中央教育審議会 教育制度分科会・初等中等分科会における教育関連3法案に対する意見

平成19年2月28日

中央教育審議会
教育制度分科会・初等中等教育分科会
分会長 梶田 叡一 様

日本高等学校教職員組合(麹町)
書記長 大出 建隆

資料2‐1 学校教育法改正に関する件

1.学校種の目的及び目標の見直しについて

(5)高等学校の目的及び目標の見直し

 高等学校は義務教育、高等教育(大学、専門学校等)、社会(就職=企業、地域社会)と接続をする中心的な位置にある。高等学校の目標及び目的にはその観点が必要である。
 高校教育の目的は、高等教育に進む上での基礎教育、または、就職し自立した社会人となるための専門教育である。いずれにしても高等学校においては、社会に出る準備期間として一般教養を身につけ、特別活動などによって幅広い人間関係のなかでコミュニケーション能力などの人格を形成することにある。
 しかし、学習指導要領を改訂するにあたって現在は、高校進学率が約97パーセントに及び高校生の学力レベルにはかなり幅がみられるのが実態である。義務教育の補完に力点を置く学校がある一方、大学進学に特化した授業を行っている学校もある。また、私立学校は、標準時間数を大幅に超えて授業を実施するなど、特色ある学校作りを進め大学進学に特化した教育を行っている学校もある。それ故、学習指導要領で高校教育の内容を細かく規定することは難しい。
 高等学校における学習指導要領の改訂は、学習指導内容や必履修科目、標準単位数の設定など、学校の実態に合わせて柔軟に対応できるようしなければならない。また、一般教養を身につけさせ、人格を形成することをも軽んじられるべきではない。

4.副校長その他の新しい職の設置について

 日高教はこれまで、免許更新制が導入された場合には、その更新で資質及び職務遂行能力が向上したのであるから、昇格につなげるべきであると提案してきている。(別紙参照)

 学校に「副校長」やその他の職を新設することは、複雑・困難化する学校教育現場には必要となってきている。特に、管理職や中堅教職員の責任あるマネジメント体制の確立には必要である。ただし、「副校長」「教頭」の定数は、教諭とは別枠に位置づけ、授業を持たさず、マネジメントに専念できるようにするべきである。また、「主幹」や「指導教諭」は、その職責を全うさせるために、定数上の措置を講じて授業時間数の軽減を図る必要がある。加えて「主幹」は、管理職には位置づけないことを望む。

資料3‐1 教育職員免許法等の改正に関する件

1.教育職員免許制度の改善について

(1)教員免許更新制の導入について

 現在、学校現場は児童生徒の多様化、保護者の意識変化が進むなか、学習時間の確保や様々な教育改革によって教員の職務は複雑多岐にわたり多忙化している実態がある。そのために十分な研修ができず、教員が魅力あるわかりやすい授業を工夫するゆとりがなくなっている。教員が、教育公務員特例法に基づき研修機会を得て、日々研修に努めることは当然のことである。
 しかし、免許の更新制を導入することは、現職教員は取得段階で終身免許として取得したことや他の職種に導入されていない事を鑑みれば不利益変更であり、特に現職に対しての導入は慎重であるべきである。これまで免許更新制に関しては、様々な議論を経て10年経験者研修が導入された。また指導力不足教員に関しては、各県において人事管理に関する制度が確立され運用されている事も考慮しなければならない。
 このようななかで、免許更新制を導入することは、現場に過重な負担と財政的負担を強いるものであり慎重であるべきである。しかし日高教としては、免許更新制導入に対する国民の期待を鑑みれば、導入するうえで下記の点を十分に考慮したうえで、真に教員の資質向上につながるものでなければならないと考える。また、今後制度の詳細を検討する上で十分に私たち日高教と協議されたい。

  1. これまでの10年経験者研修制度など、全ての研修制度を検証し精選すること。また、教員の職務を明確にするとともに精選すること。
  2. 単に30時間の講習というのでは実効性に疑問が残る。
     教員は、教育公務員特例法に基づいて日頃から研修に努めなければならないとされている。その趣旨に照らし合わせれば、自身の資質向上につながる主体的・自主的な研修が評価され免許更新の単位に認定されるべきである。また、学校内に指導教諭などが新設された場合、その立場から指導を受ける校内研修もその単位として認められるようにすること。
  3. 教員の勤務パターン(担任、様々な事務局、家庭事情など)に配慮し、10年間の範囲内において、柔軟に講習(研修)受講できるようにすること。
  4. 勤務実績等により講習の受講を免除とあるが、「定期的に知識や技能を刷新する」ことと勤務実績には関係がないと思われる。勤務実績等により免除されるのであれば、その判定は誰が、いつの段階で実施するのか。また、勤務評価と連動されるのか。仮に勤務評価と連動されるなら、これまでの人事管理に関する制度(不適格教員の認定制度)を活用することで対応できるのではないか。(不適格とされた教員のみに更新制を導入することで良い)
  5. 全員に免許更新制を導入すれば、費用(講習費用、交通費、宿泊費など)、認定基準、各自治体での格差など、多く諸課題が予想される。しっかりとした予算措置を行い個人負担が発生しないようにすること、また、講習を勤務(出張、割振)とすべきである。
  6. 免許更新ができなければ職を失うことも考えられる。また、費用負担や勤務時間外の講習などを総合的に考えれば、免許更新によって処遇改善がなされるようにしなければならない。現に、今年になって大学の教員養成課程への志願者が減少していることを考えれば、優秀な人材を確保することに逆行するのではないか。教員の質の向上を考えるならば、人材確保法の精神を堅持し、予算措置を積極的に行うことが重要である。

(2)分限免職処分を受けた者の免許状の失効・取り上げについて

 まずは、分限処分が出ないよう、教職員の研修制度の充実が先である。その上で、「指導力不足教員や不適格教員」が認定された時には、研修ののち復職又は配置転換が行えるようにすべきである。

2.指導が不適切な教員の人事管理の厳格化(教育公務員特例法の改正)

 管理職などによる恣意的な制度にならないよう、しっかりとした認定基準を確立し、学識経験者などによる第3者機関によって行われなければならない。また、認定基準や運用をする段階では、職員団体と交渉・協議をもっていただきたい。

資料4‐1 地教行法改正に関する件

(4)教育における国の責任の果たし方

 教育の地方分権の流れは容認できる。ただし、各教育委員会が法令違反や著しく適正を欠いて教育本来の目的を阻害している場合においては、文科省の指導が徹底できるようにすべきである。例えば、昨年問題となった未履修問題は、一部の私学が特色ある学校作りとして、学習指導要領を逸脱した運営が行われていたことに、公立高校が危機感を募らせたことも問題を大きくした一因であると考えられる。私学に対しても、文科省の指導が徹底できるよう検討されたい。
また、国は義務教育費国庫負担制度などを通じて、義務教育において教育格差が生まれないよう取り組まなければならない。全国的な教育水準の確保のために、文科省、各県教育委員会を通じて各教育委員会への指導は徹底できるようにすべきである。

別紙1 教員給与の在り方(免許更新制に合わせた標準職務表)

日高教教育職給料表標準職務表(案)について

 今後、免許更新制が導入されれば、更新によって教員の質は保障され、経験や研修の積み重ねによって職務遂行能力は向上しその職責は高くなる。2~5級は同じ教諭という立場であるが、免許を更新した結果、職務上、上位に位置づけられるのが妥当であるとの考えに基づき作成した。2~5級には特級が設けられているが、これは同じ級でも、校務分掌等で係の主任、学科長、学年主任など、上位級の特級の教諭や教頭・校長といった管理職の指導のもと、各担当分掌においてリーダー的な役割をする職務として位置づけをした。
 このように役職段階を免許更新時に設けることによって、更新に対する動機付けを確実にするねらいがある。その更新にあたっては、10年間の期間に誰もが刷新しなければならない必修のもの(例えば教育課程の変更、教育関連法規の変更など)、自分自身のかけているところ、積極的に伸ばしたいところなど自主的な研修を積極的に行うことで、更新の条件とするのが妥当であると考える。(私たちの立場からでは10年で必ず免許が切れるというのではなく、更新されなければ上位に格付けされるのが遅くなるという方がよい)このような制度にして、教員の積極的な自己研修を促したい。

別紙2 教育職給料表級別標準職務表(案)

職務の級 標準的な職務
1級
  • (1)高等学校の講師、助教諭、養護助教諭または実習助手の職務
  • (2)盲学校、聾学校又は養護学校の講師、助教諭、養護助教諭、実習助手又は寄宿舎指導員の職務
2級
  • (1)高等学校の教諭、養護教諭又は高度の知識経験を必要とする実習助手の職務
  • (2)盲学校、聾学校又は養護学校の教諭、養護教諭又は高度の知識経験を必要とする実習助手、若しくは寄宿舎指導員の職務
特2級
主査教諭
主査養護教諭
主査実習助手
(仮称)
  • (1)高等学校の教諭、養護教諭又は高度の知識経験を必要とする実習助手の職務で、学校運営において主幹・課長教諭(仮称)の指導のもと担当する分掌の部門においてリーダー的な役割を果たす職務
  • (2)盲学校、聾学校又は養護学校の教諭又は高度の知識経験を必要とする実習助手若しくは寄宿舎指導員の職務で、学校運営において主幹・課長教諭(仮称)の指導のもと担当する分掌の部門においてリーダー的な役割を果たす職務
3級
  • (1)高等学校の教諭、養護教諭で10年の職務経験若しくはそれに準ずる経験を有しかつ免許の更新を受けた受けたもの
  • (2)盲学校、聾学校又は養護学校の教諭、養護教諭で10年の職務経験若しくはそれに準ずる経験を有しかつ免許の更新を受けたもの
特3級
主任教諭
主任養護教諭
主任実習助手
(仮称)
  • (1)高等学校の教諭、養護教諭で10年の職務経験若しくはそれに準ずる経験を有しかつ免許の更新を受けたもので、学校運営において主幹・課長教諭(仮称)の指導のもと担当する分掌の部門においてリーダー的な役割を果たす職務
  • (2)盲学校、聾学校又は養護学校の教諭、養護教諭で10年の職務経験若しくはそれに準ずる経験を有しかつ免許の更新を受けたもので、学校運営において主幹・課長教諭(仮称)の指導のもと担当する分掌の部門においてリーダー的な役割を果たす職務
4級
  • (1)高等学校の教諭、養護教諭で20年の職務経験若しくはそれに準ずる経験を有しかつ免許の更新を受けたもの
  • (2)盲学校、聾学校又は養護学校の教諭、養護教諭で20年の職務経験若しくはそれに準ずる経験を有しかつ免許の更新を受けた受けたもの
特4級
課長教諭
課長養護教諭
(仮称)
  • (1)高等学校の教諭、養護教諭で20年の職務経験若しくはそれに準ずる経験を有しかつ免許の更新を受けたもので学校運営において、教頭・主幹教諭(仮称)の指導のもと担当する分掌の決定作業等に従事し、分掌間の調整及び教諭等を指導・監督するなど重要な職責を担う職務
  • (2)盲学校、聾学校又は養護学校の教諭、養護教諭で20年の職務経験若しくはそれに準ずる経験を有しかつ免許の更新を受けたもので学校運営において、教頭・主幹教諭(仮称)の指導のもと担当する分掌の決定作業等に従事し、分掌間の調整及び教諭等を指導・監督するなど重要な職責を担う職務
5級
  • (1)高等学校の教諭、養護教諭で30年の職務経験若しくはそれに準ずる経験を有しかつ免許の更新を受けたもの
  • (2)盲学校、聾学校又は養護学校の教諭、養護教諭で30年の職務経験若しくはそれに準ずる経験を有しかつ免許の更新を受けたもの
特5級
主幹教諭
主幹養護教諭
(仮称)
  • (1)高等学校の教諭、養護教諭で30年の職務経験若しくはそれに準ずる経験を有しかつ免許の更新を受けたもので、学校運営において、教頭を補佐するとともに、担当する分掌において課長教諭(仮称)以下の教員を指導し人材育成に資するなど重要な職責を担う職務
  • (2)盲学校、聾学校又は養護学校の教諭、養護教諭で30年の職務経験若しくはそれに準ずる経験を有しかつ免許の更新を受けたもので、学校運営において、教頭を補佐するとともに、担当する分掌において課長教諭(仮称)以下の教員を指導し人材育成に資するなど重要な職責を担う職務
6級 教頭  高等学校又は盲学校、聾学校、養護学校の教頭の職務
7級 校長  小規模校の校長の職務
8級
総括校長
(仮称)
 大規模校の校長の職務又は職責の重要・困難度の高い校長の職

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