中央教育審議会 教育制度分科会・初等中等教育分科会における意見発

平成19年2月28日

全国養護教諭連絡協議会

 教育基本法改正、中央教育審議会答申及び教育再生会議第一次報告などを踏まえた学校の教育目標の見直し等に関して、子どもの心身の健やかな成長を願い、健康の保持増進にあたる養護教諭の立場から以下の意見を述べたい。

学校教育法改正に関する主な検討事項

1 (3)義務教育の目標規定の創設

意見

 義務教育9年間を見通した目標の明確化を図る必要がある。特に「命の大切さ」「命の尊厳」等に関係する内容を目標規定に設定していただきたい。

理由

 近年のいじめによる自殺、子どもによる殺人事件、児童虐待等、心の健康問題が深刻化を増している。教育基本法第2条1「豊かな情操と道徳心を培うと共に、健やかな身体を養うこと」第2条4「命を尊び、自然を大切にすること」を具現化するために、心や体の問題に対応している養護教諭としては、「命の大切さ」に関係する内容を目標規定に創設していただきたい。

4 副校長その他の新たな職の設置について

意見

  • 学校に起こる様々な問題に対応するために「副校長」「主幹」「指導教諭」を設置することに賛同する。
  • 特に養護教諭は、全校の子どもたちや教員・保護者と関わり、教諭とは違う特質がある。すなわち、全ての教職員と幅広く関わり、広い視野から学校全体を見ることができる立場にある。この観点から、養護教諭を積極的に上記の役職への登用をしていただきたい。

理由

 養護教諭は、保健体育審議会答申(平成9年)で、企画力、実行力、調整能力の資質の向上を指摘された。以後、養護教諭はこれらの力量を備え、保健室経営や学校全体を見渡し、常に先を見ながら職務に当たっている。よって、養護教諭は、「副校長」「主幹」「指導教諭」の職務に対して、大いにその能力を発揮できるものと確信する。また、「主幹」「指導教諭」制度を生かし、初任研修・経験者研修・免許更新制の指導者としても活用していただきたい。

教育職員免許法の改正に関する主な検討事項

1 (1)教育職員免許制度の改善

意見1

 教職員免許更新制の導入は、常に時代の要請に応え、しかも一層の力量の向上を図る観点から賛同する。

理由

養護教諭は、子どもたちの心と体の健康にたずさわり、さらに健康教育を推進する立場にあり、学校の諸問題の解決に大いに期待されている。養護教諭おいても、常に子どもたちの課題に対応した知識・技術を備え、保護者や社会の期待に応える必要がある。

意見2

 教育職員免許法施行規則第9条「養護に関する科目」及び第10条「教職に関する科目」の見直しを検討していただきたい。特に、専門性を十分に確保しつつ、健康に関する課題への指導力の向上を担保するための方策を検討していただきたい。

理由

 教育職員免許法施行規則第9条「養護に関する科目」及び第10条「教職に関する科目」に関しては、平成10年に養護概説・健康相談活動の科目新設、教育相談(カウンセリング)の充実などの一部改正を行った。しかし、その後、子どもたちの様々な健康の現代的課題の深刻化や複雑化等、時代の変化に伴い、養護教諭に求められる資質も変化してきた。現代の子どもたちの心身の課題を適切に対応できる資質を担保するための養護教諭の免許法の在り方を検討していただきたい。

意見3

 教育公務員特例法における初任者研修制度を養護教諭についても制度化していただきたい。

理由

  • 意見3は表記の教育職員免許法の改正とは直接的な意見ではないが、関連してお願いしたい。現行の教育公務員特例法第23条(初任者研修)及び第24条(10年経験者研修)は、養護教諭はその対象となっていない。しかし、深刻化している、いじめ、自殺、薬物乱用、虐待等は養護教諭に対してSOSのサインを発している。これらを受け止め、これからの子どもたちの健康の保持増進を中心的に担うためには、養護教諭に教諭と同様にまたそれ以上に初任時の研修は不可欠である。
  • 教育職員養成審議会の第3次答申「養成と採用・研修との連携の円滑化について」(平成11年12月10日)によれば、「養護教諭の新規採用者研修については、現在の学校を取り巻く問題に対応できるようその専門性を高めるとともに、初任者研修の改善の方向に可能な限り沿いながら条件整備に努めることが必要である。」と明示されているが、未だにこれらの措置が十分といえない現状にある。
  • 現在は、新規採用者研修、又、経験者研修として各都道府県にて現職教育が実施されているが、法的に制度化されていないため、全国の新規及び一定の経験者研修該当の養護教諭が、執務に必要な資質が等しく保証されない現状がある。

資料

全国養護教諭連絡協議会の調査(平成18年3月)より抜粋

(1)健康相談活動の内容について(複数回答可)( )内はパーセントを表す

  幼稚園
N=307
小学校
N=2,850
中学校
N=1,145
中等学校
N=13
高等学校
N=736
特殊教育
N=174
全体
N=5,225
自傷行為 3
(1.0)
117
(4.1)
566
(49.4)
6
(46.2)
497
(67.5)
39
(22.4)
1,228
(23.5)
摂食障害 7
(2.3)
138
(4.8)
236
(20.6)
1
(7.7)
321
(43.6)
21
(12.1)
724
(13.9)
大量服薬 0 6
(0.2)
72
(6.3)
1
(7.7)
141
(19.2)
3
(1.7)
223
(4.3)
薬物乱用 0 9
(0.3)
36
(3.1)
0 15
(2.0)
1
(0.6)
61
(1.2)
性の逸脱行動 0 15
(0.5)
334
(29.2)
3
(23.1)
250
(34.0)
15
(8.6)
617
(11.8)

 健康相談活動の内容について

(2)校種別、養護教諭が「児童虐待」で対応した事例の有無(学校)( )内はパーセントを表す

  小学校
N=2,853
中学校
N=1,146
中等学校
N=13
高等学校
N=736
特殊教育
N=174
全体
N=4,922
581
(20.4)
231
(20.2)
1
(7.7)
101
(13.7)
29
(16.7)
943
(19.2)
2,272
(79.6)
915
(79.8)
12
(92.3)
635
(86.3)
145
(83.3)
3,979
(80.8)

 「児童虐待」で対応した事例があった学校の割合

(3)養護教諭が直接関わっている、特別な支援が必要な子どもの実態

 特別な支援が必要な園児児童生徒の実態

現在行われている「主幹」制度等の事例
  1. 東京都:主幹制度有り
     ⇒ 試験にて任用される
  2. 愛知県:主任養護教諭有り
     ⇒ 20年勤務・45歳以上の養護教諭
     新規採用養護教諭の指導等を行う

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