国民の学習活動の促進に関する特別委員会(第7回) 議事録

1.日時

平成18年2月27日(月曜日) 13時~15時

2.場所

グランドアーク半蔵門 「光」(3階)

3.議題

  1. 国民の学習活動の促進に関する方策について
  2. その他

4.出席者

委員

 山本委員長、菊川委員長代理、糸賀委員、江上委員、加藤委員、小杉委員、坂元委員、柵委員、笹井委員、佐藤委員、田中委員、中込委員、渡邉委員

文部科学省

 中田大臣官房審議官、大槻生涯学習政策局政策課長、吉田調査企画課長、三浦社会教育課長、清水男女共同参画学習課長、小川参事官、佐藤生涯学習企画官、その他関係官

5.議事録

(1)まず始めに、菊川委員から、地方における生涯学習・社会教育行政の現状と課題について、プレゼンテーションが行われた。

【菊川委員長代理】
 資料1を準備させていただいております。生涯学習・社会教育行政の現状、あるいは課題は、国、県、市町村によってそれぞれ異なる部分があろうかと思います。また、同じ県や市町村におきましても、地方によって、その成り立ち、歴史あたりから違う面もございますけれども、おおよそ、福岡県の事例というのは、どちらかと言いますと、九州、中国地方あたりにある程度共通して見られる課題ではないかと思っています。東京、大阪近辺とはまた対応が違っているのではないかと思います。
 まず、先般の審議結果の報告にもございましたように、新しい「公共」を培う学習の可能性というところで、3点事例を挙げさせていただいております。
 まず、「ほなみマナビ塾」を挙げさせていただいております。資料としましては、4ページから6ページでございます。ここは、高齢者等の人材養成を、子どもの社会教育活動の指導者として活用している事例でございます。また、教育長さんが非常に社会教育のベテランの方で、地域人材を養成し、それを徐々に学校の中に取り入れていったという事例でございます。
 4ページをごらんいただきますと、「マナビネットほなみ」というのが人材活用のネットワークでございます。それから、「いきいきサタデー」は、平成14年に導入されました学校週5日制対応の事業で、最初は土曜日1日から始めています。それが、子どもマナビ塾、子塾ということで、これも最初、木曜日、週1回ぐらいから始めておりますけれども、平成17年度からは管内の5校の小学校で、平日及び土曜日と、毎日という形で実施されてきております。参加者は1回100円の参加費を払い、指導者はマナビネットの高齢者という構造でございます。こういう形で、また、マナビネットの補充も兼ねまして、熟年者マナビ塾、熟年塾というのがございまして、これがマナビネットほなみの供給源でございます。
 5ページに具体的なプログラムが書いてございます。夏休みも29日開いています。夏休みは、お弁当が腐るとか、そういう話もございまして、公民館でやっています。それから、5ページの下に書いてありますように、通常の平日のプログラムとして、月曜日は珠算、火曜日は体力づくりのような形で、5時半までやられておりました。
 ところが、ちょうど昨年の秋、子どもの安全に関する事件等がございまして、それをきっかけに、6ページにありますとおり、今までどちらかと言うと社会教育サイドでやられていたのが、管理者を学校に変えられまして、子どもの安全のための学校宣言という形で、学校が主体者で6時まで預かるという形でやられているわけでございます。
 1年から6年まで、参加率は全部の子どもの13パーセントぐらいです。ただこれは、今のところ、厚生労働省の「留守家庭子ども会」と並行してやっております。そのため、13パーセントという、一定程度、面の広がりが見られると思っております。
 教育長さんはこれまでもいろいろ学社連携の取り組みをやってきたけれども、今度の事例が、自分としては一番、学社連携に近いとおっしゃっていました。また、長年にわたって積み上げてきているものですから、無理がなくて、学校としても、社会教育が汗をかいて、学校がいいとこ取りをさせてもらっているというふうに、校長先生方がおっしゃっておりました。学校の風土もこの事業を通して変わられたということでございます。
 事例の2でございます。これは古賀市という福岡市の都市近郊の市でございます。7ページと8ページをご覧下さい。これは典型的な地域リーダーの養成塾でございますが、市として生涯学習の基本計画をつくったのをきっかけに、計画をつくるだけではいけないということで、平成15年度、16年度に、リーダー塾というのをなさいました。これはどちらかと言いますと、地域づくり企画の練習を、生涯学習課とコミュニティ推進室と、両方合わせて事務局になってやったということでございます。2年間にわたって取組んでおられますと、参加者が何かやってみたいということになりまして、平成17年度は、新たに大学の先生を指導者につけて、KJ法で担当を決めてやったということでございます。
 8ページがその一覧でございます。この中で、特に機能いたしましたのは、1番とか、2-2、健康づくり、3番、4番の松原サミット、6番のホームページを使っての広報ということでした。例えば、寺子屋の実践につきましては、お手元に黄色いチラシを入れさせていただいておりますけれども、そういう形で実際、民間の方が主体となって、古賀寺子屋というのを、冬休みにやられております。100人前後の方々が恒常的に携わられたということで、頑張られた取組と思います。
 3番目の事例でございますが、「新家庭教育宣言-考えよう今家庭にできること-」ということで、これは県のPTA連合会が主催した事例でございます。PTAの新聞を入れさせていただいております。去年の10月の新聞ですが、PTAが全く自発的に、家庭教育を見直すモデル事業を、中央が3万円を補助して実施された事例でございます。そこの新聞の左側に記載されておりますが「早寝早起き朝ごはん」ではありませんけれども、それぞれ期間を決めて、スローガンも自分たちで決めて、実施するに当たっては、必ず勉強会をするというのと、あと、事業をやった後に保護者アンケート等々で検証するというのを実施されました。学校、PTAによっては統一目標を2つだけ決めるとか、例えば、あいさつをすると履き物をそろえるとか、1つ統一目標、1つ自分のところの独自目標とされているところとかがございます。期間については、おおむね2週間ずつ3回実施というのが1つのパターンのようでございます。
 先週の土曜日にそれの報告大会をPTAが独自になさっておりまして、立派な報告書もつくられており、保護者のアンケート等々も、この中にちゃんとまとめてあるということでございます。
 レジュメの9ページに、平成18年度家庭教育推進構想(案)福岡県教育委員会と書いておりますけれども、これは福岡県の家庭教育の仕組みでございます。国のほうからも、いろいろ委託事業その他で支援をいただきまして、それを自分のところで組み直して、こういう形でやっているわけでございますが、黒い網掛けの中の下に、家庭教育に関する実践活動事業(県単新規予定)と書いていますのは、この12事例が効果を上げたということで、県のほうで、またそれを広げ、支援する事業を組んだということでございます。
 1枚目に戻っていただきまして、「当たり前」のことをやるモデル事例の多様性と広がり、継続性と書いております。また、家庭から学校、地域へのベクトルと書いていますのは、県のPTA会長さんに、「来年いかがですか」というふうに申し上げましたら、「今年は学校に理解してもらったので、来年は地域に理解してもらわないといけない」とおっしゃられたので、私は思わず笑ってしまったのです。行政はどうしても、行政からという発想ですけれども、PTAのほうから、そういうふうに、学校は理解してくれたという言葉が出たのは、とてもおもしろいと思いました。
 下に3つ丸をつけていますのは、私の多少の感想でございます。地方において、これから公的関与が期待される課題としては、やはり子どもの育ちと高齢者ではないかと思っております。こういうことへの課題解決、あるいは地域の活力につながる、入り口と出口のある学びが必要ではないかと思っておりますが、そういう入り口と出口の学びが上手にコーディネートされている場合というのは、必ずそこにすぐれた職員なり、民間のリーダーなりがいるというのが実態でございます。
 なお、今後、合併等々で市町村の広域化が予想されますけれども、地方で見てみますと、小学校区が逆に、コミュニティの核として機能する方向性が生まれてきているように思っています。そういった意味で、学校がコミュニティの核として再認識されるというのが1点と、また逆に、学校が核になって、学校から発信したときに、地域で受け取る側の、地域の教育力をだれが担っていくのか、あるいは、だれが実質、地域の教育力を具体化していくのかということを考えましたときに、公的な社会教育の役割は、私はむしろ大きくなるのではないかと思っているところでございます。
 続きまして、2ページでございます。職員の問題でございます。事例4は、私どもの事例を挙げさせていただいております。チラシで、「子育てネットinふくおか」という黄色のチラシと、「ふくおか子育てパーク」というチラシと、2つでございます。これは私どもで今年度やりました事業ですが、子育てネットは、乳幼児のお母さんの子育てリーダーの1泊研修でございます。これは私どもが発想したというよりも、実は子育てグループのリーダーさんたちが、ヌエックから2年間委託を受けてやられた事業でございます。ところが一昨年度、その事業が終わりまして、そのときに、社会教育センターが子どものプログラムということで支援した経緯がありまして、では今年度は一緒にやろうということで、実行委員会を組んでやりました。
 その中で、半年にわたる実行委員会の取組においては、これは私の感想ですけれども、職員のほうが非常に鍛えられたという感じを持っております。また、今の若いお母さん、お父さん方の企画力とか、あるいはIT能力はすごいものだということを実感させられました。その中で、やはり職員も、肩書きにとらわれない真の実力を育てていく必要があるなと改めて思いました。しかし、市町村レベルでも同じようなことを想定しますときに、そういうものを恒常的に面として確保していくことについては、やはり、必ずしも楽観できないと思っております。
 実は、子育てパークという子育てのホームページを、文科省からの委託により今年つくったのですが、これはこの子育てグループのお母さんたちと一緒になってつくりました。これが非常によかったと思っております。やはりホームページですから、アクセスされないホームページほどさみしいものはないので、お母さんたちに半分任せるような形で一緒につくりますと、楽しみ半分でどんどん発展していきます。それで、今も現在進行形でずっと発展しているわけですけれども、お母さん方の書き込みのリレーブログに、非常にアクセス数が増えまして、そこから逆に専門家によるウェブ講座に行くという流れができております。
 そういった意味で、5年前、10年前と随分違うのだなと、久しぶりに社会教育に戻ってきて感じているところでございますが、やはり、そういうものを実際にコーディネートしていく職員の専門性みたいなものが、改めて問われているのではないかと思います。ですから、社会教育の仕事が、学習機会提供のようなものから、行政としてのコーディネートというところに力点を置いている、あるいは、後で申し上げますように、非常勤化が進んでいる、あるいは民間の活動が増大している等々のことを考えますと、社会教育主事あるいは社会教育職員の専門性ということについて確認しておく必要があるのではなかろうかと思います。具体的に申しますと、社会教育主事制度というものを再度検討する、もしくは、新たな官民共用の資格制度みたいなものをつくっていくということも、検討課題に挙がってくる時期になっているのではないかとも思います。
 資料には書いていないことですが、指定管理者等々で今から動いていきますときに、資格制度を持っているところと持っていないところというのは、審査する側としても、一つのよすがになることもございますので、職員の専門性と民間の方の専門性に、共通の基盤が非常に増えてきているのでそれをつなぐ資格制度がないのかという提案でございます。
 3ページ目をお願いいたします。福岡県における生涯学習の推進状況ということで、10ページでございます。これは平成10年から、毎年同じデータでやってきておりますが、要は1から4ぐらいまでが組織体制の整備、それ以降が事業ということで、ここ三、四年の動きを見ますと、組織体制をつくる動きというのは、ほぼストップしておりまして、むしろ、個別事業の充実に市町村の動きがむかっているということでございます。
 11ページの、公民館の状況でございます。平成17年に、社会教育調査をうちで独自に集計したもので、確定値ではございませんけれども、公民館数が、平成14年の451から平成17年の391と、一部公民館が市民センター化したところでございます。それで、職員数もずっと減ってきております。職員の専任比率を平成2年と比べますと、ずっと減ってきております。その他の職員がぐっと減っているということでございます。その割には、学級・講座の件数はそう減っていないという印象を持っております。ただ、右側にございますように、私ども、公民館連合会が独自事業を県と一緒になってやっているのですが、その参加者数は必ずしも減っていない。これは、公民館がなくなった、市民センターあたりからも参加がどんどん来ますので、そういった意味の研修としては減っていないということでございます。
 12ページでございます。これが福岡県の、今現在の市町村の組織でございます。生涯学習課と社会教育課という名前が、いろいろに出てきているというのが実態でございます。首長部局に生涯学習の主管課が置かれているところが15、このうち、首長部局だけに置かれているところが4という実態でございます。
 3ページに戻っていただきまして、まとめてございますが、1つ目の丸でございますが、中教審の義務教育特別部会の報告が、先般出まして、生涯学習(学校教育・社会教育を除く)という文言が入っておりますけれども、実は、市町村におきまして、生涯学習行政と社会教育行政を区別することは、難しい実態がございます。理由として3点挙げております。一点目に、一般の市町村においては生涯学習行政の固有領域が量として見えにくい。二点目に、社会教育行政は従来から幅広い視野で仕事をしてきている。3点目に、啓発のために意図的に置きかえてきているという、ここ10年ほどの動きがございまして、あの答申が出ましたときに、市町村レベルでは多少、どういうふうに分けたものかというとまどいがあったように伺っております。
 2点目でございますが、先ほど言いましたように、市民センター等々、あるいは指定管理者制度等々が進んでいますけれども、公民館の活動、あるいは、社会教育委員の活動、PTAの活動は沈滞化しているかというと、必ずしもそうではなくて、研修の参加は非常に熱心で、数的にも伸びているという実態がございます。
 最後に、4点ほど提案させていただきます。
1でございますが、地方分権、行政改革の中で、一層の多様化が予想される生涯学習・社会教育行政の不易の部分である学習・交流機能のフレームを実務レベルで行政関係者は共通認識する。行政、特に市町村レベルを想定しておりますけれども、学習の積み上げを通して交流を促進していく機能を、しっかり理解すれば、再度、仕事を構成してやっていけるのではないか。それは、組織がどうなろうと、理念がしっかりしていればやっていけるのではなかろうかと見ております。
 今後の仕事ですが、キーワードとしては、平成10年のネットワーク型行政という提案ではございませんが、連携と公益かと思っておりまして、連携した、公益に資する、新たな実践が大事かと思っております。
 3点目でございますが、特に子どもの問題、あるいは学校支援の問題につきましては、教育行政の本来業務として、社会教育行政としても力点を置く必要がある。従来の社会教育における青少年教育の分野でございますけれども、ここは、どういう組織形態になろうとも、学校と連携してやっていくことが子どもの利益であると思っております。
 私は、昨年の3月までの2年間、義務教育課長をしておりましたけれども、やはり、学力すらも、学校だけで、あの限られた時間数の中でやっていくことは不可能でございます。しかしながら、なかなか、社会教育が人的に不備なこともございまして、目に見える形でそこをアピールし切っていない現状がございます。先ほどの穂波町の事例ではありませんけれども、子どもの体験活動の促進、あるいは大人の活動を、子どもの支援、学校支援につなげていくことで、学力すらも支援できると思っていまして、この部分については、しっかりした整理が必要かと思っております。
 4点目でございますが、要は、優秀な人が社会教育行政に入ってくる仕組みが必要かと思います。人数はそんなに多くなくてもよいので、地域の教育力の核となり、地域の人を組織化できる人材となりますと、やはり優秀な人でないとできませんので、そういう優秀な人が流入できるシステムづくりが求められているのではないかと思っています。

(2)菊川委員のプレゼンテーションについて、質疑応答が行われた。

【坂元委員】
 2つ質問がありまして、1つ目は、最初の方で、福岡を含む九州近辺の取り組みというのが東京など他の地域とは違っているかもしれないとおっしゃられました。そのあたりを少し具体的に伺えればと思います。また、違いがあるとすれば、どうしてそういう違いが生じているのかについて伺えればと思います。地域格差の問題等を含めまして、地域の違いの問題といいますのは注目されるところで、参考になる情報があるかもしれないと思いまして、ご質問させていただきます。
 2つ目ですけれども、これまでも話題になってきたことでございますけれども、国と地域の行政、とくに国レベルと地域レベルの生涯学習行政に関しまして、分担とか役割の違いについてのお考えを伺えればと思います。

【菊川委員長代理】
 まず一点目について、私どもは幾つかの交流会を持っておりまして、そこで見る範囲では、九州、中国地域については割と私どもと似ていると思っております。ただ、東京、大阪で一番違うのは公民館の数かと思います。例えば九州の領域では、まだ公民館を核としたいろいろな活動が実質機能しています。また、例えば県の公民館大会等をやりますと、町内公民館、いわゆる自治会でボランティアでやっているような小さな公民館の方々が、1,000名の参加者とすると400名ぐらいは、そういう方々が来てくださるという実態がございます。このようなところはおそらく違うのではなかろうかと思っております。
 国レベルと地域レベルで一番の違いは、国レベルですと、例えば専門学校や大学等に関して強い関与、働きかけができることかと思っております。それから、今、市町村合併も進んでおりまして、市町村の単位が大きくなってきていますので、県の仕事のメインは市町村を支援していくことかと思っております。

【山本委員長】
 11ページの先ほどの表の説明をいただいた中で、学級・講座のところですけれども、人も減ってきて、お金も減っていますが、にもかかわらず学級・講座の件数のところは減っていない原因、理由は何ですか。全国的な傾向ですか。

【菊川委員長代理】
 まだ、17年度の全国データが出ていないのですが、多分、14年から17年の3年間の変化は大きいと思いまして、あえて福岡県分手計算して見てみますと、生涯学習活動は依然として盛んなのが分かります。諸集会は減っておりますけれども、学級・講座の学習活動は盛んで1館当たりの学級講座数及び学習者数は特に平成14年度以降は増えています。

【山本委員長】
 学習者に委託して、お金が少し絡みますが、学習者にみずから講座を開いてもらうというのが、関東では結構広がっていると思うのですけれども、そういう傾向はありますか。必ずしもそうではないのでしょうか。やはり、館の職員が主催しているのでしょうか。

【菊川委員長代理】
 委託的なことになりますか。

【山本委員長】
 一種の委託的なやり方をして開いているところが、結構、最近、増えているので、数も増えているのではないかという話もあるのです。

【菊川委員長代理】
 確かに、いろいろな市民大学講座風な、自発的なものを、公民館や市民センターを使って行うという動きは盛んですけれども、ただ、従来型の公民館主催の学級・講座は学級・講座として、変化なく実施されているように思いますけれども。

【山本委員長】
 市町村における事業費の予算も減っていないのでしょうか。

【菊川委員長代理】
 事業費については、今資料を持っておりません。

【江上委員】
 大変すばらしい事例をありがとうございました。公民館の職員の方の実情に詳しくないので教えていただきたいのですが、11ページで、公民館主事、その他の職員で、兼任、非常勤の数が非常に多いわけですが、具体的に、例えばどういう方たちが非常勤とか兼任で働いていらっしゃるのか、バックグラウンド、年代、活動の状況、能力など、その辺を教えていただければと思います。

【菊川委員長代理】
 校長先生を退職された方が非常勤の館長として務めるという例があります。現職時代に全然経験なしで来られて、学校的にやられるタイプの方と、若干の経験があって勘がよくて、学校と連携して、どんどん生き生きやられる方など、いろいろでございます。
 地域によっては、公募も増えてきております。ですから、非常勤だからといって悪い、常勤だからといって良いということは全然ないような感じがいたします。一般的に言って、公募で非常勤で、例えば40代、50代の女性あたりが、館長になられたりする場合がありますが、とても生き生きと生活感ある講座を主催して、NPOの人ともつながって、実践がいいという事例もたくさんございます。

【江上委員】
 主事とか職員の方も、学校教員の経験者が多いですか。

【菊川委員長代理】
 いえ、常勤は市町村職員が人事異動で配置されまして、非常勤としては、例えば社会教育指導員や地域活動指導員として特定分野、例えば子育ての分野とか、高齢者の分野を分けて受け持ったりしております。それは、どちらかというと公募、あるいは、そこのボランティア活動している人の中から抜擢されるという形が多いです。

【江上委員】
 そうすると、各分野の活動実績のある専門家とか、地域におけるその活動分野のリーダーとかいう方々が非常勤職員になっている、ということですね。

【菊川委員長代理】
 そうですね。指導系では結構、そういう実績のある方を選んでお願いしているようでございます。

【加藤委員】
 小学校区が地域コミュニティの核になるというご意見に、私も大変賛同したいと思うのですが、マナビ塾に、学校宣言以降ちょっと変わったようですが、13パーセントぐらい来ている子どもたちの具体的なバックグラウンドとかイメージについて教えて頂きたいのと、リーダー塾へどのような背景の方々が参加してこられているのかというあたりを、ぜひお聞かせいただければと思います。
 それから、小学校区というのは一つの考え方として、非常に今後も重要なものだと思うのですが、片や、東京などでは小学校の校区を自由化していく動きがありまして、コミュニティの核をなかなか置きにくいのではないかと私は考えるわけですが、その辺について、もしご意見があればお聞かせいただきたいと思います。

【菊川委員長代理】
 まず、穂波のマナビ塾の参加者のイメージですけれども、純粋希望制でございます。ただし、ここが上手なところだと思うのですが、最初から、学童保育と一緒にせずに、無理をせずに学童保育と並行して走らせておりますので、そういう意味では、共働きではない家庭の子のほうが多いということでございます。ただし、実はこの穂波町というのは、今度、3月末に合併で飯塚市になるのです。教育長は、その辺をにらんで、この制度を残すためには、今年度、このように走らせておいて、来年は学童保育と合体した形で、お金をある程度確保しながら、小学校区で自立して回らせるような見通しを持って、現在、取組まれているということでございます。
 リーダー塾の参加者は中高年が多いです。最初は、地区の自治会長などをこまめに回られて、100名も集められまして、40代から60代が主力、男女半々ぐらいということでございます。ただしここも、県立学校の校長先生が塾長で、その方がリーダーシップを発揮してまとめていらっしゃるということでございます。
 最後に小学校区の問題ですけれども、私も、高齢化社会とか、子宝の日本の風土を考えますと、小学校区だなと思います。穂波町が一番最初に何をやったかというと、実は、学校選択制を西日本で初めて取り入れたところなのです。非常に立派な小学校に建てかわりまして、あまりにも立派だったので、もったいないということで、他の校区からも来ていいよという形で、最初は始められました。そうしたら実際、それぞれの学校がアピールし出しまして、どの学校も頑張るものですから、生徒が大きく移動するかというと、そんなに大きくは移動致しませんでした。学校は、学校選択制ということで、教育目標、数値目標を決めてアピールして、宣伝して、緊張感を持って取り組んでいるものですから、そういう意味では非常によくなりました。そういう経緯のある町でございます。
 その経験から言いますと、みんなが頑張れば、学校選択制にしても、それほど移動はないのではないかというのが、私の意見でございます。今から、私どもの県も学力実態調査等々、学校別にやってまいりますので、当然、先生方がほんとうに緊張感を持って取り組まれる時代に入ってくると思いますが、そうやってやったとしても、生徒はそれほど大きく動かないことを想定すれば、おらが町の学校という風土は根強いのではないかと思っております。

【佐藤委員】
 貴重なお話をありがとうございました。お聞きしたいのは、公民館に来る人たちに、今、どんなふうな変化があるのかということです。最近、男性の来館者が増えているといった傾向が見られますでしょうか。団塊世代の方たちが、定年になったらどういうところを居場所にして学習していくのかということと少しかかわっていると思いますので、その辺の実情を教えていただきたいと思います。

【菊川委員長代理】
 やはり公民館は高齢者が独占しているという陰口を言われることがあります。また、市民講座が華やか過ぎると言われることもございます。ただ、この辺のところも、意識次第、職員次第というところもあります。例えば、意識的に子育てグループのお母さんを呼び込んでいるところとか、あるいは、穂波町の事例についても、学校の先生方と話したことがあるのですが、5年ぐらい前までは、公民館といったら大人が行くところだと思っていたということです。夏休みにマナビ塾を実施した時は、少し大人を閉め出して、子ども用にプログラムを組みまして、そうしたら、公民館って子どもも行けるところなのねという意識が町に広がったということでございました。ですから、それはやはり、企画者次第ということではないかと思います。今のところは、高齢者が多うございますけれども、どういう人を呼び込むかは職員次第だろうと思っております。

(3)事務局から、資料2「生涯学習に関する各地域の取組事例について」説明が行われた。

(4)ひきつづき、事務局から、資料3「今後審議すべき主な論点(案)」について、説明が行われた。

(5)委員による自由討議が行われた。以下、その内容。

【山本委員長】
 先ほど菊川委員からのご発表の中でもありましたように、すぐれた人材が入ってこられるような仕組みづくり、システムづくりをどうするのかというようなことがございましたので、その辺も含めて、今の行政の問題についても、これからまた検討があると思いますが、もし必要であれば、その辺も取り上げていただいて、自由にご意見いただければと思います。

【田中委員】
 新しい「公共」というのを、社会の要請が高い学習と置きかえていくと、従来から言っている、現代的課題の学習とあまり変わらなくなってくると思うのです。ですから、それは学習内容という面で規定されてしまうので、ただ、新しい「公共」の意識というと、必ずしもそれだけではないと思うものですから、3つほど、思いつきですが、言ってみたいと思います。
 1つは、先ほどの事例の中でも随分、中奥さんなどの実践が、まさに、まちづくりを通した学び、今言っている新しい「公共」づくりに対する意識の高揚につながっていくのだと思うのです。そう考えると、1つ目は、従来から言われていますけれども、首長部局と教育委員会の連携でこういうものをやっていけないかということです。要は、学級・講座で何か学んでもらうのではなくて、地域の課題を、住民グループとか、あるいは草の根的なNPOに委託しながら、学んでもらう。そのためには、やはり、学び、議論、試行錯誤が必要ですので、それを公民館や社会教育施設を使ってもらって、地域課題の解決を草の根的にやる中で学んでもらって、それを通して、新しい「公共」の意識を高めてもらうという形でないと、なかなか行動につながる新しい「公共」意識にはならないと思うのです。
 もうやっているのかもしれませんけれども、既に文科省ではNPOに焦点を当てて、生涯学習分野におけるNPOの支援として、毎年何十カ所かずつ、お金を差し上げてやってもらっています。ああいうのを、もうやっているのかもしれませんが、今度は切り口を新しい「公共」づくりという形にして、別にNPOに限らず、新しい「公共」を高めるための生涯学習活動というので、モデルをどんどんつくっていくというのもあるかなという気がします。それが1点目です。
 2点目は、生きがいの学習も新しい「公共」づくりにつながるんだという考え方をもっと出していかないと、先ほども、現場では趣味関係が人気があるとおっしゃいましたけれども、まさにそれが現場で、議会なり何なりで、バッシングに遭っているわけです。税金をそんなものに使うのはけしからんという言い方もされるほどです。それは要するに、生きがいの学習が個人個人のレベルでとどまる限り、税金を使うのはもったいないという議論になるので、むしろ、生きがいの活動を、個人個人ではなくて、生きがい活動を通してみんながつながって、前回、以前出たソーシャルキャピタルという言葉を使わせていただくならば、生きがいの学習を通したソーシャルキャピタルの形成という可能性を、もっと追求していくべきではないかと思うのです。それがおそらく、現場での社会教育活動の中で、各町村でも実質的には出てきているものだと思うのです。ですから例えば、内閣府がこれまで、ソーシャルキャピタルの調査研究をやってきていますが、ああいうものと文科省がドッキングしながら、生きがい学習を通したソーシャルキャピタルの可能性とか、実験的な研究というのに取り組んでいくと、従来から、何か趣味、生きがいで、こんなものはだめだと、ややもすれば外側から言われがちなものを、もっとすばらしいものとして発展させられるのではないかという気がします。それが2点目です。
 3点目は、今言ったようなことを、所詮、社会教育は自由参加の世界ですので、放っておくと中高年の方や時間のある方に集中すると思いますので、これまで社会教育に参加できていないような層をもっと取り込むということを考えるべきだと思うのです。例えば子どもたちで言えば、先ほど菊川委員から紹介されたような公民館での活動に、もう少し新しい「公共」を担う、将来の子どもたちという観点からの内容を入れ込んでいってやっていくとか、学校での総合的な学習の時間を、何でもやっていいというのではなくて、これからはサービスラーニングみたいなものとか、新しい「公共」を担う市民の育成というのに絞った形で、こちら側から提案していくということも必要かと思います。
 それから、今、おやじの会が少しずつ出てきているわけですけれども、若い父親を対象とした家庭教育学級的なもの、おやじの会的なものを通して、新しい「公共」を担う人たちに育ってもらうということも必要かと思います。
 さらにはあんまり言い過ぎても何ですけど、いわゆる家庭を持っていない働き盛りの方の場合、どうしても地域から遊離しがちなことがあるわけです。だけれども、すばらしいアイデアや、知恵や、技能を持っているものですから、そういう方々が地域で、いろいろな形で活躍できるような場を設けていく。例えば、私の知っている例でも、ビジネスで活躍している40代の女性が、地域のコミュニティ施設で徹底的に活躍し始めたという例もありますので、何か遊離しがちな方々を引っ張り込むような戦略を、もっと本気で考えたらいいかと思います。

【中込委員】
 菊川委員が先ほどお話しいただいたことを、とても興味深く聞かせていただきました。一つお聞きしたいのは、基本的な精神や理念が何か、というのが1点です。
 今の世の中、非常に便利な社会になりましたから、便利さだけを追求する、あるいは学力だけ向上させるなど、何でも社会が便利になる、利益になる、得になる等、そういう傾向になりがちですが、不便さの中から、不便さを克服したときの喜びというのを教えるようなケーススタディがあるのか、今の子どもたちは、不便さを感じた瞬間、不便の克服よりも不満を持ってしまうということが、一つ、大きな問題ではないかと思うのです。
 手前の話で大変恐縮ですが、実は私の学校は美術学校でございまして、デッサンをするときに鉛筆を削らせるわけです。そうして、ちょっと指を切ると、保護者の方から電話があって、どうしてそういうものを使わせたんだと、すごい勢いで、校長を出せということで大騒ぎになる。ところが、現実的にはそういうものを使わないとできない。鉛筆削り、ぐるぐる回せばできるのですが、鉛筆削りでは芯が折れてしまうのです。それで今度はかっとなって、鉛筆削りを壊してしまうといった具合なのです。つまり、あまりにも便利になり過ぎているから、もう少し不便さを教えるようなことを取り組んでいただきたいということです。
 それから、具体的な方策ですが、やはり、何を、どこで、だれに、いつという4項目がまだこれから議論を要するところですかね。この4項目が決まらない限りは、何も動かない、意見の言いっぱなしになってしまいますので、最終的には、何を、どこで、だれに、いつということは、きっちりした文章にしなければいけないと感じました。

【菊川委員長代理】
 基本的な理念についてですが、事例をアトランダムに拾いましたので、中込委員がおっしゃられる意味の理念というのはないと思っていいと思います。やはり、社会教育の実践は、市町村が自分のところで主体的に判断してやっているというのが実情でございまして、それに対する県としての関与は、全体的な施策の方向とか、情報提供あるいは検証が機能だと思っております。
 それから、便利さの関係ですけれども、今、福岡県だけではなくて、いろいろなところで、子どもたちに不便な体験を、あえて教育プログラムとして仕組むというようなことは取り組まれております。例えば穂波町にも、愛称、「青少年不便の家」という、水と電気のない施設をつくっている。あるいは、通学合宿というような取り組みは、広く県内でやられております。ただ問題は、そういう、子供を鍛えると言いますか、欠損体験を補充していく体験が、青少年教育の面としてどのくらい確保されているかというところは、地域によって差があるかと思っております。

【中込委員】
 ということは、これは福岡県全体でやられているということではなくて、各市町村において、それぞれが独自でいろいろ活動されていると理解してよろしいわけですね。

【菊川委員長代理】
 はい。独自でやられております。ただし、県の関与は、そういう意味では、今までずっと研修やいろいろな連絡会議あるいは情報提供の機能という中にございます。市町村が独自で判断すると言いながらもモデル事業や補助金等も含め、国の施策の影響、県の施策の影響というのは、風土として、非常にあると思っております。

【糸賀委員】
 福岡の事例と今後検討すべき、審議すべき論点を聞いていて、ギャップというか、ずれのようなものをどうしても感じるのです。それは、この会議で、職業能力開発だとか、キャリア形成ということが随分出てきていたように思うのです。その話と、実際の今、地方で取り組んでいく社会教育の中身というのが、きちんとかみ合っているのかどうか、そこがものすごく気になるのです。
 その場合に、例えば職業能力開発であるとか、キャリア形成、それから今日も、今後検討すべきの中に、具体的な方策としては、例えば就業という言葉が出てくる、ニート等若年無業者に対する支援というのが出てきたときに、これを一体、今までの公的な社会教育の中で、どうやって対応するのかというイメージが湧かないのです。これをやろうとしたら、例えば首長部局と教育委員会の連携という話がありましたが、むしろこれは明らかに、民と官の連携、その中で、公的な生涯学習とか社会教育をどう実現させていくのかということを考えなければいけないと思うのです。
 そうしたときに、今後、例えば、いいですか、福岡の例でいうと、それに合うような、関連するような話というのは、一番最後に統計の数字がありました。この中で、例えば、学級・講座と言ったときに、職業知識というテーマもあるわけです。これを見ると、例えば平成14年はかなり高かったものが、平成17年になるとすごく下がっている。ちょっと確認ですが、平成17年度は、今もまだ平成17年度ですが、仮集計という意味は、平成17年度の途中の数字という意味なのか、平成17年度の集計は平成16年度の実績であって、その16年度の実績についてまだ正確に把握できていないという意味なのか、それによって、17年度に、参加者全体も下がっていると見るべきだろうと私は思うのです。部分的には上がっているものもありますが。
 そういう仕事に結びつく、それから、さっき団塊の世代がこれから地域に帰ってくる、その人たちは明らかに学び直して、自分たちが仕事の中で培ってきたものを地域に還元したいわけですよね。地域に還元するときの学びの場に、公的な社会教育がなり得ているのかどうかが問題だと思うのです。
 だから今後、私、確かに社会教育の課題は、子どもの居場所づくりということよりも、明らかに、団塊の世代の居場所づくりなのです。団塊の世代の居場所づくりをやろうとしたときに、従来の社会教育のとらえ方では、子どもの教育をどうするとか、趣味の学級・講座をどうするとかということのノウハウはあるのだけれども、改めてキャリア形成する、今まで仕事の上で培ってきたものが、地域に還元しようと思ったときに、何が不足しているのかを教えて上げないといけないわけです。それは、上に誰か先生がいて、みんながその先生の言うことについていけばいいわけではなくて、これは明らかに、地域の中の誰もが、商店街の人が、ひょっとしたら先生になるかもしれない。地域の中で一生懸命、個人営業をやってきた人たちのノウハウが、今度は、会社勤めをしてきた人たちにとって役に立つのかもしれない。そういう相互の学びの場をやるのに、今までの公的な社会教育がどこまで機能し得るかというところが問われているのだろうと思います。
 私は、従来型の社会教育の講座を続けても、多分頭打ちだと思います。これは明らかに民間のやり方、民間の発想、そしてインターネットを使って、概念空間上で学んでいく。だれもが先生になり、だれもが講師になり、だれもが受講生、生徒になるという、そういう空間の中で学んでいくわけなので、そこでは確かにコーディネーターというものの役割がすごく重要だと思うのです。
 整理しますと、つまり、従来型の社会教育では、今後求められている、社会が生涯学習とか社会教育に求めているものには、多分対応できないだろうということ。それに対応するには、全体を、特に民と官をコーディネートする役割、地域と従来型の教育施設とを結びつけるようなコーディネーターが存在しなければいけないと思います。それが、果たして今度は、従来の社会教育主事で担えるのかどうかです。あるいは博物館学芸員、図書館の司書といった専門的資格で、これが十分発揮できるのかどうか。
 私は、自分もそういう立場にかかわってきた以上、これは社会教育主事や司書や学芸員に期待したいと思います。だけれども、それに対しては、今後、資格の更新ということを考えていかなければいけません。いったん資格を取ったら、それがずっと通用するというのは無理だと思います。医者にしてもそうでしょうし、学校の先生についても、教員免許の更新制ということが言われておりますので、やはり私は5年ごとに、それぞれの資格についても見直し、それぞれの時代にふさわしいコーディネート役が務められるような資格に改めていく。そのときにそれが、公務員だけではない、民間の人であっても、ボランティアであっても、そういう資格が取れるという仕組みにしていくことで、ある程度、官のこれまでのノウハウと、民が持ってきた創意工夫とが、うまく融合できるのではないかと思いますが、私自身が、正確なビジョンが描けているわけではありません。
 このコーディネーターの役割、それから従来型の社会教育と、今求めてられてる学習ニーズへの対応、これは私自身が今すぐ答えを示せるわけではありませんが、そこは考えていかなければいけないのではないかと思います。少なくとも福岡県で、これまでのやり方で、それがどういうふうに、今求められているものに結びつけられるのか、その辺の見通しがあれば、ぜひお聞かせいただきたいと思います。

【菊川委員長代理】
 まず数字の件ですが、17年の社会教育調査ということで、年度は16年度間です。職業知識が大幅に落ちておりますけれども、これは全く私の個人的な解釈ですけれども、平成12、13年ごろに、景気対策でIT学習が非常に進められたことがありまして、IT学習がこの職業教育に入り込んでいるのではないか。だから、ここは落ちていると読み取らなくてよいのではないか、個人的に思っております。
 今、先生がおっしゃったことですけれども、全くの私見ですけれども、一つは、職業教育ということに関して、国と、私が今日発表しました県、市町村の社会教育のレベルで、関与の仕方が違うのではないか。例えば、ここは生涯学習分科会ですから、国の審議会としては、例えば職業教育に絡んでは、大学とか、専門学校とかが今後、非常に大きな役割を果たしていくと思いますので、それが一つの非常に大きな柱になると思います。そういった意味での議論が、12月、1月でなされたのではないかと、私は勝手に解釈しております。
 ただ、その一方で、地方の生涯学習行政の中の大きな部分を占める、地方の社会教育行政に目を転じましたときに、今、論点になっているのは、今日私が申し上げたような、中教審の特別部会のあの報告の問題が、実務上、非常に大きな問題としてあるというのが、私の問題意識でございます。
 展望についてですが、私は比較的楽観的にとらえております。確かに、今の社会教育の中に、その力があるのか、ないのかといえば、ないのかもしれないとも思うわけですけれども、新たな制度を考えるときに、今あるものをどのぐらい正確にちゃんと認めていくかという議論を、まずすべきだと思います。そういった意味では、例えば今、社会教育行政が持っている、社会教育委員あるいは公民館の職員あるいは社会教育指導員等々を抜きに、地域における学習の形成は考えられないと思います。そこの中のどの部分を強化すれば、地域において、大学や職業教育、あるいはニートの問題にタッチできる能力を持つ社会教育主事、あるいは公民館主事が育つのかというところが、今、地方の社会教育行政に問われているところかと思います。そういった意味で、社会教育制度、社会教育主事制度、あるいは新たなコーディネーターの制度が検討されるとすれば、今あるものの、残された財産を正確に把握して、それをつないでいく検証が要るのかなと思っております。
 もう一つ個人的な意見としては、新たなそういう制度を検討するときに、既存の社会教育主事制度との接続の問題というのが、すごく大事かと思っております。

【糸賀委員】
 そこが大事なのですが、そこをどうやるかというビジョンがなかなか描けないのです。私は民間の発想をもっと取り入れないと、公的な社会教育だけでは絶対不十分だと思います。
 ついでに、具体的方策の中で、私が欠けているのではないかと感じることが2点ばかりあるので、それを指摘させていただいて発言を終わりますが、割と、就業とかキャリア・アップ、さっきから言っているニート等若年無業者に対する支援ということで、職業支援、職業面から自立させようという意識がすごく出ているのです。それはそれで必要だし、これまでのこの会議でも随分言われてきたことです。
 その一方で、厚生労働省からの指摘もありましたように、健康づくり日本でしたか、医療費がかからないようにする。医療費の負担が今後、若年層にかかっていく、現役世代にかかっていくわけです。それを多少なりとも軽減するために、健康で生き生きとしている団塊の世代の高齢化というか、加齢化を一方で考えていかなければいけない。そのための社会教育という観点も当然あっていいと思うのです。生き生きと地域の中で暮らす、ボランティア活動をやる、NPO活動をやる、その結果、健康で生き生きとしているという。医療の世話になることではなくて、生涯学習が支援することで長寿な日本に変わるという視点も必要だろうと思います。
 それは言ってみれば、別の意味での自立です。医者にかからないという意味での自立です。自分で仕事を見つけて、自分で生活費を稼ぐという自立もあれば、健康面で社会の世話にならないという意味での自立というのも、当然考えていいはずだと思います。
 それからもう一つは、先ほどもあった司法制度改革です。裁判員制度が2011年の5月までには開始するということが決まっているわけです。この中で、国民がこの裁判員に、義務としてかかわらなければいけない。そうなったときに、日頃、法律に関心がない、裁判に関心がない人たちに対して、どうやって、そういう情報を提供し、知識を身につけてもらうかです。そのときにおそらく、公的な社会教育、そのときには確かに、先生になっている人はいろいろ民間の人も入ってくるかもしれません。自宅やオフィスからインターネットを通じていろいろな情報を集めるかもしれませんけれども、そういう公的な機関に依存することになるだろうと思います。それを支援できるような生涯学習の仕組みということも、一方で必要だろうと思います。
 私は、法律と、医療と、就業という、もう少し広がりを持った生涯学習のイメージを持っていたほうがいいのではないか、それも一つの論点として、この中に入ってくるのではないかと思います。共通するのは自立です。社会に頼らない、行政に必ずしも依存しない、自立できる個人を育てていくという、そういう生涯学習のゴールみたいなものを描くことが必要ではないかと思います。

【柵委員】
 糸賀委員のお話、大変、私も共感する部分が多いのですが、個人がそれぞれ学習していることが、地域と結びついていないということは非常に感じられるのです。それは、個人の学んでいる学習が、趣味・教養系だと言われていても、時と場合によっては、形を変えて、地域課題に向かう大変いい学びにつながるということを、私たちは随分見ているのです。
 どういうことかと言うと、例えばティーパーティーを開こうという講座があって、これを例えば地域の子どもたちと接していく場に考えていくと。それを1人でやるのではなくて、複数の人が集まってやるということで、一つの学びの場、それを地域に生かしていく場ができると思うのです。
 それをつないでいくのは、そういう個人の学びと地域をつなぐ仕組み、システムです。先ほどの話と少し関連すると思うのですが、私が考えるのは3つあって、1つはそういうプラットホーム、場、です。2つ目は、コーディネーターです。3つ目は、人と人とがつながっていくための制度を、従来のような形に加えて水平展開できるネットワーク型というような制度設計を、ほんとうに真剣に考えていくときに来ているのではないかと思います。
 具体的には、場のことですが、ネットを通じてということと、リアルの場を組み合わせて、とにかく手を伸ばせばいつでも学びに参加できるという仕組みづくりと、その場に、例えば企業もちゃんと参加していける、そういうプラットホームを設計していく必要が、あるのではないかと思うのです。
 具体的に言うと、富山で今チャレンジしているところですけれども、企業から教育人材を出してもらい、集まる場をつくる。そこには、地域の家庭の人もいるし、企業から来ている人もいる。その中で、教える人たちを育てていく。そこに大学の教授を提供したり、あるいは行政が支援をしたり、例えば著作権の問題などを、きちんと教えていく。そういう、従来の行政のいろいろな支援の仕方もあると思います。
 それから、コーディネーターということです。今までの社会教育主事の方にとって、これから必要になってくるのが、情報活用能力だと思います。情報活用といっても、必ずしもITを使うことだけを指しているわけではなくて、いわゆる人脈とか人のネットワークをたくさん持っている人が、あそこの企業にこういういい人がいるから、ぜひ地域の教育人材に参加して頂こうという動き方ができるようなコーディネーター、こういう動きがぜひ必要ではないかと思います。
 そういう方々と合わせて、これから、例えばシニアの方が豊富な経験を生かして、コーディネートに当たるということが考えられると思うのですが、コーディネート以上に、例えばメンターという形で、例えて言うなら、シニアメンター制度みたいなものを作ることも考えられるのではないか。これからそういう方々が地域の学習、先ほどの、例えばティーパーティーを開くということを、地域の中でこんなふうに生かすといいという、そこのつなぎをしてくれる人たちが育ってもらわないといけないのですが、参加できるプラットホームと、参加を支援する制度をいろいろつくっていったらいいのではないかと思っています。
 ITのことは、いろいろ議論があるかと思うのですが、例えば、世界情報通信サミットが先週で終わりましたが、その議論の中にこういうのがあるのです。テレワークという仕組みがあって、遠隔地にいて仕事をするという仕組みですが、2つあって、例えば子育てをしていて、やむを得ずそういう仕組みを使っている人。もう一つは、自らの能力を生かしたいから積極的にネットを使って、いろいろなところで仕事をしている。こういう2つの種類がある。
 学習者にも、自分の能力を何かいろいろなところで生かしたいという思いを持って講師を目指す人が、実はたくさんいるのです。そういう人たちを受け入れる場をつくることが、例えば富山インターネット市民塾などもそういうことをやっていますが、それが、地域にとって非常にわかりやすい、教育人材の集まる場、プラットホームの形成に役立っていくということが、私たちも普段感じているわけです。
 ぜひ、そういう制度設計の面と合わせて、検討いただいたらと思っています。

【加藤委員】
 糸賀さんの言われたことに、私も大いに賛同するのですけれども、財政的な制約や人的な問題、公務員の削減というような大きな制約条件がある中でこれから国として生涯学習について何らかの方向性・指針を出していくには、極力絞り込んでいく、目的を明確化することが非常に重要だと思います。
 それは、国民の今のある種のニーズに合致することだろうと思います。一つは今、糸賀さんが言われたような、二極化あるいは格差社会が加速している現状について、国としてどうしていくのかという視点、あと、子どもをどうやって地域で守っていくのかという視点、これは今、私がそう申し上げたので、それに限るということではありませんが、いずれにしても、そういう、制約条件がある中で、国民に納得してもらえるような目的をきちんと絞り込んでいく必要があるかと思います。
 今日、お聞きしただけでも、今、さまざまな視点から、地域でいろいろなことがなされているわけです。それはそれで、ニーズによって、サポートしなければならない面が出てくるかもしれないですけれども、むしろそういったことは、地域や市町村の主体性に委ねていく問題ではないかと思います。文科省としてここで議論すべきは、国全体として考えるべき問題に絞り込んでいく必要性があるだろうと思います。その辺の議論を、スタート時点できちんと行っておかないと、総花的なもので終わってしまうのではないかという気がいたしますので、よろしくお願いします。

【小杉委員】
 私は2つお話ししたいと思います。
 学ぶことで終わるのではなくて、学んだ結果を発揮するというところが今、大事なポイントかと思います。きょう、熊本のお話の中に出てきた、学びから社会参加活動にというところが、私もとても大事なキーワードだと思うのですが、今求められていることは、国民のみんなの力を出してもらって、学ぶだけではなくて、学んだ結果を社会に還元するという形で参加してもらうという循環だと思うのです。
 ですから、学ぶ支援だけではなくて、学びからさらに能力を発揮してもらう、そこまでつないだ幅広い学習支援が必要ではないか。コーディネートと言われているのは、実はそこなのではないか。ただ学ぶことを提供するのではなくて、学ぶことからそれを発揮するところにどうつなげるかがポイントで、今、この変化の中で、高齢者なり何なり、みんなに力を出してもらって、だれかのために何かしてよという社会づくりをしていくことではないかと思います。ですから、学びの支援で終わらないで、学びから能力発揮、あるいは活動参加へつなぐ支援というのが、今大事ではないかと思います。それが1点目です。
 2点目は、これまで、我が国の生涯学習の中で、かなり語られてこなかった職業という問題について、今回ははっきり出すべきではないか。もちろん、生涯学習そのものが、職業を超えた、もっと幅広いもので、社会活動への参加というのは、もっと幅の広い括りで語られることが大事だと思いますけれども、ただ、これまであえて職業的なことを落としてきてしまったために、だからこそ言わなければならないということだと思います。ということで、もう一度、職業能力をどう発揮させるかというところも大事なポイントだと思いました。

【笹井委員】
 「地域」というのがキーワードになるのではないかと思います。全国的の社会教育が活性化している町、あるいは施設を見てみると、そこに働いている社会教育職員の人が地域のことをよく知っているのです。講座をつくる技術ももちろんありますが、地域のことをよく知っているということが、かなり重要ではないかと思うのです。
 よくよく考えてみると、生活関連を扱うのが社会教育と言いますけれども、地域で起こっていることというのは、非常に非合理なことが結構多いのです。情緒的な話とか、義理や人情の話とかが、地域にはいろいろあるわけです。地域を動かしたり、地域をつくるという場合、そういうことも含めてよくわかっていないと出来ないと思うのです。
 例えばNPOも、法人化しているのは2万5,000あって、そのうちの40パーセントは社会教育を目的に掲げている、だから1万ぐらいのNPOが、何らかの形で社会教育的な活動をしているわけです。NPOでいくら社会教育のことをよくわかっていて、社会教育主事の資格を持っている人がメンバーにいたり、すばらしいプログラムがつくれても、そのNPOが地域のことをわかっていなければ、空回りするだけで、地域づくりにはつながらないのではないかと思うのです。
 だから、地域の中のいろいろな学習セクターや教育セクターをコーディネートすることはとても大事なことだと思いますけれども、その際に、地域のこと、特に地域の人間関係をよく知っていること、あるいは人間関係を知っている人との協働といった視点がないと、要するに空回りするのではないかと思うわけです。それが1点。
 そういう話は、人の専門性、社会教育職員の専門性レベルで、どういう結びつけ方をするかとか、検証するかというレベルの議論だと思いますけれども、他方で制度化、システム化の議論があると思うのです。文科省が提示してくれた施策の中に、総合的な学習の支援、あるいは、「公共」の問題とかが出てきていますけれども、例えば総合的な学習支援をする際に、正当性と言いましょうか、それを正当化する論理としては、地域と結びついているということ、「公共」の話にしても、やはりそれが地域社会にどれだけ貢献しているものだろうかという観点が重要になってくると思うのです。だから、地域はとても重要なキーワードで、そのキーワードを使って正当化する際に、人の問題とは切り離して考える必要があるのではないかと思うのです。
 文科省の提案の中で、計画をつくるとか、ビジョンとか構想を地域でつくるということが大事ではないかと思うのです。そういう制度化をすることによって、各セクターが制度的なレベルでは、いろいろコーディネートされて結びついてくる。それぞれ役割分担――あまりきっちりしてはいけないのでしょうけれども――ある種の役割みたいなものが明確化されていく。その中で、行政の役割も明確になっていくということで、計画化、あるいは構想を具体的なものに制度化していくというような政策が、特に総合的な学習支援をする際にはとても大事なことではないかと思います。

【江上委員】
 前回、論点をぜひ整理していただきたいというお願いをして、今回、新しい「公共」の意識を培う、というところまで出していただいたことに、大変感謝しております。
 以前から私も申し上げてきたことですけれども、生涯学習というのが、これからは、国民の力、潜在能力を引き出して、まちづくりや新しい社会づくりの大きな装置にすべきだと考えておりまして、コンセプトとしては、先ほど小杉委員がおっしゃったようなところと非常に近いと思います。
 今回、いろいろな問題が非常に幅広く入っているので、少し整理して考えますと、今までの社会教育推進の中で継続していくもの、継続していって、学習の領域とか、テーマが常に新しく変化していくもの、これがまず一つあると思います。2つ目は、生涯学習の改良という部分があると思います。これが主に、生涯学習の方法論だと思います。ITとか、テレラーニング、eラーニングと、いろいろな方法論があると思います。3つ目が、生涯学習改革の時期を迎えていると思います。生涯学習の意思決定、生涯学習推進の体制と構造の改革だと思います。一つは意思決定のあり方、多様な生涯学習の時代というのは現場にすべての要素が凝縮しますから、限りなく現場に権限や、人、もの、金、資金を与えていく。2番目は、資金の分配や調達の仕方です。先ほど、企業を巻き込むべきだというご提案がありましたが、企業のファンドや提供講座、例えば、私がアメリカで幾つかヒアリングをしたときに、大手の企業が救急医療士あるいはコージェネなど、要するに、環境関係やエネルギー、リサイクルシステムなどを提供する講座を、1年間に長期にわたって提供して、そこで資格を取らせるというような講座提供をやっております。
 それから、生涯学習推進の構造の問題です。これが一つは今までの人材をどう新しく能力再開発していくかということと、新たな分野からの人材の登用から、発見、育成、検証、評価という問題があると思います。
 次が体制だと思います。生涯学習の推進の運用の仕組み、あるいは評価の仕組みをどうしていくのかということがあるのではないかと思います。
 私は先ほど来、ずっと菊川委員、事務局のヒアリング結果も伺っていて、どの事例も、コーディネーターが必要、人材が必要、コーディネート力と繰り返し出てきますが、これは生涯学習の分野だけではなくて、例えば最近、国土交通省で、これから日本の産業を大きく振興していく一つの柱として観光開発があって、観光を産業としてもっと振興させていくために、どういう人材育成が必要かという検討会が始まりまして、私も出させていただいているところです。いろいろ勉強してみますと、最近、観光カリスマというのを日本で100人選ぶというのをやっているそうです。その100人がどういう人物かというのを、ずっと見ていきますと、生涯学習で活躍しているような人と、ほぼダブっているのです。非常に似ています。地域のことを知り尽くしていて、地域のことを愛していて、そして、知識も豊富で、人に教える、情報提供もする、コーディネートする力がある。非常に似て、重なってきているわけです。
 そういう意味では、アメリカも80年代末から90年代の前半、媒介をするとか、連携をするとか、相談をするとか、これにまつわる職業、コーディネーターとか、ロビイストとか、オルガナイザーとか、プランナーとか、そういう職業が急速に増えているわけです。今、私たちは、そういう段階に来ているのではないかと思います。
 ただ、そういう職業は、どちらかと言うと無償で行われていたのですね。お節介おじさんがやるとか、どこかの何か偉い人がやるとか、そういう形で、ある意味、極めて付加価値が高い、きちんとした経済対価が払われる職業分野というのは、市場の原理とか、厚生労働省の労働行政のほうできちんと制度化したり、資格化できていくのですけれども、この分野の仕事というのは今まで無償だったわけです。
 この無償の仕事を、やはりある程度、有償化して、職業として概念を整理して、確立していくというのは、私は文科省の非常に大きな役割だと思うのです。新しい「公共」を担う部分ですから、なかなか有償にはなり得ないわけです。それと、日本みたいな産業社会だと、何となく情報だけ媒介している人はいかがわしいとか、何か心配だとか、不安だとか、信用できないとか、そういう職業について、正当な価値観が確立されていないわけです。ですからこういったものを概念整理して、何らか検証するとか、何らかの資格みたいなものを、セミパブリックなものを用意するとか、そういうことが必要で、私は、大変新しい職業の創出の、非常にいい結果をもたらす施策につながっていくのではないかと思いました。

【坂元委員】
 審議すべき主な論点とは直接関係ないのですが、資料2に絡めて、ご検討いただきたいことが一点ございます。資料2は大変貴重なもので、多くの示唆が得られるすばらしいものだと思っています。事例というのは大変重要で、まずこれを見る必要があると思います。実際に、これまでこの委員会でも、事例について充実した情報が提供されてきたと思うわけですけれども、ただ、いろいろなところで、いろいろな取り組みが非常に多く行われておりますので、全体像がどうかということについては、なかなかつかみにくい面もあると思うのです。
 ですから、現在の生涯学習の状況とか方向性について分析して全体の傾向をあぶり出したような、もっと全体的で抽象化された議論も見ていきたいという気がするわけでございます。それは、生涯学習とか社会教育の研究の専門家がやっているものだということになるわけですけれども、抽象化された議論というのは単純化を伴いますので、わかりやすい一方で、それゆえに、ときに不適切な枠づけを与えてしまうとか、さらには、必ずしも実践性を伴うとは限らない、という問題もございます。ただ、現在、事例については、資料2のように、かなり充実した情報があるわけですので、一方で、研究なり学術の議論というのも参考になるのではないかと思うわけでございます。
 委員にも、もちろん専門家もおられて、特別委員会の中でも研究成果を踏まえたご発言が多々あったかと思うのですけれども、その委員の先生方から改めてお話を伺ったり、さらには、学部から先生をお招きして、この場でヒアリングを行ったり、あるいはヒアリングの事例収集というのでしょうか、資料2のような形で、研究者の見解をまとめたものを作成するとか、そういったものも参考になるのではないかと思いましたので、ご検討をと思い、発言させていただきました。

【山本委員長】
 今日は大変貴重な本質的なところに踏み込むご意見をいただきまして、ありがとうございました。
 先ほど来、出ております、生涯学習と社会教育のところ、事務局からも、まだお話が出ておりませんので、いずれということになると思いますが、これについては、義務教育特別部会、その前の地方教育行政部会で議論がありまして、ポイントと思われる内容についてまとめました資料を事務局にお渡ししてございます。
 それから先ほどの、コーディネーター云々というところは、臨教審が終わって、生涯学習ということになった最初のときに、事務局としては、どうしても、生涯学習の専門職が欲しいというお話だったのですけれども、中教審が始まりまして、激しい議論がございまして、社会教育主事がいて、何でまた必要なんだということがございました。それで、私が申し上げたのは、司書は図書館で扱うような資源の専門家だし、学芸員は博物館で扱うような資源の専門家だが、社会の中には他にも様々な学習資源があるのに、それを活用したり、扱っていくような専門家がいないので、これは必要だ。社会教育主事は、行政の中で企画をするなど重要な役割を果たしているので、地域のそこまでというのは無理だと言って、何とか火をおさめたということでございます。ところが、行政の簡素化で、国家資格をつくることはまかりならんというので、消えてしまった、というようないきさつがございました。いずれまた、ご検討いただきたいと思います。
 では、きょうはこれで終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。

─了─

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