国民の学習活動の促進に関する特別委員会(第3回) 議事録

1.日時

平成17年9月22日(木曜日) 14時~16時

2.議題

  1. KKRホテル東京 「孔雀」

3.出席者

委員

 山本委員長、菊川委員長代理、茂木分科会長、糸賀委員、加藤委員、工藤委員、小杉委員、小菅委員、坂元委員、柵委員、笹井委員、佐藤委員、田中委員、中込委員、水嶋委員、湯川委員

文部科学省

 樋口政策評価審議官、中田大臣官房審議官、久保生涯学習総括官、大槻生涯学習政策局政策課長、吉田調査企画課長、桒原生涯学習推進課長、三浦社会教育課長、清水男女共同参画学習課長、小川参事官、山田生涯学習企画官、その他関係官

4.議事録

(1)山本委員長より、挨拶が行われた。

(2)事務局より、今回初めて出席する委員の紹介が行われた。

(3)厚生労働省からプレゼンテーションが行われた。

【杉浦職業能力開発局総務課長】
 厚生労働省職業能力開発局の総務課長をしております杉浦と申します。よろしくお願いいたします。お時間をいただきまして、厚生労働省が行っております職業能力開発行政の概要についてご説明をさせていただきます。資料1に沿いましてご説明を行います。
 1ページに施策の概要という、全体の図をつけております。左のほうに大きな柱が載せてございますけれども、職業能力開発につきましては、職業能力開発促進法という法律がございまして、これに基づく体系のもとに実施をしておるわけでございますけれども、左のほうに書いてありますが、大きく分けて職業訓練を中心とします職業能力の開発・向上という分野、それから、技能検定などの能力を評価するといった関係の施策、それからあとは国際協力ということで発展途上国ですとか国際機関などについて技術協力をするというような施策、それから勤労青少年福祉対策といったようなこともあわせて能力開発行政の中で実施をしておるところでございます。
 上のほうの職業・能力の開発向上につきましては、全体の分野としては、当然、一番大きいのは事業主、企業のほうで従業員に対して行う能力開発というものが量的には一番大きなものになるわけでございますけれども、そういった方々とは別に、離職者の方ですとか、あるいは在職者の中でも、なかなか民間の分野では行いにくいといったような職業訓練の分野を中心といたしまして、国あるいは都道府県が主体となって施設を設置して訓練を行う、いわゆる公共職業訓練というものがございます。それが上のほうに書いてありますが、国、都道府県あわせて287施設ございます。訓練の期間ですとか、レベルによりまして、右のほうにありますようないろいろな形の施設をつくっております。なお、国が実施するといった場合には、国立という形ではなくて、現在は独立行政法人の雇用能力開発機構というところがその施設の設置運営を行っているところでございます。
 あと、一般の方々とは別に、障害者の方々に対する職業能力開発といったことも、国、都道府県あわせて実施をしておるところでございます。
 それから、次に、労働者のキャリア形成支援の推進とございます。これは主に自己啓発といったような言い方をしておりましたけれども、労働者の方々が、長い職業生活の中でそれぞれのステージにおいて自発的にキャリア形成のためのいろいろな勉強をするなり、訓練をするなりといったようなことでやっていっていただくわけですけれども、それに対する国とか企業の側からの支援対策ということで、給付金ですとか、助成金あるいはコンサルティングについての支援を行っております。後ほどまた若干詳しくご説明をいたします。
 3つ目が、事業主が行う教育訓練でございまして、もちろん企業活動の中で従業員の人材育成は非常に大きな問題でございまして、それぞれ自主的に取り組んでいただくわけでございますけれども、中小企業など、自分の力だけでは実施が十分にいかないといったところを中心といたしまして、労働者の方々への職業訓練について知識、財政的な面も含めまして支援をするといったようなものが、事業主が行う教育訓練の推進という分野でございます。これは助成金制度、認定職業訓練と申しまして、一定の基準を満たした企業内の訓練施設を認定することによりまして、それに対して助成をしながら進めていただくといったようなやり方のものもございます。これもまた後ほどご説明をいたします。
 それから、もう一つの大きな柱が能力の評価といった関係でございますけれども、技能検定、これは国家検定でございますけれども、現在、137職種ございます。国家検定以外のものとしましては、認定の社内検定ですとか、あるいはビジネスキャリア制度と申しておりますけれども、これはホワイトカラーの方々を中心に、自分で勉強した成果を、試験を受けて一定の基準を満たせば、その能力を習得したという形で認定をしていく制度などをつくって、幅広く能力を評価するというようなものの仕組みをつくっているところでございます。
 それから、技能の振興ということで、ものづくりなどを中心としまして、技能の分野で優れた能力を持っておられる方々に対して表彰する卓越技能者、現代の名工ということで11月にテレビ等で報道されるのでご承知かと思いますが、そういった卓越技能者の表彰制度ですとか、あるいは技能五輪競技大会なども実施をしているということでございます。それが能力評価の分野でございます。
 順次ご説明させていただきますけれども、おめくりいただきまして、次の2ページからがそれぞれの内容でございます。まず、公共職業訓練でございますけれども、先ほど申し上げましたように、国が行うものと都道府県が行うもの、あわせて2番のところに実績が載せてありますけれども、離職者訓練、失業者を中心とした離職者に対する訓練が大体1年間で20万人から25万人、このうち委託と書いてございますが、公共訓練施設内で行うのではなくて、例えば専門学校みたいなところに委託をしていただいて、そこで訓練をやっていただくというような形での委託があります。実はそっちのほうが多いのですけれども、17年度計画では15万人程度になっております。それから、在職者の訓練、これはより高度な技能を身につけていただくということで実施をしておりますが、これが21万人程度。それから学卒者、中卒も一部ございますけれども、中卒、高卒の方々に対して1年ないし2年の訓練をやっているというものが4万人程度ございまして、あわせて50万人弱ぐらいの訓練を公共訓練という職業訓練の枠の中でやっております。
 考え方としましては、最近の流れに沿いまして、民間のベースでできるものはできるだけ民間にやっていただこうという思想のもとに、国がやる訓練につきましては、離職者とか学卒の中でもそういった技能を身につける必要がある方々を中心にやっているということで、在職者の方々も、中小企業の方々ですとか、あるいは民間のそういった訓練機関ではなかなか実施がされないような職種、業種といったところを中心にやるという発想でだんだん転換をしてきておりまして、そういった意味で離職者訓練のようなところが数的にも多くなってきているところでございます。
 そこの内容としまして幾つか書いてございますけれども、1として若年者に対する職業訓練とございます。最近特に言われております若者の雇用対策、なかなか就職が厳しい状況があるということで、その一環として職業訓練も実施して技能を身につけていただいて、就職に結びつけようということで、日本版デュアルシステムと申しておりますけれども、これは文部科学省とも連携をとりまして、座学と教育訓練を並行しながらやっていくといったようなもので、昨年度から実施をしております。
 4ページに色のついた図をつけておりますけれども、厚生労働省の側でやっておりますのは、例えば、先ほど申し上げました公共訓練施設の中で実施をしながら民間企業、あるいは専門学校みたいなところに一部委託をするといったこともございますけれども、実習部分は企業にお願いをしてそのうちの一部を企業でやっていただく。例も書いてございますけれども、週3日は教育訓練機関で座学をやって、残り2日を企業で実施するといったような形。これはいろいろございますけれども、そういうものを含めて実施をしてきているところでございまして、16年度の計画では2万7,000人程度、17年度は3万人弱の規模で実施をしたいと考えております。
 戻っていただきまして、2ページの続きですけれども、2の大学等、NPO、求人企業への多様な民間教育訓練資源の委託拡大とございます。専門学校や各種学校のようなところだけではなくて、大学、NPOなどに対しまして、数はまだそれほど多くはないのですが、こういったところに訓練を委託して技術、技能を身につけていただくというようなものも始めていたところでございます。
 それから、3ページの3に創業サポートセンターというものを書いてございます。これは現在、東京と大阪に1カ所ずつつくっておりますけれども、主に起業、創業をサポートしていくという考え方で設置をしております。ですから、転職も含めてですけれども、起業をしたいというような人に対して、それに伴ういろいろな職業能力、あるいはその他の面でのサポートをするためのセンターとして平成14年からつくって実施をしているところでございます。
 それから、4は職業安定機関と能力開発機関との連携による一貫した支援ということで、特に失業者の場合には、ハローワークで仕事の申し込みをされるわけですけれども、そこでよく相談をさせていただいて、そのためのスタッフをハローワークのほうに置いておりますけれども、そういった中で、新たな技能を身につけてから就職したほうがいいような方々に対しましては、公共職業安定所からの指示を出しまして、公共の職業訓練施設で半年とか1年とか訓練をしていただいて、その後就職をするというような流れをつくっております。そのためのいろいろな支援のやり方として、アドバイザーなどのスタッフを置いて取り組んでおるところでございます。
 5として書いてございますけれども、昨今、こういった行政の政策に対する評価というものをしっかり見ながらやっていかなければならないという考え方のもとに、職業訓練を受けた後の就職率というものを一つの指標として出しております。これは独立行政法人の計画に基づく実施ということもあるのですけれども、大体、公共職業訓練のほうでは、大体3カ月の間に就職をした方が7割ぐらいというようにお考えいただければいいと思います。それから、民間に委託したほうの訓練では5割強というところが就職の実績になっております。今後これをさらに高めるための努力をしなければならないと思っているところでございます。
 以上が公共訓練の関係でございまして、次が労働者のキャリア形成支援の推進というところで、5ページでございます。ここは2つございまして、一つは教育訓練給付制度というものをつくっております。これは労働者の方、それから離職者の方々も含めてですが、自分が主体的に能力を身につけたいということで、厚生労働大臣が指定した教育訓練を実施した場合に、その受講費用の4割、上限20万円までですけれども、それを負担しようというものでございます。実績としましては、(3)にございますけれども、大体20万人から30万人、一番多かったのは15年度で47万人というふうになっておりますが、これは制度をつくったときに、不況対策ということも含めてやってきたところもございまして、当初は受講費用の8割を助成するという制度だったものですから、非常に受講実績が高かったのですけれども、16年度から4割に下げておりまして、その関係もあってか、対象の件数あるいは支給金額のほうも下がってきております。現在のところでは、一番下にございますけれども、9,500ぐらいの指定をして、そこで受講をしてもらった方々に対しまして費用を助成するという仕組みでございます。
 それから、6ページがキャリアコンサルタントの養成・活用に向けた取り組みについてでございますけれども、個人がいろいろなキャリアを身につけていくに当たって、やはり一定の専門知識を持った方々からアドバイスを受けながらやっていくということが非常に大事だろうということで、キャリアコンサルタントという方を養成するということを平成14年度からやっております。3番のところにございますけれども、平成14年度以降、官民あわせて5年間で5万人を養成しようということできておりまして、16年度末までで約2万8,000人ということでございます。これは公的機関、さっき言った公共訓練施設の中にそういったコースを設けて養成講座をやったりしておりますし、民間のほうでもいろいろな教育訓練機関の中で養成をする講座をつくっていただいて実施をしております。民間でやっていただく場合には、それに一定の助成金制度などもつくりまして、そういったものも活用していただきながら講座を運営して養成しております。
 実際そういったことでキャリアコンサルタントになられた場合に、もちろん国あるいは都道府県といった公的レベルの中でハローワークなどにそういった方々を置いて、相談あるいはアドバイスをするといったようなこともございますし、民間の職業紹介機関あるいは教育訓練機関にもそういった方々を配置していただければ、在職の方あるいは離職をされた方に対する相談をしていただけるということで、このキャリアコンサルタント養成をしているところでございます。
 それから、7ページ、8ページが、事業主が行う教育訓練でございます。先ほど申し上げましたように、企業の中で実施をしていただく職業訓練でございますけれども、それに対していろいろ支援をしていくということで、企業が計画的に教育訓練をするということはもちろんですけれども、例えば、職業能力開発を行うために休暇制度を設けるですとか、あるいは企業の内外における能力評価制度を設けるといったようなことを実施していただいた場合に、助成制度などを活用して支援をするというやり方をしております。
 それから、2番目が認定職業訓練でございまして、先ほど申しましたように、一定の訓練基準を満たしておる企業内の訓練施設、これを都道府県知事から認定をいたしまして、この認定を受けた場合に一定の運営費ですとか施設設備の費用に対して助成を行うということで1,300ぐらいの施設に対して現在認定を行っております。
 それから、訓練実施に対する援助ということで、公共職業能力開発施設以外に、例えば事業主に対して、いろいろな施設を貸与したり指導員を派遣したりということで、民間それぞれの企業のニーズにあわせた形で能力開発に対する支援を行ったり、あるいは、いろいろな相談・援助を受けたりといった支援の仕組みをつくっているところでございます。
 8ページがキャリア形成助成金ということで、大体7種類ぐらいの助成金がございます。左上のほうが、訓練給付金といって一番基本的なものでございますが、企業が計画的に職業訓練を受けた場合にかかる費用の一部を助成するものですとか、あるいはその下とか真ん中の上にあるような形で、能力開発のための休暇を労働者が取りやすくするための奨励金といったようなもの、キャリアコンサルティングを推進するためのものを幾つかメニューを用意しまして、企業に対する支援を行っております。
 それから、次は能力評価の関係でございます。9ページでございます。先ほど申し上げましたように、能力評価の方策としましては、まず国家検定としての技能検定制度が137職種ございます。合格者には技能士を称することができるようにしております。あと、社内検定、企業の中での検定制度を設けた場合の認定制度ですとか、あるいはホワイトカラー向けのビジネスキャリア制度、YES-プログラムとありますけれども、これは主に若者向けの職業能力、基礎的な能力を身につけるための講座を受講していただいて試験を受けていただくような仕組みでございます。3番目のビジネスキャリアの若者版のようなものですけれども、そういったものをつくっております。
 それから、5番としまして、幅広い職種を対象とする能力評価基準の策定ということで、いろいろな業種ごとに関係の団体の人にも入っていただきまして、それぞれの職種においてどういった形の能力評価をしたらいいかというような汎用のプログラムをつくっていただくという作業を、14年度ぐらいから実施をしておるところでございます。
 それから、10ページが技能の振興でございます。これにつきましては、やはり技能離れといったようなことが言われておりますので、いわゆるものづくりに対しまして国民全体の意識を啓発していこうということで、政府全体でものづくり基盤技術振興基本法ができましたので、これに基づくいろいろな啓発活動をやっておるということとか、技能五輪大会を開催したり、卓越した技能者の表彰あるいは高度熟練技能者の活用といったようなことでのイベントを行ったり、競技大会を行ったりというようなことでやっております。
 11ページに2007年のユニバーサル技能五輪国際大会の資料をつけております。これは技能の競技大会の国際大会がありまして、4年に1回開かれておるのですけれども、2007年に静岡県で行うことになっております。このときには、一般の方々の技能五輪とあわせて、障害者の方々の国際アビリンピックと言っておりますけれども、これを2007年11月に開催をするという計画がございます。今、これに向けていろいろな準備あるいは関係者の方々のご協力をいただきながら進めていこうということで考えておるところでございます。非常にいい機会だと思っておりますので、ただ競技大会で優秀な成績を取るということだけではなくて、先ほど申しましたような技能の振興といったようなことにアピールできればと思っておるところでございます。
 それから、12ページは、政府全体、右肩のほうに関係省庁が5省庁載っておりますけれども、政府で作成をしました若者の自立挑戦のためのアクションプランというものがございます。関係省庁でそれぞれの役割の中で若者の雇用対策、能力開発対策等をやっていくというものでございます。細かい説明は省略をさせていただきます。
 13ページからは、18年度の能力開発行政の関係の重点施策と概算要求ということで、8月31日に財務省のほうに出しました来年度の概算要求の内容を載せております。細かい説明は省略をさせていただきますけれども、3つの柱立てをしておりまして、一つは、各世代に必要とされる職業能力の開発・向上の促進ということで、2007年問題への対応という副題をつけておりますけれども、若者、それから壮年、高齢者といったような、それぞれの世代に必要な職業能力開発、特に2007年問題ということで団塊の世代が退職されていく場合の技能の伝承にもウエートを置いて対策を進めていきたいと考えておるところでございます。
 それから、2番目の柱は15ページでございますけれども、フリーター・ニートと若者の人間力強化の推進ということで、先ほどの説明にもありましたけれども、日本版デュアルシステムですとか、あるいは合宿形式でやっております若者自立塾というものをやっておりますが、そういった事業を引き続き進めていきたいと思っております。
 それから3つ目が障害者等の自立に向けた支援ということで、障害者の方々の訓練施設内外でのいろいろな能力開発を手助けして、できるだけ就職に結びつけていくための施策を講じていきたいと考えているところでございまして、そこにあるような事柄を重点的に取り組んでいるところでございます。
 以上、大変駆け足で恐縮でございますけれども、現在の厚生労働省関係の施策の説明を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

(4)厚生労働省のプレゼンテーションについて、質疑応答が行われた。

【糸賀委員】
 厚生労働省は、実際にこういうところで職業訓練を受ける方々を、生涯学習というカテゴリーの中でとらえているのでしょうか。
 例えば、前回の特別委員会でも生涯学習についての世論調査の結果について検討しましたが、どういう生涯学習をしているかというと、例えば健康スポーツや趣味的なものという回答が実際にはとても多いわけです。私自身は、今のお話を聞いていて、こういうものも当然、生涯学習のカテゴリー、範囲の中で考えたいわけです。ただし、これらを受講されている方々からすると、自分が生涯学習をやっているという意識は希薄なのではないかという気がするのです。厚生労働省が実施している講座を受講されている方々に、生涯学習の一環で自分は受講しているのだという意識はどの程度あるのでしょうか。

【杉浦職業能力開発局総務課長】
 数量的なものはなかなか難しいと思いますけれども、対象者とか訓練の種類によっても考え方はそれぞれ様々だと思います。例えば、先ほど説明いたしました失業者の方々にとっては、まず就職をするということが第一目標でございますので、そこから先のことまで長いスパンで意識を持ってやっておられるのかというのはわかりませんけれども、まず当面の目標として手に職をつけて就職をするということを考えれば、離職者の方はそういったことが第一の目標でやっておられると思うのです。
 それから、在職者の方々に対する訓練といいますか、能力開発としましては、それは本当に現在やっておる業務に直接リンクしておる仕事の場合には、やはり生涯学習という言葉が当てはまるのかどうかわかりませんけれども、まさに仕事に密接した能力を身につけるということだと思うのですが、もう少し幅を広げて、例えば、自発的に、先ほど申しました教育訓練給付みたいなものをもらいながら、どこか勉強にいくとか、そういった事柄になると、将来的に自分が、例えば国際的な関係の仕事をしたいだとか、もう少し幅の広い分野の仕事もしたいと思いながら、そういった給付をもらって、例えば休暇をとりながら勉強するということもあり得ると思います。こちらで文部科学省のほうでお考えになっている生涯学習のエリアというのはどのぐらいまでか私も十分承知していないのですが、そういうことからすれば、生涯、職業生活の中でそれぞれのステージにおいてキャリアを身につけていくということからすれば、概念としては近いとは思います。
 ただ、前半のほうで申し上げました、施設内でやっておる訓練なんかは、それはどこまで将来を見据えた形で、あるいはそのつど自分の、もちろん趣味的なものは外れると思いますけれども、それが将来どのぐらい自分の職業生活に有効であるかということを幅広く考えながら、実際にやっている方もおられますけれども、離職者とかあるいは学卒の方だと、そこはあまりウエートとしては大きくないのかもしれません。そこはなかなか数量的にどのぐらいかというのは示しにくいと思います。

【糸賀委員】
 私自身も、数量的にどのぐらいかということを知りたいというよりも、どうも世論調査の結果よりも、実態としては生涯学習というのは広く行われているのではないかと、私の個人的な感触では感じているのです。ただ、今のお話を聞いている限り、こういうところで学ばれている方々は、我々は生涯学習という範疇の中でとらえようとしているけれども、当事者自身はあまりそういう意識がないのではないかと。したがって、世論調査をやったときの答えの中でも、実際は生涯学習をやっているにもかかわらず、そういうふうに答えていないのではないかという気がするのですね。
 その辺、今後我々が政策を考えていく中で、我々が考えている生涯学習と、実際に学習している本人の方々との意識のずれのようなものがあるのではないかと思いまして、確認させていただきました。

【田中委員】
 初めに、今のご質問に関することなのですが、今、いただいている資料を見た範囲ですが、世論調査の場合、生涯学習とは何かということを理解していただいてから回答してもらっていますね。これを見ると、確かに自由に行う学習活動ということで、職業教育関係があまり前面に出ていなかったりするものですから、やはりこれはアンケートの調査票でどういう言葉を生涯学習として提示するかで当然変わってくるものですから、アンケートのやり方で大分変わってくると思います。
 それから、1点だけお聞きしたいのは、3ページの5ですが、公共職業訓練受講後の就職率ということで、現在も、特に公共のほうはかなり高いと思うのですが、さらに引き上げるということで、どのような方法論で引き上げるということをお考えなのか。何かおそらく文部科学省の政策についてもいろいろな指標を設けて、これからこういうふうに数字を高めるというときに、なかなか方法論は難しいと思うものですから、職業訓練についての、就職率を高めるための方法論としてお考えのことがあれば教えていただきたいと思います。

【杉浦職業能力開発局総務課長】
 これはやり方はいろいろあるのですけれども、一つには、訓練の職種ですとか中身を絶えず企業のニーズにあわせた形に持っていかないと、いわゆる時代おくれの訓練ばかりやっていても、企業には役に立たないというところもありますので、そこは教えている指導員が、常に事業所に出向いていって話を聞くなどして、どういった能力、技能を身につければ、雇ってもらいやすいでしょうかという話を、よく情報を取ったりして、それにあわせた訓練をやっていくというのが一つのやり方じゃないかと思います。
 それから、学生というか、訓練生に対しても、やはり就職ということを念頭に置いて訓練をしてもらう意識を絶えず持ってもらわないと、どうしても小中学校の延長みたいな形で受ければいいやということになると、自分の意識がなかなか身についていかない部分もございますので、そこはやはり最終的なゴールというのは就職ですから、その就職を意識した訓練の受け方を訓練生の方々にも持っていただく努力を指導員のほうはやっております。
 そのほか、就職にできるだけ結びつくような勉強の内容を工夫してくださいねという話も民間の専門学校にもお願いしていくので、委託しておるといったようなことは、いろいろな方法の中の一つだと思います。

【田中委員】
 その場合、厚生労働省として、マニュアルとか研修のようなことをしながら、各施設に徹底するというやり方をとっていらっしゃるのでしょうか。

【杉浦職業能力開発局総務課長】
 雇用能力開発機構が実施しております訓練は、その辺は具体的なマニュアルみたいなものはないのですけれども、ただ、研修をやったりは実際しております。指導員にそういった意識を徹底させて、そのためにどういった活動をしなさいというようなことを、機構の中でやっておることは聞いております。

【中込委員】
 例えば履歴書などを見ますと、免許、職歴、資格とあるわけですが、学習成果については、あまり記載されていないような気がします。この間も申し上げたのですが、どこかで勉強したものをあらわしたいという気持ちになるのは、人間、小さな子から大人まで同じだろうと思います。やはりそういう仕組みをどこかでできるとありがたいなと思うのです。勉強したものが履歴に書けると、会社のほうも、こんなことを勉強してきたんだとわかるようになりますね。それがさらに学習意欲につながると思うのです。
 そうなると、資格などとは別に勉強した成果をしっかりとあらわせるような仕組みをどこかでつくる必要があります。例えば、今はやりのマイレージ制度の様にしたら、職業教育を受けた者が、職業教育でこんなポイントをためたというようなことがわかるのではないでしょうか。ただ「勉強したよ」「君、一生懸命勉強したね」だけでは、何がどうなっているのか全然わかりません。
 それと、先ほど、専門学校への委託の話がございましたが、関連して我々もいろいろ頭の痛い点がございます。法人税の収益事業の範囲に技芸教授業というのがございまして、これは洋裁、和裁、着物着付け、編み物、手芸といった教授についてはある一定の授業時間以上でないと、すべて収益事業になるという、課税制度があるわけです。社会人の方が、こういう勉強をしたい、こういう科目を取りたいと、勉強をして、それを履歴に書ければ大いに結構ですが、例えば、1つの科目だけを受けられるようにすると、専門学校も大学もたしか同じじゃないかと思うのですが、収益事業に該当して、課税されることがあります。
 だから、税制の面で、もっと学校側が社会人を受け入れやすい要素をつくっていただく必要があるということです。我々専門学校の側も、いろいろな形で日本版デュアルシステムをはじめ厚生労働省と協力しながら進めてはいるのですが、やはりいまひとつ社会人教育に積極的に踏み込めない部分には、やはり税制面の問題もございます。

【杉浦職業能力開発局総務課長】
 前半のほうのお話ですけれども、まだなかなか普及はしていないのですけれども、キャリアシートというものをつくっていただくようにいろいろなところでやっています。それは、今お話にございましたが、まさに、自分が職業生活の中でどういったポジションで、どういった仕事をしたかというようなことをシートに書いていっていただいて、それを、例えば転職の際ですとかあるいは社内での配置の際ですとか、そういったところに活用していただこうということです。それはまさに今、型にはまった履歴書だとなかなか見えにくい部分ですので、実際に自分がこういうことをやってきたというのがある程度わかるように書けるようなフォーマットもつくったりしているのですけれども、そういったものをできるだけ普及させていきたいと思っております。
 まさにさっき言ったキャリアコンサルタントなんかは、そういったものをできるだけ活用して、個々人がそういったものをつくりやすいようなことも含めてアドバイスをできるようにしていきたいと思っているところでございます。
 それから、先ほどの説明の中で申し上げました、ビジネスキャリア制度だとか、YES-プログラムといったようなものも、特にホワイトカラー向けに考えておりますのは、例えば経理ですとか、そういったようなホワイトカラーに基づくいろいろな職種のものをユニットにしまして、その一定部分を何カ月か受講して、試験を受けていただければ、それだけのものを勉強しましたということを認定するというような仕組みで、だんだん積み上げ方式でやっていくようなものを考えております。

【柵委員】
 eラーニングについて、今どのような取り扱いになっているかということを、参考にお伺いしたいと思います。
 少し前まで、このeラーニングは学習の時間としてカウントされない、したがって、その制度の対象にならないということがありました。その後その点について検討されているということもお伺いしておりますが、いかがでしょうか。

【杉浦職業能力開発局総務課長】
 eラーニングについては、大分世の中で普及をしてきておりまして、もちろんいろいろな種類のものがございますので、全部が全部というわけにはいかないと思いますけれども、それが職業能力を取得するために十分有効だということについては、我々もできるだけそれを評価してやっていかなければいけないと思っています。
 今、それは国が直接やるということよりも、民間ベースでいろいろな講座ができておりますので、今現在やっておりますのは、世の中にたくさんある、そういったeラーニングの仕組みをできるだけ国民の方が早くアクセスできて、こういうものがあるんだよということを知らせるようなものをつくろうかなというか、もうやり出しておるのですが、そういったことはやっております。
 ただ、さっきおっしゃった、助成金の対象に直接なるかどうかというのは、私もまだ不勉強で申しわけないのですけれども、正直言ってそこが具体的に一定の我々が考えている基準に合っているかどうかというところで検討を進めているのではないかと思いますけれども、ちょっと私もまだeラーニングの講座が指定になっているかどうかということも聞いていないものですから、またそこら辺は勉強して検討してみたいと思います。

【茂木分科会長】
 さきほど糸賀委員がおっしゃった、これが生涯教育なのかどうかという話ですが、私はまさにこれが生涯教育のかなり大きな部分を占めているのではないかと思います。ことに、これから離職者というのがだんだん増えてくるはずです。なぜかというと、やはり市場経済で企業の勝ち負けがはっきりすると、負けたほうの企業から当然、職を失う人が出てきます。それから、勝ち組の中にいても、よりよいチャンスを求めるという人たちは、離職をするということになるわけです。職業訓練は、かなり社会の中で重要な役割を果たすわけで、これがしっかりしていないと、労働市場の市場経済が成り立たなくなるわけです。
 それから、さきほどベンチャー創業サポートセンターという話がありました。これは経済産業省とも関係があります。ベンチャービジネスを創出して、雇用の受け皿を拡充することは、相当真剣に取り組むべき問題です。

【糸賀委員】
 今、茂木分科会長に補足していただいて、大変ありがとうございました。私自身も、これはこれからの日本の社会を考えるときに大事な生涯学習のかなめの部分になるだろうと思います。
 学習している本人たちは、どうも生涯学習をしているという意識がないようですが、十分、生涯学習のカテゴリー、範疇の中で考えていくべきものだろうと思いますので、その辺の意識のずれというものを今後、調整していく必要があるのではないかと思いました。

(5)ひきつづき、三菱総合研究所から、『学習活動の促進に関する実態調査』の文献調査について説明が行われた。

(6)三菱総合研究所による説明について、質疑応答が行われた。

【糸賀委員】
 初めの内閣府大臣官房広報室の生涯学習に対する世論調査と、その次の厚生労働省の調査の結果で、やっぱり解釈をするに当たって、母集団がどうも違うのではないかという気がします。母集団、調査の対象が、ほぼ同質なのか、それとも違うのか。それから、その後に、先ほどの知識・スキルやコンピテンシーの話が出てきました。その辺の調査結果においても、調査対象はほぼ同一の集団と考えていいのか、それとも、もともと母集団が違うのか、そこだけ確認させてください。

【佐藤主席研究員】
 基本的には一般の世界の方、個人の方という方でやっていまして、その中でのランダムサンプリングでやっていますので、そのときの考え方は一緒だと思います。ただ、その挙がってくるサンプル自体は少しずれている可能性がございますけれども、基本的な考え方は同じだと思います。

【小杉委員】
 厚生労働省のは違いますよ。能力開発基本調査のことですから、これは企業の……。

【佐藤主席研究員】
 これは企業のほうですね。

【小杉委員】
 母集団が違います。全く違います。

【糸賀委員】
 全然違うわけですよね。

【佐藤主席研究員】
 厚生労働省のほうは、企業に調査票を送って、従業員の方々から回答を得たものです。

【糸賀委員】
 そうですね。もともと企業に勤めている方々ですね。内閣府のほうは、これはいわば一般国民ですね。わかりました。

(7)次に、経済産業省からプレゼンテーションが行われた。

【橋本サービス産業課長】
 経済産業省のサービス産業課長の橋本と申します。今日はこういう場にお招きいただきまして、お時間をいただきまして大変ありがとうございます。早速、資料2に基づきまして、私どもの政策のご説明をしたいと思います。
 実は、私、サービス産業課長でございますけれども、生涯学習振興室長というのも兼ねておりまして、生涯学習については、生涯学習政策局と連携して、今後とも進めていきたいと思っておりますが、経産省の中では、今日ご説明する予算に関しましては、私どもだけではなくて、ほかの経済産業政策局あるいは中小企業庁あるいは産業技術関連の部局がございまして、そういうところがそれぞれの政策ニーズにあわせて施策を進めておりますので、今日は省全体の施策のとりまとめをしてまいりました。
 また、実は、18年度の概算要求をもう既に出しておりますけれども、人材育成という観点での資料の整理がちょっと遅れておりましたので、今日は17年度の施策をご説明しながら、あわせて18年度のご説明も口頭でしたいと思います。
表紙にありますが、企業活動を支える人材の育成ということで、私どもはやはり産業政策の観点から人材育成政策を行っております。したがって、人材というものをある意味、企業の知的資産というふうに位置づけておりまして、知的資産の向上、従来の技術あるいは知的財産だけではなくて、人材もそういった資源として向上させていくことが我が国経済の発展につながるという観点で施策を進めております。
 1ページめくっていただきまして、最初の7、8ページは背景のお話でございますので、はしょってご説明したいと思います。私どもがこういう政策を進めるに当たっての背景を幾つか整理しております。
 まず2ページの1でございますけれども、団塊の世代の引退で、これは特に企業、製造業に関しましては、ものづくり力の継承というものに非常に強い危機感を持っておりまして、幾つかの調査、これは厚生労働省の調査が載っておりますけれども、ここでも相当高い割合での危機感が出ております。
 それから、次のページにございますが、一方で若手人口、これは今、政府全体でも問題になっておりますけれども、どんどん減っていって、したがって、労働力人口が減る中で、1人1人の能力を向上させない限り、我が国経済の、特に生産性の向上というのは図れないという基本的な考え方がございます。
 一方で、4ページでございますが、企業は90年代、厳しい経済環境がございましたので、特に企業内の教育訓練費が大幅に削減されたということが様々なデータで出ております。これもやはり厚労省の調査ですけれども、直近でも1,000億程度、教育訓練費が減っているということで、したがって、労働生産性の水準も我が国がOECD平均から見ても低いというようなことが出ていますし、80年代に比べても低いというようなデータがございまして、我が国の労働生産性の上昇率が非常に減退したという現実がございます。
 それから、同じようなことで5ページでございますけれども、企業内のOJTでございますが、これもどんどん減っております。これは企業のアンケートなども左側に載っておりますけれども、一つは製造現場では派遣あるいは請負が始まっておりますので、そういったことで現場での技能の継承というものがなかなかできなくなっている。それから、今申し上げた教育訓練費が減っておりまして、非常に企業内教育での、特にオフジョブトレーニングの日数が、特に新人については大幅に減っておりますし、かなり集中化をしておりまして、したがって、中堅どころの職員の教育の機会が、なくなっているという指摘がございます。
 6ページには、特にアジアの中での日本の人材の位置づけについて、いろいろな資料をつけておりますけれども、特に中国との格差をどう考えるかということでございます。大学進学率は日本では大体5割近くいっているわけですけれども、中国はまだ低い。逆に言うと、昔の日本のようなエリート教育が大学レベルではできている可能性があるわけです。その一つの例として、算数、数学のテストを慶應の戸瀬先生が行ったものでございますけれども、日本のトップの公立大学が小中学校レベルの数学をやったとき満点の比率が5割を切っているという、若干ショッキングなデータもございますし、IMDというスイスにございます研究所の調査では、大学教育が経済のニーズにこたえているかどうかという順位が日本は非常に低いというデータもございます。
 7ページでございますが、一方で中小企業と若者のミスマッチ。先ほど厚生労働省からもご説明がございましたけれども、なかなか中小企業に若者が行かないところをどう考えるかというところでございます。特に最近は、この7ページの右側のグラフにございますように、大学生の就職意識としては、やはり大手志向が非常に強いということでございますし、むしろ中小企業にとっての求人倍率は1を超えて3以上という、非常に高い水準でございまして、これはいろいろな背景があることだと思います。少子化による、例えば親の子離れが減っているとか、うまくいっていないとか、いろいろなことを言う先生方がおられますけれども、基本的にはこういう傾向はもっと進む可能性がございます。
 先ほど中国の話をしましたが、8ページにございますように、なかなか人材の訓練が進まないというところで、例えば中国に進出する、あるいは中国を投資先として考えた場合に、4社に1社は、むしろ中国に優秀な人材がいるというお答えになっておりまして、特に中小企業では3社に1社がそのように答えております。もちろん労働コストの問題もございますし、あるいは産業のいろいろなインフラの問題もありますけれども、人材という一番企業にとって大事な資源が、むしろ中国に取られて競争力がなくなっているという指摘がございます。
 今のような背景に基づきまして、私ども、平成15、16年度から本格的に人材育成政策に取り組んでおります。9ページには、17年度と書いてございますが、実は18年度も全く同じでございまして、政府としての若者自立・挑戦戦略会議を通じて、経産省としても企業、教育機関、フリーター等のそれぞれの段階で総合的な人材施策を推進する中で、私どもの役割を分担しておりまして、後で申し上げますジョブカフェとかeラーニングということを推進しているわけでございます。
 10ページは先ほど厚労省の資料にもございましたので、ご説明しません。
 11ページ以降が具体的な政策ですが、まずこれも経産省だけではございませんが、文科省、厚労省、経産省で共同で17年度要望として人材投資促進税制というものを要求して、税調を通っております。これは先ほど申し上げたように、企業の教育訓練費がどんどん減っているということに3省庁が危機感を感じまして、企業が教育訓練費を前2事業年度の平均額より増加させた場合に、その分の4分の1を法人税から控除するという、ある意味画期的な税制でございまして、教育訓練費を増やした企業については、こういった税制上の恩典がある。あるいは、中小企業については、大企業に比べると倍の控除率を適用できるということで、中小企業は特に教育訓練をなかなか企業内ではやりにくいので、こういった税制を使って教育訓練費を増やしていただきたいということで制度ができておるわけです。これはもちろん企業側の教育訓練費の増加が直接税額控除になるのですが、一方で教育機関、一般の学校法人、大学、あるいは民間の教育機関も、こういった制度があれば、ある意味で企業がそういった外部の教育機関を使って教育訓練をやる場合も対象になりますので、ある意味でインパクトがあるのではないかということでつくっているわけですけれども、まだこれはPRが不足しているというご指摘もございますので、どんどんやっていきたいと思います。
 それから、予算措置等でございますが、13ページにございますけれども、これは17年度から開始されてございます製造現場の中核人材育成・強化ということでございまして、今年度23億円、来年度18年度は31億円の予算要求をしております。産業界が、特に製造現場ですので理工系の大学ですが、一体となって、ものづくりのベテランの技の把握を若い世代の技術者に受け継がせるための支援制度でございまして、例えば、大学附属のものづくりセンター、これは例えば東京工業大学に今回つくっていただいておりますけれども、そういったところに養成プロジェクトをつくっていただくときに、カリキュラムの開発あるいは実習の実践などをやっていただく。これは必ずしもその大学の学生だけではなくて、むしろ現場の技術者が大学の施設を使って教育を受けるということも推奨しておりますので、産学連携でこういった人材育成を行っているということでございます。
 それから、14ページ以降ですが、技術系人材の育成ということで、これは平成14年度から既に開始しているものでございまして、技術系の技術者が、将来、企業経営に関与するということは当然あるわけでございますけれども、そういったときに日本の技術者の場合は技術の勉強しかしていない者が多いので、受け入れの勉強もしていただこうということで、MOT、マネジメントテクノロジーと言っておりますけれども、特に製造分野のマネジメントについて、大体、専門職大学院クラスの勉強をしていただくというようなことを政府として応援しているわけでございます。15ページにございますが、既に全国の、プログラム数で言うと146プログラムになりますが、そういった大学等でMOTの人材育成の検討あるいは実際に教育をしていただいているということでございます。
 これは14年度から始まりましたので、今年度は予算枠5億円で、来年度は少し減らして4億5,000万ということでございますけれども、常にさまざまな大学で、例えば専門職大学院でMOTコースをつくっていただいたという例がございます。
 なお、この中で特徴的なのは、15ページの日本地図にありますが、例えば関東のところを見ると、半分は大学でございますけれども、半分は民間教育機関、株式会社とか財団とかいろいろございますけれども、こういった従来の大学ではないのですが、教育に携わるところも幾つかございますが、そういったところがMOT教育を実際推進しているというところが特徴的でございます。
 それから、次に移りますが、16ページ、サービス産業人材育成事業でございます。日本のGDPの7割は既にサービス産業になっておりまして、サービス産業の生産性向上というのは我が国経済にとって非常に大事なのでありますけれども、一方でサービス産業というのは、人しか資源がございませんので、人を育てるというのが非常に大事でございまして、政策目標になっているわけでございます。
 これも実は16年度から始まっておりまして、今年度4億円、来年度は倍の8億ちょっとの要求をさせていただいておりますが、例えば、アニメ、ゲーム、あるいは映画のコンテンツの人材、それからヘルスケア、これは医療現場も含めた人材育成、あるいは、集客交流とありますのは、広義の観光でございますけれども、そういったツーリズムの人材、あるいは地域観光のコーディネーターみたいな方、あるいは事業支援サービスといいますのは、いろいろなアウトソーシングを今、企業はどんどんやっておりますが、そういったところのサービス業の人材ということでございまして、これは非常に高いレベルの人材育成を念頭に置いていまして、高度な専門職の人材としてのスキル標準といいまして、どういったスキルを平均的に持つべきかという標準化をしている。あるいは、一般的な学習指導要領的なテキストなりカリキュラムを産学連携でつくっていただく。あるいは、大学院等で実証事業をしていただく。あるいは、ネットワークフォーラムの開催等を事業の内容としておりまして、一例とて17ページに医療経営人材育成事業について出ておりますが、これは私どもの課で担当しておりますけれども、医療経営というのは、いわゆる医療機関、病院等の経営者でございまして、これはお医者様が今、病院の理事長、院長になるということがほとんどでございまして、実際、お医者様というのは経営の勉強はほとんどしていない。医療については非常にお詳しいですけれども、経営についてはあまり勉強していないので、むしろそういった方々にちゃんと経営の問題を学習していただいて、医療機関の効率化、合理化、最終的には医療費、社会保障費の大幅な増加の抑制ということをもくろんでいるわけでございます。これは厚生労働省と一緒に勉強しておりまして、ここにおられるような、この世界の重鎮の方々に委員になっていただきまして、具体的に医療経営に関する教科書づくりというものに着手しておりますし、日本ではなかなかないのですけれども、病院の再生のケーススタディーとか、そういったものをこれから開発すると。今、まさに委員会を動かしているところでございます。
 それから、18ページにはキャリア教育ということで、これはむしろ若者、小中学校で、職業意識の涵養ということで、これは厚労省、文科省と協力、連携して行っております。経産省の分は民間主体の団体に、ものづくり技術あるいはベンチャー教育等々の職業教育を具体的に図っていただくというようなことを地域レベルでやっていただくための支援をしております。今年は3億円ちょっと、来年度は5億円の予算要求をしているところでございます。
 それから、19ページ、ジョブカフェでございまして、これも厚労省と連携して行っているものでございます。これも若者、フリーター、ニート対策の一環で位置づけられておりますけれども、従来の職業紹介というものを、もっと入口が入りやすくなる、あるいはワンストップサービスで行えるというようなことを自治体に整備していただくというところを応援しているわけでございまして、ジョブカフェ事業そのものは来年度までのモデル事業でございますけれども、今年度は3万人の就職を達成しているということでございまして、今年度新たに5地域の追加をしております。全部で20地域のジョブカフェができているわけでございます。20ページに各地域、経産省のジョブカフェができていないところもございますが、これは厚労省のほうで手当されたり、自治体が独自におやりになっているというところもございますけれども、経産省の選定しているのはこの20地域ということでございます。
 次のページですが、ジョブカフェに連動いたしまして、草の根eラーニングということを推進してございます。これはジョブカフェに来るようなフリーター、あるいはニートの若者、ジョブカフェとは直接関係ありませんが、先ほど教育訓練がなかなかできないという中小企業の正規・非正規の職員、こういった若手の人たちに対してeラーニングを使った、非常に基礎的な教育をしようということで、今年から始めた事業でございます。経産省は予算4億弱でございますが、産業界の求めるビジネススキルなどの、非常に、ある意味プリミティブなものも含めたコンテンツの開発と実証事業というものをやっておりますし、文科省のほうでは、生涯学習政策局のほうでeラーニングの教育機関を使ったコンテンツ開発を行っていただいております。
 それから、先ほどご質問がございましたが、厚生労働省のほうでもeラーニングの情報提供の仕組みを整備するとともに、給付金制度を草の根eラーニングに限ってかどうかわかりませんが、活用させていただくということをお聞きしておりまして、この資料に入っておりますが、いずれにしろ3省庁で連携して若者の教育についてeラーニングを活用していくということでございます。
 22ページ、コンテンツのイメージが書いてございます。経産省は右上の四角の中のことでございまして、もちろん学生、フリーターも対象にしますし、正規の職員も対象にしておりますが、例えばコミュニケーションのスキルとか、販売とか接客あるいは営業のスキル等々、これは大体、上に行くほど難しい内容になっておりまして、最後のHRM、ヒューマンリソースマネジメントですけれども、むしろ管理者のほうのスキルの研究もしております。こういったものをeラーニングコンテンツをつくって、具体的に提供していくと。文科省のほうは、下のほうになっておりますけれども、一部重なるところもございますけれども、こういったことをコンテンツをつくっていただいて、提供については両者が協力しながらやっていくということでございます。
 基本的に私ども、先ほど冒頭申し上げたように、産業政策の一環として、やはり人的資源というものが企業活動にとって非常に大事だということを最近、富に感じておりまして、こういうふうに重点的に施策を進めております。経産省全体では、今年度約200億の予算。予算が多ければいいというわけではございませんが、その中で工夫しながらこの人材育成を進めているということでございます。以上でございます。

(8)経済産業省のプレゼンテーションについて質疑応答が行われた。

【中込委員】
 一番最後の方で、フリーター、無業者というのが出てきましたが、経済産業省ではフリーターという言葉は既に社会的地位を得た、あるいは地位を認めた上でのご記載でしょうか。
 フリーターという言葉は非常にあいまいな言葉で、造語であることはおそらくご承知だと思います。前回の委員会でも申し上げましたが、フリーターという言葉をあまり頻繁に使われるのは、若者たちにとっては決して好ましいことではないような気がしております。その辺を少しお伺いしたいのですが。

【橋本サービス産業課長】
 私どもの課はフリーターの担当ではないので、正確ではないかもしれません。これは政府全体としてフリーターという言葉を使っておりますので、その考え方に従って位置づけをしておりますので、ある意味、もう定着しているというふうに考えております。

【中込委員】
 フリーターという言葉については、できればお気をつけいただきたいなということでございます。これは特に若者たちにとって大事なことですから。フリーターという言葉をマスコミが安易に使って、それで「もう、僕、フリーターでいいや」とか「ニートでいいや」と若者が思いはしないかと危惧しております。若者がそういうような発想になる原点を我々自身がつくってはいけないということじゃないでしょうか。

【山本委員長】
 これはいろいろ統計を取るときなどにも出ていますので、経済産業省というよりも政府全体の問題ですので、それはまたそれとして承っておきたいと思います。

【橋本サービス産業課長】
 何回かお話ししたように、これは産業政策ということでございまして、特に、私はサービスの担当なのですが、経産省全体としては、日本経済をこれまで支えてきたものづくりの人材についての危機意識が今、非常に高くなってきておりまして、先ほど申し上げた製造中核人材の育成というものも、また強化をしていく。これには大学等の既存の教育機関の協力を非常にお願いしているところでございますけれども、一方で、もうちょっと大学レベルに達しないところでも、やはりものづくり人材というのは非常に大事だということで、さっきご紹介を忘れましたが、例えば高等専門学校にはそういうノウハウが非常にあるので、高等専門学校にものづくり講座などをつくっていただいて、製造現場での実習等々をこれも産学連携で行っていただくということを今、検討しておりまして、来年度、予算が通ればそういうことをやっていただく。
 あるいは、今、ちょっとフリーターのご指摘がありまして、言葉には気をつけたいと思いますが、若者と中小企業、先ほど申し上げたようにミスマッチがございますから、これも新規で若者と中小企業のネットワークをつくるための事業を中小企業庁が中心となって各地域のコーディネート機関、これは商工会議所とかNPOとか、そういうところになると思いますが、そういったところにお願いをしようということも今、検討しておりまして、いずれにしろ、そういった産業界にとってなかなか人材を得るのが難しくなっているところを埋めていくような政策をとっていきたいと考えております。

【湯川委員】
 職業というのはニーズがあるところに発生すると思います。今、ニーズという点で非常に求められているのが、専門職として子供たちの話を聞いてもらう人というか、一緒に遊んでもらう人です。端的に言うと、カウンセラーを各小中学校に置こうということがございます。今、圧倒的にカウンセラーが足りないという現状でして、これから2年間から3年間でもっと増やそう、助成金も出そうというような動きがあると伺っております。そこまでの専門的な資格を持たなくても、週末一緒に遊んでくれるとか、人生経験を生かして、子供たちの悩みを聞いてもらう、そうしてそこから先は専門職に任せる、お医者さんなり児童心理学者に任せるということにすればよいと思います。入口のところで、もっともっと子供たちを相手に話を聞いてくれたり、相談に乗ってくれたり、あるいは遊んでくれたりという、人生経験者、もしかしたら体力のある若者であってもいいのですが、そういう新しい職種を考えていただくことはできないでしょうか。これはお願いでもあります。

【小杉委員】
 経済産業省で、eラーニングのところで、例えば学習コンテンツの実証をもう既にやっていらっしゃいますよね。この辺の各コンソーシアムでそれぞれにコンテンツも開発されていると思うのですが、そのときに、その中のお互いの交流をして、ビジネススキルという領域だったらこの中でどういうスキルが重要で、その中にどういうプライオリティーがあってというような、やられた中で多分そういうことが出てくると思うのですけれども、そういう標準化についてはどの程度考えていらっしゃるのですか。

【橋本サービス産業課長】
 先に小杉委員のご質問でございますが、非常にいいご指摘でございまして、私ども実は、今年度事業をまだ始めたばかりでございまして、この5つのコンソーシアムも公募をして競争する中で一番いいものを取ったということでございますが、それぞれ、先ほど申し上げた4つの分野の中でご提案が来ておりまして、逆に、コンソーシアムですけれども、民間企業中心でございますので、それぞれの企業のノウハウ、例えば営業なり販売接客スキルであれば、もとマクドナルドにいた方が、その実体験、あるいはマクドナルドの持っているマニュアルを高度化してeラーニング用に転換していくような、そういうご提案があって、それはそれでおもしろいなと思っているのですけれども、そういったような企業の特性を生かしたご提案がされておりますので、それはそれで尊重したいと思いますが、例えば、eラーニングと言いましても、現場で実際、自分だけでできるのがeラーニングの特色ではありますけれども、やはりコーチといいますか、トレーナーといいますか、そういった方が別途ついていくとeラーニングの効果が非常に上がるということがわかっております。そういった方々がどういうことを念頭に置いてやろうかということを実は先般、研修をやっておりますし、コンテンツについては、それぞれのコンテンツをこれからつくっていただきますので、それを5つのコンソーシアムで行うものを見ながら、私ども基本的な、標準的な項目は出しておりますけれども、それをまた良くしていくような努力をしたいと思っております。
 それから、先ほどの湯川委員のご指摘は、ちょっと私、的外れのお答えになるかもしれませんが、今、小中学校で、これは文部科学省のお仕事でやっていただいておりますけれども、現場のいろいろなプロの方を、実際の職業を持った方を援助者として採用されているような例が非常に増えていらっしゃいまして、特に経産省では、先ほど申し上げたキャリア教育とか、あるいは子どもたちにベンチャーとは何かを教えたり、アメリカの理工系の大学生は大体卒業すると一番やりたいのはベンチャーを自分でつくりたいというのが、特にレベルの高い学生ほどそう言うのですけれども、日本は先ほど申し上げたように、5割以上が大企業に行きたいということでございます。子供のときからやはり教育していかなければいけないので、そういった、むしろ教師以外の各分野のプロの方に子供たちに接していただくというようなことを最近、おやりになっていると聞いております。是非そういったことを、私どもも協力してやっていきたいと思います。

【加藤委員】
 本当は厚生労働省の方にお聞きをすればよかったのだろうと思うのですが、同じ資料が使ってありましたのでお聞きします。特に、ニートに関する10ページの資料、若者の自立挑戦のためのアクションプランのポイントというところですけれども、特に、私たちが非常に危機意識を持っているのは、やはり二極化の問題です。いわゆるニート、職業につかない、つきたくないといいますか、そういう人が増えていくというのは、社会の質を劣化させていくということで、確かに言葉として意識はされているとは思うのですが、どうやって彼らをこうした場にいざなっていくのかが問題だと思います。既にもう何十万という人が引きこもってしまっているわけですから。そういう視点で何か政策を集中していくようなお考えはおありになるのかどうかということと、それから、そういう側面で言いますと、やはり義務教育の最終段階である中学の段階で、いわゆる仕事の味を覚えてもらうような取組、例えば神戸で実施されているトライアルウイークのようなものがもっと幅広く、それも集中的にというよりも、もっと全国的にすくい上げていくような発想が必要かと思います。

【橋本サービス産業課長】
 私ども、危機意識は加藤委員がおっしゃるように非常に強く持っておりまして、ニートについては何とかちゃんとした職業についていただくような方策をとりたいと思っておりますが、これは例えばジョブカフェなんかに行きますと、いわゆるフリーター-フリーターという言葉は使わないほうがいいのかもしれませんが、フリーターの方であれば、ある程度ジョブカフェで動機づけみたいな研修教育をしていらっしゃいますし、今回、eラーニングでもそういうことを意識してやっていますので、職業意識が芽生えて、就労に結びつくという例はあるのですが、一方で、ひとくくりにしてはいけないかもしれませんが、いわゆるニートと言われる方々には、なかなかそういうことを指導してもついていけない、あるいはジョブカフェにもお母さんと一緒に来てしまうようなことがあって、なかなかご指導が難しいということがあります。何とかそれを打開するために、私どもは当面、ジョブカフェ、あるいは今、先生がおっしゃったような若い頃からの職業意識の醸成というようなこともやっておりますし、特に中小企業は人材不足で相当お困りですので、中小企業といっても嫌がらずに、あるいは中小企業でも面白いということをわかっていただくような、さっき申し上げたネットワーク事業なんかも、もしかしたらうまくいくかもしれない。
 私ども、今、例えば、工場で労働者の派遣業が認められておりまして、あと、生産の請負とかいうのもあって、工場の中で、もともとフリーター的な、あまり定職につかない方をそういう生産請負会社にまず就職していただいて、そこから工場に出るというようなことが最近増えているわけでございます。
 これはもちろん企業、ユーザー側から見ると、労働コストの低減という観点でどんどん増えているのですが、一方でそこで働いている人たちは、正規の職員になるよりは、フレキシビリティーがある就労形態でございますし、それから、実際そこに行って、かなりちゃんとした研修なども行う企業も増えておりまして、ですから、そこでもともと、いわゆるフリーターと言われた人たちがそこへ来て、仕事というのは結構面白いのだなということで意識改革をして、段々、正業についていく、あるいは正規職員として起用していくという例も、若干ではありますが聞いておりまして、何とかそういったルートも含めて、どんどんちゃんとした就労をしていただけるような環境をつくっていきたいと思っております。

【柵委員】
 企業の持っている教育力を地域に生かすということについて、例えば企業への支援策ということが一つと、もう一つは、産業としての、これまであるいはこれからの状況、見通しといった中で、例えば、もっぱら地域の中で地域の教育力を高めるようなことを業とするような、そういう事業者への支援みたいなことは考えられるのかどうか。

【橋本サービス産業課長】
 今日、資料には入っておりませんが、私どもサービス産業全般に関して、高度化のためのモデル事業的な予算枠がございまして、ツーリズムとか、あるいは健康サービスとか、そういったものをもう既にやっておりますが、教育サービスに関しても、委員がおっしゃったように新しいビジネスとして、いろいろな産業が連携して行っているというようなことは当然考えられますので、生涯学習の世界でも、むしろそういったような新しいご提案があれば、教育サービスのビジネスとして初期的なお金を我々が融通するとかいうことは今、考えておりまして、これから財務省と議論をしようと思っております。

【山本委員長】
 では、今日はこれで終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。

-了-

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生涯学習政策局政策課