資料3 全国町村教育長会提出資料

今後の地方教育行政のあり方について


                         全国町村教育長会
                         会長 熊坂 直美
                         (神奈川県愛川町教育長) 

●町村教育委員会の現状について

1 全国町村教育委員会数は、約930 

 人口規模では、ほぼすべてが5万人以下
 細かく見ると1万人未満が47% 2万人未満でみると75%となる。(市においても5万人未満が約240市ある。これは全市町村の68%にあたる。)
 事務局の職員数は、平均13人 
 指導主事の配置率は44%

2 課題となっていること

 町村教育委員会の業務の主たるものは、学校教育に関わるものである。このことを踏まえると
 ・ 学校教育を担当する専門職が少ないため、学校への指導支援が十分ではないところが多く、教育長自らがその任に当たっているところもある。
 ・ 少ない職員数で広範な仕事をおこなっているため、緊急時の対応が難しい。
 ・ 教育長も具体的事務や作業等を行う実践部隊の一人である。

 ・ 学校教育あるいは教育行政の経験のない教育長もおり、その資質向上をどう図るかが課題である。
 ・ 財政規模が小さいところも多く、施策を展開するのに厳しい自治体もある。
 ・ 事務局充実が最も急務である。

3 教育委員・教育長と首長、学校、地域などとの関わりや会議について

 ・ 地域・学校との距離が近く、様子がよくわかる。
 ・ すべての学校の入学式や卒業式、運動会などの行事には、首長や教育委員が出席する。
 ・ すべての学校を対象として教育委員による日常の学習状況の視察が毎年実施され,校長との話し合いも行われている。
 ・ 首長と教育委員との懇談も行われているところが多い。
 ・ 首長と教育長との施策実施のための協議や情報交換等が頻繁に行われている。
 ・ 地域住民・保護者・教員などとの意見交換の場が、教育委員の発議により実施されているところも多くある

●このような状況を踏まえての全国町村教育長会の意見

1 はじめにの中の課題と指摘されていることについての町村教育長会の課題認識とは相違がある。具体的には
 ・ 教育委員が学校などの様子を把握していることから、会議における発言も的確なものが多く審議も形骸化しているとは思えない。
 ・ 危機管理能力の不足は、教育長を筆頭とする教育委員会事務局の課題であり、制度の問題とは違う。
 ・ 学校現場で起きる様々な具体的な問題(いじめ、不登校、暴力行為、体罰、事故など)に関する責任は事務統括者である教育長の責任であると自覚して対処している。
 ・ 非常勤の教育委員長・教育委員の責任は、教育の方針など教育の大綱に関わるところにある。
大規模自治体の教育委員会の抱える課題と小規模自治体の抱える課題とは差異が大きく、このような実態を踏まえての論議がなされて方向性を見いだすことが大切である。

2 今後の地方教育行政のあり方について
 1の教育委員会制度のあり方についての中の(4)新しい教育長及び教育委員会の制度の方向性、(6)教育行政関係者の資質能力の向上等についての二点について
 ・(4)新しい教育長及び教育委員会の制度の方向性について
 A案では、合議制の教育委員会が首長の付属機関と位置づけられているが、これまでよりも権限が弱くなり、当初課題とされた形骸化がますます進むと考えられる。行き着くところは、存在無用となる懸念がある。
 また、教育長の事務執行について日常的な指示は行わないこととするという歯止め規定も罷免ができることと、合議制の教育委員会が権限の弱い首長の付属機関あることを合わせて考えると政治的中立性、継続性、安定性の確保ははなはだ難しい。
 B案については現行制度との違いがわかりにくいということであるが、教育長が直接首長によって選ばれることは、現行制度と大きく違うことであり、また、合議制の教育委員会の権限を教育の方針など教育の大綱に関わることを明確にすることによってちがいは明らかになる。
 全国町村教育長会としては、政治的中立性、継続性、安定性の確保を担保する観点が最も重要であるということから、B案が望ましいと考える。
 それと同時に、日常の首長と教育委員会(教育長)との連携・連絡調整が十分行われているかどうかが、制度の問題と同等かあるいはそれ以上に重要であると考える。各自治体においてもこの点をチェックし直す必要がある。
 ・(6)教育行政関係者の資質能力の向上等について
 町村教育長会の最も大きな課題である教育委員会事務局の充実のため、教育長の資質向上のための研修の充実や現在法律上「できる規定」となっている指導主事の配置を「必ず置く必置規定に」にしていただきたい。合わせて、そのための財政措置をお願いしたい。

以上、町村教育長会の意見といたします。

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