意見の概要

全国高等学校文化連盟会長 伊藤 勝

2‐1 高等学校教育の目的及び目標について

 高等学校においては、学校の定める教育理念・教育目標があり、同時に、時代に応じた、生徒・保護者・地域社会の要請に応えるため、多様な教育活動を展開している。
 そのため、普通教育・専門教育ともに、できるだけ特色ある教育課程の編成、弾力的な運用に努めている。こうした中で、全ての教科・科目について履修内容・到達目標が一律に規定されるならば、生徒・保護者の多岐にわたる要望に応え、多様な指導を進めようとする各高等学校教育が活性を失う危惧がある。
 これからの我が国社会を担う高校生として求められる基本的な高等学校教育の定めは当然必要であるが、その目的・目標は大綱的にまとめて示すこととし、それを踏まえ、遵守する中で、学校毎に求められる多様なニーズに対応できるよう、学校裁量の拡大を図ることが求められる、と考える。

2‐1 学校評価・学校からの情報発信について

 学校が地域社会・保護者・生徒から評価されることで自らの教育活動を顧み、次の営為に資することは教育の社会的な役割から大切な視点であり、自らの教育をしっかりと伝え理解と支援をいただくためには、学校からの情報発信が不可欠である。
 現在、学校評議員、生徒による評価、保護者・地域の方による評価が行われており、学校も、自ら教育活動の評価をし、同時に、生徒・保護者・地域に説明責任を果たしている例が多いと認識している。
 一方、各学校は、教科・科目にかかる基礎的基本的な学力の向上、部活動などを通じた心身の健やかな伸長、生徒会活動、学校行事などを通して全人的な成長を促すよう教育活動を推進しているが、地域社会・保護者・生徒の学校教育に寄せる期待は多様であり、時には矛盾する多岐に渡る要望が寄せられることもある。
 これら全てに応えることは事実上不可能なこともあり、学校評価が当該学校の教育活動を掣肘するものになることは望ましくないと考える。
 また、多くの高等学校では、PTA会報・学年通信・分掌からの連絡・担任による保護者への通信など、不断に情報発信を工夫し実現している。
 このことから現状で十分と考える。

2‐1 新しい職の設置について

 本県は、校長・副校長・教頭・主任の職をおいている。
 小職は全国と岩手県の高等学校文化連盟会長の職を兼ねており、県内のいくつかの団体にも評議員、代議員などとして参加が求められている。これは小職に限るものではなく、校長はいずれも様々な役職、また、地域社会に果たすべき役割を求められる。
 こうした状況にあっては、副校長の役割は大きく、心強い。
 一方、学校は、各教科の主任・各学年の主任・教務や生徒指導など分掌の主任が中心となって構造的な組織体を組み、様々な問題等に対応している。
 学校は、一人一人の生徒の個性的・多様な自己実現をかなえていく場であり、それを支援する教員として、教科担任、学級担任、部顧問が存在する。
 組織目的を効率的に遂行するための上下に指揮系統が働く効率的な職制は、目的が明確であり具体的な場合は機能するが、近年は、行政組織や企業にあっても、チームやグループなどフラットな組織体で業務を遂行しようとしていると聞く。
 学校は、その規模・学校種・置かれている状況がそれぞれ違い、例えば小規模校に全ての職制を導入しようとすれば、全員が役付ということも起こりうる。
 こうした事から考えると、新しい職の設置は各学校の状況に応じ、必要に応じた組織体制が求められる。設置の意義はあるが任意で選択できるようにすべきと考える。

3‐1 教員免許更新制について

 次世代の教育に対して責任をもつためにも、自らの資質を不断に向上させることが教員には求められる。教員免許の更新を通して自らの現状を問い、さらなる向上を図ることは意義があると考える。
 しかしながら、教員の質の維持・向上を目的とするのか、指導力不足・不適格教員のいわば排除を主たる目的とするのか、現状では不分明であり、後者であれば既に各都道府県で開始している。どちらの場合であっても、研修等で対象となる教員の、期間中の、人的な補充を含めた支援体制が必要になる。また、研修内容の充実、実効性をもつ研修のための講師や施設の確保などが求められる。特に、現在実施している10年研との調整が必要である。
 生徒と向き合う教員としては不十分でも、研究分野に実績を上げる、実務能力に卓越しているなどの職員も多く、活用の場が求められる。
 さらに、社会人教師を任命した場合の更新の検討が必要であるし、所謂、指導力不足教員、不適格教員については、認定の方法とその妥当性、研修と改善の方途が前提となるべきと考える。

4‐1 教育委員会制度について

 管見の範囲では、1.第三者による教育委員会の点検2.国の責任による監督3.地方分権のもと首長の責任の論があるように思われるが、この立論は、子ども・親・学校を欠落した「権限」論のように感じられる。
 学校は教育委員会の指導監督のもとで教育活動を進めていくのであり、児童生徒はその教育によって心身の成長を遂げていく。学校現場にあっては、そのための十分な人的・財政的な裏付け、また継続的な理念による指導、支援をいただきたい。
 国として、共通する普遍的な理念の指導・責任は当然必要であるが、一方、現状では、各地域によって具体的な課題が違い裁量が必要なものもあると考える。
 子供や親の立場からは、どちらが権限を持てば問題が解決するのか、ではなく、共同して進め、どちらにも責任を持っていただくことが、安心して学校に学ぶことのできることになると考える。それは学校においても同じである。

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育課教育制度改革室)