教育振興基本計画部会(第8期~)(第19回) 議事録

1.日時

平成29年12月18日(月曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 「第二講堂」(旧庁舎6階)

3.議題

  1. 客観的な根拠(エビデンス)を重視した教育政策の推進について
  2. 指標候補・ロジックモデルについて
  3. 他の部会等における検討状況等について

4.出席者

委員

 北山部会長,河田副部会長,明石委員,石田委員,大竹委員,大橋委員,川端委員,菊川委員,近藤委員,白井委員,田中委員,田邉委員,柘植委員,戸ヶ﨑委員,中井委員,永田委員,羽藤委員,丸山委員,無藤委員,村岡委員,百瀨委員,山内委員,山脇委員,渡邉委員

文部科学省

 小松文部科学審議官,中川総括審議官,常盤生涯学習政策局長,藤野サイバーセキュリティ・政策評価審議官,山下文教施設企画部長,塩見文部科学戦略官,白間大臣官房審議官,下間大臣官房審議官,瀧本大臣官房審議官,里見大臣官房国際課長,矢野初等中等教育局初等中等教育企画課長,伊藤初等中等教育局財務課長,淵上初等中等教育局教育課程課長,木村初等中等教育局参事官,蝦名高等教育局高等教育企画課長,有松国立教育政策研究所長,氷見谷生涯学習政策局政策課長,髙橋生涯学習政策局調査統計企画室長,内田生涯学習政策局政策課教育改革推進室長,寺坂生涯学習政策局政策課教育改革推進室長補佐 他

5.議事録

【北山部会長】
 おはようございます。それでは時間でございますので,ただいまから第19回教育振興基本計画部会を開催させていただきます。お忙しいところ,また非常に寒い中お集まりいただきまして,誠にありがとうございます。
 本日は,客観的な根拠を重視した教育政策の推進と,その考え方を踏まえた指標候補やロジックモデルの再検討,他の部会などにおける検討状況などに関して意見交換を進めていきたいと思います。
 それでは,まず事務局から配布資料の説明をお願いします。

【内田教育改革推進室長】
 配布資料ですが,会議次第にございますとおり,資料1‐1から資料4となっております。また,参考資料をタブレット端末に入れております。不足などございましたら,事務局までお知らせいただければと思います。

【北山部会長】
 それでは早速議事に入ります。文部科学省の事務局から,資料1‐1について御説明をお願いします。

【内田教育改革推進室長】
 それでは,資料1‐1に基づき御説明申し上げたいと思います。こちらは前回御審議いただきました資料ですが,前回の御意見を踏まえ,リバイスしたものでございます。黄色いマーカーを付した箇所が前回からの加筆でございます。
 まず,おめくりいただき1枚目ですが,この資料全体のエッセンスをPDCAの段階ごとに,国として何をしていくか示しているものでございます。前回のおさらいですが,PLANの段階においては,ロジックモデルを用いて目標や指標を設定します。右のDOの段階ですが,実施体制として職員の育成,自治体などの状況把握がございます。次にCHECKとして計画部会でのフォローアップ,文部科学省の政策評価との一体的実施がございます。最後にACTIONとして,今申し上げたプランからアクションまでの各段階を踏まえ,毎年の施策の実施,そして次期計画における施策の立案という流れを記しております。
 同じページの一番下ですが,それらに共通する基盤のEBPM推進体制構築として,文部科学省内に体制を構築すること,またガイドラインの策定,データの集約や窓口の一本化,二次利用手続きの簡素化などを記載しております。
 3ページに行きまして,上半分のところですが,教育政策における「客観的な根拠」の重要性について,記しております。教育政策は成果が判明するまで長い時間を要するものが多いこと,成果に対して家庭環境など他の要因が強く影響している場合が多いという特性もございますので,数値化できるデータ・調査結果のみならず,数値化が難しい側面を踏まえる必要がある旨を記しております。
 黄色いマーカーのところですが,前回,幼児や大学生も読めるようにという御意見がございましたので,追記しております。
 4ページ以下ですが,先ほど1ページで全体を説明したことを文章化している内容ですので,細かいことは省略させていただきます。6ページに行きまして,文部科学省の政策評価ということで,「文部科学省の」という言葉を補っている修正がございます。
 7ページですが,先ほど説明したPDCAを支える基盤を更に分かりやすく整理した資料でして,幼児のところは先ほどと同様の修正でありまして,右下の連携先として,前回の部会において,全国規模の事例やデータの共用の必要性について御意見がございましたので,独立行政法人の名前などを例示しております。
 8ページは,地方の取組の必要性について,前回御意見がございましたので,米印のところに追記しております。
 9ページですが,ここも多少言葉を補った程度の修正と,あとは調査内容・方法の改善として,他省庁との連携の重要性や,調査やその手法について,現場の負担にも配慮する必要があるという御意見がございましたので,追記しております。
 14ページ以降,ここは前回,もう少し省略した簡単な資料をお配りしておりましたが,文部科学省が実施する調査を多少詳しめに,全体像を前回より詳しく記載したものでございます。
 最後に18ページですが,今年度,文部科学省が委託調査という形で,各自治体におけるエビデンスに基づく教育施策の事例を調べており,その中で,特に先進的と思われる四つの自治体の事例を紹介しております。例えば岡山県教育委員会では,小学校3年生から中学校3年生までを対象として,学力や学習状況を縦断的に追跡して,課題の早期発見など,対応をしている例でございます。
 足立区では,近藤委員が区長でいらっしゃいますが,区の学力調査のデータに基づいた施策の実施や,厳格な行政評価の予算への反映,教育委員会と福祉部局が連携しデータを双方で共有して,「子供の健康・生活」に関する縦断調査を実施されている事例でございます。
 大阪府の箕面市では,教育と子育て支援に関する組織を一元化し,関連情報を集約しながら施策を実施するという取組をされております。
 福岡県の田川市では,小学校就学前の家庭の状況を把握し,幼・保・小が連携して取組を実施しているという事例でございます。
 最後のページには,左側に様々な課題を列記し,それに対してどのような具体的な取組をしているかということを表しているものでございます。
 説明は以上でございます。

【北山部会長】
 ありがとうございました。
 この議題に関して,内田室長からも,足立区の先進的な取組について御紹介がありましたが,近藤委員から資料を御提出いただいておりますので,資料1‐2に基づいて御説明をお願いしたいと思います。

【近藤委員】
 ありがとうございます。資料1‐2と,最後に実際に行っております足立区の「子どもの健康・生活実態調査」の質問票というものも見本としてお付けしてございます。
 平成27年度から始まりました,この調査の特色は,学校をプラットフォームにしまして一つの学年悉皆(しっかい)で調査をお願いしているということと,資料1‐2を見ていただければお分かりのとおり,今年1年生を調査対象にした場合に,来年は2年生という形で,一つの学年をずっと追っていくパネル調査になっているという点,この2点でございます。今年平成29年は,小3については一休みしておりまして,その間に,実際に様々な事業で対応を取っていない方の学年の実態を調べて,実際の授業の成果がどの程度表れているのかということを対比するような材料を集めております。
 足立区では,妊娠届の提出時期にアンケートを実施し,出産や子育てに不安を感じている御家庭,又は妊婦さんに対しての対応を図り,出産から就学前の時期の対応を手厚くしております。その関係で,対象者は小学校1年生,つまり就学前の対応がきちんと図られた後のお子さんと,それ以前の27年の小学校1年生を比較するという材料を,そろえてございます。
 実際に学校をフィールドとして健康・生活実態の調査を行うと同時に,これに学力調査の結果を当て,更に福祉部の持っている生活保護等の実態の数値を当て,立体的な数値の状態を出しながら,実際にどういった施策,また具体的な授業対応が必要なのかということを明らかにし,またその数値の変化を年々追っていくことで,授業の成果が表れているのかどうかということもきちんと見ていくということでございます。
 一つだけ,1分ほど時間を頂ければと思うのですが,私は就任が10年前でございまして,10年前の就任直後に一つ大きな問題が出ました。それは学力テストの成績によって学校ごとに傾斜的な配分を付けて,成果が上がったところには,その分の成果として予算を手厚く付けるというような傾斜配分の予算を行ったところ,校長先生が学力テストの調査中に,子供の肩をたたいて,不正解な子供に対しては注意を促すという事件が起こり,非常にスキャンダルに取り上げられることがありました。
 したがって,エビデンスに基づく,数字に基づく授業を展開していくということを表に出すときに,必ず,逆に現場を追い込むというイメージで語られることが多いわけです。
私どもはその反省として,学力テストの成果をきちんと見ていくということはもちろん,経済的に厳しい家庭のお子さんが多かったり,状態が厳しかったりする成績が出づらい学校で,どのように成績を上げていくのかという具体的な授業展開のエビデンスを示していくということ。
 ただ単に,大ざっぱな一番上位の数字だけをどんと現場に示して,それで何とかせよということではなくて,何とかする具体的な対策をもエビデンスベースの数字で現場に示していくということ。
 つまり数字で追っていくということは,現場を追い詰めるということではなくて,具体的な対策を示すことによって,現場にもゆとりを持ってもらうことだときちんと説明していかないと,数字イコール締め付けで,ゆとり教育の逆を行くという,一定のそうしたお考えをお持ちの方にとって非常に有利な,間違った理論展開をされないとも限らないので,きちんとしたエビデンスベースの施策の展開についての誤解を受けない説明が非常に重要だということを,私ども経験しておりますので,あえてそのことを付け加えさせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。

【北山部会長】
 近藤委員,ありがとうございました。
 それでは,この議題について,御意見,御質問等ありましたら,どなたでも結構でございますのでお願いします。
 では,戸ヶ﨑委員から,隣へ順にお願いします。

【戸ヶ﨑委員】
 前回,この会議で戸田市の取組を発表させていただきましたが,当日私は,全国規模で市町村の教育長並びに教育委員が集まる会合で同じような話をさせていただいていました。つまり,EBPMによる効果検証ができる基盤作り,学校を実証の場にする,教室を科学する,というような内容のプレゼンを,同時並行でさせていただいていました。
 聞くところによると,この場では委員の皆様方からはおおむね好評に受け入れていただいたとのことですが,私の方は,正直申し上げまして,どちらかというと不評でございました。この差はやはり,先ほど近藤委員が言われたようにエビデンスイコール数値化,イコール序列化というイメージがまだまだ学校現場,又は基礎自治体の教育委員会にはあり,ここを改革していかなければいけないと,その場でも痛感した次第です。
 さらには,このところ義務教育関係のヒアリングをしていて特に感じることなのですが,必ず3M,人,もの,金についての話が出てきます。そのような要望があることは十分理解できますが,大事なのは,予算取りをする際に,ただ状況証拠を示すだけでは駄目なわけです。仮に,エビデンスに基づいていても状況証拠だけではなく,EBPMによるPDCAを回すという仕組み作りをしていくことも大事な教育の基盤作りであるということを,もっと周知して,分かってもらわなければいけないということを強く感じました。
 国の計画を受けて,地方自治体の方では,再来年辺りに新たな振興計画を作るために,多くがこの年明け辺りから動き出すのではないかと思います。そのために,今議論されているEBPMのことは,計画が出来上がってからだけでなくて,完成とは切り離してでもあらかじめ周知しておく必要があるのではないかと思います。ここで熱く議論されていることが,地方に早めに届いて,自治体の振興計画の中に反映されるように,早めに周知していく必要があるのではないかと思います。
 それから二つ目ですが,5ページに絡んだ内容で,エビデンスに基づく政策立案ができる職員の育成や,そのようなことを研究する部署も必要であるとの考えから,本市では,今年度教育行政のプロの採用に着手しました。全国的にも例がなく,当初はどのぐらい集まるのだろうかと非常に不安だったのですが,ふたを開けてみましたら,地方から国を動かしたい,国にどんどんアプローチしていきたいという,非常に意欲のある学生等がたくさん集まって来ました。予想外の反応に大変驚いたわけですが,来年4月から,教育行政のプロの職員として,大学や研究者とタッグを組みながら,エビデンス検証やクラスラボ検証などに取り組んでもらう予定でいます。
 こういった取組が広がっていくことで,国でEBPMに関する取組を行う際に,地方でもそれをすんなり受け止める,又は逆に地方から国に情報提供を積極的にしていくという仕組みができれば良いと感じました。
 長くなって恐縮ですが,最後に10ページに絡んだ内容ですが,データの集約に関連して,それぞれの自治体では今,公共データの活用促進,つまりオープンデータの推進をされていて,これは行政の透明性や信頼性の向上といった様々な期待を持って取り組んでいます。しかし,オープンデータの中に教育に関するデータがほとんどありませんので,まだ構想段階ですが,幾つかの自治体とネットワークを構築し,オープンデータをいかに活用できるかということを研究していこうと考えています。
 少し長くなりましたが,以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは中井委員,その後,永田委員,お願いします。

【中井委員】
 ありがとうございます。近藤委員や戸ヶ﨑委員と重なるところがあるのですが,このエビデンスを進めていくという面で極めて重要な影響が出てくるのではないかと懸念される点として,二つあるだろうと思います。
 一つは,学校現場等での影響ということで,近藤委員からも学力テストのお話がありましたが,学力テストについては,ほかのところでも過去問を授業中にやらせていた,学力の低い子を当日欠席させたなど,そのような報道がされたことも聞いております。また,学力テストだけではなくて,いじめの認知件数なども大分修正はされてきておりますが,認知件数はいじめがあるのか,ないかの指標だということで,過去認知件数が余り出ない学校があったりするというようなこともありました。
 また,不登校についても,東京などでは最近,ここ二,三年また不登校数は増えているのですが,増えていることを不登校対策が功を奏していないと見るのか。私はそうではなくて,学校に行くことが必ず是なのだと,いいことなのだという価値観で子供に対応するのかどうかというところで,保護者も学校も子供の意向や子供の状況を第一に考えるというスタンスが浸透してきた結果として,不登校数がやや増えてきているという見方の方が妥当なのではないかと考えています。数字に対する教育現場の影響は非常に大きいだけに,数字の解釈や,数字を目的化しないということなど,そのようなことを常にしっかりと発信していくことが必要で,これを進めることと併せて,今申し上げたようなことを常にしっかりと文部科学省なり,あるいは各教育委員会なりが発信していかないと,負の面がかなり出てしまうのではないかということで,その辺りについては十分留意する必要があるだろうというのが1点でございます。
 もう1点は,前回も申し上げましたが,数量化されたデータがなければ,その事業や教育施策が良いかどうか分からないという点で,その施策を推進しないというような状況が醸し出されると,これは教育にとって非常に不幸であるのですが,3ページにも数値化は難しい側面があるということで,数値化できないことについても可能な限り情報を収集・分析し,総合的・多角的に判断するとなっていて,それはそのとおりだと思うのですが,これは教育関係者の内外を問わず,広くこのことについては共通認識を作っていく必要があるのだろうと思います。
 世の中的にはデータとしては数値化されたものの方が,定性的なものよりベターであるという認識が一般的にあると思います。しかし,教育のような世界では,定量化できないものも又極めて重要な意味合いを持つことがしばしばあるわけですから,定量化されているデータと定性的なデータにとどまっているということをもって,データの価値に軽重を付けるということはあってはならないのではないかと思いますので,そういった認識の共通化というものも併せて行っていただきたいと思います。
 以上でございます。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 では,永田委員,お願いします。

【永田委員】
 簡潔に申し上げさせていただきます。これまでの近藤委員,戸ヶ﨑委員及び中井委員の御意見に共通する点は,特定の意図に寄らないデータの作成と分析が重要であるということだと思います。今回の資料にはこの点を担保する記述がありませんが,先入観に基づいて作成されたデータに基づいて施策を検討・実施するべきではないということです。
 例えばスーパーマーケットの分布と教育効果などとという一見無関係なデータであっても,ビッグデータ解析では有意な相関関係が明らかになる場合があります。さらに,数値そのものの良し悪しではなくて,その差分に着目して去年と今年でどれだけ努力したかという分析も可能です。
 つまり,現在のアンケートの取り方や資料を科学的視点から見直した上で,そこから導き出されたエビデンスに基づいた議論をすべきである,ということを強調しておきたいと思います。

【北山部会長】
 それでは羽藤委員,お願いします。

【羽藤委員】
 どうも御説明ありがとうございました。私が言いたいのは2点ありまして,1点は,コンピューターに子育てをさせたい親は別に誰もいないので,要するに基本は人間がやるのが教育だということ。この前提に立った上で,教育の現場というのは非常に複雑化していますので,データをきちんと取る習慣を教育の現場で付けるであるとか,あるいは現場でそうしたデータを使った,もの作りの現場ではQCサークルとよく言いますが,データを使って,どのような教育をしていったらいいかということが日常的に語られるような教育の現場作り,そのような運動論が恐らく必要なのではないか。これが1点目です。
 2点目に,そういったときに,もちろんデータを取るわけですが,仮説が要るのだろうということです。よくスーパーマーケットでレシートをデータ解析すると,缶ビールと紙おむつを隣に付けると売上げが倍増したというような話がありますが,これは,データからそのような事実が挙がったのではなくて,スーパーマーケットの売場で,金曜日の夜にお父さんが缶ビールを買いに出るときに,紙おむつを買いに行くよと言うと出やすいということが見て分かっていたという話があります。
 ですから,教育の現場で教育を良くしていくための仮説を持っていただくような習慣作り。そのために,足立区さんなどがやられているデータを基にして議論をして,深掘りしていくといったようなことが結び付くような,そのようなところが必要です。EBPM元年ということでしょうから,余り期待してもなかなか成果は出にくいと思いますので,ここを仮説として持ってEBPMで出していくといったようなことに絞り込まないと難しいのかなということも思ったりします。
 以上です。

【北山部会長】
 次に田中委員。その後,石田委員,お願いします。

【田中委員】
 ありがとうございます。手短に申し上げたいと思います。私はPDCAということについて申し上げたいのですが,この資料を拝見しても,PDCAのPとDのところが非常に厚く書かれていて,CとAが非常に寂しくなっているのですが,実はPLANのところをしっかり書くと,後の作業が楽になるというところなので,PLANのところをかなり拡充させて書いたので,多分残りのところが書くことがなくなったのだろうと。それは私はいいことだと思います。ただし,先ほど先生が仮説ということの大事さをおっしゃったのですが,それに当たるのが,ここに書かれている4ページのロジックモデルだと思うのですが,ロジックモデルはあくまでも仮説なのですが,どうも霞が関界隈(かいわい)ではロジックモデルが金科玉条になって,それを守らなければいけないというような,非常に堅苦しい使い方をする風潮がありますので,ここはもう少し緩く考えて,このロジックモデルを仮説的に捉えるのがいいだろうと思います。
 その目で見ますと,細かいことになりますが,4ページの(2)の丸の2番目です。これはロジックモデルの検証は,むしろCのところ,事後のCHECKのところで行って,PLANの段階ではロジックモデルの論理性や体系性をチェックするぐらいでとどめておいてもいいのではないかと思います。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは,石田委員お願いいたします。

【石田委員】
 ありがとうございます。4点ありますので,なるべく簡潔に申し上げたいと思います。まず7ページです。体制の整備・構築のところなのですが,文部科学省は厚生労働省や農林水産省と比べますと,エビデンスを収集して分析する体制が,残念ながら貧弱であるという現状があると思います。この認識から出発するのは重要かと,個人的には思っています。
 今回の案では,文部科学省内に総合教育政策局というものを新たに設置して取り組むということで,大変期待しております。ただ,調査統計に関わる様々な部署にいる職員を集めてきて配置するというだけではなくて,人員を強化するなり,これから育成していくという方向性が必要です。職員が学んでエビデンスに基づいた政策を作っていけるような体制を整えていただくのが非常に重要かなと思います。
 この点,国立教育政策研究所との連携ということも触れられておりますが,大事かなと思います。本気でエビデンスを重視した政策を推進する基盤を構築していくのだという,逆に他の省庁にお手本になるぐらいの体制を築くのだという意気込みを持って,是非やっていただけたらと思います。
 2点目は,9ページです。エビデンスの蓄積なのですが,文部科学省には是非とも質の高い調査を積極的に主導して実施することを考えていただきたいと思っております。特に諸外国と比べた場合に,個人を追跡する,先ほど足立区のお話もありましたが,縦断的な調査の蓄積はまだ不十分な感じがありますので,その辺りも視野に入れて,質の良い調査を主導していくということを考えていただければと思います。
 それから調査の一元管理について,既に文部科学省では大変すばらしい調査を幾つもやっておられるわけですが,別々の部署で実施している調査を一元的に管理し,更に別々の調査を何らかの形でひも付けできるような管理の可能性についても考えていただけたらと思っています。
 最後,4点目ですが,調査データの二次利用ということで,調査データを様々な角度から分析できるように,文部科学省がやっている調査を二次的な分析のために容易に利用できる仕組みを考えていくこと。これは非常に重要で,国立教育政策研究所も多くのデータをお持ちですので,こちらについても同じような形で公開の方向を考えていただければと思います。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは,村岡委員,その後,丸山委員,無藤委員,お願いします。

【村岡委員】
 教育の分野というのは,データできちんと把握して,それに基づいて政策立案していくということを,これまでやられてこなかった側面が多いと思います。なかなか難しい分野だと思うのですが,チャレンジをする価値は大いにあると思うので,しっかりとしたものができるといいなと思っております。我々もこの場で山口県のコミュニティ・スクールの取組を御紹介させていただいておりますが,これも独自にアンケート調査等もしながら,その意義や成果を何とかより分かりやすく使えないかということで,やっております。実際にコミュニティ・スクールは山口県全ての小中学校に設置をされましたが,コミュニティ・スクールの活動がかなり活発な地域は学力が高かったり,あるいは生徒の自己肯定感がアップしたり,あるいは暴力や不登校の数が減ったり,そういった傾向が見られますし,また学校でいろいろなボランティア活動や地域活動に参加するので,地域の様々な問題に関心を持つ生徒が増えたり,あるいは保護者の方でも,そうした活動が地域の活性化に役立っていると認識する保護者が,これは山口大学と一緒にいろいろな調査をしていますが,そういった保護者が7割になっているなど,そういったことで施策の効果をできるだけ分かりやすく,データできちんと客観的にやろうとすると難しい面があって,割とアンケートなど,主観がかなり入る部分も入れ込んでやっております。
 そういった意味では,余り厳密というところはこだわり過ぎると難しい。逆に説得力がない面が出てくるのではないかと思って,その辺りは併用しながらやっています。その目的は,客観的な根拠はなぜ重要なのかというと,本日の資料でも3ページに教育政策の企画立案や,国民への説明責任と書いていますが,私は教育に限らず,いろいろな行政の分野で思うのですが,行政的に何かやって,自らやったことについての評価をするということ,正にエビデンスはそういったためにやっているところなのですが,実際の行政の施策はコミュニティ・スクールもそうですが,地域などいろいろな関係者を巻き込んでやらなければいけないものが多いわけです。そのときに,こういった必ずしも厳密なデータではない部分を含めて,こういったデータがありますということをしっかりと伝えていくことは,そういった活動自体も参加を呼び込んでいく上で説得力を増やしていくということになる面があると思います。
 教育の分野でも,今回いろいろと検討する中で,学校と家庭と地域が連携をしてやっていく,そうした取組が重要だということは分野としては広がっているわけです。そういった中で,余り専門的に厳格なものばかりを追求するのではなくて,皆さんが参加していく,そういった輪を広げていく上で説得力のあるものはどのようなものだろうかということを,多少厳格さを犠牲にしてでも入れ込んでいくことも,いろいろな主体と連携しながら施策を進めていく上では重要な部分もあるのではないかと思いますので,それは施策の中身によって,その辺り,ものによってはそういった柔軟な考え方で指標を作る,定性的なものを増やすといったことも重要ではないかと思います。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは無藤委員,お願いします。

【無藤委員】
 私の方では,以前に少し申し上げたのですが,今出ている案の客観的な証拠に基づく教育政策推進という場合に,主にイメージされているのが教育政策,国なり自治体レベルで大きくやっていったときのフォローアップとして学力調査やアンケートを採るということが主なような気がいたします。もちろん,以前と違って縦断的にするということで,いろいろな情報が出てくると思うのですが,私が申し上げたいのは,それに加えて,専門的な言い方なのですが,社会実験や自然実験の手法を導入した方がいいということなのです。社会実験というのは,仮説をもって比較的小さな現場にある手法を導入し,それと比較できるものを取って効果を見る。要するに,実験室ではなくて,実際の学校でそれを比較できるようにやるという意味なのです。
 それから自然実験というのは,現実の施策で動いているところを比較群として使うということなのですが,大分以前に山形県である都市が少人数学校を導入したので,それを使って少人数学校を導入する前のときの少人数学級の在り方と,導入した後は少人数学級が増えるわけですが,その前後での学力の変化というものを調べたものがあります。これは山形県の場合は学力調査をもともとやっているので,分析の手間はありますが,それは別とすればできることなのです。
 例えば,私は今すぐできるけれど,多分なさっていないのではないかという気がするのは,小学校の英語教育の効果です。指導要領上5年生から本格的に教科として入るということもあり,日本全国様々な形でもう既に先行実施していると思いますが,それを見ると,5年生から今は英語活動が週1時間ですが,それをやっているだけのところもありますし,3年生から週1時間やっているところもある。1年生のときからやっているところもある。それから1年生と3年生で年間で10時間ぐらいやっているところもある。また,やっている中身が英語教育の専門の教科の先生がやっている場合もある。ネイティブスピーカーがやっている場合もある。オーディオビジュアルの機械を使っている場合がある。担任の先生がやっている場合があるわけです。担任の先生のレベルも,かなりの訓練を受けた人と,そうでない人が入っております。
 そうすると日本全国でほとんどの地域で英語を何らかの形でやっているけれど,やり方は様々だとすると,例えば中学3年生で英語の全国調査を部分的にはやっているので,それをさかのぼればすぐにその効果が検証できます。
 その場合に,従来検証と称していたことも,子供たちにアンケートを採って,好きだ嫌いだという話でありますが,それも大事ではありますが,中心は英語の学力であって,英語の学力は要するに読んだり,書いたり,聞いたり,話したりという4技能ですので,その調査を,これは個人調査でお金が掛かりますが,やればいいわけです。
いくつか例を挙げましたが,予算を伴うものもそうでないものもあるので,是非その辺りを入れていただきたいという意見です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは,このセッションでは,大橋委員,川端委員,菊川委員に御発言をお願いして,そこで一旦終了とさせていただきたいと思います。

【大橋委員】
 すみません,機会を頂きましてありがとうございます。気付いた点だけ二つほど,行政のよくありがちなパターンとして,手法があるところには全てについて同じ手法を当てはめ,横並びでやるというところがあるように思っていて,これはこれですばらしいところもあるのですが,今回教育について考えてみると,エビデンスの話にしても,同じ手法を全てについて適用するのはすごく難しいと思っています。
 今回二つキーワードを挙げるとすると,定量化するというものと,あとロジックについて考えるものと二つあると思います。この比重の置き方というのは多分対象とする施策によって随分違ってくる感じがします。特に幼児期の基礎的な表現力を付けてやる,あるいは豊かな心を育成するというのは,成長は線形的に成長しているわけではなくて,ある意味,非連続に成長すると思います。そのようなものは,多分ここにすごく乗りにくい話なのかなという感じもします。
 そのように考えると,ここの辺りは,今回今年1年で全て決めるというような感じで考えない方がいいのかなと思います。長過ぎるといわれるかもしれませんが,3,4年とか5年ぐらい掛けて,良いものにしていこうというぐらいの心構えでやられるのがいいのかなと,個人的には思います。
 そのような観点でガイドラインを作られるのであれば作った方がいいのかなと。今回ガイドラインの話が何ページ目かにありますが,これも1回作って,そのとおりやるというような形だと,ある意味,政策を考える上でそれほどいいことでもないのかなという感じがいたしました。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは,川端委員,お願いします。

【川端委員】
 ありがとうございます。今後数値化できるデータ調査結果ということで,いろいろな家庭での要因等が分かり,子供たちの学力面,健康面などで改善されるというのはすごく必要だと思うのですが,負の部分ではなくて,データを基に,その子その子の個性を伸ばせるようなものになっていったら私はすごく有り難いなと思っています。
 どうしても基準に達しなければならないという部分もあるとは思うのですが,そこから見える個というものを伸ばすようなものを望んでおります。
 以上です。

【北山部会長】
 では,菊川委員,お願いします。

【菊川委員】
 5ページの行政職員の育成についての点です。国の行政職員の場合は,このような感じでよく分かるのですが,都道府県や市町村のことを考えた場合に,行政職員は通常部局を超えて異動しますので,そのような意味では,職員研修というものを教育行政職員だけに限らず,行政職員全体にウイングを広げて考えないといけないのではないかと思います。
 また,教育行政については,学校現場からの指導主事との交流がありますので,指導主事あるいは校長先生等にも,このような行政的な感覚といいますか,そのようなものを伝えていく研修が必要なのではないかと思います。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 まず先に,先ほど申し上げましたように議題2に移らせていただきます。
 それでは次に,指標候補・ロジックモデルについての意見交換ということで,資料2‐1の説明をお願いします。

【内田教育改革推進室長】
 それでは説明させていただきます。まず,資料2‐1を御覧ください。これまでの検討においては,委員の皆様からの御意見を賜りながら,目標,施策群,指標の関係について,ロジックモデルという形で体系化を図ってきております。
 一方で,これまで委員の皆様からも,目標と指標の関係について,より目標を的確に測定する指標に精選すべきという御意見も頂いているところでございます。2期計画においては,合計104の指標がございましたが,現時点で3期に向けた審議経過の段階で90を超える指標となっておりますので,今後,精選をしていきたいと考えております。諮問文に「明確化かつ精選した指標を設定し,教育施策の検証改善サイクルを確立する」とございます。
 そこで今回,精選する案としてお示ししているのが,資料2‐2として準備したA3の大きい資料ですが,そちらの資料に赤文字で記載した指標を残す案としております。
 その前に,資料2‐2の様式や,精選の考え方について資料2‐1で簡単に説明したいと思います。資料2‐1のところで,1枚おめくりいただきまして,2枚目に様式がございます。一番上の段の黄色の箇所に現在の目標欄がありまして,次にピンクのところですが,上がアウトカム指標,中がアウトプット指標,そしてその下に主な施策群(インプット)となっております。真ん中の欄にアウトカムとアウトプットの定義を書いておりますが,アウトカム指標は,教育政策の受益者に対して生じる成果を測定するための指標でありまして,アウトプット指標は教育政策の実施により産出される結果を測定するための指標でございます。アウトカム指標の左の欄に1.とありますが,目標の達成状況を直接的・定量的に測る指標,又は目標の達成状況の一部を測る指標という整理をしております。
 次に,1.の下のところに2.とありますが,目標の達成状況を間接的に測る指標としております。少し分かりにくいのですが,同じページの一番右側に例がございまして,例えば目標2の豊かな心の育成では,豊かな心の育成状況を直接的・定量的に把握することは困難と青文字で記載しており,ここでは豊かな心の育成状況の一部を測定することになります。それを示す指標が,自分には良いところがあると思う児童生徒の割合の改善,今の自分が好きだと思う小・中・高校生の割合,人の役に立つ人間になりたいと思う児童生徒の割合を目標の自己肯定感・自己有用感の測定に当たって,非常に的確と思われる指標として記載しております。
 そして,その下の点線の枠内が間接的に測るものとして,いじめの認知件数に占める,いじめの解消しているものの割合の改善という指標がございます。そして更にその下がアウトプットとして,児童生徒1,000人当たりのいじめの認知件数の都道府県格差の倍率を挙げております。
 事務局として赤文字の指標を残す案,黒文字の指標を精選の観点から残さない案としておりますが,残さない指標も,例えば答申の段階で参考資料として一覧化することも考えていきたいと思っております。
 以上が様式の説明でございます。実際に資料2‐2に基づいて,更に全体を見てまいりたいと思いますが,例えば目標(1)の確かな学力の育成ですと,OECDのPISA調査等の各種国際調査を通じて世界トップレベルを維持という指標,また,習熟度レベル5以上(上位層)及びレベル2未満(下位層)の割合という指標を残す案としております。
 次に,目標(3)の健やかな体の育成ですが,健康の育成状況を直接的・定量的に把握することは難しいのですが,それにつながる生活習慣に関する指標として,朝食の欠食や就寝に関する指標を残す案として考えております。また,体力については,子供の体力水準を平成33年度までに昭和60年頃の水準まで引き上げるという指標を残しております。
 次のページ,目標(4)でございます。主として高等教育段階の内容ですが,問題発見・解決能力の修得状況を直接的・定量的に把握するのは難しく,間接的な指標になりますが,学修に対する取組・態度の改善という指標を残す案として考えております。
 目標(5)でございます。社会的・職業的自立に向けた能力・態度の育成の箇所で,高校生の進路に関する意識の指標を追加することを検討しております。特に社会的・職業的自立ということを考えますと,小・中学校の段階の夢や目標というよりも,より進路を意識する高校生の段階の方が,より適切に目標を測れるのではないかということで,記載させていただきました。
 少し飛ばして,目標(7)グローバルに活躍する人材の育成でございます。ここでは,英語力,留学生の指標を残す案としております。
 目標(8)イノベーションを牽引(けんいん)する人材の育成では,直接的・定量的な把握が困難ですが,修士課程修了者の博士課程への進学率の増加,情報技術人材の育成状況を残す案としております。
 次のページ,生涯学習でございます。生涯学習を通じて身に付けた知識・技能や経験を生かしている者の割合の向上を(10)のところで残し,(11)では,前回の部会でも(10)と(11)の指標は重複感があるのではないかという御意見がございましたので,明確に後掲という形で整理しております。
 目標(12)の職業に必要な知識やスキルを身に付けるための社会人の学び直しの推進では,大学,専門学校等での社会人受講者数を100万人にするという指標を残しております。
 次のページに行きまして,学びのセーフティネットの構築の箇所でございます。セーフティネットの構築を直接的・定量的に把握することは非常に難しいわけでありますが,一部を測る指標として,経済的な理由による大学等中退者・高校中退者の減少,進学率の改善などを残す案としております。
 次のページ,教育政策推進のための基盤の構築の箇所で,こちら五つ目の柱については,他の四つの方針の基盤となる条件整備そのものを目標としておりまして,アウトプットとアウトカムの違いを設けず,目標に対する成果をより明確に測定する重要な指標を選定するという観点で,赤文字の指標を残しております。
 基本的な方針1から4の目標については,アウトカムでより広く目標を測定できるものという観点で赤文字の指標を選んでおりましたが,ここは条件整備が目標ですので,1から4の整理とは異なってくると考えております。
 例えば,(17)ICT利活用のための基盤の整備の箇所ですが,教員や児童生徒の活用能力に加えて,整備に係る指標も残しました。(18)教育研究環境の施設整備に関しても,条件整備そのものが重要な目標ですので,施設整備の進捗状況の指標を残す案としております。
 最後のページでございます。目標(21)日本型教育の海外展開と我が国の教育のグローバル化についても,より広くグローバル化に向けた取組に関する指標として,海外に対する教育事業に参加した日本側の参加者数,相手国側の参加者数という指標などを残す案としております。
 資料2‐2の説明は以上ですが,併せて資料2‐3としてロジックモデルを配布しております。こちらに関しては,これまで何度か御説明しておりますので,説明は省略させていただきたいと思います。
 説明は以上でございます。

【北山部会長】
 ありがとうございました。
 それでは,ここで少し時間を取りまして,御意見,御質問をお聞きしたいと思いますが,先ほど丸山委員から,この資料2に関してという御発言がありましたので,まず丸山委員からお願いします。

【丸山委員】
 では,3点ございます。まず1点目が,資料2‐2の指標についてです。目標(2)の豊かな心の育成のところの,人の役に立つ人間になりたいと思う児童生徒の割合,これは説明が必要ではないかと考えております。例えば,病弱の子など,そのような子に対して人の役に立つというのはどのようなことなのかということを教員が持っていないと,いるだけで,あなたには価値があるのだというところが分かっていないと,これは危険な指標だと思いますので,この説明が必要だと思っておりました。
 二つ目は,ロジックモデルの主な施策のところです。目標(1)の,主として初等中等教育段階のところの一番下の,高等学校教育改革の推進というところは,次の高等学校のところに入ると,主として高等教育の段階のところに入るといいのではないかと思っております。
 三つ目です。高等学校の方にある目標(5)の主な施策の,各学校段階における産業界とも連携したキャリア教育,それから職業教育の推進についてですが,これは初等中等教育段階にも必要なのではないかと思っております。例えば,将来つきたい仕事や夢について考えさせる指導していたかという国の調査の結果は,中学校で97.2%ですが,小学校になりますと75.7%。それに対して子供が夢や目標を持っているかという質問に対しては,小学生85.9%,中学生は70.5%が,夢や目標を持っていると回答しています。更なる教育の充実が必要ではないかと考えます。
 各段階におけるキャリア教育,進路指導の充実として,初等教育,中等教育段階のところにも入れたらいいのではないかと考えました。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは,田中委員,お願いできますか。

【田中委員】
 資料作成,お疲れさまでした。全体に資料2‐2に基づいて申し上げたいと思うのですが,1ページ目から5までありますが,1から4と,5とは種類が違うと思って拝見していました。1から4というのは教育の効果や目標に係るところですが,5番というのは,それを達成する手段であります。これを見ても,手段のところは比較的指標が明確に,具体的に書けるところなのですが,教育の目標,効果になってくるところからだんだん難しくなってくるという特徴が出ていると思います。
 ただし,さはさりながら,定量的に把握することが困難という文言が目立ち過ぎていると思います。まだ書けるところがあるだろうと思います。例えば,生涯教育のところで社会人が大学で学べるような環境に関して,困難と書いてありますけれども,例えば夕方以降に授業を設けているところが何校あるのかなど,これはかなり具体の指標が設けられるところだと思います。
 そのほかにも2,3,気になるところがありましたので,これはもう1回整理をした方がいいと思います。その上で,先ほどの議論でもありましたように,個別の話にしていくと,かなりいろいろなアイデアが出てくるだろうと思います。そうしますと,国が中央でやることと,それから地域でやることとのデマケーションが非常に重要になってくると思います。余り国がこまごまと具体の数字を出してしまって,地域にそぐわないというのも問題ではないかと思います。
 そのような意味では,目標に対して指標があって,本来指標とは測定や,あるいは定性的なものでも比較が可能で,そしてある程度の水準が示されているものが望ましいのですが,そこまでは達していなくとも,地域に応じて,自分に良いところがあると思う児童生徒とは,この地域ではどのような状態をいうのか。それは,例えばどのような指標で表されるのかということを,地域や学校の事情に応じて自分たちで考えてデザインしていくことが必要ではないかと思います。
 遠い例になりますが,アメリカのコロラドと,あともう一つの州で,地域の環境を良くするために,地域のコミュニティの人たちが集まって指標を検討したのですが,ある地域の指標は1時間当たりに通るシカの数だったのですが,ある地域はイーグルの数です。地域に応じて指標というものは違うでしょうから,そこは,ここから先のブレークダウンは地域に任せていくような姿勢が必要ではないかと思います。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは,渡邉委員,お願いします。

【渡邉委員】
 ありがとうございます。今回の整理は,答申に向けて現時点での指標について,体系だった大変良いまとめをしていただいたのではないかと思います。特にベースになっている資料2‐2は,課題の見える化をしたという点でも大変良い整理をしていただいたと思います。
 その中で見ますと,このアウトカム指標が明確化できていないと思われる項目には,例えば目標の(4)の問題発見・解決能力の修得や,目標の(8)のイノベーションを牽引(けんいん)する人材の育成などがあります。こういった指標は2030年を見据えますと,ロボティクスやAIでは代替できない,人に求められる資質になるだろうという項目で,大変重要だと思うのですが,ここがエビデンス化という意味では弱点になっていることは認めざるを得ないのではないでしょうか。ただ,これは前向きに受け止める必要があると思います。
 というのは,これはエビデンス化の難しさであって,教育水準や教育政策の問題ではないからです。例えば,OECDのPISA調査で共同問題解決の能力を問う試験では,日本は非常に高いレベルとなっていますが,ただ,これが見える化されていない,エビデンス化されていないのではないかと思います。
 したがって,今後こういった重要項目については,PISAの調査なども参考にするのも一案ですし,それから先ほどの議論で,地方公共団体にこそ,好事例から拾えるエビデンスがあるはずだとのことでしたが,エビデンスの創出や伝達,活用というものを,地方との対話の中で拾っていくということもできるかと思います。これは当然,定量要素だけでは無理ですから,定性要素も含めて見ていくということが重要なのではないかと思います。
 ただ,「アウトカム指標」と「アウトプット指標」というのは教育政策を語る上ではいい表現なのですが,教育現場との対話においては,「重要指標」と「フォローアップ指標」というように,現場にとって分かりやすい言葉にすることが重要なのではないかと思います。
 それから各論で,目標(12)の社会人の学び直しの推進において,ここもアウトカム指標が明確化できない項目になっているわけですが,この赤字で加えられたところに「大学・専門学校等での社会人受講者数を100万人にする」というチャレンジングな目標が掲げられております。このことは大変良いとは思うのですが,現状として大学や大学院への社会人入学者数は,それぞれ年間1,2万人程度しかいないわけですから,ここの具体化は相当重要なことなのだろうと思います。日本経済団体連合会教育問題委員会の企画部会で行った高等教育に関する調査を見ますと,今後,充実させて欲しい制度・環境として,「社会人に配慮した時間帯での授業の開講」という点が挙がっていたのは当然の反応かと思いますが,もう一つ,「インターネットなどITを利用した授業の開講」という要望が大変強く出ています。
 したがって,このような目標を掲げるのであれば,放送大学等も含めて,どのような方法であれば達成が可能なのかということも,検討していただければと思います。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは山内委員,その後,百瀨委員,お願いします。

【山内委員】
 すみません,目標(8)イノベーションを牽引(けんいん)する人材の育成についてです。今回精選に当たって,恐らく出口というか,直接イノベーションに関わる部分に絞りたいということで,初等中等教育が外れている,これはいいと思います。ただ,そうであるならば,アウトカム評価なのに,イノベーションを牽引(けんいん)したかどうかということが,この赤だと全然測れていないのです。結局,修士課程修了者の博士課程進学率であっても,直すとしても二つ目ですが,情報技術人材の育成状況を直されるということですが,いずれにしても資質の育成ができたかどうかという話で,本当にイノベーションを牽引(けんいん)したかどうかということが指標化できていない。先ほど渡邉委員もおっしゃったと思います。
 これはもちろん職場で育成した若手が,チームの中でどれぐらいイノベーションに寄与したかというようなことは研究でもしなければいけないので,すぐ指標化できないのは,そのとおりなのですが,一部とはいえ,大学発ベンチャーの設立数が外れているというのは私としては残念な気持ちがしていて,確かに大学発ベンチャーの中には50代の教授が研究成果でやるのもあると思うのですが,学生ベンチャーも含まれています。あと,博士課程への進学率の話をしているのだから,若手研究者が研究成果でベンチャーを興すのは,むしろ奨励すべきなので,若手研究者や学生に絞ってでも,大学発ベンチャーの設立数のようなものをきちんと記載しておけば,逆に実際にごく一部ではあるけれど,指標としてイノベーションを牽引(けんいん)したということがパフォーマンスレベルで確認ができるので,一部でもいいので,入れた方がいいのではないかというのが私の意見でございます。
 以上です。

【北山部会長】
 今おっしゃったのは,赤字で残すべき,という御意見でしょうか。文部科学省からは黒字の方で書くけれども,赤字ではないということで御説明がありましたが。

【山内委員】
 そうですか。黒字は残るのですね。

【北山部会長】
 残るといいますか,例えば2‐3で見ていただくと,イノベーションについては,3ページの一番下にある参考指標候補として,例えば大学発ベンチャーの設立数というような指標が出てきます。つまり,閣議決定する教育振興基本計画の,言わば本体部分が赤字ということになります。

【山内委員】
 でも,結局,そうだとすれば同じだと思うのですが,何を大事に見るかということですね。

【北山部会長】
 つまり,本体部分に入れるべき,という御意見ですね。

【山内委員】
 そのような意味では,大事なところに,そちらを入れるべきだという意見です。

【北山部会長】
 赤字の方に,ということですね。

【山内委員】
 とにかく,実際にアウトプットになっているところを大事にしていただければ,それで大丈夫です。

【北山部会長】
 御意見としては承りました。ただ,赤字はできるだけ絞らなければならないという事情も御理解いただければと思います。

【山内委員】
 はい,分かりました。

【北山部会長】
 黒字で書いてあるものがかなり多くありますが,これらもそのような取捨選択をした結果です。
 それでは次に,百瀨委員,お願いします。

【百瀨委員】
 すみません,ありがとうございます。先ほどのセッションの中ではなかなか申し上げられない点と,各論で申し上げたいと思います。エビデンスベースで指標をいろいろ使うということには賛成です。しかし,5年ですぐに成果が出るものと,出にくいものが当然あります。当然,記載されておりますが,あくまでもその前提でいかなければいけないだろうと思います。
 もう1点は,データを取るのは学校現場です。言うまでもないのですが,全ての調査が学校現場に来たときに,少なくとも1か月はそれに費やされることを考えると,精選が必要なのではないかと思っています。
 各論に移りまして,二つございます。一つは,目標(2),先ほどの御説明にもありましたが,自己肯定感の育成,あるいは自分には良いところがあると思う児童生徒の割合の改善というのが,計画の5年間で即上がるというのも,これはまた,いかがなものかというところがございますので,時間軸といいますか,その辺りに留意の上,取らなければいけないのではないかと思います。
 もう1点は,最後の基盤整備の(16)ですが,教員の資質能力向上を行って,指標は難しいと。一方,右側のところには週当たりの勤務時間等々について指標にしますとあります。申し訳ないですが,一部で定数改善的な要素もここに盛り込まないといけないと思います。か,マンパワーとともに,働き方改革と業務改善の2点を盛り込まないといけないのではないかと思います。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは次に,田邉委員,それから柘植委員,お願いします。

【田邉委員】
 ありがとうございます。私は,目標(9)のスポーツ・文化等多様な分野の人材の育成というところで,私自身も迷っているところはあるのですが,意見として述べさせていただきます。次世代アスリートの育成状況を直接的,定量的に把握することは困難ということで,金メダルの数と書いてあります。金メダルだけで大丈夫かなというのは正直なところです。次世代のアスリートを発掘・育成する戦略的な体制の構築というのであれば,入賞者やほかの指標も入れておいた方が良いのではと感じます。細かい点ではありますが,金メダルの数だけでいくのか,もう少し幅広く入賞者やほかの指標も入れるのかというところです。
 以上です。

【北山部会長】
 それでは柘植委員,お願いします。

【柘植委員】
 私は,その次のページ,15番のところです。多様なニーズを持つ者への教育機会の提供ということで,この会議が1年ぐらい前に始まったときに,ダイバーシティというキーワードがたくさん語られて,そのような社会になっていくから,それを支えるような教育を大事にしようというたくさんの意見が委員の方から出たと思います。ところが,これは四つあるのですが,障害と不登校と夜間中学とSC,SSWどれも直接的なアウトカムがないのです。これは何か頑張って作れないものなのですか。
 例えば,障害がある子供が適切な教育機会の提供を受けるために,障害があって苦戦していたら,個別の指導計画を作るなど,小中学校で学ぶときに必要な合理的配慮を提供するということは,正に教育機会の提供なので,下の方に書いてありますが,上の方に持っていっても,問題は少ないのかなと思います。
 以上です。

【北山部会長】
 それでは,羽藤委員,お願いできますか。

【羽藤委員】
 何度か申し上げていることですが,こういった方向で多分政策はどんどん進んでいくことになると思いますが,やり過ぎに注意していただきたいということを思っています。アウトプットとアウトカムが縦方向に垂直方向に行って,これとこれをやったら目標達成しましたというように見えるのですが,それぞれの縦は,それぞれの縦同士で関連し合っていますので,関連し合って,初めて全体の目標が達成することになりますから,この横の方向の因果関係を,現場の声なども聞きながら精査して,アウトプット,アウトカムをどのように本当に用いていったらいいのかという議論なくして教育改革は進みませんので,その点だけ注意して御活用いただけたらと思いました。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは,山脇委員,お願いします。

【山脇委員】
 先ほども少し意見がございましたが,直接的・定量的に把握することは困難というものが結構ありまして,確かに困難なものばかりなのです。一度このような表に落とし込みますと,困難といいつつ,そういった調査を基にだけ話が進んでいくことが往々にしてありますので,困難と書かれたところを,本当に困難であると世にも知らしめながら,この表を活用していくべきだと思います。
 それから,先ほど百瀨委員がおっしゃったことですが,このような調査をすると,現場の負担がすごく大きくなることを懸念しております。そして目標(16)の教育の基盤の整備のことなのですが,今,働き方改革ということで,会社などでも早く帰るという労働時間の短縮がよく言われておりますが,仕事自体は減っていなくて短縮ばかりされるということにすごく矛盾が起きています。人も増えていない。時間だけをここに挙げますと,結局は今起きている働き方改革の問題が,学校現場も同じことが起こるだけになるのではないかと懸念しております。教員の増員やアウトソーシングの利用,外部の専門識者の活用など,そういったことを含めての整備だということをきちんと把握すべきだと思っております。

【北山部会長】
 議題3で高等教育の将来構想や,学校における働き方改革の検討状況について御説明がある予定です。今,御指摘のあった教員の働き方改革については,中間まとめが取りまとめられたところで,今週の中央教育審議会総会で報告するという手はずになっております。そちらの議論ともシンクロさせながら進めておりますので,その点については御理解いただきたいと思います。
 次に,戸ヶ﨑委員,お願いします。

【戸ヶ﨑委員】
 私の認識不足なのかもしれないのですが,具体的な内容を挙げるのではなくて,この測定指標そのものに絞られたお話であったわけですが,たくさんある中でなぜそれに絞られたのか,理由がよく分かりません。私が今まで何度か申し上げているように,指標が指標を呼ぶというか,先ほど田中委員からもありましたように,自治体がこの計画を受けて独自性を持った新たな指標を作っていくことになります。クローズアップされたアウトカム指標があるということの理由がそれぞれ分からないと, PDCAのCAが回らなくなるという懸念もあります。また,何といっても,それぞれの自治体がエビデンスを出すために重要になるのは最初の設計図だと思います。途中からエビデンスを出したいと思ってもなかなか難しいものがあって,初めからきちんと設計していかなければならないと思います。ここにこのような測定指標があるという理由付けが周知できるように,もしかしたら参考資料等で記載されるのかもしれませんが,是非その理由付けを周知できるようにしていただきたいと思いました。
 以上です。

【北山部会長】
 今の最後の御意見については,資料2‐1の1枚目に,「指標の精選の考え方」として,一般的な考え方が記載されているわけですが,その考え方に基づき,各目標について,なぜこれらの指標を選んだのかという理由については,本文に書くかどうかは別にして,事務局でしっかり詰めておいていただければと思います。
 それでは,議題2はここまでといたしまして,議題3に移ります。なお,この議題は今後の教育投資の在り方にも密接に関わってくることから,資料についての意見交換のみならず,第3期の基本計画期間中に特に重点的に教育投資を充実していくことが必要な課題について御意見を頂きたいと考えております。
 まず事務局から,資料3‐1から3‐4について,御説明をお願いしたいと思います。

【内田教育改革推進室長】
 それでは資料3‐1から3‐3に基づき,三つの資料の御説明をしたいと思います。それぞれ資料は大部にわたりますので,ポイントのみかいつまんで御説明させていただきます。
 まず一つ目,資料3‐1でございます。こちらは新しい経済政策パッケージとして,12月8日に閣議決定がされております。人づくり革命という文脈で議論がされているものですが,教育の無償化,負担軽減策といったことについて内閣官房の人生100年時代構想会議の議論,与党からの提言を反映させた上で取りまとめられたものでして,資料の上の方にございますが,幼児教育に関しては3歳から5歳までの幼児教育の無償化,高等教育については,授業料の減免や給付型奨学金により,所得が低い家庭の子供たちの無償化,更に一定の年収に満たない世帯を対象とした私立高等学校の授業料の実質無償化などが盛り込まれているところでございます。
 今後は,この政策パッケージに示された取組の内容やスケジュールに基づき,政府としても施策の具体化に向けて関係省庁間で連携しながら進めていくということになります。
 次に,資料3‐2でございます。こちらは学校における働き方改革の中間まとめでございます。本年6月に中央教育審議会に諮問され,初等中等教育分科会の下での特別部会において議論が進められており,年内に中間まとめが取りまとめられようとしております。小川副部会長,無藤委員に御参画いただいているところでございます。
 本日お配りしている資料3‐2でございますが,こちらは先週金曜日に開催された初等中等教育分科会で示された案であり,分科会での御意見も踏まえ,今週金曜日の総会で最終的な議論が行われる予定です。
 資料3‐2の1ページ「はじめに」ですが,下から6行目に記載がございますとおり,学校における働き方改革の目指す理念は,単に教員の長時間勤務を是正することではなくて,長時間勤務を良しとするこれまでの働き方を見直し,教師が日々の生活の質や教職人生を豊かにすることで,自らの人間性を高め,子供たちに対して効果的な教育活動を行うことができるようになるということでございます。
 こういった理念の実現に向け,まずは学校・教師が担う業務の明確化・適正化について議論が行われました。同じ資料の14ページに整理されております。まず基本的には学校以外が担うべき業務として,1.登下校に関する対応,2.放課後から夜間などにおける見回り,児童生徒が補導されたときの対応,3.学校徴収金の徴収・管理,4.地域ボランティアとの連絡調整といった整理がされております。
 また,学校の業務だが,必ずしも教師が担う必要のない業務として,5.調査・統計等への回答等,6.児童生徒の休み時間における対応,7.校内清掃,8.部活動といった整理がされております。教師の業務だが,負担軽減が可能な業務として,9.給食時の対応,10.授業準備,11.学習評価や成績処理,12.学校行事の準備・運営,13.進路指導,14.支援が必要な児童生徒・家庭への対応といった整理がされております。今申し上げた各項目の具体論は19ページ以降に記載されておりますので,御覧いただければと思います。
 なお,この資料の15ページから19ページにおいて,今申し上げたような業務,役割分担,適正化を着実に実施していくために,国,教育委員会等,各学校が取り組むべき方策について具体的に記載されております。
 最後に39ページの7行目ですが,文部科学省は,勤務の特殊性にも留意しつつ,勤務時間に関する数値で示した上限の目安を含むガイドラインを早急に検討すべきとされております。今後は,これまでの論点のほか,学校組織の在り方や公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法の在り方も含む勤務時間等に関する制度の在り方について,年明け以降,引き続き議論を行っていくとされており,今後とも精力的に議論されていくことになっております。
 最後に,資料3‐3を御覧ください。こちらは高等教育の関係ですが,今年の3月に我が国の高等教育に関する将来構想について諮問がされたことを受け,大学分科会の下に将来構想部会を設置し,更に特に制度的な事柄を扱うための制度教育改革ワーキンググループを部会の下に設置し,2040年頃を見据えた高等教育の将来像を描くために,様々な大学関係者,有識者の方々からヒアリングも頂きながら御審議いただいているところです。
 なお,北山部会長,永田委員,金子委員にも御参画いただいております。
 先般12月15日の大学分科会将来構想部会の合同会議において,これまでの議論を踏まえた論点整理が示されましたので,本日はその内容を簡単に御紹介させていただきます。こちら資料3‐3,今後の高等教育の将来像の提示に向けた論点整理(案),この概要資料を御覧ください。大きい柱として,社会全体の構造の変化,大学教育における人材育成,高等教育の教育研究体制,18歳人口の減少を踏まえた大学の規模や地域配置,教育の質の保証と情報公開という観点から議論を整理しております。
 初めに,社会全体の構造の変化ですが,学術研究や教育の発展,第4次産業革命の進展や,人生100年時代の到来,グローバル化への対応や,地方創生など,我が国の高等教育を取り巻く社会全体の構造が大きく変わる多様性の時代を迎えております。こうした中,右側ですが,大学教育における人材育成として,18歳で入学する伝統的な学生に対しては,急速な社会変化の中でも陳腐化しない普遍的なスキル,リテラシーに加え,第4次産業革命に対応した数理・データサイエンスなどの新たなリテラシーを提供していく必要があります。
 また,社会人に対してはアカデミックな教員による最先端の実践を理論化する授業や,実務家教員による最先端の実践例の提供が求められるとともに,Society5.0に向けた人材育成の在り方について,引き続き議論する必要があります。
 さらに,こうした社会全体の構造変化を踏まえた人材育成を実現するための高等教育機関の研究体制として,将来の人材需要が次々と変わる予測困難な中で,変化に迅速かつ柔軟に対応できる教育研究システムの構築が求められております。このため,社会の変化に共通する多様性といったキーワードに,多様な教育研究分野,多様な教員,多様な学生,それらの多様性を受け止めるガバナンスの在り方について,自前主義から脱却し,学部や大学を超えた多様な人的資源の活用を,少子高齢化の中で実現することが必要でして,個別の具体的な制度改正に向けて議論をしていくものでございます。
 また,18歳人口の減少を踏まえた大学の規模や地域配置については,今後2040年においては18歳人口が約88万人にまで減少し,大学進学者数の推計も現在の入学定員に対して約85%まで減少することが予想されております。
 こうした中,国は全都道府県の大学の配置状況に関する客観的なデータを作成し,それぞれの地域の国公私立大学が地方自治体,産業界も巻き込んで将来像の議論や連携,交流の企画を行う恒常的な体制を構築することが必要となっております。
 教育の質の保証と情報公開については,教育課程,指導方法の改善,学修成果の可視化と情報公開,認証評価について,それぞれワーキンググループでの議論を中心に論点をまとめております。また,こちらの1枚ものの概要資料には記載しておりませんが,今後の検討課題として,教育研究を支える基盤的経費,競争的資金の充実や配分の在り方,そして学生への経済的支援の充実など,教育費負担の在り方などについて将来構想部会でも今後更に議論を行うこととしております。
 今後でございますが,今月26日の将来構想部会において論点整理として取りまとめ,来年秋頃の答申に向けて,引き続き具体的な将来像と,その実現のための制度改正の在り方について検討を続けることを予定しております。
 この部会との関係で申し上げますと,今資料3‐1から3‐3で説明したことも,答申の素案を作る段階で反映させていただきたいと考えております。
 説明は以上でございます。

【北山部会長】
 ありがとうございました。
 それでは,残された時間で,今御説明があった資料に関して,特に,教育投資を充実していくことが必要と考えられる課題について,御意見のある方がいらっしゃれば,お願いしたいと思います。
 それでは,近藤委員,お願いします。

【近藤委員】
 意見というか,質問も入っているのですが,資料3‐1の幼児教育,待機児童の資格の下に矢印があって,2行目,幼児教育の在り方について,安定財源の確保と併せて検討というように書いてあります。この経済パッケージと関係もあるのでしょうが,幼児教育がこれだけ重要と書いてあるにもかかわらず,財源的なことだけで,中身がどのように検討されているのかはっきり分かりませんので,どこで,どのように幼児教育の在り方について検討され,いつ頃をめどに成果物としてまとまるのか,まとまらないのか,その検討の中で,今回エビデンスベースというものが教育の中に入ったわけですが,心や体というのは学校に入る前の幼児の時点も非常に重要だと思いますので,幼児教育の中でも,このエビデンスという考え方を是非取り入れていただきたいと思うのですが,その辺りの審議の経過はどうなっているのか,この3点について伺いたいと思います。

【北山部会長】
 文部科学省の方,いかがですか。

【伊藤初等中等教育局財務課長】
 恐れ入ります。こちらの資料3‐1を何枚かめくっていただいて,2‐3とページが振ってあるところを御覧ください。幼児教育の重要性については,かねてから様々な先行研究等,また諸外国の研究結果などございまして,今回の無償化につながってきております。幼児教育の在り方について検討すると書いている部分,資料2‐3の真ん中より少し下,待機児童の解消というところのすぐ上ですが,少子化対策及び乳幼児期の生育の観点から,0歳から2歳児保育の更なる支援について,また,諸外国における義務教育年齢の引下げや幼児教育無償化の例等を幅広く研究しつつ,幼児教育の在り方について,安定財源の確保と併せて検討する。幼児教育根本の部分の在り方の検討というよりも,周辺的にどのように広げていくのか,0歳から2歳児で待機児童が現実にいるということも踏まえながら, 2歳児の預かり保育も含めて,財源との兼ね合いの中で在り方をしっかり検討し,その対象を決めていかなければいけない。これは文部科学省のみならず,子ども子育て本部がある内閣府,また厚生労働省とともに,検討いたします。年明けから3府省で集まり,また有識者の方々も必要に応じて入っていただきながら検討を始めていくので,現時点で何か決まっているわけではございませんが,しっかりと取り組んでまいりたいということを,この閣議決定の中にも書いております。

【近藤委員】
 確かに財源は必要なのですが,中身が非常に重要だと思っております。エビデンスベースで小学校,中学校を追っていこうということになったのですから,厚生労働省の管轄になるのかもしれませんが,何としても皆さん方から,是非力を押していただいて,小学校に入った途端に急にエビデンスという話ではなくて,幼児教育の時代からエビデンスベースの考え方で着実に継続していただきたいと思います。日本の教育の在り方として,こちらで言うだけではなくて,是非厚生労働省の方にもそういった形できちんと実現していけるよう頑張っていただければとお願いしておきます。

【伊藤初等中等教育局財務課長】
 ありがとうございます。

【小松文部科学審議官】
 補足をさせてください。今ここに書かれております幼児教育の在り方については,今後のスケジュールと説明したとおりでございますが,先ほどの御質問を伺っておりますと,現実に子供が育っていく道筋として,幼稚園の現場,地域の現場でどのように改善が図られていくのかということとの関係をどうするのかという御質問が含まれているかなと思いました。
 その件については,私ども手法としては,保育所も含めて,あるいは更にその外延もありますが,幼児教育の体系をきちんと作って,発達段階や地域に合わせてやっていかなくてはいけないのですが,それは幼児教育という意味では幼稚園が中心になって,従来は幼稚園教育要領を改訂し,それに合わせて教員の養成をして進めていくということにしておりました。今回,中央教育審議会の別の部会で御審議も御協力いただきまして,学習指導要領等の改訂が行われておりますが,教科書が必要ありませんので,幼稚園教育要領の改訂実施は先に進みますから,それを合わせて一つの核を作っていくこととなります。保育所の方たちにも入っていただいていますので,保育所保育指針に反映されるような形にして,そして認定こども園を管轄する内閣府と,3府省でやっていきます。
 一方で免許を与える教員養成課程については,一昨年の秋に法改正が行われていて,現在,大学での養成課程を直しつつあります。したがいまして,この一,二年で新しい幼稚園教育要領を核にした形に移っていくということが進んでおります。
 御指摘のように,それを財源の問題で,幼児教育を受けられるようになった方々が,より良い教育を受けられるような形になるようにうまく組み合わせるところ,この辺りを1月以降,先ほど伊藤課長が説明いたしました全体の中で,更に新しい財源の問題,政策が出てきましたので,併せて組み合わせられるような形にしていきたいと思っております。

【近藤委員】
 ただ,PDCAが回せるような,エビデンスが何かその中に入っているというところまでは,まだ来ていないという理解でよろしいですか。

【小松文部科学審議官】
 学習指導要領や幼稚園教育要領については,今まで実施の状況調査を併せて行ってきているのですが,それを今回の形も含めて更にブラッシュアップして,新しい教育振興基本計画の中で,より充実した形にしていくことになるかと思いますので,ここでの議論を反映させていただければと思います。

【北山部会長】
 小松文部科学審議官,ありがとうございました。
 それでは,羽藤委員,お願いできますか。

【羽藤委員】
 どうも御説明ありがとうございました。3‐1のところの高等教育の給付型奨学金,授業料の減免に関するところです。もちろん,内閣で決定されたということで,消費税をベースにしておりますので,所得が低い家庭の子供たちに限って無償化というところは,これは筋が通っているのかなと思う反面,実際教育や研究の現場でやっておりますと,優秀な学生に対する給付型の奨学金というのは,この閣議決定された新しい経済政策パッケージの後半の方を見ておりますと,相当数Society5.0の社会改変,あるいはそこにおける教育などの質の向上というのは意識されているのかなと思います。是非民間企業と組んだような形の寄附等による給付型奨学金の創設やマッチング,こういったところの御努力を文部科学省さんの中でもやっていただきたい。消費税が上がったからその財源を使うということではなくて,民間企業による給付型の奨学金の創設,これは我々の大学の内部で努力してやっているところがあって,留学生などですと,海外進出した企業が留学生の奨学金とセットでやりたいといったことを申し出ることも多いものですから,これだけ社会の中で新しい研究開発が要望されているので,是非優秀な学生さんに向けての給付型奨学金の企業とのマッチングといったことについてもお考えいただけたらと思いました。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 田中委員,お願いできますか。

【田中委員】
 ありがとうございます。私のコメントは,恐らく近藤委員の御意見に関連するものかと思います。無償化に関連することです。本来政策というのは社会課題の分析をして,そこで公平性,公正性に配慮しながら最大の効果を生むような施策を作って予算を充当するというのが政策の在り方だったと思いますが,それが無償化ということで,政策の作り方のパラダイムが変わるような大きな出来事ではなかったかと思います。
 政治の話を持ち込むのは適当ではないかもしれませんが,私が理事を務めている言論NPOというところで,選挙の前に主要な各政党のマニフェストを全部評価をしたのですが,無償化についてはほとんどの政党が掲げていて,しかしその根拠はなくて,何となく無償化だったのです。ですから,近藤委員が指摘されていて,なかなか答えられないのは当然ではないかと思うのです。だからこそ後付けの理由かもしれませんが,無償化に関しては効果が出るところもあるでしょうし,もしかするとお金が無駄に使われてしまうところもあるかもしれないので,こここそエビデンスで検証をするべきではないかと思います。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 中井委員,お願いします。

【中井委員】
 すみません,資料3‐3なのですが,個別のお話になって恐縮なのですが,なかなか発言する機会がないので,ここで言わせていただきたいと思います。高等教育の将来像という中で,今高校教育の現場では探求型学習を推進していくという大きな流れの中で,探求型学習にかなり力を入れている学校も多くなっている。また,多様な教育の場を創出する中で,特化型,専門的な学習を進んで自らやっていこうという生徒も増えており,こうした中で,大学との連携というのが非常に重要だと思っています。これまでも大学の講座に生徒を受け入れてくれている大学はあるのですが,例えば高校の授業時間とのすみ分けを配慮してくれる,あるいは卒業後その大学に入ったときに,高校のときに取った講座について単位認定してくれるなど,諸外国でも既に行われているようなことが,まだ十分広く行われている状況ではないので,高大接続と言われてきまして,共通テストについてはほぼ具体化されておりますが,もう少しそういった日頃の学習活動における高校と大学との接続,連携というものを今回の将来像の中で議論をして具体化していただければ有り難いと考えております。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは,この議題3についてはここまでといたします。あと10分弱ありますが,1番目の議題の最後で山脇委員と柘植委員の御発言のお時間をとることができませんでしたので,御希望があればここで御発言していただければと思います。では,柘植委員,お願いします。

【柘植委員】
 簡単に。資料1‐1の7ページのところで,総合教育政策局を作るということはとても期待しております。いよいよこのような段階になったのだなとうれしく思います。その上で,他省庁で既にこのようなものを作っているところもあれば,これから作るというところもあると思います。教育の話題は他省庁もかなり関係しているものも多いと思いますので,連携体制や,あるいは国内外の状況を把握するというような,つまりEBPMの在り方そのものを調べていく,研究していくような部門というのか,機能を持つといいのかなと思います。
 それからもう一つ,先ほど働き方改革ということで,EBPMを始めると,学校や教育委員会は大変だという話がありました。二つ目の機能として地域を支援したり,地域の取組をうまく監視してあげて,返してあげるような役割を持つ,あるいは部署を持つといいのかなと思いました。
 それから,第3期の計画の最後の方で振り返ればいいことなのかもしれませんが,そもそも1期,2期と違って3期でこのようにEBPMを取り入れていくということで,大きなパラダイムチェンジをするわけですから,そもそもそれがうまくいったのかどうかというようなことを全体的に振り返るような機能も持つといいのかなと思いました。
 最後,最初にどなたか発言したことなのですが,よく理解されていなくて,エビデンスは数量だけではないのですが,誤解があるということで,このような方向でこれから進めていくということを,地方や,教育委員会,もしかしたら一般市民の方,研究者にも分かりやすいように,うまく広報していくというような機能も,この総合教育政策局が持つといいのかなと思いました。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございました。
 それでは,本日はここまでといたします。今後は,第3期の教育振興基本計画期間中に特に重点的に教育投資を充実していくことが必要な課題について,部会で議論を深めていきたいと考えております。
 それでは,部会全体の方の次回の日程について,事務局からお願いします。

【内田教育改革推進室長】
 資料4を御覧ください。次回,第20回ですが,1月22日10時から,本日と同じ文部科学省の第二講堂で行う予定としております。議題等は,追ってお知らせいたします。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは,年内の教育振興基本計画部会は本日で終わりで,次回は年明けになります。皆さん,どうもありがとうございました。良いお年をお迎えください。

―了―

お問合せ先

生涯学習政策局政策課

改革企画係
電話番号:内線:3279

政策審議第一係

電話番号:内線:3458