【資料2】第1・2回社会教育推進体制の在り方WGにおける主な意見

 

  論点1 社会教育主事の在り方

【社会教育主事の役割・位置付け】

○ 社教主事の役割・位置付けの捉え方が地域ごとにまちまちである。このことは、社教主事の必要性に対する認識を低下させ、設置率の低下を招いているのではないか。

○ 指導主事と比べて、社教主事は指導する対象が見えづらい。社教主事は汎用性の高い能力として認知されてきたが、どのような立場でどのような能力が強みなのか、また、その能力をどのように育成するかを再考する必要がある。

○ 社教主事に指導・助言という言葉はなじまない。専門的知識を持ちながら、つなぎ、広げていく人材。ネーミングを変えてもよい。

○ 学校支援などの分野でコーディネーターやリーダーがどんどん生まれてきている。これらの人材間のネットワークを広域的に結んでいく「コーディネーターのコーディネーター」となることが重要。

○ 様々な人材はPTAやNPOなどの場で育っており、社教主事が直接育成しているわけではない。このような人材を育成できる場や団体を育てていくことが社教主事の重要な役割の一つではないか。

○ 社教主事の役割は現場でファシリテートすることよりも、地域活動の組織化支援や、地域の状況を理解し社会教育行政の全体計画を立てることではないか。

○ 「議論のまとめ」で強調したような、絆づくり、地域づくりの機能を果たすネットワーク型行政の中核を担うのが社教主事ならば、これを実現できる役割を持たせることが必要。これまでの教特法に位置付けられた教育の専門家としての枠組みでは、狭い分野に限定されがちであるため、そこから広げていく必要がある。

○ 主事は組織上のラインを持っておらず、特命事項や単独事項しかできないのが実情。役割を大きく考えるのであれば組織上の位置付けやライン化も考えなければならない。

 

【社会教育主事の資質・能力】

○ 司書や学芸員には拠点と資料、そしてその資料の扱い方についてのスキルが存在するが、社教主事にはそれらがないので、外部からみれば専門性があるようには見えない。

○ 「学ぶことでつながる」ということが、ある種、幻想になってきている。専門性の在り方は変化しており、知識ではなく、「つなぐ」ことに対する専門性が重要。

○ 結び付ける力、地域の力を引き出す力、あるいは組織化できる力を打ち出していくとするとコミュニケーション能力とファシリテーション能力が必要。具体的な養成方法は確立されておらず、現在の講習で養成できているとも言いがたい。まずは、ファシリテーション能力の育成を徹底的にやるべき。

○ 今の社教主事は、教育、学びだけで終わってしまう場合がほとんど。学んだことを実際に事業の展開に生かしていくことが求められる。学びを実際の課題に循環させていけるような能力がなければ、行政として発展性がない。

○ 社教主事は「ジェネラリストとしてのスペシャリスト」。コーディネート能力、ファシリテーション能力、プレゼンテーション能力などの一般的な能力を、一定の知識・技能のパッケージとして資格、専門性とすることを検討すべき。

○ 一つのことしかできない社教主事ではなく、企画立案、地域のマーケティング、人の話を聞く、自分自身で事業を行うなどの全ての能力を身につけた人が必要。

 

【社会教育主事の養成・研修】

○ 講習のために1か月いなくなっても業務に支障がないような若い方が送られてくる。講習を修了しても能力が十分に形成されておらず、発令しづらい。市町村の社教主事の育成に対する意識の低さと言えるのでは。

○ 社教主事講習が社会教育の実習なのか社教主事の実習なのか曖昧なところがあるため、専門性を伴った育成のための系統化を考える必要がある。

○ 育成において、常に実践性が強ければいいとは思わない。現場と座学との往還を具体化していくことが必要。

○ ファシリテーション能力をいかに身に付けていくかということを、もっと徹底的にやるためには、現在の講習の時間数では不十分。

○ 大学での養成においては、多様な学部や専攻から構成される学生が集まってきて資格を取るという形が望ましい。また、社会人の学び直しや国際的なことも考えると、大学院レベルでの養成という考えもある。

 

【社会教育主事の配置】

○ 社教主事の数は、県ごと、あるいは地域ごとに格差を伴っており、地域のネットワークの格差につながっているのではないか。

○ 任用資格は必要だが、なぜそれが教育委員会になくてはならないのか。地域づくりやまちづくりと関わるのならば、選挙の洗礼を受けた首長のビジョンを実現するために動くのは当然。

○ 首長部局に社教主事を置いた場合、学校との連携が難しくなる。

○ 学校との連携がきちんと図られるような仕組みは作っていくべきだが、首長部局にいたら学校との連携ができなくなるわけではない。平成20年の改正による、求めに応じて学校へ指導・助言できるという規定は残せばいい。

○ 教育委員会にいても、指導主事と社教主事はつながりが薄い。それならば、地域の実情に合わせて、自治体の判断にまかせてもいいのではないか。

 

【社会教育主事のキャリアパス】

○ 有資格者は発令された者の何倍もいることを考えると、非常に強い味方。これを活用できる制度があるとよい。

○ 派遣社教主事として派遣された教員が、学校に戻ると形成したネットワークを生かせていない。放課後の学びの場を用意するのが社会教育の役割であることをより明確化することで、培ったネットワークを生かすことができるのではないか。

○ 社教主事は、専門職であるが故に行政職のようには出世できない。本人の希望に応じて、培ってきたスキルをまちづくりや福祉などの分野でも活用できるようにすれば、社教主事のスキルが生きる。

○ 平成10年の「ネットワーク型行政」の議論は行政の各分野をネットワーク化するイメージだったが、現在は地域で活躍する多様な主体のネットワーク化に変わってきている。様々な分野で活躍する有資格者を途中採用や民間登用していく仕組みづくりも必要。

○ 現在の任用資格ではなく、能力を証明する独立した資格とし、活用の場や使い勝手の向上を図ることも考えられる。その際、現在の資格を汎用資格化する方法と、新たな資格を作る方法がある。

○ 教育委員会と首長部局の温度差は大きいが、社教主事の資格を取った者が役所のいろいろなセクションにいることで、役所内のネットワークをつなぐことに役だつ。

○ 行政における相互調整を担う部局に社教主事的なマインドを持った人間が位置付けられる方が、地域にとってはプラスに働く。

 

  論点2 教育委員会と首長の関係の在り方

○ 首長部局に社会教育行政を移管している自治体はずいぶん増えた。現在は地方自治法における委任や補助執行によって実現しているが、地教行法の文化・スポーツと同様に、自治体の判断により移管できるようにした方が現場はやりやすいのではないか。

○ 首長のリーダーシップでどんどんまちづくりが進む良さもあれば、首長が替わった途端に大人の教育に関する施策が変わってしまうことへの危惧もある。成人教育や高齢者教育においても、政治的中立性、継続性・安定性の観点から、チェック機能は必要。

○ 首長部局と一緒に効率的、効果的にやることだけを考えるのではなく、生涯学習体系の中で考える視点も重要。学校教育だけでなく、体験活動や地域での活動を含めて、学力を育てていくという視点は、社会教育側から言わないと消えていく。

○ 首長部局との協力は必要だが、人づくりという行政としてのミッションを保持し、役割分担した上での協働であるべき。首長部局の事業は、興味がある人が進んで取り組んでいくが、社会教育行政は、興味がない人を、学習を通じて興味を持たせていく、サークル化、グループ化したり、一般行政が担う活動につなげていく、という点で役割が異なる。

○ 一般行政部局の政策では局地的になってしまいがちであり、誰でも当事者性を発揮しやすい教育行政だからこそ、全体を巻き込んだコーディネートができるのではないか。

 

  その他

○ これからの日本において望ましい地域の姿をまず描き、その実現に必要な人材と制度を議論した上で、そのような人材を確保するための任用資格、養成方法を考えるという順番で議論を進めると理解しやすい。

○ まちづくりを進める上で、様々なパートナー、セクターをつなげるためには、学びを通じて市民性を高める必要がある。それこそが社会教育の役割。

○ 「ネットワーク型行政」を進める上で、社教主事が中心的な役割を果たすとしても、首長部局がそのことを認識していなければ、独り相撲になる。

○ ネットワーク型行政というのは、魅力を感じない言葉になっている。意図を持って集まるためには、「プラットホーム型」になるし、もっと本当に仕掛けていくためには「プロジェクト」になる。社会教育の視点からプロジェクトを首長部局に対して仕掛けていって、ブランチを持っている強みを活用しながら、作り上げていく、見せていくような働きをしていくべき。

○ 教育に関わる人材については、育成と活用、それらをどう一体化するか、という3つの視点が重要。

 

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