【資料2】糸賀委員提出資料

審議のとりまとめ(案)に向けた個人的意見     平成25年7月17日

糸賀 雅児(慶應義塾大学)

 

論点1 教育委員会と首長の関係の在り方について

 

・教育再生実行会議の第二次提言(4月15日)、中教審教育制度分科会第26回(7月1日)、全国市長会提案(平成24年7月24日)等を見ても、教育委員会制度は学校教育中心で検討・議論されている。

・学校教育:発達・成長段階にある未成年の同一年齢層を対象に、全国一律の学習指導要領に基づく意図的学習が根幹にあり、トップダウン型。

・社会教育:多様な年齢層と社会的階層を対象に、地域の実情と学習主体の要望に基づく意図的学習と偶発的学習が混在し、ボトムアップ型。

  → ひと口に同じ「教育」といっても、だいぶ性質は異なる。

・同様に、指導主事と社教主事の役割、機能もだいぶ異なる。

・その一方で、社会教育行政の首長部局への補助執行化の傾向は顕著。

・同様に、社教主事の発令数の減少は厳粛に受け止める必要がある(現状で、社教主事の「半減期」は約15年(文科省「社会教育調査」による))。

・とは言え、社教主事が地域人材の育成(ひとづくり)に果たす役割の重要性は、多くの関係者の認めるところ。

・当WGのヒアリングを通じても、必要に迫られて、同様の地域人材の育成を首長部局でも目指していることは明らか。(新居浜市、宗像市、佐賀県)

 

⇒ 二重行政の批判を避けるためにも、社会教育行政の教育委員会・首長部局間での選択性は考慮に値する。制度の骨格を変えることなく、現在の社教主事の熱意と奮起に期待するのでは、限界があるように感じる。

 

・ただし、その際にも「政治的中立性」「生涯学習振興行政の継続性・安定性」「学習の自由」は担保されるべきであって、社会教育法に規定する社会教育委員会議や公民館運営審議会(図書館、博物館も同様)に相当する会議体を制度として設け、地方分権にふさわしい地域住民主体による統治システム(ガバナンス)を確保できるようなスキームは必要。

 

論点2 社会教育主事の在り方について

 

・社教主事の資格を取得し、社教主事としての経験を積み重ねていく過程(キャリアパス)における多様化・複線化を図ることが現実的。

・すでに、平成8年生涯学習審議会社会教育分科審議会「報告」でも“社教主事講習を受講しやすくするように実施方法を工夫するとともに、大学以外の学習成果や様々な実務経験で培われた職務遂行能力を積極的に評価することにより、社教主事の資格取得の途を弾力化する必要がある”と指摘。

・最初のハードルは低くして、多様な人材が社会教育の世界に飛び込めるようにするとともに、社会教育のマインドを身に付けたうえで、知識と経験、そして人脈と表現力を備えた真の専門的職員を資格認定する仕組み(国家資格もしくは権威のある民間資格でも可)が必要。(← 図書館司書の世界においては、4年前から(社)日本図書館協会による認定司書(上級司書)制度が実現。)

・地域課題を自らに引き寄せるか、地域課題のあるほうへ自らが飛び込めるか。

◎従来の社会教育行政における「自前主義」から「出前主義」への転換を図る。

 

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