社会教育推進体制の在り方に関するワーキンググループ(第3回) 議事録

1.日時

平成25年6月11日(火曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省9階 生涯学習政策局会議室

3.議題

  1. ヒアリング
  2. その他

4.議事録

【浅井座長】  定刻より少し早いのかもしれませんけれども,もうおそろいでございますので,始めさせていただきたいと思います。ワーキンググループの3回目を開催させていただきます。今日もお忙しいところお集まりいただきまして,ありがとうございます。
 本日の議題の確認でございますが,お手元の議事次第を御覧いただきたいと思います。
 本日は,ヒアリングとしまして,今野委員と,福岡県の宗像市から子ども部の柴田さんがいらしてくださっていますので,御発表いただいて,その後で,「今後の社会教育推進体制の在り方について」,論点に沿って議論させていただきたいと思います。
 議論に入る前ですが,事務局より資料の確認と,これまで欠席されていた委員の御紹介をお願いしたいと思います。

【新木企画官】  それでは,資料の方の確認をさせていただきたいと思います。
 本日,資料1から3までお配りしております。資料1-1,それから1-2ですけれども,今野委員の方の説明資料となっております。1-1の方が,「社会教育行政の所管について,それから1-2の方が,「社会教育指導の任用要件を資格化することについて」ということになります。
 それから,資料2でございますけれども,第1回,第2回の本ワーキングにおける主な意見ということでございます。前回,第1回における主な意見ということで出させていただきましたけれども,それに追加して,第2回の意見につきましては,アンダーバーを引かせていただいて,追加させていただいております。
 それから,資料3の方が「今後のスケジュールについて(予定)」となっております。
 その他の机上の資料といたしまして,宗像市からの報告資料と,それから井上委員の方から「社会教育主事の在り方に関する一考察」という一枚ものをお配りしております。資料の不足,その他,お気付きの点等ございましたら,事務局までお知らせいただきたいと思います。よろしいでしょうか。
 続きまして,本日,これまで会議で御欠席されまして,御紹介できなかった委員を御紹介いたします。
 文教大学長の野島委員です。

【野島委員】  野島です。どうぞよろしくお願いします。

【新木企画官】  和歌山大学長の山本委員でございます。

【山本委員】  山本です。よろしくお願いいたします。

【新木企画官】  なお,本日は明石分科会長と清國委員,関委員,横尾委員が御欠席となっております。
 以上でございます。

【浅井座長】  ありがとうございます。
 それでは,早速ですけれども,議事の方に入らせていただきたいと思います。
 まず,(1)のヒアリングでございますが,今野委員の方からお願いしたいと思いますけれども,前回の会議でも議論になりましたけれども,今野委員は,今回の主な論点である社会教育主事の在り方,それから教育委員会と首長の関係の在り方についての御知見をお持ちでいらっしゃいますので,これらの点に関する御意見をお伺いしたいと思っております。それでは,お願いいたします。

【今野委員】  資料1と資料1-2というのがございます。それに基づいて,簡単に御説明させていただきます。
 一つ目は,所管についてということで,検討メモとしました。個人として,絶対これがいいというところまで突き詰めて検討したものをお示ししているというわけではなくて,新木さんからも話がありましたように,議論のために何かお話をということでしたので,少し軽い気持ちで,あれこれ書いてございます。御議論いただければと思います。
 まず,1-1が社会教育行政の所管についてということでございます。どこで所管したらいいのかということですけれども,これまでもいろいろ議論はあったと思うのですけれど,一番肝腎なことは,現在は教育委員会という合議制の執行機関で所管をしているわけですけれども,ここでないと駄目なのかどうかということを考えるのが第一前提でございまして,事務当局自体は,どこにあっても私はいいのではないかと基本的には思うのですけれども,合議制の執行機関である教育委員会で行わなければいけないのかどうかということが,一番のポイントかなと思っております。
 教育委員会の制度から,ちょっと考えてみますと,首長から独立して権限を行使する行政委員会として教育委員会が制度化されていますけれども,その趣旨としましては,政治的な中立性確保,継続性,安定性を確保するために独任の首長ではなくて,それから独立した権限を持つ行政委員会である教育委員会で,こういうふうなことになっているわけですけれども,その一番の中核は,やっぱり学校教育,とりわけ義務教育を運営する仕事が中核である教育行政ということからして,政治である独任の首長からは離れた方がいいということだったと思うのですけれども,社会教育の行政が同じように適用されなければならないかというと,必ずしも学校とは違うのではないかと思います。恐らく政治的中立性の確保の観点からの議論は,きちっと法律論議も含めてやられるべきだと思いますけど,ここではそういう時間もありませんので,個人的には学校教育とは違うと。特に社会教育は大人の自主的,自律的な学習,文化の活動だというふうなことからすると,必ずしも合議制の教育委員会が所管をしなければ政治的中立性が保たれないということでもないのではないか,基本的にそう思っております。
 むしろ,実際の社会教育活動,市民の中での非常に広範な活動が行われているということからすれば,教育委員会にとらわれず,首長部局全体で所管するというのも当然あり得るのではないかと最初に考えました。
 それから,具体的にそれぞれ教育委員会か,あるいは,それ以外で所管することの実際上のメリット,デメリットを少し考えてみました。
 教育委員会で所管することのメリットとしては,学校教育との連携ということがやりやすいということだと思います。特に社会教育のサイドからしますと,学校,あるいは子供という,最も社会教育活動が行いやすいような場面で様々な課題が出てきて,それに対応するということで,社会教育が活発化するということの点で何より大切かなと思います。学校教育そのものにとっても充実をするというメリットがあるということだそうでございます。
 ただ,現実の教育委員会サイドをとってみますと,どうも建前はそうですけれども,学校教育が中心にならざるを得ないことがありますし,職員の意識面でも,現場の中では,やや社会教育への認識というのが十分ではないので,建前としては連携の上で大切だと言っておりますけれども,十分実行できているかどうかというのは,また別問題かなと思います。
 それから,二つ目のメリットは,やはり長年にわたって地道な社会教育の活動がありますので,事務局全体に行政実績がある,あるいは地域とのネットワークがしっかりしている,そういう資源を抱えているということがあると思います。
 3番目には,特に都道府県の教育委員会の場合の社会教育主事は,教員系の方が多いわけですけれども,学校との人事交流とか,いろいろ人材確保の面でやりやすいということがあると思います。
 デメリットは,全くその逆ですけれども,教育委員会では,ややもすると社会教育への優先度の低さ,予算,組織の弱体ということがあると思います。
 次のページですけれども,教育委員会の担当者に社会教育に関して,いわゆる「教育・学習」というテリトリーとしての活動の意識が強くて,それをもとにした様々な社会的な活動,支援というところが弱いのではないか。むしろ学習というところに非常に力点が置かれていて,活動の範囲が狭くなる傾向があるのではないかと懸念をします。学習成果の活用,社会的還元ということが言われておりますけれども,なかなかできにくいということがあるのではないかと思います。
 社会教育の教育性というのはどこにあるかというと,やはりいろんな活動の中で市民が自己教育であったり,総合教育であったりという活動の中での教育性ということがあるので,教育という分野での活動に限られる必要はないだろうと思っております。
 従来,ややもすると趣味,教養,娯楽的なものが多くて,なかなか社会的な活動に支援というところまで発展してこなかったというところに,社会教育に対する意識の狭さというのがあったのではないかと思います。
 それから,一般行政との連携が言われておりますけれども,なかなかやりにくい。組織自体が独立したというのが一応そうなっておりますし,実際の指導系の先生方,教員系の人が多いわけですけれども,なかなか一般行政との人脈,連携経験というところが少ないということもあるのではないかと思います。
 それから,首長部局でやった場合にも,やっぱりメリット,デメリットはあると思います。
 メリットとしては,まちづくりなどの総合的な一元的行政というのがやられるときに,社会教育の人づくり,地域づくりの機能が非常に効果的に実現しやすくなるのではないか。特に,まちづくり推進とか市民協働というふうな点で,社会教育の培ってきた力量みたいなものが非常に発揮されやすいのではないかと思います。
 それから,地方行政全般につきまして,新しい公共とか市民協働,パートナーシップというふうな従来,行政だけでやっていた仕事を市民と一緒に連携しながらやるということが,新しいローカルガバナンスとして大切なのだという意識が全般的に出ていると思うのですけれども,それを基本的なところで支えるのは,やっぱりそうした自立的な市民の方々がいないと,なかなかそういう理念の実現というのが難しいというふうなこともあって,行政全般にも社会教育の予算というのが,一緒にやることによってあらわれるのではないかと思ったりもします。
 それから,社会教育の支援の面から見ても,学習と実践活動との一体性,あるいは相互連関性,循環性というふうな非常に幅広い社会教育の支援というものが,むしろ一般行政の中でやりやすくなるのではないかと考えてみました。
 それから,3番目は同じことかもしれませんけれど,社会教育行政のよさというのも,いい影響を多分与えるだろうと。社会教育では,住民の自立的な活動を土台にしてコミュニティ形成というふうなことがありますので,こういう手法というのが,それぞれのほかの部局でも,行政スタイルにもいい影響を与えるのではないかと思います。
 3ページですけれど,「考慮すべき点」と書きましたけど,メリット,デメリットがあるわけですけれども,法令上の制約の中にありながら,少なくない自治体で,既に市長部局で所管をして実践しているというのが随分出てきております。最近では,県レベルでも移行したというふうなことを聞いてもいます。それぞれのところで,余りうまくいってないという話も聞きませんので,そういう実績というのも評価してもいいのではないかと思います。
 それから,近年スポーツと文化の関係で選択性になりました。社会教育の大きな部分,スポーツ,文化も占めているわけですので,それとの関連性も考える必要があるかと。
 それから,ちょっと細かな話ですけれども,今,市長部局でやっている場合には,地方自治法の事務委任とか補助執行でやっているわけです。補助的にやっている割には,全面的に実際にはやられているような印象ですけれども,社会教育主事の設置が,事務委任なり補助執行をしている場合,教育委員会にしか置けないというふうなことがあって,市長部局では社会教育主事が端的には置けないと。実際には,社会教育主事の任用資格のある人をスタッフの中に入れているというふうなことも聞いておりますけれども,やはり社会教育主事の役割というのは非常に大きいので,そういう面では,やはり現行の補助執行的なやり方だと,うまくいかないのではないかと思う点も一つあるかなと思います。
 それから,逆にデメリットとして考えられることは,一般行政の中で埋没してしまうおそれがあるのではないかとも思います。どうしても各部局で,従来の行政目的がありますので,それが第一義的に考えられると,社会教育の場合には比較的住民の自律性というものをいかに引き出すかというふうなことですので,比較的手間暇の掛かる地道な手法ということで,さっきはいい影響があるのではないかと言いましたけれども,逆に地域によっては,行政になじまないというふうなことで埋没してしまうおそれもあるかなと思います。
 それから,やはり学校との連携というのは非常に重要な領域になりますけれども,教育委員会の中に入ってさえ,余りうまくいってないのに,外に入ったら余計難しいというふうなことがあるかもしれないなと思います。
 というふうなことで,今後の方向としましては,今は社会教育法で一律に教育委員会で所管ということになっていますけれども,結論的には自治体のそれぞれの行政目標,方針に応じて,選択的に所管できるように道を広げるのがいいのではないかと思います。
 理由としては,大きな意味では,地方分権の観点から,それぞれの自治体の政策判断の余地を大きくすることは一層必要になってくるだろうと思いますし,社会教育そのものも多面的に支え,支援するという観点から,一つの方法になり得ると思います。実際には,自治体によって学校との連携を中心にしながら,子供の健全育成を第一と設定するのであれば,むしろ教育委員会に所管することを選択することが多いのではないか。逆に,地域づくりだとか,市民協働というふうなことを前面に掲げて,社会教育をそれに位置づけてやるというところでは,一般行政の中でも十分やり得るし,可能性があるのではないか。いずれの場合であっても,学校,その他との他部局との連携強化は必要になるだろうと思っております。
 今,説明すると,随分アバウトな内容だなと思いましたけれど,一応そんなことを所管については考えました。
 それから,続いて説明だけ先にさせていただきます。1-2の方で,社会教育主事の資格化についてです。これもなかなかすぐに,これで行けばという名案とも思ってないのですけれど,こういう形で進められないかということでお聞きいただければと思いますけれど,まず社会教育主事の役割についてですけれども,先般出ました生涯学習分科会の議論の整理の中でも,社会教育主事がすごく減っていると。ほかの職員に比べても減り方も大きいというふうな危機的な状況があるということが指摘されておりましたけれども,その背景で,社会教育主事が,首長,地域の人々から評価されていないのだというふうな指摘もあったわけです。
 どうして,そういうことになるのかなと思いますけれども,やはり私の考えでは,一番大きな課題というものが,今の場合,社会のきずなづくりであったり,地域づくりであったり,地域の人的ネットワークの形成というふうなところが社会教育の中でも最も期待されているところだろうと思うのですけれども,首長あたりからすると,なかなか目に付かないと,社会教育主事の役割が分からないというふうなことになっているのだと思うのです。
 ですから,これをちゃんと見えるようにする必要があると。私たちは社会教育主事が,いかに低予算の中で,本当に献身的な活動をして,いい成果を上げているという事例もたくさん知っているわけですけれども,なかなか外の目に付かないというのも事実だろうと思います。社会教育行政の成果分析をきっちりして,社会発信をしていくと。学校だと,何もしなくても,そういうことになるのでしょうけれども,ちょっとそういう点で社会教育は,評価と発信が十分でなかったかなと思います。
 それから,もう一つは,社会教育,あるいは社会教育主事の活用の守備範囲がどうしても狭かったのではないか。さっきの話にもなりますけれども,社会教育主事は,法令で教特法で教育専門職というふうに位置づけられていますし,社会教育法でも社会教育を行う者に専門技術的な助言と指導,指導職というイメージが非常に強い規定になっています。どうしても教育の分野の中での活動というふうなことになりがちであったのではないかなと思います。
 これは,ちょっとダブりますけれども,社会教育では,自己教育,相互教育が本質だということであれば,多様な地域の中での活動支援ということが大切になってくるだろう。そういう意味では,もっと地域活動支援のところ,社会教育のアプローチというのが大切になってくるのではないか,そういう面の活動を重点化させる必要があるのではないかというのが,まず一番です。
 その上で,二つ目としては,社会教育主事の,今は社会教育主事というのは教育委員会に置かれる職名で,専門性を担保するために基礎要件が,これこれの単位をとっていることというのが出されているだけで,社会教育主事として専門能力,経験値が非常に備わっていても,職を離れれば,もう全くそういう能力,資格を示すことができないと。現に,様々職を離れても活動されている人たちが多いのですけれども,元社会教育主事とか,社会教育主事資格保有者の会などと言っているのですけど,もったいないなと思います。社会教育主事に足るような高い専門資質能力を示す独立した資格制度というか,認証制度というか,何かそういうものが必要ではないか。もし,そういうものがあれば,市民の人の中でも様々な活動をするときに,資格制度が役に立つだろうと。資格を目指して勉強する人もいるでしょうし,資格を基に活動の範囲を広げる,人々の市民性を涵養(かんよう)し,引き出す重要なツールになり得るのではないかと思います。市民全般についてもそうですし,一般行政でも社会教育主事のような仕事というのは,各部門で必要になってきますので,そこでも使えるのではないか。任用の資格だけにしておくのはもったいないということです。
 それから,3番目には結論的なことですけれども,体系的な資格,認証制度を何か構築すべきではないかと思います。ただし,社会教育主事だけのことを考えても不十分かと思います。地域コミュニティを活性化する広範な社会教育活動を推進するためには,社会教育主事が頑張ることは当然ですけれども,これは飽くまで行政の職員としての役割になりますので,個人の力量とともに自立的な市民の育成といいますか,そういう人たちとの連携,タイアップということがないと,広範な社会教育の推進というのはできにくいということからすれば,これも議論の整理の中にありましたけれども,リーダーとかコーディネーターとかファシリテーターとなるような人々との連携,協働というのがどうしても大切になってきますので,できたら,そういう人たちにも資格,認証制度を作ると。その上で,社会教育主事については,更にレベルの高い資質を求める,あるいは行政運営上の諸能力を付加した内容ということで,一般の市民のリーダーの人たちが,例えば社会教育コーディネーターという名前にするとすれば,社教主事は普通のシニアだというふうなことで位置づけてもいいのではないか。何か市民のそういう資格能力の連携の中で,社会教育主事の資格というのがきちっと位置づけられたらなと。こういう制度ができれば,社会教育主事の任用資格というのも,社会教育シニア・コーディネーターの資格を持っていることとか,あるいは社会教育コーディネーターの資格を持つ上に,さらに,こういう勉強をした人とかというふうな位置づけができれば資格化につながっていくのではないかといったわけです。
 以上でございます。

【浅井座長】  ありがとうございます。社会教育行政の所管の課題について,すごくきれいにまとめていただいて,整理されていますので,大変有り難く思います。それから,社会教育主事の資格の方は,従来から一歩進めた御意見を頂いたかと思います。
 質疑時間が5分となっていますので,質問だけお受けいたします。どなたかいかがでしょうか。

【糸賀委員】  ちょっとよろしいですか。

【浅井座長】  質問だけで。

【糸賀委員】  はいはい,分かりました。そうくぎ刺されちゃうと,発言しにくくなっちゃうな。
 この社教主事の任用要件資格化ということで,基本的には私,今野先生の言われる方向性に賛成なんですけれども,その場合に,資格化したり,あるいは認証にしますよね。そのときに現行の社会教育主事の要件,つまりどういう科目をどれだけ単位,あるいは実務経験,そのあたりはどういうふうに変えるなり,増やすのだろうと,それは減らすという方向はないと思いますから,どういうふうな内容のことを,どの程度増やす,あるいは実務経験でも,どんなものを要件にすることをお考えなんでしょうか。

【今野委員】  はっきり具体的にそこまでは考えてないのですけれど,前の機能,生涯学習支援部会の委員の見附市の市長さんが入っていらっしゃってて。

【糸賀委員】  ああ,久住さんか。

【今野委員】  ええ。あの方のお話では,やっぱり社会教育主事は足りないと。あの能力だけでは使えないと随分おっしゃっていて,役割は非常に期待するけど,あの能力だけでは足りなくて,どういうところが足りないのかというと,やっぱりある程度,行政職として,行政全般の基礎知識が分かっていて,市長は,市長と一緒になって自分の思うことを企画して,地域と連携できるような能力ということなんですけど,恐らくは教育行政だけではなくて,一般行政のところの知識,能力というのが多分要るだろうと思うのと,それから実際に地域の中で,いろんな市民の団体の人たちをコーディネートするということで,ただ学習とか会議の持ち方というのではなくて,もうちょっと活動も含めてのダイナミックな助言性というのか指導性みたいなことを言われていたような気がします。
 ですから,うんと実践的でないと意味がないと思いますので,インターンシップみたいなものは,相当現場の市民参加と協働のところで何か月間とかというふうなことも必要だと思いますし,それから,あと,もう一つは,プラスして必要なのは,これはちょっと話がずれてしまうかもしれませんけれども,社会教育行政の目指す大きな方向の一つとしては,市民社会の構築というか,住民の市民性を高めるというふうな大きな柱が多分あるのではないかと思うのです。昔は,それが市民ではなくて公民という言い方で言っていたのだろうと思いますけれど,当初の社会教育もそういう公民の育成とか,公民の民主的な社会というふうなことがイメージされていたと思うのですけれど,今言えば市民社会みたいなことだと思いますけれども,これはボランティアなどは今でもやっていらっしゃると思いますけれども,ソーシャル・キャピタルの理論的な理解だとか,あるいはローカル・ガバナンスの政治学的な考え方だとか,市民社会論だとか,そういう新しい市民社会にかかわる理論なども必要なのかなと思ったりも,ばらばらで,ちょっとすみません。そんなようなことは……。

【糸賀委員】  つまり大学での養成というよりは,現職者の社教主事講習でその辺を育てようということなんですかね。

【今野委員】  大学も当然できるところはあると思いますけれど,大学だけで全部というのは無理なので,多分すごく優れた自治体の場にインターンシップの場を求めるとか,いろんなやり方があると思います。講習の今やっている内容,さっき言ったようなことで,かなりプラスアルファしてレベルアップする必要はあるのかなと。

【浅井座長】  よろしいですか。どういう養成をするかというのは,また後で議論していただくとしまして,ほかにいかがですか。

【松田委員】  最後の仮称ですけれども,社会教育コーディネーターというのと,少しレベルを上げたシニア・コーディネーターという,この体系性はすごく共感するところがあるのですが,ただシニアになったところのプラスアルファの部分が,行政運営的能力が付加されているということなんですけど,そのあたり,もう少し具体的に教えていただけたら。

【今野委員】  あんまり具体的に考えてないんですけれど,恐らく市民レベルのコーディネーターの人たちの能力と,行政の中でいろいろ仕事をする社会教育主事の資格は,多分どこか違うところがあると思うのです。それが,行政職としての技術であったり,知識,能力なのかなと思うのですけれど,だから一般的なものにプラスアルファすれば社会教育主事の資格として書き得るのではないかなと,そのぐらいしか考えてないです。

【松田委員】  プレーヤーとマネジャーみたいな区別ではないわけですね。

【今野委員】  余り,済みません。ごめんなさい。あんまり考えてないです。

【浅井座長】  行政職については,改めて考えなければならないことがあるのではないかと思いますので。それでは次に進んで,よろしいですか。
 それでは,次に福岡県の宗像市の子ども部長の柴田様より,宗像市の事例について御報告いただきたいと思います。
 宗像市は,社会教育に関する事務を市民協働に関する部局の方に移管されて,御存じの方もいらっしゃると思いますけれども,注目されておりまして,この部局には社会教育主事は置かれていないようです。一方で,本日お越しいただいております市民部局の子ども部において社会教育主事を配置し始めているということでございます。
 そこで,以前,糸賀委員からも指摘がございましたように,市民部局から見た社会教育主事の評価というものはどうなのか,あるいは,どういうことを期待できるのかといったことについてお話しいただければと思います。それでは,お願いいたします。

【柴田氏】  おはようございます。福岡県宗像市から参りました,子ども部長を務めております柴田と申します。よろしくお願いします。
 先週,突然御案内を頂いたのですけども,本市の方では,ここ30年間ぐらい,ずっと本市なりの独自の考え方というか,歩みを進めてまいりましたが,特別なことを描いてきたつもりはございません。いろんな地域の実態をにらみながら,私どもなりの歩みを踏んできたところでございますけど,今回のこのワーキングの議論でいろいろな視点が検討されていますけど,本市の方の歩みの中で,いろいろと場面としてつながるところもあるように,資料を見させていただいて印象を受けました。一つの自治体の事例として,紹介させていただきたいと思います。
 お手元の資料を御覧いただきたいと思います。宗像市の概況ということですけど,一言で宗像市の特性としましては,昭和40年代ぐらいから住宅団地が開発されてきまして,外部からの定住がかなり進んできました。その中で,学習意欲の高い,そういう意識の高い市民の方がたくさんいらっしゃると。そういった方々が,更に市民活動として自らいろんな地域の課題テーマに取り組まれて,現在では,まちづくりの一翼を大きく市民の方が主役となって担っていただいているということが,本市の一番大きな特徴ではないかなと考えております。
 事例紹介をさせていただく中では,この約30年の歩みがありますので,簡単に社会教育の変遷ということで,2番目の項目で紹介させていただきたいと思います。
 まず,大きなきっかけになったのかなと思うのですが,昭和59年に市民学習ネットワークの開設ということで,いろんな生涯学習,教える方も学ぶ方も市民が主役となって,相互に学習し合おうというような仕組みづくりが立ち上がっております。費用も余りかからないで,講師謝金には1人300円程度の負担で,5人以上集まれば受講できるよというような,そういう仕組みづくりがなされております。
 それから,次に,これは平成63年と書いておりますが,昭和の間違えでございます。済みません。
 このときに,宗像ユリックスという,これは愛称ですけど,総合市民センターが開館しております。当時,たしか人口6万ぐらいの規模の町だったと思いますけど,かなり背伸びした施設を造りまして,全国的にも話題になった施設が立ち上がりました。これが起爆になって,市民の皆さんの文化,芸術,市民活動が活発化してきたなという印象が強くございます。
 同時に,このユリックスの中に宗像文化サークルという,これは西日本新聞,TNCテレビ,それから宗像市が共同出資したサークルができまして,これでもかなりの市民学習活動が盛んに広がっております。
 これからしばらくの間,市民の皆さんの主体的な学習活動が続きまして,市民の力がだんだんと備わってきたという時代が続いたかなと思います。
 平成9年,コミュニティ基本構想・基本計画の策定ということですけど,住民と行政の協働,住民参加によるまちづくりということで,地域の課題に係るものにつきましては,地域と役割分担しながら行政と協働して,対等の立場で協働してまちづくりを進めようという方針を打ち出しております。地域の組織は,小学校区単位ぐらいで,13地区のコミュニティ運営協議会が設立されておりまして,そこには学習活動なり,地域活動の拠点としてハード的なコミュニティセンター,これも併せて整備してきました。
 それから,平成10年,これもまたハードものですけど,メイトム宗像ということで,市民活動交流館に現在なっておりますが,当初は総合保健福祉センターということで開設しておりました。平成20年に旧中央公民館,これを閉鎖するということで,こちらの機能を,このメイトムの方に移転しまして,施設の看板としては市民活動交流館,これは生涯学習の拠点施設としてリニューアルオープンしております。先ほど申しました宗像ユリックスと,このメイトム宗像が,いろんな市民の学習,市民活動の拠点施設として大きな施設となっております。
 次の平成11年,これはソフト面ですけど,ルックルック講座ということで,市民の皆さんが気軽にいろんな学習活動を更にできるように,健康,福祉,医療,食,もろもろのそういう全てのいろんなテーマで講座が受講できるという体制を整えております。講師陣としては,市内の3大学,市民活動団体,企業,それから市の職員,これらが講師として出向いていくということで,簡単に受講できるような体制をとっております。
 こういったこともあわせて,いろんな多様な地域課題とか行政課題,こういったことを市民の皆さんと共有できる機会が整ってきております。
 さらに,平成13年ですけど,生涯学習都市むなかた学びの里宣言ということで,さらに,その流れが進みまして,「人づくりでまちづくり」という,これを基本理念として掲げまして,学びを通したまちづくり,コミュニティ社会を育てようということで宣言しております。
 当時は,そこに三つのプランということで,宗像市教育21世紀プラン,これは主に学校教育になります。それから,子育て支援計画,これは子育て全体,それから生涯学習推進プランという,この三つの計画が,この学びの里の軸になっております。
 次の14年ですけど,市内の3大学,福岡教育大学と日赤九州国際看護大学,それから東海大学の福岡短期大学,以上三つの大学がございますけど,これらとの連携をより深めようということで,むなかた大学のまち協議会という組織を立ち上げて,多様な場面で大学との連携がとれるような体制づくりを持っています。いわゆる大学が持ってあります知の部分を,地域の行政のまちづくりにも提供していただこうという体制になります。
 そして,平成17年,更に進みまして,今度は市民参画・協働及びコミュニティ活動の推進に関する条例の制定を行いました。これが現在の宗像市の大きなステップになっていると思います。
 この条例には,三つの理念がございまして,行政の意思決定の過程にも,市民の皆さんが参画する権利があるということが,まず大前提としてあります。
 それから,2番目には,市民の皆さんがいろんな形で力を付けていただいています。そういったところと行政と,役割分担しながら相乗効果を生み出していこうということで,現在ではいろんな,行政サービスも市民活動団体の方に委託するというような関係もかなり増えております。
 それから,三つ目には,コミュニティ活動です。これは地域分権ということになると思いますけど,地域住民の地域の課題については,自律性と自主性を持って取り組んでいただくという,この条例には三つの柱がございます。
 そして,平成25年,今年ですが,平成13年に策定しておりました生涯学習推進プラン,これの改定時期に当たりまして,この行政計画の名称も,生涯学習から市民活動推進プランということで,学習そのものを市民活動という捉え方に,更に発展的にシフトさせております。そこに書いておりますけど,自分自身を豊かにするための生涯学習にとどまらず,その学びの成果を地域で生かし,社会に還元していくことで,生きがいと自分づくりを創出して,地域の活性化へとつなげるということです。
 市民活動,ボランティア団体などを新たな公共サービスの担い手として位置付けて行動していくということになっています。この新たな公共サービスの担い手ということで,今,徐々に,サービスの担い手としての活躍を,場面として増やしつつあります。
 それから,次に3点目の項目ですけど,行政側の方の組織機構及び施策の推進体制ということですけど,まず平成17年,先ほど浅井先生の方からも紹介ありましたが,平成17年に,それまで教育委員会で所管しておりました文化,スポーツ,生涯学習の分野の一部,これを市長部局の方の市民協働部に移管しております。この部は,地域の方のコミュニティ施策も併せ持っておりましたので,「市民協働・コミュニティ」という市民や地域を主体とする施策推進体制へと大きく行政機構もシフトしてきております。
 そして2年前ですけど,平成23年,教育,子育て環境の充実ということが本市の重点施策として大きく持ち上がってきておりまして,私どもの子ども部が2年前に設置されております。そして,教育委員会の方から,義務教育を除いて,幼児教育,家庭教育,青少年分野について市長部局の方に移管してきたということでございます。
 次に,移管と連携による相乗効果ということで,市長部局には他のいろんな従来からの関連事業がございます。そういったところと一体化した推進体制によって相乗効果を狙おうということでございます。例えば,私ども子供施策の分野では,母親の妊娠期から出産,幼児の育児,子育て支援,幼児教育,学齢期の子供の居場所とか体験活動,青少年健全育成という,子供は連続して成長していくわけですけど,これらを行政側も連続して支えていく,支援していく体制が望まれるということで,私ども子ども部が設置されておりますけど,この過程におきましては,やはり教育的な視点も大きく存在しております。同時に,親の成長,これも同時に支援していく,こういう教育的要素がかなりございます。ですから,教育と,そういう子育て全般の相乗効果といいますか,そういった狙いがございます。
 ただし,先ほども若干触れられておりましたけど,個別の場面においては,これは教育事業という位置づけがございます。これは,飽くまで補助執行として取り扱わなければならないという現状の制度の中での運用もございます。教育委員会との必要な連携を確保しながらということになります。
 それから,関係職員につきましては,教育委員会の併任辞令も出して,職員の意識付けも確保しているということでございます。
 4点目ですけど,宗像市における社会教育主事の配置状況でございます。従前は,県教委による派遣社教主事,これの活動に委ねているものでございましたけど,ただ,同時に私ども市職員も一般行政職員なんですけど,社教主事講習を受講して,一定の資格要件は取得しておりましたけど,実際に発令行為までは行わずに,研修の一環というような形で受講をしている状況がございました。ただ,これは継続的な取組ではなくて,その時々の状況で受講しておったということです。最近は,受講は止まっている状況です。
 そして,学校教職員による社教主事有資格者の独自任用ということでございます。過去,平成10年から17年度の間,この間特に青少年関係が中心だったと思いますけど,その事業推進のために教職員の有資格者の任用をやっておりましたが,17年度以降,途絶えておりました。その時々で,市町村でいろんな方針に変化が起こり得るということでございます。
 そして,今年,平成25年4月,子ども部所管の子供施策推進に伴う体制強化ということで,学校教職員による社教主事の任用を再開しております。
 教育委員会での一応位置付け,任用になっておりますけど,併任辞令で,日常的には私ども子ども部の方に配置させております。
 宗像市の流れですけど,次のページ,子ども部で,今回また再開したということで,若干補足して説明させていただきます。
 経緯としましては,平成23年4月の機構改編によりまして,母子保健,母子福祉事業とともに,子供関連施策の一元化を進めてきました。これと併せまして,教育委員会が所管していました幼児教育,青少年・子育て支援等に関する事業も子ども部の方に合わせてきたということです。
 この時期,子ども基本条例の制定,それから市としては定住化施策,都市ブランドの構築,こういったところに,やはり教育子育て環境の充実を絡めて取り組もうということが大きく持ち上がりまして,取組自体を強化しようということになっていっています。
 特に,子ども部の施策の中で教育的な意味合いのあるところが,下に幾つか羅列しております。基本条例を周知,啓発していく,それから居場所づくり,体験活動,幼児教育の関係,それからグローバル人材の育成,青少年,それから,やはり重要かなと思うのですが,家庭教育の推進の関係,こういったところには,やはり教育的な意味合いがかなりありますので,その辺の充実,強化を意識した取組になります。
 そこでの社会教育主事の役割と期待ということですけど,基本的には取組自体を膨らませれば,人的な体制全般に充実を図っていくことが求められますけど,特に,この分野に関しましては,一般行政職員に加えて,社教主事の配置が不可欠だと判断しております。特に,教職員の有資格者を任用したということにつきましては,やはり事業全般に教育的な視点,あるいは教育的な技術力,スキルが求められる場面が多数ございます。
 それから,二つ目ですけど,一般行政職員による社教主事の限界です。私どもの場合は,社教主事の発令は行っておりませんが,そういう役割を職員が担う部分がございましたけど,人事異動,あるいは教育的技術力の弱さというか,その辺で課題がございました。
 それから,三つ目,学校,家庭,地域の連携のキーマンとして活躍できる場面が多々ありますので,そういう期待がございます。
 それから,四つ目ですけど,関連しますけど,行政組織内で教育委員会と市長部局とのつなぎ役,教育委員会の方には学校指導主事の配置がございますけど,その指導主事と私どもの社教主事の連携によりまして,事業の相互乗り入れ,相互乗り入れといいますのは,教育委員会と市長部局の相互乗り入れ,学校現場と地域の相互乗り入れというようなことが円滑に進みやすいということが言えると思います。
 それから,丸5ですけど,これはちょっと私の方の個人的な思いが若干,視点が入っています。こういった立場で人事交流ができることによって,学校教育の発展の可能性があるなというのをすごく感じております。言葉では書けなかったのですけど,学校教育に若干閉鎖性を感じているところがございまして,やっぱり学校教育のネタには,地域にいろんな材料がたくさんございますので,それと学校教育と社会教育の場面,地域との場面というのを交流させることが大事なことかなということを,すごく感じております。いろんな新しい取組を学校教育に持ち込む際,かなりハードルが高いところがございまして,その辺の持ち込む際に活躍していただきたいなという期待がございます。
 次のページにつきましては,一応現在の宗像市の組織機構図を参考のために付けさせていただいています。
 以上でございます。

【浅井座長】  ありがとうございました。貴重なお話で,いろいろ,なるほどと思うところがございました。5分間,まず質問をお受けしたいと思います。いかがでしょうか。

【菊川座長代理】  身近な同じ福岡県なので,ある程度存じ上げているのですが,2点質問です。
 1点目は,25年4月に配属された有資格者の社会教育主事ですが,この方は社会教育の経験があるのか,有資格だけなのか,という点でございます。
 それから,県から見ていて,宗像市のこの展開というのは,人の要素が結構あるように思うのですが,と申しますのが,前のお亡くなりになった市長さんが,教員出身,校長経験,それから教育長も経験されたと思います。教育に非常に熱心で,かつ詳しい方であったということとか,あるいは今の市長さんや教育長さんは,県の幹部だった方であるということで,こういうシステムがうまくいかされていると思うのですが,人の要素があるのかどうかという,その2点でございます。

【柴田氏】  まず,1点目の御質問ですけど,現在,来ていただいている学校教員の社教主事の方ですけど,県の立場のときに,久留米にあります県の青少年科学館ですか,そちらの経験があるように伺っております。あとは学校現場だと思います。
 それから,2点目の御質問です。人による部分,これは日々感じているところがございます。冒頭申し上げましたが,市民の皆さんの人としてのスキルというか,意識レベルの高さというのも,すごく感じている部分がありますけど,行政運営の中でも,そのトップリーダーに立つポジションの方が,どういうことをルートマップを引いていくかというところが,すごく大きな意味をなしているかなと思います。今,御紹介いただいたとおり,前々教育長は,学校教員の経験のある方でした。こちら海外での日本人学校の経験もありまして,かなり幅の広い方でした。それから,現在の市長は,県職OBの方です。それから,現在の教育委員会の教育長,こちらも県の教育行政の経験のある方で,やはり目の付けどころがすばらしいというか,そういったところは日々感じながら,私ども業務の中でも感じております。
 以上です。

【菊川座長代理】  ありがとうございました。

【浅井座長】  ほかに。

【竹原委員】  ありがとうございました。昭和59年からの歩みというのは,本当に全国に先駆けたまちづくりにつなげる社会教育ということでお聞きしました。
 一つ,場を提供しハードを作りながら人や組織を支援するということを考えたとき,コミュニティセンターですとか,センター機能のある交流館などで働く人の中に社会教育主事がおいでになるのか,どういう方がソフトを動かす役割として,そこに座っているのかということをお聞きしたいと思います。

【柴田氏】  宗像市の場合,社会教育主事という役割に対する認識は,この肩書に,資格に対する認識は,残念ながら高くはないと思っています。先ほど,ちょっと触れましたけど,行政職員の研修の一環としては有効だなということで,過去かなり職員を受講させておりましたが,現在,今の教職員の指導主事の配置と,過去,平成10年から17年,この時期は意識的に任用しながら,その活躍の場面をとっておりましたが,全体を通しては,社教主事という存在に対する認識は高くはないのかなと思っています。
 御質問の施設に主事を置いているかということでは,置いてません。代わりまして,代わってというか,行政の役割と市民活動の中間的なところに,現在,市民フォーラムという中間支援組織というような,これは市民の方のレベルですけど,そちらがいろんな形でコーディネーターなりファシリテーター的な役割を担っていただくようなことを,数年前から形づくり始めています。まだまだ,その活躍の場面の浸透度合いの弱いところはあるのですけど,社教主事の役割に近いところは,個人個人の市民活動に熱心な方々,個人個人で力を付けていただいている方が,たくさんいろんな場面で専門的にいらっしゃいますので,そういう役割を社教主事が全て担えるかどうかというのは,もう限界が当然ありますし,もう市民の方の力に頼っていいのではないかなという,そういう感覚は持っています。
 2点目のソフト的な話……。

【竹原委員】  市民の方も少し入ってきているということですか。

【柴田氏】  そうですね。先ほど言いましたフォーラムの関係もございますし,私たち,いろんな事業を打ち出していくときに,知恵袋になっていただくような市民の方もたくさんいらっしゃいますので,そういった方々と組み立てながら,協力し合いながらということは,いろんなところでございます。

【浅井座長】  それでは,井出委員の方,お願いいたします。

【井出委員】  制度上の問題で,社会教育主事を教育職員併任という形をとられているわけでしょう。

【柴田氏】  はい。

【井出委員】  そうした場合は,教育職員は県費負担職員ですよね。それを併任で市の職員とするということになれば,定数管理とか給与負担とかは,どういった形でクリアしているんですか。

【柴田氏】  これは宗像市の独自任用をやっていますので,費用は全て市費で負担しております。県の教職の位置づけがどうなっているか,私も詳しくは知らないのですけど,飽くまで市の都合で雇用している関係を,県と契約を結んでやっていると思います。

【糸賀委員】  まず,確認なんですが,今日頂いた資料の4ページの最後のところで,社教主事の役割と期待,指摘されましたよね。この社教主事は,さっき御発表のあった市民協働部というか,市長部局の方に移した市民協働コミュニティか,こちらには社教主事がいるのですか,いないのですか。

【柴田氏】  おりません。

【糸賀委員】  いないのですね。そうすると,質問は,今日の資料で3ページです。3ページの一番下のところで,今,柴田部長がお務めの子ども部に,子供施策推進に伴う体制強化のため,社教主事の任用を再開したとありますね。そうすると,社教主事というと,どちらかというと大人が対象だと思うのですが,さっきの市民協働コミュニティの方には社教主事を発令というか置かずに,子ども部の方に置くのは,なぜなのでしょうかというのが一つです。
 それから,もう一つは,先ほどの今野委員の発表の中でも出てきた,この市長部局に幼児教育,家庭教育,青少年分野を移管していますね。そのときの政治的中立性については,何か問題は発生しなかったのでしょうか。これが2点目の質問です。

【柴田氏】  少しぶっちゃけ話もさせていただこうかなと思います。
 まず,子ども部に社教主事を置いたことにつきましては,やはり施策の対象が子供に係る部分がかなりございます。となると,やはり学校教員というのが,すごく子供に対する取組のスキルが高いという,そういったところの期待がございまして,再開したというところが大きくございます。
 市民協働部の方につきましては,実はなかなか,どちらかというと生涯学習の分野に,宗像市の場合,社教主事,教育委員会的な発想というか,捉えどころがどこまで必要かなというところが,多分,当時あったのだろうと思うのですけど,教育委員会に置かなくてもいいというところが,一つの判断だったのかなと。ただし,現在の中でも,子ども部は対象が子供ですから,学校教育と併せて,教育委員会との連携は,もう全く問題ない程度にしっかりタッグを組んでやっています。ただ,この市民協働部は,若干その辺が弱い部分が,若干というか多分にある可能性があります。その辺が時々,教育委員会の会議の中でも,ぼろが出ることがあって,若干職員の意識も,少し教育事業の認識というところでは弱いのかなというのがありますね。
 それと,今回は,以前,生涯学習推進プランから市民活動推進プランに移行してきたという,これも市としては,ある意味表れかなと。もうトップ含めて,幅広い市民活動として捉えていこうという大きな方針の中で,だから,結果的には教育というこだわりの部分は,ちょっとトーンダウンした可能性はあるかなと思います。
 それから,2点目の中立性の問題ですけど,これは飽くまで教育事業として,カチッと位置づける部分につきましては,教育委員会の合議をとりながら,決裁もとりながらやっていきますので,その辺は勝手なことはできないというふうに認識しております。

【糸賀委員】  その勝手なことができないような仕組みというのは,何かあるんですか。

【柴田氏】  一つは決裁行為がございますし,いろんな事業をやっていく,進捗状況も含めて,教育委員会の中にいつも報告しながらやっている状況がございます。

【糸賀委員】  教育委員会に報告をしている。

【柴田氏】  はい。私どもも教育委員会の会議の中にも毎回入って,学校教育と一緒に並んで,私どもも教育委員会にいろんな事業の案件は,教育事業として位置づけているものは教育委員会にかけるという手続を踏んでおります。

【糸賀委員】  市長部局に移管していても,そういうことはきちんとおやりになっているということですね。

【柴田氏】  はい。

【糸賀委員】  分かりました。

【柴田氏】  合議をとりながらやっていくということです。

【糸賀委員】  ありがとうございました。

【浅井座長】  それでは,よろしいでしょうか。市民活動の中に生涯学習を移行させている自治体を,私もよく知っているのですが,育てるという観点がないので,地域が荒れていく傾向がみられます。そういうところとかも,どうしたらいいのかと。一方で,教育の成果というのは,今野先生がおっしゃったように目に見えないので,どうやって見えるようにするのか,いろいろな問題がありますので,そういうことを含めて議論をこれからさせていただければと思います。これで2の方に移らせていただきたいと思います。
 今後の社会教育推進体制の在り方ということで,議論をさせていただきますけども,まず井上委員から資料を御提出いただいておりますので,簡単に,済みません,お話しいただけますでしょうか。

【井上委員】  横長の資料を用意させていただきました。
 内容的には,今,今野先生の方から御講義いただいたものとほとんど同じということで,それを具体化したようなものになっております。
 社会教育主事の在り方について考えたときに,やはり課題としては,前回からもお話が出ているのですけども,社教主事の職務の範囲が広いということで,上が現行,下は案ですけども,計画立案の部分と業務運営の部分,言葉がいいかどうか分からないのですけども,戦略的な部分をやる社教主事もいれば,ファシリテーターなど地域住民の学習活動に直接関わるような,戦術的な業務をやる社教主事の方もいらっしゃるということで,この範囲がとても広い状況です。一つの資格としても,すごく守備範囲が広いという現状があります。一方で,社教主事講習を受講して,社会教育主事として勤務しても,教育委員会を離れると,社会教育主事有資格者と慣例的に呼ばれるだけで,正式な呼称があるわけでもなくちょっと陰に隠れてしまう状況です。ただ,それぞれの個人が講習や業務を通して身に付けたスキルを新たな業務で活かしていくということだけで,資格として顕在化しない状況になっています。
 現在,民間とか他部局でも,社会教育的な取組が行われてくるようになってきました。また,社会教育関係職員も転勤サイクルが二,三年ということで,専門的な知識や技術を身に付けた職員が,なかなか育ちにくくなってきており,こういう戦略的,また戦術的な業務を覚える前に転勤してしまう状況です。また,学校側も,開かれた学校づくりが求められており,社会教育主事有資格者への期待もあることから,平成19年の制度問題小委員会での雲南市の土江教育長から御提案いただいたものを基に考えたのですが,社会教育主事有資格者という何も名前がないものじゃなくて,例えば社会教育士というような形で資格を与えて明確化したらどうかということを,御提案したいと思います。
 こうすることによって,学校に行っても,他部局に行っても,民間で会社に残っても,資格として残っている。有資格者という呼び名だけだと,もう行政以外では,その役割は果たせないというような印象があったり,あと研修を行う場合にも他部局に転勤した方に対しても,社会教育関係の研修会とかを開いたりしたいとしても,資格がしっかりしていれば対象として声も掛けやすくなる。また,そういう人たちが集まることで,部局間の連携体制というか,ネットワークづくりの一環にもなるだろうということが期待できるかと思います。
 それと,教育委員会には,管理主事とか指導主事などの教育職員がいるのですが,その中にも有資格者がいるわけです。こういう方は,社会教育行政の応援団であったりして,特に指導主事が社教主事を持っていると,非常に社教主事の事業について理解を頂いている場合が多いです。そういう方が学校教育の指導主事であると,社会教育と学校教育の連携がうまくいくことが多い状況です。一方,小さな町ではなかなか社教主事を置ける人的な状況ではないということもあったり,設置率が非常に低いということがあったりして,そういう町のことを鑑みると,どうしても社教主事を置けないということであれば,例えば指導主事の中で,そういう有資格者がある方がいれば,その方にある程度の役割を持ってもらうとか,一番いいのは指導主事の方に社教主事を取ってもらうことが一番いいことなのですけども,なかなかそうはいかないということであれば,そういう設置率が低いというのを,そのまま見過ごしておくだけではなくて,指導主事とか,そういう局内で社会教育主事という形で持っていれば,暫定的には,その方に指導,助言していただく形の立場として,ちょっと位置付けなりして,暫定措置も考えられるのではないか。
 それと,やはり事業運営の部分については,先ほど来お話が出ているように,行政職員だけではなくて,民間の方がそういうスキルを持っています。やはりファシリテーター,それも部局の方とか民間で活躍されている方も,この公民館主事等と一緒に,又は,それに代わる立場としても活躍できるのではないかということで,そういう社会教育主事資格を持っている方が,例えば社会教育指導員であったりとか,法的整備があれば,社会教育主事として,臨時の職員ということで発令,若しくは任命されたりとか,そのようなことも考えられるのではないかと考えております。
 結局こうなると,今の社会教育主事を今のレベルでいいのかどうか,それとも基礎的な内容にして,より多くの皆さんが取れるような形に位置付けて,さらに,このアドバンスというか,上級資格を作るのか,若しくはそれに対応した研修体制を整えるのか,検討事項はたくさんあると思うのですが,このような形の整理はいかがかなと思いまして,御提案を差し上げました。
 以上でございます。

【浅井座長】  ありがとうございました。
 それでは,また活発な御議論を頂きたいと思いますけれども,今野委員と柴田様のお話,井上委員の方からもお話ございましたので,それらの内容の上に,更に発展させていただきたいと思います。
 今日は社会教育主事のことと,社会教育行政のことと分けませんので,御自由に御発言いただければと思います。

【山本委員】  論点が細かくならないうちに,このテーマについての認識と課題意識を,お話しておきたいと思います。
 中教審の分科会の1回目にも申し上げたのですけど,私は大学から地域の生涯学習を見るとか,あるいは地域の社会教育行政に関係しながら大学を見るとか,こういうことをやってきましたので,そういうことから考えますと,今後の社会教育推進体制の在り方というのは,かなりドラスティックなステージの転換の中で考える必要があるのではないかというふうに思っています。
 大学の方で言いますと,3・11前後に,中教審の分科会委員でもあります白井先生が私大連の会長のときに,私大の将来像のレポートが出ていて,そこで生涯学習について,かなり言及されています。これは要するに私立大学のサービスの強化としての位置づけになっていて,私立大学として生涯学習に寄与するということを強調したレポートが出ています。
 一方,国立大学協会も同時期に「国民への約束」というレポートを出しているのですけれども,これは分科会でも言いましたけど,生涯学習ということは全く出ていなくて,地域貢献とか社会貢献というのは出てくるのですけれども,生涯学習という考え方で社会に貢献するという位置付けは,ほとんどないのです。ところが,教育再生実行会議が,今度,日本の大学改革の基本テーマのひとつとして18歳入学イコール日本の大学というのを打ち破ると,こういうふうに言いました。これは非常に新しいステージであり,このテーマには否応(いやおう)なく大学も対応せざるを得ないだろうというふうに思います。実際,<学び直し>の中での大学の役割という言葉が,繰り返し繰り返し,いろんな分野で出てまいります。
 これは,一方では企業,産業のイノベーションの中で,どういうふうに人材を確保していくか,社会人の大学への参入を保証していくかということがあります。もう一方では,地域のエンパワーメントのために大学がどう貢献するかということを,COCという言葉でその役割を提起していますが,これも全ての大学のテーマになっていくのだろうというふうに思います。
 <大学と社会>の関係を,これまでの経験で考えますと,産学の連携の中で出てきたのは,要するに産と官を結び付けるためには,大学の方にも産のことをよく知ったコーディネーターがいると。企業の方にも,学術のことをよく理解したコーディネーターがいて,両方にそういう機能がないと,なかなかうまくいかないと。両方にいるところは,うまくいっているという話になっていると思います。
 一方,今COCとかの議論の中で,大学が地域に貢献するということですけども,これはいろいろな貢献の仕方がありますけれども,例えば地域の住民の学習に貢献するということが非常に大きな比率であると思います。このときに,地域の切実な学習課題というのは,極めて政治的中立性という議論ではない,非常に政治的な争点になっているような課題がたくさんあって,そういうところに個々の研究者が貢献するだけでなくて,大学として,どう貢献するかというときに,非常に大学とマネジメントで悩ましい問題が出てきます。その点で私は,一方では大学の方の学問の自由と,地域の方の住民の学習の自由が確保されているという,この双方の原理が重ね合わさらないと,なかなか大学としては地域にコミットし難い,あるいは,地域の人たちも大学とフェアな関係で付き合えないということになるのではないかなというふうに思います。
 その点では,教育委員会に置くか,置かないという議論の前提として,住民側の学習の自由を自治体としてどう保障するかという原理といいましょうか,考え方を貫くことを,この社会教育行政の推進体制というものの制度設計の基盤として考えるべきではないかと思います。そうした考え方を基盤とした社会教育行政の在り方があって,初めて,大学・学術が総体として,地域の課題にコミットしていくことができるそういうステージの中で考えていくべき時代になってきたのではないかというふうに思っています。このワーキングの課題についての基本的認識を話させていただきました。

【浅井座長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
 大学は,今生き残りを掛けていまして,社会教育行政の呼び掛けに対して,大学が幾らでも協力してくれるという指定都市もありますが,そのような大学は私学が中心ではないかと思いますけど,幾らでも協力してくださる,そういうところもあるようです。
 いかがでしょうか。
 私の方からお願いをしたいのですが,社会教育というものの独自性,あるいは社会教育主事の独自性というものが一体何なのかということをお考えいただきたいのと,それから社会教育主事につきましては,本当に必要なのかということについて,どうしても答えが出てこないのです。前回も企画官からデータを出していただいて,興味深いデータであったと思っているのですけども,地域の活性化と社会教育主事の配置というのが結びついてないのではないかということでした。そうすると,社会教育が上手くいっているか否かも社会教育主事の個人の能力に寄っているのに過ぎないのかもしれないという問題があるのです。
 ですから社会教育主事が,なぜ必要なのか,何をするのか社会教育の独自性,それは前回も清國委員が,教育のところにあるのではないかということをおっしゃいましたし,竹原さんが学習とのかかわりのところにあるのではないかともいわれました。それらに関連にあるのではないかということについては,そのとおりだと思うのですが,では,それは一体何を表すのかということなのです。その答えを出さないと,制度的には残ったとしても,いずれ消滅していくのでないのかなと思います。そこを新たに作る必要があり,いいかえれば核のところを作らないことにはどうしようもないと思っております。

【柴田氏】  私,やっぱり末端の市町村で,市民と接しながら仕事をしていますので肌で感じるところがあるのですけど,この議論は,どうしても行政側からの議論でしかないのかなという印象も持っています。この生涯学習,あるいは市民活動というのは,やはり市民の方の活動として捉えなければいけないところがあるのかなと。そういう視点から見ると,多分市民の皆さんは,市民の皆さんがやっていることは,教育という概念では,多分捉えられてないのではないかなと思っています。自分がやりたいこと,関心があることを,何か自分がかかわってみたい,勉強してみたいということで,教育という意識は,ほぼないのではないかなというふうに感じております。
 そういうところは,では,どうするのかということが,また課題になってくるのではないかと思うのですけども,宗像市,先ほど言いましたとおり,社教主事という存在で事業展開をずっと打ち出したことは,余り意識してはいません。やっぱり一般行政の市民の方の学習活動を意識しながら,こういうふうにやっていかなければいけないのではないかというのを,行政の発想の中でずっと組み立てながらやってきただけのことであって,それを重く,教育なり,社教主事を置いて,置かない,そういったことを議論しながらやってきたわけではないのです。だから,やっぱり地域なり市民の方のニーズを感じながらやってきた結果が今の状態だなというのを,今すごく肌で感じてます。
 ただ,今回,あえて社教主事を置いたのは,やっぱり一般行政職員としては事業展開の中で,教育的な視点の捉えどころとか,あとは,教育,子育てという分野では,保護者なり地域の方々を,ある意味洗脳していかなければいけない部分が,やっぱりあるのです。学校教育では,子供たちにいろいろなことを教えていくことがありますけど,大人の世界では,地域,市民の皆さんに対しても理解していただかなければいけない部分がかなりあります。その技術力の部分の期待として,社教主事をあえて,また配置した。その結果が,教育委員会とのつながりも,すごく今いい状況にあるなというのを,この数か月の中で感じていまして,先ほどちょっと紹介させていただいたということです。

【浅井座長】  ありがとうございます。

【菊川座長代理】  関連して質問なのですけれども,子ども部に学校の関係の先生を置こうとしたときに,例えば学校の現場から直ではなく,また,指導主事ではなく,社会教育主事を置こうとした理由というのは何なのかというのが1点です。
 それと,たしか10年ぐらい前に,宗像市が,公民館をコミュニティセンターにして,たしか地元の自治会等にいろんな活動を委託されたのではないかと思うのですけれども,住民にいろいろな活動を委託し,そこのコミュニティセンターでの活動というものが,今どのようになっているかという,2点を質問させてください。

【柴田氏】  学校教職員から社教主事をあえて任用させていただいたということについては,やっぱり子供たちの姿を間近に知っていただいている人材が欲しいなというのがすごくあります。それと,先ほど子ども部のいろんな事業を資料の中で紹介しましたけど,やはり子供に目掛けてやっていく事業,対象とした事業がありますので,そのポイントがずれないように,効果的に事業を計画していくためには,やっぱり学校教職員を。

【柴田氏】  はい。学校もよく理解している。それから,社会教育的な事業の立場での事業の組立てもできる,そういう二つの力を持った人材が欲しいなというのが思いとしてすごくあります。今回の人選についても,その辺を意識して選んでいただいて,結果すごく有効に働いているなというふうには感じています。
 それから,従来の公民館機能を,ハード的には,今全て地域のコミュニティセンターという形に全部衣替えしてきています。そして,学習活動についても,地域主体で地域の学習活動なり,地域の課題として,いろんな活動になっているというか,そういったところ,コミュニティについては地域分権という捉え方もしていますので,行政の一翼も担っていただいて,事業展開をやっていただいています。そのためには,また費用の面も,コミュニティまちづくり交付金ということで,以前,個別の補助金をいろいろ地域に流している部分がありましたけど,それらを集約しながら,地域の使いたいやり方で使っていいというような,国で言えば交付税的な形で,今財源を流しているところがあります。

【浅井座長】  どうぞ。

【井出委員】  前回から,今日も含めて議論を伺っていて,社会教育主事的な素養を必要としているのか,社会教育主事の配置を必要としているのかというのが混在していると思うのです。行政の方から見れば,社会教育的素養を持った人材がいれば,別に社会教育主事は要らない。逆に,今度は反対側から見れば,社会教育主事の職務を明らかにして,その職務を遂行する能力を持った人を任用していくことの意義はどこにあるのかというのが行ったり来たりしてて,難しいなと思いました。
 それで,先ほど私,県費の教育職員を社教主事に併任するというお話を伺ったでしょう。あれは,指導主事の場合には,県費職員を充当指導主事とかにして,地教行法に基づいて,給与負担は県が持ったまま地方に置いてもかまわないのです。さらに,杉並区の場合には,給与負担をして指導主事を4人か5人ぐらい多く抱えているのです。それは,ある意味では指導主事ではなくて,社会教育主事でもいいわけなのです。つまり仕事があるから。
 そういうふうに考えていくと,最初の疑問,社会教育主事的な素養を求めているのか,社会教育主事という職の配置を求めているのかというところは整理していかないと,ちょっと先に進まないなという感じがしました。

【浅井座長】  その点につきましては,徳島県での事例ですけども,総務省関係の事業ではないかと思うのですが,県職員が限界集落を立て直していくのです。住民はすさまじいほどの学習をしていくのですが,その働きを見ましたら,社会教育主事など,とてもとてもかなわないといわれてしまいます。先ほど申し上げました社会教育主事,あるいは社会教育の独自性とは何なのかと。今野委員の先ほどの御発表の中に,ヒントが一つあると思っております。それは市民性の育成です。ただし,一つ間違えれば,かつての内務省的な教化になる可能性があるので怖いといえば怖いのですが,今野委員はそうならないものもあげていらっしゃいます。いずれにしましても,そういう何かを作らない限り,おっしゃるとおりだと思いますよ。

【松田委員】  今,市民性の育成という言葉が出ましたけど,僕も関心があるのは,コミュニティというのが本当に課題になっているということなのです。二つの面があると思うのですけど,一つは地域密着人口というのが,地域を土俵にしないと生きられない人というものが,数が増えてくるというのが,これからの社会ですね。高齢者と子供というのは,まさに地域密着型の人たちですけど,2000年から2050年に掛けては,ずっとそういう割合は増えていくので,実は地域に回帰していくというか,地域密着型の総人口は増えているので,コミュニティというのが大きな問題になると。
 もう一つは,これまでコミュニティというのは,基本的には日本の場合,会社と家族が担っている場合が多くて,つまり外に出てつくっていた割合が多いですから,またサラリーマン家族と自営家族というのは,サラリーマン家族の割合が非常に高いですから,サラリーマンにおける会社と家族をベースにしたコミュニティというのが多くの人のモデルになっていたという問題があったと思います。ところが,それが地域に回帰していく中で,会社も家族も変化が激しくて,どういう形での帰属意識と支え合いというものが成り立つのかという戸惑いがすごく広がっている。地域をモデルとしたコミュニティというのは実は余りはっきりしていないという感じです。だから,やっぱりコミュニティなんだという話になっていると思うのです。
 それから,そういうふうに考えると,従来の農村型の,いわば個人の共同体に一体化していくコミュニティではなくて,個人と個人が独立してつながっていくという,そういう都市型と言っていいかどうか分からないですけど,新しいコミュニティの質というのが求められていると思います。

【浅井座長】  そうだと思います。

【松田委員】  市民性の育成というのは,そこにかかることだと思うのですけれども,そのように伺ったのですけども,それは社会課題としては非常に新しいことなので,そういうことを促していける人材を配置していったり,育成していくということというのは,これは非常に大きな課題だと思いますし,先ほどマネジャーなのかプレーヤーなのかという言葉がありましたけど,そういう新しいコミュニティ形成というのが,時間軸を共有するという体験がなければなかなか支え合いとか,帰属意識というのは成立しないところがあって,教育的なものというのは,その際に不可欠なものになるのではないかと思えるのです。ですから,その交差点のところで,新しい人材というものをマネージしていくという意味での社教主事という役割というのが,僕にはあるように思えるのですけど。

【浅井座長】  はい,どうぞ。

【生重委員】  井出委員が言った素養なのか,社会教育主事としての本来の役割を明確化して配置するのかという,多分,井上委員が示されたように段階的なものというのはあると思って,行政の役割の中に,これから求められる市民の自立性みたいなこととか,自ら参画してくることを促していくという様相を強くしていくならば,どの部署にも社会教育主事的な素養が必要になってくるであろうというふうに思うのです。
 片一方で,指導主事は,井上委員が言ったように社会教育主事を経験する,若しくは資格を取るというのは必要なのではないかと。学校というのは,どうも閉鎖的で,自分の目の前のことを,見えていることしか解決しようとしないのが,今の学校教育の煮詰まりとか,行き詰まりというところにあると思うので,もう少し視野を開くという意味では,社会教育的な素養と経験値が必要であろうと。
 現実問題を考えたら,これだけハードに働いているのに無理だろうというのを承知の上で言っていますが,でも,その目線があって,初めて市民社会を生き抜く,これからの次世代を育成できる教育現場になるであろうというふうに思う。特に,地方都市に行ったら,教員が社会教育主事として出ることによって,自分たち独自のネットワークというものもでき上がっていき,点から面に広げていくという力が備わっていく方が多いので,その教員がという,今の各地方におけるありようは残しつつ,だからこそ段階的な力として,本来,社会教育の重要性みたいなことをどう打ち出していくのか,まちづくりには,この社会教育の観点が非常に重要であるということをどう打ち出すかとしたならば,資格制度は段階的なものにならざるを得ないだろうと,何年以上の経験値とか,何年以上のこういう様々なフィールドでの活躍とか,そういうものも,もしかしたら加味されることも必要なのかもしれない。マネジメントができる力や,もっと言うならば,プロデュースする力を持つような,そういうことも含めて身に付けて,学びとって,行政の中で実践していければ,本来の求められているところに行くのではないかと。
 ただ,どう学べば,そう行くのかは,議論して,きちんと積み上げていかなければいけないとは思うのですが,今の状態を段階的な資格というところの視点に持っていくことで,もう少し市民ときちんとタッグを組める,そういう専門職が出てくるのが望ましいというふうに思います。

【竹原委員】  生重さんがおっしゃったこと,私もほぼ似たところを持っていたのですが,まず一つは,教職員の中,学校の中に社会教育的な要素を外さないで,常に入れていかないと,もっと入れていかないと,多分学校改革,教育改革はできないということが一つ。
 それから,一番気にしているのは,市民と協働するときに,コールパートナーになれるか,なれないかで,何か今までの従来のように公民を作るというのが,私はちょっと勉強不足かもしれませんが,何か作る,何か指導,助言をするというのではなくて,もう市民は既にいろんなことをしていますし,実践もあるし,考えも今までの社会的な見地からたくさんありますから,そこでパートナーになれるかどうか,それは大きな大人にとって今までの行政マンであり,教員でもあり,市民であり,社会人である人が,全てが価値観を変えて違うものを作り上げるということが,一番大きな社会教育だと思っています。それは,多分今までの社会教育主事が学んだことでは全く足りないことで,逆にいろんな経験値もなければいけない。
 それから,もう一つ,私は前回来たときに,はっとしたのは,ラインを持たないという言葉がリフレインして,今残っているのですが,政策を作っていけるかどうか,それから行政の組織を変えていく力になれるか,行政の中で認められる存在になるかどうかというのが,もし必要だとしたらば,もう本当にそれはうれしい。地域でできないことを,行政を動かすことによって社会を変革したり,教育現場を変革する力になると思うのです。そういう場合は,やっぱり社会教育で今までやってきた評価軸,評価の視点というのを,曖昧だったり,見えなかったり,自己満足であったりしたことを,ちゃんと行政の中でプレゼンができて,そして,その行政の中でどれだけ必要かということを地域のニーズなり課題を伝えられる力があって,そして,それを最後,予算化する力がなければ力にならないのです。それは,とても今までもどかしく思って,私も実は教育委員会の中で生涯学習推進嘱託員という曖昧な仕事をしていたことがあるのですが,多分,社会教育主事的な仕事だったのですけれども,そこで市長部局を含めて,それを語れる人が余りにもいないことで,弱かったなと思っています。
 ですから,資格の話の前に,行政を変革するものなのかどうかということが一つ,それから,もう一つは,地域でもっと学んで,もう既にそういう能力を持っている人が,学びながら社会教育的なロジカルなものも入れながら,現場で活躍できる素地を作るというのが推進体制に必要なのではないかなと。ちょっと,まだまとまってないのですけれども,そんなことを思っています。

【浅井座長】  ありがとうございました。相反することなんですけども,宗像市の方では,教育のことが分かる教員が社会教育主事になられていると。一方で,おっしゃるとおりに,教員がやっている限りは,予算もとれなければ,ほかの部局と対等にプレゼンもできない,ということで社会教育主事は行政職の人がやれという人もいます。どららがいいのか分かりませんけども。

【竹原委員】  それがいいというのではなくて,それがなければ動かないだろうなと思いながら今まで来たので。

【浅井座長】  いろいろな見方がありまして……。

【井出委員】  任用の体系でクリアすることもできますけどね。

【浅井座長】  経験の蓄積等からくる能力的な問題なんだと思うのですが。教育のことは,やっぱり教員でないと分からないところが多々あるでしょうし。でも,行政の中で,組織の中で,ほかと対等にわたってお金をとってくるというのは,教員にはもともと向かないのでは……。

【井出委員】  教員のままだとね。

【糸賀委員】  そういう意味では,教員のままでは駄目で,経験値は確かに積まなければいけないと思うのです。先ほど言われるように,地域の中で住民の活動を束ねたり,地域の学びを支えていく人材が必要なのは,私は間違いないと思うのです。これは多分誰もが認めるのです。問題は,それは,さっき言われたように,社教主事の素養が必要なのか,資格が必要なのか。それは,どっちかといえば,当然素養が必要なのですが,その素養を担保するものとして資格というのが,私は用意されているのだと思う。その資格というのは,当然,ほかに見えるわけですよね。さっき今野委員でしたか,見える化を図らなければいけないと言われて,だから実際に動けると同時に,そのことをちゃんと担保できるようなものとして資格が用意すれば,その資格は必要でしょうと。しかも,かつては教育委員会の中で済んでいたものが,ここ20年ぐらいですか,今日の御発表があった宗像市もそうだし,前回の新居浜もそうですし,どこの自治体に行っても,市民協働課とか,まちづくり課というのが,大体できているのです。それは当然,みんな市長部局。教育委員会ではないのです。
 こういうところで,そういう市民活動がやられているときに,それを支える資格としては,多分私,現行の法律に基づく資格の中では,社会教育主事が一番近いところにいるのです。だから,そういう仕事の方を,むしろ私は社会教育主事に引き寄せていくのか,仕事のある現場の方に社会教育主事が出ていくのか,どっちかだろうと思いますよ。それは,私,両方やり方があると思いますら。社教主事にそれだけの能力がある人がいれば,むしろ仕事をこっちへ引き寄せてくることができると思います。でも,現状で,それだけの社教主事が育っているかどうかですよね。

【浅井座長】  いることはいますよ。

【糸賀委員】  だったら,ちゃんとその現場の方に社教主事が出ていく。そういう意味では,今日の今野委員の発表は,それは自治体が選択できるというふうにした方が,確かにいいと思います。
 それで,社教主事の資格は,知識と同時に,結局私はそういう考え方に立てるかどうかというのが,やっぱり大学で勉強したり,講習を受けると育っているのですよ。これは,つまり,いわゆるマインドに立てるかどうかなのです。つまり,いろんなスキルも当然そこで見に付くかもしれない,あるいは法的な知識も,そこで初めて学ぶかもしれないけども,大事なのは,やっぱり社会教育の発想はどういうものなのか,人づくりや,まちづくりがどういう発想なのかというマインドに立てるという意味では,やっぱり私は資格というのは必要だと思いますね。ただし,現行のままではまずいだろうから,そこの資格は変えていく。
 それで,私はちょっと面白かった。この井上委員の提出された資料で,そういう意味では,学校の先生も社会教育のマインドに立てると,子ども部で結構活躍できるのです。そうだとしたら,私は社会教育主事そのもの,最初のハードルは下げておいた方がいいと思いますね。誰もが社会教育の発想や,まちづくりだとか市民協働,そういうものに立てるという資格にするという意味では,下げておいた方がいいと思います。誰もが,そういうことに飛び込めると。ただし,それで本当の意味でのまちづくりの専門家が育つかというと,私はやっぱり怪しいと思う。そこには当然,経験も必要でしょう,あるいは,もっとさらなる研修も必要でしょう,ほかの自治体でどういう取組があるかということをちゃんと学ぶ場も必要だと思います。
 そういう意味では,さっきの,ある程度,差をグレード制にするのですかね。シニアという表現がありましたけれども,最初のハードルは下げておいて,本当の意味でのプロフェッショナルの地域づくりをやる人間は,もう少しやっぱりハードルを上げておくべきだろうと思います。そういう意味では,職歴,場合によっては学歴をちゃんと上げておいて,2段階でやっていくというようなことは,今後考えるべきだろうと思います。
 それから,その人たちが活躍する場は,私は教育委員会の中でやれるのでしたら教育委員会でも結構です。いや,もっとうちの自治体では,ちゃんとまちづくりの方に出ていって,首長のまちづくり,あるいは自治体の長期計画,そういうものとかみ合ったまちづくりや人づくりの計画が立てられるというのであれば,そちらで活躍してもらってもいいと思います。

【浅井座長】  今までとは違う資格制度にするということですね。

【糸賀委員】  社会教育主事の現行資格を,もう少し発展的にやるんでしょうね。

【野島委員】  さっき何人か手を挙げられたので,とりあえず手を挙げて,順番を待とうと思っていたんですが。
 今,最初,今野先生,それから柴田さんのお話を伺って,大体一つの方向が私の中で見えてきているのですが,もう社会教育とか生涯学習の中では入り切らないのです。なので,資格もそれをカバーできるような資格になっていかなければいけないと思っているのです。
 それで,糸賀委員さんが少しおまとめいただいたのですけども,その資格というものは,その前に,社会教育の素養をしっかり持っているということを担保するとおっしゃったけども,外に見えるようにしていく。それが,やっぱり実際に活動するときに,この人はどういう能力を持っているのか,外側から見えますから非常にいいわけで,それが内が,つまり行政にいるか,あるいは外にいるか,両方いた方がいいと思うのですけれども,そういう形にしていくというのは非常に大事だと思うのです。
 それを形にしてくださったのは,この井上委員さんのこれで,ここでは仮称,社会教育士というふうになっていますが,そういうふうにしていければ,それを行政が取り込んでもいいし,地域の中でこういう能力を持っているということで活動していただいてもいいと思うのですけれども,これが国家資格であるということが,とても大事だと私は思うのです。
 前に,ちょっと病院に知り合いの人を訪ねて看病に行ったときに,いろいろな資格が病院にはありますよね。医師から始まって。それが臨床心理士が一番下なのです。臨床心理士というのは,結構大変な,これを取るのは大変だと思うのです。それが何で一番下かというと,国家資格ではないのです。これは団体ですよね。

【糸賀委員】  団体の認定資格。

【野島委員】  認定資格。なので,国家資格というのはすごく効くんだなというふうに思うのです。そうした国が,これだけの能力を持っている。その能力は,今お話にあったように,今までの社会教育や生涯学習で求めているものだけではないのだろうと。多分,協働ということになれば,それを使って市民の方がそれを捉えたときに,行政と協働したときに,これだけの行政のことを知っているということが意味があることなのです。そういう点では,こういうふうに一度外に出して,そして資格のある人を,行政もとるし,地域の人もそれを使っていくと,共通の基盤であるということが非常に重要だと思います。
 そのときに,社会教育,これは仮ですから,これから中身を議論したり,形を議論されると思うのですけども,社会教育という言葉が,世間から見て,どれだけ理解されるかということになると,もう既に柴田さんのところでも,社会教育という言葉が出てこないですよね。生涯学習という言葉も,もうやめて,別のところに行ってるわけですから,そうしたときに,みんなが理解して,こういうものだなというような言葉一つ探すということは,とても大事なことだと思います。
 少し皆さんの議論の中に,また私も加わっていきたいと思いますけれども,そんなことを感じました。

【浅井座長】  ありがとうございます。言葉ということでは,文部科学省のサイトのトップページから社会教育とか生涯学習とかの言葉が消えてしまっていますけども,入れていただきたいと思っております。言葉は使わなくなるとその実体もなくなります。それは私どもにとっても,使わなかったという怠慢を意味するのだと思うのです。
 ですから,ほかの言葉に当てはめたとしても,それで済むのかといえば,その言葉を使わなければ言葉も実体もなくなっていくだろうと思います。ですから,言葉は使うべきだと思います。もちろんもっといい言葉があるのでしたら,そういう御意見を出していただければと思いますけども,いかがでしょうか。ほかにいかがですか。

【井出委員】  ちょっと引っかかっていたことがあって確認しておきたいのです。社会教育士の資格のことなんですけど,教員は免許職種ですよね。教員免許状を持ってないと採用試験を受けられない。これは反対の言い方をすると,社会教育の資格を持っていても,別に採用には関係ない。ここのところを整理していく必要が,また,もう一つあるかなと思うのです。つまり,社会教育士という形で,もし位置づけるとすれば,当然,採用基準に,その免許なり資格なり,そういったものが出てくるだろう。そうすると,医師の免許もそうですけれども,一定の資格,一定の履修内容をなにがしかの方法で検証して,その中身がきちんと担保されたものについて免許を発行する。教員の採用試験のような形になってくると,今は教員は独自の採用をしていますから,行政に指導主事のような形で教員をもって充てるという充当指導主事で転用することはできるけれども,本部との関係が難しい。社会教育士も,社会教育士として採用してしまうと,今度は中で使い道がなくなってくる。資格なのか,免許なのかというところも,ちょっと難しいかなと。

【浅井座長】  考えてみれば,そうですね。

【糸賀委員】  それは,この手の資格は,いわゆる名称独占と業務独占とあるのですよね。業務独占の資格というのは,その資格を持っている人間でないと,その業務ができないというものですね。医師だとか調理師だとか,あるいは教師もそうですよ。だけども,これは多分,私,そういう意味では柔軟性を持たせておいて,教育委員会でもできるし,首長部局でもできる。そういう意味では名称独占であって,この名称を名乗れるのは,やっぱり社会教育士という名称がいいかどうかはともかくとして,この名称を名乗れるのは,ちゃんと勉強をして,一定の単位を取った人間だというふうにするようにするべきだと思いますね。
 それから,ちょっと関連して申し上げますけれども,先ほど松田委員が,ケアマネジャーのような感じでシニアの生涯学習のコーディネーターを考えるのかというふうに言われましたよね。私も,先ほど井上委員の提出した資料に基づいて,最初の資格はハードルを下げておくべきだろうと。その代わり,その次はちゃんと考えておかなければいけない。これは,実は1996年の平成8年のときに,当時まだ生涯学習審議会だったときに,社会教育専門職員の高度な専門性を有する名称付与の提言が1996年にあったのです。だから,博物館学芸員も社教主事も,そして図書館司書も,そういうものの提案があのときあったわけです。その中で,実は図書館司書だけは,私どもいち早く,今の司書ではハードルが低い。これはこれであっていいと。だから,そういう意味では図書館のマインドに立てる,あるいは地域の中で図書館を通じた人材育成のマインドに立てるという意味では,これでいいと思うのです。だけども,それだけではプロとは言えないから,その上を作ろうということで,これは先ほど言われたように,社団法人日本図書館協会が独自に認定する上級司書に当たるものを始めたわけですよ。これで3年たって,今回4年目を迎えますけども,そういうやり方で,今の国が定めた法律のほかに,場合によっては民間団体が上位を作っていっても,私はいいと思いますよ。

【浅井座長】  それはいいと思いますよ。

【糸賀委員】  だから,そうやって差別化というと聞こえが悪いですが,グレード制なのですよ。最初は,こういう資格でもって汎用性を高めておいて,さっきのように学校の先生も,そうか,そういうことなのかというふうに分かる。あるいは,民間で仕事をした経験のある方も,そういうところで勉強して,そうか,まちづくりというのは,そういう視点に立てばいいのだということに気付いてもらう,そういう資格を用意しておく必要があると。

【浅井座長】  気付いてもらうのが大変なんです。

【糸賀委員】  それだけでは,やっぱり自治体として任用しにくいということであれば,その上の段階の本当のプロを,ここでは社会教育士のような資格を作っておいて,そういう資格を持った人を任用するというふうにしていけば,私は,ある程度,現状を打開しつつ,もっと多くの人に社会教育主事の働きや素養を持った人材の必要性を分かっていただけるだろうと思いますね。

【浅井座長】  そのとおりですが。

【糸賀委員】  そうなればいい。

【山本委員】  これまでの社会教育士の議論については私も,大体そういう方向になるのではないかと思うのです。他方,社会教育行政をどこに置くかという議論については中教審の教育制度分科会の動きも注視しながら考えるという話だったと思うのですけれども,教育制度分科会の議論に従属する形で,ここが展開するのか,社会教育行政をどこに置くのかというこのワーキングの議論を,十分詰めて教育制度委員会に反映するのか,その辺はどういうふうに事務局,ないしは本委員の方々は認識しておられるのか,そこを聞きたいのです。

【生重委員】  前回出てましたよ。

【坪田社会教育課長】  事務局としては,後者というか,受け身にならず,こちらでも詰めながら,社会教育としてどうなんだという。だから,向こうが現状維持っぽくなってきたので,もう議論しないということではなくて,そもそも地方からは社会教育を選択制に,首長部局にも選択できるように,スポーツや文化としてくれという要望は既に出ているわけですので,それはそれで詰めていかないといけないなと思っています。
 その関係で,ちょっと柴田委員に御質問したいのは,さっき子供に関する事業は,市長部局に行ったけど教育委員会に諮っているという話もあったのと,あと,組織図を見ると,図書に関して,図書館,公共図書館も含めて,教育委員会に位置しているのですね。だから,公共図書館の部分だけ行ってもおかしくない部分が,これは図書のいろいろ選定とかの政治的中立性の危うさとか,その辺を考慮されて残されているのかについて,ちょっと教えていただきたい。

【柴田氏】  図書館は教育部局に残してますけど,残した理由というのは,今,中立性の部分は,そうは意識してないと思います。学校図書館の関係が非常に大きいものがありますので,まずは,それが一番の理由なのかなと。図書司書も全て教育委員会で配置していますので,単純に図書は残しておこうということだと思います。

【坪田社会教育課長】  あと,この諮っているというのは,何か規定があるんですか。教育委員会に諮ることとなっている,この市民協働環境部でやっている,子ども部でやっていることで,教育委員会にこの部分は諮りなさいということが条例等で。

【柴田氏】  簡単なペーパーで,実は子ども部ができるときに,一つこういう形で運用しようねという約束だけを内規的に,ちょっと整理しただけで,例規レベルのことは整えておりません。

【浅井座長】  ありがとうございます。今野委員,お話を伺っていて,いかがですか。最初に御発表いただいて,皆さんの御意見を伺ったりしまして,何か感想を最後に伺えればと思ったのですけど。

【今野委員】  あんまり,とんちんかんな発表ではなかったのかなと。

【浅井座長】  とっても有り難かったです。

【今野委員】  むしろ,いろいろ言っていただいたので,大きな方向性として,あとは具体的にどう詰めていくのかなということをすればいいのかな。個人的には,そう思いました。余り恥かかなくて済んだと思ってます。

【浅井座長】  とても勉強になりました。整理ができていて,有り難かったです。
 菊川委員,最後に一言お願いします。

【菊川座長代理】  提案と事例がはっきりしていたので,論点がだんだん明らかになってきたという感じです。ただ,やはい原理原則が大切で,大人の教育とは何か,市民性の教育という,その大人の教育とは何かという基本的な課題と,それから,教育基本法との関係とか,あるいは,あるべき資格を想定したときの資格の核となるものは何なのかとか,もう少し議論を続けるといいのかなというふうに思ったところでございます。

【浅井座長】  ありがとうございます。
 私も最後に,ちょっと一言申し上げますと,先ほど申し上げましたように,社会教育の重要性は,ここにお集まりの方はよく分かっているのですけども,それをやはり社会にどういうふうに認めてもらうのかということではないかと思います。行政部局に行ったときに,本当にそれで社会教育が重要なのだということで扱っていただけるだけのものを残さなければならないだろうということなのです。それが何なのかということが,いまだに答えが出てこないのかなという,そこをお考えいただきたいということが1点です。
 それから,今,菊川委員が最後におっしゃったことがすごく大事で,ちょっと糸賀委員がおっしゃった,前におっしゃったことと矛盾しているのではないかなと思うところがあるのですけれども,司書の核というのはスキルなんですよ。誰でもできるかもしれない。そこなんですよね。それを社会教育の方で,そのスキルを作って,スキルというのは何か。これは行動の仕方で,繰り返し繰り返し,研修が,訓練ができるということなのです。その上に,先ほど言ったような文化を作るのです。社会教育の領域というのは,この文化の抽象的な精神論ばかりやっているから要らないと言われてしまうので,そこのスキルのところをいかに作るのかということ,これが開発できるかどうかで,センター長もいらっしゃいますが,国社研とかありますから,その開発を前提にして,私はそれをつくるべきだと思っています。それがない限り,申し訳ないけども,10年後,20年後に社会教育はどこかに行ってしまうだろうと思っていますので,それが作れるかどうかだと思っています。
 済みません,以上です。ですから,そこのところをよくお考えいただきたいと思っております。
 ということで,今後のスケジュールについて,事務局の方からお願いいたします。

【新木企画官】  資料3を御覧いただきたいと思います。今後のスケジュールということで,次回第4回ですけれども,7月5日,13時から15時で開催をしたいと思っております。本日につきまして,ヒアリング討議ということで,次回は今野委員の資料にも出てきましたけれども,社会教育行政の方を首長の方に移管しているということで,佐賀県の方のまなび課の方のお話と,それから菊川座長代理の方からお話を頂きたいというふうに考えております。
 以上でございます。

【浅井座長】  ありがとうございます。
 それでは,まだ皆様方,言い足りないことがたくさんおありだと思いますので,また是非,事務局の方にメール等で,資料とか御意見をお出しいただければと思います。
 それでは,今日は本当にお忙しいところ,ありがとうございました。また,よろしくお願いいたします。閉会させていただきます。

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