「学校教育法改正法案等教育3法案」への意見

18全高P第108号
平成19年2月28日

中央教育審議会教育制度分科会
初等中等教育分科会 御中

社団法人全国高等学校PTA連合会
会長 藤井 久丈

標記の件につき、当連合会として、以下の意見を述べます。

1.高等学校教育の目的及び目標の見直しについて(資料2-1)

 高校段階は子どもから大人への過渡期にあり、高校生は高校教育を通して卒業までに一人の自立した人間として社会に巣立つことが期待されている。しかし、学校教育の目標に掲げられている「国家社会の有為な形成者としての資質を養うことや社会について広く深い理解と健全な批判力を養い個性の確立に努めること」の教育が、はたして現実にはどのように学校でなされているのだろうか。高等学校も多くの保護者自身も、高等学校は単に就職あるいは大学進学への準備教育段階としか考えていないのではないか。
 現行学習指導要領によっていわゆる「ゆとり教育」が推進されてきた。しかし、親は「生きる力」もさることながら、目の前の「確かな学力」を求め、小中学校での学習指導内容の3割削減には疑問を呈した。一方、大学側の大学入試での要求水準は変わらず、高等学校はその狭間で苦しんできた。必履修科目の未履修問題もここから根を発していることは明白である。従前から大学入学試験の在り方を根本的に改革することが叫ばれてきているが、未だ解決されていない。初等・中等教育、特に後期中等教育から高等教育の初めの部分にかけての一貫したマスタープランの早急な作成を望みたい。どの大学に進学するかということに夢中になっている学校や親でなく、21世紀の地球社会に通用する人間の育成を目指せるような学校や親になれるような状況作りをすることこそが、まさに国の責任である。

2.授業日の公立学校・私立学校間の格差の是正について(資料2-1)

 「ゆとり教育」の導入によって「生きる力」を育成するということには賛意を表するが、公私立間の学校週5日制、6日制の違いによって授業日数に絶対的な差が出ていることには疑問を呈する。近年の小中学校段階まで下がってきた受験熱は、この学校週5日制かどうかと大いに関係しているのではないか。公立学校へのバッシングは社会的風潮であるが、同じ土俵に立たずしてなにが公平,公正と言えるだろうか。親として、わが子のためには身を削ってでもわが子の能力を伸ばしたいと考え、授業の絶対数の多い学校へ進学させようと思うのは自然であろう。学校週5日制の弾力的な運用を含め、授業日に関して公立私立間に格差のなくなるような法改正を望む。

3.教育職員免許制度の改善について(資料3-1)

 時代の変化は激しく、社会の要請も時代とともに変わっていく。大学時代に修めた学問で一生やっていかれるとは、誰も思っていない。教員が常に研修と修養を重ねていくことは当然である。
 教員免許の更新制に異論はないが、毎年、全国では何万人にもなると思われる教員に対して、単に大学等での講習を受講すれば、免許を更新するというような形式的な更新制だけは避けていただきたい。受講内容も単に総花的にするのでなく、受講者の弱点に応じた柔軟なものでありたい。特に、高等学校では教科の専門力に大きな差が生じ、錆び付いた教師が見受けられるのも事実である。
 本来、教員は、自主研修を日々行っていると想定されているが、例えば、日頃の勤務成績が極めて良好な教員、民間等の研究会や研究大会での研究発表や授業公開等を行った教員等を管理職からの推薦によって資格審査をし、講習受講の免除も可能にする等、きめ細かな実質的な運用が必要である。
 なお、現在各都道府県がすでに実施している5年研修、10年研修、20年研修等との関わりを明確にしていただきたい。

4.指導力不足の教員への厳格な対応と地道に努力している教員への優遇措置について(資料3-1)

 近年、指導力不足教員の問題が大きく取り上げらるようになった。日々子どもに接し、教育を行う立場にあるだけに、その影響力は甚大である。教科指導力不足、生徒指導力不足、対人関係能力不足等の客観的判定は容易ではないが、認定基準を明らかにし、適正な処置が迅速に取れるようにすることが肝要である。研修で改善可能な教員には研修を、教員の資質は欠けていても行政職であれば十分にやれる人には配置転換を、等の処置がスムーズに出来るようにしていただきたい。
 一方、多くの教員は教師としての使命感を持ち、地道に日々の教育活動に取り組んでいる。しかし、現在、教師は必要以上に様々な形で世間やマスコミから、バッシングを受けていないだろうか。確かに、非難されてしかるべき教師がいることは事実であるが、日本の教師は、諸外国に較べてそんなに劣る存在であろうか。自らを棚上げし、何もかも限りなく学校教育の責任、教師の責任としているきらいはないか。家庭教育や地域社会での教育をはじめ、大人が真に子どもと向き合うことを忘れてはいないかと、我々PTAは自戒の念を込めて考えている。
 日本の初等中等教育の良さは、勉強ばかりでなく、躾を含めて、全人教育を行っている点である。教員は、学習指導、生徒指導、進路指導、部活動指導等、さまざまな分野で子どもの教育に携わることを期待され、教員自体もそれを当然とみなしている。
 今、教師は、以前に較べて、様々な要求や多忙感、疲れで教育への情熱や喜びが薄れてきているという。単なる危惧であればよいが、教員志望者数の減少、管理職希望者の減少等の話を耳にすると、保護者としては大変心配である。次代の日本を担う子供たちの教育に情熱と喜びを持つ教師に溢れる学校にするには、一部の不適切な教員への厳格な指導とともに、学校現場で黙々と努力している大多数の教師を信頼し、はっきりと目に見える形での奨励と財政的優遇措置をぜひともお願いしたい。

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