国民の学習活動の促進に関する特別委員会(第1回) 議事録

1.日時

平成17年7月21日(木曜日) 10時~13時

2.場所

霞ヶ関東京會舘 「エメラルドルーム」(35階)

3.議題

  1. 委員長・委員長代理の選任について
  2. 自由討議(「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について」)
  3. その他(今後の日程など)

4.出席者

委員

 山本委員長、菊川委員長代理、茂木分科会長、渥美委員、糸賀委員、江上委員、加藤委員、工藤委員、小杉委員、坂元委員、柵委員、笹井委員、佐藤委員、田中委員、寺島委員、水嶋委員、湯川委員、渡邉委員

文部科学省

 田中生涯学習政策局長、中田大臣官房審議官、久保生涯学習総括官、大槻生涯学習政策局政策課長、吉田調査企画課長、桒原生涯学習推進課長、三浦社会教育課長、山田生涯学習企画官、その他関係官

5.議事録

(1)事務局より、あいさつが行われた。

(2)事務局より、各委員及び文部科学省出席者の紹介が行われた。

(3)委員の互選により、委員長に山本委員、委員長代理に菊川委員が選出された。

(4)本特別委員会の運営、公開について、生涯学習分科会運営規則、生涯学習分科会の公開に関する規則と同様の扱いとすることが決定された。

(5)事務局から、配付資料について説明が行われた。

(6)委員により、自由討議が行われた。以下、審議の内容。

【山本委員長】
 運びとしましては、中央教育審議会に諮問があって、分科会におりてきて、分科会ではこの特別委員会を2つ置いて、ここで審議をするということになっておりますので、この特別委員会での議論というのが、やっぱり答申のときの骨格になっていくと思うんですね。ここで議論して茂木分科会長のところに上げていくということになっていくかと思います。資料3-2の大臣の諮問の理由の最後のページに、これらの諮問事項について内容が広範多岐にわたるから、これらを1つ1つ着実に実現していくために、審議会では審議の区切りのついた事項から逐次答申してもらいたいということになっておりますので、これをやはり我々は受けていかなければならないと思います。ですから、具体的なことを次々と検討して、諮問に対するお答えになるようなものをつくっていくということになると思いますが、どこで区切るかどうかというのは、社会の情勢その他ございますし、皆さんのご意見をいただいて、それによって決まってくるといった運びになるかと思います。
 それで、きょうは第1回でございますし、まず先ほどの諮問、局長からの具体的なお話などについて、いろいろご意見を自由にいただく。そうすると、事務局のほうで先ほどのようなまとめをしてくださいますので、それらを手がかりにしながら次々と議論をしていく。そのうちに調査データも入ってくるようですから、議論していくというようなことでいかがかと思っております。

【田中委員】
 資料3-2の諮問理由のところにも、最初に“「知」の大競争時代である”、それから、“変化の中で我が国が豊かで教養のある国家として”というふうなお言葉がございました。それから、前回の分科会の資料5のまとめの中で重要だと私が思うのは、上から4番目の“国力の維持・向上”、それから“今の蓄積の水準で国力の維持・向上が図れるかどうか”ということだと思います。要は、ここへ来て日本という国家がどういう形で学習支援を通して力をつけ、国際社会の中でやっていくかということだと思います。それを考えると、国民の学習ニーズといっても、学習したいこと、国民が一人ひとり望んでいることに対応するということよりは、今、国民がどういう情報環境にあって、知識環境にあって、それを国家としてどういう形で促進させて向上させるかという、もう少し個々の人々がこう望むからこうだというのではなくて、国としてどうやって引っ張るかというぐらいの気持ちが重要ではないかと思います。
 そこで国力と言ったときに、当然のことながら経済力であるとか政治的な面での力、それから科学技術の面での開発力、これが重要なんですが、今、日本が国際社会の中で求められているというか、生きていくために大事なのは、価値形成能力だと思います。国家としての理念、価値、世界観をいかに蓄積して、国際社会に向けて日本はこう生きる、だから世界はこういこうではないかということを、どうやって発信できるかということだと思います。そう考えてみると、今の日本の国民一人ひとりが置かれている情報環境、知識環境を考えると、非常に寂しい思いがします。例えば、我々審議会の主な領域は社会教育の領域だと思いますが、社会教育は自由参加ですから、公民館でいくらいいことをやりながらも、やはり人々がそこへ向かおうと思わない限りだめなわけです。それを考えると、今、私たちがいわゆる消費社会と貨幣経済の中にいる限り、メディアの環境というのは、どうしても資金力のある方々からの発信力が強くなります。例えば新聞の広告であっても雑誌の広告であってもテレビのコマーシャルであっても、やはり当然のことながら企業が発信する情報が中心になるわけです。そうすると、NGOやNPOや市民活動や、あるいは環境問題、福祉問題、そういう社会的な問題についての我々の日常生活する中で吸収する情報はものすごく小さいし、また場当たり的だしということにならざるを得ないわけです。ですから、荒唐無稽かもしれませんが、メディア環境をどういうふうに国民の価値形成能力につなげていくようにしていくか、具体的にいうと、例えばテレビの中のコマーシャルタイムの1割は企業ではなくてNGOやNPOに提供する。もちろん、それはまた、その中で競争社会がありますから、どのNGOが出るかという問題はあるのですが、ただ大きく見ると、貨幣経済以外のところで活動して価値を発信しようとしている方々の発信力をもっと高めて、国民が日本としてどう生きるかということを、もっと日常考えていけるような環境にする必要があるのではないかと思います。

【湯川委員】
 これは質問なんですが、参考資料6「平成17年度文部科学省生涯学習関係予算主要事項」ということで、これは、もうこういう予算が立てられたということですよね。ということですと、参考資料5と、この参考資料6を見ますと、ほとんどのことは言い尽くされていて、例えば私は駒沢公園のすぐそばに住んでいるんですけれども、駒沢公園にもちゃんと立派な子どもたちが遊べるような施設があって、でもそこに行く子どもはいなくて、すぐそばの夜11時ぐらいまで街灯がついているところで毎晩すごくたくさんの子どもたちが集まってサッカーをしているとか、そういう現実を見ておりまして、ほんとうに基本的な部分、やる気、根気、元気、こういうものがどうしたら育つんだろうかという基本的な部分というのが、まだまだいろいろ欠けているような気がしております。
 したがって、何が推進できていないのか、何を今どうしたらいいのか、ほんとうに膨大な範囲のことですから、具体的にテーマを絞り込んで、議論していけたらいいと望んでおります。
 (事務局より、参考資料6について説明。)

【山本委員長】
 補足的に申しますと、子どもの居場所づくりは、16年から18年の緊急3カ年計画で、3年で切れてしまうのです。文科省も非常に苦労されているんですけれども、国のほうでそうなっています。そうすると、現場の市町村へ行くと、3年で切れてしまうのではという話があるわけですね。

【佐藤委員】
 2つの観点から申し上げたいのですが、1つは生涯学習の割と中高年の部分なんですが、どうもインプットは皆さんされるけれども、アウトプットの仕組みというのが非常にないんじゃないか。それが今の高齢者はまだしも、団塊の世代がそういう人口のところに入っていったときに、それだけでとても満足できないと思います。それをまた企業に再雇用という形で生かす人材を育てるのか、それとももっとコミュニティーの中で社会企業家のような小さな仕組みをつくっていくという、新しい産業の場というか、仕事の場というのをいかにつくっていくかというような観点を持って教育をしていかないと意味がないのではないかと思います。非常にニーズも多様化していて、これはシニアのそういう調査会社が、上の高齢者と団塊の世代の高齢者は違うということを言っていますので、そのあたりをきっちり確認していかないといけないのではないかと思います。
 それからもう1つは、若い世代の話なんですが、若い人たちはほんとうに企業に勤めたがっているかということも1つの視点としてあるんじゃないかと思います。私どもが調べているのは働いている人、フリーターとかもヒアリングをある程度やっておりますと、まず言うのはサラリーマンになりたくないというのが一番に出てくる言葉なんですね。どちらかといえば好きなことを仕事にしたい。好きなことが見つかっている人は頑張ってやってて、それが職業としてうまく回っていないのでフリーターになるような人もたくさんいらっしゃる。一方で、この前大学生に、300人ぐらいに聞いたら、好きなことが見つからないので好きなことを探しているんですね。それは好きなことを仕事にしないといけないと思っているので、好きなことを探している。職業に対しても、私たちの世代でしたら働くのが当たり前で、会社のステータスとかそういうもので満足できたわけですけれども、そういうものが彼らの成長実感に結びついていないということもわかってきておりますので、従来型の職業意識、我々が当然だと思っていることをまず疑ってみる。ニートの調査をされるということですけれども、働いている人の中でもそういう問題をいっぱい抱えている人がいますので、かなり根本的なところから考え直さないといけない。それぞれ、今までいっぱい施策がありますので、これは全部新たに手を打つということではなくて、サブシステムですとか、それから形はできてるけど心の部分をどうするかみたいなところで、かなりの部分は解決され、自由度を上げていくとか、そういうところがあるんじゃないかと。なので、一からまた全部やり直すという形ではない何か成功事例のようなものをうまく集めてくれば参考になることがたくさんあるのではないかと思います。

【小杉委員】
 私、これまでの議論を拝見しまして、確かにたくさんのことが、たくさんの視点から言い尽くされている部分はあるなと思います。ただ、やっぱり現在、環境が変わってきて、新たにもう一度議論する必要があるのではないか。その1つが、例えば自立挑戦のような形で、省庁挙げてという、機運が出てきたことです。これまでの文科省の領域を離れて、もっと広い視野から物が言いやすくなったんじゃないかという環境が1つ。
 それから環境としてはもう1つ、特に若者の問題では、これまでの、普通のルートがなくなってしまったといいますか、大きく変わった、これまで当然だと思っていたのが当然ではなくなったという時代。若者の意識のほうもそうですけれども、実際に就職というような環境を考えますと、やはり今現在ですと、若い人で学校卒業後すぐ就職する道を歩んでいる人というのは人口の中の6割にすぎないんですよね。そういう事態もあって、残りの4割は、一たんはフリーターなりニートなり、違う形で社会に出なきゃならないという時代になってるんですよね。そういう時代環境の変化を考えると、これまでやってきたことは非常に重要ですけれども、それにプラスアルファ環境が変わったということで新しい視点が必要だろうと思います。
 そこで、どんな視点が特に重要かといいますと、やっぱり若い人のところが特に重要だと思いますし、それは今までの6割が通っていた道ではない新しい道を改めて示さなければならない時代、これまでは学校卒業してすぐ就職するという、そういうルートがメインで、その中でみんな話もある程度おさまっていたんですが、それ以外のルートというのが非常に大きくなってきた。どうやってその間に能力をつけてもらって、自分自身のキャリアを開発していけるような力をつけるかというのが大事になってきていると思います。そこで、改めて生涯教育が非常に重要な時代になっているのではないでしょうか。
 これまでの生涯教育の話でいきますと、最初に田中先生がおっしゃったように、消費者側の個人のニーズということにかなりウエートを置いた表現になっていますが、今回の調査の中でも消費者側のニーズではなくて、産業界の受容側のニーズと消費者側のニーズがぶれているんじゃないかという調査項目ありましたけれども、あの視点は非常に重要で、やはり国力というような表現されましたが、今必要な側の産業界あるいは国という大きな政策でもいいし、そちら側で必要なニーズというものと若者側のニーズというのはかなりぶれているところがあって、これをきちんと整理していかなければならないのではないか。やっぱり国がお金をかけて政策するというのは、国そのものの存続とか発展を考えての政策なので、その視点が必要で、その両方のニーズの違いというのをしっかり焦点を定めて施策をしなきゃならないと思います。
 そこでまたもう1つ大事になってくるのが、そういう産業界のニーズ調査は、経済産業省がずっとやってるんですよね。そういうほかの省庁のデータを何でもっと活用しないのか、それをもっともっと活用しましょうよ。あるいは他の省庁、例えば厚生労働省がやっている職業訓練政策に相乗りでやっていかなければならない部分がたくさんあるのではないか。今、自立挑戦というのが出てきた中でできるのはそういうことだと思うので、他の省庁のやってきたものと持っている資源に対して、もっともっと文部科学省側からも提言していって、一緒にやっていくという機運をつくっていくことで、また1つ新しい展開が出るんじゃないかなと思います。

【寺島委員】
 1つはいわゆる生涯学習の基盤インフラというのを10年前、20年前、30年前、40年前と比べると、やろうと思えば、いかようにも学習できるようなインフラが充実してきているということは間違いないと思います。放送大学だろうがインターネットだろうがeラーニングだろうが、本人が強い意思を持ってやろうとすれば活用できるチャンスは大いに広がった。ところが、問題はなぜ学習しないのかということです。NHKが「何となくフリーター」というドキュメンタリーをやって、その中身をじっと見ると、僕も教壇に立って若い人と向き合ってると、若い人は若い人なりに、世の中が自分たちを迎え撃ってる社会環境がどうなっているのか、直観してるというか、要するにニート、フリーターの人たちの本音というのは、一言で言うと、親父のように生きたくないということで、要するにそれは会社人間で生きてきたおやじがリストラされて、ふらふらしてるのを見ていると、自分は自分の好きなこと、自分の納得のいくようなものを見つけたいと思っている、けれども空回りしてるというか、そういう状況にあるんだろうと思います。
 そういうことで、じゃ、迎え撃つ社会の側の話なんですけれども、この10年間で若い人たちが自分が納得できるようなジョブが、IT革命のパラドックスによって、平準化されてしまっている。要するに、だれがやっても同じという雇用の中身に変えていっている。余人をもってかえがたい人材を育てていったならばコストがかかるから、バーコードをなぞるような誰がやっても平準化できる仕事にパターン化していっているというのがIT革命なんですね。となると、仕事を通じて人格を磨くだとか、仕事を通じて向上するなんてことはないということを、若い人はわかっているわけです。だから、縦社会の人間関係に拘束されるよりも、時間切り売りして、とりあえずは自由なことをやっていて、やがて自分のほんとうにやりたいと思うのを見つけたいという気持ちに近づいていくということは当然なんですね。企業の側もアウトソーシングという名前のもとに、この十数年間で正規の雇用者というものを極端に減らして、正社員を減らして、とにかくアルバイト、パート、派遣、その他あらゆるものでコストを下げてマネジメントをする。しかもITがそれを可能にしているという環境がずっと社会構造として進んでいるから、当然のこととして、こういうような問題が出てきている。そういう社会環境認識を前提にして、自分が社会の一員として参画できるという手ごたえのあるようなルートをきちっと明示して見せる必要があるのではないでしょうか。
 そういう中で、今、社会にどういう資格があるのか、我々の生涯学習分科会として確認したいと思います。というのは、それは文化の世界のワインコーディネーターだ、フラワーアレンジメントから、それからビジネスの世界、我々の周りでもプロジェクトマネジメントスペシャリストだとかITコーディネーターだとか、そういう社会に認知された資格を取ろうと、けなげにものすごい頑張って夜の学校まで行って勉強しているサラリーマンがいっぱいいるわけです。要するに目標をきちっと与えるということが向上心にとっては非常に必要だから、それだけではないとは思っていますけれども、例えばこういう生涯学習の分科会で具体的に何か一歩でも踏み出すとすれば、例えばそういう資格の制度設計に力を与えて、そういうフリーターだろうがニートの人だろうが、自分の好きなことの延長線上に取れる資格だとか、社会的に認知してもらえる仕組みとかというものを提供してあげるということ等、国ができることはもっといっぱいあると思います。とりあえず、今日発言しておきたいのは、資格の制度設計を考える上で、世の中に資格というものがどれほどあるのか、是非そういう資料を努力して集めていただきたいなと思います。

【加藤委員】
 2点申し上げたいと思います。
 1つは、この間(生涯学習分科会で)も、これだけのことをやってきて、なぜできないのかという絞り込みの部分で、私は高齢化と二極化の問題を挙げさせてもらったんですけれども、これから焦点を絞らなければいけないと思いますのは、いやしくも国が実施するということですから、ナショナルミニマム的なものといいますか、今、国として何となく閉塞感があるのは、この二極化がどんどん拡大をしているのではないか。意識や社会参加の立ちおくれたような人が増えていってしまっているという、ニートの問題もそうですが、それをどういうふうにしていくのかというところに、やっぱり相当絞り込んで集中的に手を打っていく必要がある。そういうところに絞って調査をしていただくのはいいんですけれども。
 そこで、私たちも労働組合という立場上、いろんな人たちと話もしますし、いろんな場面でそういうことを考えるんですけれども、考えれば考えるほど、今も自分探しとか、いろいろ意見ございましたけれども、私はそんなに彼らが求めているものというのは高尚なものではなく、もっと単純な参画感や喜びや、自分への確信とか、そういうものを得られる場があれば、まずは社会に出てくるという、引き込みから出てくるという、そういうことなのではないか。これは例えば一例ですが、私たちのところも今、大変人が足りない状況の会社もございまして、フリーター的な人を一気に採用するようなときに、いろんな方が入ってきます。ところが、1週間、2週間、大変厳しい現場の中でやっていくうちに、全然目の色が変わってきます。要は汗を流して仕事をして、それが大変充実感があるということが分かります。それによって、ある意味、人生観まで変わってくるというような事態があるわけです。ですから、そういう視点で、私は決してお金や何かをかける必要はなくて、そういうものを、それこそ企業も国も、いろんな機関などが挙げて何とかそこに引っぱり込んでいくというようなことが必要なんだろうなと。そういう視点を、やっぱりもっと知恵を出し合ったらどうかと思います。それが1つ。
 それからもう1つは、これは先回の生涯学習分科会でも少し出ましたが、国民一人ひとりというときの一人ひとりは誰かというところで、私はやはり、これだけ豊かな国になった以上は、障害者の方々の視点を絶対に入れるべきだと思います。今回、障害者自立支援法案が、今、参議院段階で成立しようとしていますが、残念ながら、その枠組みはかなり障害者の方々にとっては厳しいものなんですね。応益負担で、お金を出さないとサポートが受けられないようなことになっていきます。ですから、厚労省の枠組みではそうかもしれませんけれども、企業の側はそういう方が企業や施設に通ってくるのに何もお金を払わなくても、そこできちんと残った能力を発揮して付加価値を埋める人はいっぱいいるわけですから、そういう視点で、ぜひ社会全体が考える。昨今、バリアフリー法も通りましたし、やはり国民一人ひとりという以上は、そういう方々も望めば、あるいは場合によっては望まなくても社会で参加できるような視点を、是非忘れないでやっていきたいと思います。

【糸賀委員】
 1つは今、これまでの生涯学習政策について、果たしてこれがどれだけの成果をもたらしているのかという評価がどうなっているんだろうかということです。私も文部科学省のホームページを拝見しましたけれども、いわゆる自己評価という形で、行政評価の中の一環として評価をしている。例えばこういう講座に参加した人の人数がこれだけ増えている、あるいはこういう行事に参加した人の人数がこれだけ増えているということで、おおむね順調に推移と書いてありますが、これがほんとうに生涯学習の成果と言えるのかどうか。今や大学も自己点検評価ではだめで、外部評価や第三者評価、さらには認証評価と言われている時代です。これも私、生涯学習の政策をこれまで10年以上やってきて、これが果たして外部や第三者から見て、どれだけの成果を上げているのかという、評価した上でどこに問題点があるのかをえぐり出していくべきだろうと思います。そういう意味では、私は単なるアウトプット評価ではなく、アウトカム評価が必要です。
 例えば、ニート対策について言えば、どれだけベンチャービジネスで成功した人がいるのか。単に公民館でやる、あるいは民間のそういう社会教育関係の団体でやる、それに何人参加したではなくて、これは明らかに、どれだけそれで創業に成功したのかというふうなことで見ていく。そのためには、単年度ごとにこれを見ていたのではだめで、どうしても3年とか5年といった中長期的な視点で評価をしていくことが必要だろうと思います。
 それからもう1点は、参考資料4の最後の国の取り組みの経緯というところに、平成4年から昨年の平成16年3月までの答申が出てきているわけですよね。ところが、一番最後、平成16年3月は、これは答申ではなくて、審議経過の報告ということになっております。これは、文部科学大臣からの諮問がなかったということもありまして、答申ではないんだと思いますが、結局これは、まだ決着がついていないような印象があります。この報告でほとんど、論点は尽くされているわけですね。私も、この前の審議経過の報告をまとめる際には、いろいろと意見も申し上げましたが、これと今回の第3期はどういうふうにつながるのか。せっかくあれだけの議論をし、例えば個人の需要と社会の要請のバランスを考えるべきだとか、あるいは人間的な価値の実現の一方で、実利的な職業の現場で役に立つような知識と、バランスをどう図っていくべきなのかというふうな提言をしているわけです。ここらあたり、私はこれは第3期になっても当然必要な視点だろうと思います。その辺がどういうふうにそれを踏まえて、第3期の委員会、議論を重ねていくのか、ちょっと気がかりなところではあります。ちゃんと第2期の議論を踏まえて、当然、新しい議論があっていいわけなんですが、それにしても前にやった議論もそれなりに踏まえていったほうが効率的な議論ができるだろうと思います。
 最後に質問なんですが、特別委員会が2つ設けられましたね。大臣諮問のある一部分に対して、きょうの特別委員会が答申をまとめていくとすると、生涯学習分科会のほうは、その間一切開かれないというふうに理解してよろしいんでしょうか。逆の言い方をしますと、大臣諮問以外に生涯学習分科会で議論するようなことはないんだと。つまり、専らここは大臣諮問を受けた答申をまとめる作業であって、先週ありましたような分科会は当面開催されないという理解でよろしいんでしょうか。

【山本委員長】
 今までの中教審の審議の仕方をずっと振り返ってみますと、こちらで議論して、ある程度少し議論が進むと分科会や何かへ持っていって幅広くいろいろご意見をいただく、また持ち帰るというようなことが多いので、行ったり来たりのやりとりがかなり行われるだろうと思います。ですから、それ以外の問題が出てくれば、分科会のほうでもまた議論して、いろいろ、場合によってはこちらにも投げかけがあるかもしれませんけど、割合と有機的にやっているのではないか。先ほど、局長からお話がございましたけど、もう1つの特別委員会と一緒にというようなことがあってもいいじゃないかというのがございますので、その辺は様子を見ながらでうまくやっていけるかなとは思うんですが、事務局どうですか。

【山田生涯学習企画官】
 今、お話ありましたとおり、当面は、基本的にはこの特別委員会中心でご審議いただきながら、適宜また分科会でもご審議いただくという形で進めていただければと思います。

【江口委員】
 きょうの皆様方の意見を拝聴してますと、かなり、やっぱり生涯学習に関する審議のあり方というものが曲がり角に来ているかなというふうな気が致します。私も長らく参加させていただいておりますが、今回、大臣からこういう諮問を受けたということは、今まで生涯学習審議会でやっていた1つの政策のつくり方のスタンスというのは、どちらかというと国民一人ひとりの潜在、顕在の生涯学習ニーズに対して、どういうふうにそれに対応していくかという、ある意味、顧客満足型の生涯学習政策の展開だったと思うのです。それについては、あるレベルまでもう社会環境は整ってきている。むしろ公的資金を使ってこれから何をすべきなのか、国として、日本として何が課題なのか、その課題解決のために生涯学習という、この方策、予算を活用して、どういうふうに我々は向かっていくのか、その目標のつくり方だと思います。ですから、結局やった後のアウトプットの評価をどうするかという話で、今回は明確に目標の設定、それに対しての戦略とアクションプログラムと、そしてアウトプット、ゴール評価をどうするのかを決めて、問題を3つなら3つに絞って、ウエートづけもして決めるのがよいと思います。
 私は、それがニートの問題なのかどうなのかというのは、若干、疑問があるんですね。やはりニートの問題は、先ほど小杉委員が言ったように、自立挑戦というようなことで、内閣府も全体で各省庁で今取り組んでおりますし、ここでニートの問題を掘り下げてやるのがいいのかどうかという感じがしております。
 それから、先ほど、6月から生涯学習の諮問に関連した実態調査のスキームが、やっぱり従来の顧客満足型追求の生涯学習政策の調査設計になっているんですね。そういう意味では、これはこれでいいと思うんですけれども、もう少しきちっと政策目標を決めたら、それに対してのやはり何らかの形での調査も行ったほうがいいと思います。

【山本委員長】
 糸賀委員の、先ほどのお話の方は、湯川委員もおっしゃってまして、小杉委員も新しい観点でと言ってましたので、審議の報告のところは事務局で整理して出していただいて、その上に乗っかって議論ということはできるんじゃないかと思いますが。

【糸賀委員】
 その点はわかりました。私、生涯学習分科会とこの特別委員会の重なりがすごく気になるわけです。単純に申し上げて、きょうの事務局の説明はほとんど先週、一部の方も聞いていて、その割にはかなり重複が多いということが気になりましたので、同時並行で進めるんだとしたら、もう少し切り分けたほうがいいのではないかと思いました。でも、生涯学習分科会のほうは当面開かれず、こちらの特別委員会で答申案をまとめるということであれば、それはそれで了解いたしました。

【工藤委員】
 工藤と申します。基本的には若年者の就業を支援しているんですけど、実は若い世代、多分NPOを代表して話ができればと思います。
 生涯学習でいろんな講座がありますが、実際そういう若い人たちを連れて行くと、評価が高いのです。じゃあ、行けばそんなに問題はないと思うのですが、一番の問題は、単純にコンテンツがそろっていながらも、そこにどうして行かないのか、誰が行かせて、どう行かせて、3回講座があれば、どうやって3回講座をちゃんと継続して行かせた上で、ここで学んだものを外で出すのかというのが、すごく大事なんじゃないかと思いました。いわゆるアウトリーチの問題ですが、どれほどすばらしいものを用意しても、来てほしいターゲットが来なければ宝の持ちぐされになってしまいますので、一番の問題はある程度整備されたインフラにターゲットをどうやって来させるか、自発的に来る人がたくさんいるのであれば、おそらく生涯教育というのはもっともっと広がっていると思うのですが、今、自由参加で自由にだれでも来ていいところに行く人は、あまりいないと思います。そのときに、各世代に応じた連れてくる方法、アウトリーチがあると思うのです。
 例えば、インターネット、携帯電話、ポスターなどありますが、もう既存のPR方法では多分来ないから、なかなか人が集まらない現状が起こっていて、新しいPR方法は何かということを考えなければいけない。これまでは直接当人に行き渡るようなPR方法が多かったと思いますが、間接的なPRというのはすごく重要で、あまりそういうところに行かない若い人たちにPRするときは、大体、親や同世代を使うというのが今の流れになっています。フリーターでもニートでも、自分からジョブカフェとか、そういう施策に行けばいいのですが、行かない人が多い。何で行かないかというと、1つは自分から別に情報をとろうと思っていない。もう1つは、情報をとれない状況にある。ニートの9割は携帯電話を持っていなし、パソコンもあまりやらない。友達がいないから携帯を持つが必要ない。一番の問題は、彼らがどこに住んでいるかを誰も知らないことです。社会的所属がありませんから、86万人の住所がわかる人は多分いないと思います。でも、保護者が手を挙げれば、彼らがどこにいるかだけはわかる。あまり若年ホームレスというのは今出ていませんから、おそらく家にパラサイトしている。そういう意味で、保護者やお友達を使って情報提供するという新しいPR方法を考えた上でアウトリーチすることによって、今ある生涯学習のコンテンツがどの層に有効であったり有効でなかったりするのがわかるのではないかと思いました。

【渡邉委員】
 佐野美術館の渡邉と申します。
 私のところは地方の、田舎の美術館ですが、この中で文科省でしております子どもの居場所づくりに去年から参加させていただいております。文科省から考えるレベルと地域のレベルとの格差というものを、ものすごく実感をしておりながら、しかし、できるだけ地域の中で努めているわけですけれども、これはこれなりに非常に意味あるもので、できたら3年ではなくて続けてほしいと思うのですが、その他に私どもは実際にはボランティア活動とか、または社会教育の文化センター的な要素を持たせたり、いろいろなことをしております。それからまた、この中であります若者のキャリア教育実践プロジェクトを実際に中学校の学生を受け入れたりというようなこと、社会と美術館とのできるだけ密接的な実際活動はしております。
 そういういろいろな活動の中で思いますのに、社会と子どもがほんとうに接点が少ないんですね。学校の先生が、また社会との接点が少ない。ですから、ものすごく狭い世界の中に現在置かれているのが実情ではないかと思います。それで、このキャリア教育実践の5日間は、私どもでは1日とか2日ぐらいです。そうすると、企業は邪魔なんですね。私は、この職業教育を、例えば中学生ぐらいからもっと増やして、学校教育の中に組み入れて、例えば半年とか1年とか、その間を実際に社会とぶつかり合う。だから企業のほうも本気で仕事をさせる、子どもも実際に仕事というものがどういうものかというのを体験できる。そういうことを中学校、高校、あるいは大学まででもいいんですが、その期間の教育課程の中に社会に実践してボランティアないし何なりにして、社会の中で仕事をするということの体験を制度の中で組み入れるということになると、もう少し職業意識というものが出てくるのではないかという気がします。家庭の中で仕事をすることも子どもはないですし、ほんとうに人生、仕事がない、人のために何かを自分ができるという自信が持てない。自分が生きている命の重さというものもわからない。やはり人のために尽くして、自分が生きているという満足感が得られる。今、子どもに例えば、目的は何かというと、自分が幸せになることしか目的がないんですね。人のために尽くして自分が生きている充実感というものが味わえるということを全く学校教育で受けていない、そういうのを実感しています。そうすると、どんないいメニューを出しても食べようとする意欲もない、それならば、むしろ学校制度の中で仕事というものをもっと社会で結びつけるような制度を文科省の中で考えていただけないだろうかと思います。

【江上委員】
 生涯学習というアプローチで、自分たちが住んでいるまちにはどんな仕事が必要で、どんな職業が必要で、どういう人と人とのかかわりが重要で、どういう場所があればいいのか。自分たちがまちを安心にしていく、きれいにしていく、気持ちよく育つ、そのためにはどういうことをしなければならないのか考えた時に、いろいろ教育のメニュー、プログラムが出てくると思います。私は、まちづくりは国交省のテーマだということではなくて、国交省自体も、もう今やソフトが大事、でも、そのソフトの制作に窮している時代で、むしろ私は、この教育というものの1つの生涯学習の目的は、まちをよくしていく、それがやっぱり国をよくしていくというところにつながっていくと思います。ですから、まちづくり掛ける生涯学習、生涯学習掛けるまちづくりという、そういう1つの課題設定というのもひとつ検討していただきたいなと思います。そこで、そういった小学生の問題もあれば、あるいは、やっぱり大学を地域やまちづくりの知を広げていく、知のコーディネーター、あるいは、それがまた職業能力の開発のコーディネーターにもなるというようなことで、大学を拠点にしていく。中教審には大学分科会があるんですけれども、大学分科会のほうは、どちらかというと、これからの知識基盤社会に向けて、大学における卓越性の追求ということで、国際競争力のある研究開発型教育の追求ということに力点が置かれて議論が進むのではないかと思っております。私はこれから大衆化に対応した大学の拡大政策というようなことで言えば、やっぱり大学が1つの地域の生涯学習の大きなバックボーンになると、非常に中立的、公益的、そして需要性のあるバックボーンの柱になっていく。その大学を地域の中での生涯学習の往来にどれだけ障壁を少なくしていき、柔軟な仕組みにしていくかというのも1つの大黒柱だと思っておりますので、それを少し課題のうちに取り入れていただけたらありがたいと思います。

【渥美委員】
 地域において、人と人とが豊かにかかわり合うということは原点だと思います。文部省の時に、大学生のボランティア活動を支援するあり方を議論した時、最後まで教職員みずからボランティア活動に携わるという文言が出てこなかった。高校生のボランティア活動を支援していくというときに、教職員がやっぱりボランティア活動に携わる必要がある。相変わらず教育行政というのは、その人事権と財政力というのは、学校教育に偏っているんじゃないかと。今の日本の社会教育なり生涯学習を推進する担当部局というのは元気があるのかということは疑問なんですよね。何か、左遷されたとは言わないけれども、そういう意識を持ってやってるんじゃないかというところがありそうな気がします。ですから、いろんな組織を形成する人たちが生活者として地域社会で豊かにかかわっているかということを、いろんな場面で問う、そういうシステムづくりというのが土台になければ進展していかないものだと思っています。そういうことで、いろんな場面で、皆さん、地域社会で役割意識とか所属意識とか持つような活動をしていくというところから議論していくことが大事だと思います。

─了─

お問合せ先

生涯学習政策局政策課