平成19年2月28日
全国都道府県教育委員長協議会
全国都道府県教育長協議会
平成19年2月28日
頁 | 箇所 | 訂正前 | 訂正後 |
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4 | 1 教育委員会の責任体制の明確化 2行目 |
理解しくい | 理解しにくい |
6 | 4 教育における国の責任の果たし方 下から5行目 |
措置要求等 | 是正の要求 |
6 | 4 教育における国の責任の果たし方 下から4行目 |
是正勧告等 | 是正の勧告・指示 |
これまで各都道府県教育委員会は、域内の市区町村教育委員会と連携して、子どもたちが夢と希望を持ち、充実した人生を送るために必要な力を育み、一人ひとりの資質や能力に応じて多様な可能性を伸ばす教育に全力で取り組んできた。一方で、今の子どもたちを取り巻く厳しい社会状況の下、教育は様々な課題を抱えており、見直すべきものについては見直しが必要であると考える。その際重要なことは、教育が国家百年の大計であることを踏まえ、「日本の子どもたちをどのように育てていくのか」、「子どもたちにどのような力を育むのか」といった視点に立って現場の状況を把握するとともに、正確な現状分析と実証データに基づいた十分な議論の下に改革を進めていくことである。
また、教育委員会制度等地方に関わる事柄については、国と都道府県教育委員会、更には市区町村教育委員会や学校の役割を明確にした上で、各地方公共団体が当事者意識と責任を持って教育に取り組むという地方分権の視点に立った議論がなされるべきである。
この度、全国都道府県教育委員長協議会、全国都道府県教育長協議会は、教育現場の当事者として、学校教育法を始め教育関連3法の改革内容等について審議されている中央教育審議会教育制度分科会及び初等中等教育分科会に対し、現場の視点に立った意見を申し上げるものである。
なお、制度改正にあたっては、それを保障する人的、財政的基盤整備も踏まえて、議論する必要がある。
学校教育法の目的・目標は、教育基本法で示された教育理念と学習指導要領をつなぐ教育の大綱的な指針となり、今回併せて規定が検討されている学校の評価等の基準となるものである。そのため、学校教育法の目的・目標規定については、明確なものとなるよう検討されたい。
また、学校種の目的及び目標の見直しについても、「生きる力」の育成など、従前の学習指導要領改訂を経て積み上げてきた、目的や目標の設定に関する経緯を踏まえていくことが重要である。
さらに、学校種ごとの教育目的・目標を検討するだけでなく、一貫した教育理念に基づく幼小中高大を見通した教育目的・目標を検討されたい。
義務教育の内容・水準については、国として最小限度必要な教育課程の基準を設定してその実現を支援・保障し、その上で、地方の創意工夫による特色ある教育を行うことができるようにするべきである。
その意味において、義務教育の目標を明確にするという視点は重要であると考える。ただし、その際には、学習指導要領にある目標や内容と学校教育法の目標との関連を明確にしておくことが大切である。また、子どもの実態を見据え、学習到達度や理解度の達成状況や公共心の自覚の高まり、体力向上などについてきちんと評価することが重要である。
幼稚園についての広範な連携や就学前の教育・保育を一体として捉えることは重要であるが、幼稚園の本来の目標を見失うことのないよう留意すべきである。
「生きる力」を育成することを基本的なねらいとし、児童・生徒の発達段階に応じて、小・中学校の目的及び目標を、幼小中高大を見通した、系統的かつ分かりやすいものに見直す必要がある。
また、児童・生徒や地域社会の実態等を十分に踏まえ、創意工夫を生かした特色ある教育活動が展開できるよう配慮することが重要である。
中学生の97パーセントが高等学校へ進学する状況の中では、多様化している生徒の実態を踏まえた高等学校教育の目的及び目標の設定が必要である。
高等学校教育の目的及び目標を検討する際には、社会の発展に寄与する態度の育成とともに、科学技術の高度化・専門化や社会の国際化が急速に進展する変化の激しい中にあっては、創造性豊かな人材の育成という観点が必要である。
また、キャリア教育の論議を踏まえ、個性に応じて将来の進路を決定する能力の育成を図る視点を明文化されたい。
さらに、教養教育(リベラルアーツ)の観点からの検討が必要である。
義務教育の到達目標を明確にする中で、義務教育学校の設置やカリキュラム区分の弾力化、学校種間の連携・接続の改善などの各施策が、その達成に資するものかどうかについては、研究開発学校や教育特区等において試みられている先進例の検証が不可欠である。拙速な制度化は学校に混乱を招くこととなる。
特に、カリキュラム区分の弾力化については、学習指導要領の見直しや教員免許、教職員配置、教科書など広範な制度の見直しにつながることから、十分な成果の検討を踏まえるべきであると考える。
学校の自主性・自律性の確立に向けた裁量の拡大がなされ、学校が自らの判断と責任で教育活動を展開し、保護者や地域住民の期待に応えていくためには、各学校が自らの教育活動について評価し、その結果に基づく継続的な改善を図るとともに、必要な教育情報を保護者や地域住民に提供することにより説明責任を果たしていくシステムの構築は不可欠と考える。
学校評価については既に小・中・高等学校の設置基準において努力義務となっており、多くの学校で実施されている実態があることから、学校教育法等による法制化の検討にあたっては、現行制度の十分な検証とともに、学校や地域の実情に応じて柔軟な形での対応が可能となるよう、留意されたい。
副校長、主幹及び指導教諭など新たな職の設置について、副校長や主幹は、いわゆる「なべぶた」式の学校組織の中で、機動的な学校運営のため有効なものであり、また指導教諭についても、教育指導力の継承という観点から有効なものであると考える。
そのため、職及び設置の目的を学校教育法に位置付けた上で、任命権を有する地方公共団体が、各学校における経営等の現状に即し、配置の有無及びその具体的な職務等について規定すべきであると考える。
また、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(いわゆる義務標準法)及び公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律(いわゆる高校標準法)においても、これら新たな職について位置付ける必要があると考える。
教員免許更新制については、その目的が刷新(リニューアル)であることを明記すべきである。また、既存の10年経験者研修等に対し、更新講習で培われる独自の教員資質の内実を明確にすべきである。
さらに、大学における教員免許状の授与の在り方も含めて見直す必要がある。
なお、教育再生会議第一次報告では、「社会の多様な分野から優れた人材を積極的かつ大量に採用する」旨提言されている。免許更新制に見られる免許によって教員の質を保証しようとする考え方と普通免許のない社会人を活用しようとする考え方との関係を明確に整理すべきである。
現在、「指導が不適切な教員」については、国において明確な定義がなく、ガイドラインも示されていない。認定の基準、研修の期間、研修方法、研修後の措置等について各都道府県で個別に行われているのが現状である。
「指導が不適切な教員」についての定義(対象職種を含む。)、認定の基準、研修の期間、研修方法、研修後の措置等について、国が法律等で明確に規定する必要がある。
研修によって改善が見られない「指導が不適切な教員」を分限処分とする措置について、国は地方公共団体が運用しやすくなるように、地方公務員法によらない特例的な法整備をするなど、明確な基準を示す必要がある。
地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改正にあたって、教育が「国家百年の大計」であることを踏まえ、教育再生会議第一次報告も指摘している「教育委員会の存在意義を原点に立ち返り根本的に見直す」との視点に立った議論をすべきである。
首長と教育委員会の権限の見直しを始め、教育委員会そのもののあり方について、現場の声も聞き、時間をかけ十分検討を行うべきであり、拙速な法改正に反対するという立場を明確にした上で、個別に意見を付する。
教育委員会と教育長の役割・責任が分かりにくいのは、合議制の教育委員会の役割と、実際の教育行政の事務をつかさどる教育長の役割が住民にとって理解しにくいことに原因がある。
地方教育行政の責任体制を分かりやすくするためには、現行の政治的中立性の確保、継続性・安定性の確保、地域住民の意向の反映などの教育委員会の理念を踏まえ、地方教育行政の組織のあり方について検討することが必要である。
現行の教育委員会制度は、教育行政に関してレイマンコントロールをするために設けられた制度であることから、合議体としての機能を強化し、その意義を活かした本来の機能を発揮できるようにしていくことが必要であると考える。
また、教育行政については、既に、多くの地方公共団体において、効率的かつ成果重視の行政運営と住民への説明責任などを目的とした行政評価制度などの自己点検、評価を行っているとともに、議会等の審議を通じて外部評価を受けているところであり、教育委員会の活動を評価する第三者機関をさらに置くことについては賛同できない。
複数の小規模市町村が教育行政について一部事務組合、協議会、教育委員会の共同設置等の現行制度を活用することは、事務処理体制が強化されるというメリットがある一方で、各市区町村において教育施策に住民の教育ニーズを反映させるなど地域の実情に応じた教育行政の展開が困難になることが危惧される。
広域化については、国が一律的に定めるのではなく、市区町村教育委員会がそれぞれの地域の実情を踏まえ、自らの責任において最も適切な体制を選択できるようにすべきである。
各教育委員会において教育委員は、学校訪問や教育関係者などとの意見交換に積極的に努めているところである。各々の地域ごとに抱える教育課題には差違があることから、教育委員会ごとに必要な機会を通して、より一層現場の実態と課題の把握に努めることが重要であると考える。
各都道府県及び市区町村の規模や人材なども様々であることから、地方の実情に応じ教育委員数の弾力化を図ることが適当であると考える。
教育に関するニーズや課題等は非常に多岐にわたっており、教育委員会だけで完結できるものではなく、「学校・家庭・地域の連携」という言葉に表されているように、地域住民と一体となった総合的な施策の展開が必要である。そのためには、実務者レベルはもとより、首長と教育委員又は教育長との日常的意見交換が重要である。それにより、首長部局との緊密かつ円滑な連携が可能となる。
特に、生涯学習や文化・スポーツの分野については、教育的側面が強い一方、首長のまちづくりの一環としてのかかわりが深く、公の施設の有効活用等、各行政分野が一体となって効率的に事業展開される面もあることから、相互の連携を密にし、展開していくことが適当である。
なお、その所管については、各地方公共団体の判断により選択できる制度となるよう法整備を行うことが適当と考える。
憲法の要請する義務教育水準の維持・向上を図るためには、山間・離島を含め、全国均一に資質・能力の高い教職員を確保する必要があることから、広域人事異動や採用において、都市部と郡部との地域格差が生じないような仕組みづくりが必要不可欠である。
そのため、教職員人事権の市区町村(とりわけ中核市)への移譲を検討するにあたっては、結論を急ぐのではなく、各都道府県の実情や下記の課題等について十分留意し、移譲の是非も含めて慎重に検討すべきである。
教育行政については、各地域が当事者意識と責任を持って教育に取り組むことが基本であり、平成7年の地方分権推進法、平成12年の地方分権一括法、平成18年の地方分権改革推進法により、教育分野においても確実に地方分権の歩みを進めてきたところである。
特に、教育行政における国、都道府県、市区町村の関係・役割については、平成10年の中央教育審議会答申「今後の地方教育行政の在り方について」において整理がなされ、それを基に、教育長の任命承認制度の廃止や、国や都道府県の行う指導、助言、援助等の在り方の見直し等、教育行政における地方分権改革が行われたところである。
このような中にあって、地方自治法第245条の5に定める国の地方団体に対する是正の要求の規定に加えて、文部科学大臣及び都道府県教育委員会に是正の勧告・指示の権限を与えることや、教育長の任命について国及び都道府県が一定の関与を行うことは、地方分権の観点から問題であり、また、地方分権一括法による改正前の教育行政に後戻りさせかねないものであり、容認できない。
初等中等教育局初等中等教育課教育制度改革室