学校地域協働部会(第5回) 議事録

1.日時

平成27年8月11日(火曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省 3F2特別会議室

3.議題

  1. 委員からの意見発表(学校と地域をつなぐ人材の配置の在り方)
  2. 自由討議
  3. その他

4.議事録

【明石部会長】
  定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会生涯学習分科会「学校地域協働部会」第5回を開催いたします。
  本日は、学校と地域をつなぐ人材配置の在り方について審議を行いたいと思います。
  まず、委員の方々から意見発表いただき、その後、意見交換を行いたいと思います。
  まず議事に入る前に、配布資料の確認と委員の出欠について、事務局よりお願いいたします。

【鍋島地域・学校支援推進室長】
  本日の部会も、皆様、どうぞよろしくお願いいたします。本日は浅原委員、熊谷委員、山野委員が欠席です。
  配布資料ですけれども、議事次第、資料1が若江委員の発表資料、資料2が松田副部会長の発表資料、資料3が関委員の発表資料、資料4が井上社会教育調査官の報告資料、資料5が学校と地域をつなぐ人材の配置の在り方に関する検討の視点、資料6がこれまでの主な意見と検討の方向性の案、資料7が今後のスケジュールの案、参考資料1が本部会における検討事項の例、参考資料2が地域コーディネーター等に関する参考資料、参考資料3が前回の合同会議における主な意見です。
  参考資料1と併せて、資料5を御覧いただければと思います。今まで4回、学校と地域の協働の基本的方向性や、今後の学校支援地域本部の役割と機能、そして前回、合同会議で学校支援地域本部の役割や効果を踏まえたコミュニティ・スクールとの一体的推進の在り方について、集中的に議論を行ってまいりました。今回は学校と地域をつなぐ人材の配置の在り方について、主にコーディネーターの役割等について御議論いただければと思います。そして次回は、学校と地域の連携・協働による教育活動を通じた地域振興・再生の在り方について御議論いただき、今回と次回で当初予定していました検討事項の全体像について一通り委員の皆様から御発表なり御意見を頂き、まとめに入っていきたいと思います。
  資料5ですが、学校と地域をつなぐ人材の配置の在り方に関して、検討の視点を、三つに絞っております。1点目が、学校と地域の連携・協働の強化のための地域コーディネーターの役割、また、特に学校において地域連携を担当する教職員との連携の在り方についてです。2点目が、地域コーディネーターの効果的な配置の在り方や全校配置に向けた方策についてです。現在、学校支援地域本部、小学校でいうと、全国に約2万校、中学校でいうと約1万校、合計約3万校ありますが、その内、小学校で約6,000校、中学校で約3,000校が、文部科学省からの補助金を使い取り組んでいます。
  それ以外に、調査によると、都道府県や市町村の独自財源を使い、また、報酬の有無にかかわらず、これに近い取組は、およそ2倍はあるのではないかと把握しております。3点目が、地域コーディネーターやボランティアの確保・養成・研修についてです。
  資料6は、これまでの主な意見と検討の方向性(案)、参考資料2が地域コーディネーター等に関する参考資料で、様々な取組の事例や地域コーディネーターの育成テキストがありますので御覧いただければと思います。23ページが、地域連携担当教職員の今後の在り方について、チームとしての学校・教職員の在り方に関する作業部会での中間まとめの抜粋した資料です。25ページ以降に、地方自治体におけるコーディネーター等研修や実態調査結果についてです。47ページ以降は、学校と地域社会との連携促進について、各市町村にも県教育委員会からの通知文、51ページは、木更津市の取組、55ページからは埼玉県の実施調査があり、御参考にしていただければと思います。

【明石部会長】
  では、議事に入りたいと思います。本日は、若江委員、松田委員、関委員から、それぞれ15分程度で御意見を頂きたいと思います。その後、社会教育実践研究センターの井上社会教育調査官から、地域連携を担当する教職員に関して、栃木県の事例を御紹介いただき、発表が全て終わった後に自由討議に移りたいと思います。それでは、若江委員、よろしくお願いします。

【若江委員】
  私はキャリアリンクという株式会社で教育支援活動をしておりまして、そこにいろいろな企業を巻き込むという取組をしております。資料の上の段の真ん中を御覧ください。なぜ株式会社にしたかといいますと、通常、教育支援をするのはNPO団体が多く、当初、自分の息子たちが幼稚園、小学校段階で、いろいろお手伝いをしようというときに、公教育の場に株式会社が入ってもらったら困るとかというようなことで、すごく拒絶を受けたのが、創業しました当時の1990年です。そこから土壌が整わないのであれば、もう少し徒党を組んでやれるように、いろいろな企業の啓発から始めようということで、1995年からは、いろいろ企業に教育を支援していくムーブメントについて説いていくというような活動をし、ようやく2000年頃から、国や自治体の委託事業を受けさせていただくというような、そのような流れで活動をしております。
  教育コンサルタントの役割というのは、コーディネーターと同じことなんですけれども、1番は、企業や団体を対象にしていますので、そこの会社にいらっしゃる社員です。企業市民としてのキャリア開発を、要するに地元の教育に貢献をしていただこうという、そういったつなぎを、どうしても教育支援をするとなりますと、地元にいらっしゃる方々だけということになりがちですが、やはり欧米のように、子供を持っている親は働いていようとも、親であり地域住民であるので、そこでやはり教育に、身近な教育に関与していくというムーブメントを起こしたいなと思っております。それはそれぞれについてのキャリア開発にもなりますし、生涯学習にもつながっていくという考えのもとでございます。
  資料の2段目の左に、では、教育支援団体がどのように学校教育を支援してきたかということを20年間の動向ということでまとめております。大体、企業が教育に関わり始めたのは、総合的な学習がスタートした辺りなんですが、企業からいいますと、そのときちょうど企業の社会的責任というようなことで、環境に対する配慮が非常に必要だと言われた時期でございまして、どの企業も上場企業は環境レポートというものを作るのに躍起になっていたところでした。ちょうどそのときに学校現場は総合的な学習のテーマの中に、福祉、環境、地域理解などがございましたので、最初は環境を軸にして、企業の力を借りましょうということで、少し学校現場の門戸が開いたと。本当にちょっと小さなドアが開いたのが、2000年代ぐらいでございまして、その頃、企業は、教育支援という発想は余り明確にはお持ちでなく、少し時代の流れのような形で、教育CSR、コーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティーというような名の下に、環境レポートに何か活動を書かなければならない程度の理解から始まりましたので、とても学校の現場のことを知った上で何かをしようという、そういった状態ではありませんでした。2010年ぐらいになり始めてから、少しずつようやくいろいろな企業が自分たちの問題として教育のことを捉え始めて、それによって、現場にふさわしい支援をしていかなければいけないのではないかと思い始めました。
  配布しております冊子を御覧ください。いろいろな企業がばらばらで活動するのではなく、一つの団体としてコンソーシアムを組んで、ここに同じベクトルで情報をまとめて、学校に提供していきましょうという動きを、私どもが事務局になりながら、2006年からスタートしまして、これは、もう9号になっております。この10月に10号が出るんですが、ページを開いていただきますと、2006年のときはA4の見開きで三つのプログラムを載せていて、150部プリントアウトしたものを、私が教育委員会に手配りをするというところから始まりまして、今は約1万2,000部を1,000の教育委員会にお届けをして、教育委員会の方から、校長会や教務主任会議などに配布していただいて、企業が無償で提供しているプログラムですので、学校に届くような手立てを組みたいんですが、なかなか教育委員会から学校にお届けできるというようなことは実現は難しいですので、この工夫をしまして、2、3年前から、このガイドブックの抜粋版を各学校に直接、1学年に1部ずつ、6学年。小学校であれば6冊をお届けするというような方式でまいりまして、10年を経過して、ようやく1年間で、延べ60万人ぐらいの児童生徒にプログラムを使っていただくというような状況です。
  11、12ページを御覧ください。文部科学省から言われているキャリア教育は、スキル育成を狙いにして、教科の単元で取り組んでいかなければいけないんだということが言われているんですが、なかなか現場の先生方、御自身でそういう教材をお作りになることが難しいので、企業の方に、自身がお持ちになっている自社のリソースは、どの学校種のどの学年のどの単元の導入に使えるのか、それとも発展のところに使えるのかというようなところを私どもでコーディネートをさせていただいて、今現在、45のプログラムが、学校種ごと、教科ごとに、このようにマトリックスに埋まってきているところです。例えば、理科のところの中学校と小学校にまたがる東レさんのところで申しますと、53ページをお開きください。教科の単元で学んだ後に、企業の出張授業や教材提供を組み込むというような仕掛けにしています。それによって、キャリア教育とは言いながら、多くの先生が、やはり教科の単元の延長線上であれば取り組んでいただきやすいということがありますので、この東レさんは、小学校5年生の物の溶け方の授業、水溶液のところですね。この授業の後に、塩水を飽和状態にさせて、通常、ガスバーナーで結晶を取り出すんですが、それをした後に、東レさんがやってきて、ここの下にあります色のビーカーですね。オレンジとか、ブルーだとか、泥水だとか、食塩だとかというようなものを並べて、子供たちに、この下の写真にある中空糸膜という、この注射器で吸い上げさせると、オレンジ色でも透明になりますし、ブルーでも透明になります。つまりろ過という機能を、この中空糸膜という細かい膜で、いろいろなものをろ過し、それはアフリカの奥地で雨水から飲み水をとったり、海上基地で海水から淡水を作ったりだとかするときに使われているんだよ。君たちと学んでいることは、こうやって世の中に生きているんだよというふうなことの授業を1時間入れるというようなことをしております。こういうことによって、子供たちは自分たちの教科の単元で学んでいることが、世の中とつながっているんだというような実感が持てますし、これができるのが、企業が支援するべき役割のパートではないかと思いまして、一つずつ、そういう視点から、今、プログラムを増やしていっているところです。
  次、資料の2段目の真ん中ですが、企業の方は社会的責任という義務でやっているときですと、やはり業績がいいときだとか、トップの考え方によって、波がありますので、今はやはりCSVという、クリエーティング・シェアド・バリューという社会責任ではなくて、企業が社会と共存できる価値を創出していくんだと、次世代育成に社会のために関わるということは、回り回って自分たちの企業を支えてくれる人材を育成していくことになるんだということを、今、企業に説いているところです。
  その次ですが、学校現場が企業・団体にどのような教育支援を期待しておられるかといいますと、ここにまとめたようなところですので、まさに今、御紹介しました「Future Forecast」に載せておりますような教科と企業の今と未来や、本物に触れることですとか、単元が社会とつながっているですとか、それから自分の将来に必要な能力をどのように感じさせるかというところを、現在は企業にも理解していただきやすいですし、学校現場にも受け入れていただきやすいので、そのような視点でプログラムを作っておりますが、私どもとしましては、次のステップで、下の段になりますが、学校現場に普及させたい企業・団体の教育支援としましては、もう少し踏み込んだ、プロジェクト型の授業を支援できるような、そんな体制を企業側にも啓発をしていきたいと思っております。また、逆に学校の先生方にも御理解を頂きたいと思っております。
  これがなかなか、総合的な学習の時間の何時間かを企業連合型のプログラムでお手伝いしますと申し上げましても、やはりあくまでもプランを立てていただくのは先生になりますので、先生がプランを立てていただいたところに私たちは、こんな企業がこのパート、こんな企業がこのパートを、というふうに絵を組み込むような形でのお手伝いが理想的だと考えておりますので、次の展開としましては、この企業を、教育を支援する団体、コンサルタントの役割としては、今は私ども教科のところに焦点を当てましたが、もう少し総合的な学習、道徳、それと教育課程外のところの放課後の活動や土曜学習のようなところで、こういったプロジェクト型の学習に子供たちが触れるような機会を設けていけないかというふうに考えております。それを実現するとなると、やはり今までは一生懸命、教育委員会経由、学校経由、校長先生経由で、先生方に情報をお伝えするにとどまっていたんですけれども、やはりこうなってくると、地域コーディネーターやもっと社会教育の分野の方にも、このような情報が届けられるようにならなければいけないと考えております。
  3段目の右になりますが、やはり教育のパラダイムシフトがどんどん動いていく中、やはりいろいろなことを、各段階の人たちが共通の認識を醸成して、役割を明確に理解することが、今一番、揺らいでいるような気がいたしまして、三角形のピラミッドで表してみたんですが、サポーターのところには、これは教育現場であろうが、地域であろうが、いろいろなボランティアの方がいて、ここには企業人材に、現役世代もそうですし、退職世代、退職前研修などで、地域に戻ったときには地域の支援者になってくださいというようなことを、今、企業に投げ掛けておりまして、その上に当たるところ、そんな方々が、やはりマネジメントも経験をしておりますので、世の中のことも知っているという人たちが、地域コーディネーターとして、もっと参画していただき、その上に教育コーディネーター、前回のお話でもありましたような、コーディネーターのコーディネーター、統括コーディネーターと言われるような役割が必要で、その上に私たちのような教育コンサルタントというようなものが、やはりきちっと層に分けて、目的に応じた形で役割を担うべきではないか。ですので、サポーター、コーディネーター、ディレクター。ディレクターとプロデューサーの違いというのは、まさにお金のところをきちっとコーディネートできるかどうかの違いです。お金をどこかから調達をしてきてやれるのかどうか。
  そして、一番上のところは、少し過激な言葉を書いておりますが、ストラテジストというふうに、戦略家という意味で書いたんですが、主にこういう言葉は証券関係の投資のところで使われる言葉なんですが、やはりこれは企業のトップであるとか団体が、お金をうまく使って、こういう第一歩の導きをしていくというようなことが大事だと思います。
  最後になりますが、もう一つ、オレンジ色の冊子を御覧ください。これはキャリアチャレンジデイという、キャリア教育に替わるイベントとして、2012年に文部科学省の復興教育支援事業でスタートしたものですが、8校中学校がある大船渡市で、まちが壊滅状態で事業所がないので、職場体験ができないと。そこで、この事業を使わせていただいて、東京、大阪から、最初は21の企業、団体が大船渡市に行き、8校全ての小学生が一堂に市民会館に介しながら、午前中は全員で藤原さんのスペシャルよのなか科を受けて、午後は事前学習で選んだ三つのブースを回るというようなことをしてきました。これは今年4年目で、だんだん、そのノウハウが教育委員会に、そして文部科学省からの事業予算も、だんだん減っていく中、自然な自立の形を、今、トライをしているところでございます。
  真ん中のページを開けていただきますと、大船渡市用に考えたものが、いろんなところに、今、波及をしておりまして、大船渡市の場合には、事業所がその現場にあるところが機能しなかったので、東京、大阪からもありましたが、既に今年は半分以上が地元の企業による運営になっておりますし、2014年度、15年度始まる高知県の香美市に行きますと、全中学生の3学年が一斉に高知工科大学に集まって実施するというようなことで、ここの企業・団体は全て香美市、高知県内というようなところでの企業・団体ということになっております。
  最後のページは、開発させていただいたプログラムそのものが、このようにワークブックや、ティーチャーズガイド、教材化が全て出来上がっておりまして、これがサイトからダウンロードして、皆さん方、自由に使っていただけるというようなものになっています。
  つまり何か新しいことをするときには、国の事業であるとか、それとか企業が投資をしてくださる、お金を出してくださる事業によってスタートしていくんですが、それがお金が切れれば縁の切れ目になってはいけませんので、こういうプログラムを通じて、いかに組織的にこのノウハウを継承していくかということが、教育コンサルタントとしてのレベルの役割として求められていることだと考えております。以上でございます。

【明石部会長】
  ありがとうございました。では、松田副部会長、お願いします。

【松田副部会長】
  私から、資料2を使って、御報告させていただきます。若江委員からお話のあったように、企業が地域協働という形で、かなり積み重ねられ成果を出してきている、あるいは地域でも、様々に実践が積み重ねられてきていると思います。そういう意味で、かなり方法論というか実践論というのが、積み上がってきているという中で、しかしながら、結局はその場を教育として意味あるものに方向づけていくのは、そこに携わる人だと思います。その人が一体何を目指して、どこを考えていかなければいけないのかといった話ができたらと思っているところです。
  次のページを御覧ください。今日の課題、地域コーディネーターですけれども、先ほど御紹介がありましたようなコーディネーター教本のようなものがガイドラインという形で出てくる中で、そもそもなぜコーディネーターが必要なのかという原点に戻ってみたいという趣旨です。基本的に、学校では、こういう地域参加のニーズが大きくなっており、一方では、地域においては学校を支援するというような、そういう力、あるいは可能性が大きくなっているということで、本来は両者がかみ合っているんですけれども、しかしながら、こういう方法論が積み重なっているにもかかわらず、現状では、やはりまだまだ学校と地域の協働というのは進んでない面も多くあると思います。そのうちの最も重要なポイントは信頼関係の不成立ということではないかと思います。需要と供給があるのにつながらないというのは、これはやはり信頼というものが流通してないということだと思います。恐らくその意味では、少し抽象度が上がりますが、コーディネーターというのは信頼を流通させるためのシステムの一員ではないかと思います。
  3ページを御覧ください。信頼という言葉は非常に面白い言葉で、これは山岸俊男先生の「信頼の構造」という本の中で御指摘されていることですが、そもそも信頼というのは、安心が提供されないような社会的不確実性、そういうものが信頼を必要とする場になっていて、安心が広がってしまうと信頼というものは必要ないというわけです。つまり、学校と地域が連携・協働するということは、ある種、異なる立場のぶつかり合いというか出会いですので、社会的不確実性が増大する場面だと思われるわけです。だからこそ信頼が必要になるわけで、もし、これが連携して安心するということになってしまうと、それはむしろ出会いというものの異質性とか他者性が押しなべて平たくされてしまって、協働するということの意味がなくなってしまっているような状況になるのではないかと、そのようにもとれるということです。ただ、現在の学校は、確かにこのような異質性とか他者性を排除して、安心というものをより様々なコストを使って確保しようとするような動きがある中で、協働というものを、どのように進めていくのかということが、今、問題になっているんだと思います。
  4ページを御覧ください。信頼を醸成することが得意な方と不得意な方がいるというのが、経験的にもよく見受けられますが、本当に実践的に積み重ねられた方というのは、こういうコーディネーターとしての力量が非常に大きいわけですけれども、そういう方々というのは、基本的に、他者一般を信頼する傾向があるということがよく言われていて、他者一般を信頼する傾向というのは、だまされやすいとかということではなく、瞬時に信頼に足り得るかどうかという情報の処理が非常に速い、適切であるという傾向があるということが言われるところです。それに対して、顔見知りのみ、特定の相手のみしか信頼できない方というのは、相手の評価が比較的苦手だと、そういうことになっていくと。そうしますと、コーディネーターの力量というのは、ネットワークを自分は持っているだとか、あるいは真面目に一生懸命動けるということはあるのかもしれませんが、それ以上に、ある瞬間、時間の短い中で、これは信頼に足りる出来事だということを情報処理できるという力が非常に大きいということになると思います。そういうコーディネーターが要所に配置されるシステムというものが成立しないと、恐らく協働ということはうまく進まないのではないのかという、少し抽象度の高い話ですけれども、そういうことになると思います。
  5ページを御覧ください。ただ、今の話の前提になりますのは、基本的には信頼が必要だということは、つまり逆に言いますと、学校と地域の関係に、ある程度の緊張関係が成り立っているということが前提になると。逆に、コミットメントを強く形成し過ぎてしまって、地域と学校の関係が安心ということが流通する仕組みになってしまうと、これは実は今求めている教育政策のアウトプットとは違う方向へ行ってしまう可能性があるのではないかと思います。現に人材が固定化したり、あるいはなかなか学校の壁が低くならないというようなことというのは、むしろこういう動きが広がっているという面もあるのではないかと思います。ということになりますと、地域コーディネーターというのは、やはりあくまでも社会教育側の人なんだという、これは思い切った意見になるかもしれませんが、その部分をむしろ強調する必要があるのではないかと思います。学校側は学校教育というもので責務を持っているわけです。その両者がいつでもぶつかり合うというところに、協働とか地域連携ということが広がらないといけないのではないかと思います。そのことが、逆に学校教育においても、逆に社会教育においても、ある種、固定的なコミットメントの学びの、いわば閉じた共同体が解き放されるというような、そういうことが生まれ出してこそ、多分この事業は更に質として高まっていくのではないかと思います。
  次のページを御覧ください。これが今お話しした、いわゆる信頼というものが問題になる関係と、安心というものが問題になる関係のイメージ図です。つまり右側に陥らないで左側の関係を作れるということがコーディネーターのポジションとして重要なのではないかということです。
  7ページを御覧ください。そうしますと、先ほど若江委員から、ストラテジーとかプロデューサーなどのピラミッド型の人材配置というものがありましたが、私としては、これは否定的な感じがあって、むしろネットワークというのはツリー型の仕組みではなくて、根っこといいますか、依存型の仕組みになる、あるいはならざるを得ないのではないかと思います。ですので、そういうような意味合いで、地域コーディネーターが、学校教員とは、また独立した形で、ある種の資格や称号というものを社会的に評価を受けて持つことが、このようなネットワークを構成していく可能性が、より強まるのではないかと。そうなりますと、そういうものを社会的な評価につなげていくためには、行政とか家庭とかということだけではなくて、第三者の活用というものが必要になってくるのではないか。そこに大学とか各種法人が役割を果たすところがあるのではないかと思います。
  次のページを御覧ください。私は、東京学芸大学に勤めていますけれども、教員養成の基幹大学なんですが、教員養成をしつつ、今年の4月から教育支援課程という免許を持たないけれども、学校教育を支援していくという人材養成の改組を行っています。そのときに人材養成の持つべき力として、ある種、スペシャリティーと呼ばれるような専門性の部分と、コーディネーションと呼ばれるような調整する、それもたけた能力というものの重なり合いの中で、右の上の人材というものを大学で養成していくということが、一つ社会的な役割として必要なのではないかというような議論をやっていたという図です。この図のような、ある種の人材の発展過程といいますか、縁のようなものをイメージするような段階にあるのではないかというようなことを、ちょっと思ったりしています。
  次のページ、御覧ください。コーディネートということが言われるんですけれども、協働が進むということは、具体的には、教育者側から見ますと、チームアプローチが進むということでもあると思います。そのときに、その登場人物を大まかに、先生と地域人材とカウンセラーやソーシャルワーカー等の専門職というような三つに区分しますと、そのチームの構成の仕方というのは、丸1から丸7まで、いろいろなものがございまして、現状の学校の教科指導から地域外部での行事運営というところを掛け合わせてみますと、プラスの数が多いほど、よくされているというような図ですが、このような形でコーディネーターが必要になったり、あるいは地域協働という形でチームアプローチをする場というのは様々にあると。それをどのように捉えて、構造化して、人材養成につなげていくのかということは、少し丁寧に検討する必要があるのではないかというような図です。
  以上のようなことが、人ということで何を考えなければいけないのかということで、少し観点として出したものです。
  次の資料からは、そういうことを踏まえながら、大学間で連携を組みまして、現在、教育支援人材認証制度というようなものを運用しています。その概念図が、この資料になるわけですけれども、各大学が、先ほど申し上げましたような第三者機関としての、つまり中間支援組織としての役割を果たすために、地域と地域の行政と連携しまして、学びの場を提供することで、その学びを、ある種、認証を行って、その認証を使って、連携とか協働という現場に、更に誘っていきたいというような、そういうような趣旨になっています。
  11ページを見ていただきますと、その認証の種類というのが、現在のところ丸1から丸4までございます。丸1は、ほとんど母数を増やしていくというような意味での入り口のようなものですし、丸4にしましても、30時間程度の、大学の時間でいいますと、4単位程度のものですので、決して、これで専門性が高まるとは思えないんですけれども、ただ、現在までの動きを見てみますと、むしろ実践的に活動を積まれた方が、こういうある種の知識による理解を行うことで、御自身の活動を組織付けたり、あるいは振り返ったりするというような意味合いが非常に強いのかなと思っているところです。
  さらに、第三者機関としての、そういう町会というような組織が、こういう学びを認証していくことが、御自身の自信につながったり、あるいは行政側が、その活用という形で、少し仕組みを作れるというようなことに役立っていると思います。
  12ページを御覧ください。具体的には、こういうような左から右へという流れで、現在は動いているんですけれども、認証講座という形で認証を受けるだけではなく、交流会とか、あるいは後ほどお話ししますが、「パスポートクラブ」というようなマッチングの仕組みというものも、ある種、プラットフォーム化するがゆえに、現在のところ動かすことができているのかなと思います。
  次のページを御覧ください。今、「パスポートクラブ」というようなお話をさせていただきましたが、大学がそういう形で認証を行政とともに出すことで、例えば、真ん中に足立区というのがございますけれども、足立区では、これまでも学校支援を含む様々な地域人材の育成をやっていたんですが、ギャラクシティという一つ大きな施設を作る、それをきっかけにして、人材養成間の一本化といいますか連携を図っていきたいということになりました。そのときに、この仕組みを活用するということで、ある種、プラットフォームとして、人材養成のいわば集約と組織化ができたというような動きになってきました。これを使って、現在は、例えば、割と教育課題になっている子供の貧困問題とか、そういうところへの人材供給というところへも活用しようとしているということになっています。
  14ページを御覧ください。このような大学間の活動を行う中で、幾つか課題として見えてきていることもあります。一つは、こういうものが全国で一律のというのではなくて、その大学を活用できるというのは、各大学が地域とある種カスタマイズを積極的に行えると。それはある種の地域からの教育的ニーズを拾っていくといいますか、明確に捉えていくということにもつながっていて、これが非常にうまくいっている面の一つかなと思っています。
  次に、足立区の場合もそうですけれども、人材の養成・活用・研修という流れですが、学んで活用するというリニア型の発想ではなくて、手前の課題があって、そのための学びがあって、それを活用で確かめて、そうするとまた新しい課題が出てきてというような、非常にスパイラルな動きが現場では本当に見られる場合が多いと。フォローアップ研修なんていう言い方もありますけれども、このスパイラルな流れというものを、どうシステムとして考えていくかというところがあると思います。
  次に、学校との連携というのは信頼の流通ということを最初にお話ししましたけれども、これはやはりコーディネーターの存在は非常に大きいわけですが、とりわけそのプロセスを共有するということが必要だと思います。プロセスを共有する際に幾つか道具を使うんですけれども、学校はICTは本当に苦手で、この辺りのところも、フォローしていかないといけないかと思います。
  四つ目に、こういう人材養成とか研修をやっていますと、その学びの質をどう保障するかという問題がいつでもあるんですけれども、これは教材とかテキストということではなくて、やはり学ぶ、その現場での講師の側面が非常に大きいように思います。ですから、内容側面に比べて、OJTも含めまして、講師という側面を考えるということは一つあるのかなと思います。現在、大学という場所からの意見になっていますので、そういう面が強いんですが、結局、大学というところは、様々な立場の企業や地域や学校というような、異なる教育組織や教育活動があって、それをある種、ニュートラルな位置に、プラットフォームのような形で一旦つなぐきっかけ作りができるというところが強みになっているのではないかと思います。ですから、そのような活用の仕方を考えていくというのが一つかなと思っているところです。
  最後のページは、コーディネートということが、よく社会教育では問題になりますが、実は学校の教師も、もちろんこれはかなり重要な問題になっていて、いわゆる従来の教師観がかなり崩れてきています。そういう意味では、学校の教師自体も、実はコーディネーターとしての専門性を個々の教員が持つべきだという議論が、かなり広がっている中で、今回の社会教育側のコーディネーションということと、それをどう関連付けたり、あるいはプラスしたりしていくのかということも考える必要があるのではないかと思います。時間が参りましたので、私の方はこれで終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

【明石部会長】
  どうもありがとうございました。では、関委員、お願いします。

【関委員】
  愛媛県の新居浜市の方から参りました、関と申します。いろいろお話を聞きながら、四国の愛媛県の方と、都市部のイメージがかなり違うのかなということを感じました。教育資源の違いと言ってしまえば、それだけかもしれませんが、まだまだ地方の方では、先生方に対しての信頼感は非常に強く残っているなということを改めて感じます。
  社会教育側の立場は、逆にその先生方をいかに支えていくかということ、それで今、まだ我々の活動は行われているのかなというのを前提として感じたものでございます。特に私ども、学校支援地域本部の事業は、やり始めの、9年ぐらい前から取り組んできたわけですけれども、その中で思っているのは、自分たちのいろいろなものを持ち寄って、それを学校といろいろ協議しながら、寄り合いの場を持ちながら、子供たちをいかに育てていくか、その面で支援していくという形で、今まで取り組んできたような気がいたしています。とりわけ、どうして学校支援に取り組むかというときに一番のきっかけになったのが、我々の場合は、学校が非常に荒れた時期がありまして、学校側が、初めの頃は、自分たちの中だけで解決できるということで、地域に対して働き掛けなどしていなかったんですけれども、ある校長先生が、公民館の方に、地域に協力してもらえないかと声掛けをしてくれた、そのことが学校と地域の距離を一遍に縮めた、そんなことがあったことを、今、改めて思い返しています。それ以降、先ほどの松田副部会長の御発表にもありましたけれども、良い意味の学校と地域との信頼関係が、そこで培われてきたのではないかと思います。マイナスの面があったがゆえに、それを何とかみんなで一緒にいい方向に向けようという力が働いたのではないかと、感じています。そういう意味で、その人材の配置の在り方について発表させていただきます。
  学校と地域をつなぐ地域コーディネーターに期待することということで、幾つか思い浮かべてみました。私は社会教育の人と学校教育の人というのは、感覚的にかなり違う感じを持っていると、いつも感じております。社会教育でいろいろ活動してきた人間というのは、いろいろな経験の蓄積というか、活動の蓄積というか、自分たちが積み重ねてきたことで、その人間を評価していくという、そういう土壌が非常に強いような気がします。急に来た人間が、なかなか地域に受け入れられない。しかし、地道に汗を流してきた人間、そういった人に対しての信頼感は物すごく強いものがあります。
  一方、学校教育。これはやはり教育の専門分野でございますから、子供たちに対して、どのような教育をしていくか、そのことが一番の課題であろうかと思います。その尺度の下で、学校教育の評価はなされるのではないかと思っています。ですから、例えば、公民館のような社会教育の現場で信頼されている人が、そのまま学校教育の場で信頼されるということは、時にないこともあると、いつも実感しています。
  社会教育の人間は、ともすれば情熱的になり過ぎて、猪突猛進型になって、自分がやりたいことを、とにかく学校側に投げ掛けていくというふうな傾向もあろうかと思いますので、そういったところが非常に、ある面、我々にとっては非常に有り難いんですけれども、学校側にとったらつらいところがあるのかなということをいつも感じます。ですから、学校で本当に何を望んでいるか、そのことを学校の中できちんと協議して、それを地域の中で持っている、いろいろな人脈とか資源を、いかにそれにつなげていくか、それを考えていくつなぎ手になる人が大事になるのではないかと思います。なかなか、その地域の中での信頼関係を持っている人と、学校側の思いをきちんとわきまえている人、その両者を1人で兼ねるのは難しい気もしますんで、それをそれぞれにおいてつないでいくようなことが大事ではないかといつも感じております。
  2点目ですけれども、学校支援というと、学校のことだけを考えてくる傾向が強かったような気がいたします。しかし、学校も地域の中の一部分であります。ですから、学校のことを単独で考えるのではなくて、地域の将来の姿みたいなものを同時にイメージできるようなコーディネーターが大事ではないかなと思います。良い学校になれば、当然、良い子は育つのかもしれません。しかし、それが良い地域でなければ、なかなか地域に帰ると学校で教えてもらったことが全部水の泡になるということもあろうかと思います。その両者をつないでいくような考え方、それが大事ではないかなと思います。
  学校支援地域本部事業が始まったときに、学校支援地域本部ではなく、地域支援本部、まちづくり支援本部があり、その中の一部分が学校支援地域本部ではないのかという議論をしたことを思い返します。これは学校運営協議会でも同じではないかなと思います。前回の会議の中で、生重委員からお話を頂いたように、地域では同じような意思決定をする人間が、既にほかの機能としても成立している部分もあろうかと思います。そういったものが逆に学校運営協議会を兼ねるという形もあるのではないかと思います。
  3点目ですけれども、学校へコーディネーターを1人配置するというのは非常に厳しいのではないかと常々思います。新居浜市では、地域支援コーディネーターではないんですけれども、図書館支援員的なものを制度的に立ち上げて、運用しております。その図書館支援員は各学校の図書館に本当は置きたかったんですけれども、なかなかそれがかなわずに、教育委員会事務局の中に、その図書館支援チームというものを設置しております。複数の人間が幾つかの学校を担当するという形で回しているわけですけれども、そのことによって、1人ではなかなか考えがまとまらないところを、チームで一緒に考えて対応していく。人のつながりも、一つの学校校区の中での人とのつながりではなくて、複数の、あるいは全市域の人のつながりをうまく活用できる、そういうふうなことで活動の輪が広がっているということも聞いております。また、学校内へコーディネーターを配置してしまうと、ともすれば学校の事務サポートに回らざるを得ないこともあろうかという気がいたします。そういったものを避ける意味でも、本当に能力の高い人間が配置できるのであればそれもかなうかもしれませんけれども、なかなか難しい面もあるのではないかということを感じます。
  4点目ですけれども、これは竹原委員が館長をされている東山田中学校コミュニティハウスを見て、いつも感じるんですけれども、学校の中に地域と教師、あるいは子供をつなぐ共有スペースがあることの大切さを感じます。以前、新居浜市でも、二つの学校に共有スペースを作ったことはあるんですけれども、校長が替わると、その部屋は使われていないといった、非常に残念な状況になったことあります。やはり本当のコーディネーターがいれば、そういった活動拠点があることによって、学校と地域のつながりがますます広がっていくのではないかと期待いたします。
  あと、5点目なんですが、これは私どもの地域の学校の話なんですけれども、我々の校区では、小中学校、地域の団体、PTAなども含めての情報を交換できる学校地域連絡会という会を持っております。8年ほど前、学校が荒れたときから、お互い情報交換をして、学校の先生も地域の人間に顔を知ってもらうような場を作ろうということで始めた事業なんですけれども、月に1回、公民館に小中学校の先生方、そして地域の団体の代表などが集まり、情報交換を持っています。これが積み重なることによって、教師と地域の人の顔つなぎもでき、いろいろな活動の中で、本当に必要なこと、腹を割ってお願いをすることのできるような関係がようやく生まれてきたような気もします。このことは、子供たちにも非常に良き影響を及ぼしてくれていると信じています。以前は子供たちが地域の活動に参加するというのも、学校の先生に言われて、半ば強制的に参加するようなことが多かった気もしますが、学校の先生方が地域に対しての理解も深まったということで、今、生徒会辺りが中心になって、地域の活動に参加していこうという動きも生まれてきたと思っています。
  続いて、地域コーディネーターの養成、研修についてであります。新居浜市での養成研修、一般的な社会教育と学校教育のつながりを求めていくという理念的な研修、講演会等は行うんですけれども、まだまだ、そのスキルを身に付けるための研修ができていないというのを感じます。コーディネーターが何をすべきか、どうしてコーディネーターが必要なのか、そういったことについての研修は、やはり本当は不可欠だと思っております。これは愛媛県においても同様のようでございます。当初、学校支援地域本部が委託事業だった時点では、各市町からコーディネーターが集まり、研修会を開催していたようですが、現在は任意参加ということで、県、松山周辺の人間が集まるレベルにとどまっていると話を聞いています。私はこのような研修をやることによって、様々な市町村、あるいは都道府県等で行われているものを、いろいろ見聞することで、自分のことを客観視できるような人材の育成が大事ではないかと思っています。このようなものをコーディネーターが習得できたら変わるのではないかと思います。
  続いて、地域連携、まちづくりにおいて、教育委員会と首長部局が連携できるかどうかということですが、行政の中の予算重視で、配分された予算をいかに執行するかということにきゅうきゅうとしている状況の中で、自分たちがやる方がはるかに効率的であるという判断の下に、ほかとのつながりをほとんど持たずに仕事を進めてきたという気がしております。本当は人作りの面と各行政施策が結び付いて初めて効果が上がる領域がたくさんあろうと思います。防災にしてもしかり、あるいは福祉的な面にしてもしかり、そういったものをいかにつないでいくか、これはどちら側からということはなかなか言いにくいかと思うんですけれども、必要性を感じた部局の方から声を掛けていくような仕掛け、それが大事ではないかと思います。その中でも、とりわけ社会教育主事的な位置付けが、今、きちんとありますので、その社会教育主事に、その仕事を担うべき仕事してきちんと位置付けてもらいたいなというのは、常々思っておるところです。最後に、学校と地域がつながることによって、今言われている地方創生が図られるのではないかと常々思っています。一つは、子供たちの意見が地域の大人の考えを変容させていく一番の触媒になるのではないかと思います。我々は、この頃ワークショップを多用しますけれども、その中に子供が入ることによって、大人の発想は全く変わります。また、子供も自分たちの考えを伝えることによって大きく成長していってくれているのを、いつも実感しています。それは小学生レベルから高校生レベルまで、まあ、大学生もそうかもしれません。いろいろな分野で、そういう場が設けられるのではないかと思います。私どもの方でも、新居浜南高校という高等学校の子供たちが、地域の近代化産業遺産、別子銅山の遺産のことについて情報発信をしてくれて、我々大人が、そのことを通じて学ばせていただいております。そういった場面をもっと広げていくことも大事ではないかと思っております。以上です。

【明石部会長】
  ありがとうございました。では、井上社会教育調査官、お願いします。

【井上社会教育調査官】
  お手元の資料の4を御覧いただければと思います。栃木県の地域連携教員制度について、御説明申し上げます。なぜ私がということなんですが、私、2年前まで栃木県教育委員会におりまして、この制度を立ち上げるときに携わったということで、説明させていただきます。
  まず、この制度ですが、目的としては、学校と地域が連携した教育活動を、生涯学習の視点から効果的・効率的に展開するということが設置の目的となっております。特に担当者の明確化であるとか、役割の明確化、また連携に関するネットワーク作りというようなことを通して、この目的を達成しようというものです。設置の対象としましては、全公立学校に設置しております。御覧のように小中高、県立学校に配置しておりまして、平成26年度から配置をしております。この設置の方法ですけれども、校長が指名して、校務分掌に位置付けるという方法をとっております。これにつきましては、要件として、最初の囲いの中のように定めております。これについては、別添の資料1の指針を作りまして、ガイドラインを作って、各市町村にお願いしているというものでございます。要件としては、まず社会教育主事の有資格者であることということです。
  栃木県につきましては、一番後ろの10ページを見ていただければと思うんですけれども、昭和56年から一貫して社会教育主事有資格者を養成しております。これは発令にかかわらず、社会教育主事有資格者が学校と地域の連携について非常に効果的な役割を果たしていくということで、年間100名程度ずつ大学に派遣して養成をしております。現在1,080人程度、学校に在籍しておりまして、小中高には約8割の学校に1人以上配置していると、高校では90%ということで、有資格者が配置されているというような状況でございます。
  また1ページに戻っていただきまして、その有資格者ということが、まず要件として、校長、教頭でない者ということで、管理職以外の者が細かくいろいろ動いてもらおうということで、管理職を外しているところでございます。ただ、学校の状況によって、有資格者がいない、またどうしても管理職員が担えないというところは、教頭先生でもということでお願いしているものでございます。
  職務につきましては、(4)のように、三つの柱を設けております。この制度を立ち上げるときに一番問題となったのは、教員の多忙化にどう対応するのかということが一番問題となっておりまして、そこでやはり指導主事がなかなか首を縦に振ってくれなかったんですけれども、やはり今申し上げるような三つの役割を自ら行う、若しくは支援すると。自分でできない場合には支援という立場でもいいですよということで、役割を明示させていただきました。
  特にコアの部分として、この三つのものを役割として位置付けております。一つが、学校と地域が連携した取組の総合調整ということで、学校全体として、地域との連携を見てくださいということで、学校の連携に関する年間計画を作ってもらうと。それも各教科からの要望等も吸い上げながら、年間通してどのような連携をしているのかということを計画的に見てもらうというようなことが一つ。あと、学校の教職員に対して研修会をしてもらうというようなことを例示しております。二つ目として、連絡調整、情報収集ということで、本当にこれは窓口ということで、地域とのやりとりということをやっていただくと。場合によっては情報収集ということで、研修会等にも出ていただくというようなことを位置付けております。三つ目が、取組の充実ということで、ちょっと間違って、ここは矢印の後、別なものが入ってしまったんですが、どういうことかというと、ほかの教員の方が行う地域連携の取組をより良いものにするように、プログラムの充実を図ってもらう、助言をするというようなことを三つ目の役割としてあげております。余り細かいものは定めておりませんで、これも校長先生の学校作りを尊重するということで、細かいところまでは定めておりません。
  続いて、2ページを御覧いただければと思います。この地域連携教員の概念ということで、図に示したものでございます。
  まず、学校には、この地域連携教員が学校の中の要望を吸い上げたり体制作りをしたりということで、学校の中のものを取りまとめる、体制作りをしてもらうというようなものです。この地域連携教員と地域のコーディネーター、地域コーディネーターが連携することによって連携活動を推進していくというようなものです。ここで重要なのは、地域連携教員は飽くまで学校の教育活動の充実ということで、地域作りまでは求めておりません。それについては、地域作りは教員の業務外ということになりますので、そこは線を引かせてもらって、個人的に活動される方は結構なんですが、教員としては、学校の中の取りまとめをやっていただく。逆に地域のコーディネーターと、また学校の支援組織というものは、実は各市町村の社会教育行政の方がコーディネーターの養成をしたり、ネットワーク作りをしたりということで、そちらは社会教育行政に任せるというようなスキームを作っております。このようなことで、地域連携教員と地域コーディネーターが、1人がコーディネーターをやるということではなくて、先ほど来、お話が出ていますけれども、やはりコーディネーターズといいますか、いろんな方がコーディネーターを担ってもらうことで、より良い教育活動の充実と、1人の負担の軽減で、制度的にも疲労を起こさないようなことを目指した構図としております。実際、地域連携教員の設置状況ですけれども、その表を見ていただきますと、7割が教諭が指名されております。義務教育を中心に、やっぱり3割は、どうしても教頭先生ということで、7割、3割ということで指名されている状況です。この中で、社会教育主事の有資格者は48.2%ということで、半数の方が有資格者ということで指名されております。この数字については、いい結果かなというふうには考えております。
  続いて、3ページをお願いできればと思います。校長先生に指名していただいても、この連携教員をいかに支援していくかということで、その成否が分かれるということで、総合教育センター、市町村教育委員会、県教育委員会、また教育事務所が三つどもえになって、この連携協議を支えていこうという制度を作っております。総合教育センターは地域連携教員への研修機会の提供、また教育事務所は情報提供であったり、あとは地域連携教員が困ったときに相談に乗るヘルプデスクになったりとか、直接学校に行って、いろんな助言をしたりということを行っております。市・県教育委員会としては、重点推進校というものを指定しまして、先進的な事例を吸い上げるほか、後でお話しますガイドブックやリーフレット等を作成して、一般教員への周知啓発を図っているところでございます。
  研修につきましては、表の2にあるように、新任の地域連携教員や、また事務所ごとの事務所単位でのネットワーク作りの研修、また地域連携教員への研修ということで、予算、旅費を計上しながら研修機会を確保しているというような状況でございます。それと、資料の作成ということで、地域連携教員になった方が何をやったらいいのか分からないというようなことがないように、ガイドブックを年度初めに作成いたしまして、どのような活動が求められているのか、また、どういうことをやっていくべきなのかということを共通理解を図ると。それを研修会等でも協議しながら、自分の活動をどうしていけばいいかということを確認していただく機会を作っております。また、地域連携は、やはり何よりも一般教員の方が理解してくれるかどうかということが非常に問題となりますので、リーフレットを作成いたしまして、全教員に配布して、地域連携の重要性というものを周知しているというようなところでございます。
  連携の効果につきましては、幾つかのデータを持ってまいりましたが、4ページでございますけれども、まだ1年たった状況で管理職に聞いた調査によりますと、良かったという答えが52.3%、良くなかったという答えは3%しかありませんでした。44.4%がどちらでもないということで、どちらでもないというのは、1年目なので、まだ成果が現れていないというような回答が多かったんですけれども、おおむね良かったという回答が多くなっております。理由としても、やはり窓口が明確になった、またボランティアとの連携が強化された、また有資格者の力量が発揮されるようになった、また教頭の職務の負担軽減につながったなどということが出ております。一方で、良くなかった理由として、やはり学級担任をやりながらの兼務というのは難しいということで、やはり多忙感との関わりということが問題となっております。
  また、先ほどから信頼ということも出ておりましたが、この地域連携教員に対して、国社研の実務研修生の方で、ソーシャルキャピタルの視点から調査を行ったところ、地域住民との信頼関係等につきましては、8%が大いに引き継げたと、68%がやや引き継げたということで、7割以上の地域連携教員が、地域との信頼関係を築くことができたというふうに実感しているということになっております。5ページの図1となっております。また、その他のところも、6ページ以降、信頼関係や、その他のものについてのデータも上げておきましたが、おおむね肯定的な意見が多くなっているというような状況になっております。
  今後の方向性として、やはり支援体制を更に充実していく必要性があるということと、やはりこの設置の成果というものを、活動状況が非常に内容的に充実したというものも報告がありますし、また、この活動の機会も増えてきているというような状況もありますので、その効果測定、また評価ということが重要になってくるかと思います。
  また、校務分掌ということで、この地域連携教員が設置されると、窓口が一本化されるということで、学校全体の多忙感ということは軽減されることが見込まれるんですけれども、ただ、それがやはりまだ地域連携教員が多忙感が軽減された分、地域連携教員の校務分掌を配慮していただいて、少し軽減していただくということになると、活動しやすくなると思うんですけれども、そのようなお願いというものもしていかなければならないということも報告されております。以上、長くなりましたが、栃木県の事例について報告いたしました。ありがとうございました。

【明石部会長】
  ありがとうございました。4名の方々から、非常に貴重な御意見、また提案がございました。先ほど事務局から、資料5の検討の視点がございました。また、資料6では、チーム学校と学校支援地域本部との一体化の問題も絡めて、様々議論してまいりました。今の4名の方々の御意見も踏まえまして、御意見がありましたら、お願いいたします。では、生重委員。

【生重委員】
  最初にお伺いしたいんですが、本日のテーマである学校と地域をつなぐ人材配置の在り方について、本日議論をして終わってしまうのでしょうか。本日の意見を踏まえ、改めて議論しなければ、この先の人材配置の在り方というものが見えてこないのではないかと思います。
  私は全国の研修会の講師を務めておりまして、先日も滋賀県の教員の方々に対して、地域連携担当の研修をやってまいりました。7割の先生が、何をやってよいか分からないという状況に置かれていて、大変気の毒だと思い、やはり体系立てた研修の在り方と、先生たちが機能的に動けるような体制づくりは、これからとても有効であろうと思います。
  先ほど関委員がおっしゃっていましたが、愛媛県では委託が切れて以降、体系的に出来上がっておらず、実は、それは全国的に言えることで、全国各地に文部科学省が干渉するということではなく、在り方としての基本というものをきちんと打ち立てていくことが、今後は重要だと思っております。
  参考資料2の4ページに、私どもが文部科学省の委託事業で作成した育成テキストがありますが、これに準じた事例を含めたものも、私どものホームページと文部科学省のホームページからダウンロードできるようにしてあります。これを見てオファーがくることがありますが、これは10時間以上掛けなければできないものなんですが、4時間でお願いしますとか、2時間でお願いしますと平気でおっしゃるんです。育成するということの大切さ、きちんと段階を踏んでやるべきことを明確にして、そして、まず第1歩はどこからなのかということが分かる研修を行わない限り制度を作っていってもうまく回っていかないんではないかと思います。

【鍋島地域・学校支援推進室長】
  本日、学校と地域をつなぐ人材配置の在り方について、集中的に議論いただきますが、次回の会議以降も継続して議論していただきたいテーマの一つですのでよろしくお願いいたします。

【明石部会長】
  私もそう思います。非常に大事な提案がありましたから、引き続き、もっと詰めていきたいと思います。井出委員。

【井出委員】
  杉並区の学校支援本部の10周年、今評価をして、来年、これから先の10年どうするかという検討をしています。それで、やらなければならないことというのは、かなり明らかになってきていて、そして、それをどうしたらいいかということも明らかになってきている。そして、学校と地域との関係、それから学校、地域と企業であるとか、もっと大きな社会との関係ということも明らかになってきている。この間の経験を整理して、分かりやすくなってきているので、これはいい材料になっていくし、これからというところ、あるいはまだまだというところは、参考にしていくのは大事だと思うんですが、私、いつもこういう制度を検討していて思うことは人なんです。先ほど事例発表がありました栃木県の例のときに、校務分掌として、校長が発令するという形でしたよね。校務分掌というのは駄目なんです。つまり、本来校長がやるべき職務を教員に分掌させることができるという、学校教育法に従ってやっているだけの話で、分掌させてもしなくてもいいし、あるいは分掌したからといって、何かそこに特別な権限が生まれるわけでもないんです。つまり職制じゃありませんから。副校長とか教務主幹とか、あるいはほかの者でしたら、当然、その職に見合った責任と権限が付与されているわけですけれども、校務分掌というのは、言ってみれば学級委員会の係と同じですから、結局、うまくいっているときには、それで回っていきますけど、うまくいかなくなったらそれまでということがあって、まず一つは、地域連携教員を制度化するのであれば、きちっと職名、あるいは職制として位置付ける必要がある。それからもう一つは、位置付けたら、それを定数化する必要がある。つまり校務分掌では、もう回っていかない。
  今、チーム学校の構想で検討していますけれども、今後、学校、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等を一定の構成員として位置付けていくときに、定数化していくということはまだ議論になっていないんですね。
  我々の部会で、今後、この話を検討、もっと詰めていくとすれば、恐らくそういう役割を職制として位置付け、なおかつそれを定数化していくことが可能かという、これは是非議論をして、訴えていく必要があると思います。

【明石部会長】
  ありがとうございました。非常に大事な御指摘で、これは相当慎重で、また大胆にやらなければいけないテーマだと思います。ありがとうございました。
  井上社会教育調査官に財政的なことをお聞きしたいんですけど、栃木県がこういう仕組みを去年作りましたよね。教育委員会に財産要求しますよね。どのぐらいお金を請求したんでしょうか。

【井上社会教育調査官】
  500万ほど請求して350万ですね。人について出ないですので、研修の予算。

【明石部会長】
  研修の資金だけでも500万。

【井上社会教育調査官】
  はい。社会教育主事への派遣の増員入れて350万。

【明石部会長】
  はい。ありがとうございました。

【永山委員】
  地域連携を担当する教員の在り方についてということで、現場の立場からお話しさせていただきます。
  教員が地域連携を担当すると、教員の参画意識や当事者意識が向上するのはもちろんそうですし、地域との連携がよりスムーズになるだろうと思います。ただし、これは学校規模にもよりますが、担任との兼任は、現実的に難しいと思います。具体的には、東京の場合、教員の勤務時間は8時15分から16時45分です。先生は、お昼の休憩時間は、給食を指導してますのでとれません。いつ休憩するかというと、東京都の場合は15時45分から16時30分までが休憩時間です。そして16時30分から16時45分が15分間だけ勤務時間。6時間目の授業が終わるのが15時25分です。休憩に入るまでの20分間は帰りの会をやっていますから、子供たちが下校すると同時に休憩時間に入るわけです。そうすると会議の時間がとれないんです。
  要するに、学年会とか先生たちの打合せをいつやるかというと、勤務時間後にやっており、地域連携の方と打合せをするのは夕方が多いんです。校長の立場としては、16時45分以降に会議を設定することはできません。つまり、ほとんどは教員のボランティアなんです。専任教員というか、職制を制度上に作らないと、単に何とか主任と同じレベルではできないだろうと思います。
  それから、先ほど松田副部会長からも信頼という話がありましたけど、やはり地域の方と話合いをするためには、信頼関係がないとできません。そのためには、土曜日や日曜日にお祭りに参加したり、地域の行事に参加したりもしています。管理職が地域に顔を出しています。それを教員にやらせることはなかなかできません。教員は、ほかにも保護者の対応もあり、頻繁に保護者と対応しており、守秘義務の問題が絡んできます。管理職がそのような状況でやっていますので、管理職のなり手がいなく、東京都は副校長が少なくて、もしかしたら数年後には副校長がいない学校が出てくるだろうと言われています。そこら辺のところをどう解決していくかというのは、本当に議論を要するところで、現実問題としてどうなのかというところも、是非、この会で検討していただけると有り難いなと思います。地域連携担当教員がいたら、本当に学校は助かると思います。以上です。

【明石部会長】
  具体的な事例、ありがとうございました。先ほど、井出委員はそういうことを想定して、制度化のことを考えていらっしゃると思います。

【平岩委員】
  資料の5の学校と地域をつなぐ人材の配置の在り方に関する検討の視点について、私は何かやるときに、うまくいかないケースはどんな場合だろうということを考えました。
  一つ目に学校の先生方と地域側がコミュニケーション不足になることだと思います。人を配置して、役割は決めたが、お互いの信頼関係がないとか、依頼したコーディネートが必ずできないことも考えられます。無理なオーダーが来て、できなかったりすると、何だよということになってしまったりして、うまくいかなくなります。地域連携担当教員を決めたとしても、学校として応援する姿勢がないと、地域連携担当教員が孤立していってしまい、結果的には、何で地域と連携をしなければならないんだといった話になってしまうと非常にかわいそうな状況です。ですので、栃木県のこの仕組みは、すごくいいと思いました。一方で、学校として、地域として、この制度を応援して、この取組の考え方を支持しているということが前提にあって初めてうまくいくんだろうと思いました。
  二つ目に、配置についてどう考えるかです。これもうまくいかない例を考えると、各校1人配置した結果、余りふさわしくない人物が配置されるケースが当然考えられます。学校のお手伝いができることは、地域側からすると一種のステータスで、「僕に声を掛けないと学校には入れないよ」みたいな人物が出てくる可能性が大いにあります。ですので、基準を作るというよりは、ある意味、人ありきで、いい人材がいたらやっていくというような感じで、適切な人材を見付けていくことを先に考える方がよいと思いました。
  もう一つ、企業の話が出てましたけれども、やはり企業の巻き込みがすごく弱くなるというケースも考えられると思っています。地域のシニアの方を配置するのは、もちろん出てくると思うんですけれども、現役世代が全然いなくて、企業を全然巻き込めなかったような話も、よく聞きますので、現役のお父さんたちを入れるとか、あとはキャリアリンクさんのような専門の団体とうまくつながっていくようなことが必要だと思いました。
  最後、三つ目に確保・養成・研修についてですが、やはり難しいと思ったことは、先ほど関委員から新居浜市の例で、理論が先に立ってという話がありましたが、これはまさにそうだと思いました。やはり実践第一だと思いました。もし、私が研修を組んでくださいと言われたら、OJTの機会を作っていくと思いましたが、我々は放課後の活動をやっているものですから、放課後で、頻繁に実践の場があるんですね。そうするとコーディネートもうまくなってきますし、それによって先生方が、こういうことをこの人たちはしてくれるんだということが見えてくると、お願いもしやすくなってくるというような循環が生まれてきます。やはり実践第一で、放課後の場が使えるのであれば、そこを使って、どんどん数をこなしていっていただけると非常によいと思いました。実際に機能するかといったことを、考えた上で、制度化や施策を進めていくというのが非常に重要だと思いました。以上です。

【明石部会長】
  ありがとうございました。井出委員。

【井出委員】
  先ほど時間がなかったので半分にしておいたんですけれども、後半の半分。
  定数化して学校に配置するということは、かなり難しい。多分、不可能だろうと私は思っています。でも、どこかに風穴を開けなくてはいけないので、チーム学校構想を進めていくときに一緒に盛り込んで、いわゆる免許職種以外の仕事を誰がやるかということと、それから社会教育の専門家としての資格を持った人が、学校の教育活動の中でコーディネーターのような仕事をしていくという、そういう見直しもしていかなければいけないし、そういう作業は続けていき、できれば、ここで言うところの連携教員のような制度ができていけば一番いいと思っていますが、それのあい路は、先ほど平岩委員が指摘されたように、人は置いたけど、口が閉まっていれば、そこから何も入らない。また小さな口であれば大きなものは入らない。あるいは口の形が変わっていれば、その形に合わないものが入ってこられないという、いろいろな意味でゲートができるわけです。ゲートは外からのものを受け入れる場合もあれば、外から来るものを拒絶するという役割を果たしますので、それはきちんと理解していかなければいけないんですが、それを待っていても始まらないので、実は私の考えていることは、地域コーディネーターを、今、杉並区が250人ぐらい育成していて、各学校の支援本部に3人から4人、多いところは6、7人いるんですが、かなり経験を積んで、学校の教育も分かるし、社会教育、あるいは生涯学習、あるいは地域との連携といったことも研修を積んできて、腕を上げていますので、ここを制度的に何とかできないかと。教員として定数化するのではなくて、学校の中に、あるいは学校と地域の間の、前回、私は喫水域という言い方をしたんですが、絡まって重なっている部分に一つポストを置いて、それの役割を地域コーディネーターが果たしていく。その原型は、実は今、杉並区の小学校、中学校には学校支援本部が全て設置されていて、部屋を持っているんですね。その支援本部の会長なり、会計責任者なり、あるいは事務局長なりの、かなりのメンバーが職員会議にも参加していますし、職員室にも自分のデスクを持っているという学校も出てきていますので、ここを制度的に認めていく。
  最初、校長はすごく嫌がったんですね。守秘義務とか、子供のこととかって。でも、子供のことを話し合う会だから、子供のことに関わる人がいた方がいいんじゃないですかということで、今、職員会議にも参加する学校も増えてきています。ですから、そういうふうに一定程度、これは私どもの教育委員会の管理規則で、その辺を、まず制度化していって、最後、行き着くところはどちらか選べる。つまり正規教員としての定数化するか、あるいはこういった地域人材に一定の権限を付与して、メンバーとして認めていくというようなことも考えていかないと、いつまでたっても定数化への道のりは遠いという感じがしていますので、その辺からやりたいという気はしています。

【明石部会長】
  ありがとうございました。竹原委員。

【竹原委員】
  私は二つのことを考えました。まず、地域のコーディネーターですが、どこにもいらっしゃると思います。発掘していないということあるかもしれないし、固定観念に縛られているかもしれません。大槌町では、本屋の店主がコーディネーターとして大活躍をしています。それは学校が良い方を発掘されたと思います。
  どの地域にもいらっしゃるのですが、様々な場面を作り入り口をたくさん作っていくことで、そういう方に出会える。そして、研修を受け、学び続ければ、すばらしいコーディネーターになっていきます。座学の研修、ワークショップだけではなく、現場を踏むということ、コーディネートケースを数多く持つということではないかと思っています。
  それからもう一つ、地域連携担当教諭については、チーム学校の中でも、はっきりと制度化が提案されているんですが、その先生を孤立させないで動けるようにするには、ほかの先生が地域連携について学んだり理解していなければできないと思います。それは教員養成段階から、地域と学校は連携するものであり大事だということが分かっている方が周囲にいらっしゃれば、職員室の中がそういうムードであれば、その地域連携担当教諭の仕事は重くならず、楽しい仕事になっていくのではないかと思います。遠回りのように見えて、やはり教員養成がとても大事で、一番早いのではないかと思っています。

【明石部会長】
  ありがとうございました。では、牧野委員。

【牧野委員】
  先ほど、生重委員がおっしゃったことにかかわって、私も賛成なのですが、本日のテーマは、次回の(3)の地域振興・再生の在り方とも絡めて考えていったらどうかと思います。
  それはなぜかといいますと、今の議論、私の立場は社会教育、生涯学習からのものになってしまいますが、もう少し原理的な、といいますか、例えば、なぜ地域と学校が連携しなければならないのかといったことに関して、十分な議論がなされているという感じを受けないのです。議論しなければいけないということは前提となっているのでしょうが、なぜ学校と地域との連携が必要なのか。もう少し言いますと、今のこの社会において、学校とは一体何であるかとか、子供にとってどういう教育が必要であるかとか、もっと言えば、学校にとって地域とは一体何であるか、また地域にとって学校とは一体何であるかというようなことについて、十分に議論されていないのではないか。むしろ、学校と地域をとにかく連携させなければいけないから、するのだというような議論から始まっているところがあると思います。そこをもう少し丁寧に議論していくことで、いわゆる学校と地域との関係の在り方というのが見えてくるのではないかと思います。
  もう一つは、例えば、従来のいわゆる教育行政における学校と社会教育との関係というように議論を立てるのか、それとも、社会教育が生涯学習に組み換えられて一般行政化している中で、地域との連携という場合に、例えば、次回の地域振興や再生というのは教育委員会のマターではなくて、どちらかというといわゆる首長部局のマターですから、そこにおいて、学校は一体どう位置付けられていくのかという議論をするのか、もう少し言えば、その議論において、地域コーディネーターとは、学校に入れなければいけないのか、首長部局に位置付けて、例えば、職員化していくことで、学校と地域の関係をうまく取り持って、地域再生につなげていくという議論になるのかどうか。こういうことを、やはり検討する必要があるのではないかと思います。
  それはもう少し言いますと、行政の在り方を、一時、行政の文化化という言い方がなされていましたけれども、例えば、行政の学習化といいますか、いわゆる従来のように行政サービスをばらまいていけばいい、サービスを分配すればいいという議論ではなくて、むしろ住民自身が新しいサービスを作り出していくという観点から、組み換えていくという議論につながるのではないかとも思います。その意味では、もう少し学校と地域の在り方や、教育行政と一般行政の在り方ということも含めて、このコーディネーターの在り方を少し議論できると、新しい展開になるのではないかと思います。是非、その方向も御検討いただきたいと思います。

【明石部会長】
  生重委員。

【生重委員】
  今の意見に賛同なんですが、先ほどの松田副部会長の発表の中に安心というキーワードが出てきましたが、安心というのは幻で、そこにはなれ合いしか生み出されていないような感覚を持ちます。
  うまくいっている地域を見ると、やはりどなたかが危機意識をしっかり持っています。いつどのような状況に置かれるか分からないという危機意識を持つことで、総体的に、社会全体が、これからの学校教育、それと地域創生という意味で、まちの活性化に取り組んでいくんだということだと思います。山口県にたくさん見られるように、子供たち自らの発信で地域の方たちを巻き込む体制を作り、そして、自らの学力、体力、それから生きる力を総体的に伸ばしていくという体制作りは、うまくいった良い事例だと思います。そういう意味では、アピールがもう少し要るのではないかと思います。
  若江委員の発表の中にもあったように、予算が付かなくなったからフェードアウトするということではなく、大切なものを自分たちのカラーに染めて、どう自分たちなりに予算化し、実行を続けていくかということ、そういうことも含めて、もっと学び合っていかなければいけないんです。
  社会教育主事の在りようについても、特に地方においての社会教育主事の在りよう、それから地域連携の在りようというところの役割を担うという意味では、社会教育主事が重要な役割を担うであろうと思います。その中で、地域コーディネーター型で学校密着タイプと、公民館型で公民館にそういう人材が置かれているタイプと両方ありますが、両方で失敗している例、成功している例を見てきていますが、それをなるべくうまくいくように自分が望んでやるという人をどう作っていくか。自分の地域を愛し、そういう子供を育てたいならば、そこに携わる大人が、まずその意識が持つことが大切だと思います。
  永山委員がおっしゃったように、組織というのは、きちっと決まり事が必要なのは分かるんですが、思いがあって、子供たちをどうにかしたいと思って、先生たちがきちっと入り込んだときに成功しています。16時30分になったら勤務終わりだから、そこからの会議に出られない、最初そう思ったかもしれないですけど、それを乗り越えて、自分たちの子供たちが生き生き変わって、主体的に活動できる子供に変わっていったときに、先生が多忙を嫌に思うのではなく、多忙にやりがいや生きがいを感じるのではないかと思います。
  いろいろな意見を出し合い、複合的に地方型、都市型はそれぞれ相当違うバージョンだと思いますので、一律なものを出していくのではなく、タイプが幾つかありますというようなことも含めて、話合いは大事だと改めて思いました。

【明石部会長】
  浦崎委員。

【浦崎委員】
  牧野委員と大体同じ意見なのですが、教育活動、連携を通して、例えば、小学校卒業時点、中学校卒業時点、高校卒業時点、そして大学卒業時点で、その子供、若者がどうなっているか、どんな意識、どんなスキルを身に付けているのか、それによって地域がどのように変わっているのか、それを先にイメージすることによって、プロセスは、それぞれ都会、地方、様々な状況に応じて必然的に決まってくると思います。

【明石部会長】
  大事な御指摘や、学校と地域の関係をどうしていくかという、小さなサイズではなく、もう少し広いサイズで考えていかざるを得ないだろうなということは分かります。
  一つ、井出委員がおっしゃったように、新しい教員の配置というのは、どこかで書かざるを得ないかなということも考えております。それが、もし無理でも、例えば、学校図書支援員ってあるんです。学校図書教諭というのは、24学級以上の場合は、必ず1名、資格を持った方がいます。認定講習を受けて取っているんです。教員を配置していないけど、資格として学校図書教諭という人が1名いて、千葉市辺りは、それを支える学校図書支援員というのを週3回、有料で、お金を頂いて行っているんですよね。そうすると、行く行くは、それを大きくして、コーディネーターという学校支援人材。今日、松田副部会長がおっしゃったような形の人材を育成し、認証していき、財政的な措置もするとかという、そういう研修システムを作っていくし、単なる使い勝手ではなく、地域の活性化をどうするかというような、もう少しグローバルな視点も考えていかざるを得ないかなという感じを受けまして、だから、既存の仕組みの中で、うまいのを当てはめていく。二つぐらいの装置を、是非やってほしい願いと、具体的にここだけを死守するとか、そういうのを次考えていきたいなという感じはしておりまして、生重委員と牧野委員がおっしゃいましたけど、もう少しこれを詰めて、ここだけでなくて、これを踏まえて、地域の活性化をどうするか。学校の在りよう、地域の在りようというのを次回から考えていきたいと思っております。どうも、今日はありがとうございました。

【谷合社会教育課長】
  ありがとうございました。今日までの議論は、どちらかというと地域が学校にどう関わっていくかという議論が中心でありました。そして、次回、予定していますのは、方向としては反対向きで、学校の方が地域にどう出ていくか、あるいは地域創生にどう貢献していくかというような議論をお願いしたいと思っています。それで、この部会に御検討をお願いしたことが一通り一巡するということになります。
  そして、9月以降は、もう一回、全体を通しまして議論をしていきたいと思いますので、今日、生重委員からありましたことも含めまして議論をお願いしたいというふうに思っております。それから、今日、学校の地域連携教員の話等、あったわけですけれども、学校の教員組織、教職員組織体制の在り方については、また先ほどありましたチームとしての学校・教職員の在り方に関する作業部会の方でも議論がされておりますので、主としては、そちらの方の議論がなされる主戦場ということになると思います。こちらの部会での御議論は、チームとしての学校・教職員の在り方に関する作業部会の方にもお伝えをして、反映していただくような形が想定されるかと思っております。

【鍋島地域・学校支援推進室長】
  本日は様々な御意見を本当にありがとうございました。資料7と参考資料1を、御覧いただければと思います。次回は、8月25日、火曜日、10時から12時、本日と同じ、この会場になります。 次回は、本日の参考資料1でいうと、(3)学校と地域の連携・協働による教育活動を通じて地域振興・再生の在り方についてになるわけですが、生重委員、牧野委員、浦崎委員からも御提言、御提示ありましたように、本日の地域コーディネーターの話と連携をさせ、進めさせていただきたいと思います。

【明石部会長】
  以上で本日予定しました議事は全て終了いたしました。これで閉会にいたします。ありがとうございました。

‐了‐

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