教育振興基本計画部会(第8期~)(第12回) 議事録

1.日時

平成29年5月24日(水曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省 「第一講堂」(東館3階)

3.議題

  1. 諸外国における客観的根拠に基づく教育政策の推進に関する状況調査(最終報告)について
  2. 第2期教育振興基本計画の進捗状況について
  3. 今後5年間の教育政策の目指すべき方向性について

4.出席者

委員

 北山部会長,河田副部会長,大竹委員,金子委員,川端委員,白井委員,高橋委員,田邉委員,戸ヶ﨑委員,中井委員,永田委員,丸山委員,宮本委員,山内委員,山脇委員,渡邉委員

文部科学省

 有松生涯学習政策局長,山下文教施設企画部長,佐藤生涯学習総括官,萬谷生涯学習政策局生涯学習推進課長,西井生涯学習政策局社会教育課長,矢野初等中等教育局初等中等教育企画課長,氷見谷生涯学習政策局政策課長,内田生涯学習政策局政策課教育改革推進室長,髙橋生涯学習政策局政策課調査統計企画室長,寺坂生涯学習政策局政策課教育改革推進室長補佐 他

5.議事録

【北山部会長】
 おはようございます。ただいまから第12回教育振興基本計画部会を開催いたします。お忙しいところお集まりいただきまして,ありがとうございます。
 本日は,議題1としまして,「諸外国における客観的根拠に基づく教育政策の推進に関する状況調査(最終報告)について」,議題2として,「第2期教育振興基本計画の進捗状況について」,それから,本日の部会で中心となる議題3として,「今後5年間の教育政策の目指すべき方向性について」,意見交換を行っていただきます。
 それでは,まず事務局から,配布資料の確認をお願いいたします。

【高橋調査統計企画室長】
 会議次第にございますとおり,資料1から資料4まで,それから,参考資料として「障害者の生涯を通じた多様な学習活動の充実について」を,今回用意させていただいております。欠落等ございましたら,事務局までお知らせください。
 参考資料について補足的に説明させていただきます。参考資料の「障害者の生涯を通じた多様な学習活動の充実」につきましては,文部科学省として,障害者が生涯にわたり自らの可能性を追求できる環境を整え,地域の一員として豊かな人生を送ることができるようにすることが重要であるという認識の下,省内の体制を確立するため,特別支援総合プロジェクト特命チームを設置するとともに,平成29年度には,生涯学習政策局に障害者学習支援推進室を新設いたしました。資料は,省内の体制整備に加えて,4月7日付けで公表・発出された大臣メッセージと通知文になっております。文部科学省としては,障害のある方々が生涯を通じて教育やスポーツ,文化などに親しむ機会を持てるよう,障害者学習支援推進室を中心に,省を挙げて支援に取り組んでまいります。
 それから,次に,ペーパーレス会議システムの関係で若干御説明申し上げます。端末が一つずつ置かれていると思いますが,本来であればパネルをタッチして選択していくところですが,反応が余りよろしくないので,大変恐縮ですが,タッチパッドで操作していただき,ポインターで資料などを特定してクリックしていただくという形で御使用いただければと存じます。
 最後に,事務局に人事異動がございましたので,御紹介させていただきます。本年4月1日付けで,氷見谷直紀が生涯学習政策局政策課長に就任しております。

【氷見谷生涯学習政策局政策課長】
 氷見谷でございます。大変お世話になりますが,どうぞよろしくお願いいたします。

【高橋調査統計企画室長】
 それから,同じく4月1日付けで,内田広之が教育改革推進室長に就任しております。

【内田教育改革推進室長】
 内田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

【高橋調査統計企画室長】
 事務局からは以上でございます。

【北山部会長】
 ありがとうございました。今,御挨拶いただきました氷見谷課長が里見課長の御後任に当たり,中央教育審議会に関する窓口責任者のようなお立場と理解しております。今後ともよろしくお願いします。
 それでは,議題1に入ります。諮問事項の二つ目の「教育政策の効果や必要性を社会に示すための方策」に関連しまして,今年度文部科学省から委託している「諸外国における客観的根拠に基づく教育政策の推進に関する状況調査」について,12月の第9回の計画部会で中間報告がありましたが,本日はその最終報告をしていただきたいと思います。
 それでは,御説明,お願いいたします。

【高橋調査統計企画室長】
 それでは,御説明申し上げます。報告書本体につきましては,机上にクリーム色の冊子が配布されているかと存じます。この報告書の概要をまとめたものが資料1になりますので,資料1に基づきまして御説明申し上げます。
 「諸外国における客観的根拠に基づく教育政策の推進に関する状況調査」ということで,イギリスとアメリカでは,教育政策を進めていくに当たり,エビデンス,客観的根拠に基づいて政策がどのように推進されているのかという体制につきまして,調査を行ったものでございます。主な調査項目として,教育政策を推進する体制,それから,教育政策の担当者,教育分野の研究者,学校の現場の方々が,エビデンス,客観的根拠に対してどのような認識をお持ちなのかということを,調査させていただいたものでございます。
 2ページを御覧ください。まず,イギリスについてでございます。エビデンスに基づく教育政策が発展していった経緯を御説明申し上げます。
 一つ目の丸でございますが,保守党政権,労働党政権と,政権はいろいろ変わりましたが,教育水準の向上と地域間・学校間の格差是正というのが,変わらず教育政策の重要テーマございました。こういった観点から, 1990年代の後半頃からエビデンスに基づく教育政策について本格的に議論がなされ,進められてきたというものでございます。特に早期の積極的介入が有効であるというエビデンスに基づきまして,幼児教育・保育分野への投資の拡大が行われていったということでございます。それから,医療分野で先例的にエビデンスに基づく政策の推進がなされてきたとのことでございます。そういったことを踏まえまして,教育分野におきましても政策形成サイクルにおいて「何が有効なのか」ということが重視されるようになり,21世紀に入りましてから大規模な実証研究が行われ,イギリス国内で実証研究の結果を政策に活用する流れが広まっていったということでございます。
 その上で,2ページの一番下の丸になりますが,イギリスでは,2011年に,教育省が主導で公益財団Education Endowment Foundation(EEF)という組織を作りまして,ここが中心となって,エビデンスの創出,伝達,それからその活用という,三つのサイクルにおいて重要な役割を果たすという形がとられてきたことが,一つの特徴でございます。
 3ページを御覧ください。この報告書では,エビデンスの創出・伝達・活用というサイクルを設定して,それぞれについてイギリスでどのようなことがなされてきているかということを報告としてまとめているものでございます。イギリスにおけるエビデンスの創出についてでございますが,エビデンスに基づく教育政策を進めていこうという取組を進めてきた結果,教育に関する研究者の量的研究の能力が,急速に高まったということでございます。それから,政策の立案者と社会調査専門職種との協働体制も構築され,政府内での人的体制が整ってきたということでございます。
 次に,エビデンスの伝達につきまして,エビデンスを統合し,可視化することを目指して,The Teaching and Learning Toolkit等の簡易ツール,方法論が,EEFを中心に開発され,活用されていこうとしているとのことでございます。
 それから,エビデンスの活用でございますが,大学の研究者が教育現場と直接連携を図るという動きがございますほか,教育省の中で,政策立案者の10人から20人に一人の割合で,社会調査の専門職が在籍しているという結果も出ております。
 「エビデンスをもとに大きな広がりを見せた施策の例」でございますが,保育・幼児教育などの関係で,エビデンスを基に政策が遂行されて,それが展開している例を,紹介させていただいております。
 次に,4ページを御覧ください。アメリカについてでございます。アメリカは州政府が基本的には教育行政に責任を持っておりますが,ブッシュ政権からオバマ政権に変わる中で,その程度に軽重はありますが,エビデンスに基づく教育政策の立案の遂行が進められてきました。一つ特徴的なのが,オバマ政権になってからエビデンスの厳格な評価というのが少し緩められ,定性的なものもエビデンスとして認められ始めているということでございます。
 5ページを御覧ください。エビデンスの創出・伝達・活用についてでございます。簡単に申し上げますと,アメリカでは,エビデンスの創出については非常に高い成果が上げられています。大学の先生方などを中心に,例えば縦断的な調査が行われております。また,この表にございますとおり,連邦教育省においてエビデンス自体を階層化しており,丸1がエビデンスとしては優れており,丸2,丸3,丸4と下りていくに伴って,大分定性的なものが含まれていくといった具合に,ランク付けがなされております。ランク付けと申し上げると語弊がありますが,そのようにエビデンスについての評価もされているということでございます。
 課題ですが,エビデンスの伝達と活用については,イギリスと比較すると創出の面では優れていますが,伝達と活用についてはなかなかうまくいっていないとのことでございます。
 6ページを御覧ください。私どもとしては,日本への示唆というのが非常に大事だと思っております。表の中には六つございますが,下の三つ,「エビデンスを『つくる』(創出する)機能の充実」,「エビデンスを「つたえる」(伝達する)機能の充実」,「エビデンスを『つかう』(活用する)機能の充実」というところが特に大事だと思っております。
 エビデンスを『つくる』(創出する)機能の充実」というところでございますと,質的研究と量的研究の両方を重視するという理解を浸透させることが必要ではないかと指摘されております。それから,同じ項目の中の下線部ですが,「多くの関係者が共有できるエビデンスの基準の策定が期待される」ということでございます。
 次に,「エビデンスを「つたえる」(伝達する)機能の充実」,「エビデンスを『つかう』(活用する)機能の充実」というところについてでございます。イギリスは比較的うまくいっているという調査結果ではございますが,「伝達する」,「活用する」というところになかなか課題が多く,伝達する機能の充実については,「簡易に活用できるツール・方法論の開発が望まれる」ということでございます。
 それから,「エビデンスを『つかう』(活用する)機能の充実」については,なかなか英米でも明確な方向性がまだ見えていないということで,ここは恐らく,日本でエビデンスに基づく教育政策を進めていくに当たりましても,同じ課題を抱えるであろうと考えられるというところでございます。
 最終報告としてこういった形でまとめたところでございますが,本日,北山部会長からも冒頭にございましたように,議題3が本日の意見交換の議題の中心でございます。この資料1につきましては,日本におけるエビデンスに基づいた政策推進の体制をどのようにしていくのかという観点から,この段階での質疑,あるいは議題3のところで御意見を賜れれば,大変有り難いと思っているところでございます。
 以上でございます。

【北山部会長】
 ありがとうございます。議題3でも資料1に関して御意見があろうかと思いますが,今の御説明に関して,また,日本における総合的な体制の在り方についての御意見がございましたら,御発言をお願いします。
 それでは,渡邉委員,お願いします。

【渡邉委員】
 後の議題で議論すべきことかもしれないのですが,エビデンスに基づく教育政策の検討の重要性というのは,教育投資の充実や教育財源の確保という後の議題と関連しながら見ていく必要があるのではないかという印象を持ちました。特に公財政教育支出の対GDP比は,OECDでの平均よりも日本は低いということが明確になっているにもかかわらず,その議論がなかなか進展しないのは,他の先進国と比べて,政策がどうなっているのかというエビデンスベースでの分析が足りないからだと思うのです。
 今回,米国あるいは英国のエビデンスの活用の仕方,特に創出・伝達・活用の明確な整理をしていただいたわけですが,やはり日本はこの部分がまだ弱いのだろうと思っています。したがって,このエビデンスの創出・伝達・活用といったサイクルが,どう他国と違うのかというのを整理しながら,その比較に基づいて,政策ベースでの投資額の必要性を主張していく必要があるのではないかと思います。今回,非常に充実した研究をしていただいていますので,後の議題でも,十分使っていただけたらと思います。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 戸ヶ﨑委員,お願いします。

【戸ヶ﨑委員】
 実践現場に近い立場からエビデンスということについて感じていること,また,今の説明資料から感じたことを申し上げたいと思います。
 今,それぞれの学校では,学習者主体の学びということを推進しているわけですが,推進していく際に重要となる一つは,今後のことを考えていくと,学習者のデータをいかに速やかに多く獲得していくかということだと思っています。学習の履歴をデジタル化したり,一方で学習者自身をセンシングしたりして,アナログ上の学習ログをトラッキングしたり,さらには,得られた大量の学習ログを解析できると,正にこれまで言われている指導と評価の一体化といったものが,スピーディーに行われていくのではないかと思っています。
 そのような中で,AI等を活用して,学習者に合った学習の方法やコンテンツというものを提示していくアダプティブラーニングが,今後日本でもどんどん普及していくのではないかと考えているところです。そこで,3ページの一つ目の丸に,「生徒及び学校の個票レベルで情報が連結されたデータベース等の情報インフラの整備」とありますが,こういったものが加わることで,様々なエビデンスに基づいた一層の効率的で効果的な学習が,展開されていくのではないかと思いました。
 また,併せて大切だと思ったことが,同じページの三つ目の丸ですが,「エビデンスを活用する動機付けが学校レベルでも図られており」,また,「学校の幹部層に活用の動きが浸透している」ということです。なかなか日本はここまで到達していませんので,今後はこのことにも取り組んでいく必要があると思いました。
 さらに,4ページの三つ目の丸の,「厳格な評価結果(ランダム化比較試験)以外もエビデンスとして認められ始めている」という文言ですが,勝手に言わせていただければ,研究のためのエビデンスというものから使われるエビデンス,また,厳格なエビデンスから柔軟なエビデンスと言うのでしょうか,質的なエビデンスと言うのでしょうか,そういったものの理解や活用を,学校や教育委員会も研究者と一緒になって考えていく時代が来ているのかなということを感じました。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。一旦ここまでとさせていただきます。ほかにも御意見がある場合には,また後ほど御発言いただければと思います。
 先ほど,アメリカの例で州政府と連邦教育省の取組についてのお話がありましたが,1年半ほど前に,財政制度等審議会から,教職員定数を加配定数も含め児童生徒数の減少に合わせて機械的に削減すべきとの考え方が示され,中央教育審議会でも議論を行った際,東京都などの幾つかの自治体から,それぞれが持っているデータを出していただきました。アメリカでは,州政府と連邦とが連携してデータの把握を行っているということで,日本でも同様かと思っていたのですが,自治体が持つ学校教育に関するデータと,政府として持っているデータとが,それぞれ点在しているような印象を受けたので,データ全般の把握方法について,問題意識を感じたところではあります。
 それでは,議題2,「第2期教育振興基本計画の進捗状況について」に進みます。第2期教育振興基本計画は,現在,5年目の最終年度に入っておりますが,その進捗状況についてということで,今回は,平成28年度のフォローアップを行います。
 それでは,御説明をお願いします。

【高橋調査統計企画室長】
 それでは,まず,資料2-1と2-2の関係について御説明させていただきます。資料2-2は本体になりますが,これでは細か過ぎますので,資料2-1に基づきまして,御説明申し上げたいと思います。
 第2期教育振興基本計画のフォローアップについてでございます。これは報告事項でございますが,議題3の議論において活用していただければと考え,資料3-1にございますが,第2期の基本計画の構造を踏まえて,第3期計画を御議論いただくときの計画の構造と,指標をどのように見ていくのかということを示しております。これを先例として御意見を賜れればという趣旨で,今回,御報告をさせていただくものでございます。
 1ページを御覧ください。第2期計画につきましては,これまでも何度か御説明させていただいておりますので,簡単に申し上げますが,四つの基本的方向性と八つの成果目標と30の基本施策という体系を作っており,それに指標をぶら下げていくということになっているところでございます。
 1ページの下になりますが,第2期計画のフォローアップの状況としては,本部会の6月5日の第1回,10月5日の第2回,3月29日の第3回でフォローアップの報告をさせていただいており,今回,再度御報告させていただくということでございます。
 2ページを御覧ください。本資料の性質でございますが,一番上のところに,「成果目標ごとに主な成果指標の達成状況」を提示しております。その成果指標の達成状況は,原則平成24年度との比較により示しておりますが,当該年度のデータが存在しない場合には,それ以前の最も新しいデータと比較しているところでございます。
 2ページの一番下でございますが,本日時点での第2期教育振興基本計画の成果指標の達成状況は,順調に推移しているものが約7割,横ばいが約1割,課題があると考えられるものが約2割,今後把握が約0.3割となっております。
 3ページ以下は,成果目標ごとに設定された成果指標についての,事例的な形での御紹介でございます。
 成果目標1「『生きる力』の確実な育成」につきましては,「確かな学力」,「豊かな心」,それから「健やかな体」につきまして,ここに掲げられているような形の指標を設定させていただいております。
 幾つか簡単に御紹介させていただきますと,「確かな学力」における成果指標丸1は,「国際的な学力調査の平均得点を調査国中トップレベルにする」ことと,「習熟度レベルの上位層の増加,下位層の減少」でございます。
 少し細かいポイントになりますが,具体的には,PISA2015におきまして,我が国は平均得点が高い上位グループに位置しておりますが,一方で,読解力の平均得点については,PISA2012と2015の結果を比較すると,統計的に有意に低下しているという状況でございます。
 それから,「習熟度レベルの上位層の増加,下位層の減少」につきましては,同じようにPISA2012と2015を比較しますと,習熟度レベル5以上の上位層については,読解力は,統計的に有意に低下しております。数学的リテラシー,科学的リテラシーには,統計的な有意差はございません。それから,下位層についても統計的な有意差がないということで,PISA2012から現状維持ということになっています。
 それから,成果指標丸2は,「児童生徒の学習意欲の向上や学習習慣の改善」ということで,1日1時間以上勉強している児童生徒の割合をフォローアップしているものでございます。
 4ページを御覧ください。「豊かな心」でございます。成果指標丸1「自分自身や他者,社会等との関わりに関する意識の向上・自分には良いところがあると思う児童生徒の割合の増加」ということで,全国学力・学習状況調査の中でアンケートを採っておりますが,自分には良いところがあると思う児童生徒の割合,また,内閣府の調査ですが,自分には長所があると感じている若者の割合の国際比較を指標にしているということでございます。
 それから,成果指標丸2,「いじめ,不登校,高校中退者の状況改善」は,児童生徒の問題行動調査などから,いじめの認知件数に占めるいじめの解消しているものの割合の増加ということを,成果指標として設定しております。おおむね横ばいではございますが,この表に書かれているような形になっております。
 5ページを御覧ください。「健やかな体」でございます。成果指標丸1,「体力の向上傾向を確実にする」ということで,子供の体力が一番高かった昭和60年頃の水準を上回ることを目指すということでございまして,50メートル走やソフトボール投げといった個別のものもありますし,合計点もございます。経年でデータが出ておりまして,こういった形で指標を取ってございます。
 それから,成果指標丸2「学校における健康教育・健康管理の推進」ということで,アンケート調査のようなものでございますが,健康は幸せな生活を送るために重要だと考えている児童生徒の割合を指標としているものでございます。
 6ページを御覧ください。成果目標2「課題探求能力の修得」ということで,高等教育についてでございますが,授業に関連した自律的な学習時間の変化を指標としております。
 それから,成果目標3「生涯を通じた自立・協働・創造に向けた力の修得」ということで,6ページの下半分に掲げられているような,「現代的・社会的な課題に対応した学習を行った人の割合の増加」,「学習成果の活用状況の改善・身に付けた知識・技能や経験を生かしている人の割合の増加」を指標とし,検証しております。
 7ページを御覧ください。「社会的・職業的自立に向けた能力・態度の育成等」という成果目標につきましては,成果指標丸1「児童生徒の進路に向けた意識の向上」ということで,「将来の夢や目標を持っている児童生徒の割合の増加」を見るという指標の立て方になっております。
 それから,成果指標丸2「就職ミスマッチなどによる若者の雇用状況(就職率,早期離職率等)改善に向けた取組の増加」ということで,中学校,高等学校,大学・短期大学,高等専門学校,専修学校等における職場体験・インターンシップの実施状況についてのデータを使っているところでございます。
 それから,7ページの下,「大学・短期大学,高等専門学校,専修学校等への社会人の受入れ状況の改善」という指標について,「社会人入学者の倍増」を目指しているわけですが,これは,27年度と28年度を比較すると減少しているということで,課題のある項目でございます。
 8ページを御覧ください。成果目標5,「社会全体の変化や新たな価値を主導・創造する人材等の養成」ということで,こちらについても,主要な世界大学ランキングの上位100位以内に入っている日本の大学数,また日本人の海外留学者数や外国人留学生数などを指標として使っているところでございます。
 9ページを御覧ください。基本的方向性3の「学びのセーフティネットの構築」の中の成果目標6「意欲ある全ての者への学習機会の確保」ということで,これは「経済的な理由による高校中退者の数の減少」を成果指標として掲げております。25年度から27年度の結果からすると,増加しているということでございます。それから,「いじめ,不登校,高校中退者の状況改善(高校中退者数の割合の減少など)」ということで,高校中退者数の割合の表がありますが,これは減少しております。
 それから,10ページの成果目標7「安全・安心な教育研究環境の確保」ということで,施設の耐震化に関する指標を使って評価しているということでございます。
 最後に,11ページの成果目標8「互助・共助による活力あるコミュニティの形成」ということで,「全ての学校区において,学校支援地域本部など学校と地域が組織的に連携・協働する体制を構築」,「コミュニティ・スクールを全公立小・中学校の1割に拡大」といった指標を設定しているところでございます。
 非常に簡単ではございますが,資料2-1の御説明は以上でございます。

【北山部会長】
 ありがとうございました。それでは意見交換に入りたいと思います。第3期基本計画に係る大臣からの諮問において,この第2期計画の点検結果を踏まえ明確化かつ精選した指標を設定し,教育政策の検証改善サイクルを確立することが,検討事項とされていますので,第3期基本計画の検討も視野に入れて,御意見を頂戴できればと思います。
 それでは,山内委員,お願いします。

【山内委員】
 7ページの下,「大学・短期大学,高等専門学校,専修学校への社会人の受入れ状況の改善」の「社会人入学者の倍増」に関して,社会人入学者数が減少していて課題であるというお話がさらっとあったと思うのですが,私も東京大学の大学院で教えておりますが,社会人の学生がこの10年で随分減ってきているというのが実感値としてあります。
 ただ,第3期計画の基本的な方針の3番目に,「生涯学び,活躍できる環境を整える」とありますし,AI時代に人材の高度化を図るときに,ここの領域は非常にクリティカルだと思うのですが,倍増に対して減少というのは,ある種大変残念な結果だと思います。恐らくこれからが大事で,減少しました,課題ですねではなく,なぜ増えないのかということに関して原因を分析していくことが重要かと思いますが,それに関して何か既存の知見などお持ちであれば,是非教えていただければと思います。
 以上です。

【北山部会長】
 まず文部科学省から,今の御質問に対するコメントをお願いします。

【高橋調査統計企画室長】
 文部科学省としては,幾つか要因はあると思っておりますが,大きく二つの要因があると思っております。
 一つは,社会人,働いている方を前提としていると思いますので,大学で提供するカリキュラムと働いている方のニーズのマッチングの問題があるのかもしれないと思っております。
 もう一つは経済的な負担の問題ということで,社会人が大学院に行くとなれば,それなりの授業料がかかりますので,その辺りが一つ大きな要因ではないかと思っております。

【北山部会長】
 専門職大学に関する法案が,今,正に国会で審議されています。成立すれば,その後,設置基準に関する検討を進めていくことになりますが,専門職大学という名前のとおり,この制度は,18歳の子供たちに新たな選択肢を与えるほかに,社会人の学び直しに活用されることも期待されており,例えばカリキュラムや単位を柔軟化するなど,これからいろいろな形で社会人が学びやすくなるような工夫がなされると思います。そうしたことも一助になるとは期待しておりますが,社会人入学者数の割合は,OECDが約2割であるのに対して,日本は5パーセント未満で増えておらず,御指摘のとおり,この点については大きな課題だと思います。
 次に,宮本委員,お願いします。

【宮本委員】
 今の社会人入学の学生の件でちょうど発言させていただこうと思っていたのですが,私は放送大学におりますので,社会人学生の問題というのは日々非常に重要な問題として感じているところでございます。現在,全科履修生それから科目履修生等で9万人の学生が在籍しておりますが,学生の数が増えず,むしろこの数年,再び減少しているという状況にございまして,国から頂くお金が毎年減らされている中で学生が減っていくということは,極めて重大な問題になっております。
 こちらで発言する前に,本学でもっと適切な分析が必要だと感じているところではございますが,一つ感じていることは,現在,学部入学生の半分がリピーター学生,つまり学士号を持っている方が,再び学部で学ぶ学生になっているということで,三十数年前に放送大学が開学したときとは事情が全く違います。当時はいろいろな事情で大学に行きたくても行けなかった方が非常に多い中で,社会人を対象とする高等教育機関という使命を持っていたわけですが,今やそういう学生が,いないわけではないですが,数からすると明らかに少なくなっていて,当時とは違う学生たちが繰り返し再入学をして学び続けています。それゆえ,日本全体で見たときの社会人入学者が入学するときに持っていた学位が何なのか,その中で何を学ぶことがその方たちのニーズに合っているのかということを,この7ページに関連して,もっと分析する必要があるのではないかと感じております。
 新しくできる専門職大学が,その人たちのニーズに完全に合致するわけではなく,多様なニーズを持っていると思いますので,社会人入学者が増えないという理由については,もっと十分な検討が必要ではないかと思っているということでございます。

【北山部会長】
 ありがとうございます。白井委員,お願いします。

【白井委員】
 ありがとうございます。このように計画がきちんと進捗しているかどうかということを点検するというのは本当に重要なことだと思っていますので,このようにまとめていただいて非常に有り難いと思っているのですが,時代の変化の中で,それぞれの目標に対してこの指標でいいのかどうかを含めて,きちんと点検していく必要があると思っています。
 例えば9ページの成果指標丸5,「いじめ,不登校,高校中退者の状況改善(高校中退者数の割合の減少など)」ということで,ただ単に数が減っているというように捉えているわけですが,昨年,教育機会確保法が成立しました。例えば,不登校は以前まで問題行動とされていましたが,この法律の制定によって,問題行動という形ではなくなりました。国や自治体が,様々な状況にある子供たちに対してしっかり多様な学びの機会を整備しなければならないということになったり,あるいは子供たちも,休む必要がある子供がいるということがはっきり法律に明記されたりした状況の中で,ただ数が減りましたということで成果が測れるのかどうかということは,しっかり考えていかなければなりません。それこそ,不登校状態ではあるものの,しっかり自分の状況に合った教育機関とつながっているという子供に対して,不登校と定義していいのかどうかということもあると思います。
 あるいは,不登校の子供の数の減少ということを目標にしてしまうと,不登校ではなく長期欠席という形の子供の状況・課題がうやむやにされてしまうということも今言われておりますので,どのようにそれぞれの子供に応じた学びが得られているかということを見ていくかについて,考える必要があると思っております。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。今,白井委員が御発言された点は,ロジックモデルに基づいてこれから検討していく指標にも大きく関連してきますので,重要な論点だと思います。
 川端委員,お願いできますか。

【川端委員】
 御説明ありがとうございました。恐らく,社会人入学者と学びの意欲というところが関連していると思っているのですが,小さい頃から学ぶ意欲を大切に,一生涯かけていろいろなことを学べるのだという意識を多くの方に持っていただきたいと思っております。
 一方で,なかなか社会人入学者数が増えないことについて申し上げると,実際社会人になり,世帯を持って子供が生まれてといったことになっていくと,なかなか自分の意欲と生活でバランスが取れないことも事実だと思っております。そして,意欲があっても,それを受け入れてくださるところ,例えば企業や保育,社会・地域のようなところでの受皿が多くあるところで,何か少しでもあかりが見えてくるのではないかとも感じております。
 以上でございます。

【北山部会長】
 ありがとうございます。永田委員,お願いします。

【永田委員】
 ありがとうございます。第3期計画を立てるに当たってという観点から申し上げますと,「課題あり」が約2割というのはゆゆしき問題であり,「順調に推移」が約7割というのは,まずまずの成果だと認識しています。ここで私が知りたいことは,結局どのような施策や方策,あるいは法律改正が,それぞれの結果につながっているかということです。直接つながっていなくても結構ですが,それぞれの計画に対して,どのような施策や方策,法律改正を行った結果,現在に至っているかという点を明らかにした上で,次の計画を立てるべきであると考えます。
 そのときに考慮しなければならないことは,教育は成果が出るまでに時間がかかりますから,ここで出ている成果は,本当にこの第2期計画上の路線にのっとった施策や方策の成果なのかどうかという点を明確にしておかなければならないということです。第3期計画を立てるに当たり,今現在第2期計画で行っていることが第3期計画で結果が出る場合もあるわけですから,その余力を我々は考慮しなくてはならない点だと思います。
 したがって,まずは先ほど申し上げました施策や方策,法律等と計画との対応を正確に見極めなくてはならないと思います。

【北山部会長】
 ありがとうございます。従来言われているように,PDCAの「C」がなければ,次の「A」が出てきませんので,おっしゃった点についてはフォローアップの中でも特に重要な点だと思います。
 それでは,山脇委員,お願いします。

【山脇委員】
 先ほど指標の見直しということが白井委員からお話がありましたが,別の観点での,指標がこれでいいのかという疑問を呈したいと思います。
 教育の三つの大きな要素として,「知」,「心」,「体」があると思うのですが,その中で,4ページ,「自分には良いところがあると思う」,「自分はダメな人間だと思うことがある」という割合をもって,「豊かな心」の指標とするのかどうかということです。自己肯定感は非常に大切なことではありますが,例えば自分が駄目な人間だと思うことがあることが悪いことなのだろうかと,私は率直に思うのですね。この成果指標の中に,自分自身や他者,社会等との関わりに関する意識の向上ということ,これに,良いところがある,駄目な人間だと思うことがあるといったものがどのように関わっているのか,私にはなかなか理解し難いです。
 昨今話題になりましたが,中学生の将来の夢の第3位に「ユーチューバー」が入ったことは,私にとっては衝撃的でした。デジタル社会の中で,「ユーチューバー」というのは人気があるのだろうとは思いますが,人とつながっているようで,実は生身の人間とはつながっていない,そういった仕事が,第3位というのは相当高い地位を占めておりまして,そういった中学生が増えていることはどういったことなのだろうかと思います。恐らく,これが社会との関わりに関する意識の向上といったところと関連しているのだと思うのですが,この指標では分かりにくく,この指標でいいのだろうかと,私は疑問に思います。

【北山部会長】
 これは議題3の「今後5年間の教育政策の目指すべき方向性」にも関係してくる話ですが,御指摘のような点に関しては,三菱総合研究所に依頼した第2期教育振興基本計画の成果目標や指標等に関する分析結果なども踏まえながら,検討していくことになると思います。
 それでは,田邉委員,お願いします。

【田邉委員】
 ありがとうございます。子供の置かれている生活の環境というのは,時代とともにかなり大きく変化しているのではないかと思っております。そこで,5ページの「健やかな体」の成果指標丸1に,「今後10年間で子どもの体力が昭和60年頃の水準を上回ることを目指す」ということで,各学校や地域で取り組んでいる,その成果は見られているかと思いますが,数値的には横ばい若しくは低下という結果になっています。このような中で,成果指標丸2に関して「健康は幸せな生活を送るために重要だと考えている児童生徒の割合」について見てみると,重要だと考えている高校生の割合は上がってきていますし,「保健で学習したことを,自分の生活に生かしている児童生徒の割合」の数値も上がってきています。一方,「朝食を欠食する子ども」の割合については増加しています。運動,栄養,休養の三つが整って初めて子供の体力は上がってくるのではないかと思っております。
 現在,インターネットを使って遅くまで起きている子供も多い中で,睡眠といったような生活習慣も含めた指標をこの中に入れると,何が原因で体力が上がってこないのかということも分かるかと思います。運動だけ行っても,栄養や休養が十分でないとなかなか上がってこない数値もあるかと思いますので,その辺りについても,指標として入れていただけたらと思います。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。今,御指摘いただいた成果指標は,昭和60年頃の水準との比較になっていますが,その頃は,自動車の普及率なども今と異なります。また,最近では室内でのゲームやスマートフォンで遊ぶことも一般的になってきていますが,当時は室内で遊ぶ子供の割合は今と比べれば少なかった頃だと思います。そのような時代の体力に戻そうということで,成果目標に設定したということでしょうか。

【高橋調査統計企画室長】
 その時代の社会状況も理由としてございますが,昭和60年頃の数字が,一番パフォーマンスとして良かったため,そこを目指すという判断です。

【北山部会長】
 分かりました。まだ御意見はあるかと思うのですが,第2期計画のフォローアップは今後も引き続き行いますので,このセッションは一旦ここまでとさせていただきます。更に御意見のある方は,次の議題3でお願いしたいと思います。それでは,議題3,「今後5年間の教育政策の目指すべき方向性について」に移ります。
 まず事務局から御説明をお願いします。

【高橋調査統計企画室長】
 資料の3-1,「『第3期教育振興基本計画の策定に向けた基本的な考え方』のロジックモデル」を御覧ください。第3期計画を策定していくに当たっての柱立てを図として示したものでございます。
 1ページを御覧ください。先般おまとめいただいた基本的な考え方を,ロジックモデル化していこうというものでございます。一番左に「教育の目指すべき姿」がございます。資料3-2で申し上げますと左側,資料3-3で申し上げますと,2ページから3ページにかけてのところになります。「教育の目指すべき姿」がまずございまして,そこから「社会の予測困難な変化への対応」,「少子高齢化・グローバル化等への対応」へとつながります。そして,基本的な方針が丸1から丸5までございまして,資料3-2で申し上げますと,右側の五つの基本的な方針がこれに当たります。「目指すべき姿」から「基本的な方針」という形でつながっていて,この基本的方針の丸1から丸5について,それぞれ2ページ以降で,更に「今後5年間の教育政策の目指すべき方向性」という柱を立てております。そして,更にそれを達成するためには施策を立てていかなければならないということで,一番右側に「主な施策群」をお示ししています。大まかに申し上げますと,そのような構造になっているところでございます。
 2ページを御覧ください。議題3では,基本的には第3期計画の構造を御議論いただくようなイメージで,この資料を作成しております。「今後5年間の教育政策の目指すべき方向性」という緑色の部分が,基本的な方針に対して一つレベルを落として政策の柱を立てたものでして,それらの下に紫の「主な施策群」がぶら下がるという構造になっていますが,この構造を御議論いただきたいということです。特にこの緑色の政策の柱立てについて,御議論を頂きたいというイメージで作ってございます。恐らくこれは次回ということになると思いますが,指標の話が次に展開すると思いますので,そういったイメージで御議論賜れればと思っているところでございます。
 時間も限られていますので簡単に御説明しますが,2ページを御覧いただきたいと思います。基本的な方針の「1.夢と自信を持ち,可能性に挑戦するために必要となる力を育成する」に対して,緑色の囲みの中に,「確かな学力の育成」,「豊かな心の育成」,「健やかな体の育成」といった主に初中教育関係のものがございます。それから,高等教育関係で上から2番目に,「学生の問題発見・解決能力の育成」が,また中央に「生き方や働き方についてしっかりとした考えを持ち,職業生活へ移行後も必要な知識・技能を身に付けられる力の育成」が,そして,「学校・家庭・地域の連携・協働」,「多様なニーズのある子供への対応」,「多様な人材と協働する力の育成」が柱としてございます。これは,基本的な考え方の中にある小項目をベースにして柱立てしているものでございます。
 3ページを御覧ください。「2.社会の持続的な発展を牽引(けんいん)するための多様な力を育成する」ということで,二つ目の方針に対しては,緑色の囲みの中ですが,「グローバル人材の育成」,「イノベーションの牽引(けんいん)する人材の育成」,それから「スポーツ分野に秀でた人材の育成」,「文化芸術分野に秀でた人材の育成」といった,発展を牽引(けんいん)するための多様な力の育成を位置付けさせていただいております。
 4ページを御覧ください。「3.生涯学び,活躍できる環境を整える」という三つ目の基本的な方針に対する方向性ということで,「社会人の学びの継続・学び直しの推進」,それから「障害者の自己実現を目指す生涯学習の推進」,「人生100年を見据えた『二つ目の人生を生きる力』の養成」ということで,基本的な考え方に従って,柱立てをさせていただいているところでございます。
 5ページを御覧ください。基本的な方針の「4.誰もが社会の担い手となるための学びのセーフティネットを構築する」でございます。真ん中の緑色の囲みの目指すべき方向性のところですが,「教育格差への対応」と「多様なニーズを持つ大人・子供への教育機会の提供」ということで,整理をしております。
 最後に,6ページを御覧ください。「5.教育政策推進のための基盤を整備する」という方針に対する政策の柱立てでございます。「教育の質の保障」と「安全の確保」,それから「日本型教育の海外展開」という三つの柱になっておりまして,一番上の「教育の質の保障」については,更に「学校指導体制の整備」,「ICTの利活用の促進」,「教育研究環境の整備」,「高等教育の基盤整備」を記載させていただいております。それから「安全の確保」につきましては,重複すると部分がございますが,「教育研究環境の整備」と「学校安全の推進」という柱立てで,整理をしております。
 この緑色の囲みのところの政策の柱に,指標がぶら下がっていくということになるだろうと思っております。指標については,本日いろいろな御意見を賜り,北山部会長と御相談させていただきながら,資料としてブラッシュアップをして,議論のたたき台とさせていただきたいと思っているところでございます。
 御説明は以上でございます。

【北山部会長】
 ありがとうございました。それでは,今,御説明いただいたロジックモデルの真ん中,緑色で囲んだ部分の「今後5年間の教育政策の目指すべき方向性」を中心に御議論いただければと思います。
 基本的な方針が五つございますが,まとめて議論するとテーマが広範囲にわたってしまいますので,まず前半に基本的な方針1から3について,後半に基本的な方針の4と5について議論を行いたいと思います。
 それでは,まずは金子委員から,お願いします。

【金子委員】
 あえて申し上げますが,私はこれが何を示しているのか,よく分かりません。つまり,ロジックモデルというのは何なのかということです。資料のようにいろいろな図式を作って,矢印をくっ付けていけば,一種のロジックにはなるかもしれませんが,これをやって何になるのでしょうか。何がこれのゴールと言えるのでしょうか。ここから何が見付かるのでしょうか。
 この紫色のところと,それから赤色のところは,それはそう言われればそうですねと思いますし,それから緑色の囲みの中のところにくっ付いているものがたくさんありますが,あれもあります,これもありますと言おうと思えば幾らでも言えるわけで,それを言って何になるのでしょうか。これがどのような武器に,どのような進め方につながっていくのだろうかというのを,私にはどうも理解できません。
 いきなりこのようなことを申し上げて大変申し訳ないのですが,以前から思っていたことを申し上げると,ロジックモデルというもの自体,私はよく分からないのですが,このようにしていろいろなものを並べていった上で,例えばこれが審議経過報告にどう結び付くのか,私は見当が付きません。
 それから,先ほどの指標の問題ですが,指標は必ずしも個々の項目にそれぞれちょこちょこと付くという問題ではなく,指標を見ていると,大きな問題が幾つか現れているわけです。例えば,達成すべきだと思われていて余り達成されていない,かなり重要な問題があります。一つは,大学生の学習というのが非常にクリティカルな問題だと思われていますが,ほとんど7年間変化がありません。様々なことをしているはずですが,変化がないのです。それから,社会人の学び直しに関しても,全く変化がありませんが,これについてもいろいろなことをされているはずです。中央教育審議会でも大学院部会が設置されました。いろいろなことをしているはずですが,全く何も動いていない。私は,これは非常に重要な問題だと思います。
 それから,もう一つ申し上げます。特に初等・中等教育のPISAなどの結果について,特に1a,1bというかなりアンダーアチーバーのところの比率が少し下がっているように見えるので,これは望ましいように見えます。それから,学習に対する興味も,どちらかと言えば少し上がっているように見えます。これもよろしい傾向だと見えるのですが,しかし,これも精査すると,どうもそうでもないところもあるようにも見えます。
 第一に,なぜこれが上がったのかということについても分析がないと,ほとんど何も言えないと思います。学校での読み聞かせなどそのような取組が効いているのではないかという説もありますが,本当にそうなのかどうかということも,よく分かりません。それについても,私は,基本的にどうしてそうなったのかという理由を考えることはかなり重要だと思います。
 それから,もう一つ,この指標に関連して前回落ちていたと思う指標は,乳幼児教育です。特に貧困家庭の乳幼児教育については,かなり明確に指標が落ちていた。これは今,大きな問題になりつつあるわけですね。そういったものについてどのように入れるかという問題もあります。
 以上のように,前回の計画で行ってみた結果,かなりできているところと,まだこれからやらなければならない問題が明確になっているのにもかかわらず,やたら抽象的な絵のようなものをわっと出されて,これをどうにかしてくださいと言われても,ちょこちょこ小さいところを言おうと思えば幾らでも言えるのですが,これ以上,私はどうやって議論していいのか,はっきり言って分かりません。
 いきなり冒頭からめちゃくちゃに申し上げてしまい申し訳ないのですが,その辺りについて,御説明いただけないでしょうか。

【北山部会長】
 第3期計画の検討に当たっては,第2期計画の基本路線を引き継ぐということで,第2期計画を検証しながら次の計画についての審議を行っているところです。PDCAの「C」が十分でないという点については,先ほど永田委員もおっしゃったとおりですが,この大項目・中項目・小項目をロジカルにつなげるという点に関しては,まず,そのような形で進めていくことを決めた上で,これまで検討を進めてきた経緯です。
 その辺りについて,文部科学省としてのお考えをもう一度御説明いただいてもよろしいでしょうか。

【高橋調査統計企画室長】
 諮問に遡りますが,政策を体系化して,そこに目標を設定し,できれば定量的,難しければ定性的,あるいは,達成目標のようなものが難しければ,政策が今どのようになっているかを監視するためのモニタリング的な指標を設定するなどといったように,政策を体系化した上で,それぞれの政策が5年間でどう動いていくのかということをきちんと見ていこうという趣旨で作っています。それがロジックモデルだといえばロジックモデルですし,別のやり方もあるかもしれませんが,政策の検証をするという意図で作ったものだと理解しております。
 指標を置くことによってうまくいっていないものや課題のあるものも恐らくあると思うのですが,逆に指標を置いていることによって課題があることが分かるということもございますので,政策を体系化し,それが目的と手段の関係なのか,因果関係なのかというところはありますが,うまく機能しているのかということを見ていけるような仕組みを構築するというのが,諮問以来の考え方なのではないかとは考えております。

【北山部会長】
 金子委員,よろしいでしょうか。
 それでは,次に丸山委員,お願いします。

【丸山委員】
 2ページ,「1.夢と自信を持ち,可能性に挑戦するために必要となる力を育成する」の目指すべき方向性の「確かな学力の育成」,それから「学生の問題発見・解決能力の育成」についてですが,「学生の問題発見・解決能力の育成」のところを,「確かな学力の育成」の中に入れてしまった方がいいのではないかという意見です。
 この「問題発見・解決能力」のところは,これから必要となる重要な力でもありますし,小学校からずっと培っていくものでもあると考えますので,このところを「確かな学力の育成」というところに入れた方がいいのではないかと思いました。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは,中井委員,お願いします。

【中井委員】
 このロジックモデルを,これから作っていく中身の柱立てと考えましたときに,今,話題になっております教員の長時間労働が,学校においても猶予できない喫緊の課題だという認識があるわけですが,実際課題に取り組むとなっても,なかなか簡単には解決していかないだろうと,誰しも思っているわけであります。それだけに,「今後5年間の教育政策の目指すべき方向性」の中には,これを明確に大きな柱立てとして設定をしていくべきだと思います。
 今,学校の現場では,教員の長時間労働は,単に労働者としての苛酷な環境にとどまらず,結局,ブラックと言われるようになってしまったが故に,有為な人材が新たに入ってくることが,年々難しくなっております。これは現に数字にも表れており,特に小学校においては採用倍率が3倍を切るような状態までになり,長期低落傾向が続いています。
 また,先生方から聞くと,長時間労働を改善することができたら,明日の授業準備や授業改善に充てたいとおっしゃっています。そして,校長先生もそうさせたいと言うわけですね。裏を返せば,今,明日の授業準備や授業改善が十分にできていないということを先生方が個々に自覚しているということだと思いますので,潜在的な教育の質の低下が,既に長時間労働によって始まっているということだと思います。教育の質を確保・向上させるという観点からしても,これは本当に大きなテーマとして設定し,総力を挙げて取り組むべき課題だと思います。
 それから,もう1点は,「4.誰もが社会の担い手となるための学びのセーフティネットを構築する」,「5.教育政策推進のための基盤を整備する」の辺りになるのかもしれませんが,セーフティネットの話があります。それから,「教育の質の保障」が「5.教育政策推進のための基盤を整備する」の目指すべき方向性に掲げられておりますが,経済的な要因によって子供の教育の機会が奪われたり教育格差が生じたりすることはまかりならんということで,無償化の話もいろいろ言われているところであります。それは大変結構なことではあるのですが,その一方で,教育現場においては,学年進行が進むにつれて授業についていけない子供が,小学校で3割,中学で5割,高校で7割出てくるといったこと,いわゆる「七五三」と昔から言われております。習熟度別の学習や放課後を使った補習といったことも各学校で行われてはいるわけですが,授業についていけない子供が減ってきたという実感はありません。
 これは,授業についていけない子供というのが,教育の機会均等は形式的には与えられているものの,実質的にはその子供に合ったという意味での教育がなされていないということでありますので,教育の機会均等を実質的に保障するという意味で,授業についていけない子供をなくす。それは,個々の子供の状況に応じたきめ細やかな教育を施していくということであります。お金もかかり,人手もかかることではありますが,それから目をそらしてはならないと思います。そういう意味で,このセーフティネットに入るのか,教育の質の保障に入るのか,それについてはお任せいたしますが,大きなテーマとして掲げていただきたいと思います。
 以上でございます。

【北山部会長】
 ありがとうございます。今の御発言の前半部分の,教員の働き方改革に関しては,近く,中央教育審議会総会で諮問が行われ,初等中等教育分科会を中心に議論されることになると思います。

【有松生涯学習政策局長】
 今の教員の勤務時間の問題は,非常に今,待ったなしの状態だということは,私ども文部科学省としても重く受け止めております。現在,省内では,それに向けて検討を進めているところでございます。いろいろな有識者の方から御意見をお伺いした上で,中央教育審議会でも御検討いただくことにつなげていきたいと考えておりますので,そのテーマについては,また改めて御検討いただきたいと思っております。

【北山部会長】
 それを第3期計画にどう盛り込むかという点も重要だと思いますので,教員の働き方改革に関する検討ともシンクロさせるような形でこの部会の議論も進めていきたいと思っております。また,一昨年の12月に,教員の資質能力の向上,チーム学校,学校と地域の連携協働に関する三つの答申が取りまとめられておりますので,それらに盛り込まれた施策の進捗状況も踏まえて議論するようなイメージかと思います。
 次,川端委員,お願いします。

【川端委員】
 資料の2ページ目,「1.夢と自信を持ち,可能性に挑戦するために必要となる力を育成する」の「主な施策群」の一番上の,「幼児期からの質の高い教育の提供」が,まず先に目に付きました。これが5ページ目の「4.誰もが社会の担い手となるための学びのセーフティネットを構築する」の「主な施策群」のところにも,若干文言を変えて,「幼児期の全ての子供への質の高い教育の提供」とあり,両方に記載されているのですが,実際に義務教育ではないという部分で,幼児期からの質の高い教育が,どのように具体的に提供されていくのかということについて,疑問と期待を感じております。
 そして,それ以外の部分でも,行政として支援がもちろんできるものも多々あるとは思いますし,学校現場において改善されていくべきものというのも見受けられるのですが,それ以外の部分で,各家庭や地域で,どのようにこれらが浸透していくのだろうかと感じております。
 例えば特別支援や外国籍家庭がかなり増えていると思うのですが,そういったお子さんへの支援について,家庭的な支援というのは行政でもあると思うのですが,保護者同士のつながりが割と希薄だったり,孤立している家庭が多々見受けられたりしていますので,そういった部分で,多くの方に手を差し伸べられるようなものになっていけばいいと思っております。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは,渡邉委員,お願いします。

【渡邉委員】
 冒頭のお話のような関係で,これから2030年に向けた新しい教育政策を検討するときに,こういったロジックモデルで示していただいた方が,私のように教育政策に通じていない者,すなわち国民レベルで見たときには非常に分かりやすいだろうと思います。また,課題整理をしてPDCAを回し,次のアクションにつなげていく際も,基本計画の本文だけではなく,このようなロジックモデルで解説した方が,非常に有意義になるのではないかと思います。そのような目線で見ますと,今回は非常によく整理されているのではないかと思いました。
 ただ,全体の整理の中で,資料1ページ目の環境認識の部分(「社会の予測困難な変化への対応」,「少子高齢化・グローバル化等への対応」)は, 2030年以降を見据えるという視点で,「基本的な考え方」の本文は非常によく整理されていると思いますが,一方で,本文と照らし合わせたときに,ロジックモデルにおける2030年以降の環境認識の分類として紫の破線のところが「少子高齢化・グローバル化等への対応」となっているのですが,本文は,この「少子高齢化」の視点と,「技術革新とグローバル化」を分けて書いており,これが正しいのではないかと思うのです。
 と申し上げますのも,高齢化によってもたらされる環境要因から来る政策は,例えば生涯学習につながるもの,あるいは少し飛ぶかもしれませんが,地域間格差の是正につながるものがあるかと思います。そこで,高齢化から来る要素と技術革新,特に2030年以降を見たときのSociety5.0や第4次産業革命というような新しい要素は,従来の第2期計画のときにはなかったわけですから,そこはもう少し,本文に沿って明確に位置付けをした方がいいのではないかと思います。そうすると,基本方針のところにどのように結び付いているかという線の結び方も,少し違ってくるのではないかと思いました。
 それから,各論について申し上げます。2ページの「1.夢と自信を持ち,可能性に挑戦するために必要となる力を育成する」の整理について,先ほどの2030年以降を見据えるという視点で環境要因を考えたとき,ここに大項目として挙げていただいている順番はこれでいいのかということと,例えば,自主的なアクティブラーニングの推進という要素は,環境要因から考えると,かなり重要な視点に入ると思うのですが,言葉としてはもう少し目立つような位置付けで置いた方がいいのではないかと思いました。
 それから,「健やかな体の育成」については,身体の充実や精神面の充実を挙げていただいていますが,ハンディキャップのある人たちの成長という視点に加えて,そのような人たちにセーフティネットを張るという視点の両方の要素があると思います。しかし,「4.誰もが社会の担い手となるための学びのセーフティネットを構築する」には一切その辺りの記載がなく,「1.夢と自信を持ち,可能性に挑戦するために必要となる力を育成する」だけに記載されています。この辺りについても,本文に照らし合わせて,もう少しセーフティネットの要素も組み込んだ方がいいのではないかという感じがいたしました。
 3ページの「2.社会の持続的な発展を牽引(けんいん)するための多様な力を育成する」については,先ほどの2030年を見据えたという整理の中で,多様性,つまり個性そのものを伸ばしていくという時代に入っていくという視点で明確に位置付けたことは,大変いい整理だと思いました。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 続きまして,田邉委員,お願いします。

【田邉委員】
 ありがとうございます。私は,感想を述べさせていただきます。先ほど渡邉委員からも御意見があったとおり,新しい要素での多様性,それから個性を伸ばすという点では,「2.社会の持続的な発展を牽引(けんいん)するための多様な力を育成する」というのは,今後非常に重要になってくるかと思いますが,基本方針1及び3から5と,基本方針2というのは,やり方を変えないとならないと思います。基本方針2は,広く全員にというよりは,本当に優れた才能を最大限に伸ばすということで,中核となる施設も必要でしょうし,そこに集まるスタッフ,そして財源等もある程度絞り込んで,日本から世界に羽ばたいていくというイメージかと思いますので,他の基本方針とは,少し異なると思っております。
 最終的には,基本方針2を除いた1,3,4,5がうまく動いていく上に,この基本方針2というのが乗ってくるのではないかと思っておりますので,その辺りのやり方も考えていく必要があるのではないかと思っております。また,この基本方針2というのは,今後求められる大きなインパクトのある施策になるかと思いますので,是非これをうまく活用するためにも,やり方等を考えていく必要があるのではないかと思っております。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 基本方針4,5についても御発言いただければと思いますが,残された時間は全ての基本方針についての意見交換とさせていただきます。
 それでは,高橋委員,お願いします。

【高橋委員】
 資料2ページ目の「1.夢と自信を持ち,可能性に挑戦するために必要となる力を育成する」の,「今後5年間の教育政策の目指すべき方向性」と「主な施策群」の置き方がまとまっていないと感じました。「確かな学力の育成」と「豊かな心の育成」と「健やかな体の育成」は,心技体で,これは,基礎・基本だと思います。「学生の問題発見・解決能力の育成」というのは,大学生だけのことではないとも思いますが,その次の「生き方や働き方についてしっかりとした考えを持ち,職業生活へ移行後も必要な知識・技能を身につけられる力の育成」というキャリア教育のところ,それから「多様な人材と協働する力の育成」などは,活用してどう生きるかというところだと思います。並べ方の順序がばらばらに置かれているので,基本的な方向性が理解しづらいというところがあると思いますので,位置付けをもう一度整理していただいた方がいいと思います。
 それと,この指標を見てみると,施策が先にありきで方向性を考えたのではないかと思わせる感じがあります。施策を立てるときに,戦略的に言うと,全体を動かす「ポピュレーションストラテジー」というやり方と,リスクの高い対象に対して対応する「ハイリスクストラテジー」というやり方があるわけですが,そのような観点からも指標を見直すことも検討していただければと思います。そして,指標は多過ぎないことや,指標の改善についても,統計的に有意な改善といっても臨床的には意義があるほどの変化ではないとかいうこともありますので,指標は適切なものだけを選択して,どの程度の変化を期待できるのかも考えていただければと思います。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 次は,宮本委員,お願いします。

【宮本委員】
 2点,発言させていただきます。一つ目は,「3.生涯学び,活躍できる環境を整える」ということで,先ほど発言させていただいたことにつながるのですが,この緑色の「今後5年間の教育政策の目指すべき方向性」のところは3本の柱になっておりますが,何を強調してやるべきかということを考えると,一番の強調点は「社会人の学びの継続・学び直しの推進」であり,先ほどの指標から見ても,ここが達成できないという現実があって,その中に,障害者,あるいはリタイア後の人生を前提とした年齢層の人たちの学びというものも入ってくるという,強弱を付けるべきではないかという感じがいたします。
 この社会人の学びがなぜ日本で進まないのかということを考えたときに,現在の働き方改革の大きな流れや議論というものと結び付けて,働き方改革をする中で社会人が常に学ぶことを保障されている,つまり生涯学習保障という観点をもっと強調していく必要があるのではないでしょうか。これは先ほど渡邉委員が発言された言葉を受けて申し上げますと,例えば技術革新やグローバル化という時代状況の中で,生涯学習保障というものをしっかりとやらない限り,その流れから落ちこぼれていく人々が出てくるので,もっと明確な位置付けが必要ではないかということを発言させていただきます。右の「主な施策群」のところに「産業界」という言葉が出ておりますが,教育界だけでは絶対にできることではなく,産業界ときちんとタッグを組んでこれを実現するという強い意志を持たない限りは実現できないのではないかということを考えております。
 もう一つは,その次の「4.誰もが社会の担い手となるための学びのセーフティネットを構築する」についてです。例えば「教育格差への対応」ですが,先ほどのエビデンスベースの評価という話で,アメリカやイギリスの調査研究の御報告がありましたが,教育投資の中で最も効果が上がるのは乳幼児期への教育投資だということは,ここで申すまでもないことで,非常にはっきりしていることです。「主な施策群」のところだと「幼児期の全ての」と書いてありますが,実際は「乳幼児期の全ての子供と,そしてその子供を持つ家族支援」です。イギリスもアメリカもそうだと思いますが,イギリスのシュアスタートは,正に妊娠からの支援を親に対して行うことを通して,子供の将来を保障し,教育格差を小さくしていく。それを行うことで教育投資効果は一番上がるという極めて明確な研究があるわけですから,日本ももっとその辺りのところを強調した方がいいのではないかと思います。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 次は,大竹委員,お願いします。

【大竹委員】
 このようにロジックモデルをまとめていただくのは,私もいいと思います。最初に金子委員から余り意味がないのではないかという御意見がありましたが,冒頭にアメリカ,イギリスの報告がありましたように,エビデンスベースの政策を考えるときに,それぞれの政策がどのような目的,どのような成果をもたらすかということを考えるということが最低限レベルで,その次に,それぞれの政策が本当にその目的のために効果があるかを検証するという,その第1段階として,整理することは大事だと思います。そのときに,今,宮本委員もおっしゃいましたが,既に学術的にもはっきりしたエビデンスがあるものは,それを前提にしてロジックモデルを考えればいいということで,先ほどの幼児期のお話というのは,正にそのような例になると思います。
 ただ,ここで,それぞれの施策や取組というのが,そこまで全て論拠がはっきりしたものが並んでいるかどうかということは,これからもう少し検討していくことも必要だと思いますし,それから,次の段階で,指標を作るということですが,2番目の議題のところで,指標が良くなった悪くなったということだけで判断していたことはエビデンスベースドではないと私は思っています。
 例えば何の政策もしなくても良くなる指標もある可能性もありますし,教育格差の問題であれば,所得格差が大きくなれば悪化するものも自動的に出てくる可能性があります。また,それぞれの低所得者の中では,教育政策の中で向上しているにもかかわらず,環境が悪化したせいで指標が悪くなるということも十分あるわけですね。その辺りについて,成果指標を作ったときに,きちんと評価するということが大事で,なぜその指標が上がったのか下がったのか,本当に教育政策の施策のために上がったかどうかを,今後詰めていく上では大事かと思います。そのときに,ロジックモデルの中に,施策だけではなくて,影響を与える要因というのを列挙しておくと,それをコントロールして,最終的に成果を判断するというときには役に立つのかなと,全体的な感想を持ちました。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。安倍政権になってから,「骨太の方針」に,文部科学省以外の政策も含めて,全てエビデンスベースで行っていくという方向性が示されたと記憶しております。つまり,エビデンスベースの話は中央教育審議会に限った話ではなく,政府全体の話だということです。当然,この部会での議論もエビデンスベースを基本としていますが,教育の問題については様々な要因が関係するため,必ずしも因果関係を明確にできない部分もあり,定性的な要因も併せて考えることや総合的判断が必要となる点は,難しいところかと思います。
 次は,永田委員,お願いします。

【永田委員】
 ありがとうございます。恐らく本日の目的は,提案いただいたロジックモデルをどのように使うかということではないかと思います。この中に書かれているコンテンツは,第8期の10回にわたる教育振興基本計画部会における議論のキーワードが,ほぼ漏れなく入っています。したがってこのロジックモデルはこれまでの議論において必要と判断された施策を分類したものです。さらに,これまでまとめ上げ,この第9期に入って皆さんで共有した基本的な考え方も反映されておりますので,これをいかに使うかの議論だと思います。
 その上で,私はこのロジックモデルを基に,計画を立てることは非常に難しいと思います。その理由の一つは金子委員が言われたように,複数の方針や方向性に連関する施策が十分に整理されておらず,連関しているものが分断されてしまう可能性があると思います。最終的に教育振興基本計画部会は理想論だけでなく計画を立てなければならないので,次の段階としてこれを組み直す必要があります。そうすると,各施策が初等・中等・高等教育,特別支援,あるいは社会人のどれに該当するか,あるいは全部に該当するかもしれません。例えば経済的な支援策であれば,初等教育も中等教育も高等教育も,全て該当します。経済的には支援できなくても,例えば社会人に対して休暇を付与するという新しい法律を作ってほしいということかもしれません。
 ということは,ここにある項目はひとまず頭の中に置きつつ,それぞれ他の分野と関連があるないを分け,ないところはそれぞれ個別に考えるということです。ロジックモデルに合わせて文部科学省の組織を変えるわけにも,高等教育局と初等中等教育局が,一緒に進めていくことも現実的ではありません。これらを実施するためには現実には予算が必要になりますから,当然ながら我々としては,これらのアイテムを,いかに関連性を明確にして分野を超えてまとめ上げられるかを考えなければなりません。例えば初等教育における施策であれば,それらは全部個別に行うのか,あるいは幾つかは連関した施策として計画を立てるのかという視点で検討しないと,何時間やっても正しい結論は導けません。
 ですから,このモデルを今後の議論に使うかということが本日の主眼だとすれば,いかにして議論を進めるかという構造モデルに組み直さないといけないということです。そのためには,試案としては,個々に分けても関連性を持たせてもよいのですが,それぞれ塊にして話し合うべきではないかと思います。

【北山部会長】
 次に,戸ヶ﨑委員,お願いします。

【戸ヶ﨑委員】
 私からは三つほど申し上げたいと思います。
 一つは,先ほど中井委員がおっしゃった働き方改革という部分に関連しているのですが,研修等に過剰な期待をするのではなく,優秀な学生が教員を目指す仕組み作りを早めに構築していく必要があると強く思っています。
 優秀であれば,変化にも対応しやすくなりますし,マルチタスクの仕事に軽重や優先順位も付けられるのではないかと思います。そういったことを研修でどうにか対応しようと思っても限界を感じます。現在の教員採用試験の倍率を見ても,これでいいのだろうかという危機感を覚えます。このことは,先ほどの働き方改革とともに,切り離して考えられない問題だと思いましたので,一言意見を申し上げました。
 二つ目ですが,先ほどの,緑色の「今後5年間の教育政策の目指すべき方向性」の中で,今は内容そのものに対してどうこう言うつもりはないのですが,この緑色の中でも区別ができるといいのかなと思いました。
 と申しますのも,例えば時代の変化とともに変わらないもの(不易)や,第2期計画のときに引き続き課題があることなどのくくりと,それから,新たに時代の変化とともに加わってきたこと(流行(りゅうこう))のようなくくりがあると,より一層見やすいのかなと思いました。余り重み付けのようなことを行ってはまずいのだろうと思いますので,せめて不易流行(りゅうこう)のような形での区別ができるといいのかなと思いました。
 最後,三つ目ですが,先ほどから,指標の立て方ということで,様々な御意見が出ているわけですが,この指標のことも考えながら,項目を立てていかないと,後になって非常に難しくなるのかなと思いました。
 と申しますのも,何をもって達成できたと言えるのか。また,その出てきたアウトカム自体の根拠は,一体何なのだろうか。さらには,先ほどの第2期計画の報告を聞きながら感じていたことは,都合のいいデータばかり並べ,チェリーピッキングとなっていると受け取られてはいけないのだろうと思います。そのようなことを鑑みて事前の設計をするべきで非常に難しいと思いました。
 あわせて,定性的なもの,例えば「豊かな心」といった情意面,非認知スキルのようなもののアウトカムをどのように示していったらいいのかということです。これについては,先ほども申し上げました,柔軟なエビデンスのようなものを考えながら,緑色の項目も考えていかなくてはならないのかなということを感じました。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 山内委員,お願いします。

【山内委員】
 「5.教育政策推進のための基盤を整備する」に関して,2点お話させていただければと思います。
 最初,「教育の質の保障」の右の2番目,「ICTの利活用の促進」という表現になっておりますが,私は是非この表現で行っていただければと思っています。逆に言うと含意を確認したいところがあって,本文だけ見ると,ある種ICT環境整備のように見えるところもあるのですが,もちろんこれから,政府が出しているように,一人1台タブレットのような話になれば,環境整備は当然進めていかなければなりませんが,本質的に重要なのは,環境整備ではなく,利活用の促進だと考えております。
 と申しますのは,頑張っていろいろと環境を整備してきているのですが,2015PISAに付随したICT活用調査で,生徒に,あなたたちは学校や家でコンピューターを使って学習していますかと聞くと,していないと答えるのですよ。つまり実態としては,OECD諸国平均に比べてICT利用率が下がっているのです。したがって環境を整備すれば使われるわけではなく,その間にはいろいろなファクターがあって,一つのファクターは,文部科学省も調べていることですが,教員のICT活用指導力と言われているもので,児童のICT活用を指導する能力であり,これから恐らく求められる能力なのですが,平成28年度の調査でも,66.2パーセント,つまり3割強は,まだ教員が指導できない状況にあるということです。
 それから,実態として,例えば先ほどの長時間労働の話もありますが,忙しくてICTを授業に取り入れられないといったような話になってくると,実態として使われていない可能性もあります。恐らく,まだ体系的な調査は行われていないと思いますが,それも含めて,環境を整備するだけではなく,きちんと子供が1から4の目標に従ってICTを利活用した高度な授業が受けられるようにするということが極めて重要なので,この表現がある種ラベルだけで終わらないように,是非中身を入れていっていただければと考えております。これが1点目です。
 2点目は,先ほどちらっとお話をしましたが,これを進めるときに,結構クリティカルに問題になっているのは,先ほどから指摘が続いている学校の教員の長時間労働問題だと思っています。ICTやアクティブラーニングについても,入れた方がいいのは分かるのですが,とてもそんなことをやっている余裕がないというのが,現場の状況だと思うのですね。
 つまり,恐らく対応するのは学校指導体制の整備のところだと思いますが,これがある種前提にならないと,ICTの利活用促進ができません。何が申し上げたいかというと,この緑色の右側の部分は,かなりの部分で相互連関しているところがあって,その相互連関に関しては,ここでなくても構いませんが,何らかの形で,検討していく必要があるのではないかと思っています。
 以上,2点です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 次に,白井委員,お願いします。

【白井委員】
 ありがとうございます。前回頂いたロジックモデル,無数の矢印が交差していたということを考えると,本当にすごくよく整理をしていただいたなと思っておりますし,ほかの委員からも御意見が出ていますように,このようにたくさんきちんと指標を取ったり,きちんと検証したりするということは,非常に分かりやすいなと思っております。
 と同時に,これが例えばちゃんとできているかという調査やアンケートなどが全部現場に下りていくということを考えると,ぞっとするというか,先生方のブラックな労働環境は変わらないわけですよね。そのような意味で,諸外国の研究の中に,生徒及び学校の個票レベルで情報が連結されたデータベース等の整備について,先ほども出てきていましたが,学校がそれぞれ持っている生徒たちのデータが,そのままちゃんとエビデンスになっていくということが整備できるかどうかというのが,この一つ一つをしっかり着実に実行できていくかというところに対して非常に重要なのではないかという感想を持ちました。
 あと,このロジックモデルとは関係ないのですが,今回参考資料として出していただいています障害者の生涯学習は本当に,誰も取りこぼさない教育という意味で非常に大事で,障害者以外の子供たちの教育環境ということにとっても非常に重要であると思いますので,是非推進していただければと思います。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 山脇委員,お願いします。

【山脇委員】
 ここで話し合われたことや,「5.教育政策推進のための基盤を整備する」とあるのですが,この基盤の最重要事項が教育財源の確保だと思うのです。幾ら理想的なものを山のように書いても,結局お金がなくてできませんでした,お金がなくて中途半端でしたということになりかねません。冒頭に渡邉委員がおっしゃったように,エビデンスと結び付けて財源を確保するということプラス,この教育振興基本計画部会で,日本が教育立国として生きていくのであれば,きちんとした財源が必要であるということを大きな声で挙げつつ,このいろいろな施策を発信していく必要があるのではないかと思っております。

【北山部会長】
 今おっしゃっていただいたことは,本文で申し上げると資料3-3の22ページ,概要で申し上げると資料3-2の一番下の部分のローマ数字3,「国民・社会の理解が得られる教育投資の充実・教育財源の確保」に関することかと思います。この論点については,諮問にもしっかりと項目が立てられていますので,今後,残された数か月をかけて集中的に議論をしたいと思っています。今はその手前の部分,資料3-2で申し上げると,右側の基本方針1,2,3,4,5のところについて議論を行っているところです。この財源の問題や教育投資の充実については以前から幾つか意見が出ていますが,この部会では,まだそれほど深く掘り下げてはいませんので,今後,議論させていただければと思います。
 最近では,安倍総理も教育負担の軽減といったことに言及しておられますので,その辺りの進展も踏まえて,考えていきたいと思っております。
 次に,河田副部会長,お願いします。

【河田副部会長】
 一つだけ申し上げます。私はこれをまとめられた方の苦労が非常に分かるので,言いづらいのですが,横文字が多過ぎると思います。私が修士論文を書いたときに,「アイデンティティー」という言葉と「パトス」という言葉を使ったら,指導教官が,「できるだけ日本語で論じるべきで,外来語を多用するのは田舎ハイカラだ」という話をされました。文部科学省でも,「タスクフォース」や「プラットフォーム」などといった単語は使われていますし,本日の資料にも横文字がたくさんありました。「ロジックモデル」も,「論理構造」といったようにさせたらいかがかと感じております。
 前回の第2期計画は,三つの理念が「創造」,「自立」,「協働」ということで,四つの基本方針,八つの成果目標,30の基本施策ということで,非常に見やすく,分かりやすかったです。今度の計画は,先ほど永田委員からも御指摘があったように,施策とキーワードも混ざっています。「1.夢と自信を持ち,可能性に挑戦するために必要となる力を育成する」の目指すべき方向性は八つ,それから「主な施策群」は33ございます。「2.社会の持続的な発展を牽引(けんいん)するための多様な力を育成する」の目指すべき方向性は四つ,「主な施策群」は24。「3.生涯学び,活躍できる環境を整える」の目指すべき方向性は三つで,「主な施策群」は14。「4.誰もが社会の担い手となるための学びのセーフティネットを構築する」の目指すべき方向性が三つで,「主な施策群」が15。「5.教育政策推進のための基盤を整備する」の目指すべき方向性が三つ,更にその下にそれから六つ出てきて,「主な施策群」が30ということで,これらについて施策とキーワードをきちんとうまく分ければ,かなり分かりやすい目標が立つのではないか。そしてその中で,小項目・中項目・大項目という形で,これをベースに論じていけばすばらしいものになるのではないか,と感じながらお話を伺いました。
 以上,よろしくお願いいたします。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 最後に,金子委員,お願いします。

【金子委員】
 私は今のお話とほとんど同じですが,ロジックモデルと言いながら,かなり勝手なことをどこでも言えるような感じで,言葉が非常に大きくたくさん羅列されているというのが現在の状況で,永田委員がおっしゃったように,ここからどこへ行くのかというのが,私にとっては見えません。この部会では,それを収束させていくことがこれからの課題だと思います。
 それと,もう一つ,先ほど申し上げましたように,第1期計画,第2期計画は,それなりにそれぞれの目標や特徴がありましたが,それらの計画の上に第3期計画があるので,何でも議論ありという方にやっていたのでは,全部がターゲットにはなっていますが,恐らく計画としてのインパクト自体が本当になくなってしまうと思います。

【北山部会長】
 ありがとうございます。本日は,これまで文章だった基本的な考え方を,ひとまずロジックモデルの形でお示しして御意見を頂戴しました。本日の審議はここまでとしますが,前回の計画部会でも申し上げましたとおり,この五つの基本的な方針ごとに,その施策や指標も含めたより詳細なロジックモデルを作成していくことになります。その案の作成に当たっては,文部科学省の事務局だけではなく,適宜,委員の皆様に,御協力をお願いすることになります。その作業の中で,本日のロジックモデルの案がブラッシュアップされていくと思いますので,よろしくお願いします。
 それでは,事務局から,次回以降の日程をお願いします。

【高橋調査統計企画室長】
 次回以降の日程でございますが,資料4のとおりでございます。次回は7月10日の10時から12時,その次の部会は7月24日の15時から17時ということで,開催を予定してございます。
 追加の御意見等がございましたら,事務局まで頂ければと存じますので,よろしくお願い申し上げます。

【北山部会長】
 それでは,本日の第12回教育振興基本計画部会はこれで終了とさせていただきます。御協力ありがとうございました。

―了―

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