教育振興基本計画部会(第8期~)(第16回) 議事録

1.日時

平成29年8月28日(月曜日) 14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省 「第二講堂」(旧庁舎6階)

3.議題

  1. 審議経過報告(素案)について

4.出席者

委員

 北山部会長,小川副部会長,明石委員,石田委員,大竹委員,金子委員,川端委員,菊川委員,白井委員,高橋委員,田中委員,柘植委員,中井委員,羽藤委員,丸山委員,宮本委員

文部科学省

 小松文部科学審議官,常盤生涯学習政策局長,高橋初等中等教育局長,山﨑技術参事官,塩見文部科学戦略官,下間大臣官房審議官,瀧本大臣官房審議官,里見大臣官房国際課長,萬谷生涯学習政策局生涯学習推進課長,矢野初等中等教育局初等中等教育企画課長,常盤木初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室長,有松国立教育政策研究所長,氷見谷生涯学習政策局政策課長,内田生涯学習政策局政策課教育改革推進室長,寺坂生涯学習政策局政策課教育改革推進室長補佐 他

5.議事録

【北山部会長】
 それでは定刻となりましたので,ただいまから第16回教育振興基本計画部会を開催いたします。お忙しいところお集まりいただきまして,誠にありがとうございます。
 前回までの御議論を踏まえ,今回は,審議経過報告の素案について意見交換をしていきたいと思います。進め方としましては,まず,ロジックモデルを基に全体構成について意見交換を行った後,素案について,総論部分の第1部と各論部分の第2部に区切って意見交換を行いたいと思いますが。なお,第1部と第2部はオーバーラップしている部分もありますので,その辺については適宜進めていきたいと思っております。
 それでは,まず,事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【内田教育改革推進室長】
 配付資料の確認をさせていただきます。まず,資料1‐1から1‐3ですが,それぞれ第3期教育振興基本計画の策定に向けた基本的な考え方(概要),ロジックモデル,審議経過報告(素案)となっております。資料2‐1から2‐3ですが,各分科会における主な意見,資料3が今後の日程でございます。また,タブレット端末に過去の部会の資料などを入れておりますので,適宜御覧いただければと思います。過不足あればお知らせください。

【北山部会長】
 それでは,早速議事に入ります。
 まず,事務局から,資料1‐1,資料1‐2について御説明をお願いします。

【内田教育改革推進室長】
 それでは,資料1‐1と1‐2につきまして御説明させていただきます。
 まず,資料1‐1でございます。こちらは今の状況を共有するために参考として御用意したものでございます。1月に中央教育審議会総会に報告させていただきました第3期教育振興基本計画の策定に向けた基本的な考え方の概要でございます。
 ローマ数字1とローマ数字2に総論がございまして,下のローマ数字3のところに「国民・社会の理解が得られる教育投資の充実・教育財源の確保」と記載しております。現在,ローマ数字1とローマ数字2をより詳細に取りまとめていくために御議論いただいているという状況でございまして,ローマ数字3に関しては秋以降の議論ということになります。つまり,ローマ数字1,2のところを本日,素案という形で,詳細に文章にしている状況でございますので,共有させていただければと思います。
 次に,資料1‐2でございます。こちらはロジックモデルという形でこれまでお示ししているものでございます。それぞれのページの一番上に基本的な方針1から5を,中段には今後5年間の教育政策の目標,一番下のところに主な施策群(例)と指標を記載しております。
 より具体的な細部の書きぶりにつきましては,後ほど資料1‐3の本文で説明させていただきたいと思いますが,本日は,まず,前半の議論におきまして,現在の全体の構造やロジックモデルの案で不足しているような視点・施策などがあれば御指摘を賜ればと思いまして,資料1‐2を御用意させていただきました。
 まず,1ページ目を御覧ください。基本的な方針1「夢と自信を持ち,可能性に挑戦するために必要となる力の育成」でございます。「確かな学力の育成」,「豊かな心の育成」,「健やかな体の育成」,「多様なニーズを持つ者への教育機会の提供」といった目標を記載しております。主な施策群(例)といたしまして,例えば「確かな学力の育成」ということですと,「幼児期における教育の質の向上」をはじめ,合計六つの施策群が並んでおります。その下が測定指標候補と参考指標候補を記載しております。指標に関しまして,ページ左上の米印の記載どおりですが,指標設定の難しさも自覚しながら,今後,より良い指標を考えていく必要があると考えております。例えば,指標の左上のPISA調査は学力の状況を測定できる指標だとは思うのですが,その下の参考指標に関しましては,学校における学習指導の改善の状況となっており,これは飽くまで到達に至る手段を測る指標となっております。このように到達した状況と手段の指標がどうしても混在せざるを得ない状況になっているということが難しさの一つ目でございます。二つ目の難しさといたしましては,例えば右端の健康に関する指標について,例えば「肥満」や「痩身」が挙げられておりますが,肥満・痩身は健やかな体のごく一部のみを測定するもので,全体を測定できるものと一部しか測定できない指標を混在せざるを得ない状況になっていることです。最後に,後ほど,ICTや施設の関係でも出てくるのですが,そこでは条件整備を目指すような指標もあり,そういったものも混在せざるを得ない状況もございまして,こうした整理上,難しい現実も踏まえながら,今後,指標を精査していく必要があると考えております。
 2ページ目を御覧ください。こちらも同じ基本的な方針1「夢と自信を持ち,可能性に挑戦するために必要となる力の育成」でございますが,目標には「問題発見・解決能力の修得」,「社会的・職業的自立に向けた能力・態度の育成」,「家庭・地域の教育力の向上,学校との連携・協働の推進」が,また,その下にそれぞれの施策群が並んでおります。左下を御覧いただきたいのですが,大学分科会におきましても,入試改革の議論があったわけですが,今回,参考指標といたしまして,「個別大学入学者選抜における記述式問題及び英語の4技能試験を実施している大学の状況」を新しく指標として加えております。
 3ページ目を御覧ください。基本的な方針2「社会の持続的な発展を牽引(けんいん)するための多様な力の育成」ということで,「グローバルに活躍する人材の育成」,「イノベーションを牽引(けんいん)する人材の育成」,「スポーツ・文化等多様な分野の人材の育成」を目標とし,その下に各施策群を記載しております。右下の測定指標候補に,「文化審議会における文化芸術推進基本計画策定に向けた審議状況を踏まえ設定」と記載しておりますが,現在,文化審議会の議論が並行して進められておりますので,秋以降,できるだけ早い段階で具体的なものをお示しさせていただきたいと思っております。
 4ページ目を御覧ください。基本的な方針3「生涯学び,活躍できる環境整備」でございます。「人生100年を見据えた生涯学習の推進」,「人々の暮らしの向上と社会の持続的発展のための学びの推進」,「職業に必要な知識やスキルを生涯を通じて身に付けるための社会人の学び直しの推進」,「障害者の生涯学習の推進」といった目標とそれぞれの施策群を記載しております。
 5ページ目を御覧ください。基本的な方針4「誰もが社会の担い手となるための学びのセーフティネットの構築」でございます。目標としては,「家庭の経済状況や地理的条件への対応」,「多様なニーズを持つ者への教育機会の提供」を設定し,それらの目標ごとに施策群を記載しております。右側の測定指標候補の三つ目でございますが,前回,特別支援の関係で「合理的配慮」に関する視点が必要だという御指摘もございましたので,後ほど,文章では改めて御紹介させていただきますが,「合理的配慮の提供について個別の指導計画又は個別の教育支援計画に明記することとしている学校等の割合の改善」を挙げております。
 6ページ目を御覧ください。基本的な方針5「教育政策推進のための基盤の整備」でございます。「学校指導体制の整備」,「ICT利活用の促進」,「教育研究環境の整備」といった目標の下,施策群を挙げているところでございます。
 続きまして,7ページ目を御覧ください。こちらも基本的な方針5「教育政策推進のための基盤の整備」の目標と施策でございます。
 なお,それぞれの目標の左側に,目標をより具体的に詳細に文章化したものを吹き出しの中に記載しておりますが,こちらについては,教育基本法の目標や理念を踏まえ,文章を前回よりもより具体的に詳細にわたって記載しております。教育振興基本計画は,教育基本法の目標をより具体的に実現していく計画ですので,教育基本法の2条に掲げる目標の理念を念頭に置いたものにしていきたいという趣旨でございます。
 御説明は以上でございます。

【北山部会長】
 ありがとうございました。
 それでは,ここで時間を取りますので,このロジックモデルについて御意見,御質問があればお願いいたします。
 始めに私から一点,確認したいことがあるのですが,先ほどの御説明の中で文化審議会の話がありましたが,そのほかにも,現在,例えば初等中等教育分科会では教員の働き方改革について,大学分科会では高等教育の将来構想について,同時並行的に議論が行われています。したがって,第3期計画の取りまとめに際しては,そちらの議論も踏まえていくという理解でよろしいでしょうか。

【内田教育改革推進室長】
 はい。

【北山部会長】
 分かりました。
それでは,中井委員,お願いします。

【中井委員】
 基本的な方針の1「夢と自信を持ち,可能性に挑戦するために必要となる力の育成」のロジックモデルについてでございます。こういった力を育成していくことは大変結構な取組であると思いますが,当然のことながら,この力を育成する対象は全ての子供ということになるわけであります。しかしながら,かなり前から,小学校では3割,中学では5割,高校では7割の子供が授業についていけないと言われているとおり,学校現場においては,学年進行が進むにつれて授業についていけない子供がだんだん増えていきます。これについて,学校現場ではそれぞれ習熟度別授業や授業外の補習などを行っており,一定の成果は出ているものの,必ずしもいわゆる「七五三」と言われる状況が過去の話であるという状況にはなっておりません。授業についていけない子供は学年進行とともにどんどん出て,それが学習意欲の低下になってしまいます。このような悪循環を作り出すことによって,ますます授業についていけず,学力格差が広がるということに現状はなっているわけでございます。そのような中で,「確かな学力の育成」の施策には,個々の子供の多様な能力あるいは状況をしっかりと踏まえ,着目した,きめ細かな教育をしていくことを是非入れていただきたいと思います。従来,欧米諸国では,我が国よりも個別の個々人に対応した教育システムで教育を行っているところが多いわけでありまして,集団教育の弱点をいかに克服するかということがこれからの学校教育の大きな課題だと思います。そのことについて,第1部の本文を見ても,そういった触れ方がされていないので,この基本的な方針1で触れていただきたいと思います。基本的な方針4「誰もが社会の担い手となるための学びのセーフティネットを構築する」のところに習熟度別授業や授業外の補習は出てきますが,それは家庭の経済状況あるいは地域の状況に着眼したところからのケアであって,本来的にはやはり子供たちの持つ多様な能力の違いが学力差の大きな要素だと思いますので,そこの点をしっかりと捉えたきめ細かな対応をこの基本的な方針1で触れるべきではないかと思います。
 以上でございます。

【北山部会長】
 ありがとうございました。念のために確認させていただきますと,基本的な方針4「誰もが社会の担い手となるための学びのセーフティネットの構築」には,「家庭の経済状況や地理的条件への対応」,「多様なニーズを持つ者への教育機会の提供」という二つの目標が盛り込まれていますが,これらに加えて,基本的な方針1でも目標を設定すべき,という御意見でよろしいでしょうか。

【中井委員】
 「多様なニーズ」は,特別支援教育や障害といったその他の様々な特別なニーズであって,私が今申し上げたのは,通常の学校の通常の学級の中で実際に起こっている現象として,どんどん学力の差が出ていく,授業についていけない子供が出てくるということに対する着眼ということであります。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは,宮本委員,お願いします。

【宮本委員】
 前回欠席したものですから,それも含めて発言させていただきます。
 配付された資料の7ページ目の目標の一番左のところに「持続的な高等教育システムの構築」とありまして,この施策群(例)だけ検討中ということで,空白になっており,これについてはまた他の分科会等でこれから検討されると思われますが,私の方から少し発言させていただきます。吹き出しの中に記載がありますように,地方において小規模な大学が多く,経営悪化が懸念される状況を踏まえて,教育研究の基盤強化に向けた高等教育のシステム改革ということが記載されております。これに関してでございますが,放送大学等通信制の高等教育機関,特に放送大学に関しましては,文部科学省の行政組織で申し上げましても生涯学習政策局に位置付けられておりますので,これまで「高等教育」と「生涯教育」が,言ってみると完全に分離した位置付けになってきているかと思います。しかしながら,放送大学,それからその他の通信制大学も,それぞれが大学における重要な科目を開設しているところでございまして,地方の大学が経営悪化の中で存続が非常に難しいという状況を考えた場合に,この通信制大学の持っている資源を有効に活用するということが一つの重要な解決策になるのではないかと考えている次第でございます。
 例えば,本学の総収入の半分は国から頂いている補助金で動いているところでございますので,その点で貴重な社会資源を従来のような大学による区分ではなく,もっとその境界を越えた形で利用をすべきではないかということです。例えば地方大学,とりわけ規模が小さい,あるいは単科大学の場合には,入学後の最初の教養科目等に関して様々な制度を見直しもっと大胆に使っていただくことによって,地方大学が十分に質を担保しながらいい教育をしていただけるのではないかと感じております。したがって,この検討中の中に,そのような従来のシステムの制約を破った資源の有効活用を入れていただければと思っております。

【北山部会長】
 ありがとうございます。今,御発言があった地方の大学に関する論点については,先ほども少し触れましたとおり,大学分科会で高等教育の将来構想について正に議論しているところです。したがって,10月,11月,12月と議論が進んできた際に,そちらの議論に合わせて計画の方も充実させていきますので,今頂いた意見も,大学分科会ないしは将来構想部会にお伝えするような形で対応を考えていきたいと思っております。
 そのほかいかがでしょうか。金子委員,お願いします。

【金子委員】
 今の放送大学の件ですが,確かに将来構想部会で余り放送大学のことは議論していませんので,恐らく計画部会でもある程度議論しなければならないのではないかと思いますが,今の話を伺って,あえて申し上げますが,放送大学は本当に今,効率的に運営されているかどうか,私は少し疑問に思うところがあります。収入の半分は国費だということですが,例えば,放送番組はかなりコストが高い作り方をしていると思います。実際,私は何度も放送番組に出ており,なかなか丁寧にやっていらっしゃるなと思いますが,これでいいのかと思うところもあります。特にインターネットを使った授業については努力されているようですが,必ずしも増えているわけではありません。うろ覚えの数字となりますが,放送大学でインターネットを使って授業を受けている人は五,六万人くらいいらっしゃるのではないかと思うのですが,今,民間機関でインターネットの授業を受講している人数は30万人ほどいらっしゃいます。そういった意味で,この部分は日本にとっては非常にクリティカルな部分で,特に成人の教育に関してなかなか数字が伸びない中で,放送媒体を使ったものが非常に重要な位置を持ってくると思うのですが,それに関して放送大学はどのような先導的な役割を果たすか私は非常に重要だと思います。もし,そういった点について放送大学で考えていらっしゃるのであればここに入れるべきであると私は思います。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
それでは,高橋委員,お願いします。

【高橋委員】
 教育政策の目標と主な施策群のロジックモデルでの基本的な考え方をお聞きしたいと思います。今後5年間の全体的な構想ということで教育政策の目標と施策群があるのですが,これらの施策はやはりどれだけ予算が付くかによっても,具体的な効果が影響を受けます。そうなると,例えば下に測定指標候補が様々挙げられているわけですが,効果が期待される測定指標も変わる可能性があります。また指標の測定が困難な場合も考えられます。施策によっては,測定指標に反映されなくても,必要とされる施策もあるだろうと思います。そのような中で,この測定指標の決定はいつ頃,つまり,現在は,第3期基本計画の第1部について議論を行っているわけですが,最終的には指標の選択は,いつ頃になるのでしょうか。

【北山部会長】
 御指摘の点については,今後,予算や財源について検討していく中で調整していくことになる部分もあろうかと思いますが,そのような理解でよろしいですか。

【内田教育改革推進室長】
 今,指標に関しての御質問がございましたが,こちらに関しましては,客観的根拠に基づく教育政策の推進の在り方についても,秋以降検討していくわけですが,そのような中でも並行して,どのような指標をとりながら測定していくかを考えていくことになろうかと思います。

【北山部会長】
 それでは,羽藤委員,お願いします。

【羽藤委員】
 御説明いただきましてありがとうございました。何点かありますが,御説明にもあったように,測定指標候補全てが同じレベルのものではなくて,直接的なKPI,アウトカムを示しているものもあれば,それを出すための条件を整えましょうといった測定指標もあるということで,これは最初の段階ではある程度はいいのだろうと思っております。ただ,少し気になったのが,こうした指標を全ての教育現場で測って評価しようとすると,やはり相当混乱も起きるような気がするため,やはり置かれている教育の状況,例えば分かりやすい話で申し上げると,生徒数割る教員数など,そのような教育の現場の諸量をある程度カルテ化して,指標の比較分析をする際の条件整理をきちんと行っておかないと,掛けている金額と効果の出方が全て一様というわけではありませんので,そちらの条件整理のための下調査と申しますか,データ化が必要だろうという気がしました。これが1点目です。
 2点目です。指標をこのように候補ということで決めていってもし行ったとしますと,説明にあったようにかなり部分的なものに限られていますため,場合によっては,学校の先生方ですのでゲーミングのようなことにはならないと思いますが,指標を達成しているから単純にいい,悪い,あるいは,もうこれでいいだろうということも,海外の事例ですと出てきている場合もあります。したがって,この指標については,例えばボトムアップ型指標や地域提案型指標といったように,地域や教育の現場でそれぞれの工夫で何らかの指標を独自に設定されて,掲示的にこのような施策群の効果をそれぞれの教員あるいは教育の現場で継続的に確認していくことを是非推奨していただいて,地域の教育現場で検討していただくようなことを加えることが大事ではないかと思いました。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
これは基本計画ですので,言わば骨太部分,基本項目の指標のみを記載せざるを得ず,個別の論点のすべてを盛り込む訳にもいかないのが難しいところかとは思います。
 それでは,明石委員,お願いします。

【明石委員】
 7ページを御覧いただきたいのですが,「日本型教育の海外展開と我が国の教育のグローバル化」は,非常に良くなってきたと思っております。そこで一つ気になる点は,ここに挙げている「日本型教育」は,文部科学省の学校教育という視野での数値目標が多い気がします。例えば青年海外協力隊は,50年ほどの歴史がありますが,約3万人が青年海外協力隊として途上国に対する様々なサポートをしており,恐らく,日本の中で一番世界から認められていることだと思います。つまり,私が申し上げたいことは,「日本型教育」をもう少し幅広く捉え切れないだろうかということです。要するに,文部科学省の学校教育という枠でなく,生涯学習も含めていただければいいのではないかということです。今でも青年海外協力隊はシニア海外協力隊といいましょうか,リタイアした方も発展途上国に行くような仕組み作りもしておりますよね。このような事柄を途上国への協力という中でもう少し,文部科学省やJICA,あるいは厚生労働省と文部科学省など,そのような幅広い意味での日本型教育の海外展開を少し入れてくださるといいかなという願いです。

【北山部会長】
 ありがとうございます。これは次に議論する部分も当然関係してきますが,大きく言えば,文部科学省だけでなく,省庁を超えて検討すべきといった趣旨の御意見ということかと思います。
 では,宮本委員,お願いします。

【宮本委員】
 先ほど金子委員から放送大学に関する御意見を頂きましたので,その件だけ簡単に御説明させていただきます。放送大学が国のお金を使いながら非効率なところがあるのではないかといった御指摘ですが,現実には,国からのお金は国立大学以上に大幅にカットされておりまして,相当な改革をしなければ放送大学は成り立たないという状態にございます。実際には,それだけ効率の良い大学運営に全面的に取り組んでいるというところでございますが,一つは,テレビ,ラジオだけでなく,オンライン科目を作るようになりまして,平成32年までにまず100科目作るとしており,その後,順次ニーズに応じて作っていくということを行っております。それから,中学,高校と大学教育を結ぶリメディアル教育を今,全面的に取り組もうとしております。それから,職業に直結するような資格関連科目も前向きに取り組もうとしております。そのような中で先ほどの高等教育機関と放送大学という生涯学習教育機関の垣根を取り払って,効率的な高等教育が可能になるのではないかということを申し上げた次第でございます。
 二度も申し上げてしまい,申し訳ございません。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
田中委員,お願いします。

【田中委員】
 先ほど,ロジックモデルの指標に関してお話が出ていましたが,私も,これは骨太の方針ですので,余りたくさん指標を掲げない方がいいと思います。まずは,キーとなる指標をもう少し選択する必要があります。よくよく見てみると,この掲げられている施策と目標と指標は必ずしもロジカルに一致してないところがあるように見られますので,そこをまず整理した方がいいと思います。また,この参考指標の中に目標を達成するためにどうしたらいいのかという指標も入れていますが,これはもう骨太の方針から外してもいいのではないかと思います。その理由は,先ほど羽藤委員もおっしゃっていましたが,地域,地域でそれを達成する方法が違うのであれば,何をどう達成するかという指標のところは,地域主体に任せてもいいのではないかと思うからです。
 以上です。

【北山部会長】
 ロジックモデルについて御意見を頂きありがとうございます。第2期教育振興基本計画については,三菱総合研究所に依頼してロジックの確認を行いましたが,こちらの第3期計画のロジックモデル案については,そのような確認はまだしておりませんよね。

【内田教育改革推進室長】
 現段階で案としてお示ししているものに関しましては,まだでございます。

【北山部会長】
 第2期計画では,適切だと思っていた目標,指標でも,実際にはロジックが途中で分断されてしまっていたといったことがありましたので,そうした反省を踏まえて,今回はどこかで確認作業を行う必要があると思っております。
 では次に,審議経過報告(素案)について意見交換を行います。まず,資料の御説明をお願いします。

【内田教育改革推進室長】
 資料1‐3に関して,まず御説明させていただきます。前回は,これまでの議論の状況ということで,総論,各論,指標という形で御説明いたしましたが,今回は,それらの三つの資料を一つにまとめ,前回の御意見も反映した上で,素案という形でまとめさせていただきました。また,前回からの主な修正箇所に関しては赤文字にしておりますので,赤文字のところを中心に御説明させていただきます。
 2ページ目,3ページ目は,目次となっております。
4ページ目を御覧ください。「はじめに」ということで,この審議経過報告(素案)の現在の状況について御説明しております。一つ目の丸には,これまでの議論を基に,2030年以降の社会の変化を見据えた,現時点での考え方をまとめたものであること,三つ目の丸には,基本的な方針ごとに,今後5年の教育政策の目指すべき方向性や,それを実現するために必要な施策群について整理を示していること,四つ目の丸には,中央教育審議会のほかの分科会,部会でも議論が進んでいるものもございますので,そういったものも踏まえながら,政府全体としても人生100年を見据えた人づくりの在り方に関し省庁横断的な検討が進められる予定でございますので,そういった議論も踏まえ更に充実を図っていくことを記載しております。
 5ページ目を御覧ください。こちらには教育基本法の第2条の目標を記載しております。教育振興基本計画は,教育基本法の理念,目的,目標を具現化するものでありますので,最初にそういったことを記載しております。
 8ページ目,9ページ目を御覧ください。「(1)人口減少・高齢化の進展」のところで,小中学校,大学の在籍者数,進学者数などの数字がイメージできるように数値を入れております。
 12ページ目を御覧ください。障害者の権利に関する条約,合理的配慮といった視点についても記載する必要があるという御意見がございましたので,追記しております。
 13ページ目を御覧ください。「高等教育を取り巻く状況変化」ということで,前回,高等教育に関する記載ぶりが足りないという御意見がございましたので,この箇所だけでなく幾つか出てくるのですが,文章を追記しております。一つ目の丸といたしましては,少子化が進む中でも18歳時進学率の上昇により,学士課程への進学率が5割,専門学校等を含む高等教育機関全体への進学率は8割を超えている状況を記載しております。二つ目の丸には,産業界から人材育成の強化も期待されていること,AI・IoT・ビッグデータ等の産業構造改革を促す情報技術等を基盤とした人材育成が求められていることを記載しております。後ほど御紹介しますが,大学分科会でも同じ趣旨の御意見がありましたので,そういった御意見なども踏まえながらこちらは追記しております。
 16ページ目を御覧ください。ローマ数字3「2030年以降の社会を展望した教育政策の重点事項」の「人生100年時代を豊かに生きる」について,働くことや,地域や社会の課題解決のために活動することにつなげていくことの重要性について意見がありましたので,追記しております。また,「超スマート社会の実現」に関しても,何名かの委員から御意見を頂いているところでございますが,今後の変化の激しい社会を生き抜いていくことを見据えた教育が重要だという趣旨の文章を追記しております。「教育を通じた一人一人の『可能性とチャンス』の最大化」に関しましては,幾つになっても学び直し,新しいことにチャレンジでき,夢に向かって頑張ることができることが必要であるということを追記しております。前回,意欲と能力のある者の才能を伸ばすという表現に関して御意見がありましたので,このような書きぶりに修正させていただいているところでございます。
 20ページ目と21ページ目を御覧ください。この辺りも大学教育の内容が中心でございます。「問題発見・解決能力の修得」に関してですが,大学教育の質の確保が問題となっており,「三つの方針」を実質的なものにすること,授業改善にとどまらず,出口も十分に意識しながら,カリキュラム・マネジメントの確立等に取り組むことや大学教育を通じて「学生が何を身に付けたか」という観点を一層重視していくことで,社会に対して説明責任を果たすことが求められること,また,高等教育機関が経済社会の急速な変化に対応した教育を提供するための教員の多様性・流動性の向上や,学生が必要に応じ多様な科目を受講したり,機関間の移動を円滑に行ったりするといった方策の検討の必要性について,追記しております。
 また,「社会的・職業的自立に向けた能力・態度の育成」に関しては,変化が激しく将来が展望しにくい状況において,考えを深め,必要な知識・技能を主体的に身に付けることの重要性,職業において求められる知識や技能,技術に関する教育の充実,今後の成長分野で必要とされる人材の育成や,超スマート社会においては,人文科学,社会科学,自然科学の分野の枠を超えた協働の中から新たな価値が創出され,人々に豊かさをもたらすといったことを念頭に置いた教育の視点を記載しております。この辺りについても,先日の大学分科会の中で意見が出ていたところでございます。
 また,21ページの下の辺りになりますが,「グローバルに活躍する人材の育成等」で,日本が抱える社会課題や地球規模課題を自ら発見し,解決できる能力を有した人材やグローバルな視点を持った人材の育成,国際化に取り組む高校・大学への支援といったことを追記しております。
 22ページ目を御覧ください。一つ目の白丸には,各地域においても地域の発展に貢献する人材の育成が求められていること,二つ目の白丸には,希望する若者たちが留学の機会を得られるよう,海外留学を支援すること,三つ目の白丸には,外国人留学生受入れについても,国内企業への就職促進,奨学金の戦略的な活用など,様々な取組を進めていく必要があることを追記しております。
 また,22ページの下から二つ目の白丸には,前回も意見が出ていたかと思いますが,高等教育段階においては,高度人材の育成とイノベーションの創出の中核としての役割を果たしていく必要があることを記載しております。
 23ページ目を御覧ください。「博士離れ」が進んでおり,国際競争力の地盤沈下をもたらしかねない深刻な事態であるという課題認識,工学系教育改革を着実に実行する必要があることを追記しております。
 「スポーツ・文化等多様な分野の人材の育成」の三つ目の白丸ですが,経済発展の先導役となる我が国の成長分野の発展を担う専門人材の育成について記載しております。
 24ページ目を御覧ください。真ん中の辺りの「社会人が大学等で学べる環境の整備」について,人生100年を見据えながら,「いつでも,どこでも,何度でも学べる環境」をつくることが必要であり,特に,高等教育にアクセスしやすくするための支援が不可欠であること,学士課程や修士課程を修了した社会人が,自らの能力を更に向上させて博士号を取得するなど,国際的にも競争力がある人材へ向けた学び直しを促進していくことの重要性を追記しております。
 25ページ目を御覧ください。誰もが希望すれば進学できる環境,特に高等教育を全ての子供たちに真(しん)に開かれたものにしていくことの重要性を追記しております。
 26ページ目を御覧ください。前回も御意見がございましたが,若者の社会的自立に向け,高校中退者等の様々な背景に対応した学習相談・支援等が求められることを追記しております。
 27ページ目を御覧ください。学校・家庭・地域が相互に連携協力しながら子供を支え,育んでいくということ,科学技術イノベーションの基盤である国立大学等施設の老朽化対策に関しまして,戦略的リノベーションを行っていくこと,私立大学等については,特色ある教育及び研究の一層の推進を図ることが求められることを追記しております。
 28ページ真ん中には,「持続的な高等教育システムの構築」ということで新たに追記しているのですが,一つ目の白丸として,各機関の役割・機能の強化と,教育研究の質の一層の向上,地域における高等教育の機会の確保を図ることが重要であること,二つ目の白丸といたしまして,人材育成と知的創造活動やイノベーション創出の中核である高等教育機関が一層重要な役割を果たすことが求められること,三つ目の白丸ですが,各大学が特色,強みの一層の明確化を進めるとともに,社会人や障害のある学生などの多様な学生のより積極的な受入れにも取り組むことにより,生涯を通じた人材育成の場としての大学の機能を高めることが求められていること,高等教育全体としては,新たな価値の創出の基盤となる創造的な教育研究の高度化,実践的な教育の充実といった二つの機能の充実を目指していることを追記しております。
 29ページ目を御覧ください。一つ目の白丸には,高等教育機関間,さらには地方自治体・産業界との連携の強化の検討が必要であること,二つ目の白丸には,分野別・産業別の人材育成の需要の状況についても十分に考慮する必要があること,三つ目の白丸には,経営力の強化についても検討が必要であること,29ページ目の一番下の白丸には,社会のグローバル化が進む中,諸外国との教育に係る人材交流の強化などの我が国の教育のグローバル化を推進することが求められることについて追記しております。
 30ページ目を御覧ください。各論の部分ですが,「目標と施策群」ということで,最初に考え方を整理いたしました。
 三つ目の白丸の本計画の留意事項を記した点ですが,本計画は,国自身が取り組む施策を整理したものであり,国全体の目標も参考にしつつ,各地域や教育実践の現場において,各関係者が自主的に目標などを設定することが期待されるということで,国においては,先進的な取組について把握するとともに横展開や地域間の連携の促進,国の施策の充実に向けた活用に取り組むことが重要であると追記しております。
 また,(注)といたしまして,測定指標及び参考指標について現段階アウトカム,アウトプット指標の設定に当たっての考え方を追記しております。指標の設定に当たっては,目標が教育を受ける者の状態に関するものであるか,条件整備に関するものであるかという性質の違いにより,アウトカム指標か否かの位置づけに違いが出ることや,各指標によって目標の達成状況を測ることができる程度は異なり,指標のみをもって目標の全ての要因を評価することは困難であることを留意する必要があることを記載しております。
 また,31ページの最後の(注)でございますが,地方公共団体が各地域の実情を踏まえ,特色のある目標や施策を設定し,取組を進めていくことが重要であること,地域の発意による指標の設定なども期待されることを追記しております。
 32ページ目を御覧ください。32ページ目以降はそれぞれの目標と施策群に関する記載になります。参考指標の一つ目について,前回,学校における学習指導の改善の状況についての指標であることを分かりやすく明示すべきだという御意見がありましたので,修正しております。
33ページ目を御覧ください。一番下の白丸について,文言が分かりにくいという御指摘がございましたので,「東日本大震災からの」を追記するなど,修正しております。
 34ページ目を御覧ください。まず,34ページ目以降の目標のところで赤文字になっているところは,教育基本法の目標の趣旨を反映したところでございます。
 二つ目の白丸の「いじめ等への対応の徹底,人権教育の推進」ですが,加害者が被害者にもなり得るため,被害者への配慮だけでなく,加害者への教育的配慮も必要だという御意見もございましたので,その旨を追記しております。
 35ページ目を御覧ください。「伝統や文化等に関する教育の推進」について,学校教育で行っている伝統や文化等に関する取組を追記しております。また,教育基本法の趣旨を一つ一つ整理していきますと,宗教に関する一般的な教養に関する教育の記述が入っておりませんでしたので,追記しております。
 また,教育基本法の趣旨にも照らし合わせまして,35ページ目に「主権者教育の推進」,36ページ目に「環境教育の推進」を事務局の方で追記しております。
 37ページ目を御覧ください。学校保健委員会の全国的な取組状況の周知,子供の情報機器に接する機会の拡大等の状況に関しても前回御意見がございましたので,追記しております。
 39ページ目を御覧ください。こちらも同じように教育基本法を踏まえ目標を整理した修正と,参考指標のところで大学入試改革に照らした指標を追記しております。
 41ページ目を御覧ください。こちらの目標(5)についても,教育基本法に倣って追記しております。
 43ページ目を御覧ください。「地域の教育力の向上,学校との連携・協働の推進」でございますが,社会教育関係で地域の中核的人材の育成が必要だといった御意見がございましたので,追記しております。
44ページ目を御覧ください。同じように教育基本法の目標に照らし追記した部分がございます。また,施策群には,英語や留学等の内容だけ記載していましたが,まず自らのアイデンティティを形成するという意味で伝統や文化等に関する教育も重要ですので,新たに追加しております。
 45ページ目を御覧ください。一つ目の白丸について,高等専門学校への支援も必要ですので,そういった部分やバカロレア,海外への拠点展開,キャンパスの多様性促進に取り組む高等専門学校・大学等への重点的な支援についても御意見を頂きましたので,反映しております。また,三つ目の白丸の「外国人留学生の受入れ環境の整備」には,「渡日から帰国まで一貫した日本留学サポートを実現できるように」といった文言を追記しております。
 46ページ目を御覧ください。目標(8)について,委員の御指摘に基づきまして「創造性」という言葉を追記しております。また,修士課程修了者の博士課程への進学の必要性についても何度か御意見を頂きましたので,指標の追加に加えて,優れた才能・個性を伸ばす教育の推進において外部人材の活用,大学院教育の改革の推進において,平成28年3月に「第3次大学院教育振興施策要綱」が定められておりますので,その旨を具体的に記載しております。
 49ページ目を御覧ください。目標(10)ですが,「女性活躍推進のためのリカレント教育の強化」ということで,大学等におけるリカレント教育や認定教育プログラム等を活用した能力開発,キャリア形成の推進,復職や再就職,起業等を円滑に成し遂げられる社会を実現することなどについて,新しく追記しております。
 52ページ目を御覧ください。こちらは前回も大分御意見を頂いたところですが,まず,目標(12)について,「職業に必要な知識やスキルを生涯を通じて身に付けるための社会人の学び直しの推進」という趣旨を明確にさせていただきました。あとは,「『学び』と『労働』の循環」という表現が適切ではないかという旨の御意見も頂きましたので,反映をしております。
 また,二つ目の白丸ですが,先ほどから放送大学の御意見も頂いておりますが,前回も頂きました御意見を参考にしまして,「放送大学において放送授業等に加えてオンライン授業の充実を図るとともに,他大学と連携によりプログラムを提供するなど」とより踏み込んで記載しております。また,社会人のニーズをより的確に把握して情報を提供していく情報発信の質の向上についても記載しております。また,教育訓練休暇制度等の導入ということで,これは厚生労働省とも連携していく必要があるかと思いますが,その旨も記載しております。
 57ページ目を御覧ください。目標(15)の「多様なニーズを持つ者への教育機会の提供」でございますが,前回,合理的配慮の趣旨を盛り込んだ形での指標や施策が求められるのではないかという御意見を賜りましたので,指標を新たに設けたところでございます。また,二つ目の白丸の「不登校児童生徒の教育機会の確保」に関しましても,具体的な施策として,特別に編成された教育課程に基づく教育を行う学校の設置を促進することを追記しております。
 58ページ目を御覧ください。高校中退者等の高等教育機関への進学,定時制課程・通信制課程に関する記述を充実しております。
 61ページ目を御覧ください。「児童生徒のICT活用状況」が指標として重要ではないかという御意見もありましたので追記しております。また,超高速インターネットの整備に関しても御意見を頂きましたので,追記しているところでございます。
 63ページ目を御覧ください。一番下の白丸について,学校図書館の整備充実を図る旨の記述は以前もございましたが,より具体的にガイドラインやモデルカリキュラムの周知といった内容を記載しております。
 最後になりますが,67ページを御覧ください。指標といたしまして,海外の大学との大学間交流協定に基づく単位互換を実施する大学の数を追記しております。また,スポーツの価値やアンチ・ドーピングに関する教育の展開についても,御意見がございましたので,追記しております。
 説明が大変長くなって恐縮ですが,次に資料2‐1から2‐3の各分科会における主な意見に関して簡単に御紹介させていただきます。
 資料2‐1を御覧ください。8月23日に開催された生涯学習分科会における主な意見でございます。
 「総論関係」といたしましては,一つ目の丸,「自立した人間として,主体的に判断し,多様な人々と協働しながら新たな価値を創造する人材の育成」とあるが,大人においても求められる人間像として極めて重要であること,三つ目の白丸といたしまして,教育振興基本計画の中の社会観や人間観をより明確に打ち出すべきではないかということ,最後の白丸ですが,社会人が学習習慣を持っていないという課題があるので,学び始める際の敷居を低くする,あるいは学習成果の開示等による動機付けが大事という意見がございました。
 2ページ目を御覧ください。三つ目の白丸ですが,家庭・学校・地域といった際の学校は,どうしても初等中等教育がターゲットであるが,生涯学習機関としての高等教育機関という視点が必要なのではないかということ,下から二つ目の白丸ですが,「社会人が大学等で学べる環境の整備」について,大学においても正面から取り組むようにしていくこと,またそのアピールが必要なのではないかということ,最後の白丸ですが,「誰もが社会の担い手となるための学びのセーフティネットを構築する」のところで,民間セクターあるいは社会のセクターとの連携・協働についても記載してほしいという御意見を頂きました。
 3ページ目を御覧ください。「各論関係」の三つ目の白丸,「障害者の生涯学習の推進」に関しまして,成人の障害者の方がいかに生涯学習の中で活躍し,例えば就労に結び付いたり,あるいはボランティア活動につながったりしているということについて幅広く書くべきではないか,また,同じページの下から二つ目の白丸ですが,「指標については,アウトカム指標を基本とする」とあるが,アウトプット指標も活用することを遠慮しないでよいのではないかといった御意見がございました。
 資料2‐2を御覧ください。8月22日に開催された初等中等教育分科会における主な意見でございます。
1ページ目を御覧ください。「総論関係」といたしまして,「学校保健の連携体制の構築」も加えることが必要であること,「各論関係」でございますが,「学校保健・学校給食,食育の充実等」において,医師会,薬剤師会などの連携が重要であること,最後の丸ですが,「家庭の教育力の向上」や「地域の教育力の向上,学校との連携・協働の推進」について,自治体レベルでの教育委員会と他の行政部門との連携・協働についても明記してほしいという御意見を頂きました。
 二つ目の白丸の目標(8)について,グローバル人材の育成が「英語」又は「海外」に特化しており,フォーカスが狭められているということ,四つ目の白丸,ESDや大学入学者選抜において4技能の評価については,学習指導要領とのリンクをしっかりとやってほしいことについても御意見がございました。
 また,同じページの下,「指標等の例関係」ですが,特定の形の授業を推奨するような指標ではなく,本来目指す目標を達成したかがきちんと分かるような指標とするべきであり,例えば,「習得・活用及び探求の学習過程を見通した指導方法の改善及び工夫を行っている学校の割合」などの形式的な評価指標を示すと,特定の型の授業を推奨することになりかねないので,引き続き指標の精査・検討を進めてほしいという御意見がございました。
 3ページ目を御覧ください。下から二つ目の白丸ですが,無線LANに関しましては,速度や安定度も指標に入れてほしいという御意見がございました。
 4ページ目を御覧ください。最後の白丸ですが,ICTに関して,授業がどうなったか,子供がどのような力を身に付けたのかが分かる指標が必要であるという御意見がございました。
 最後に,資料2‐3を御覧ください。8月23日に開催された大学分科会における主な意見でございます。「総論関係」の二つ目の白丸といたしまして,多様性の観点が必要であること,教育機関・研究機関間での人材の流動性に加え,アカデミックサイドと産業界との間でもダイナミックな人材の動きのある社会を目指すべきということ,その次の白丸ですが,文理の枠を超えた分野横断的な学問の必要性,一番下の白丸ですが,学生の流動性を実際に高めるためには,家計負担を軽減することにより大学選択の可能性を広げる必要があるということ,2ページ目の最初の白丸ですが,18歳から22歳の者だけのものではなく,もっと幅広く,必要なときに必要な人が学びに来る必要があるといった御意見などがございました。
 大変説明が長くなりまして恐縮ですが,以上でございます。

【北山部会長】
 ありがとうございました。
 各分科会における主な意見も含めて,資料の第1部,第2部の部分について御説明いただきました。御意見がございましたらどなたからでも御発言お願いします。
 始めに,本日は初等中等教育分科会と生涯学習分科会の分科会長をされている小川副部会長と明石委員が出席されていますので,各分科会長から御意見を簡単にお願いしたいと思います。
 まず,生涯学習分科会長の明石委員,お願いします。

【明石委員】
 資料2‐1,「生涯学習分科会における主な意見」を御覧ください。
先ほど,事務局からポイントを御説明いただきまして,ありがとうございました。
 「総論関係」の一つ目の丸について,「自立した人間」を,子供だけでなくて大人においても求められる人間像だということがかなり新鮮みを感じました。私たちはこれまで人間像や理念について子供の成長を想定しがちでしたが,大人においてもそのような人間像を設定していきたいというのがまず1点ございます。それから,2点目ですが,1ページの下の丸ですが,社会人のうち学習習慣を持ってないという人が7割ほどいらっしゃいます。残りの3割の方は様々な意味で学習してくれるのですが,7割の方がどうも参加してくれないという,この断層をどのように埋めていくかという課題がございます。生涯学習分科会では,100万人が高等教育機関で学習をするような仕組みにしていきましょうという指標を設けているのですが,現在3割ほどで,到底100万人には届きません。したがって,その3割を4割から5割に持っていくような仕組み作りも考えていきたいというような御意見もあり,そのためには,生涯学習の敷居が高いので,もっと低くしましょうという御意見やもう少し楽しい学習で,それが社会につながって,結び付いているということを出していきたいという御意見が2ページ辺りに記載しております。3点目は,大学との関係をもっと深めていきましょうということです。2ページの上から三つ目の丸から五つ目の丸の三つが,生涯学習における高等教育,とりわけ大学の良さを見直していきましょうという御意見でした。4点目は,2ページの最後ですが,先ほど内田室長から御説明がありましたように,セーフティネットを作る場合に,公共団体や国という発想はありましたが,もっともっと民間の力もお借りしていきましょうという御意見がございました。
 細かい指標等そのほかについては,資料をお読みいただけば分かるかと思います。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは,小川副部会長,お願いします。

【小川副部会長】
 資料2‐2を御覧ください。初等中等教育分科会としては初めて基本計画について議論を行いましたので,非常に多くの委員から様々な観点からの意見が出されましたが,おおむね各論と指標に関しての意見が多くを占めました。
 まず「各論関係」から言いますと,分科会長としてやはり気になったことの一つは,学校保健に関して,これまでこの基本計画部会でも必ずしも十分な議論があったというわけでもありませんでしたので,そのこともあって,日本医師会の横倉委員から,資料2‐2の「各論関係」の最初の方に学校保健に関して様々な御意見が列記されていますが,こうした多様な意見が出されました。内容的には納得のいく内容でもありますので,できましたら,当該専門領域からの学校保健に関する御意見でもありますので可能な限り計画の中にしっかり反映させていただければと思います。
 次に各論で多かった御意見が,ICTの整備環境と利活用に関してです。これは関係者,ないしは学校現場から多く出されました。基本的には無線LANの100パーセントの達成というのは指標としては記載されていますが,今の学校現場ないしは今度の新教育課程の授業作り等々の取組を考えれば,無線LAN100パーセントの達成ということ自体は重要ですが,さらに,通信速度や安定性といったような質的な向上がやはり不可欠な課題にもなっていますので,是非,参考指標としてそのようなICTの環境整備に関わる質的な向上を入れて,計画的に取り組んでいただきたいという御意見も多かったです。
 あと,分科会長として初等中等教育分科会での議論で少し気になったことは,私立学校関係者から,審議経過の報告全体を見ると,私立学校に関する記述が極めて少ないという感想が出されたことです。確かに,私もその辺りを注意して読んでみましたところ,私立学校関係についての言及は教育研究の環境整備や施設整備の項目で言及されている程度で,それ以外のところについてはほとんど私立学校についての言及がありません。教育研究環境や施設設備の項目以外にも審議経過で取り上げられている施策の多くは私立学校にも共通する施策であるわけですので,やはりそうしたことも少し留意する必要があると思います。例えば,第1部のローマ数字4の「5.教育政策推進のための基盤を整備する」の中に,「私立学校への支援・振興」という項目を1項目設けて,そこで国の私立学校への支援・振興の基本的な考え方を総括的に述べたり,第2部の「5.教育政策推進のための基盤を整備する」の各論の中で少しまとめて「私立学校への振興施策・支援策」を重点的に記述したりといった私立学校への記述の配慮は少し工夫されてもいいのではないかと感じました。
 あと,初等中等教育分科会で非常に多く意見が出されたのは,やはり学校現場に近い委員の方が多いということもありまして,学力やICTに関わる測定評価,参考指標に関しての御意見です。先ほど事務局からも説明ありましたように,今,記載されている参考指標について私自身は必要な参考指標だと思いますが,その参考指標の内容が学びや学習のある型が指標として設定されることで,学校現場の多様な試みが抑制され,ある一つの学習の型だけが展開されていくことがないように,測定指標,参考指標についてはもう少し配慮して検討を進めてほしいというような御意見が何名かの委員から出されました。ただ,分科会長としては,今,審議経過の報告の中で説明された学力の測定としての指標は,国の指標として欠かせないと思いますので,例えば学習の質や多様な学びの学校現場の様々な工夫等々を反映した指標の検討については,先ほど田中委員もお話しされたように,地方や大学・研究者などと連携しながら,地方や大学・研究者などで試みている質的な成果指標に基づいた検証作業と連携しながらその可能性を追加的に行ってもらうといった別の何らかのアプローチを考えていく必要があると思いますが,ただ,分科会としてはそのような意見が何名かから出されたということは申し述べておきたいと思います。
 最後に,これも何名かの委員から出た御意見ですが,21世紀型の学力ということで,初等中等教育段階から高等教育段階まで目指すべき資質・能力の在り方がようやく共有されるような段階になりました。学校制度全体として目指すべき,育成すべき資質・能力の内容が初等教育から高等教育まで共有されるような状況になってきているので,学力の成果指標においても,やはり初等教育から高等教育まで何か共通の枠で少し考えておく必要があるのではないかという御意見もありました。そのような点では,本日御説明があったように,高等教育の段階で参考指標として,新しい入試の記述式問題や英語の4技能のスコアを新たな指標として設定するような話も出てきましたが,そのようなことも含めて,新しい学力というような共有した資質・能力の育成をどう評価するかという際の評価指標を,初等教育から高等教育まで何らかの共通した枠組みを作っていくという工夫も今後必要ではないかという意見がありました。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 大学分科会については,本日,分科会長である永田委員が御欠席なので,私から簡単に御説明させていただきます。大学分科会が開催されたのは先週でしたが,その際,永田委員が繰り返しおっしゃっておられたように,高等教育に関しての記述が少ないといった御意見がございました。つまり,生涯学習,社会人の学び直し,高等教育機関と産業界を含めた社会との結び付きなども含めて,高等教育に関する記載をより充実すべきではないかということですが,そうしたことも踏まえて,本日の資料では,内田室長からも御説明があったように高等教育に関して赤字で多く追記しております。
 それでは,川端委員,御発言お願いします。

【川端委員】
 第1部の22ページの海外留学の部分なのですが,海外留学のシステムが充実して多くの方が海外に行くということは本当にすばらしいことだと思っております。それと同時に,海外に行く前には日本文化の理解を深めていただき自分の国のことをよく知ってから是非行けるような方向性に持っていっていただけたらと思います。ただ,幾らこのシステムを充実していただいても,なかなか全ての方が海外留学をすることは実際難しい部分もあるかと思いますので,多くの海外の方も日本に留学しているということも含めて,日本にいながら海外のことを学べるようなシステムも是非深めていっていただけたらいいと思っております。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。今の御意見は,外に向けてのグローバル化と内なるグローバル化の両方があいまってのグローバル化だといった御意見かと思います。
 それでは,菊川委員,お願いします。

【菊川委員】
 第1部について3点ございます。
 先ほど明石委員が生涯学習分野における日本型教育の今後,展開についてお話しされましたが関連して,余り一般に知られていないのですが,OECDの成人力調査の「PIAAC」では,日本の成人の読解力,数的思考力,それからICTについては利用した人だけなのですが,全部世界一の実績であったという調査がございます。これは数年前の調査で,今後継続的に進行管理していくかどうか分かりませんが,やはりそのようなデータをこの教育基本計画にも位置付けるべきではないでしょうか。その中に,職業や学歴によって成人力調査の結果が違うわけですが,例えば,アメリカとドイツの後期中等教育の卒業者よりも日本の前期中等教育の卒業者の方が成績がいい,あるいは新しいことを学びたいという学習者のクロス集計成績に比例しているなど,国立教育研究所の方でデータをお持ちですので,位置付けていただきたいということが1点です。
 それから,24ページでございます。先ほどから出ている社会人の大学の活用に関してなのですが,一番下の丸で,学士課程や修士課程を修了した社会人が更にということで博士号を取得するといった記載があるのですが,大学,あるいは大学院を社会人が活用するときに,どう活用していくのかという検討が必要ではないかと思っております。例えば修士号をどう社会人に位置付けるか,あるいは社会人にとって,本当に実力を付けてくれる大学院教育とは何なのかというようなことを正面に据えて検討していただきたいと思います。それが2点目です。
 それから最後の3点目,以前も一度申し上げて恐縮なのですが,肥満児と痩身児の測定指標なのですが,この測定指標というのは飽くまでも誰が努力をするのかというのがはっきりしていて,政策努力に対しての測定目標ではないかと思うものですから,この肥満傾向児その他というのを測定目標にすることは,体質的なものもあるかもしれないし,ひょっとしたらいじめなどにつながらないかというようなのもありますので,ここは大丈夫だろうかという懸念を持っております。
 以上でございます。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは,続いて白井委員,お願いいたします。

【白井委員】
 本当に多くの意見をこのようにまとめていただいてありがとうございます。どんどん表現が分かりやすく洗練されてきていると本当に実感させていただいております。
 私からは,どこで申し上げたらいいか分からないというような意見を2点挙げさせていただきます。
 まず1点目なのですが,先ほど中井委員がおっしゃった点について,私自身,子供を3人育てている立場ではっとするところがございまして,先ほどの七五三の状況です。それに対してクラスルームの中でどう対応するかということをはっきり前に打ち出すべきだということに賛成でございます。子供を3人育てていまして,夏休みの宿題を見ていて最近非常に感じることは,学校で習っている内容が,家庭での補助,家庭でのサポートに依拠している部分がかなり大きいことでございます。子供の貧困など様々なことで,「セーフティネット」という書き方をしていただいているのですが,例えば初等中等教育分科会の方でも,家庭の教育力の向上に当たっては保護者の働き方改革も同時に必要であるという御意見が出ていたように,必ずしも経済的な貧困だけでなくて,やはり社会の多様化の中で,本当に家庭で私自身も本当に苦労していますし,機会損失が出てきているという子供がそんなに低い割合ではございません。セーフティネットなどと言っていられるような状況であるのだろうかというようなところをもう少し見つめてもいいのではないかということを,中井委員の御意見をお聞きしていて思ったところでした。両親のどちらかがある一定の学力があって,しかもちゃんと子供と向き合える時間があるといった状況でないと,かなり落ちこぼされる子供の数が増えてくるのではないかと思います。この夏も,大阪府と福島県で,学校の宿題が終わっていない,持って行けないというような子供がそれほど少ない数でなく,たくさん出会いました。また,例えば子供の読書感想文は,よほどきちんとサポートを受けてない限りは,ほとんどの子供が感想ではなくてあらすじをまとめていると思うのですよね。どうしてこのような状況がずっと放っておかれているのかというのも少し不思議に思うのですが,落ちこぼされてからサポートをするのではなくて,学級の中で本当に子供たちの多様な状況にどう向き合っていくのかというようなことを前にもっと記載してもいい時期ではないかということについて,大賛成でございます。
 それからもう1点,細かい点ですが,自分自身が発言したところなので意見としてフォローさせていただきたいところがございます。34ページにございます測定指標の「自分自身に満足していると思う高校生の割合の改善」というところで,恐らく,以前は,「駄目だと思うところがあるという高校生の割合」だったかと思いますが,それが一歩進んで考えていただいたのだと思うのですが,特に日本人の控えめな性格とあいまってというところで,これが自己肯定感に果たして直接つながるのだろうかと思います。私の年代でも,自分自身に満足しているかと言われると「はい」とはなかなか言いづらいのですが,かといって,自己肯定感が低い人間かと言われると,そうでもないと思いますので,客観的なところでもう一歩なのかなという気がしております。例えば同じ調査の中で,「自分の国のために役に立ちたい高校生の割合」では,実は欧米より高く,もしかしたら日本人の性質からするとそちらの方が自己肯定感に近いような部分もあるのではないかというような印象を持っているわけですが,もう少しここは練ってもいいところではないかと思いました。
 以上2点です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは,高橋委員,お願いします。

【高橋委員】
 第2部の目標(19)「持続的な高等教育システムの構築」に関連して,第1部の方で意見を申し述べさせていただきたいと思います。
 65ページの「持続的な高等教育システムの構築」の検討中の項目には,小規模地方大学がつぶされるのではないかと感じる項目があります。もちろん,大学の経営力強化と,その地域における人材育成ということを考えて,この目標(19)の本質は,特色ある「足腰の強い」地方大学づくりに,力点を置いていただきたいと思います。
 65ページと関連して申し上げますと,10ページ,11ページに「地域間格差など地域の課題」についての御指摘がございます。そこで,11ページですが,地方の経済動向と所得の差,それから大学進学率が県民雇用所得との相関関係がある等の御指摘がございます。教育振興基本計画は,このような課題を克服するための計画であってほしいと私は思います。
 次に,13ページのところでございます。「高等教育を取り巻く状況変化」で,少子化と産業界のニーズということが記載されておりますが,ここに,先ほどございました持続的な高等教育システムの構築が必要な状況の記述がないと思います。現実に学生確保ができてない大学や小規模大学の課題はございますので,ここに課題の指摘をしていただきたいと思います。
 その上で,22ページにございます指摘もとても大事だと思いましたが,一つ目の丸に「グローバル化への対応は,大都市圏だけの課題ではなく,地域が直接世界とつながる時代の中で,各地域においてもグローバルな視点をもって地域の発展に貢献する人材の育成が求められている」という記載がございます。私どもも地方にいまして,地方の企業こそ,否応(いやおう)なくグローバル化の影響を受けている現実がありまして,そのような地方だからこそ,大学が存在する意味が重要になっております。国際競争力を生むというところで,地方の持つ意義について,是非御検討いただければと思います。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
今おっしゃった点については,高等教育の将来構想部会を中心に専門的な議論が行われていますので,そちらとシンクロする形になろうかと思います。
 それでは,田中委員,お願いします。

【田中委員】
 3点ほど述べさせていただきたいと思います。
 まず,9ページと47ページに関連するもので,これはAIと教育の役割なのですが,前半の9ページの方はこういう書きぶりなのかなと思うのですが,47ページの大学の役割になると理数科系や技術者の養成の話になっているのですが,AIの問題は労働市場の構成が抜本的に変わり,職業そのものが変わってしまうので,それにどう対応した教育があるかという論調にした方がやはりいいのではないかと思います。これが1点目です。
 2点目は16ページです。「人生100年時代を豊かに生きる」のところ,これは上から三つ目の丸になりますが,赤字で「働くことや,地域や社会の課題解決のため」とあるのですが,ここに「ボランティア」という言葉も入れてはどうかということです。理由は二つありまして,一つは,先ほどのロジックモデルの中の指標に入っているからです。それから二つ目なのですが,この問題は定年前後の方々に最も需要が大きい問題でありまして,2枚目の名刺やセカンドキャリアという中には,実は対価というよりは人様に喜ばれる仕事をしたいという要望が圧倒的に大きく,さらには,社会サービスのできるだけ受け手ではなく担い手にいたいということもあります。ここは恐らく,人生100年ライフシフトの中でも大きな課題になると思いますので,「ボランティア」という言葉を含めていただけたらと思います。
 それから3点目です。39ページの大学のところで,これは先ほども部会長からも御説明がありましたように,今後深めていかれるだろうとは思いますが,先ほど資料の方を拝見しましたところ,入っていなかったので,あえて申し上げたいことがあります。それは大学評価のことです。大学評価に,複数の種類が乱立とは言わないのですが,同時に行われていて,かなり現場も疲弊しています。その割に役に立ってないということはこの間も日経新聞に書かれていましたが,そう考えますと,やはりより効果的な評価をするための見直しと促進が必要です。一つは今申し上げているようにやはり整理・合理化が必要であること。それからもう一つは,もうそろそろ最大のステークホルダーである学生を評価に含めるべきではないかということで,やはり大学評価そのものの見直し,あるいは改革というものも入れていただければと思います。
 以上3点です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。認証評価も含めた大学の評価については,今,正に直しを行っているところでしたよね。

【塩見文部科学戦略官】
 今お話がありました大学評価の件,特に認証評価や在り方を含めて,大学の将来構想の在り方の中で,しっかりと検討してその改革を図っていくために御議論いただいておりまして,そちらでの議論の成果もこの基本計画の議論の中にフィードバックしてまとめていく流れになると考えております。

【北山部会長】
 大学改革プランや国立大学改革プランも含めて,認証評価についてはこれまでに既に,情報公開の在り方などとも絡む形で,論点整理,項目立てはかなりできてきていますよね。

【塩見文部科学戦略官】
 おっしゃるとおりでございます。特に今回,ここ数年,大学教育に関してもアドミッション・ポリシー,カリキュラム・ポリシー,ディプロマ・ポリシーの三つのポリシーを踏まえた形で体系的な大学教育を行い,そのポリシーを踏まえて評価も行っていこうという流れになっておりますので,そうした理念も踏まえて,どういった評価の在り方がより効果的で効率的なのかという点についても御議論いただいている状況でございます。

【北山部会長】
 こうした状況も踏まえまして,今の御意見についても検討していきたいと思います。
 それでは,中井委員,お願いします。

【中井委員】
 私からは2点申し上げたいと思います。
 1点はボランティア教育についてでありますが,超高齢化社会に入っていく中で,共生社会を作り上げていかなければならないことはほぼ共通した認識になっているかと思います。また,2020年のオリンピック・パラリンピックもボランティアを最大限フルに活用するということになっているわけですが,その2020年を一つの契機にして我が国をボランティア社会にしていきたいという思いもそこにはありますので,この基本計画においても,子供たちに対するボランティア活動を体験させ,ボランティアマインドを醸成するということをしっかりと書き込むことが必要だと思います。やはりこれからの社会,この社会を支える重要なファクターとしてボランティア活動がもっと根付いていかなければいけないという状況なわけですから,これからの子供たちにしっかりその担い手になってもらうということで,そのことはしっかりと記載していかなければなりません。第1部のところでも,「豊かな心の育成」ということで,他者への思いやりや公共の精神の育成などは記載してあるのですが,ボランティア活動,ボランティアマインドを育成するという形では記載されていません。それから第2部でも,35ページに「道徳教育の推進」や「体験活動や読書活動の充実」とは記載されているのですが,「ボランティア」という言葉は,新しい学習指導要領に触れられているというだけで,間接的な言い方でしかございません。やはり真正面からボランティア教育の充実の必要性ということを記載していくべきではないかということが1点でございます。
 それからもう1点は,これは完全に第2部の話に入っていきますが,61ページの目標(17)の測定指標候補のところに「コンピュータを3クラスに1クラス分程度整備」とありますが,もうAIの時代,そして教育効果を上げるという観点からも,3クラスに1クラス分程度というのは非常に中途半端だと思います。やはり教育効果を上げるためには一人1台が大原則だと思うわけなのですが,その一方で,では小学校の1年生からコンピュータを使わせるのかというと,それもまた実態に合わないわけで,小学校の低学年はやはり自分で紙に記載することが大切だと思うので,学年や学校種によって大分違うと思うのですね。だから,ここにあるように3クラスに1クラス分程度というのは非常に大ざっぱ過ぎて,指標としてはいかがなものかという感じがいたします。
 それから,この指標は,「整備」とありますから,備え付けたり貸与したりということになろうかと思うのですが,今の高校生は90パーセントが既にスマートフォンを持っているわけで,そうすると,端末は自己が所有する端末を使いますという方が,もう高校生ぐらいになるとむしろ現実的ではないかと思います。そういったことで,この指標の設定の仕方は今の現場の実情からすると少し合わないところがあるという感じがいたします。
 以上でございます。

【北山部会長】
 ありがとうございます。今,中井委員がおっしゃった「3クラスに1クラス分程度整備」という水準の根拠について御説明いただけますか。

【氷見谷生涯学習政策局政策課長】
 失礼いたします。ただいま中井委員から御指摘がありました学習者用コンピュータの整備状況につきましては,第2期教育振興基本計画においては,3.6人に1台という目標が記載されております。その目標の達成に向けて地方交付税等も措置されて,各学校,自治体等で整備されているところではございますが,実際としては6から7人に1台というのが現状でございます。今般,第3期教育振興基本計画を定めるに当たり,有識者会議を別途作り,どのようなICT環境の整備が適当であるか御議論いただいたところ,当然,学校種,学年等の違いはございますが,全体としては3クラスに1クラス分程度整備ではどうかという議論のまとめを頂いている状況でございます。こちらをこの基本計画の中でどう取り扱うかいうことがこれからの御議論だと思っているところでございます。

【北山部会長】
 それでは,柘植委員,お願いします。

【柘植委員】
 大きく二つ,細かく言えば三つかと思いますが,御意見を申し上げます。
 24ページの中ほどの赤文字で追記されたところと下の方の赤文字の社会人が博士号を取得するといった記述が今回たくさん入っていて,とてもいいと思います。これは,教育振興基本計画なので,「社会人」というくくりだけでなく,「教員」というようなくくりも何かあるといいと思いました。例えば,日本で通級教室,アメリカでリソースルームというのですが,大抵マスター以上なので,博士号を持っている方が結構います。あるいは,1年ほど前に台湾の国際会議に行ったときに知ったのですが,特別支援学校の教員は大体修士号を取得しており,中には博士号を取得している人もいるとのことで,日本とはすごい違いなのですよね。学歴4年間ではなくて6年というところが特別支援教育だけに限って言うと非常に多いわけなのですね。日本は教育センターがあるからいいというわけでなく,大学で学ぶということは,やはり力が付くのですよね。これは教え子を見ていると分かります。特別支援教育だけに区切るのかどうかは分かりませんが,「社会人」というくくりではなくて,「教員」というくくりで,修士課程や博士課程で学ぶことを推奨するような記述があるといいと思いました。
 2点目ですが,30ページの,第2部の冒頭の三つ目の丸の赤文字のところで非常に丁寧かつ具体的に記載してくださって,大変有り難いと思いました。
 それとの関係で57ページの目標(15)について意見を申し上げたいのですが,その前に,資料2‐2「初等中等教育分科会における主な意見」の4ページのICT利活用に関する御意見を御覧いただければと思います。ICT利活用は飽くまで手段であり,条件整備や体制整備がどうかということを見ることも大事ですが,授業がどうなったか,子供がどうなったかということが大事なのではないかという御意見です。私は,この御意見と同じ話を,前回も前々回もしており,私以外にも何名かの委員が御発言されていますね。では実際にやれと言われたら私も難しいのですが,これからの5年間を考えると,何とか様々な項目ごとでそこに迫れるものは迫るようなものを作り上げるとかっこいいと思います。
 その上で57ページ,「多様なニーズを持つ者への教育機会の提供」の一番上の測定指標候補の「特別支援教育に関する個別の指導計画・教育支援計画の作成率の向上」についてですが,特別支援学校は既に100パーセント作成していますので,「幼・小・中・高における特別支援教育に関する個別指導計画・支援計画の作成率の向上」という意味なのだろうなと思いますが,そうだとしたら,それを記載した方がいいと思います。
 それから二つ目の測定指標候補に挙げられている「小・中学校における通級による指導の普及」については,何かもう少し測定しやすいようなものに落とし込む必要があると思います。
 あるいは,参考指標候補の二つ目に,「通級による指導を実施している高等学校がある都道府県数」とありますが,私立も国立大学附属の学校も含めて,日本で通級による指導を実施している学校の割合と,都道府県の割合を入れるなどもう少し具体的なものにした方がいいかと思います。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
それでは,丸山委員,お願いします。

【丸山委員】
 先ほど白井委員がおっしゃったことに関することなのですが,34ページの「自分にはよいところがあると思う児童生徒の割合の改善」について,これは全国学力・学習状況調査において小学校6年と中学校3年生に調査を掛けているのですが,小学生ならもう少し結果が良くてもいいのではないかと思います。子供に自分に良いところがあると感じさせることができる場面は,体験,それからもう一つ,学校生活の中や家庭生活の中で,「あなたはここがいいところよ」と具体的な行動場面で大人が言うことによって認識するものと捉えております。この調査は該当する項目に丸を付けるものですが,その結果が十分ではないということは問題であると感じているところです。小学生が自分に良いところがあると認識できないということは,人の役に立とう,それからもっと先に進んでいこう,勉強しよう,何かの活動に行動を移そう,先の中学校に対して夢を持とうといったところにもつながってくるので,大人の責任としてこれは非常に大事なのではないかと感じているところです。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
それでは,羽藤委員,お願いします。

【羽藤委員】
 第1部につきましては,若干印象めいていますが,脚注で数字を拾ってはいるのですが,本文中できちんと数値を引用して文章が記載されていないところが少しもったいない印象を持ちました。例えば13ページ目の教員の負担について,脚注には1週間当たりの平均勤務時間は53.9時間と記載されているのですが,本文中にも,そのようなことが起きているという現状の認識をきちんと記載した方がいいのではないかという気はします。
 また,「高等教育を取り巻く状況変化」について,後半にはリカレント教育が相当出てきているにもかかわらず,こちらには状況の認識に関する記述がございませんので,そのようなニーズが急増しているといったことは具体的に記載した方が後につながるので,第1部のところはそういったところが重要かなと思いました。
 第2部につきましては2点あります。まず,49ページ目の一番下の「女性活躍推進のためのリカレント教育の強化」ですが,私,大学の中で学内保育の担当をやっておりまして,女性がリカレントというと,大学院生ぐらいから保育の問題が非常に強く出てきています。大学の学生が子供を出産する,それから継続的にキャリアを続けていくといったときに,サポートが十分に足りていないような気がしますので,この辺りは是非こちらに環境整備が必要ということを追記していただけないかと思いました。
 最後ですが,52ページ目の一番下のところをはじめ何か所かに,「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化」の記述がありますが,これは,相当議論されていることと思います。ただ,正確に言うと,「実践的な職業教育に向けた既存教育機関の活用と新たな高等教育機関の制度設計」といった辺りが適切かと思います。こういった実践的な職業教育は既存の大学でも既に行われていることですし,やみくもに新しいところを作るということではなくて,既存の制度をうまく活用しながら足りないところは新しく作るという姿勢でないと,なかなか負担が大きくなってきますので,その持続的な制度設計を考えるということで,少し書きぶりを既存の議論を踏まえた上で再検討していただけたらと思いました。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
それでは,宮本委員,お願いします。

【宮本委員】
 何度も済みません。2点だけ申し上げます。
 37ページの目標(3)の測定指標候補の中に「朝食を欠食する児童生徒の割合の改善」とあります。これは,昨年辺りから全国の幾つかの自治体が子供の貧困調査を行っている中で朝食の欠食を大体指標としてとっているのですが,実際のところ,あるいは海外のいろいろな文献等を読んでみても,もう一つは,家族と一緒に夕食を食べるかどうかということが,例えば家族の崩壊や貧困を見るときに非常に重要な現象だということが指摘されております。指標は,たくさんはとれないのですが,少し検討が必要かということが1点でございます。
 それから2点目は58ページですが,二つ目の丸で,高等学校定時制課程,それから通信制課程の二つが挙がっておりまして,他のところにも同じ記載があったと思います。この二つが断定的に出てくると,それ以外の高校が問題ないように思われますが,現実には定時制ではなく普通高校の下位校の問題はほぼ同じだけの問題があると思っています。その辺りのところを含めるためには少しここは断定し過ぎるのではないかということで,検討が必要ではないかと思います。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは,川端委員,お願いします。

【川端委員】
 2点あります。
 まず,33ページの二つ目の丸についてです。「東日本大震災からの」となっておりますが,確かにここはとても大きな重要なところだと思うのですが,1年前に熊本地震があって,まだ支援が必要な部分もありますし,大小様々な災害の被害を受けていらっしゃる方がおりますので,「東日本」という記載だけでいいのか少し疑問に思いました。
 それからもう1点,63ページになります。一番下の丸の「学校における教材等の教育環境の充実」の学校図書の部分なのですが,子供たちがまず小学校で様々な種類の本に出会える学校図書というのはとても重要な場だと考えておりますが,やはり学校によって蔵書数にかなりの差があります。また,司書の方,それから地域の方のボランティアの力によって手作りの人形劇や紙芝居で子供たちの興味をとても引いている学校図書館,また,ただ本が置いてあるだけの学校図書館といったように学校図書館によってかなりの差がございますので,是非地域のボランティアの人材育成も考えていただけたらと思っております。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは,最後に金子委員,お願いします。

【金子委員】
 私が申し上げたいのは先ほどから何度も出ていますが,52ページのリカレント教育に関する部分です。かなり記述も濃くなっていますが,ただ,これまで10年も20年もリカレント教育について言われたにもかかわらず,ほぼ状況は進展しておりません。このような意味でも,今回の計画においては非常に重要な目玉になると思います。ただ,そのときに,やはり掛け声だけではなくて具体的な手段,それからスピード感,規模感というのを持つことが,私は重要だと思います。
 こちらの測定指標目標に「社会人受講者数を100万人にする」と挙げられておりまして,これは,なかなか景気が良くていいとは思うのですが,私が調べましたところ,大体今,日本の大卒で働いている人は2,000万人超ぐらいいるのですが,その大卒者に関して調べたところ,今でもいいところがあれば大学院に行ってみたいという人が大体2割,400万人ぐらいいます。したがって,100万人という数字は全く悪い数字ではないとは思うのですが,ただ,逆に言いますと,100万人を導くもっと具体的な数字が幾つか必要なのではないかと思います。先ほど,放送大学の話をしましたが,やはりそんなに放送大学の授業を受講している人数は多くありません。Japan MOOCの学生数は三十数万人です。幾つかのものを集めていくとそれなりに様々なことが分かってきます。そういう意味で,特に社会教育関係については基礎的な指標をきちんと集めて,説得力のある目標を説得力ある仕方で設定することが必要だと思います。

【北山部会長】
 ありがとうございました。
 そろそろ時間でございますので,本日はここまでとしたいと思います。追加で御意見がございましたら,事務局に御提出いただければと思います。
 それでは,最後に,次回の日程につきまして内田室長からお願いします。

【内田教育改革推進室長】
 本日は貴重な御意見をたくさん賜りましてありがとうございました。
 資料3を御覧ください。次回の部会ですが,9月19日(火曜日)に開催する予定でございます。
 また,先ほど部会長からもお話がございましたとおり,本日の資料に関して追加の御意見等ございましたら,事務局までお寄せいただければと存じます。よろしくお願いいたします。

【北山部会長】
 本日はこれで終了でございます。ありがとうございました。

‐了‐

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