまして,このプラットフォームで実現される機能として,マッチング等も挙げられております。マッチング等につきまして,ICT化する前提として,方法論等を確立していくための実証,また,生涯学習プラットフォームを,総務省の構築されておられるプラットフォームを基礎に発展させていく際に,実際にどのような形で接続性を,拡張性を考えていくかということにつきましての検討というものを進めることが大事であるということを書かせていただいております。
 29行目から31行目につきましては,もともと既存の中間まとめにあった部分でございますけれども,今後検討を進めるに当たりまして,諸外国における先進事例,また,生涯学習プラットフォーム,これは様々な関係者が関係してまいりますので,その役割分担等の検討ということも必要だということを書かせていただいております。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。
 何か御意見,補足等がございましたら。どうぞ,加藤委員。

【加藤委員】
 教育クラウド・プラットフォームですけれども,学校教育で使われるという前提で作られておりまして,当然そういう意味では納得できる作りになっていますが,ただ,私たちが議論していた生涯学習プラットフォームとは大分イメージが違うものになっているのではないかと思います。
 というのは,結局フォーマルラーニングしか今のところ扱えていないのですが,生涯学習ではインフォーマルラーニングが重要だということは,ここの議論の中で再三言われてきています。また,単純に自分自身が一ユーザーになって,何か恩恵が受けられるという気はしないです。一生涯を通しての連携というのが重要だということは分かりますし,重なる部分が多いとおっしゃっていましたが,私にはほとんど重なる部分が見えない。これのどこが生涯学習プラットフォームに使えるのか,それを明らかにしていただきたいと思います。

【岸本生涯学習推進課長】
 先ほどの総務省の資料2-1の14ページを御覧いただければと思います。先ほど加藤委員から御指摘がありましたように,対象としているものは,総務省の教育クラウド・プラットフォームは学校がメーンでございますけれども,必ずしも学校に限られているわけではございません。先ほど御厩課長からお話がございましたように,地域のセンターでございますとか,あるいは塾,そういったところも含めて構成されているところがございます。ただ,御指摘のように,どちらかというと,学校教育周りが中心になっておりまして,一方,生涯学習プラットフォームは,そのほか,インフォーマルあるいはノンフォーマル教育が中心になっているという点で,確かに分野は違うという点がございます。
 では,実際に何が共通するのかと申し上げますと,14ページに総務省の事業を通じまして行っていく標準化のイメージというのが書かれております。例えば,真ん中の部分にございますけれども,一つには認証の標準化,プラットフォーム上のサービスをシングルサインオンで利用していくための方式の標準化,また,その上にございますとおり,コンテンツの標準化ということで,メタデータ等の標準化,また,学習記録データの標準化ということで,蓄積する学習記録データの形式・項目・連携方式等の標準化という部分がございます。
 今後,生涯学習プラットフォームの技術的な検討,この標準化ということが必ず必要になってまいりますけれども,その検討を進める上で,総務省のクラウド・プラットフォームで行われている技術標準化の部分が,基本的に共通する部分が非常に大きいと考えております。したがって,この成果を活用していくことが最も効率的ではないかということで御説明させていただいたものでございます。ただ,同時に,共通に使える部分と,あと,どちらかといえば学校教育向けに作られている部分に対し,そうではない生涯学習プラットフォームという違いもありますので,そういう部分で共通する部分と独自の部分があるだろうということで,それについて今後どう検討を進めていくのか,そういった部分につきまして,先ほど御説明させていただきましたような,来年度以降の調査研究等の中で検討していくことが必要ではないかと考えているところでございます。

【加藤委員】
 逆に言うと,システムのところは,ほとんど余り関係ないということですか。

【岸本生涯学習推進課長】
 技術的な標準化という部分において共通している部分が多いだろうということと,ただ,同時に,載せるコンテンツ,対象という点については,加藤委員の御指摘のとおりに,確かに違う部分があると思います。

【加藤委員】
 基本的に,e-ラーニング前提というか,全部電子化ということを考えていると思いますが,我々は,むしろオフラインで学習するという機会の方が多いように思います,実際自分たちが生涯学習ということを考えた場合。そこに,前提としているところに行き違いがあるように思います。

【岸本生涯学習推進課長】
 一つには,前回中間まとめをまとめる際に,栗山委員から御提出いただいた資料もございましたけれども,例えばその中では,クラウド・プラットフォーム上,サーバー上から電子的な形で講座を提供するということも考えられておりました。同時に,加藤委員御指摘のように,それ以外の部分で提供する,例えば,今,放送大学で提供されておられるような放送を通じたものというのもあると思います。
 いずれにしましても,今回,生涯学習プラットフォームのいわば核になっている部分は,個人ごとについて様々な学習履歴を蓄積し,それをいかに活用していくかという部分でございます。学習履歴を電子的に蓄積するという点におきましては,総務省のクラウド・プラットフォームとその発想を全く同じにしている部分が多いというふうに考えております。そういう意味で,共通しているということでございます。

【加藤委員】
 分かりました。

【菊川部会長】
 ほか,いかがでございましょうか。

【大畑委員】
 インフォーマルラーニングとノンフォーマルラーニングが生涯学習でかなり重要な位置を占めて,それが電子的なコンテンツのみではなくて,様々な地域活動,そういうリアルな活動で構成されていくということがありました。そういったところのデータをまた手入力するのかという議論もあったように記憶していて,それに対していろいろ気になっていて,いろいろな事例を調べていました。例えば家計簿アプリでは,銀行口座のデータとかポイントのデータなどを,認証すればホームページで見られます。そういう形で,勝手に集めてくると言うと語弊がありますけれども,個人の同意の下に,システムが人的な方法ではなくて機械的な方法で集めてくる,収集して,それが手元でぱっと見ることができる。収集の手段としては優秀な手段だと思っていて,例えば,SNSをやっていらっしゃらない方も,ネットにない情報を入れるときには絶対どこかで手入力は必要ですが,関係する方々だけではなくて,ある活動に参加したという事実やSNS的な情報というものを,技術の応用で,個人の同意の下に手入力に頼らずに集めてきて,標準化された形でデータを蓄積し活用していくフェーズになっていけるのではないかと思います。何らかの資格を取ったという人が別の地域活動に参加したとか,自分が教える側に回ったというような情報も集めてこられる可能性も秘めていると思っています。ここに関しては,やっぱり技術的な検証や検討が今後も必要になってきて,こういった部分が生涯学習プラットフォームの独自部分というような形で位置付けられていくうちの一つだと,先ほどの加藤委員の御意見を聞いて思った次第です。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。
 栗山委員,どうぞ。

【栗山委員】
 やはり標準化というのはすごく大切なことだと思っていまして,例えば,車のペダルはアクセル,ブレーキ,クラッチと右から順番に並んでいて,世界中どこに行っても同じものになっている。だから私たちは,どこに行っても同じ順番のペダルの車を運転することができる。このように,標準化ということはすごく大事だと考えております。
 その中で,先ほどの14ページの資料にございますとおり,様々な標準化ということが考えられるわけが,何をどこまでどのようにするのかということを今後考えていくことが大切です。既にあるものであれば,大いに活用すべきですし。違うものはまた考えていかないといけないとは思います。例えば,資料2-2の9ページに書かれておりますけれども,国内だけにとどまることなく,世界の中でどのようなことが行われているのかということに目を向けた上で,このようなことを進めていくのがよろしいのではないかと考えております。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。
 今後のスケジュールについて,事務局から簡単に御説明をお願いいたします。

【竹下生涯学習推進課課長補佐】
 今後のスケジュールについて,資料3を御覧いただければと思います。次回の会議につきましては,1月25日に生涯学習分科会との合同開催という形での開催を予定しておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。
 連絡事項は以上でございます。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。
 では,次回,1月25日もどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

―― 了 ――

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