教育振興基本計画部会(第8期~)(関係団体ヒアリング(第2回)) 議事録

1.日時

平成29年11月27日(月曜日) 14時00分~15時30分

2.場所

文部科学省 「3F2特別会議室」(東館3階)

3.議題

  1. 関係団体ヒアリング

4.出席者

委員

(教育振興基本計画部会委員)
 河田副部会長,石田委員,金子委員,川端委員,菊川委員,白井委員,戸ヶ﨑委員,丸山委員,山内委員
(中央教育審議会総会委員)
 寺本委員

文部科学省

 小松文部科学審議官,常盤生涯学習政策局長,下間大臣官房審議官,塩見文部科学戦略官,矢野初等中等教育企画課長,中村特別支援教育課長,有松国立教育政策研究所長,氷見谷生涯学習政策局政策課長,内田生涯学習政策局政策課教育改革推進室長,寺坂生涯学習政策局政策課教育改革推進室長補佐,他

5.議事録

【河田副部会長】
 それでは,定刻より少し早いのですが,皆様おそろいということですので始めさせていただきたいと思います。ただいまから,第3期教育振興基本計画の策定に向けた第2回のヒアリングを開催させていただきます。
 本日,北山部会長が欠席ということですので,副部会長の私が代わって務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 本日は,お忙しいところをお集まりいただきありがとうございます。今回のヒアリングにつきまして,関係団体の方々から意見を伺えるということで,大変貴重な機会であると思いますので,本部会に属しておられない,中央教育審議会の総会委員でもあります寺本先生にも来ていただいております。本部会の委員としては,9名の方が出席しております。
 この第3期の教育振興基本計画の策定につきましては,去る9月19日に第17回教育振興基本計画部会において「第3期教育振興基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過について」と題する取りまとめをさせていただきました。そして,9月28日の第113回の総会で報告されました。
 その際の資料が,本日配付されております資料3‐1から3‐3となります。また,10月17日には,答申をまとめる際に当たって参考にすべく,13の団体からヒアリングをさせていただきました。本日は前回に引き続いて,2団体ずつで3回に分けて6団体の方々から御意見を伺うということにしたいと思います。
 それでは,本日の議事である関係団体ヒアリングでありますが,本日お越しいただきました皆様方,本当にお忙しい中ありがとうございます。
 本日のタイムスケジュールについて,まず事務局の内田室長の方から御説明いただいて,資料の確認もしていただきたいと思います。

【内田教育改革推進室長】
 それでは,まず資料の1を御覧ください。こちらに本日の日程を記載してございますが,1から6までの合計6団体から,それぞれ8分程度御意見を頂きます。二つの団体を1グループとして,それぞれ8分程度御意見を頂いた後に,10分程度意見交換をしていただきます。合計三つのグループに分けてヒアリングを行っていただく予定としております。終了は15時25分前後を予定してございます。
 この資料1の下半分に,実施済みのヒアリング団体,そして,今後実施予定のヒアリング団体を掲載してございます。
 次に配付資料でございますが,資料はお手元に資料1,2,そして3‐1から3‐3,4,さらに参考資料となっております。また,端末に関係資料を入れてございます。資料などに不備がございましたら,お知らせいただければと思います。

【河田副部会長】
 それでは,ヒアリングを始めたいと思います。
 大変恐縮ですが,御説明は1団体当たりおおむね8分でお願いしたいと思います。終了1分前と終了時間に,事務局から,紙を差し入れさせていただきますので,御了承いただきたいと思います。
 それではまず,全国高等学校長協会から,上村肇常務理事,よろしくお願いいたします。

【上村氏】
 失礼いたします。全国高等学校長協会の常務理事をしております上村と申します。各都道府県の協会長が常務理事になっております。私は東京都の公立高等学校長協会の会長でございます。
 それでは,2月と10月の2回にわたりまして意見書を出させていただきました。重複している意見がありますので,10月にお出しした方の意見書をもとに,2月のもので10月と重ならないものを申し上げながらお話をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 まず,2月の方で書いてありまして10月に記載がない部分で重要なこととしましては,冒頭にありました自己肯定感を高めていくという取組の強化が必要であるということを思っております。これは高校生の段階になりましても,進路決定をするときに,自分に自信がないとうまく進路決定ができないというようなこともありまして,各学校段階においてこれは大事であろうということで,最初に申し上げたいと思っております。
 それでは,10月の方の中身についてでございます。まず1番で申し上げましたのが,数値的な目標について,短期的なものと,それから,長い時間がかかるものがあるということを申し上げております。決してこれは評価から逃げようということではないのですが,例えば企業でも,短期的な業績だけ狙っていきますと,長い視野でやらなければいけないものがだんだんとボディブローのように効いてきてうまくいかないというようなことが聞かれております。教育においても,即効性のあるものだけやっていきますと,時間がかかって熟成させなければいけないものについてうまくいかないのではないかということで,エビデンスをきちんとやっていくということは重要なのですが,そういうことを決して忘れないで取り組んでいただきたいということでございます。
 次に,2番の主体的・対話的で深い学びの視点からのという,アクティブ・ラーニングのことでございます。現在,高等学校では,これをやるのは非常に大事だということで教員たちがいろいろ取り組んでおります。ただ,人類の長年の様々な取組の結果得られました知見を,教室でいきなりさあ考えてみようと思って出るということではありません。これについては,どういう授業,何を材料として提供して,何を結論で得たいかということがはっきり分かって,そこをうまく構造化しないといけないのですが,ともすると今は,アクティブ・ラーニング系の話合い学習をいっぱいやると盛り上がっていいというような雰囲気があります。
 一番危惧しているところは,話合いでありますと,大事なことを発見することは非常に確かで,自分の力になるのですが,授業の進度,時間的な効率からいきますと,かなり効率が悪いということがございます。したがって,うまくそこのバランスをとっていくということが非常に重要ではないかと思っております。ちなみに大学でも,講義という時間と演習,あるいは実習という時間は明らかに区切られておりまして,全部を演習にするというようなことは多分やっていないと思いますので,同じような枠組みで考えていってもいいのではないかと思っております。
 それから,3番のICTを使った教育でございます。高等学校では,情報という教科が必修教科で入っております。ただ,機械のスペックを5年更新でやっておりますので,現在最新型であっても,5年たちますとかなり陳腐なものになってしまい,プリンターを含めまして,様々更新をしていかなければなりません。ですから,100年先を見通した投資といっても,5年たったら買い換えなければいけないということで,正にここは財源の問題が出てくるのではないかと思っております。しかも最新型でないといけないというのは,これは工業高校などの機械が最新型でないと企業で通用しないのと同じようなもので,互換性など様々なことがございますので,財源と併せてICTの推進にはお金のことを考えなければいけないということがございます。
 それから,4番目の基盤整備でございます。これは教員定数の拡大や,1クラスの生徒定数の問題でございます。私は,現在は旧制中学からの高校に勤めておりますが,3年前まではエンカレッジスクールという,中学校で学習がうまくいかなかった子供たちが入ってくる高校の校長を務めておりました。そこではおかげさまでかなり教員定数を増やしていただきまして,習熟度などをやっているのですが,ここにも書いてあるのですが,どれほど優秀な先生であっても,40人を一遍に指導するというのは,指導方法を工夫してもなかなか難しゅうございます。これが例えば,15人ぐらいのグループであれば,少ない人数に対して指導できるという,正に人間の数の問題になってくるわけなのですが,そういったことを是非お考えいただきたいということでございます。
 その下にあります,子供の貧困などの問題ですが,これもエンカレッジスクールでは,かなり所得の厳しい家庭のお子さんがいまして,日本の社会というのは恐らく明治以来,所得が多少少なくてもいろいろなこと,あるいは本人の頑張りによって社会的な流動性が維持されてきて,社会の士気が奮ってきたと思っております。そういった面からも,ここは是非施策でよろしくお願いしたいということです。ただ,学習塾に行かせれば済むかというとそれだけではなくて,ハビトゥスといいますか,生活の感覚や,生活の価値観など,そういったところの問題も絡んでまいりますので,これは深い考察をした上で,是非有効な施策をやっていただければと思っております。
 それから,5番でございますが,高等教育。私の現在勤めている学校も,ほとんど全員が上級学校に進学をしております。アドミッション・カリキュラム・ディプロマの3つのポリシーをはっきりさせていただくというのは,生徒が進路選択をするという意味で,非常に大事なことであると思います。是非こういったことを施策全体として取り組んでいただければ有り難いと思っております。
 一つは所得の格差の問題がありましたが,全国高等学校長協会等で集まりますと,大都市圏の高校以外は皆統廃合の心配をしております。人口が減ってしまい,普通科高校と,例えば水産高校を一緒にしてしまうなど,そういうことがございます。そうなると,様々な施策を有効にするには,そういう地域の現状を踏まえていただいて,有効に予算を活用していただくということで取り組んでいただければと思っております。
 私からは以上でございます。ありがとうございました。

【河田副部会長】
 ありがとうございました。
 それでは,続きまして,日本私立小学校連合会からお話を頂きたいと思います。小泉清裕会長,どうぞよろしくお願い申し上げます。

【小泉氏】
 日本私立小学校連合会会長の小泉と申します。本日は,こういう機会を頂きましたことを心から感謝申し上げます。
 資料を御用意しておりませんので,4点について感じたこと,それから改善をしていただけるならば有り難いことについてお話をさせていただきます。
 まず1点目ですが,この審議経過報告は,最終的に誰に向けたものなのかということが,これを読んでいて,私には明確に分かりませんでした。どういうことかといいますと,国全体としての目標や成果に係る指標,国自身が取り組む施策を明らかにするものである。要するに,これは誰に明らかにするのかということ。もし国民にとって明らかにするということであるならば,一般国民が読んでなじみのある言葉で書く必要があるのではないかと思います。
 特にロジックモデルや,コンピテンシー,リカレント教育,セーフティネット,キャリアパス,あるいはユニバーサルアクセスなどというように,片仮名文字が非常に多いということ。要するに,片仮名文字であるということは,日本の文化の中に根付いていない新しく入ってきた言葉とするならば,それにはきちんとした注が必要である。何を求めるのかということが必要であるのではないかと思っております。
 また,一般的に最近は,やはり片仮名文字が非常に多く使われている状況になっています。かつて,平成元年だったと思いますが,告示された中学校の外国語教育の中に,初めて片仮名文字のコミュニケーションという言葉が入りました。もう30年も前の状況ですが,このコミュニケーションというものをどう捉えるかは,受け取り側によって大きな違いがある。言葉を交わすことをコミュニケーションとするのか,あるいはもっと違うものをコミュニケーションとするのかということの限定が,昨今の審議のまとめの状況の中には,これを合意形成であるということが提示されている。ただ,この30年間,それは提示されていなかった状況があるわけです。ですから,その間は,個々の理解によって違う範ちゅうで物を考えているということが起こってきているような気がします。ですから,できる限りこういう説明が必要である言葉には説明を入れること。あるいは,イノベーションや,ピーク,ニーズなどという言葉が,もし日本語に換えられるものであるならば,片仮名文字をできるだけ排除して,日本語できちんと誰もが共通する状況の言葉にしていく必要があるのではないかということが1点目でございます。
 2点目は,4ページに,教育の普遍的な使命という,教育の目的,人格の形成,それから平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成ということが書かれています。これは新しい教育基本法の状況の中でありますが,1から5番の項目は非常に優れた内容でありますし,その順序も非常に重要であると感じています。しかし,3の部分につきまして,2030年以降の社会を展望した教育政策の重点事項,それから4のところの基本的な方針において感じられることが,全体として経済理論に基づく視点からの内容ではないかというように感じてしまいます。もちろんOECDについてもそうですし,先ほども少しお話が出ました,PDCAのサイクルのことにつきましても,経済的な範ちゅうであればいいが,これは教育哲学の中にもっと踏み込んで,教育という原点をもう少し考えて,経済の進展と,それから教育をある程度離した状態で考えていく部分も必要ではないかと感じています。
 グローバル化する社会においては,多様性が非常に重要である。このグローバルという言葉についても,人それぞれが違った解釈をしている可能性があるように思いますし,全体として,教育というものをもう一度経済とは切り離した状態で,何が必要であるのかということを考えていく必要があるのではないかと思っています。
 3番目ですが,教育への資金の注入。これは12ページの教員の負担というところに書いてありますが,今,非常に教員が過重労働であるということ。朝早く夜遅いこと,休みも余り取れないというような状況が起こってきている。これは小学校はもちろんそうですし,中学校高校は更にその部分が大きいように思っています。これにつきましては,教員の勤務時間の短縮や,あるいは過重労働の回避を行って,教員一人一人が力を持った状況で対応しないと,どのような審議の経過報告が出たとしても,これを実際に行うのは教員であるということ。そこの部分について,教員の待遇改善ということが非常に大きなポイントではないかと思っています。新しいものが起こってきた場合に,また新しい力をそこに注入しなければいけないということについては大変な労働が必要になってきますので,人員の配置,又はその他勤務人数,勤務時間等の考えについても検討していただければ有り難いと思っています。
 4番目ですが,29ページの私立学校の振興ということについて,これは非常に有り難いことだと思っています。私立大学は全体の大学の77%,私立高等学校は全体の26%,私立中学校が7%,そして私どもの会があります私立小学校は,実は1%しかありません。全国で231校。今年1校増えて,231校です。そこに1.1%の子供たちが通ってきているという状況になっています。ただ,本来私立小学校は,江戸時代から考えますと,寺子屋は全て私立小学校であった。その時代からの考え方からすると,やはり多様性に満ちた様々な教育が,小学校段階で入ってくる必要があると思います。
 現状としまして,過去20年の間に,少子化などによって公立小学校は4,500校減っています。ただ,その中で私立小学校は60校増えている。35%増加しているということになっています。これは保護者が私立小学校に求めているもの,又は多様性を求めているものということについては,大変目を向けてくださっていることは事実ですが,実際に小学校の運営ということは非常に難しさがありますので,私立小学校も含めて,私立学校への補助等について検討していただきたいと思っています。
 また,寄附金収入を自主的に,積極的に調達するための環境整備についての言及は非常に有り難いのですが,そのための仕組みや振興策を練っていただければ有り難いと思っています。
 もう一つ,家庭教育のことです。学校が全ての教育を担うわけにはいきません。特に小学校については,保護者と一体となって教育をしていく必要があります。本校では,縦糸が家庭であり,横糸が学校である。縦糸が張っていないものは,横糸ははわせることができないという,家庭教育の崩壊が今,特に小学校等の部分については上がってきていますので,その点も含めて,家庭教育について言及をしていただけるような部分があれば有り難いと思っています。以上です。

【河田副部会長】
 それでは,お二人の発表につきまして,御意見があれば,委員の方々からお願いいたします。

【戸ヶ﨑委員】
 先に全国高等学校長協会の方に少し御質問なのですが,一つは,1ページ目の一番下にあります,本質的な部分を多く含む,数字化しにくいというような文言があるわけですが,本質的なものというのが一体何なのかということを,補足していただけると有り難いというのが一つ目です。
 それから二つ目が,その次のページにいきまして,2番の主体的・対話的,このアクティブ・ラーニングの視点での授業改善の部分なのですが,確かにアクティブ・ラーニングの授業は,知識技能の習得中心の授業に比べますと,授業の時間的な効率が低下するというのは分からなくもないのですが,いわゆる学びを深めるという視点で考えたときに,本当にアクティブ・ラーニングが,ここで言われている時間的な効率が低下するものかどうかという,そういう何かエビデンスみたいなものがあるのかどうかということです。私はどちらかというと学びを深めるという意味では,講義式の従来の授業などに比べると,より効率的に学びを深められるという利点もあるのではないかなと思いますが。それが2点目です。
 それから,最後の3点目なのですが,4番目の教育行政推進のための基盤整備という部分について,お話の中で,財政の理解や,確約などという,お金と人の話があるわけですが,予算を獲得するのが厳しい状況の中で,基盤整備は,お金や人をつけてくれということだけでなくて,様々,そこを納得してもらえるだけの何かエビデンスを示していく必要があります。また,そのエビデンスも「状況の証拠」を示すだけでは駄目だと思います。こうなっているのだからというだけではなくて,その先にある,PDCAを回していくときの仕組み作りというか,それがビルトインされたようなものを出していかないと,やはり納得してもらえない。そういったところを考えていくというのは,学校現場だからこそできるものもあるわけで,一つ大事な基盤整備ではないかと思うのですが,その辺りについての御見解はいかがかなという,この以上3点なのですが,聞かせていただければと思います。

【河田副部会長】
 上村常務理事,御回答をお願いいたします。

【上村氏】
 ありがとうございます。まず1番の,本質的なものは何かということですが,一番典型的な例としては,人間の心情の成長であるなどそういったことについては,やはり数値化はそう簡単にはできないと思いますので,恐らくそういったことをここで書いているのだと思います,
 続いて,アクティブ・ラーニングですが,学びを深めるというので,時間的な効率が低下するのかということですが,これはエビデンスなどはありませんが,実際に私は今,都立高校は全部の教員の授業を年間に2回以上見て,業績評価に使っているわけですが,その中で,こういった授業を何回も見ております。そうしますと,進度という面だけ言えば,確かにこれは遅くなっているのは間違いないと思います。ただ,重要な概念,経済でこういう概念を分からせるというので,そういう作業ワークをやって分かるというのは大事なのですが,それはそのスポットであって,それで1時間何できるかということがありますから,講義的なものとそれをうまく組み合わせてやっていくことが大事だと思っております。
 最後の基盤整備ですが,これはおっしゃるとおりで,世論を誘導していくためには,頑張っていますというだけではなくて,こういうふうに言っていますということですので,これは恐らく研究発表会等で,マスコミ等を通じて広報していく,文部科学省からキャンペーンを打っていただくなど,そういったことではないかと思います。なかなかこれは難しい。分かっていれば,もう既に着手されていると思っております。ありがとうございます。以上です。

【河田副部会長】
 ほかにございませんでしょうか。金子委員,どうぞお願いいたします。

【金子委員】
 今のPDCAの件ですが,私は,上村先生おっしゃったことと全く同じことを感じていまして,アクティブ・ラーニングというのは物すごくはやっていて,皆何でもできると思っているのですが,実態としては非常に大きな問題が生じ始めていると思います。アメリカなどでも,常にアクティブ・ラーニング系と,もう少しきちんとした学科的な教え方とのバランスが常に問題になるのですが,やはりアクティブ・ラーニング的なものが行き過ぎて,学力が保証できないという面が非常に大きく出てきているというのは無視してはいけないと思います。
 今回の計画については,私はそこの点についてかなり危惧があるのですが,特に初等中等と高等,本日の資料でも,初等中等教育の部分と高等教育の部分は別になっていますが,そこのところを結び付けて,今,高大接続改革という言葉だけが書いてあって,高大接続改革によってどう高校までと大学と結び付けるのかというところが,実は余り具体的には書かれていないわけです。これは高大接続に関する議論自体が,まだかなり流動的なところがあるようですから仕方がないのかもしれませんが,ある意味ではこういった振興計画を作る場合のキーは,下から上まで通すというのが重要な論点ですから,その意味で,非常に重要な点だと思うわけです。
 そういった点で少し伺いたいのは,高校生に対するテストは,大学に進学する人たちと,もう一つ基礎テストができて,基礎テストの方は,PDCAに使うというのが手段であると言われているわけですが,こういった新しい基礎テストのようなものは,PDCAにどのように使うことが可能なのでしょうか。

【上村氏】
 大変難しいことだと思います。恐らく大部分の進学校は,新テストのセンター試験のようなものを中心に取り組んで,こちらの方は学び直しなどそういうものを見ていきますから,かなり学習指導に困難性の高い学校が,生徒の学力把握に,何か標準化されたような検査だということで取り組むということではないかと思うのですが,学力の高い層にとっては,少し違う世界の話になっているのではないかと思います。

【金子委員】
 少しよろしいですか。学力の低い層は,比較的これは使えるのではないかということでしたが,どういう形で使うようになることが考えられるのでしょうか。標準の点数というか,ベンチマークにする機会もないわけで,絶対的な点数だけが出てくるだけというような形態に多分なるのではないかと思うのですが,これをうまく使えるのでしょうか。

【上村氏】
 余り自信のあることは言えませんが,例えば,不得意分野がどこであるか,何年かやっていけば,学年の傾向や,学力の水準など,そういったものの比較にはなると思います。ただ,今までやっている取組に新たなものが加わりますから,これが万能だということでは多分ないと思います。

【河田副部会長】
 私が質問するといけないのですが,アクティブ・ラーニングを高等学校の先生がどの程度利用なさっているか。例えば,大学であれば,アメリカの大学に留学されてこういう対話式の授業方法に慣れている先生もおられますが,高等学校の教員は,必ずしもそうではない。私も文学部の教員をしていたのですが,教員をしている卒業生に会うと,アクティブ・ラーニングやれと言われるけど,やりようが良く分からないという話があったのですが,その点いかがでしょうか。

【上村氏】
 これも一般化できずに,教員の関心といいますか,校長がやれやれと言っても,生兵法でいろいろやられたらとんでもないことになりますから,しっかり基礎を勉強した上でやりなさいということで言っております。例えば,国語であれば読みを深めるということで,予習をしてきた上で,6人ぐらいでグループを作って協議をさせて,今,ICT機器がありますから,タブレットを持っていってそこで何か打ち込んで,それを黒板にスクリーンを張ってそこに映し,いろいろなものを比較するなど,そのようなこともやっておりますが,それは一部の授業で,全部の授業で展開はできないと思っています。それから,やはり古典ですと,予習をきちんとしてこないと,思いつきの意見交換だけになってしまいますので,予習や,あるいは教員の構造化など,そういったことがなければアクティブ・ラーニングはうまくいかないと思います。以上です。

【河田副部会長】
 どうぞ,菊川委員,お願いいたします。

【菊川委員】
 アクティブ・ラーニングにつきましては,今回の指導要領の改訂の検討のときに,当初,極端に言うと小学校から大学までという形で議論されてきた経緯があります。しかし途中で,いや,そうではなくて,やはりしっかり教えて,そして考えさせ,主体的に議論させるということで,アクティブ・ラーニングという言葉も,「主体的・対話的で深い学び」というように言葉が変わっていった経緯があります。アクティブ・ラーニングは大学から導入されてきた概念だと思いますが,中学校ぐらいまでは,今までの指導方法の工夫改善でいいのではないか,それに対して高等学校について言えば,やはり発達課題的に,それに正面から取り組んで,チャレンジしてみるという発達段階ではないだろうかという議論もありまして,指導要領も,どちらかというと年齢により多少力点を,強弱をつけながら,年齢層の高いところについてチャレンジさせるというような作りになっているのではないかと思います。

【河田副部会長】
 それでは,白井委員の方から,小泉先生に御質問をお願いいたします。

【白井委員】
 御発表ありがとうございました。縦糸と横糸ということで,家庭教育についてもっと言及をしてほしいということをおっしゃっていただきました。やはり議論の中でも,家庭の要因というのはかなりお話に出てきました。ただ,今までと少しアプローチが違うのかもしれないと思うのは,いわゆる子供,家庭の貧困状況だったり,あるいはそこまで言語化はしておりませんが,例えば親が発達障害を持っていたりなど,いろいろな課題の中で,ただただ親を教育しろというような視点ではなくて,やはりそういう状況が背景にある中でも,いわゆる片仮名言葉になってしまいますが,セーフティネットをしっかり作っていこうという議論は,かなりこの部会の中でもされてまいりました。
 それ以外の部分で,家庭教育について,より強調してほしいところについて,もしおありになりましたら,教えていただけたら有り難く存じます。

【小泉氏】
 ありがとうございます。家庭教育という状況についても,貧困の問題が一つあると思います。貧困でということの理由になるもの,あるいは,ハウスはすごく立派なハウスで,ホームがない子供がいます。どういうことかと言いますと,家庭はお金を持っています。ただ,心がつながっていない。家庭というものがない状況の子供が増えてきている。これも特に金銭的な面で恵まれている状況の中で,子供と親がつながっていないというような子供たちが,やはりかなりの数いるということ。実は今朝,私も7時半に保護者を呼んで少し話をしたのですが,保護者自身がそういう経験をしてきてしまっている。その連鎖がずっと続いていて,家庭というものを作れない家庭が多くなってきているということについて,その状況の中で子供を育てていく,学校教育をやっていくという状況も,非常に難しさがあるということを思っています。
 あとは,心を病んでいる子供が多くなってきています。カウンセラーなどが,今,学校の方に入ってきていますので,それで見つかるケースというのが非常に多く,学校の教員ではなくてカウンセラーのところに行って話をしている中で,家庭のこと,あるいは学校での出来事や何かというものがいろいろな状況になってくる。学校の中でも,今の状況ですと,本校の場合にも週に二日,時間を限ってカウンセラーがいる状況ですが,やはり常駐しているような状況の中で,子供の心の動きというものを見ていく。学校全体で40名近くいる子供の中のことを,一人一人のことにケアしていくというのはなかなか難しいところがありますので,その点も含めて,大学生はもともとみんな小学生だったということがありますので,何となくこの計画を見ていますと,出口側の方にフォーカスが当たっていて,入り口の部分,要するにみんな小学生だった,幼稚園の子供だった,その部分には何か非常に大きな落とし穴が,今の段階としてあるのかなとは思っています。

【河田副部会長】
 ありがとうございました。
 それでは,時間ということで,ここで終了させていただきます。ありがとうございました。

(ヒアリング団体1退室)

(ヒアリング団体2入室)

【河田副部会長】
 それでは,2番目のセッションに移りたいと思います。
 まず,全国連合小学校長会から,喜名朝博対策部長,よろしくお願いいたします。大体8分でお願いします。

【喜名氏】
 それでは,全国連合小学校長会で対策部長をしております,江東区立明治小学校長の喜名でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は,小学校教育の喫緊の課題である5点についてお伝えし,答申において強調していただくとともに,文部科学省におかれましては,具体的な施策として,速やかに実現されることを強く希望しております。それでは,資料にお示ししました順に御説明申し上げます。なお,この5点につきましては,相互に深い関係がありますことを,あらかじめ御承知おきいただきたいと思います。
 第1は,教員の定数改善でございます。御承知のとおり,現在学校を取り巻く地域や家庭の環境が大きく変化し,学校が抱える課題は多岐にわたっています。また,学力向上やいじめ,不登校等の生徒指導上の諸問題や,特別な支援を必要とする児童への対応など,多種多様な課題への対応が求められております。また,若い教員,経験の浅い教員が増え,授業準備や教材研究,先輩教員からの指導の時間が圧倒的に足りていません。子供たち一人一人に対するきめ細かな指導を実現していくために,少人数学級の実現等による教員定数の改善が必要不可欠です。
 今回の文部科学省概算要求では,教職員定数改善3,415人,うち小学校専科教諭2,200人を出していただきました。この定数改善は,新学習指導要領の時間増分,35時間に当たる改善要求でございます。全て実現したとしても,現状維持にも満たない状況でございます。また,10月末に財務省が財政制度等審議会に提出した資料では,既に総授業時数の中で増時間分の授業を行って,教員一人当たりの児童数は,主要先進国と遜色ないなど,机上の空論,実態を無視した情報が伝えられており,驚がくしているところでございます。
 第2は,教員の働き方改革の実現でございます。初めに,教員の勤務状況についてお伝えさせていただきます。私どもの勤務時間は1日7時間45分です。その勤務時間の多くを児童の指導に費やし,更に必要な会議や打合せを行っているため,勤務時間中に授業準備や教材研究を行うことはできていない状況です。また,保護者対応,学校内外の分掌事務も勤務時間外で行っており,休憩時間にも仕事をせざるを得ないことも含め,かなりの超過勤務となっております。これが常態化していることに加え,新たな教育課題への対応が迫られているというのが実態です。本来必要である,放課後に子供たちを残して学習補充をしたり,じっくり話を聞いたりといった,子供と向き合う時間も確保できていない状況です。
 学校における教員の働き方改革につきましては,8月29日,特別部会から緊急提言が出されました。私どもの働き方改革として,時間や成果といった意識改革も必要です。しかし,学校が取り組むべきことには限界があります。基本的な解決策は,さきに述べた定数改善によって教員を増やすこと,専門スタッフを入れて仕事を分担していくことであると考えています。緊急提言にある,チームとしての学校の実現は,大いに期待しているところであります。
 このことにつきましては,全国連合小学校長会でも各都道府県の担当者との情報交換を行っておりますが,自治体の考え方や財政力によって大きな格差が生じています。専門スタッフの配置促進等,自治体への実効的な支援が必要です。また,ある時刻を過ぎたら学校への電話は,役所の夜間窓口に転送されるような仕組みを作ったり,教員の勤務時間を周知するような文書を発出したりといった取組が既に始まっています。このような取組が浸透して,社会の理解促進が図られることを大きく期待しているところでございます。
 第3は,地域間格差の是正でございます。前述のように,教員の働き方改革についても既に地域間格差が広がっています。日本中どこに行っても質の高い教育が受けられるという大原則を守り,自治体間格差を教育格差にしないためにも,教育に特化した支援が必要です。また,新学習指導要領に求められる質の高い教育の実現に向け,ICT環境の整備,ALT等の配置の充実といった条件整備についても,交付金ではなく,具体的な支援により,教育格差が解消されなければなりません。同様に,我が国には約3,000のへき地の小学校がございます。へき地や小規模校であることを理由に,教育格差が生じないような支援も必要だと思っています。
 今般の教育課程の改訂で,授業時数が増えることから,各自治体では夏期休業日の短縮や,土曜日の授業実施といった方策を考えております。しかし,教室の冷房化が進んでいないことがネックになっている自治体もあります。学習環境,労働環境としての施設設備といった視点からも,地域間格差是正が必要です。
 さらに,被災地への教育的支援の継続も,是非答申の文言として入れていただきたいと思います。全国連合小学校長会では発災以降,毎年被災地を訪問しておりますが,いまだに仮校舎で授業をしている学校も多く,各学校では復興加配の継続を切望しております。
 第4は,子供の貧困の解消であります。ある調査で,小学校4年生の段階で,既に親の経済格差が子供の学力格差としてあらわれているという報告がありました。経済格差を学力格差にしてはならないと,学校は最善を尽くしています。その意味でも,就学援助の充実により,安心して学べる環境を作るとともに,少人数学級,少人数指導等による学力保証ができるような体制作りが必要です。また,小学校段階で,既に大学進学をあきらめるような子供たちが出ないよう,夢と自信を持って,自ら選んだ道を選べるような仕組みについて,小学校段階から説明し,安心させることが重要です。
 子供に関わるもう一つの課題に,外国人児童の教育がございます。日本語が母語でない場合,学校において教科指導とは別に日本語指導を行う必要があります。今後も増加傾向が続くと考えられ,抜本的な対策が必要です。
 第5は,優秀な教員の確保でございます。教員の勤務実態調査の結果が公表されたことや,企業の採用が好転したことにより,今夏の教員採用選考の倍率が低下した自治体が急増しました。このまま採用倍率が低下すると,教育改革の推進といった教育の質の担保が難しくなり,教育の危機を迎えます。教育養成を専らとする国立教員養成大学の定数削減の動きも懸念されるところでございます。夢と希望を持って教員を目指す若者が増えるよう,我々学校や校長会も,教職のすばらしさを伝えていかなくてはなりません。そのためにも,教員の働き方改革が進むこと,学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法の趣旨の堅持,公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法の改正など,それらの条件整備も含めて,第3期教育振興基本計画に盛り込んでいただきたいと存じます。
 子供たちに夢と希望を持ち,可能性に挑戦する力を育成するためには,我々教師自身が,その職である教職に夢と希望を持っていなければなりません。そのためにも,以上申し上げました5点につきまして,答申で強調していただきますよう,重ねてお願い申し上げます。御清聴ありがとうございました。

【河田副部会長】
 ありがとうございました。
 それでは,続きまして,全国特別支援学級設置学校長協会,山中ともえ会長からよろしくお願いいたします。

【山中氏】
 会長の山中でございます。本日,私どもの協会からも意見聴取の機会を頂き,誠にありがとうございます。私どもは,もちろん小学校,中学校の校長の会にも属しているのですが,特別支援学級と通級指導教室を設置している校長の集まりでございます。全国で約1万8,000校の加盟がございます。特別支援教育については,どこの学校でも一つの大きな柱として,現在取り組んでいるところですので,そういう点から意見を述べさせていただきます。
 本日,副会長二人と三人でお伺いしておりますので,途中で副会長の方からも話をさせていただきます。
 私どもは,この第3期教育振興基本計画(案)を頂きまして,ページと対応した書き方をさせていただいています。意見は5点ございます。
 まず1点目から,合理的配慮の件ですが,副会長の喜多の方から説明させていただきます。

【喜多氏】
 11ページの2の教育をめぐる現状と課題の箇所でありますが,そこに「また」のところから,「小・中・高等学校等への就学も増えている」までの一文がありますが,そこの文が,これまでの5年間を見越して書かれているのであればよろしいのですが,この文だけ読ませていただくと,合理的配慮の提供がもうなされているというような現状で書かれているかなと思います。是非この文は,合理的配慮が提供されて通級指導の子供たちが増えているというような書きぶりではなくて,三つの文に分けて,誤解のないような表現にしていただけると有り難いと思います。特に合理的な配慮の提供については,まだまだ現状としては先生方,現場の課題,周知が一番の課題でありますので,その部分を強調していただけたら有り難いです。以上です。

【山中氏】
 合理的配慮については,この教育振興計画は30年度からの5年ということになっていますが,小学校,中学校においてはますます周知徹底していかなければならないところだと思っております。
 続きまして,二つ目のインクルーシブ教育システム構築という文言の挿入というところで,26ページの部分のところですが,もちろんこのインクルーシブ教育システム構築という内容がここに書かれているのですが,現在,小学校,中学校の方は,もちろん高校もですが,平成24年7月に中央教育審議会の報告として出された,共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進が示されて以来,やはりこの文言の周知を今,徹底しているところです。各学校では教員の場ありきではなく,一人一人の教育的ニーズに応じた重要な仕組みとして,考え方の転換を図っているところです。共生社会を目指していくためにも,インクルーシブ教育システム構築という,これを一つのキーワードとして,更に周知していただきたいと思います。
 続いて三つ目は,川崎副会長の方からお話しさせていただきます。

【川崎氏】
 では,61ページ,多様なニーズを持つ者への教育機会の提供のところで,一言述べさせていただきます。
 今,特別支援学級は,全ての学校に作られるようになってきています。ただ,特別支援学校に比べ,専門性をどう担保していくかというところが一つの大きな課題になっています。特別支援教員を担当する教育の専門性の目安である,特別支援学校教諭免許の取得率の向上について,測定指標候補に挙げていただければ,それをもとに専門性の向上に向けてなっていくのではないかということで,よろしくお願いします。以上です。

【山中氏】
 四つ目に,教員の資質能力として,特別支援教員の追加という分野でございます。64ページに,今後5年間の教育政策の目標と施策,目標16,学校指導体制の整備のところですが,この二つ目の,養成段階における外国語教育,道徳教育などに対応した教員養成への転換とありますが,同様に,特別支援教育を並列していただきたいと思います。幼・小・中・高等学校に発達障害を含めた障害のある子供が就学している現状,それから,今後,共生社会の形成に向けて,インクルーシブ教育システム構築を進めていくためには,全ての教員が特別支援教育に関する力を身に付けていくことが重要だと考えております。
 現在,通級による指導が昨年の12月に,公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律が改正されて,基礎定数化されました。それもありまして,小・中学校の通級による指導の子供もますます増えていくと思います。そういった上でも,小・中学校の教員が身に付ける一つの資質能力として,特別支援教育も入れていただければと存じます。
 最後に,「多様なニーズを持つ者」という文言がございますが,「持つ」というのは自発的な意味があるということなので,状態をあらわす,「障害のある」というような形にしていただければと思います。それからまた,「者」でなくて「子供」という表現を使っていただけると有り難いと思います。
 以上,意見を述べさせていただきました。

【河田副部会長】
 いずれも具体的な文言について御意見が出ましたが,委員の方から御質問をどうぞ,よろしくお願いいたします。

【川端委員】
 ありがとうございました。全国連合小学校長会さんからのお話,本当に同感だなと思っておりました。特に教員定数の改善,そして教員の働き方改革の実現によって,本来の教育が充実するのではないかと私も捉えております。
 7ページに書かれています,子供の貧困など社会的,経済的な課題という部分ですが,本来の教育が充実するためには,先生方の時間がどうしても取られてしまって負担になっている,その一つの作業として,給食費の未納,教材費の未納などということも大きな問題なのかとは思うのですが,一時期これは,とても大きく取り上げられておりまして,対策委員会などもあったのですが,最近余り話題に上がっていないように感じております。徴収方法も自治体によって異なったりしていて,行政が行っているところもあるようですが,全国連合小学校長会さんとしてはどのようにお考えがおありでしょうか。もしあれば教えてください。

【喜名氏】
 今お話のように,かつて未納問題が大きく取り上げられたこともございました。それによって,逆に行政がかなりこのことに関与するようになってきたという状況はございます。システムを作っている,又は未納に対して,学校ではなくて教育委員会として動いてくれるというような状況が生まれているところであります。また,御案内のように,公会計化をしている自治体も増えてきました。このことが一つなくなるだけでも,学校としては随分仕事が減るのではないかなと思っているところでございます。

【川端委員】
 ありがとうございます。

【戸ヶ﨑委員】
 先に全国連合小学校長会の方で,4点ほど質問があるのですが,一つは,最初の資料の目次の一番下のところの,地域間格差と書いてあるところの,「義務教育においては,設置主体である自治体の財政力がそのまま学校教育の設備や」うんぬんと書いてあるのですが,財政力のある自治体であったとしても,教育の質が余り高くなかったり,逆に財政力は低いけれど,教育に非常に力を入れているというところもあるのではないかなと思います。特に施設設備面や,情報教育などは交付税関係のものが多いと思うので,使い方次第というものがあるのだろうと思います。何か全国連合小学校長会としてそういうアクションというか,もう少し教育に力を入れてほしいという,何らかのアクションを考えておられないのかというのが1点目です。
 それから,次のページにいきまして,ローマ数字の3番のプログラミング教育のところで,ここに教員の研修,施設設備の充実,条件整備という言葉が入ってきているのですが,プログラミング教育イコールそういう設備が充実していないとできないというように思われてしまうのではないと思います。例えば,アンプラグドの学習や,Wi‐Fi環境がなくてもスタンドアローンでのスクラッチを使う実践を進めている教育委員会や学校もあります。また,プログラミング関係の無料のソフトも最近急増しています。つまり,プログラミング教育は,条件整備や予算がないとできないというわけではなく,その辺りのところというのをどう捉えているのでしょうか。
 それから,次のページですが,全国学力テストの関係で,先ほどはお話が出なかったのですが,これは御案内のとおり,30年度以降については,公表がかなり早まり7月の中旬になるということがあって,それを受けてももっと早く教えてもらいたいという意味なのか,そのこととは別にお話をされていたのかということがお伺いできればということです。
 それから,最後ですが,11ページのところで,小学校の外国語教育うんぬんということで,非常におっしゃるとおりだなと思うわけですが,専科教員の中に,特別免許の関係のことというのは,全国連合小学校長会では,話題になっていないのかどうか。もう少し特別免許で対応してもらった方がいいのではないかという話題はないのかどうかという,大きく4点ですが,いかがでしょうか。

【喜名氏】
 では,1点目でございますが,おっしゃるように財政力だけではなくて,首長さんや教育長の考え方というのが大きく影響しているということはそのとおりだと思っております。私ども全国連合小学校長会としましては,文部科学省だけではなくて,総務省等にも毎年要望活動を行っておりまして,経済格差及び財政力などに関係なく,全て等しく教育ができるようにということをお願いしているところでございます。
 2点目のプログラミング教育のことにつきましてはおっしゃるとおりでございまして,パソコン環境が不十分であるからできない,ということではないことは重々承知をしております。ただ,今度教科の中に入ってくるとなると,やはりそういう環境が必要であるということは確かでありまして,このことも先ほど申し上げましたように,地域間格差がかなり大きゅうございます。まだまだそろっていないところと,一人1台タブレットが配付されているところとを比べたら,やはりプログラミング教育だけをとっても変わってくるのではないかなということがございます。
 3点目の全国学力テストの件でございますが,私どもは学力調査の結果がよかったからどうこうということではなくて,そのことをどう次の授業にいかしていくか,授業改善にどう活用していくかということで考えております。そういう意味では,なるべく早い結果を得て,それで授業をどう変えていくか,子供たちに何が足りないのかを見極めていきたいというのが大きな思いでございます。
 4点目の専科教員の件でございます。特別免許を出してということももちろんそうでございますが,やはり今いる教員は,英語の指導方法について習得をしていないという状況でありますので,この者たちの研修を十分にしていただくこと,それから,教材などの整備も,文部科学省はやっていただいておりますが,そういうことも必要だと思っています。やはり語学は専門性の部分がかなり高い,必要なのではないかなとは思っているところでございます。

【河田副部会長】
 それでは丸山委員,お願いいたします。

【丸山委員】
 10ページの,豊かな心の育成の測定指標についてです。「自己肯定感の低さの要因の一つとして国民性があり」という記載についてはそのとおりだと思っております。外国と比べて評価することに関しても問題があるということも,おっしゃるとおりだと思います。一方,国際化が進む中,そしてグローバルに活躍する人材の育成ということが叫ばれる中で,日本人特有の自己肯定感の低さというのをどのように考えていったらいいのかというお考えをお聞かせ願いたいと思いました。

【菊川委員】
 私も関連しまして,7ページの下から5,6行目のところに,「いわゆる自己肯定感の低さについては要因の一つとして」と書いてありますね。それに対して10ページの中ほどに,「国立教育政策研究所の研究にもあるように自尊感情,自己有用感の育成の方が実際的ではないか」と書いてあって,自己肯定感と自尊感情,自己有用感の育成というのはその関連をどのように位置付けたらいいでしょうか。
 といいますのは,今度の計画の一番目の柱は,「夢と指針を持ち,可能性に挑戦するために必要となる力を育成する」で,ここに関係してくると思います。計画部会の方でもいろいろ議論があったところで,国民性ではないか,あるいは根拠のない自信というのをどう捉えるか,一方,先ほど先生がおっしゃったように,グローバル化の中でこのままでいいのかという議論も出ていたように思います。そういう意味で,ここに書かれてあることを,もう少し御説明いただければと思います。

【喜名氏】
 ありがとうございます。まず一つ,自己肯定感の低さについては,いろいろ問題があるのだと思いますが,自己肯定感を高めることというよりも,自己肯定感を高めるような質の高い教育,体験的な活動を充実するなど,それぞれの子供が分かったと授業の中で感じることが,実は自己肯定感につながっていくのではないかと思っています。ですから,そこに向かう教育こそ大事なのだろうなということが1点ございます。
 実はそのことが,先ほどお話がございました,自己有用感や,自尊感情というところにつながってくるのではないかなと思います。言葉が今,いろいろあって,学校の中でも混乱しているというのが実際のところだと思います。自尊感情や自己有用感を味わうような教育を進めていくことが,最終的に自己肯定感につながっていくのではないか,そのように考えているところでございます。

【菊川委員】
 ありがとうございます。

【河田副部会長】
 それでは,時間になりましたので,この辺りで終了させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

(ヒアリング団体2退室)

(ヒアリング団体3入室)

【河田副部会長】
 それでは,次のセッションということで,全国特別支援教育推進連盟から岩井雄一副理事長,そして,全国特別支援学校長会から桑山一也副会長がお越しでございます。
 では,最初に岩井副理事長から,8分でよろしくお願いいたします。

【岩井氏】
 失礼します。全国特別支援教育推進連盟,副理事長の岩井雄一でございます。どうぞよろしくお願いします。また,本日はこのような意見を述べさせていただく機会を頂きましてありがとうございます。中央教育審議会教育振興基本計画部会におかれましては,部会長様はじめ委員の皆様の精力的な御審議に敬意を表しているところでございます。
 私ども特別支援教育推進連盟は,加盟団体としては特別支援教育に関わる特別支援学校長会,それから特別支援学級設置学校長協会,また特別支援学校の各障害種別のPTA連合会,そして卒業生の支援を継続して行っている各種障害者の支援団体となっています。このような立場から,特別支援教育に関わる問題を中心に,意見を述べさせていただきます。
 第3期教育振興基本計画につきまして,審議経過報告の素案につきましては,本年当初の松野文部科学大臣の障害児・者の生涯学習の推進についてのメッセージを受ける形で,障害児・者に対する取組が前回計画に比べ,乳幼児期から生涯にわたる生涯学習の視点で計画が記述されていることに感謝をしたいと思います。さらに具体的な計画のもとに政策が実現されることを,心から望むものです。また,国連における障害者の権利に関する条約の批准を受け,インクルーシブ教育システムの構築に向けた教育全体の環境整備が期待されているところです。一人一人の教育ニーズに応えつつ,共に学ぶ環境が整備され,実現に向けた具体的な計画が必要であると考えます。
 本計画においても,このインクルーシブ教育システムを構築するという観点から,計画を策定し,実現される方向を更にお示しいただくことが重要ではないかと考えます。そして,このような計画において,学校教育における多様性への対応,障害による差別の解消を図るための合理的配慮の定着が図られることを期待いたします。周知徹底には時間がかかると思いますが,計画に載らなくては少しも進めることができません。御検討のほど,どうぞよろしくお願いします。
 現在,通常の学級における,6.5%在籍している可能性のある発達障害が疑われる児童・生徒の問題です。計画中の5の(17)ICT利活用の推進における合理的配慮としてのデジタル教科書やICT機器の開発,活用,障害のある児童・生徒に対するICT機器の利活用について,更に突っ込んだ記述をしていただけるようお願いしたいと思います。
 次に,教職員の特別支援教育に関する専門性について述べさせていただきます。現在,関係者の努力により,特別支援学校における特別支援学校免許所持者の割合は8割近くまで高まりつつあります。特別支援学級においては,所持率が3割程度と言われております。計画的にこれを高め,発達障害が疑われる児童・生徒が6.5%在籍していると推測される通常学級においても,特別支援教員コーディネーターをはじめとした,ある程度の割合の教員の特別支援教育の専門性が求められるところです。大学の教員養成のカリキュラムに,特別支援教育の内容が単位として履修を義務付けられる,こういったことに大変期待をするところです。現場においても,認定講習や研修によって,特別支援教育に関する専門性を全ての教員が身に付けるということが重要と考えます。
 その他,共生社会に向けて,障害理解教育を推進することが重要だと考えます。その中で,交流及び共同学習の推進が重要な取組になっていくと考えます。
 まとめとしては,以上でございますが,そのほかに各障害者の保護者の団体から幾つか意見が上がっておりますので,これも少し紹介をさせていただきます。
 まず,目標2のところに豊かな心の育成というのがございますが,子供たちの自己肯定感をどう育成するのか。育成するという言葉が,既に少し違和感があるという感じを持っている保護者が多いようです。障害のある子供たちの自己肯定感というものが,自然に育つものではなくて,保護者の方によると,あなたはあなたのままでいいという,そのものの存在を認めることが自己肯定感を育てることにつながると言われております。このような中で,この計画の中の,豊かな心や自己肯定感を育成するのではなくて,更に様々な課題を抱える子供たちを含めた全ての子供たちが,安全・安心に学ぶことができる居場所作りを推進することが望ましいので,是非進めていただければと思います。
 その他,聴覚障害の方の団体の方からは,聾者,聴覚障害者で全く聞こえない方の場合には,母語が手話であることが多いため,手話教育の一層の推進を図るという文言を入れていただきたいということも上がっております。また,多様なニーズを持つ者への教育機会の均等というあたりでは,一人一人の教育的ニーズに応じた仕組みを整備する以前に,障害のあるなしにかかわらず,どの子にとっても居心地のよい環境と分かりやすい授業といった基礎的環境整備を整えることが重要な課題になってくると思うと,こういった意見が自閉症の方の保護者から上がっているところです。
 直接的に計画にすぐ反映するという意見ばかりではございませんが,委員の皆さんには,こういった障害のある保護者の方の御意見ということでお伝えできれば有り難いと思い,発言をさせていただきました。以上でございます。

【河田副部会長】
 ありがとうございました。
 それでは,続きまして,全国特別支援学校長会の桑山副会長からお願いいたします。

【桑山氏】
 それでは,失礼いたします。ただいま御紹介いただきました,全国特別支援学校長会の副会長,桑山でございます。こういう機会をいただけましたことを,とても感謝申し上げます。
 平成18年に教育基本法が全面改正をされ,平成19年度から特別支援教育に変わるという大きな変革の時期を経て,今10年ほどたちますが,特別支援学校は全国に約1,250校,その中に各障害種別を併置する学校,それから単独で障害種別を設置している学校,様々なタイプの学校がございます。そこの学校全体を含めて,全国特別支援学校長会としての意見をお伝えできればと思っております。
 この第3期教育振興基本計画の策定に当たり,資料中の第1期,第2期,第3期の中で,特別支援教育がどのように表現されているかという点で振り返ってみました。第1期のところでは,幾つかのキーワードがある中で,「自立して社会で生きていく基礎を育てる」,これは正に特別支援教育が目指すところでございまして,障害のために阻害されている能力が部分的にあったとしても,自立して社会で生きていく基礎,これを培っていく。このために特別支援学校があるということで位置付けがされました。
 第2期のところでは,「生涯を貫く教育の方向性」というキーワード。その前には,「生涯学習社会の構築を旗印として」ということがございます。障害があっても,障害のない人と同じように,一生涯を通じて教育を受けることができ,それを自己の力としていく,これはとても大切なことだと捉えております。
 第3期のところでは,五つの方針として示されておりますが,その前提として,「可能性とチャンスの最大化に向けた視点」というものがございまして,障害があっても各種技能に優れている者がおります。その中でも,スポーツ,それから芸術分野で秀でた者がおりますが,その活躍を裏付ける環境を整えていく,これは学校教育だけでは十分できることではありませんので,生涯にわたってという意味では,学校卒業後もしっかりとそれを育んでいただける,そういう環境はとても大事だと思っております。特に五つの柱の中の三つ目の,生涯学び,活躍できる環境を整える。五つ目の,教育政策推進のための基盤を整備する,この2点について,気付いたことをお伝えをさせていただきます。
 先ほど申し上げましたように,スポーツや文化等で活躍できる障害のある方たちが,2020年を前にいろいろな場面で取り上げられておりますが,その背景として,小さいうちからいろいろなところで教育を受けたり,挑戦をしたりという場面があります。これを考えると,障害がある児童・生徒を教育する機関においても,スポーツ,文化等ということだけではなくて,スポーツ,文化芸術分野等という表現を統一していただくことによって,様々なチャンスが生まれてくると思っています。意見表明のところでは,23ページにあります,スポーツ,文化等多様な分野の人材育成を,スポーツ,文化芸術分野等というような表現に是非修正をお願いしたいという点でございます。
 2点目といたしましては,障害者の生涯学習の推進というところにおきましては,例えば,先ほど申し上げました,障害があっても様々な資質能力を持っている者がおりますので,それが開発される場面は,環境がとても大事であると思います。その環境の中には,例えば物理的な環境だけではなくて,それを支える人たち,人的な資源,そういうものがとても重要であります。本日は資料をお持ちいたしましたが,金澤翔子さんの,これは皆さん御存じのように,『ダウン症の書家』というタイトルがついておりますが,この間個展を開いたときのものでございますが,都立の特別支援学校の高等部を経て,今,社会人として自立をしております。彼女は書家の母親のもとで育ってきておりますが,かなり努力を重ねてここまできて,芸術家としての力を発揮できるようになっております。ですから,場所だけではなくて,指導者が物すごく大きな影響を及ぼすという,一つの例でございますし,これはいい象徴であると思っております。
 そういう意味で,57ページにございます部分では,拠点作りを進めるということだけではなくて,拠点作りとそれを支える人材育成,このような形で幅を広げた環境調整が非常に重要であるということをお伝えしたいと思います。
 最後の3点目といたしまして,教員養成の基礎・基本,養成段階での重点。これはほかの団体からもお話があったかもしれませんが,五つの方針の中の教育政策推進のための基盤を整備する中の,とても重要な部分と考えております。64ページにあります,これからの学校を担う教員の資質能力の向上の二つ目の点でございますが,養成段階における外国語教育,道徳教育などの充実,ここのところに特別支援教育という文言が入ることによって,学級の中に数%いる配慮を要する生徒たちのために,養成段階である大学の時代から準備をしていくのだと意識できます。学級の中に障害のある人がいることが当然であるという,そういう環境で社会に出ていってほしいと思っております。
 また,採用段階のところにおきましては,教職員支援機構によるオンラインだけではなくて,現在私たちがいろいろ支援を受けております,独立行政法人特別支援教育総合研究所の関わりも,これを明記していただくことによって,私たちもそれを活用し,更に資質の高い教員を育てていけると考えております。
 幾つかございましたが,障害者の文化・芸術活動,それから障害者スポーツの拠点作りと人材育成,教員養成段階における特別支援教育の基礎・基本と,特別支援教育総合研究所の機能の明記を是非お願いできればと思います。以上でございます。

【河田副部会長】
 ありがとうございました。
 それでは,委員の方から,まだ御質問なさっていない委員の方もありますので,よろしくお願いします。

【山内委員】
 全国特別支援教育推進連盟さんから頂いた御意見の,ICTの利活用の部分に関してでございます。私も,障害のある児童・生徒・学生に対する合理的配慮としてICTの開発,利活用の推進,これは非常に重要なことだと考えていまして,個人的には何らかの形で記載をした方が良いと考えておりますが,御提案はこの丸三つにもう一つ加えるような形で書かれています。ただ私は,これを一つ加えてしまうと,逆に特別支援教育だけ別枠だみたいな感じに読まれてしまって,先ほどおっしゃったように,例えばデジタル教科書の話もありますし,一人1台の端末で,最もメリットを享受しているのは,多分障害のある子供たちだと思いますから,むしろほかの政策と余り分離せずに,例えばですが,1番目の丸のところの前提条件として,情報セキュリティの確保みたいなことが書いてありますが,これも前提にしてしまって,障害のある児童・生徒・学生に対する配慮も含めて,全体として推進していくという方がかえってよいのではないかと思ったのですが,その辺りについて御意見を頂いてよろしいでしょうか。

【岩井氏】
 それでは,今の御質問についてお答えしたいと思いますが,障害児教育,特別支援教育の中で,ICT機器を活用しているという意味で言えば,今,委員がおっしゃったような形で触れていただくこともそうなのですが,ただ,合理的配慮を通常の学級の中で,例えば読み書き障害の子にタブレットを活用しようということになると,ここは一つ起こした方が,今はまだそういうことをやろうとすると,それはその子に対する特別な配慮ですが,ほかの子と違うことをやっているというような抵抗が現場ではあるようなので,そういう意味では,書き分けていただければ有り難いと思ったところです。

【山内委員】
 お考えは分かりました。

【河田副部会長】
 では,白井委員どうぞ。

【白井委員】
 御発表ありがとうございました。私ども,不登校や発達障害をお持ちのお子様の支援をしている中で,両団体様とも御意見は非常に納得感があるものでございました。その中で,細かい表現というか書きぶりの話で,少し御意見を伺いたかったのですが,全国特別支援教育推進連盟様の,御意見の2番目です。障害のない子供に対する障害理解教育などと書いてあるのですが,私ども現場の方で非常に悩ましいのが,例えば発達障害をお持ちのお子さんのことを,実はすごく差別するのが発達障害のお子さんだったりすると。あいつ,発達障害だというようなことを言ったり,いじめたりというような問題が出てくるという中で,いわゆる区別をするという意味ではなくて理解の教育というものを,原則としては全ての子供に対してするべきなのかなと思うようなところもございまして,それについての御意見をお伺いできれば有り難いと思います。

【河田副部会長】
 岩井先生,どうぞお願いいたします。

【岩井氏】
 例えば,新しい教科,道徳など,各教科の教科書関係に,障害理解に関わることというものが単元としては非常に少ないです。盲導犬を扱った例など幾つかはあるのですが,ある意味もう少しそういうところでは触れていただくことが大事かなと思うことと,実際に交流及び共同学習等で触れ合いを持つ場合には,年代によってもかなり捉え方が違うので,できるだけ小学校,あるいは小学校に入る前というのは,自然に触れ合いをしながらお互いに分かっていくと。中学生ぐらいになると,思春期の難しさというものがあって,障害のある子供本人も嫌がるなど,そういう難しさがある。高校生以上になると,今度は頭で理解したことで,障害理解が進んでいくということになりますので,それぞれの年代に合った障害理解教育というものを,交流及び共同学習と併せながら取組を進めていくような施策を立てていただければという思いでございます。

【白井委員】
 ありがとうございます。

【戸ヶ﨑委員】
 先に全国特別支援教育推進連盟さんの方にお伺いなのですが,先ほど報告された特別支援学級設置校長協会さんから,26ページのタイトルの多様なニーズを持つ者への教育機会の提供という,ここの文言を修正していただきたいという御提案があったのですが,私なりに検索してみたら,全部で4か所あります。この4か所を直すのは結構大変なのかなという考えがあります。しかし同じように,多様なニーズのある子供へというような文言の方が良いのかどうかという,お考えを後ほどお聞かせいただけたらということが一つです。
 それから,その下の,先ほど山内委員からもありましたが,ICT関係で,自分のところでの実践例を踏まえて申し上げますと,私は通常学級よりも特別支援学級等に優先すべきではないかと思います。このICTの活用については,実際非常に効果が上がるのではないかという前提のもとにやっていきましたら,明確なエビデンスがあるわけではないのですが,非常に子供たちが喜んで学習に臨み,学習効果も高まっているという事例があって,今後を考えていったときに,先ほどから財政面の厳しさでなかなか自治体間格差のうんぬんというような話もあったわけですが,通常学級以上に特別支援学級の方に先に優先して,配慮するぐらいのことを考えていってもいいのではないかと思っています。先ほどの合理的な配慮という言葉とともに,よりクローズアップされるような形での書き方をした方がいいのかなと,私は思いました。
 最後ですが,全国特別支援学校長会の方の一番下の,いわゆる特別支援教育総合研究所の話です。これは本当におっしゃるとおりで,長い歴史を考えれば,この問題の研修教材は昔からやられていたわけですよね。それと伝統もありますし,活用もされているということがあって,逆に言うと何で支援機構の方だけで後ろがなかったのかなと少し気付かされたぐらいで,私も是非特別支援教育総合研究所の話は追加すべきだろうなと思いました。以上です。

【河田副部会長】
 お答えがもしありましたら,どうぞ。

【岩井氏】
 多様なニーズを持つ者への教育機会の提供というところで,障害のある子供についての記述になっているのですが,共生社会を目指すという流れの中で考えれば,障害のある子供も障害のない子供も,障害を理解していくような取組に進んでいくことが大事ではないかと考えて,このような提案をさせていただいたところです。
 それから,ICTに関しては,やはり特別支援学校においては,特に病弱教育は,ベッドサイドの学習なども含めてかなり進んでいるところもあるわけです。ですから,一般的にはICT機器の利活用ということで,特別支援学校も含めた形で書いていただくことは一向に構わないですし,当然だと思います。合理的配慮という考え方がなかなか周知されていかないという流れの中で,あえてこの言葉を使いながら,ICTを通常の学級の中にも持ち込むことは,ごく自然にできるようになってほしいなと,そういう考えでございます。

【河田副部会長】
 先生の方から何かありますでしょうか。

【桑山氏】
 全国特別支援学級設置学校長協会の方からの文章も読ませていただきました。障害という言葉がつくと,これは絶対に「持つ」ではなくて「ある」でなくてはいけない。また,障害に起因するという意味からすると,ニーズも自らの意志でペンを持つというようなものとは少し違いますので,状態を表す「ある」という方が自然であると考えます。全国特別支援学校長会としては,御指摘はしませんでしたが,あえて意見を問われるとなると,「ある」が適切であるという考えであります。

【河田副部会長】
 ありがとうございました。
 それでは,これで終わらせていただきます。お忙しい中お越しいただきまして,どうもありがとうございました。

(ヒアリング団体3退室)

【河田副部会長】
 本日は先生方,どうもありがとうございました。様々な御意見が出ましたし,特に「障害のある」ということと「障害を持つ」ということ,やはりきちんと気持ちを酌んだ言葉を我々としても使う必要があるという御指摘で,貴重な意見が出たと思います。
 私立小学校の校長さんが言われた片仮名が多いということ,これは私もいつも言っていて,もう少し外来語を減らして,日本語,漢語を使っていただいた方が説得力があるのではないかと思っております。それから,数日前の新聞によりますと,日本の教育は,協力して解決するのが日本は2位だと。和を以て尊きとなす,つまり和に重きを置いて,同じ東アジアの国である,中国人や韓国人と比べて苦言を呈するのは苦手であるという結果が出ておりましたが,やはり穏やかなおとなしい日本人を作っているので,自己肯定感が余りないのもそうしたことによるのかなと思います。
 前も申したかもしれませんが,私は,1980年に当時の文部省の長期在外研究員として,アメリカのイェール大学に1年間,そのとき1歳,3歳,5歳三人の娘を同伴していったのですが,幼稚園に連れていったときに,保母をなさっていた年配の女性に,次のように注意されたことを,今も強く記憶しています。私はいつも日本人はヘンだと思っている。なぜかというと,アメリカの親なら,この子は3か月しかピアノを習ってないのに,ピアノが大好きで,とても上手に弾いている。この子はすごいんだ,と自分の子供を褒める。しかし,日本人の親が来ると,この子はもう3年も習っているのに,ここまでしか弾けないと,自分の子供を低めて低めて,親は私たちに言う。そうすると,子供は自分は駄目なんだと,自信を喪失してしまう。是非この国で三人の育てるのなら,褒めて褒めて自信を持たせなければいけません。そう言われたのをいつも思い出し,私も学生はなるべく褒めて褒めて教育いたしました。やはりそういう意味で,今日のお話もいろいろと参考になりました。ありがとうございました。
 それでは,今後の日程につきまして,事務局の内田室長からお願いいたします。

【内田教育改革推進室長】
 ありがとうございました。資料4を御覧ください。次回の関係団体ヒアリングでございますが,12月13日水曜日,14時から予定してございます。場所につきましては,調整中でございます。
 また,第19回の基本計画部会を12月18日月曜日10時から,文部科学省の第2講堂で予定してございます。以上でございます。

【河田副部会長】
 委員の皆様方には,どうもありがとうございました。

―了―

お問合せ先

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