団体名:指定都市教育委員・教育長協議会
今まで、教育基本法と学習指導要領との間にはギャップがあり、国を愛する心情を育てることなどは、教育基本法の規定よりも先に学習指導要領に示された経緯があった。
学校教育法の目的及び目標は、この2つを明確に結びつける大綱的基準として機能するように改めるべきであると考える。
幼児教育の重要性については、語るまでもないところである。幼児を取り巻く環境は大きく変化してきている。教育基本法の改正により、新たに家庭教育及び幼児期の教育について位置づけがなされたが、学校教育法にも目的及び目標として適切に盛り込むべきである。
さらに、例えば「情報教育」や「規範意識」というような今日的な課題についても触れるか否かについて、検討する必要があると考える。
現行の6、3制に問題があるのか、あるとすればどのような改革が必要か等については、慎重かつ時間をかけた議論が必要である。
また、いわゆる「中1ギャップ」等の課題を踏まえ、学習指導要領において、9年間の連続性・系統性を一層図っていくことなどにより、小学校及び中学校のより密接な連携が必要ではないかと考える。
学校評価に関しては、学校運営の改善とともに保護者や地域から信頼される学校づくり、さらには教育の質の保障と向上という視点から、大変重要であると考える。
学校評価については、すでに学校設置基準等が規定されており、その中で、自己評価の実施と公表について述べられている。
また、現在検討が行われている評価システムの中で、評価する側のメンバーの育成を含め、外部評価をすべての学校で実施できるかという懸念がある。さらに、第三者評価についても今後どのように制度化されるのかが問われており、十分な検討が必要である。その際に、国の機関による第三者評価については、国による統制強化にならないように慎重に対処すべきである。
併せて、既存の学校評議員制度との整合性を図る必要がある。現在、学校評議員が外部評価の評価者となっている場合がある。そのため、学校評議員の役割分担を明確にした緻密な制度設計を進めていくことが重要である。
現在、様々な分野から学校への変革や要望が高まり、学校はどのような課題に対しても、柔軟かつ機動的に対応できるようなマネジメント力の強化が求められている。
特に、時代の変遷とともに、現在の学校組織では、課題を解決するには制度上の限界があり、校長、教頭、教員の組織では、十分に対応が取れない状況にある。
そのため、解決策の一方法として、新たな管理職として校長や教頭を補佐する「副校長」や「主幹」制度の導入が必要である。そして、新たな職の導入によって組織的な学校経営ができるように制度化を進めるとともに、管理職のマネジメント能力の向上を図ることが重要であると考える。ただし、すでに一部の自治体では、学校経営上の課題を解決するため、「管理職ではない学校現場のリーダー」としての「新たな職」を導入している場合もあるため、副校長その他の制度の導入にあたっては、調整が必要な場合も考えられる。
教員は、児童・生徒の心身の発達にかかわる専門職であり、その活動は、児童・生徒の人格形成に大きな影響を与えることとなる。教員としての資質能力は、教員養成・採用・現職研修の各段階を通して形成されていくものであり、教員生活の全体を通して、その資質・能力の向上を図ることが求められている。
そのため、教員一人ひとりが自己の資質能力の向上のために一層研鑽を積むことが強く求められるとともに、教員としての適格性や専門性を適切に判断することの重要性が高まっている。
現在、教職員免許制度は、終身有効の教員免許状を授与する制度であるが、この制度については、教員免許状の授与に際して、実際の教科等の指導力や適格性等を含めた教員としての全体的な資質能力は必ずしも十分に判断されていないことなどが指摘されている。
このような状況に鑑み、教職員免許制度の改善については、更に議論が重ねられることを期待する。
学校教育の成否は、その直接の担い手である教員の資質能力に負うところが大きく、指導力が不足している教員の存在は、児童生徒に大きな影響を与え、保護者等の公立学校への信頼を大きく損なうものである。
指導力不足教員の認定に当たっては、各都道府県や政令指定都市でそれぞれ、指導力不足教員の基準を定めているが、認定の基準については、「児童または生徒の心を理解する能力や意欲に欠ける」といった項目基準を定めている教育委員会もあれば、「児童生徒を適切に指導できない」と抽象的な表現にとどめる教育委員会もあり、また、認定後の研修も、研修期間の上限が「1年」や「上限なし」と、教育委員会により様々である。
そのため、国において、指導力不足教員の統一認定基準のようなガイドライン等を定めることが必要であると考える。併せて、指導力不足教員に対する共通な指導・研修体制の確立が必要である。
さらに、認定にあたっては、校長及び教育委員会、学校評議員、学校運営協議会委員の評価を最も重視すべきであり、保護者、児童・生徒の評価は、当事者であるが故に、単に当該教員に対する主観に左右される恐れがあるため、教員評価にあたっては、校長等と同格にするのではなく、参考意見とするべきであると考える。
また、指導力不足教員に対する厳格な運用により、教員として不適格な者として分限制度が適用できるように法令等の改正も視野に入れるべきである。
専門性の高い教育長に対して、教育委員が様々な立場から自由に意見を述べることができるよう、教育委員に対しては、教育行政運営にかかる情報提供や説明が十分にされなければならない。
また、教育委員会(教育委員)と教育長及び事務局が、適度な緊張関係を保つことが必要である。
住民による意思決定(レイマン・コントロール)が機能するために、教育委員会(教育委員)が事務執行状況の監視・評価を行うことに特化することや、教育委員会(教育委員)の定数を弾力化するなど、より広く地域住民の意向を反映する仕組みを構築することなどを検討するのも必要と思われる。その流れで、教育委員会における教育長の役割・責任も明確にされるものと考える。併せて、教育委員会形骸化論を払拭することも必要である。そのために、教育委員長の常勤化や、教育委員会のすべての事務を掌る教育長が、同時に教育委員の身分も併せ持つという現行の規定の見直しも含めて、検討を進めるべきであると考える。
教育委員会(教育委員)は、各界から人格が高潔で、教育に関し見識の高い方を選任しており、学校現場や社会教育施設を視察したり、首長や住民と意見交換を重ねていくことで自然に教育行政の理解を深めているため、研修等の必要性については、各教育委員会で独自に判断すべきものと考える。
教育委員会(教育委員)の規模の適正化については、人口規模や面積で一律に共同設置や統廃合基準を定めるのではなく、それぞれの地域の事情を考慮した緩やかな指針にとどまるほうが好ましい。
教育委員数の弾力化は検討するべきだが、それぞれの地域の事情も考慮し、一律にするべきではないと考える。
教育委員会と首長の所掌事務についても、同様に考える。
私立学校に対しての教育内容等についての専門的な指導・助言は、私立学校の独自性を尊重すべきだが、義務教育段階での生活習慣の改善などを啓発・発信すること等、教育委員会及び首長の果たすべき役割もあると考える。
あくまで、市区町村、学校現場が義務教育の実施主体である。
教育委員会の再生は地方分権の立場から考えるべきであり、それぞれの地域が権限と責任を持って教育に取り組むことが基本である
教育行政は、国と地方の適切な役割分担のもとで進めていくべきであり、国の責任で行うのは「目標設定とその実現のための基盤整備」と「教育の結果の検証」にとどめるべきであり、国の教育委員会に対する関与については、問題点等の把握やチェック機能を目的とした第三者的な機関を設置する等、その中立性・透明性が確保される必要があると考える。
学校運営協議会の設置拡大及び地域の参画意識をより高め,効果的な学校運営を図るため,学校運営協議会,又は学校運営協議会が創設するファンドへの寄付金に対する税制上の特例措置を講ずるなど,地域・民間の力を活かした「寄付文化」の創出につながる施策を実施すべきである。
関連法令:地教行法,所得税法,法人税法等
(1)現行法令により所得税の寄付金控除が受けられる特定寄付金の例
(2)寄付金控除額
(総所得金額等の30パーセント又は寄付金額のいずれか低い方)-5,000円
寄付文化の醸成に伴う必要な法改正等について
市町村立学校の教員の給与・手当制度に関する法令
初等中等教育局初等中等教育課教育制度改革室