「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の改正について

中核市教育長連絡会

1 地方教育行政の今後の方向性について

意見

  • 平成17年10月中央教育審議会答申の「国と地方、都道府県と市区町村の関係・役割」において,特に義務教育について「今後の分権改革の重点は,都道府県から市区町村への分権、教育委員会から学校への権限移譲である」とし,様々な分権改革が推進されるとともに,地方の主体性を発揮した教育行政を展開できる環境整備がされた。
  • 現在,義務教育における国と市町村教育委員会との関係は,国が義務教育の最終責任を負いながらも,直接的な責任は市町村教育委員会が負う関係となっている。
  • しかしながら,義務教育の直接的な責任を負う市町村教育委員会では,不登校やいじめの問題など学校教育に係る喫緊の課題を抱えている。
  • これらに対応するためには,国の人的・財政的な支援を受けながらも,中核市など地方が自らの判断と責任において,充実した教育行政を展開する必要があるが,人事権をはじめ,権限と責任には,不整合が生じてきている。
  • 例えば,いじめや不登校を例にとれば,その適切な対応のためには,支援体制の充実を実現するために,教員の加配を行うことが考えられるが,その判断は県の判断に委ねられている。
  • つまり,市町村の教育行政上の課題に対し,現状に直面している市町村教育委員会と間接的なかかわりをもつ都道府県教育委員会が,権限を分担していることから責任の所在が不明確になる傾向にあり,課題解決に向けた市町村教育委員会の主体的取組が十分展開できない状況にある。
  • 今後,地方分権が一層推進され,学校等の教育現場を抱える市町村教育委員会の「権限」と「責任」の一体化が図れれば,課題に対する総合的・体系的なアプローチが可能となるとともに,市町村教育委員会の教育行政への自覚が一層深まり,地方の創意工夫による特色ある教育の充実が展開できるものと考えている。

2 教育委員会の体制強化

 教育委員会は,第三者の知見を活用しつつ,教育委員会の事務の点検・評価を行い,議会に報告すること。

意見

  • 教育委員会は,地方公共団体の執行機関であり,教育委員は,市長が市民の代表である議会の議決を経て選任し,教育長は,教育委員の中から教育委員会が任命している。
  • 現在,市町村教育委員会では,学校を直接的に管理しながら,教育に係る喫緊の課題解決に向け,地域の実態に応じた特色ある教育行政を市町村民に対して実施している。
  • このような観点から,市町村教育委員会の評価は,本来,直接的な関係にある地域や保護者,議会において行われるべきであり,特に,義務教育の評価については,地域や保護者,議会,国が行うべきであると考える。
  • 都道府県教育委員会が市町村教育行政を評価する仕組みは,市町村と異なる首長により選任された委員で構成する教育委員会,つまり,市町村と全く異なる団体からの評価に他ならず,制度の妥当性が理解できない。
  • また,人事権など権限を有する都道府県教育委員会が市町村教育委員会を評価することについては,利害関係による評価となることから第三者評価とは言い難い。
  • 今後,地方分権推進の観点から,都道府県教育委員会は,市町村の教育行政を「指導」から,「支援」する役割への転換を図り,その関係を構築することが極めて重要であると考える。

 教育委員の責務を明らかにするとともに,文部科学大臣・都道府県教育委員会は,教育委員の資質向上に努めること。

意見

  • 教育委員会は,地方の教育行政を展開するための最も重要な合議制の執行機関であり,その構成員である教育委員の責務を明らかにし,その資質向上を図ることが極めて重要であると認識している。
  • 教育委員は,国の教育政策を充分に理解するとともに,地域の現状を十分に把握しながら,様々な課題解決に向けた取組を具体的に推進することが求められる。
  • このため,委員の資質向上については,第一義的に各自治体が自らの責任において研修などを行い,国においては,各自治体の研修を側面的に支援することが望ましいと考える。

3 教育における地方分権の推進

 県費負担教職員の人事に関し,一定の人事に関する権限を市町村教育委員会に移譲すること(分限,懲戒,採用,昇任,転任等)

意見

  • 人事権の移譲は,まず,中核市を対象に行うものとし,それ以外の自治体への人事権の移譲については,中核市への移譲の状況を踏まえながら,今後検討を進めることが適当である。
  • 分限・懲戒処分等に係る人事の権限を移譲するという案が示されているが,この案では,中核市には当事者能力はなく,形式的責任のみ担わされることから,中核市としては,人事権の早期,全面的な移譲が必要であると考える。
  • ただし,人事権移譲に伴う体制整備等に要する期間は,それぞれの自治体で事情が異なることから,一定の移行期間を設け,条件が整ったところから移譲を実施するということでよいと考えている。

4 教育における国の責任の果たし方

 文部科学大臣・都道府県教育委員会は,地方自治の原則を尊重しつつ,都道府県教育委員会・市町村教育委員会の事務が法令違反や著しく不適正な場合に限り,全国的な教育水準の確保や教育事務の適切な実施のため,是正の勧告や指示ができるようにすること。

意見

  • 現行の自治法245条の4から245条の8までに,国の「是正の要求,勧告,指示」などの国等の市町村への関与規定がなされている。
  • 特に,自治法245条の7の「是正の指示」では,都道府県及び市町村の「法定受託事務」に限定されているが,市町村に対して,大臣は直接「是正の指示」をすることができる。
  • 一方,地方教育行政法48条では,自治法245条の4の規定をさらに拡大し,文部科学大臣が市町村の様々な分野で指導,助言,援助を行えるようになっている。
  • 地方教育行政法に,新たに「是正の指示」を盛り込むことは,教育行政の法定受託事務化することであり,自治事務を形骸化させるおそれがある。
  • また,自治事務のうち,緊急の場合など特に必要があるものとして,法律又はこれに基づく政令で定める場合には,国は関係地方公共団体に対し,法律又はこれに基づく政令で定めるところにより,個別に一定の措置を講ずべき旨の指示を行うことができることになっている。
  • これは,基本的には「国民の生命,健康,安全に直接関係する事務の処理に関する場合」であるが,教育はそもそもこういうものに当たらない。
  • これらについては,自治法245条の3第6項によるものであり,同条第1項では,国の関与は,「目的を達成するため必要最小限のものとするとともに,普通公共団体の自主性及び自立性に配慮しなければならない」と基本原則が示されている。

 文部科学大臣は都道府県教育委員会の教育長の任命について,都道府県教育委員会は市町村教育委員会の教育長の任命について,一定の関与を行うこと。

意見

  • 教育委員会は,地方公共団体の執行機関であり,教育委員は,市長が議会の議決を経て選任する。
  • これまで,地方分権の推進の観点から,平成11年に地方分権一括法に基づき,教育長の任命承認制度や県の基準設定が廃止された。
  • 市町村教育委員会は,地域の状況に応じて,主体的かつ積極的に教育行政を展開するため,教育委員の中から教育委員会が任命することになっており,都道府県が「市町村教育委員会教育長の任命」に関与することは,自治体の独立性を阻害するものであり,地方分権に逆行するものである。

「教育職員免許法等」の改正について

1 教育職員免許制度の改善

意見

  • その時々で求められる教員として必要な資質能力が確実に保持されるよう,必要なリニューアルを行うことは大切であり,教員免許更新制の導入は必要と考える。
  • 教員が,30時間程度の講習を受講する際,児童生徒への指導に影響が出ないよう,学校を離れて研修をする場合は,各所属の学校における補充教員の確保が必要である。

2 指導が不適切な教員の人事管理の厳格化

意見

  • 指導力不足(指導不適切)教員の認定は,学識経験者,精神科医,弁護士等で構成する審査機関を設置し,適切な運用に努めることが必要である。
  • 研修実施期間中の補充教員の確保が必要である。

「学校教育法」の改正について

1 副校長その他の新しい職の設置について

意見

  • 学校の組織運営体制を見直し,指導力に優れた教員の処遇改善を図るということから,「副校長」,「主幹」,「指導教諭」という新たな職を設置することは必要と考える。
  • 「副校長」,「主幹」,「指導教諭」という新たな職を設置し,実効のあるものとするためには,現行の定数内での配置ということではなく,新たな加配措置が必要である。
  • 学校組織の活性化を図るため,分限処分に該当しないケースでも,「副校長」「主幹」としての資質や能力に欠けると判断された教員を一般教員へ降格できる仕組みを整備する必要がある。

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初等中等教育局初等中等教育課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育課教育制度改革室)