教育振興基本計画部会(第8期~)(第18回) 議事録

1.日時

平成29年11月17日(金曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 「第二講堂」(旧庁舎6階)

3.議題

  1. 客観的な根拠(エビデンス)を重視した教育政策の推進について
  2. 「第3期教育振興基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過について」に関する意見募集並びに総会及び各分科会での審議結果等について

4.出席者

委員

 北山部会長,河田副部会長,明石委員,阿部委員,石田委員,大竹委員,金子委員,川端委員,菊川委員,白井委員,高橋委員,柘植委員,戸ヶ﨑委員,中井委員,永田委員,羽藤委員,丸山委員,宮本委員,百瀨委員,山内委員,山脇委員

文部科学省

 小松文部科学審議官,常盤生涯学習政策局長,高橋初等中等教育局長,藤野サイバーセキュリティ・政策評価審議官,村田私学部長,神山大臣官房審議官,塩見文部科学戦略官,瀧本大臣官房審議官,萬谷生涯学習推進課長,八木社会教育課長,土肥青少年教育課長,矢野初等中等教育企画課長,堀野高等教育企画課高等教育政策室長,氷見谷生涯学習政策局政策課長,内田生涯学習政策局政策課教育改革推進室長,寺坂生涯学習政策局政策課教育改革推進室長補佐,他

5.議事録

【北山部会長】
 第18回教育振興基本計画部会を開催いたします。まず冒頭に,答申取りまとめに向けたスケジュールについて御報告いたします。これまで,年内に答申を取りまとめる方向で議論を進めておりましたが,御承知のとおり,人生100年時代構想会議において政府全体で,全ての人に開かれた教育機会の確保や負担軽減,無償化,何歳になっても学び直しができるリカレント教育など,教育振興基本計画に関連が深い点が議論され,年内にも中間報告がまとめられる予定となっております。
 こうした政府全体の動きを踏まえた上で,中央教育審議会としての考え方を取りまとめる必要があると考えております。したがいまして,この基本計画の答申の取りまとめの時期につきましては,従来よりも2,3か月程度延ばすこととし,今回と次回は,客観的な根拠を重視した教育政策の推進に関する審議を進めることとしたいと考えております。
 最終的な閣議決定のスケジュールについては,現時点でははっきりしたことは申し上げられませんが,今申し上げましたとおり,政府の動きなどを踏まえながら,進め方を考えていきたいと思います。
 本日は,客観的な根拠を重視した教育政策の推進と,9月に皆様に御尽力いただき取りまとめを行いました「審議経過」についての意見募集,パブリックコメントの結果や,ほかの分科会などからの意見等を踏まえ,意見交換を行いたいと思います。
 なお,議題1に関して,戸田市における客観的な根拠を重視した教育政策の取組に関する御紹介を,戸田市教育委員会の渡部教育政策室長から頂くこととしております。どうぞよろしくお願いします。
 それでは,まず,事務局から配付資料の確認をお願いします。

【内田教育改革推進室長】
 配付資料ですが,資料1‐1と1‐2,資料2‐1から2‐3,資料3となっております。タブレット端末にも参考資料を入れております。配付資料について,過不足あれば事務局までお知らせいただければと思います。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは,早速議事に入りたいと思います。まず,文部科学省事務局から資料1‐1について御説明をお願いします。

【内田教育改革推進室長】
 資料1‐1に基づいて御説明申し上げます。
 今,部会長からもお話がございましたが,本日からは諮問事項の二つ目にございます客観的な根拠(エビデンス)を重視した教育政策の推進について御意見を賜りたいと思います。答申の素案までに,今回と次回の2回に分けて御審議を賜れればと思います。
 資料1‐1でございますが,1枚おめくりいただければと思います。1ページ目ですが,このページに全体像をまとめてございます。国としてのPLAN,DO,CHECK,ACTIONが回るようにしておりまして,PDCAの各段階において,どのようにエビデンスを重視して教育政策を推進するかという全体像を記してございます。
 一番上のPLANのところですが,まず企画・立案段階として,これまで行っておりますロジックモデルによる体系的整理がございます。また客観的な根拠に基づいて個別施策の立案を進めていくという方針や,指標設定による客観的な根拠の整理という内容を挙げております。
 右のDOのところですが,毎年度の施策の実施,また地方公共団体等の取組状況把握などを挙げております。
 その左のCHECK・ACTIONの段階としては,基本計画を作って終わりということではなくて,教育振興基本計画部会を通じたフォローアップを実施し,さらには政策評価と一体的に実施をしながら,計画期間内や次期計画に向けた施策の実施・立案を進めていくと記載しております。本日は大臣官房政策課評価室長も事務局として出席しておりますが,今の段階から,こういったPDCAを意識した形で進めていきたいと思っております。
 その資料の一番下のところですが,今申し上げましたPDCAを支える基盤として,省内や国立教育政策研究所のEBPM推進体制構築,総合的・多角的な情報分析に基づく政策立案等のための基盤づくり,データの集約・提供体制等に関する改革の推進を進めていきたいとい思います。
 2ページ以降で,それぞれの内容を具体的に記してございますが,簡単にかいつまんで紹介させていただきます。
 まず3ページ目の上半分のところですが,教育政策におけるエビデンスの重要性の考え方を記しております。客観的な根拠を重視した行政運営の必要性,また教育政策には他の政策分野と比較して成果が判明するまで長い時間を要するものが多いこと,成果に対して他の要因が強く影響している場合が多く,政策と成果との因果関係の証明が難しいものが多いことなどの特性もございますので,数値化できるもデータ・調査結果のみならず,数値化が難しい側面についても可能な限り情報を収集・分析し,総合的・多角的に判断して企画立案等を進めていくことで,PDCAサイクルを構築していくことの必要性を記載しております。
 以後,同じページの下半分のPLANの段階としては,ロジックモデルの活用,4ページ目に行きまして,下の方に指標設定における留意点を記載しております。指標設定における留意点については,今の審議経過の中で記載している内容と同趣旨でございます。
 5ページ目はDOの段階ですが,毎年のフォローアップやエビデンスに基づく政策立案ができる職員の育成,そしてそのために必要なスキルはどのようなものかという例示をしております。さらに,その下には国と地方公共団体等とで情報交換・意見交換を進めることの重要性について記載しております。
 6ページ目はCHECK段階での政策評価との一体的実施,ACTION段階での教育振興基本計画部会によるフォローアップを踏まえた計画期間内における施策の実施,次期計画における施策の立案という検証改善サイクルの確立についての御説明でございます。
 7ページ目ですが,PDCAを支える基盤ですが,このページ以降の全体像を1枚でまとめさせていただきました。来年度,文部科学省の生涯学習政策局を改組して生まれる総合教育政策局(仮称)を中心とした体制の構築,特に政策調査課が司令塔になり,情報収集等に関するガイドラインの策定,横断調査に加えた縦断調査・経年調査の実施,データのオープン化のためのデータの集約化・電子化,二次利用手続簡素化といった方針を記載しております。
 右側の省内各局と情報収集や分析を連携しながら進めていくこと,さらに右側の国立教育政策研究所とも連携して,EBPMに資する研究の推進,情報の収集,整理,共有化等を進めていくことを記載しております。
 また下の方には外部の研究機関とも連携していくことも記載しておりまして,こういった一連のことを通じて,データの二次利用を促進し,教育政策の改善・充実に活用できる分析結果の増加につなげていくことを目指したいと思っております。
 8ページ目以降は,今申し上げた内容を,詳しく文章化しているものでございます。
 例えば9ページ目でございます。丸1のところですが,数値化の難しい情報の分析や,情報間の相互の連結,調査結果と学校情報とのリンクなど,総合的・多角的な分析のためのルール作りを進め,省内ガイドラインを整備することを記載しております。また丸2ですが,質的調査の充実として,インタビュー調査や文献調査を充実していくこと,また丸3ですが,本省や国立教育政策研究所に専門家を配置して研究者との連携を強化していくことについて記載しております。
 10ページ目ですが,データを実際どのように扱っていくかということについて,例えば丸3のように,データの種類に応じた貸与手続に関するガイドラインを整備することによって,政策にいきてくるような研究を促し,教育政策にもフィードバックできる状態を作っていきたいと考えております。
 最後,11ページからは参考資料ですが,これまで生涯学習政策局の職員が中心となり,様々な有識者からヒアリングをさせていただきまして,その結果を記載しております。こういったヒアリング結果も参考にしながら,今御説明申し上げた案を事務局として用意させていただきました。
 また,文部科学省が実施する統計調査の一覧を記載しておりますが,更に業務統計もございますので,こちらの方は,別の機会に御紹介したいと思います。この一覧に関しては今,国としてどのようなデータを持っているのかを一覧として示した方が良いというアドバイスを部会長から頂きまして,用意させていただきました。こういった情報を基に,更にこのようなデータや調査も必要ではないかという御意見や,今,申し上げた体制づくりについての御意見を頂戴できればと思っております。
 また,私の次に戸田市さんからも御発表がございますが,こうしたエビデンスに基づく政策づくりを国,地方一体となって進めていきたいと考えている次第です。
 説明は以上でございます。

【北山部会長】
 ありがとうございました。
 それでは,戸田市の取組について,戸田市の教育委員会,渡部教育政策室長から,御説明をよろしくお願いします。

【渡部氏】
 改めまして,戸田市教育委員会教育政策室長をしております渡部と申します。
 早速ですが,資料1‐2の1枚目につきましてですが,学校現場の現状として,教員個人単位での経験や勘に頼った指導,思考停止した前例踏襲主義,チョークと黒板だけで勝負するんだ,ICTなんか興味ない,フラッシュカード大好きみたいな個人的な嗜好(しこう)による指導が行われているという実態がございます。
 2枚目と3枚目につきましては,本部会でも十分に議論されていることと存じますので割愛をさせていただきまして,4枚目ですが,そのような社会変化に対応するために学校教育に外の風を取り込んでいく必要がある。そこで産官学民の知のリソースを活用するための連携を進める必要があるのですが,CSV,インタラクティブと言われますように,お互いが対等な立場としてウイン・ウインの関係を築くということを大事にしております。
 5枚目になりますが,真の協働者となるためには,教育委員会や学校は企業等が提供するサービス等の単なる受益者や消費者になってはいけないと,これは厳しく教育長からも指導されております。そのためには確固たる教育意志というものを持っていなければならないと考えているところでございます。
 また,ここが最も重要なポイントかと思いますが,学校や教育委員会には様々なデータがあるにもかかわらず,それを十分に生かせていないという現状がございます。特に埼玉県では,独自に実施している学力・学習状況調査というものがございまして,これはIRT,いわゆる項目応答理論,PISA調査やTOEIC,TOEFLなどでも使われているものですが,それと各個人を小学校4年生から中学校3年生まで経年的に追っていくことができるパネル調査であるということを特色としております。
 さらに,そこに戸田市は,教員個人に指導方法等に関する調査を独自に追加で実施することによりまして,どのような教員の指導方法が成果を上げたのか,どのような資質能力を備えた教員が成果を上げたのかを,エビデンスに基づいて明らかにするための研究を今進めているところでございます。
 これは全国の学力・学習状況調査や埼玉県の調査でも同様なのですが,教員個人単位に質問調査をするのではなく,学校質問紙調査という形で調査が行われております。
 例えばアクティブ・ラーニング型の授業への改善に力を入れていますかという問いがあったとすると,学校の中には,そうである人と,そうでない人が混在しています。その場合,校長がどう答えるかというと,恐らく力を入れていますと答えるのではないかと予想されます。職員会議でもそのように指導しているのでと。
 それでは,アクティブ・ラーニング型の授業が従来の講義型の授業と比べて学力を向上させるのに効果があるのかどうかということが本当には分からない。それを教員個人単位に分解することによって,どの先生の授業を受けた子供の成績がどう変化したのかということが分かり,より正確に指導方法等の効果を測ることができるのではないかということでございます。
 本市ではプログラミング教育の本格実施に向けても,グーグルやソニーなど数多くの企業と連携して試行錯誤を進めておりますが,そういった新たなツールが入る前と入った後で,何がどのように変容したのか。分かりやすいのは,もちろん学力ですが,質問紙調査では非認知能力についても聞いておりますので,そこがどのように変容しているのかも見ることができます。
 形は違っても各自治体,各学校には,そういったエビデンスを創出するための環境や素材がそろっているはずです。そういったことを積極的に情報発信することによって,また新たな情報が集まってきます。
 それだけ産官学民は教育委員会や学校との連携を求めているということですし,裏を返せば学校や教育委員会はまだまだ閉鎖的な世界だと受け止められているということだと思っております。
 6枚目でございます。教室を科学したいと考えております。これは教育長が,現場で教えている頃から夢見ていたとよく言っておりますが,子供や親は教員を選ぶことができないからこそ,どの学校のどの学級でも授業の質は一定程度担保される必要があります。人が人を相手にしますので,差が生じるのは,それは必然です。ただ,ある一定の質的ラインを確保した上で,なるべくそれを引き上げていきたいと考えています。
 それには個人プレーに頼っている今の技術,今の教育から脱することが必要です。授業名人や,匠と呼ばれているような優秀な教員の指導技術のどこが本当に重要な部分なのかを科学的に明らかにし,それを若手教員に効率的に伝承していくことで,全国レベルでも質的ラインを確保,向上させることができないかと考えています。
 7枚目でございます。例えば子供の理解度や授業の成功度,教員の授業力等を数値化したいということで,右側の方に卵が三脚に乗っているような写真がありますが,これは,あるベンチャー企業が開発したもので,議論を可視化しようとするものでございます。まだ名前は付いていないので,我々は勝手にエッグと呼んでいますが,いわゆるアクティブ・ラーニングの要素としての対話的な学びについて,授業の中で,誰がどのぐらい何を話しているのかを記録することができます。授業の評価として,教員が話し過ぎているのではないか,対話はしているけれど深い学びにつながっていくような対話の内容になっているのかを客観的に評価をすることができます。
 子供が対話しているときは,教員は机間指導で,それぞれのグループの様子を見ながら介入をしていくのですが,同時進行している全てのグループの議論をウオッチすることは当然できません。事後的にではありますが,波形が出ますので,議論の転換点や盛り上がりを,ある程度特定して振り返ることができるという意味でも,教員がこれまで気付くことができなかったところをフォローアップすることができるようなものになっています。
 また,短時間での楽しく効率的な学習やアダプティブ・ラーニングというところでは,右下に雪男のようなロボットがいますが,これはMusioというソフトバンクが提供しているものでして,ネット回線を通じてAIと英語でやりとりをすることができます。
 次期学習指導要領では小学校での英語の教科化と早期化ということで現場でも準備が進められておりますが,本市ではALTが全ての学校に常駐をしており,現在の英語活動は全てALTと教員とのティーム・ティーチングで行っておりますが,授業時数が増えてくると,それも対応し切れなくなります。そこで,英語が苦手な教員の英語の授業を補完するという意味も含めて,英語でのやりとり,また発音のチェックをすることができるロボットを導入し,それぞれの能力に応じて学習を進めていくことができるような授業展開につきましても実証的な研究を進めているところでございます。
 8枚目は,これまでの説明と重複するところがございますが,エビデンスを創出するためのツール,環境を持っていることで,戸田市とタッグを組みたいという企業やその他研究者の方が,今ひっきりなしにいろいろな話を持ち込んでくる状況です。
 9枚目は,先ほども申し上げました県の調査の説明で,10枚目は,これまでお話ししたエビデンスに基づく教育施策の推進の概略図でございます。
 11枚目と12枚目は,昨年までの2年間の調査結果からの分析でございます。非常に簡単に要約しますと,アクティブ・ラーニング型の授業は子供の学習方略――これは学習のやり方と理解してもらえれば結構ですが,それと非認知能力を向上させることと相関があり,そしてそれらが認知能力,つまり学力の向上と相関があるといったことが研究者の分析から明らかになっています。まだまだ研究の途上でございまして,課題などが様々浮かび上がっており,試行錯誤をしている況でございますが,本市の各学校では,こういった分析結果も踏まえた上で学力向上プランを立てまして学校運営に取り組んでいるところでございます。
 その結果もあってか,明確なエビデンスは示せないのですが,学力調査の結果,県内ではトップクラスを誇っておりまして,さらに,その伸びを見られるというものは埼玉県の学力調査の特色でもあるのですが,高いレベルにいながらも学力の伸びもキープできているというところですので,引き続きエビデンスに基づきまして教育政策の推進を進めていきたいと考えるところでございます。
 以上,大変足早になりましたが,戸田市教育委員会の説明を以上で終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。

【北山部会長】
 渡部さん,ありがとうございました。大変参考になりました。
 それでは,意見交換に入りますが,この議題1については,二つに区切って意見交換を行う段取りとしたいと思います。具体的には,まず客観的な根拠を重視したPDCAサイクルに関して,すなわち資料1‐1の6ページまでについて御意見,御質問があれば,お伺いします。その後,資料1‐1の7ページ以降,すなわちPDCAを支える基盤についての意見交換に関する意見交換を行います。時間は十分とれますので,御意見のある方は,名札を立てていただければと思います。よろしくお願いします。
 それでは阿部委員,お願いします。

【阿部委員】
 ありがとうございます。この分野については私もふだんから非常に思うところがございますので,この場をかりて意見を述べさせていただきたいと思います。
 私は貧困の専門家ですので,子供の貧困のことを主にやっておりますが,皆様御承知のように今,内閣府が各自治体さんに子供の貧困に対する調査のための補助金を付けているということもありまして,2年ほどぐらい前から各自治体さんや基礎自治体,また都道府県レベルの多くの自治体において子供の貧困実態調査,生活実態調査という名前で行われていることがあります。これは,非常に全国的に広まっていると思いますが,個人的に今もオンゴーイングで,10以上の自治体さんのコンサルタントのような役割で,アドバイスをさせていただいております。
 その中で思うことですが,まず一つ目の議題に関して,恐らく今までは学校で集めるデータ,例えば学力や学習状況など,そういったデータは文部科学省に非常に多く蓄積されているかと思いますが,この部会の中でも何度も議論に上がりましたように,今は子供が全て真っ白な白い卵という状況ではない中で,家庭状況などに非常に大きな格差が出てきてしまっておりますので,例えば耳塚先生がやっていらっしゃるように,やはり学力などに関しても,家庭の状況と,非常に相関があることは,明らかになってきていますので,学校での状況だけでは,なかなかエビデンスは作れないと思います。
 そうしたときに私も,保護者に対しての調査も同時にやっておりますが,大抵の場合,自治体さんの中で子供部門か,又は福祉部門の方が,一番にそういった話を持ち掛けてくるのですが,いつも教育委員会からエビデンスに基づくものが必要だとストップされてしまいます。そのときに家庭の状況などということも知っていかなければいけないのだということが,徹底されていないと思います。
 聞くところによりますと,各自治体さんにおいては自分のところの子供の何%がひとり親世帯かということさえも分からないといった状況だということですので,やはりこのような状況では,一番大きなコントロール変数がありませんので,エビデンスにはなかなか基づけない。そこがやはり必要であると思います。
 あと,2番目の議題もついでにお話しさせていただいてもよろしいですか。

【北山部会長】
 どうぞ。

【阿部委員】
 二つ目の,その基盤といったところなのですが,先ほど研究者との協力というお話で,二次利用の話もありましたが,国の調査については統計法に縛られておりますので,二次利用の手続ができるようになっております。しかし,自治体レベルのものは統計法に縛られておりませんので,これは研究者が,たとえそこに全面的に協力して行ったとしても論文化することができないという状況になっています。このような中では,やはり研究者側としては,やろうとするインセンティブが非常にそがれてしまうと思います。今お話を聞いた戸田市さんのような先駆的な自治体さんもあるかと思いますが,大多数の自治体ではそのようなことができていない状況にあるといった中で,やはりそういった取組が各自治体レベルでもきちんととっていくということを徹底していただきたいと思いました。
 また研究者との関わりにおいても,このような取組が一つの自治体であれば,いろいろな研究者がそこに入り込むということが可能なのですが,全ての自治体では無理です。全ての自治体に大学があるわけではないですし,その大学にそのような取組ができる研究者がいるかどうかも分からない。それも今の状況では,無償で,データがいつ使えるようになるかどうかも分からない状況でやってくださいと言われても,研究者側としては非常に疲弊してしまうということが,ついこの間も学会等でトピックに上がりました。
 したがって,そういったところのエビデンスを構築していくためにも,やはりお金が必要です。今は民間のコンサルタントに投げてしまう自治体がほとんどなのですが,民間のコンサルタントだと単純集計をするだけで終わりになってしまいます。単純集計だけではエビデンスになりませんので,分析する研究者を含めてやっていくためには,やはり財政的なバックアップも必要です。何千万人の調査をするのに,内閣府から自治体への補助金の最高額が300万円なので,300万円で調査ができませんかというようなお話を日々受けています。これではどうしても限界があると思いますので,この財政面でのサポートについても,やはり国レベルで検討していただきたいと思います。

【北山部会長】
 ありがとうございました。
 それでは,柘植委員,お願いします。

【柘植委員】
 先ほど資料1‐1ということでしたけど,戸田市さんの発表を聞いていまして,とてもうれしくなったというか,ここまでされている自治体があるのだなと。質問を先に言いますと,戸田市さん以外で,このような水準までいっているところは,どれぐらいあるのか,幾つあるのか,具体的にどことどこなのかということが分かれば知りたいなと思いました。
 あとは感想ですが,5ページのところで,どのような教員の指導方法が成果を上げたのか,どのような資質能力を備えた教員が成果を上げたのかということをプレポストで見ていく,相関レベルではなくて因果レベルまで追求しようということについて,心理学や教育学ベースに研究している私としては,心理学でよく用いられる主要な手法の一つですので,大学や企業さんと連携しながらということが功を奏しているのでしょうが,ここまでの成果を上げているのはすばらしいなと思いました。
 それから,もう1点は経年変化。後で基盤のところでもお話ししようと思いますが,縦断研究,日本は特にこの教育のところで非常に弱いです。しかし,先ほど予算のということもありましたが,いろいろ工夫すればそれほど複雑な研究方法論でもないので,やると決めるかどうか,お金をつぎ込むかどうかという判断かなと思います。経年変化も見ていっていらっしゃるということで,今後,全国の自治体が,この計画が4月に出て,いよいよ取り組むというときの一つのモデルとして考えていいのかなと思いました。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。戸田市のような取組は,ほかの自治体でも行われているか御存じでしょうか。

【内田教育改革推進室長】
 全国的な取組の状況ですが,本日は近藤委員は御欠席ですが,東京都足立区の例なども参考になると思っておりまして,児童生徒の学力調査と家庭の社会経済的な状況など福祉的な部分のクロス集計を検討されていると伺っております。また大阪府箕面市では,学力調査の結果と子供の生活状況などをリンクさせて分析して,効果が上がっている事例を集めて,それを普及していくといった取組をされております。さらに,埼玉県の教育委員会においては,同じ集団を追跡し学力の伸び具合などを分析されていて,伸びないところを特化した検証をするなどの取組もやっておられます。最後に岡山県では今年度からですが,小3から中3まで児童生徒の学力や子供の状況を経年で追い掛けて見られる学力調査を始めたと伺っております。まだ全国的に見れば,それほど多くはないと思いますが,国としてはそういった取組を好事例として全国に普及していきたいと思います。
 先ほど阿部委員からも自治体の取組が肝腎というお話がございましたが,国から考え方だけを示しても,なかなか実行に移すのは難しいと思いますので,こういう先進事例を紹介する形で普及していきたいと思います。

【北山部会長】
 それでは次に,中井委員,お願いします。

【中井委員】
 ありがとうございます。エビデンスを重視した教育政策の推進というのは,当然進めていかなければいけないと認識をしておるわけですが,自治体で日々教育行政を実際行っている者の立場で何点か,実際にそういう状況が生じているところを申し上げたいと思います。
 エビデンスを持って教育政策の是非を議論していこうという空気は,既に自治体の中にも浸透し始めておりまして,とりわけそれを自治体の中の財政部署がかなり敏感に捉えて,エビデンスがどうなのだと,こういう問い掛けを,従前に比べて非常に強く言ってきております。言ってみれば財務省がとっているスタンスと同様のスタンスをとっているわけであります。
 我々はそれに応えていかなければならないわけですが,先ほど御説明があったとおり,やはり教育の成果は概して時間が掛かるということがあります。例えば,モデル授業をまずやって,それで成果を見た上で本格実施するかどうか決めようということになるわけですが,モデル授業を当該年度からやるとなった場合でも,その当該年度の契約は予算が年度末に議会で決定されて,年度が明けてから契約等が始まって,実際に実施できるのは年度途中となります。もう秋には次年度の予算要求の資料を出さなければいけないということで,では成果を次年度の予算要求に間に合わせられるかというと,現実は非常に難しい。そこに更に教育の成果が数年掛かってしまうみたいなものは幾らでもあるわけで,そうするとエビデンスを重視していくことが非常に施策のスピード感をなくすという点が,まず一つあります。
 それから,先ほども出ていましたが,定量的な評価がしにくい,そういった教育政策もたくさんあるわけで,それらについて,ではどうするかということについては,ルール化をして示していくというお話がありましたが,やはり,宿命的に定量化が難しい教育の分野でありますので,そういった定量ではないけど,それに代わるものとして,これをもって,こういった類いの事業は評価すべきだということが定着していかないと,個々の議論をしていると,数値化ができていないから駄目だみたいな門前払いを食らってしまうというところが2点目としてあります。
 それから3点目としては,先ほど阿部先生もおっしゃっていましたが,いろいろな要素が施策には入ってきます。要は,日々子供たちにベストな教育を付与していかなければいけないというミッションを持った我々としては,実験室みたいなことはなかなか現実にはできないわけでありまして,そうすると,いろいろな要素があって,エビデンスとしては十分とは言えないねという反論をされてしまうという面もあります。
 そういう面では,エビデンスを重視した施策の推進というのは当然のことで,それを否定することはできないのですが,現実の問題として,その施策を推進する上で,この取組が結果的に自治体にとって足かせになってしまうような面もあるということで,そのことを十分に意識して,対応をしていかなければいけないと思うわけであります。
 ではどうするかということについては,先ほどからもお話が出ておりますが,やはり各自治体が個別にやって,そのデータをそこにとどめるのではなくて,データをオープン化するということをしっかり意識して,文部科学省さんの方で,その旗振りをしていただいて,容易に全国の自治体の取組が把握できるというようなことが必要です。教育というのは全国共通する部分が大半なわけでありまして,ほかの自治体がやった授業のエビデンスでも,それを当該自治体で活用していいのだ,いくべきなのだという風潮を作っていかないといけません。今の状態は,ほかの自治体のデータというのは参考事例ですねみたいなことを財務の部署から言われます。まず自分たちでやって,それでエビデンスを出してみたいなことを,すぐ言うわけです。
 ですから,そうではなくて,教育というのは全国共通項としてあるわけだから,ほかで出したエビデンスは,それはもう自分たちがやったものと同等で扱うべきだという風潮を作っていかないといけません。何もかにもみんなエビデンスを出して,時間を掛けてということでは,とても一つの自治体としてできませんので,そういった風土も是非醸成するようにしていかなければならないのだろうと思います。
 以上でございます。

【北山部会長】
 ありがとうございます。それでは渡邉委員,お願いします。

【渡邉委員】
 ありがとうございます。私も以前,このエビデンスに基づく教育政策の検討については,政策評価の視点から発言をさせていただきました。なぜかというと,これから2030年をにらんで将来を見たときに,この教育政策の高度化ということが必ず必要になり,そうすると教育投資の充実や教育財源の確保というものが必ず議論されると思うからです。そういったときに,米国や英国のエビデンスの活用の仕方を見習いながら,エビデンスの充実を図って,そういった政策評価というものをしっかり使用して,投資額の必要性についても客観的に説明するべきだという趣旨で以前,発言させていただきました。そういう視点から見ると,今回の案は非常に分かりやすい整理をしていただいたのではないかと思います。
 先ほど御説明いただいた戸田市の例は,大変刺激的だったと思うのですが,これは,エビデンスを政策評価の視点だけではなくて,現場教育の質の向上という視点でどう活用できるのかということを示唆しているのではないかと思います。
 説明の中にもありましたように,実は現場の中にある実践知や暗黙知の中には,エビデンスに相当するもの,あるいは分かりやすく言えば好事例に相当するものが埋もれています。現場でもPDCAを回す必要がありますけれど,そういった蓄積されたものを見える化し仕組み化することによって,それが政策上のエビデンスにもなり得る。それは,ひいては現場教育の質の向上に資するものになる。こういうことを,先ほどの戸田市の説明は示唆しているのではないかと思います。
 そういう視点で見たときに,今のような見える化,仕組み化というものをどうやって行うのかということなのですが,先ほど申し上げましたように,現場ベースで既にある暗黙知の部分を,それこそエビデンスとしてデータベース化する,また好事例として拾っていく。これは定性的な要素も含めて拾っていくということだろうと思います。つまり,現場の教員や自治体の担当者が日々そういったものを好事例として見える化し,共有化できるようにしていくということなのではないかと思います。さらには,PDCAを回すという姿を見える化することによって,この好事例の共有化というものがしやすくなるのではないかと思います。
 それと同時に,国と地方が一体となって行うという説明を先ほど事務局よりしていただきましたが,そのとおりで,こういった地方に埋もれている見える化,仕組み化されたものを地方自治体との連携の中で,これを共有化し,それをデータベースとして蓄積することによって,教育全体の政策の高度化を図っていくことが非常に重要なのではないかと思います。そういった意味で,この教育行政と学校現場,自治体とのコミュニケーションツールとしても,これは使えるものになるのではないかと思います。
 そういったエビデンスの連携をしていく上で,この議論とも絡んでしまうのですが,こ7ページの基盤の図は,文部科学省側の組織と連携先が国立教育政策研究所,それから研究機関ということに限定された姿になっているわけですが,スタートするときの基盤としてはこれでいいのかもしれません。ただ,今後運営していくときに,ここではこのデータの二次利用先として位置付けられている地方公共団体や,大学,シンクタンクに,できれば民間企業も加えていただければと思います。また,こういったところとの連携というものを段階的に進めて,それぞれコミュニケーションツールとして,このエビデンスを使いながら連携をとって,双方に成長させていく,進歩させていく,こういう基盤の使い方というものが重要になってくるのではないかと思います。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。それでは宮本委員,お願いします。

【宮本委員】
 ありがとうございます。エビデンスに基づいた教育政策という全体の方針,重要だと思いますが,縦断調査という点について,少し発言させていただきます。
 私が関わってきたことで,例えば不登校や中退者問題。これは,今回も重要な取組として挙げられております。この学校年齢が終わった20代後半や30代の方々の調査,あるいは支援現場の中で見えてくることの中に,過去における不登校や中退というものが,その後どのような形で20代,30代あるいは40代に影響しているかということが分かってくるわけでございますが,追跡していくタイプの調査というのは大変難しく,日本の中には全国規模での調査をとったところはないと思います。
 実際には不登校や中退というものが何ゆえ起こっているのかということと,その結果がどうであるのかということは,まさしくエビデンスベースの取組が必要でありますが,これは学校教育あるいは教育委員会の範囲の調査では,その効果は表れないわけで,かなり広範な調査手法でやる必要があると思います。
 しかしながら今,学校教育の範囲の中での調査というのは,小学校は小学校で終わりですし,中学は中学で終わりという具合にして,各学校段階で切れてしまいます。ましてや学校が終わった後どうなるかに関しては,今度は文部科学省の範囲を超えてしまうということで,ほとんどできない状況にあります。
 そういう点で,縦断調査を本当にやるのだとすると,やはり文部科学省の範囲を超えた連携体制の中で実施する必要があるだろうというのが第1点でございます。
 その一方で,このエビデンスベースで,このような教育施策をやるということになると,下手をすると調査が乱発されることになる。先ほどから,その資金をどうするのかというお話が出ていますが,調査をやるにはお金も人も掛かり,本当に使える優れた調査をやるためには,あちこちで乱発するのでは駄目ではないかということでありまして,今,重要な調査は何かということ,その戦略をきちんと定めて,もちろん自治体ごとにやるということの意味はありますが,共同でできるところは共同ですることによって,より質の高い調査をやる必要があるのではないかという感じがしております。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。それでは金子委員,お願いします。

【金子委員】
 今おっしゃっていたことはほとんど賛成なのですが,一つだけお願いしたいのは,この中に教育学という名前が出てきておりました。私は教育学者としてここに出ておりますが,教育学者は,今議論されていることを,それなりに今までずっと蓄積を持っていまして,データに関しては,これまで日本のデータは国際的に見れば決してデータの幅自体は悪くないのですが,公開されていなかったために十分な分析が行われてこなかった。やはり分析というのは非常に重要で,それなりに教育学者は今まで経験もありますし,国際的な動向も踏まえているわけですから,是非,教育学というものの存在を認識していただきたい。
 特に教育学部は今,少し実践から離れていると見られ,実践を重視しようという政府の方針が出ています。そのかわり,こういった分析能力を使うということに必ずしも慣らされていないのではないかと思います。
 そういった意味で,教育学を組織として使うということも非常に重要な点で,アメリカの調査分析を見てみますと,個々の研究者がやっているところもあるのですが,教育学部にいろいろな教育研究センターを作って,それが自治体などと協力して,調査分析などを行うというのがよくあるパターンです。そういった,既存の組織やリソースをうまく使うという観点を是非入れていただきたいと思います。

【北山部会長】
 ありがとうございます。白井委員,お願いします。

【白井委員】
 ありがとうございます。やはり戸田市さんの御発表,本当に大変参考になる事例かと思いまして,ありがとうございました。感想半分,質問半分なのですが。
 こうして現場,自治体の方でしっかりPDCAを回して,結果を子供たちへの指導法にしっかり還元をしていくということで,初めてデータをとる意味があるということが非常に分かりやすい好事例だと思います。私は,生徒指導や教育相談の分野などでも,こうした分析や暗黙知の集積ができていったら非常に画期的だろうなという夢も持ちました。
 質問としてお尋ねしたいことなのですが,まずこういうことを現場の方でしっかり推進するということで,いわゆる匠の先生方の受け止めというか,やはり,学校でのチーム感やチームワークなどにも当然変化が出てきているのではないかと思うのですが,そういうところ,どのように感じておられるかを教えていただければということが一つと,あとはもう一つ,やはりこういうものを広げていくのに,戸田市さんの場合は本当にトップの方のリーダーシップが非常にあって,発信力もあって,中央や民間とのパイプもおありになるというような条件がそろっているということを伺っておりますが,そういう背景がない自治体でも,こういうものをしっかり広げていくために,どういう条件整備が必要なのかということについて,何かヒントでも頂ければ有り難いと思います。よろしくお願いいたします。

【北山部会長】
 ありがとうございます。戸田市の渡部さん,お願いできますか。

【渡部氏】
 ありがとうございます。まず1点目の,いわゆる匠と言われるような先生の受け止めというお話がありましたが,今,教員の年齢層構造,中間のところが非常に減って若手教員がすごく増えていて,退職間際の人たちの,正に匠の技術をどう伝搬するのかということは,匠の先生自身が課題だと感じています。それプラス自分の指導法が本当に成果を上げているということが,いわゆるエビデンス,科学的に明らかになるということに対しても非常に前向きに捉えているところがありますので,受け止める若手の教員からしても,単にうまい,あの先生だからできるのではないかということではなくて,それが自分にもできるのではないかということで,基本的に教員は,そのハウツー部分をとても知りたがりますので,そういう点については非常にいい感じで回っているのではないかなとは思っています。
 もう1点目の広げるためのリーダーシップや条件整備という話に関しましては,先ほど私の説明の中でも,どこの学校,どこの学級にも,そういったエビデンスを創出するための生データみたいなものはいっぱいあるはずだというところは申し上げたとおり,いろいろなものが,形は違っても,あると思います。
 少し話はずれてしまうかもしれないですが,埼玉県の学力・学習状況調査もさいたま市を除きますが,県内の全ての自治体でやっておりますので,基本的には戸田市と同じような環境というものは,どの自治体にもそろっています。戸田市がトップランナーでやった取組については,特に首長さんで興味を持たれる方が多く,教育長に戸田市で話を聞いてこいという形で,いろいろな方から視察を頂きまして,それが県内にも今広がり始めています。さらには,ほかの都道府県からも視察が来ておりまして,埼玉県学力・学習状況調査でございますが,当然,県を越えてはできなくなってしまうのかというと,そうではございませんので,埼玉県の教育委員会が直接他の県の自治体と連携をさせていただいて,来年度以降,他県にも広がっていくという話が今,進んでいるようなところはございます。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 先ほど二つに区切って意見交換を行うと申し上げましたが,ここからは二つ目のテーマも含めて御意見を伺います。
 では,高橋委員,お願いします。

【高橋委員】
 戸田市の御報告をお聞きしまして,本当にすばらしいなと思いました。課題がはっきり見えているというところが,ここまでの成果につながったと思います。
 今回のエビデンスを重視した教育政策の推進についてですが,ここでは2点お話ししたいと思います。
 一つは,国レベルでの政策の評価と,先ほどの戸田市のような学校現場での実際の評価,教育の評価,子供たちへの効果から教育を評価するということと,大きく分けて二つあると思います。医療政策の場合,国レベルの医療政策をどういう評価指標で見るのかと,また患者さんの治療の効果をどういう評価指標で見るのか,病院や医者の腕をどういう評価指標で見るのかは異なると思います。国レベルと,個々の現場の成果を比べるエビデンスは分けて整理していった方がいいと思います。それを一挙に同じフィールドで検討してしまうと,何がどう影響しているのかが分かりにくくなると思いますので,そういうレベル観を分けて検討していただきたいと思います。
 二つ目は,高等教育の問題について,少なかった課題の記述を前回のまとめで入れていただきありがとうございました。そして高等教育に関する指標をこれから検討するということなのですが,今,各大学でIRとIEということで,エビデンスを持って運営の改善に取り組んでいます。国立大学であれば中期計画,中期目標ということで,KPIを立て取り組んでいます。国立大学であれば,その情報を集められるので,全体的に,特にどれだけ経費を掛けて,評価指標がどうなっているかということを是非見ていただきたいと思います。この2点をお願いしたいと思います。

【北山部会長】
 ありがとうございます。川端委員。お願いします。

【川端委員】
 ありがとうございます。戸田市の御報告,とてもうれしいといいますか,いろいろな現場でこういうことがあったらいいなと,まず思いました。
 実際に子供を預けている親というのは,そもそもエビデンスという言葉も多分知らないでしょうし,こういった場で,このようなことが検討されていることも,知っている方はほぼいないのではないかなと思います。ですが,先ほどもお話がありましたように,子供は先生を選べないのです。春になると,今年の子,外れだったとか,当たりだったとか,あの先生はやっぱり新1年生持っちゃったねなどということが毎年毎年話題として,保護者間の恒例行事のようにあるわけですが,子供にとっては,小学校1年生,2年生,それぞれが一生に一度のことです。こういったことを長い目で見て,国としていろいろ政策を考えてやっていただくのは本当に有り難いですし,もちろんとてもすばらしいことなのですが,やはり,その1年というのは1回しかないということで,できるだけ子供たちがよりよい教育現場で,よりよい教育を受けさせていただければとも切に願っております。
 教職員になってからの質の向上も大事なのですが,教職員になる前の学生さんの段階で,やはり,こういうことを理解されるような教育というものをやっていただいているのだと思いますので,是非,よろしくお願いいたします。すみません,私はその辺りの情報がないものですから分からないのですが。ただ,私がたまたま遭遇した教員面接でも,この子たちは普通に面接の勉強をしてきたのだなというのが切に分かったり,たまたま大学の先生から,では,どういうことを答えさせれば合格しますかということを聞かれたりしたことがありましたので,やはり子供にとっての教育というものを考えて,学生のうちから,すばらしい先生になっていただけたらなと思います。
 ありがとうございます。

【北山部会長】
 今おっしゃったのは先生の養成に関してですが,一昨年に教員の資質能力の向上ということで,養成,採用,研修を一体的に,一気通貫でしっかり行っていくといった内容の答申を中央教育審議会で取りまとめましたので,今,文部科学省ではその答申に基づいて様々な施策を進めておられる状況かと思います。エビデンスベースの教育政策を推進していく中で,そこから出てきたデータを生かしてどのようにPDCAサイクルを回していくかといった点については,次の段階として検討していくことになろうかと思いますが,そういうことですよね。

【矢野初等中等教育企画課長】
 はい。

【北山部会長】
 では明石委員,お願いします。

【明石委員】
 ありがとうございます。この資料の5ページが個人的には気に入っておりまして,DOの段階といいましょうか。このプランを実行するのが大事かな,と思います。特に行政職員の育成とございますよね。これはうまくやらないと,大体失敗します。なぜかと申しますと,今,都道府県や市町村に教育センターがあります。教育センターがどのようなエビデンスを出しているかということを是非フォローアップしておいていただきたい。国立教育政策研究所はスタッフがいますが,市と県レベルの教育センターでは,大体教員が多いですから,職員の勤務年数が,2年,3年で替わります。そこで経験すると教頭や校長に出てしまうため,継続性がないのです。
 各都道府県,市町村の教育センターは,本日の議論をもっと真摯に考えていただきたい。本気で行政職を育成しないと,結局,絵に描いた餅に終わりかねない。同じことが,行政の教育委員会のスタッフにも言えます。大体,指導主事は2年で替わりますから。行政の方も市長部局,県の部局で人事異動があって,多分,菊川先生が詳しいと思いますが,専門家がいないのです。
 政策立案ができる職員の育成と言いますが,この行政職の方の身分をどう位置付けるのか。行政職なのか,教育職なのか,研究職なのかによって違ってくる。本気で市町村,県の教育センターの大改革をやらないと,うまくいかないと思います。
 非常にいいプランで,これを進めてほしいのですが,要望です。
 そこで,今回の戸田市の教育改革に教育センターはどのような関与をしていますか。

【渡部氏】
 私は,教育政策室長でございますが,教育政策室の下に教育センターがぶら下がっているという形になっておりますので,一応,私の下の中でやっているという形では教育センターも関わってはいますが,正に委員のおっしゃるとおり,研究や,教育政策というものに関する人材が不足しているという現実がございます。指導系の職員は指導主事,教員出身者でございますので,2,3年で1回出ていきます。また戻ってくるパターンもありますが,そういった状況にあります。行政職も同じで,3年か4年で出ていってしまうのですが,教育の中身については一般行政の人間は分からないというのが常でございました。
 それを踏まえまして,戸田市では,来年度の採用から教育行政職というものを一般行政とは別枠で作り,入る段階から,あなたは教育行政の専門でやっていくのですよ,リテラシーを高めるために,キャリアパスの中でも教育行政を中心にやっていきますよということを約束をした上で募集をして採用するという形を進めております。まだまだ年月が掛かると思いますが,正にそういった教育行政リテラシーを,これから育てていきたいなとは考えています。

【明石委員】
 ありがとうございました。

【北山部会長】
 ありがとうございます。それでは無藤委員,お願いします。

【無藤委員】
 基盤の方に主に関わります。一つはささいな話なのですが,児童生徒とあって幼児が入れていないので触れていただきたいと思います。国立教育政策研究所にも幼児教育センターというものができておりまして,調査を始めておりますので,お願いしたいと思います。
 そのことと関連して,先ほど阿部委員も御指摘になりましたが,家庭教育というよりは家庭の在り方や,あるいは小学校の効果を考えた場合には,その前の乳幼児期の教育,保育の在り方を含めていかないと,結局,教育の効果は明確に取り出せないことが多いと思います。要するに,学校教育の効果を取り出す難しさというのは,いろいろな要因が関与しているということと,それから自己選択効果といいますか,大体いい家庭で,いい生徒が,いい学校に入ってくるということで,いい学校の効果であるかのように見えているということが非常に大きいので,そこをコントロールしないと,既存のいいと言われる学校は,やはりいいという結果を出しているだけになります。そういう意味でも,入る前の,プレテストだけではなくて,どういう経験をしているか等々のことを含めるということを是非意識してほしいというのが一つです。
 もう一つは,このペーパーや議論で少し気になるのは,様々な教育政策を実施していくときの実態としての在り方を数値として把握するということが主にエビデンスと言っているようでありますが,エビデンスというのは大きく言えば2種類に分けるべきで,一つは,そういう実態を客観的に把握していくことですが,もう一つは,そもそもプランニングの段階で,よくコントロールされた実験的な取組から,どういうやり方がいいかということを考えていく,そういう,やや基礎的な,でも社会の中で実施できるようなタイプです。これは専門的に言うと,ある教育方法は行う群と比較するための群を,生徒をランダムに割り当てるようなやり方でとっていくというもので,一番有名になっているのが,教育経済学者のヘックマンがやった幼児教育の分析の基がそうであります。その場合には,あのヘックマンの基のデータは1960年代から始まっていて,半世紀掛かって世界中にインパクトを与えたわけです。要するに実験学といいますか,実験的な教育の試みを行った群と,それとを比較する群のランダムな割当てによる,かなり厳密なコントロールがあるわけです。それは専ら幼児教育政策の立案の世界中のベースになったものであります。そういう意味で,その二つというものが,もちろん重なりますが,分けていただくといいと思います。
 そういたしますと,その辺りで,例えば予算の規模なども,程度や目的によって違うと思いますが,例えば300万円の調査を10回あちこちでやるのと,3,000万円のもので,もっとコントロール,場合によっては3億円掛けて,かなりしっかりしたコントロールをした研究を3年掛けてやったとして,それが,もしかしたら10年後の我が国の教育政策のある部分について極めて強い影響を与えるかもしれないわけで,もう少し,何のために,その調査を行うのか,そのめり張りを付けるといいと思います。
 特に実態調査というだけですと,例えば,東京都でやる以上は,北海道でもどこでも平等に全部同じようにやるべきだとなると,国全体の予算をそこで分割すると,一つ100万円でやりなさいという話で,大したことはできないと思うのですが,今のようなことまで是非考えていただきたいということです。
 あと一つだけ加えますが,既にあるデータをもう少し公開するなり連結するなりで出てくることはたくさんあるのではないかと思っています。例えば私は非常に知りたいと思いながら,なかなか教育委員会は公開していただけませんが,埼玉県のように小学校の低学年から学力調査している場合に,私の予想ですが,小学校1年生の学力調査って余り信頼性は高くないのですが,2年生ぐらいになると,ある程度信頼性がありまして,その2年生のときと6年生のときの相関をとると,かなり高いのではないかと思います。ということは,学力格差というのは小学校の低学年で始まっていて,実は,その前の幼児期から始まり,さらに家庭で始まっていると思いますが,そういう実態を明らかにした上で,どう是正するかを考えなければ,エビデンスベースとは名ばかりになると思っております。
 以上です。

【北山部会長】
 では,丸山委員,お願いいたします。

【丸山委員】
 ありがとうございます。学校現場からというところで話をします。
 エビデンスという考えが非常に大事であること,教育の中に入れなければならないということは,全国学力・学習状況調査が再び悉皆(しっかい)になり,そして国のリーダーシップがあって,授業改革ということを強く現場の方に言われ,そういうところから,やっと認識してきたというのが,私の感覚です。現場はここで話し合われていることより非常に後れているなと感じます。ですから,これをどんどん広めていくことが必要だと感じます。
 それをやるときに,4ページにあります,留意点というところが,学校で受ける側としては非常に大事なので,この辺りも含めて,非常に大事にしていく必要があるなということを思いました。
 二つ目は,非常に教員の若返りが進んでおります。東京都は先に進んでおりますので,地方の方は全国の校長会などで話題になると,この若い先生たちをどのように育てていくのかというのが今,非常な問題になっております。
 それで,渡部氏がおっしゃった,匠の技術を,宮城県ではデータベース化をして学校現場に公表しているのですが,狭い範囲で始まったばかりですから,もう少し磨きを掛けなくてはならないということを感じております。これを全国規模で行ったら相当効果があると思います。現在はわざわざ他県に研修に行くということもやりますので,そういうことを考えれば,多くの人がデータを見ることができて,時間的にも効率的であるのかなということを,お話をお伺いして感じました。
 三つ目ですが,これがとても今回感じたことですが,非常に大事だなと思う調査がいろいろあります。学校には国,地方公共団体,研究団体等と様々なところから調査が非常に多くきます。国の調査は結構精査されてきましたが,それでも他の団体からも多くの調査が学校にきます。この調査の中には,処理したり,子供たちに一人一人に調査したりするのに非常に時間が掛かったり,何を意図しているのか読み取りにくいものもあるのが現実です。
 「これまでの審議経過」の中には,測定指標候補や参考指標候補がたくさんあります。全国学力・学習状況調査や,問題行動調査などに入っている部分は,非常にスムーズにやれると思うのですが,新しく入ってくる部分もあります。また調査が増えると多忙に感じますし,実際に子供と向き合う時間を減らして処理をしています。そこで必要な調査項目に関しては従来やっていた調査に盛り込めると,現場としては非常にいいのかなと思います。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。それでは,柘植委員,お願いします。

【柘植委員】
 お願いします。7ページのところでお話をしたいと思います。
 最初に,英国や米国がいち早く,このEBPM推進に取り組み始めて,研究者も研究をしたり,あるいは専門書を出したり,国がそういう取組をしたり,あるいは地方がしたり,あるいは民間と協力してしたりなど,非常に取組のフロントランナーとして走っている二つを前から知っていたので,本日具体的にこのような基盤の話も出てきて,ほっとしているというか,うれしく思っています。
 ただ,先ほどから地方は大丈夫かという話がいろいろ出て,幾つか好事例もあるのですが,教育センターは教育相談など研修ばかりやっていて,調査機能が弱いのではないかという声も漏れ聞こえてきていますので,多分これからは研修機能も相談機能も大事ですが,負けると劣らないぐらい,調査機能というか,評価機能というか,そういうものを各地方のセンターが持っていくのでしょう。
 NCLB法という,落ちこぼれを作らない法律というのがアメリカにあります。その条文の中に,政策にはない,指導の話なのですが,効果が期待される方法で読み書きの指導をするのだということが法令上,位置付けられています。そうすると,教育委員会も,教育センターも,そのつもりで教師を支えるだろうし,教える側の教師も,そうなんだ,勘と経験と度胸ではないんだということになってきますので,もしかしたら,このEBPM推進体制を本格的に国と地方の両輪で動かしていくこととするのであれば,何らかの法令上の位置付けもあるといいのかなと思います。
 あとは細かいことを幾つかです。総合政策教育局,いいですね。名前は少しあれですが,こういうものをはっきりさせて動かすということは,地方にも大きな影響があると思います。
 それから縦断研究という話が先ほどたくさん出ていましたが,やはり思い切って始めるのでしょうね。10年ぐらい前から環境省がされているエコチル調査というものも,文部科学省も入って,一緒にやってますよね。
 ニュージーランドのダニーデンというところで30歳,40歳ぐらいまでやっている,もう30年ぐらい前からやっている,とても有名な縦断調査があります。途中経過は日本語の本にも出ていますので,御覧になった方もいらっしゃると思いますが,教育のみならず,喫煙,薬物,犯罪などいろいろなものが大人になってからの群と,それこそ小学生の頃,幼稚園の頃を比較すると,非常に面白い重要な知見が,教育に限らず表れます。教育だけで実施する方法もあるのでしょうが,年齢を切って,環境省がやっているエコチルのような大規模なものを一つ,二つ持つというのもいいのかなと思います。もちろん大学や民間と協力するという方法もあると思います。
 それから先ほど,無藤委員から,エビデンスを集めるときに,RCTという非常に厳密化した方法論で大事なデータを集めていくことも大事なのだがという話もありました。その一方で,このペーパーにも書いてあるのですが,保護者や本人の実態ではなくて思いや満足というのか,ニーズというのか,そのようなものも実は非常に大事で,それを数値的に集めるのか,質的に集めるのか,いろいろな方法論あるのでしょうが,実際に教育に携わっている本人と,その周辺の人の変化みたいなものも追っていくと,今風の時代の調査なのかなと思いました。
 最後一つです。研究者仲間でこのような議論をするときに,国のデータがもう少し使えるといいよねという話は,たくさん聞きます。そのようなことを書いている論文も幾つかあります。これまではいろいろな事情があったのかもしれませんが,先ほど丸山先生からも,いろいろなところから調査が来て大変だという御意見がありました。しかし,よく見てみると,別の調査でも半分ぐらい似ていたりする場合もあるかもしれない。私の学生もいろいろ質問しているので迷惑を掛けているかもしれませんが。そうすると,ゼロからデータを集めて研究するということも大事なのですが,既にあるデータをどう分析するかということでも十分,研究になります。
 ですから,大きな研究から,小さな研究から,データを全般的に集約するような仕組みを持って,どこまで,どのように自由に使っていいとするかというガイドラインは作る必要はあるのでしょうが,そうすることによって,ある方が分析したらこういう結果が出たのだけど,別の方が別の事例でやってみたらこうだったなど,違った知見が出る場合もあります。それは怖いことでも何でもなくて,その下にどうするかということを政策立案者が考えていけばいいわけであって,そのための材料を,いろいろな人にいろいろな多角的に分析をしてもらうと,そういう土壌がもっと増えていくといいのかなと思いました。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。それでは,田邉委員,お願いします。

【田邉委員】
 ありがとうございます。私からは2点であります。
 まずは9ページです。「客観的な根拠を重視したPDCAを支える基盤(続き)」ですが,丸2の調査・内容の抜本的改善ということでは,量的,質的な調査という大きく二つの調査方法がありますが,その中には事例研究なども含まれます。
 12ページのヒアリングの概要のところにもありますが,事例も重要なエビデンスですと書いてあります。事例研究は,特徴のある研究があり,今後グローバルに活躍する人材の育成などというところにも大きく関わってくる,非常に重要な研究方法でもあるのかなと思いますので,事例研究の活用をしていくことも重要と考えます。
 あともう1点は,別添の第3期教育基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過についての51ページです。以前,高橋委員からも,アスリートが競技人生を終えた後のキャリア教育が非常に大切なのではないかという意見も頂きました。
 大きな丸の部分に,二つの内容が一緒になって書かれていると感じました。次世代アスリートを発掘・育成する戦略的な体制等の構築という題目に,若いアスリートを育成するという部分と,アスリートが競技を終えた後の教育が入っていますが,内容がそれぞれ少し異なるのではないかと考えます。現在の競技の状況を見てみますと,競技に早い段階から取り組むことで,高いパフォーマンスを求めるという傾向もあり,また,高校を卒業したら実業団やプロに入る選手も多くなっています。そのような選手が競技を引退したのち,大学や大学院でいろいろなスキルを学び直すなどのケースも増えています。このようにキャリア形成に必要なスキルというのは,また別の対策も必要かと思いますので,できれば,ここの内容は二つぐらいに分けた方が,分かりやすいのではないかと考えます。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。今の御意見の後半部分については,本日の議題2の方での御意見という形で取り入れさせていただければと思います。ありがとうございます。
 では,菊川委員,お願いします。

【菊川委員】
 文部科学省の客観的な教育政策の推進,エビデンスに基づく教育政策ということですが,少し議論が混ざっているところがあるように思います。
 例えば,この資料1‐1というのは,国の行政についてのエビデンスの話だったと思いますし,優れた戸田市の事例は地方の事例,特に学校現場の事例だったように思います。今,学校は,次の指導要領の改訂に向けてピッチを上げているところだと思いますが,今度の指導要領は,教育方法の改善が大きなテーマですので,教育方法を変えたときに,どのように子供たちが変わっていくのかというのは,正にエビデンスに基づいてやらないといけないのですが,それをエビデンスと言うのか,それとも従来の指導方法の改善の中の検証という言葉で伝えるのかというところは,交通整理が要るのではないだろうかと思います。
 また,今まで多くの教育センターは,やはり研修センターとして機能していたのですが,それに研究まで入れるのかどうかというところですね。働き方改革もありますし,いろいろな課題をエビデンスに基づいて串刺ししていくというところは分かるのですが,実務的にどう落としていくのかということは,少し整理がいるのではと思ったところでございます。
 また2点目ですが,特に研究者の関わりといいますか,2番目の議題の中でのいろいろな指標も,どちらかというと数量的な,今まで持っている調査の数字で,その中には重複しているものも,まだ残っているように思うのですが,本当に必要な困難な調査,例えば,家庭裁判所が非行少年の成育歴の縦断成育調査をしたことがあると聞いたことがあるのですが,そういう困難な子供が,どういう成育歴で,どこに改善の糸口があるかというようなことは,個別の縦断調査でないと出てこないのではないかと思います。
 そういう調査は,やはり大学等と連携して,専門家の力を入れながら,タブーなくやってみて,それを公表していくことが,10年先,20年先の改善につながるということだと思いますので,その辺りの,いろいろな段階の調査の仕分をお願いできたらと思います。

【北山部会長】
 ありがとうございました。
 議題1についてはここまでとさせていただきます。いろいろな御意見を頂きまして,ありがとうございます。
 エビデンスベースに関しては,数年前の政府の骨太の方針に,エビデンスに基づいた,という文言が盛込まれており,今,どの省庁でも同様に取組まれているテーマかと思います。
 もちろん,教育に関しては総合的・多角的に判断すべき部分も多いということは十分に認識する必要がありますが,どのようなデータを集める必要があるかを明らかにすることや,それらのデータを集めるための体制を作っていくことに関しては,しっかり検討していく必要があります。
また,我々がこれまで1年かけて作ってきたこの第3期の基本計画についても,ロジックモデルの考え方に基づいて,改めて,そのロジックが正しいかどうかをチェックする必要があるとも思います。
加えて,社会人の学び直しに代表されるように,厚労省や経産省をはじめとした他省庁と連携してデータを集めていくことが必要になる部分も多いと思いますので,省を超えた連携についても検討する必要があろうかと思います。
 以上でございますが,よろしいでしょうか。
 それでは,残された時間で,議題2の第3期教育振興基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過について意見交換を行います。
 まず事務局から,資料2‐1から3までの御説明をお願いします。

【内田教育改革推進室長】
 まず資料2‐1を御覧ください。
 資料2‐1ですが,前回の部会での御意見を踏まえまして,その後,部会長とも御相談した上,別添に冊子がございますが,本文を修正し,中央教育審議会の総会に報告しております。
 資料2‐1の1枚紙でポイントだけ説明します。まずは上から三つ目の丸ですが,生徒指導上の課題の重要性を追記しております。
 そこから更に二つ下の丸,高等教育ですが,基盤的な教育研究や,これまでの改革の取組を追記しております。
 その一つ下ですが,認証評価の国際化について追加しております。
 下から三つ目の丸ですが,「IT・データ活用能力の育成」について追記しております。
 下から二つ目と一番下でございますが,こちらは教員の働き方改革,学校指導体制の方向性について力を入れて書くべきとの御意見ございましたので,追記しておりまして,本文の別添の冊子に修正箇所については,黄色マーカーを塗ってございますので,御確認を頂ければと思います。
 次に資料2‐2を御覧ください。
 10月2日から31日まで意見募集を行っております。総数は484件ございまして,(3)に観点別の件数がございます。各論の第2部の(1)確かな学力の育成が103件,(2)の豊かな心の育成で63件,(7)のグローバルに活躍する人材の育成で48件,(14)家庭の経済状況や地理的条件への対応で29件,(16)学校指導体制の整備で101件などとなっております。
 2ページ以降には,具体的な意見を整理して記載しております。様々な同じ趣旨の意見もございましたので,まとめて整理しておりますが,例えば,多い御意見としては,全国学力・学習状況調査の実施・分析・活用に関する御意見,3ページ目でございますが,(2)豊かな心の育成のところでは,いじめ等への対応の徹底,さらにはその下ですが,主権者教育の推進に関する御意見がございました。
 次,4ページ目ですが,(7)グローバルに活躍する人材の育成で,国際化に向けた先進的な取組を行う高校・高専・大学等への支援,外国人留学生の受入れ環境の整備に関する御意見がございました。
 6ページに行きまして,(14)家庭の経済状況や地理的条件への対応として,幼児教育の無償化の推進,高等教育の無償化,給付型奨学金制度の充実の必要性に関する御意見もございました。
 最後に(16)新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導体制の整備では,教職員の指導体制として,子供と向き合う時間の確保と授業準備ができる環境整備,スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置の充実や,教職大学院での学び直しの必要性に関する御意見がございました。
 続きまして,資料2‐3を御覧ください。こちらは前回の教育振興基本計画部会以降の中央教育審議会総会,初等中等教育分科会,大学分科会での御意見をまとめて掲載しております。
 第1部のところですが,最初の丸,50年後など先の未来を見据え,戦略的に考えるべきとの御意見や,三つ目の丸ですが,Society5.0を生き抜く人材を具体的・戦略的に明記すべきとの御意見がございました。また,下から三つ目ですが,いじめ対策として,自己成長から他者支援という観点の必要性といった御意見がございました。
 第2部としては,2ページ目の最初の丸ですが,本当に大事な部分が見えるようメッセージ性を持たせるべきという御意見や施策の優先順位付けに関する御意見がございました。また二つ目の丸として,施策を工程表として示していくことの必要性の御意見もございました。
 上から五つ目の丸ですが,研究開発学校の役割を,次期の学習指導要領改訂に向けて,どう機能させていくべきかを明記すべきとの御意見もございました。
 同じページ,下から三つ目の丸ですが,学校を前向きでポジティブな空間にしていくことが子供たちの自己肯定感の育成につながるといった御意見もございました。
 3ページ目でございます。上から二つ目の丸ですが,グローバルに活躍する人材の育成として,英語力の養成には危機感を持ってほしいこと,さらには,その三つ下ですが,リスクに強いタフな精神性について言及すべきとの御意見もございました。
 下から二つ目の丸,三つ目の丸ですが,学校指導体制の整備として,教職員定数の改善,働き方改革についてより具体的に示すべきとの御意見もございました。
 最後の4ページ目ですが,三つ目から五つ目の丸でございます。ICTの利活用のための基盤整備ですが,家庭の経済状況によって情報活用能力の格差が生じないようにすべき,また,教員が使いこなせるようにしていくべきといった御意見もございました。
 今後これらの御意見も踏まえながら,また,大学分科会将来構想部会や,初等中等教育分科会働き方改革特別部会の御意見なども踏まえた上で,答申をまとめる段階で,反映すべき内容を検討していきたいと考えております。
 説明は以上でございます。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは,委員の皆様から何か御質問,御意見はありますでしょうか。
 この教育振興基本計画部会では,12月にもう一度,エビデンスに基づく教育政策に関して審議を行い,年が明けてから答申案の審議を行っていくという形で進める予定です。したがって,答申の基本的な考え方についてもし御意見があれば,ここでお願いできればと思います。
 では菊川委員,お願いします。

【菊川委員】
 2点あります。
 生涯学習分野の,先ほどからの測定指標です。52ページの測定指標の二つ目の黒丸ですが,生涯学習をしたことがあるとする者のうち知識・技能や経験を生かしているという,その測定指標と,それからその次の54ページの測定指標ですね。身に付けた知識・技能を社会の活動に生かしている者の割合と,これだけ見るとかなり似ています。
 これは違う調査項目から拾ってきた調査票だと思うのですが,やはり調査票まで戻って,両方あっていいかどうかという精査が必要ではなかろうかというのが1点です。
 それと,18ページですが,先ほどの意見の中でも,施策の優先順位や価値序列を付けるなどメッセージ性を持たせるべきというのがありましたが,今回の教育計画は,今までのものより生涯学習分野の比率が高くなっていると思います。ですから,例えば学校教育などであれば,こういう施策をしますということでいいと思うのですが,相手が大人になってきますと,自立・協働・創造ではありませんが,大人自身のやる気がベースやスタートになると思います。
 そういう意味で,施策としてやってあげるという提示の仕方だけではなく,人々が,100年時代には自ら学ばないといけないと思わせるようなメッセージ性,あるいは広報みたいなものが必要なのではないかと思っております。
 18ページの下から二つ目の丸に,さらに,教育施策を効果的かつ着実に進めていくとともに,意義を広く国民に伝えるためにもエビデンスが大事ですとなっているのですが,そのエビデンスの広報だけではなく,生涯学習の施策というのは,正に国民自らがやるというトーンのことを,もう少し強く打ち出す必要があるのではないかと思いました。

【北山部会長】
 ありがとうございます。渡邉委員,お願いします。

【渡邉委員】
 今回整理していただいた入れ込みや修正についての異論は全くございません。非常にいい整理をしていただいたと思います。
 冒頭に会長から,今後の政府のいろいろな検討事項とのすり合わせというお話があったのですが,それに関して,少し感想的なことですが。今回の整理で16ページ,17ページに,2030年以降の社会を展望した教育政策の重点事項ということで,16ページには人生100年時代を豊かに生きる,超スマート社会を生きる,それから教育を通じた一人一人の「可能性とチャンス」の最大化という整理を頂いて,17ページに,その枠囲みの中で(1)教育の質の抜本的な向上と,(2)に教育と社会との連携強化による個人と社会の不断の成長,(3)に真に国民に開かれた教育の実現,大変いい整理をしていただいたと思います。
 したがって,こういうことを言っていいのか分かりませんが,政府とのすり合わせを受け身ではなくて,むしろこの整理の仕方こそが,これから重要だということについて,大臣を通じて,是非政府の今後の検討に反映させていただきたいと思います。
 それから,ここから先は今後の検討視点として,参考として14ページに,国際的な教育政策の動向ということで,SDGsに定められた目標であるSDG4や,またSDGsの取組みが明記された倉敷宣言について言及されています。このSDGsを始めとした国際的な教育政策の動向というものが,参考という形の整理でいいのか疑問です。
 例えば経済界では,このSDGsの方の考え方を企業行動憲章の中に入れ込むという作業を既にしています。私も,ここにバッジを付けているのは,このSDGsのバッジです。恐らく,2030年をにらむと,このSDGsの考え方というのは,いろいろなところに反映されていくのではないかと思います。
 したがって,2030年に向けたときに,こういう参考資料という形の整理がいいのか。むしろ,この16ページの冒頭にある2030年以降の社会を展望した教育政策の重点事項の,この頭文の中に,こういう国際的な動きを整理して,入れ込んだらいかがという感想を持ちましたので,御検討いただければと思います。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。年明けに作っていく予定の答申案には,エビデンスベースに関する内容も加わりますので,整理の仕方にもよりますが,本文は100ページ近くなるイメージかと思います。そういった流れの中で,今,渡邉委員が言われたSDGに関しても,どういった位置付けて盛り込んでいくか,よく検討していきたいと思います。
 では河田委員,お願いします。

【河田副部会長】
 この第3期教育振興基本計画を最初から読ませていただいた感想です。
 一つ目の感想は,2030年をめどにして,様々な問題点がたくさん入り乱れていて,このような問題点もあり,あのような問題点もあって,もう大変だ大変だというのが基調になっているように感じます。だから,序文の「はじめに」のところに御苦労はあるかと思いますが,是非,明治維新から150年の現在,近代化に成功したのは,日本の教育というものの成果である。それは先人の努力の結果,日本語によって,日本語の教科書を用いて可能になったのだ,ということを書いていただいて,もう少し自信を持たせるような,いわゆる基調音というのでしょうか,そのような構成にした方がいいのではないかなと感じました。
 それから二つ目は,前回は自立・協働・創造ということで非常に明快な三つのキーワードがあってわかりやすかったです。今回は,まだどうされるのか未決定だと思うのですが,自立した人間としてうんぬんというと長いので,一つ目は価値創造,二つ目は安心活躍,三つ目は持続発展など,そういうキーワードをお願いしたい。私は中国学を専攻していますので,是非漢語を使って横文字の外国語を少し減らしていただく方がいいと感じました。
 それから三つ目は,本日の戸田市の渡部室長のいいお話があって,暗黙知の可視化ということが出てきたわけですが,日本の教育の暗黙知をどう入れたらいいのか,分かりませんが,例えば日本の小学校から高校までで一番オリジナルな行事は運動会だと思います。世界で運動会やっているところは,どこにもない。フットボールや,野球,アイスホッケーなど,それぞれの競技はあるけれど,総合的に,1か月なり時間を掛けて,クラスや学年,学校全体がうまくまとまる。今は棒倒しが危険だ,騎馬戦が怪我するから止めろと,否定的な声ばかりですが,学校にとっても非常に効果があるという側面が存在する。それからもう一つは,小学校から,みんな教室の掃除当番をし,給食の当番を輪番でする。これも諸外国で全くない日本の良き教育伝統の例です。
 数値化するのは非常に難しいかもしれませんが,暗黙の知として,日本の教育の売りになると思うので,そういうことを少し加筆していただければ有り難いと思います。大変でしょうが,よろしくお願いいたします。

【北山部会長】
 ありがとうございます。それでは最後に白井委員,お願いします。

【白井委員】
 ありがとうございます。1点だけ。
 前回の関係団体のヒアリングの際に,各団体の御意見をお聞きしていて,はっとしたのですが,複数団体からLGBT理解,LGBTの差別をなくすというような観点が出されました。やはり,そのLGBT差別によって自殺しているというような事例が出ている中で,この計画の中でも男女共同参画や女性活躍推進ということに触れられているのにもかかわらず,LGBT理解に全く触れていないというのは,今,排除と受け止められる時代かと思いますので,どこかに,その観点を入れるようなことをお願いできればと思います。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 他にも御意見がある場合には,Eメールや,文書で結構ですので,文部科学省の氷見谷課長までお願いできればと思います。
 いろいろな御意見ありがとうございました。本日の審議はここまでとしたいと思います。次回の日程について,内田室長からお願いします。

【内田教育改革推進室長】
 資料3を御覧ください。
 本日の27日と12月13日に,第2回と第3回の関係団体ヒアリングを予定してございます。また,12月18日に第19回の部会を,第二講堂で予定しております。先ほど部会長からもお話ございましたが,エビデンスの議論の2回目を予定しております。そのほかの詳しい案件などにつきましては,また事務局より御連絡を申し上げます。
 以上でございます。

【北山部会長】
 次回は12月18日です。またの御出席をよろしくお願いいたします。
 本日は長い時間ありがとうございました。これで終了でございます。

―了―

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