学校教育法等改正に関する意見

平成19年2月26日

中央教育審議会
教育制度分科会・初等中等分科会 御中

全国国公立幼稚園長会

 教育基本法に「幼児期の教育」が定められ、幼児教育が日本の教育体系に位置付けられました。従来、幼児期の教育は必ずしも社会的に認知されてきたとはいえない状況から考えますと誠に意義深いこと受け止めています。同時に、その任に当たっている私たちの責任の重さを痛感しております。
 このたび、本会に求められました意見に関しまして、貴会における2月25日、教育職員免許法、学校教育法並びに地教行法の改正に関する審議の趣旨を踏まえ、下記ように回答いたします。

1 教員免許更新制を導入する教育職員免許法の改正について

 社会の変化にともない、幼児教育施設としての幼稚園に求められる機能が多様化し、保護者や地域社会と連携をとりながら総合的に教育を進めることが求められている。また、少子社会の中で成長している幼児の育ちに対する課題も指摘されている。そこで、教員に対しても、幼児に対する今まで以上にきめ細かく指導していく力量、保護者や地域社会とかかわる力量、特別支援教育に関する知識や指導力等々、多様な力量が求められている。
 こうした状況を踏まえて、教員免許更新制については、次のように考える。

  • 多様な力量が求められる幼稚園教員の資質の向上のためには、教員免許の更新制度は大きな意義をもつと考える。
     幼稚園教員の資質の向上の基本は、現場における教育実践を基にした日常的な研修・研究が重要であることは言うまでもないが、10年間という、経験をつんで免許更新のための講習を受けることは、教員自らが自分の指導を振り返り、更なる指導力向上のための課題を明確にすることにつながると考えられる。免許更新制度がこうした資質向上に大きな役割を果たすことを期待している。
  • 指導力不足の教員への対応については、「指導力不足」という認定の基準を明確にする必要がある。
     幼稚園教育の特徴として、幼児の生活や遊びを通して総合的に指導が進められている。したがって、幼児の具体的な姿に対する評価、指導内容を見通し保育を構成する、具体的な指導内容・方法等々が極めて流動的かつ多様である。このことを十分考慮し、指導力不足の認定基準を明確にし、認定に当たることが重要と考える。
  • 認定講習に当たっての体制を整える必要がある。
     幼稚園の実情から、講習の時期、期間等への配慮と共に参加する教員の後補充についても考慮していただきたい。
  • 認定講習の免除については、慎重に対応する。
     勤務実績その他の事項を配慮して、認定講習を免除するシステムについては、幼稚園教育の現場としては、歓迎すべきことと受け止めている。しかし、安易に免除することにならないよう、数年間の業績評価に基づくことや教育委員会等、第三者の評価を考えるなどの体制をとることも必要と考える。

2 教育委員会制度の抜本改革を目指す、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改正について

 教育委員会制度の改正に当たっては、次のようなことを考慮していただきたい。

  • 設置自治体の教育委員会に幼稚園教育を専門とする指導主事を配置し、適切な幼稚園教育が実施されるような体制を強化する。
  • 幼稚園教育の基本である幼稚園教育要領の趣旨を生かした教育の進め方に関する資料や指針を示す等、国としての役割を果たす。

3 学習指導要領の改訂につながる学校教育法の改正について

 教育基本法に幼児期の教育が定められ、改めて幼稚園教育が学校教育のスタートとしての意味が明確になった。このことから、学校教育としての幼稚園教育の位置付け並びに目的、目標についての検討が必要になったと考えられる。その際、幼児期の発達の特性を踏まえた幼稚園教育が展開されるようにしていくことが重要と考える。

  • 幼稚園の規定順については、年齢の低い順から並べていくことのほうが分かりやすいと考える。
  • 幼稚園教育と小学校教育とでは、その方法に大きな違いがある。そこで、目的を考える際には、「幼児期の発達の特性」に応じた教育が維持・発展できるような方向で考えていただきたい。また、現行法の目的には「保育」という言葉が使われている。このことは、発達段階から見て、幼児は個人差が大きく、指導に当たる教員は一人一人の幼児の心情等その実態を把握し、ケア的な関わりも含めて幼児との関係を築くことが、幼児教育の前提になっていることを示しているものと考える。この点を今後とも十分に考慮していただきたい。
  • 目標については、現行法に示されている内容はいずれも重要であり、項目としては十分と考える。しかし、幼稚園教育の実践の積み重ねや時代の変化の中で幼児の課題も変化してきており、現行法の表記とそぐわなくなっているものもみられ、具体的な文言については見直しが必要と考える。
     こうした観点から、28日の合同部会で示された骨子案の方向性はおおむね妥当と考える。
  • 家庭や地域社会の教育力の低下が指摘されている。こうした中で、幼稚園には家庭・地域社会との連携を深め、「親育ちの場」としての幼稚園の役割が求められており、全国で多様な実践が進められている。そこで、家庭や地域社会の教育力の再生・向上のために幼稚園の果たす役割について定めることも必要である。

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