教育制度分科会(第39回) 議事録

1.日時

平成25年12月10日(火曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 第二講堂

3.議題

  1. 今後の地方教育行政の在り方について(答申案)
  2. その他

4.議事録

【小川分科会長】  おはようございます。定刻となりましたので、ただいまから中教審第39回教育制度分科会を開催させていただきます。本日も、お忙しいところを御出席いただきまして、まことにありがとうございます。
 本日の会議には、西川副大臣、上野大臣政務官にも御出席いただいております。
 それではまず、今日の資料について事務局から確認をお願いいたします。

【堀野企画官】  議事次第にございますように、本日は配付資料1として、中央教育審議会総会における主な意見、配付資料2として、答申案の2点でございます。不足や落丁等ございましたら、事務局までお申しつけください。

【小川分科会長】  資料、よろしいでしょうか。
 なお、本日は、報道関係者より、会議の全体についてカメラ撮影を行いたい旨の申出があり、これを許可しておりますので、御承知おきいただければと思います。
 それでは、今日の議事に入りたいと思います。今日の会議では、これまでの審議の内容を総括して、分科会として答申案の取りまとめに向けて、最後の議論をしていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、事務局より今日の資料について説明をお願いいたします。

【堀野企画官】  それではまず、配付資料1を御覧ください。11月29日に開催されました中央教育審議会総会において、答申案について御議論いただいたときの意見でございます。
 まず一つ目ですけれども、15ページには具体的な図示がない。15ページというのは、教育委員会を性格を改めた執行機関として残すものについてですけれども、図示がないので、これまでどおりA案、B案両論を記すなど、その上での御議論としていくのが望ましいのではないかという御意見がありました。
 次の丸ですけれども、新しい教育委員会が有する勧告権を適切に行使できるかどうかというところが、今回の改革の大きなポイントになってくるのではないか。そして、次の段落ですけれども、新しい制度の事務局が知事部局になるのか、あるいは教育長の事務局になるのか、又は独自の事務局を設けるのかということについて、しっかり議論をして制度化してほしいという御意見がございました。
 次の丸ですけれども、行政全体、予算を担っている首長、それから合議制の教育委員会、事務執行を担う教育長が、予算も視野に入れて施策の大綱について協議をする。それを公開の場で協議をすることがとても大事である。そして、教育委員会が教育長の事務執行の評価を担うことになるのであれば、罷免権は教育委員会の同意を必要とするよう考えていただきたいという御意見。また、教職員定数や給与を減らすといったような財務省の意向が報道されていたが、教育環境を整える、教育の士気を上げるといったことにも力を入れて、しっかり守っていただきたいという御意見がございました。
 次の丸ですけれども、地域住民の意向という点では、首長の方がしっかりつかんでいる。政治家に任せると全部駄目になってしまうという不信感を持つ必要はないのではないか。その意味で、15ページの案、教育委員会を執行機関として残す案ですけれども、これについては、逆にカットしてしまった方がいいのではないかという御意見。それから、「独立性の担保」、首長から教育長が独立するという独立性の担保ということがありますけれども、現実的に知事部局、市町村長部局と教育長との間は年中連携が取られており、独立性の担保ばかりを強調してしまうとおかしくなってしまうのではないかという御意見がございました。
 裏面を御覧いただきたいと思いますが、勧告権の法的拘束力については、その有無ではなく、オープンに議論をすることが非常に大きな歯止めになるのではないか。公開の場で議論をして、マスコミがきちんと報道することによって平衡感覚が保たれる。それに加えて勧告権、提案権を持たせており、これが大きなことだと考える。また、首長と連携することの良い面をしっかり見ていただきたい。
 さらに、教育委員会を執行機関として残すという考え方について、執行機関というのは事務をこなす機関にすぎないのではないか。むしろ首長に対しても勧告や意見をしっかりと言えるのは大きな権限だと考えるべきであるという御意見。そして最後にいじめの問題で、子供たちが自殺をしたときに謝罪をするのは誰かという問題で言えば、それは首長であるということを申し上げておきたいという御意見でございます。
 最後の丸です。教育委員会、教育長、首長が一緒になって同じビジョンを持ったときに、非常に大きな力になる。そのためにも教育行政部局をいかにバックアップできる体制をとるか、その体制強化の方策として指導主事をしっかり活用してほしい。「コーディネートするスタッフを置くことも考えられるという意見もあった」ということについて、置いた方がよいという意見がございました。
 資料1は以上でございます。
 次に、資料2を御覧ください。答申案についての前回のこの分科会での御議論、それから総会での御議論を踏まえて修正した点について御説明いたします。1ページの下の部分は、最終答申案に向けてということで、記述を訂正したところでございます。
 次に、10ページを御覧ください。赤い字の部分ですけれども、新たな教育長の罷免に関しまして、首長が教育長を罷免する場合について、その際、議会の同意に加えて、教育委員会の同意も得るようにすることが考えられるという意見もあった。先ほど紹介した総会での意見について、書き加えたものでございます。
 次に、11ページを御覧ください。(4)新しい制度の方向性ですけれども、まず、二つ目の段落において、地方公共団体を統括する首長、教育長、そして合議制の教育委員会それぞれの権限と責任を明確化し、それぞれに期待される本来の役割を十分に発揮していくため、以下の改革案を提言するということで、首長を執行機関とし、教育長をその補助機関とするという案についての説明をしておりますが、この位置付けについては前回と変わっておりません。
 11ページの下の部分ですけれども、前回のこの分科会におきまして、首長が教育長に指示を行う場合につきましては、あらかじめ教育委員会に意見を聞くとともに、指示の内容・理由を公表するなど、住民の目に見える形にしていくことが適当である。そして教育長の罷免との関係では、まず指示を行い、指示によって事態の改善を図っても、なお事態が改善されない場合に罷免できるようにするという仕組みも考えられるという意見があったということを追加しております。
 12ページでございますが、首長に対する教育委員会の役割の中で、赤字の部分ですけれども、この教育委員会の勧告が効果的に機能するようにするためには、教育委員会の事務局の在り方を十分に検討する必要がある。前回のこの分科会と総会の意見によって追記をしております。
 その後、15ページを御覧いただきたいと思います。前回の分科会での議論を踏まえまして、教育委員会を性格を改めた上で、執行機関として存続させる案につきまして、記述を大幅に追加しております。首長の影響力が強くなり過ぎるおそれがあるとの立場から、教育委員会を性格を改めた上で、執行機関として存続させるとともに、教育長をその補助機関とする別案についても議論が行われ、この案を支持する強い意見もあったとしております。
 丸1教育委員会と教育長の事務分担の二つ目のぽつですけれども、教育委員会は、首長と協議して、教育に関する大綱的な方針を定めることとし、教育長は、この大綱的な方針に基づき、事務執行の責任者として、その権限に属する事務を執行する。そして、大綱的な方針については、首長が教育委員の任命や予算を通じて教育行政に大きな役割を果たしていることを踏まえ、首長が教育委員会と協議して定めることも考えられるという意見もあったとしております。
 次に、丸2の教育委員会の審議事項でございますが、下の二つ目のぽつから四つ目のぽつですけれども、教育委員会は首長と協議して、大綱的な方針を策定する。大綱的な方針の策定については、教育委員会という公開の場で、首長の意見と教育委員会の意見が共に住民に明らかにされることにより、透明性の高い手続によって策定される。
 また、毎年次年度の施策の基本的な事項を審議する。そして毎年、点検・評価を行う。教育委員会の審議事項はこれということについて、前の改革案と別案とで基本的に内容は同じでございます。
 16ページですけれども、丸3首長の責任の明確化について記した部分の後に、赤い部分ですけれども、この案は教育委員会を執行機関として残すことにより、政治的中立性、継続性・安定性を確保するとともに、非常勤の教育委員の合議体である教育委員会が責任を持って決定できる事項と、常勤の専門家である教育長が責任を持って執行する事項とを法律で明示することにより、責任の所在の明確化を図ることができる。しかしながら、この案は、教育長の事務執行が著しく適正を欠く場合、児童、生徒等の生命又は身体を保護するため緊急の必要がある場合などに、非常勤の教育委員の合議体である教育委員会の最終責任者としての責任をどう考えるのかという問題に応えていないという指摘があったとまとめております。
 その他、審議の過程において、首長を地方教育行政の執行機関としつつも、教育の政治的中立性等のために、首長の指揮監督権から、教育内容や人事に関することを除くという案。また、教育委員会を執行機関として存続させつつ、教育委員長と教育長を一体化させた「代表責任者」を置くという案。さらに、教育長を首長の補助機関としつつ、教育委員会を性格を改めた執行機関とするなど、様々な案が審議の過程で出たことを記しております。
 次に、20ページの三つ目のぽつ、指導教諭等の体制強化を図るとともに、学校の事務職員の専門性を高めるなど、事務機能の強化を図ることも必要である。前回のこの分科会での御意見を反映したものでございます。
 次に、25ページでございますが、これも前回のこの分科会での御意見、それから総会での御意見を踏まえまして、教員の士気を高める給与に関しては、メリハリある給与体系を推進する。また教員給与については、人材確保法に基づく優遇措置が目減りする中、現場の士気を高めるような対応が大切であるという御意見があったことを記しております。
 最後に、27ページですけれども、コミュニティ・スクール、学校支援地域本部等の部分につきまして、地域総がかりという言葉について、社会総がかりとした方がよいのではないかという前回の御意見を踏まえて、修正をしたものでございます。
 説明は以上でございます。

【小川分科会長】  ありがとうございました。今、事務局からの説明にありましたとおり、前回のこの分科会での様々な意見、そして中央教育審議会総会で出された意見などを踏まえて、今、説明にあったような加筆修正をしたものを、分科会の最終答申案として御提案させていただいております。今の事務局の説明への質問も含めまして、どなたからでも結構ですので、答申案の内容について御意見を伺えればと思います。いかがですか。
 辻委員、露木委員、貝ノ瀨委員、門川委員の順でお願いいたします。では、よろしくお願いします。

【辻委員】  前回の議論も踏まえまして、改めて答申案を出していただきまして、ありがとうございます。
 私は、前回の案でも、大分、議論が集約しつつあると思っておりまして、前回の原案で大体いいと思う観点からすると、15ページ、16ページと、随分、また書き込んだなという感じがしております。しかし、前回の委員会では、案に対する意見が強く出されたということもありますので、このような記述になったのではないかと私自身は理解しています。
 ここまで書くのであれば、15ページ、16ページの案については、今回ここに指摘されている問題以外に、執行機関と称しているにもかかわらず、地教行法第26条第2項で規定している教育委員会の役割がかなり制約されていることに係る課題等、ほかにも指摘されていたと思いますので、もう少し課題も指摘すべきではないかと思います。しかし、全体のバランスを考えたときに、今回のこの答申案は、今までの議論を割と公平に代表しているのではないかと思います。是非、この方向で最終的におまとめいただきたいと思っております。
 以上です。

【小川分科会長】  ありがとうございました。
 露木委員、どうぞ。

【露木委員】  おはようございます。度々まとめていただいて、有り難いと思っているところです。
 前々から私はお話しさせていただいているところですけれども、教育委員会がしっかり首長なり教育長の施策をチェックしたり、把握したりできる機能であることが非常に重要なのかなと考えています。そこでいろいろ法的な制約もあるのでしょうけれども、その中で一番気になっているのが、今回も書き込んではいただいたのですけれども、12ページの真ん中あたりに赤字で書き込んでいただいた、教育委員会の事務局の問題であります。ですから、どちらかと言えば、補助機関になった場合の話になるわけですけれども、教育委員会が教育長のやっていること、あるいは首長のやっていることを、まずいのではないかと言って議論をするときに、教育長の下にある事務局が、教育委員会の事務局であったら、言ってみると、勧告を下そうとする方からいろいろ情報を得て教育委員会は議論をしなければいけないわけです。そのような状況では、教育委員会は教育長や首長に対してしっかり勧告したりチェックしたりできるのだろうかということに対して、非常に疑問を感じております。
 ここでは、教育委員会の事務局の在り方を十分検討する必要があるとは書いてありますけれども、そうではなくて、新たな教育委員会の事務局というものがなければ、とても勧告やチェックできる、あるいは教育長を評価する情報を集めるための教育委員会にならないのではないかと考えます。
 そういう意味で言うと、十分に検討する必要があるという程度の記載ではなく、もう少し強い、新たな教育委員会としての事務局を持つということが必要ではないかと私は考えております。
 今、このような立場でお話をさせていただいたわけですけれども、つまり執行機関ではなくて、附属機関になることも、これまでの議論から言うと、やむを得ないのかなという面も感じつつ、これだけでは、まだチェックあるいは勧告する力が、新たな教育委員会には余りにもなさ過ぎるのではないかという意見であります。

【小川分科会長】  ありがとうございました。
 貝ノ瀨委員、どうぞ。

【貝ノ瀨委員】  ありがとうございます。
 今まで教育委員会制度の在り方について議論されてきましたけれども、当初は御承知のように、教育委員会それ自体が要らないのではないかとか、教育の政治的な中立性や、また継続性・安定性についても疑問を呈されるという中で、私もその点については大変危機感を感じました。教育再生実行会議でも、教育委員会制度を前提としておりますし、教育の政治的中立性、継続性・安定性についても、しっかりと維持すべきだという中での議論が大事だと思っておりました。ですので、今回のように、このような形で収束されてきたことは望ましいのではないかと思います。
 そこで、首長の執行機関化ということでありますけれども、これについても、私の当初の案は、縛りが甘いと言いますか、誰を想定するというわけではありませんが、暴走する首長も現れるのではないかということで、一定の危惧は持ちました。けれども、しかし、この話合いの中で、例えば大綱的な方針を首長が取りまとめるにしても、教育委員会の議を経るとか、日常的な指揮監督はしない。する場合もきちんとルール化して法律に定めて、表に出てくるということでありますので、やたらなことはできない。相当な縛りが入っているということで、正に15ページあたりに随分書き込まれていて、首長からすると、今までの方がいいなどとおっしゃる方もいらっしゃるかもしれないぐらいの縛りが入ってきているということでございます。
 私はそれでいいではないかとは思っておりますが、ただ、大事なことは、今のような教育を取り巻く、子供たちを取り巻く危機的状況を考えると、首長や教育長、それから教育委員会、みんなが力を合わせてこの難局を乗り越えなければいけない。首長さんもしっかりと巻き込んで、当事者として責任を果たしてもらうことが更に必要な時代に入っているのではないかと思うのです。
 そのようなことを考えますと、首長の在り方というのは限定的であり、しかも教育委員会が作ったら、それを知らんふりできないように責任を持つ。例えば国は教育振興基本計画を作っていて、それを自治体なりに作らなければいけないわけですが、それについては非常に金のかかる内容もたくさん含んでいます。ですから、当然のことながら、それを実行していくとなりますと、相当な実行力と財源が必要になってくるわけで、教育委員会単独でそのようなものを作って、首長に、これをお願いしますと言ってもなかなか難しいのが現実であります。文科省と財務省の関係でもそうですが、ない袖は振れないと言われたらそれきりです。ですから、当事者として巻き込んでいくことが必要なのではないかと思います。
 一方、教育委員会執行機関化ですけれども、これについては、また元に戻ってしまう議論になるのではないかということです。結局のところ、教育長を教育行政の責任者とするということは、教育委員会の今までの権能を、ある意味では分担するわけです。教育長の方に寄せているわけです。大事なことについて、例えば教職員の人事異動の基準とか懲戒処分の基準、教育内容の基本的な事項とか、教科書採択の基準とか、さらっと書いてありますけれど、これは作るのは結構大変なことです。教育長を教育委員会の外に出しておりますから、今まで形骸化が指摘されている中で、果たして自分たちでそのような議論ができるのかということです。
 そうすると、このようなものも既に基準がある程度ありますから、それを結果的に追認するという形で、さらなる形骸化が進むというおそれもあるわけです。そのようなことを考えたときに、教育委員会を執行機関にしたまま、教育長を教育行政の責任者として教育委員会の外に出して、この機能を果たしていくのは非常に無理がある。その上で、教育委員会は執行機関ですから、最終責任者としての責任を取らなければいけないわけですが、非常勤の教育委員さんに責任が取れるかどうかということです。教育長に、大部分のところを分担している状態で、その上相談があって協議をしたとしても、全て含めて教育委員会、教育委員さんたちが最終的に責任を取る、そのようなことが果たしてできるのか、そうなると矛盾がないのですかということです。したがって、このような点で問題が残るということです。
 更に言えば、現状をどう考えるかという大局的な面から申し上げたいのです。私も中央教育審議会の委員として教育振興基本計画の作成に2年がかりでタッチしてきましたけれど、どれだけの方がそれを読んでいただいているか分かりませんけれども、我が国を取り巻く危機的状況として、七つの危機的状況が記されております。
 例えば一つは、少子化、高齢化の進展で、社会全体の活力が低下していると、さらっと書いてありますが、書き込んであるのを読んでいただくと分かりますけれど、大変に深刻な問題です。50年後には9,000万人の人口、100年後には6,000万人ぐらいの人口になっていく。活力が落ちるどころではない、医療費の問題、年金の問題、様々に大きな影響を受けてくるわけで、そのような意味では改めて人材の育成が重要です。イノベーションができるような、自立し、そして協働して創造できるような、そのような人材育成が急がれるわけです。そのようなこと一つ取っても大変危機的な状況にある中で、更に東日本大震災という問題がかぶさってきているということで、これを何とか突破しなければいけない。
 したがって、相当なマンパワーが必要ということです。このような危機的な状況を考えたときに、首長の暴走というリスクもありますが、何もしないリスクという、前回も言いましたけれども、教育委員会、教育長たちの不作為と言うか、そのような両方のリスクのバランスを考えたときに、首長の場合は4年ごとに何かをするという公約を掲げないと当選しないわけですが、教育長や教育委員はそこそこ仕事をやっていれば免職にならない。特別なことがなければ免職にできないということです。結局のところ、この状況を突破していくとなると、首長の持つ大きな力との連携を取ってやらなければいけないということです。
 ですから、首長を当事者として位置付けて、教育委員も巻き込んで、今の危機的な状況を打開していくことが、求められているのではないかと思います。その危機的な状況を危機的な状況と考えるか、考えないかというところで、判断が分かれてくると思いますが、私は危機的な状況だととらえています。このままでは日本は沈没してしまうということです。
 以上のようなことを考えますと、間違いを恐れずに言えば、暴走はいけませんけれど、正しく暴走する首長ということも考えられるかと思います。何もしない教育委員会、何もしない教育長では駄目です。全国1,700も自治体があるのですから、その中で際立った教育長とか教育委員は、全国的には極めて少ない。結論は、事務局の案については、相当に首長の暴走危惧に対しては縛りをかけてありますので、私はこれを支持しますし、この取扱いについて、事務局に一任をしたいと思います。
 以上です。

【小川分科会長】  ありがとうございました。
 門川委員。

【門川委員】  ありがとうございます。
 ここ1か月間の分科会の議論、特に前回の議論を踏まえてA案、B案、両論併記的にしていただいたことについては評価したいと思います。教育行政は改革されなければなりません。今、貝ノ瀨委員がおっしゃったように、今の日本の教育の現状に危機感を持っていない者は誰もいないと思います。どう改革するかということであります。まずは、人間性の育成、人材の育成が大事であります。また、いじめ、虐待等が起こったときの危機管理も大事です。同時に、その時々の政治権力が、都合のいい学校教育をしてはならない、これは歴史の教訓であります。そのこともしっかりと踏まえなければならない。それをどう担保しながら、大胆な教育改革ができるか。そのために、こうして公の場で、オープンな場で議論をしているわけでございます。
 私は、大胆な教育改革を日本全国の各地で行っていく、そのために首長が果たすべき役割、また教育委員会が果たすべき役割、そして何よりも学校の教職員が創造的な教育活動を、校長を中心に、地域や保護者の理解の下に展開していく、そうしたことを保証する。同時に、文部科学省において、財務省としっかりと協議をし、予算を確保していただくことが大事であろうと思います。
 事務局案において様々な工夫をしていただいています。しかし、教育委員会、教育長を首長の附属機関にしてはならない。これは歴史の教訓だと思います。繰り返しになるのですが、首長が予算も、さらには教育委員、教育長の人事権も持っております。ヒト、モノ、カネは首長が全て持っている。その上で、教育の理念、教育方法、こうした具体的なことを教育委員会が分担して執行していく。いろいろな権限を留保しながらということではありますが、首長の下での教育行政になることで、教育委員会がますます形骸化することになってはいけないと考えます。
 これまでの議論や原案を繰り返すつもりはありませんが、性格を改めた執行機関として新しく改革される教育委員会、そして教育の実務に最終責任を負う首長が任命した教育長の下で、教育行政はしっかりと執行できると考えます。
 なお、16ページですけれども、真ん中の少し下にある、非常勤の教育委員会の責任についてどう考えるのかということですけれども、教育長を最終責任者として位置付けるとともに、危機管理のときには、首長に調査・監督の権限があることを明確にすることで、この指摘への対応ができると考えます。
 また、教育委員会事務局の専門性を持った人材が何よりも大事である、このことは繰り返して申し上げてきたとおりであります。改革のための改革でなしに、学校現場が創造的な教育活動を安心して、安定して展開できる体制づくりが大事だと思います。
 最後に、前にも申し上げましたが、地方自治体は二元代表制であります。今の首長が、また議会が、何か問題が起こったときだけ教育に関心を持つ。通常のときは教育委員会に全部任せっぱなしである。無作為である。無責任である。このような指摘は、そのとおりだと思います。そこで、教育振興基本計画を各自治体の首長が策定すること、策定に当たっては、首長と教育委員会が事前に協議し、そして議会においても議論をし、それらを踏まえて最終的に議会が議決する。こうした仕組みを義務化すべきだと思いますが、少なくとも議会の議論を踏まえて、その自治体としての教育振興基本計画を明確にしていくことを首長の責任とすることが非常に大事だと思います。
 以上です。

【小川分科会長】  ありがとうございました。
 ほかにいかがですか。では、白石委員、そして橋本委員の順でお願いします。

【白石委員】  そもそもこの教育委員会制度の改革は、これまでも繰り返しいろいろな方が述べていらっしゃいますように、教育の現場における最終的な責任体制をはっきり住民の皆さんに分かるようにしなければならないというのが、私は一番大きな課題であろうと思います。
 そういう意味で、首長が最終的な責任を取るという意味では、A案でいいと思うのですけれども、そのときに、教育の政治的中立性と言いますけれども、もちろん当然のことですけれども、教育長あるいは教育委員の選任自体を首長が行い、しかも議会の同意を得るわけです。議会の同意について政治的な動きでないと捉えるのか、そうであると捉えるのか。つまり首長は、この人を教育委員にと選任しようとしても、議会の同意がなければ選べないわけです。それを政治と言うのならば、何らかの政治的な判断というものが出てくるわけです。選ばれた教育委員さんは全て公正中立で、政治的に全く中立かと言うと、私は個々それぞれは決してそうではないと思う。ただ、教育委員会という合議体の中で、子供たちに対するいろいろな教育に政治的な見解を挟まずに、中立に子供たちに教育をしていくことが大事なのであって、個人の思想まで言いますと、教育委員さえ選べなくなります。
 この案でも、いろいろなところで政治的中立性と出ますけれど、私も町長になって14年になりますけれども、地方行政をやっていく中で、教育との絡みで政治的中立性が問題になることはありません。例えば、文化財保護のところで、開発行為との関係で政治的中立性というのはありますけれども、文化財保護の行政は当然教育委員会ですけれども、開発行為との絡みで言えば、当然首長と関係してくるわけです。そのときに、文化財保護をないがしろにして開発がいいとか、そのようなことはあり得ないことです。文化財保護については、文化財保護審議会があるわけですから、そのような過程を経てやるわけでして、私の町でも文化財との関係で、その地域の開発を断念したケースもたくさんあります。
 ですから、何でも首長が入ると政治的中立が侵されると思うのは、現実に現場でやっている町長の立場から言えば、決してそのようなことはない。自分が選ぶ教育委員ではありますけれども、もし首長が政治的な動きで現場に介入するとすれば、当然教育委員なり学校側が反発をするわけです。
 特異な例を持ってきて、そのようなことに歯止めをかけると言い出したら、これは何をかいわんやで、例外的に教育現場にどんどん政治的介入をする首長がいれば、それは住民が次の選挙で落とすしかないのです。私は教育委員も同じだと思います。自分が選んだ教育委員が政治的な動きをするようであれば、それは罷免するしかないのです。
 だから、余り政治的中立性のところだけで、中身を見失うというのは、私は、どうかという気がいたします。同時に、先ほどもありましたけれども、私も実際に町政全体の人事をする中で、教育委員会の事務局の人事については、たとえ地方の町村といえども、もう少ししっかりと取り組んでいく必要があるだろうと思います。小さな町は、議会であろうと、教育委員会であろうと、全て町長部局で人事異動するわけです。採用もするわけです。私のところは幼稚園の先生も私が面接をして採用しております。当然教育長も入ります。
 このような人事権を全て持っている以上、教育委員会に対しても、かなり配慮をして適材適所でやるのですけれども、全体の中で見ると、今のような教育委員会の議論の中では、事務局の体制と言いますか、例えば、私のところでは今、指導主事はいませんけれども、来年あたりから指導主事についても配置をしなければいけないのかと強く感じます。ただ、前から言っていますように、市町村の教育委員会と県の教育委員会との関係があるわけです。先生あるいは指導主事なども、県の採用、異動でやっているわけですから、そのような中、自前で指導主事を採用していくことになると、それなりの準備も必要ですので、今すぐとはいかないと思いますけれども、来年度から私どもも教育委員会の事務局人事としては、改めて検討しなければいけないと思っております。
 それからもう一つ、19ページにありますけれども、「教育行政関係者の資質能力の向上等について」です。これについては、ここに書いてあるとおりだと思いますので、是非国を挙げて、先生をはじめとした教育関係人材の育成については、もっと力を入れていただきたいと思います。
 政治的中立性というよりも、先生の質、あるいは子供に対する教え方も含めて、その能力を上げることが教育改革の原点だろうと思います。そういう意味で、私どももいろいろな採用の仕方を今、考えていまして、ただ、地方の場合には、あくまでも教員の採用人事は県が持っておりますので、県教委と市町村教委との関係については、国の意向か、あるいは各県でもっと話合いをして、お互いにスムーズな意思疎通ができるような関係を育てていくことが大事だと思いますので、それはそれぞれの地域で取り組まなければならない問題かと思います。
 以上であります。

【小川分科会長】  ありがとうございました。
 橋本委員、どうぞ。

【橋本委員】  ありがとうございます。いろいろ御意見が出ているところですけれども、私はこの間の審議会で、15ページ、16ページは要らないのではないかと申し上げたところであります。まず、ここに書いてある15、16ページを見ていまして、例えば15ページの丸2、教育委員会の審議事項、それから16ページの「この案は」というところを見ると、教育委員会の審議事項はほとんど残っていない。ほとんど残っていなくて、執行機関と言えるのかどうかです。
 ここに書いてあるのを見ると、ほとんどの権限は、教育長にいってしまっている。教育長は極めて大きな権限を独任制的な形で使うことになる。そうなると、今までいろいろお話があったように、選挙で選ばれてきたとか、合議制の機関でなければ、そういう形になってはおかしいという議論と全く反してしまう。選挙でも選ばれていない、合議制の機関でもない教育長が、相当な権限を持ってしまうということについて、果たしてこの中で行われてきた議論の中でも、いいのだろうかということが一つであります。
 それから、一般的に市町村ですと教職員のOBの方が教育長になっていることが極めて多いのですけれども、その方々、例えば国語とか体育とかを教えてきた専門家が、今申し上げたような独任制で強大な権限を持つ執行機関もどきのものにいきなりなってしまったときに、果たしてリードしていけるのかどうか。中立性、継続性、安定性、これは多分やっていけると思います。先ほど貝ノ瀨委員からありましたように、何もやらなくても中立性、継続性、安定性は多分保てるでしょうから。しかし、今、教育で一番大事になっているのは、私も教育は最重要の施策の一つでありますけれども、その中で時代の変化、時代の流れへの対応性、これが今の教育委員会ではなかなかできない。これを周り全体、地方政治でも国の政治でも、全体を見ながら時代の流れへの対応性というものをやっていかなければいけない。
 それから、先ほども話題になりましたが、いろいろな点で責任というものを教育委員会で取れるかどうか。今日の貝ノ瀨委員の後半の部分は、私も同感でありまして、そのような観点から機能性、弾力性といったことなども含めて、機能性、弾力性を持たせようとして教育長にどんどん権限を譲ってしまったのでは、本当に独任制の教育長ということになって、極めて課題が大きいのではないかと思っております。
 それからもう一つ、22ページでありますけれども、地教行法の第50条を改正する、是正の指示というものを強くするということなのだろうと思うのですけれども、22ページの上から2段目、「他方」というところに書いてございますが、第50条の指示の要件を仮にもう少し広げたとしても、結果的には訴訟の手続もなく、国の介入に従わないと決めている自治体に対しては実効性がないわけでして、仮に地教行法の第50条の是正の指示について訴訟手続を整備したら、やはり同じように時間がかかるという点では、今の制度と何ら変わるものではない。
 あるいは、また、国が代執行したり、強制的に事務を執行させたりする手段がないわけですので、結局、最も実効性があるのは違法確認訴訟ということになってくるのではなかろうかと思っております。我々、地方自治体の立場から見ると、今の制度でも基本類型外、要するに、自治事務に対し指示ができる極めて特例として、自治法の基本類型外のものとして、今、行われているわけです。それが本当に実効性のあるものになるかというと、多分適用される案件を広げていっても、この間の竹富の件でも、文部科学大臣の方で指示を出しても地元はさっぱりそれに従っていない。その点では、違法確認訴訟に持っていっていれば、とっくにできたわけです。それは地方自治法の適用で幾らでもできたわけですので、ここは文章が「検討する必要がある」だから、今まで余り申し上げてきませんでしたが、検討することはいいですけれども、実施すること、導入することには、私は賛成ではありません。

【小川分科会長】  ありがとうございました。
 ほかにいかがですか。それでは梶田委員、今田委員の順でお願いします。

【梶田委員】  ありがとうございます。
 私は、別案は、図を入れていかれてもよかったと思っておりますが、中身は、今、橋本委員が御指摘になったとおりで、どうしても教育長の独任制に近いような感じがします。別案でも、教育委員会が合議制の執行機関だと、どこが執行機関なのかという感じになります。ですから、この前も申し上げましたけれども、これは別案も、もう一つの改革案もそうですけれども、教育委員会は基準を作るだけではなくて、例えば人事異動とか懲戒処分、あるいは教育内容の基本的なところ、教科書採択、基準を作るだけではなくて、最後の承認とか、そういうものがなければ、ほとんど意味がないと私は思います。ですから、それは是非入れていただきたいというのが私の意見です。
 それから、16ページにずっと書いてある、その後に、「しかしながら」というところがあって、全部を打ち消すような話になっております。これが、例えば教育長の事務執行が著しく適正を欠く場合、児童、生徒等の生命又は身体を保護するため緊急の必要がある場合などに、非常勤の教育委員ではどうにもならない、これは本当にそうなのだろうか。常勤だとどうにかなるけれど、非常勤ではどうにもならない、私は、これは論理的におかしいと思うのです。
 私は何度か、私が教育委員をしたときの経験をお話ししました。私は大阪大学にいたときに、住んでいる箕面市の教育委員をしていたわけです。問題が起こったりしたら、ゼミの最中であろうと、途中で車に乗せられて教育委員会に行って、そこで全員集まって、ほかはお医者さんとか弁護士さんとか、はっきり言うとかんかんがくがくの議論をしたものです。その結果、その日のうちに結論は出るわけです。もちろん教育長さんもすごく発言されるし、どこかの教育委員会であったように、資料をたくさん隠しているということはないですし。ですから、そのようなことを実際に経験した者として、このような言い方は、今、うまく機能している教育委員会に対して非常に失礼な話だと。
 もう一つ言えば、このような言い方がまかり通るとすれば、あらゆる合議制の執行機関を否定することになります。そこまで、この中教審として言うつもりなのか。いろいろな分野で非常勤の委員が集まって、合議制の執行機関を作っているわけです。それまで本当に中教審の権威でもって言うつもりなのかということがあります。
 そのようなことで、私はこの議論を聞いていて、首長さんが今までなかなか介入しにくくて、だからここで直接ものを言えるようにしなければいけないという雰囲気、そのような発言が多いですけど、それは全くの誤解です。
 例えば、私は大阪府の教育振興基本計画を大阪府議会で通してもらいましたけれども、この策定する審議会の会長をやりました。この辞令は、松井知事と教育長と両方の辞令を頂きました。そして事務局も、教育委員会と知事部局両方で構成された。それから、今、私は兵庫県の教育振興基本計画2回目の委員長をさせられております。1回目も同じことですが、これもきちんと事務局は知事部局と教育委員会両方で構成されております。そして、いろいろな問題については、はっきり言いますと、知事さんの御意向も伺いながらやっております。
 そのようなものだと思うのです。これまでの首長さんが、教育について発言できなかったという県もあったでしょう。そのような市もあったでしょう。だけれども、この町をよくするために、この県をよくするためには、知事さんが、市長さんがやらなければいけないという思いの人は、きちんといろいろな場でリードしてこられました。先ほど言いました、箕面市の教育委員をしていたときは、月に1回は市長、助役と教育委員の渋茶での懇談会がありました。お酒ではないのです、渋茶です。これも、市長さんは自分の思いをどんどんおっしゃるし、そのようなことをやってきた、その上にというところを、一部確かにもたもたして、誰が責任を持っているか分からないところもあるでしょうけれど、そうでないところもあったわけです。
 私は、答申案の表現そのものが、きちんとやってきたところに対する失礼な言い方にならないように、是非これは考えてほしいと思います。
 もう一つ、一番大きいことを申し上げます。私は自分の思想信条もありますから、私は衆議院も参議院も安定していて、私個人としてはうれしいと思っています。これは完全に個人的な考え方です。ただ、地方自治体になると、今、野党、小党、まだ分裂します。どこかの極めて尖鋭(せんえい)な教育的な主張を持った、そのような党に支持された方が、例えば市長さんになる、県ぐらいになると今の段階では考えませんけれども、前は知事さんの中でもあったわけです。それは東京の場合もありましたけれども、大阪、京都の場合で、私は身をもって大変な思いを見ているわけです。
 そして、市などでは今でもなきにしもあらずなのです。いつも言いますけれども、99%がうまくいっているから、それで考えなくていいでしょうではないのです。1%でもまずいことが起こる可能性があれば、その歯止めを制度の中でどう考えるかなのです。
 制度というのは、基本的には歯止めなのです。だから、いろいろなことが書いてあっても、全然使わない伝家の宝刀であれば、それはそれに越したことがない。ただ、現実の問題として、今、安定しているので、みんなのんびりし過ぎて、全て楽観的になり過ぎているのではないか。
 私は関西に住んでいて、必ずしも、そう楽観できる状況ではない。隣に京都市長さんがおられますけれど、京都市の状況も今はいいけれども、一つなればというところも、これは私の政治的な考え方ですが、心配するところです。
 もう一度言いますけれども、どのように歯止めを作るかなのです。今は合議制執行機関という形で、しかも順繰りに委員が替わっていく、一斉に替えるのではない、そのような形で、いろいろなことについて大きな発言力があるわけです。合議制執行機関が本当に執行機関になっているかどうかは別としても、発言力があるから歯止めになることがある。そのような今の制度でも、やろうと思えば首長さんは何でもやれてしまう面もなきにしもあらずです。
 だから、私は教育制度改革のときには、是非今の教育委員会制度をより一層乗り越えて、もっと安定性、もっと政治的な中立性、これが担保されることを考えていかなければいけないと思います。
 元に戻りますけれども、私は橋本委員のおっしゃった、このままだとどちらの案でも教育長の権限が強くなり過ぎているような気がします。ここだけは少し考え直してほしいと思います。

【小川分科会長】  ありがとうございました。
 今田委員、どうぞ。

【今田委員】  ありがとうございます。
 まず、今日までの事務局の御努力に敬意を表する次第です。今回の案を見るときに、現実に現場にある者として、随分理屈をこねまわして、本当にできるのかなと。ある程度ベーシックなものの情報もないと、大綱だけを判断しろといっても、なかなか難しいと思います。
 出発点が権限と責任の明確化ということでしたから、制度の変更が最大目的になったような感じがある。ただ、大津の事件などは、首長と委員会と現場との信頼関係がどうだったのかということもあります。
 前回の11月27日のときに、委員のお一人が最後にこのようなことを言われました。今でもしっかりと行われている自治体は幾らでもあると思う。首長、教育長、教育委員会が常に連携をしっかり取って、お互いが責任を持って行うという元に戻れば何ら問題はないと、極めて素直で分かりやすい発言、これは少し部外者的な立場という御遠慮されたお話でしたけれども、多少私は目からうろこの部分がありました。専門家が専門的な話ばかりこねまわしている気がしなくもない。
 私も、370万という横浜市で教育委員11年目に入りました。教育委員長も8年弱仰せつかっていますけれども、今の制度も、私は志を持ってやればいろいろなことができるのではないか。もちろん改善すべき点もあると思います。教育長は議会の同意事項にして、議会の人も教育長に誰が就くかということに責任を負うべきだし、教育長と委員長というのは、呼称の問題も少しややこしいということですから、代表委員というような言い方にするのもいいかもしれない。
 それから、非常勤とはいえ、教育委員長などには厳しい勤務条件のようなものも課すということで、そのような中で、既存の制度の中にも、俗にいう政治的中立性というものを担保できているという良い点があると思います。
 いずれにしても、教育委員会形骸化論というのが染み渡った固定観念のようになってしまっている。でも、そのために、権限と責任の明確化が議論されてきたのですけれども、先ほども梶田先生のお話にあったのですが、私は形骸化論から権限と責任の明確化に至る前に、本当は委員会の活性化論、これは何度も申し上げているのですけれども、なかなか事務局に書いてもらえない。人選の問題、タイムリーな教育委員への情報提供、あるいは執務環境、そのようなものがないと、A案にしろ、B案にしろ、教育委員会制度を残すのであれば、是非このことははっきりと記していただきたいと思います。当然の法理のように理解されているのかもしれないのですけれども、現場の感覚からすれば、極めて大事なことだと思います。
 今回の教育再生実行会議の提言は、誤解を恐れずに言えば、副大臣もおいでになりますけれども、日本の公教育の世界に長年にわたって結果として醸成されてきた、ある種の反体制的な雰囲気に対する不信感があったのだろうと思いますし、私は、それはやむを得ないことだと思っています。
 私は中学の歴史、公民の教科書採択で、俗に言う保守的だと言われる教科書を採択した人間ですけれども、それはもちろん教育行政法律主義の原則を踏まえてやったわけですけれども、そのような人間が見ても、今回この変更でいうA案と言いますか、改革案というのは少し行き過ぎではないか、釈然としていない。もう少し冷静に考える、大きな危険性をはらんでいるのではないかと思います。
 提言の中にも、たしか付記事項で、合議制の執行機関である教育委員会を基本的に維持しつつというような表現もあったと思う。私は、そのことを忘れないで考えていただくことが極めて大事ではないかと思います。
 以上です。

【小川分科会長】  ありがとうございました。
 細谷委員、どうぞお願いします。

【細谷委員】  前回お休みしたら、今度の答申案が随分変わっているので、また読み込むと、ますます分からなくなってしまいました。今までもそうであったのですけれども、今日は学校の校長という立場で、この会で制度そのものについての意見は申し上げられないのですけれども、これまでの議論を踏まえて、少し申し上げたいと思います。
 最初は私の個人的な見解なのですけれども、私が一市民として自分の町の首長さん、あるいは学校長として教育委員会、どのような首長さん、あるいは教育委員会が理想的か、望ましいかといつも思うのですけれども、まず、教育委員会に対して言えば、ぶれない教育委員会なのです。国で定めた学習指導要領、あるいはそれぞれの法律に基づいて、非常に柔軟ですけれども、芯がしっかりしている、そのような教育委員会が学校として非常に頼りになる。
 さらに、首長さんに関しては、教育を中心にと言うのでしょうか、人づくりを中核にした政策、あるいは施政、そのようなことを前面に打ち出した首長さんに関しては、私も教育者ですので、つい共感してしまう。あるいは、私が今まで仕えた首長さんの中に、そういった方がいらして、非常にすばらしい区政をやられていたというものが根本にあるのです。
 その中で、人づくりを中核にした施政、まちづくりといった首長さんについていえば、教育は人なりといいますが、人づくりなのです。あるいは、人材確保なのです。それをどのようにやっているか。人材確保については教育委員会のお仕事だと思うのですけれども、それをつい見てしまう。そうすると、まちづくりというのは、もちろん首長さん一人でできるわけでもなければ、人づくりというのは教育委員会だけでできるわけではない。そう考えると、首長、教育長、そして教育委員という人たち、それに学校が加わり、ある意味では理想的なまちづくりができるのではないかと、個人的な考えでそう思って、今までずっと学校の教育に携わってきました。
 ですから、今、首長さんが予算を作る、あるいは国から持ってくるという大きな仕事があると思います。そのお金を使って教育委員会が優秀な教員を集める。あるいは優秀な教員に育てていく、そのような体制を作る。そして学校はその教員を頂いて、更にその教員の資質を高め、そして子供の教育に当たる。この三者が一体となって取り掛かると、結局はまちづくり、ひいては国づくりになっていくと、いつも考えております。
 今回、この答申案の13ページの最後にありますけれども、首長、教育長、教育委員会の連携、そして、その下にいる学校との連携、これは数行でしか書いてありませんけれども、学校の私たちにとってみれば大変重要な内容なのです。
 どういう制度になるか分かりませんけれども、少なくとも首長さん、そして教育委員さん、そして教育長さん、そしてその下にいる事務局のスタッフが常に一つになって、いいまちづくりとは何なのか、人づくりはどうなのかといったテーマで定期的に会合を開いていただきたい。そのような形でいけば、我々学校もいつでも御意見を申し上げますし、言うことも聞いていくようになっていくのではないかと思います。
 ここは文部科学省の会議ですので、あえて言いますけれども、財務省は教員の人件費を大幅に減らそうとしているという声を聞いております。やはりここで踏ん張らなければ駄目なのは誰かというと、もちろん文部科学省さんにも頑張ってもらいたいのですけれども、各都道府県、市町村の首長さんをはじめとする、教育に携わる人たちではないかと。学校は本当に無力なのですけれども、そのようなところでも、今は危機的な状況にあるのではないかと思っていますので、先ほども言いましたけれど、首長、教育委員、教育長、そして学校が常に一体となって、これからの国の在り方、町の在り方、人の在り方を話し合える体制になっていただければ、学校としては非常に安心して子供の教育に携われると思います。
 実際には、例のPISA調査の結果が出ました。あれほど下の方に下がって、いろいろとマスコミからもつつかれていた数年前の状況、一気にまた日本は上げました。これは手前みそになりますけれども、先生方の努力もかなりあると思います。でも、それはやはり国、あるいは町村、あるいは都道府県で学校頑張れという体制を敷いてくれたからこそできた結果だと思っておりますので、どうぞこの答申案は、この後どのような形で効いてくるか分かりませんけれども、ここにいらっしゃいます首長さん、あるいは教育委員会の関係の方々、是非よろしくお願いしたいと思います。
 以上です。

【小川分科会長】  ありがとうございました。今日は是非全員の委員の方から御発言いただければと思います。
 生重委員。ほかにいかがですか。では、村上委員、高橋委員お願いします。

【生重委員】  それぞれの専門家がとても綿密にきちんと語ってくださっているので、私はずっと聞いて考えながら、発言が遅い方で、なかなか発言する機会が持てなかったのですが、私がここの委員会に入っている委員としての立場が、どちらの専門家でもないということは、考えるに、市民として、それが一人一人に分かるのかというところを見ていく役割を担わせていただいているのだと思いながら、有識者、専門家の先生たちの御発言を聞いておりました。
 私どもが一番教育に近い地域社会の人間として願うことは、その町の教育がより活性化して、皆さん方のおっしゃっているように、予算の権限を持っている首長と、それから教育長と教育委員も責任を持ってきちんとやる。決められた中で、何らかの形でアクシデントが起きたときに、みんなが合議できる体制が円滑にとれているかということがとても重要であって、先ほどの先生がおっしゃったように、日頃は学校現場が頑張る。そして地域社会が頑張る。社会総がかりで、これからの課題の多い子供たちの現場を支えていきましょうというところだけが変わらず揺らがないで、それを阻害することがなく、実行できない体制を作らないようにしていただける、そのような前向きな教育委員会であり、首長の施策でありというところを唯一望むのです。
 それで、もう1点、私が地域住民として見ていて思うのは、事務局の体制がもっとフットワークよくいかないと、何となく上の方の思いよりも、事務局の方がそれを知らなかったり、それに対してどう立ち向かうかというそれぞれのスタンスが明確でないという場合に、よくぶつかるのです。そのあたりの意識を上げていくために、きちんと教育委員会体制が従事している事務局も含めての活性につながっていってほしいというのと、日本は広うございますので、単独の事務局を持てる自治体と、それから大阪の事例のように、広域行政、ネットワーク行政の中で実施体制を敷いていくところと、できればきめ細やかな分かりやすい形で文章を作って、それぞれどこの町でも子供たちがすくすくと健やかに育てる教育環境を、社会総がかりでやっていける体制を敷いていただけるような教育委員会の機能実施につながっていってほしいと思っております。
 以上です。

【小川分科会長】  ありがとうございます。
 村上委員、どうぞ。

【村上委員】  私は別案の方をベターと考える立場ですので、このように前回よりは記述が加わって、ほぼ両論併記という形になったことに関しては、門川委員と同じく評価する立場であります。
 今回の改革は、もともとは緊急時の責任の明確化と政治的中立性、継続性・安定性の両立をどう図るかという観点であったかと思います。その点で言うと、やはり改革案の方は継続性・安定性、中立性の方にかなり懸念が残ります。
 一方で、別案の方は責任の明確化というところで議論になっているわけですが、これは前も申し上げたとおり、緊急時の責任の話ですので、長期的な責任というのは政治家であろうが、専門家であろうが、なかなか取れるものではありませんので、緊急時の責任という点を考えれば、教育長と明確化をしておけば、別案の方が政治的中立性、継続性・安定性との両立を図れると考えます。
 先ほど、教育長が独任制執行機関的になってしまうのではないか、別案だと教育委員会の審議することが少ないのではないかという御指摘もあったのですが、これは公安委員会についても言えることでして、やはり警察の場合、公安委員会では管理と監察ということで役割が限定されていますが、では公安委員会は不要なのかということになると、前回と同じような議論なのですが、ほかの行政委員会も全部不要なのかという話になりかねない。先ほど梶田委員から、合議体の非常勤であれば全部駄目なのかというお話があったのですけれども、必ずしもそうではないだろうと考えます。
 教育委員会の審議事項が狭いことについては、それを理由に、合議体の執行機関は不要という議論にはならないと考えます。それであれば、警察も首長直轄にすべきだということになるかと思います。
 首長が役割を果たすことは、もちろん必要なのですけれども、やはり教育について、一人の政治家がかなりの力を持って決めることのデメリットをよく考えなければいけない。確かにシンプルではあるのですけれども、暴走したときにどうするのかという懸念は当然出てくるわけです。
 一つの考え方としては、国が止めればいいと。首長が暴走したら、国と議会が止めればいいという話はあると思うのですけれども、議会は首長と党派が一緒になってしまうと、なかなかチェックが効きづらくなる。それから国の方は、何回も出ていますように、自治事務ですので、竹富の例もそうなのですけれども、限界があるわけです。国が止めればいいという話にはなかなかならないので、そうすると、以前から申し上げていることですが、多元的な執行機関ということのメリット、しかも合議制を取っている、一人の人間が決めないのだということを貫くことが重要なのではないかと思います。
 今回は緊急時の責任の明確化、それから中立性、継続性・安定性の両立ということで、そこが焦点なので、教育委員会の形骸化については、よく言われるわけです。けれども、8月に報告させていただいた、私が実施した調査では、この10年間で首長さんは教育委員会の実態に対して、むしろポジティブになっている傾向が強いのです。10年間で教育委員会はすごく批判が高まったわけです。しかし、首長さんの認識に関しては、教育委員会はむしろ機能していると答える割合が、この10年で高まっていることを考えると、形骸化という批判はあるかもしれませんけれども、時系列的に見ると、この10年は、むしろ実態としては、教育委員さんは努力をかなり積み重ねられているのではないかと思います。
 あと2点ほど、個別の点について申し上げたい。先ほど梶田委員から、教育委員会の承認が必要ではないかというお話がありました。特に教育長の任命については教育委員会をかませるべきで、改革案については、罷免については教育委員会の同意という記述があったのですが、任命についても同様ではないかと。
 別案の方は、教育委員会が教育長の任免に関わることは書いていないのですけれども、改革案から推論すると、そうなるであろうという話ではあるのですが、やはり別案についても、教育委員会が教育長をチェックするという立場からすると、教育長の任命と罷免には、両方とも教育委員会が制度的に関与して、承認をするなり、そういった権限が必要であろうと思いますので、教育長の罷免だけではなく、任命の方にも教育委員会が関与する、承認権等を持つことは必要ではないかと考えます。
 それからもう一つは、18ページなのですけれども、文化財保護を除く文化に関する事務、それから学校体育を除くスポーツに関する事務というところなのですが、ここのところは原則として首長の事務にして選択できるようにするということで、選択制自体は変化ないのですけれども、原則を首長の事務に移すという表現になっていて、ここは8月に議論したときに、余りそういう話にはなっていないというか、選択制になって間もないので、まだ効果なり弊害なりをきちんと見極めた上で判断してもいいのではないかと思います。ですので、例えば最後の一語を、教育行政部局が担当することができるようにすることを検討する必要があると書いてもいいのではないかと。つまり、この場で原則首長移管にするということをはっきり話し合っているわけではない気がするので、検討事項でもいいのではないかと思いました。
 それから、あと1点だけなのですが、私立学校は今も首長部局が担当しているわけですが、もし改革案の方になった場合は、かなり私立学校への影響も考えないといけない。つまり公立と一緒になるわけです。首長が執行機関という意味では公立と一緒になりますので、今は首長部局の私学課という感じになっていますけれども、普通に考えると、将来的には教育長のもとに両方置く、公立と一括で扱うという可能性も出てくると思うのですが、そうすると私立学校行政の実態はかなり変わってくる可能性があるのではないか。今まで出てきていないのですけれども、総合化することで負の影響を受けてしまう分野もあるのではないかということを申し添えたいと思います。
 細かい点になりましたが、以上です。

【小川分科会長】  ありがとうございました。
 高橋委員、どうぞ。

【高橋委員】  制度改革案への委員の皆様の御意見は本当に参考になるのですが、私は、教育委員をやってきましたけれども、これまで執行機関としての教育委員会の議論は活発化したと思います。しかし先ほどからお話がありましたように、首長さんの影響は実は大変大きいのです。首長さんの持っておられる力は大きいにも関わらず、それは世の中には明確でない、教育委員会に責任の全てがあるように言われるという見方もあると思います。
 そう考えたときに、私はやはり教育長だけ、首長さんだけが決めない、もちろん教育委員だけでも決めない、教育委員会も合議制で議論をするという、前から発言させていただいていますが、この三者が公開の場で議論をして方向性を決めるという案が、私としては制度改革になってくれるといいなと思っています。
 現実的には首長さんが、教育の実態を把握してそれを施策に落とす作業は大変でして、教育委員会と教育長、事務局がやる仕事は多いと思うのです。それを、それぞれがばらばらに分担するのではなく、持ち寄って公開の場で議論することが、大事ではないかと私は思います。
 今回の制度改革案としたときの事務執行の責任者、あるいは別案にしても、教育長が独任制になりやすい危険は両方あると思います。そうさせないためには、まず新たな教育委員会の組織体制として、新たな事務局を考える必要があると思います。それは首長部局プラス教育委員会の事務局のスタッフで構成すればいいのではないか。私学の問題もありましたが、私学を教育長が責任を持つというのは非常に問題だと思います。もっと中立的な組織として、首長部局に新しい事務局、教育企画評価課というか、それぐらいのスタッフを持たないとやっていけないだろうと思います。
 また今回の制度改革案では、教育長が審議事項の中で、基本施策の審議と点検・評価について、12ページの教育長に対する教育委員会の役割ですが、次年度の施策を策定するに当たっては議を経ることとするとあります。議を経ることとするとなると、多分これは、教育長は聞かないと思います。だから、基本施策と点検・評価については議に基づいて教育長が執行するとした方がよいと思います。
 そしてもう一つですが、教育長さんの評価において、何かやると評価できますけれど、子供の実態が変わっているのに、継続性、中立性ということで、何もしない、実行しない、対応しないということも、あると思います。やらないことは見えにくいのです。私は、必ず公開の場で明確に見せていくことは大事ではないかと思います。
 どちらの案というわけではないのですが、具体的に言うと、12ページは、議に基づくようにしていただきたいということでございます。
 以上です。

【小川分科会長】  ありがとうございました。
 ほかにいかがですか。では、及川委員、どうぞ。及川委員で、吉田委員。

【及川委員】  ありがとうございます。
 学校の視点からということで、感想ですけれども、どこの自治体でも恐らくそのような会があるのだと思いますけれども、東京都の場合、年度当初に教育施策連絡会と言いまして、全校の校長、園長を集めて、その年度の事業説明会を行っております。そこには知事も見えて、校長、園長に対して激励の言葉をかけてくださいます。その後、一人一人の教育委員が、もちろん教育の専門家ではないわけですけれども、広い視野に立って、学校現場の我々がなかなか持てないような視点から教育に対しての御意見を述べてくださる。講話をしてくださるわけですけれども、私はその講話が毎年非常に楽しみで、学校経営を行っていく上ではとても参考になる、ためになっています。
 つまり、首長さんもいらっしゃって、教育についての考え方も披露してくださいますし、教育委員も広い視野から教育について話をしてくださり、学校現場から見て、教育委員会の在りようが具体的なイメージとしてよく見える場だと私は思っています。
 どのように制度が改正されても、教育委員の存在意義が確認できるような制度になってほしいと思います。
 この答申案では、別案を支持する強い意見もあったという文言で、必ずしも重きの置き方としては両論併記ではないとは思いますけれども、ただ、これまでの分科会での流れを踏まえた形になっていると私は思いますので、その点では安心いたしました。
 以上です。

【小川分科会長】  吉田委員、どうぞ。

【吉田委員】  ありがとうございます。
 私は先ほど来お話を伺っていて、A案、B案という別案が出たことも、いいことだと思っておりますけれど、基本の問題に返って、今回、責任の不明確さが大きな問題であると。その原因がどこにあるかと言ったら、危機管理能力の不足という、いろいろな事件のことが原因だったと思うのです。
 そのような中で、先ほど来お話がありますように、今でも教育委員会、そして教育長、当然ながら首長、その三者が非常にうまくいっているところもある。今の及川先生のお話ではないですけれども、東京都などは、そのような形でしっかりと1年に1回やられているし、私も何年か前に、私学の立場で、教育長に1回来てごらんなさいと言われて行った会が、東京都の全部の校長先生を集めて、教育長の施政方針演説のような会なのです。東京の場合は、教育長は別に教員ではなく、役人ですけれども、すごい勢いで言えるのです。あの教育長の権限はすごいなと。今日、比留間さんがいないから言っているわけではないですけれど、すごいなとびっくりしました。やはり、そのような意味では、三者がしっかりと連携を取れば、やれているのではないかと。
 責任の不明確さと言いますけれど、最終的な責任は国家賠償法ということで言えば、首長に責任がいっているわけですから、今も全然そのあたりは変わらないのではないか。三者それぞれが自分たちの立場からの責任を全うしてくれていれば、このような問題は起きないのではないか。
 それをやるためにはどうかと言ったときに、今回の制度見直しということで言うのだとしたら、例えば、先ほどの今田委員の横浜市は三百数十万人に5人の教育委員です。そうかと思うと、町とかに行くと数百人のところに5人の教育委員。制度ということで言うのだとしたら、そのような目が利くような範囲、責任を負える範囲といったものをしっかりと変えてあげて、そこに後ろの方の問題である例の事件とか、そのようなことを含めて総合的に考えることの方がいいのではないか。
 教育委員会制度は、今までやってきている日本の教育は、私は決して間違いではないと思っているし、先ほど村上委員から言っていただいた私学の件もそうですけれども、私学と公立学校が一つのもとになるというのも、いろいろな意味で、現実に今もやっているところがあるわけですけれども、やはり成り立ちも違いますし、補助の制度も違う。いろいろなことが違いますけれど、私学と公立があるから日本の教育は良くなっているというのも事実だと思っているし、お互いが範囲というものをしっかりと押さえられているかどうか。
 最近若干心配していますのは、ある県で公立の高等学校で全日制の中高一貫校を作って、それが県だけではなくて、他の都道府県まで生徒募集をやる、出張入試もする。県のお金でどうしてそのようなことができるのかと思いますけれども、そのような無謀な教育をやろうとしていることに対しての方が、よほど私は教育委員会制度としてしっかりとチェックすべきではないかと。県民の税金を使って何をするのか、そのようなことをやる方が大事なのではないかという気もしておりますので、今、せっかくきちんといっているものをわざわざ壊すのではなくて、たった一つ二つの悪いことによって全てが悪くされる、これは我々私学にとっても同じ思いがあります。一つあると、それに併せて全部改革されてしまう部分があるわけですけれど、そのような見方をもう少し変えていっていただきたいと思います。

【小川分科会長】  竹原委員。

【竹原委員】  多くの議論を経て教育委員会、教育長、首長が一緒になって同じ目的に向かい、子供のこと、社会のことを考えて進むということが見えてきました。
 改革案のイメージ図の中に入れるものかどうか分かりませんが、教育委員会が諮問を受け答申をするだけではなく、教育委員会発で質問、提案することもあれば、教育委員会の日常的な動きにつながると思って拝見しました。
 また、教育委員会事務局を別に作ることと、教育長の下での教育委員会事務局の機能を見直し、補佐する人、それから中堅的にリードする人などが必要ではないかと思います。特に大きな都市は、教育長だけで動かすことは難しく、今以上にチーム力が求められるのではないでしょうか。
 それから、教育委員会だけではできないことも多いので、市長部局との関係が今後もっと改善され円滑につながればよいと思います。子供の生活、人々の生活は地域で24時間つながっていて、行政の縦割りの関係を越え、様々なところが知恵を出し、力を出さなければ解決しないことが多くあります。
 見える危機である耐震補強については必ず誰でも合意しますが、見えない危機の中で、私たちはどうするかが問われていて、「社会総がかり」と申し上げましたが、教職員の皆さんが更にやる気が出て、保護者・地域ができること、企業ができることなど、それぞれが役割を担うとともに、この制度改革が行われればと思っています。

【小川分科会長】  尾上委員、どうぞ。

【尾上委員】  このような言い方をすると変ですが、続けて参加させていただいて、意見を交換して、ようやく教育委員会というものが分かってきたかなというのが正直な感想です。私たち保護者の活動とすれば、やはり対PTA、地域との活動が多くて、その中で教育委員の方と接する機会はまずなくて、学校が発信しないと教育委員会制度のことも全く分からない状況で動いております。
 私自身も市の役員になって、初めて教員委員会との関わりができて、その中で話していると、なかなか制度、方針が私たちには伝わってこない。私たちも保護者に伝えられないことがたくさんありました。保護者に関しては、やるべきことが多い年代でありますので、いろいろな面で三者がうまくやっているものだという理解の中で、子供たちの将来を見据えた教育を通した導きが、そこでやられているという認識が強い状況です。
 その中で、やはり分かりにくいところは分かりやすくしていただくのが、我々保護者、PTAとしての活動の中で伝えていくべき方策ではあるかなと思います。
 私たちが、このようなことを認識することによって地域がよくなるというのは、完全にそうだと思っております。学校を通じてではないと浸透しないというのが、最終的なところになってくると思いますので、発信してもなかなか伝えにくいのは、私たち保護者のPTAでも、そうでありますので、よほど分かりやすい形での導きが欲しいというところです。
 様々な立場、様々な意見、地域性というのはあるのですが、やはりこのようなものを照らし合わせてみると、自分たちの地域はこのような形で活動できているのだとか、この方向性がしっかり浸透しているのだというのは分かってくると思いますので、この制度改革は本当に私たちにとっても重要なものであるし、子供たちにとっても、これから将来を見据えた形をやるに当たっては必要かなと思っております。
 呼称の件に関しましては、分かりにくい状態のままだと思っております。教育委員会、教育委員、事務局と言われても、どこが何か、誰がそれなのかは多分このままでは分かりにくいので、分かりやすい呼称に変えていただけたらと考えております。
 この制度改革は子供たちの将来にとって本当に重要な改革であるということを認識した上で、私たちの活動を進めてまいりたいと思いますし、先ほど申しましたように、できるだけ学校の方から保護者に伝わるような形になるようにお願いしたい。私たちも活動を進めてまいりたいというのが意見です。
 以上です。

【小川分科会長】  ありがとうございました。
 では、明石委員、お願いします。

【明石委員】  ありがとうございます。
 最初に個人的な意見を申し上げたいと思います。教育委員としてちょうど1年たちまして、実感したことを申し上げますと、執行機関という認識はなかったです。残念ながら、追認機関。事務局が上げたことを、いかがですかという問いを受けて、そうですねと。かなり抵抗したのですけれども、なかなか執行するということまで、1年たってみていかなかった。2年たってみても、非常勤の場合に情報量が少ないし、相当意図的な研修をやらない限り難しいかなと。
 そうしますと、附属機関となっても、一番大事なことは責任と権限がはっきり分かる形でしていきたい。ですから、今の制度でも独走している方はいるわけです。誰もそれをストップできなかった。あれはやはり反省しなければいけない。そうすると、改革案の中でも首長、教育長の独走に対して議を経るとか、勧告するとか縛りをかける。その縛りをもっと強くしていただきたい。
 高橋委員と露木委員がおっしゃるように、チェック機関としての新しい教育委員会を作る場合に、今の事務局では駄目なのです、新たな事務局体制を作りたいということをお願いしたいというのが私の意見であります。
 今日まで17回の会を教育制度分科会は重ねてきました。改革案いわゆるA案と、別案いわゆるB案があります。今回の事務局の案は、丁寧に非常に気配りのある、ここまでやらなければいけないかなという感じはあるのですけれども、相当いろいろなところに配慮した案が出てきております。
 それで、私の提案としましては、本日の意見を踏まえて、小川分科会長に原案一任をさせていただきたいという御提案であります。よろしくお願いいたします。

【小川分科会長】  時間がないのですが、もしもほかに一、二ございましたら。よろしいですか。

【門川委員】  この分科会の初期の段階で申し上げましたが、その後、全く触れることができず申し訳ないのですが、政令指定都市、あるいは基礎自治体に権限委譲がなされていくことについてであります。指定都市に教員の給与権が移譲されることが長年の懸案だったのですが、現在、具体的に話が進んでおり、これは大きな前進だと思います。これも権限と責任ということに属するものですが、戦後の大きな懸案の一つでございましたので、大きく進めていただきたいと思います。
 同時に、政令指定都市、あるいはもっと中核市においては、市立高校を設置しています。この市立高校の許認可権は県教委が持っています。したがって、なかなか市立高校において創造的な改革ができない。改革する意欲すら湧かないということがございます。校長会などで話を伺うと、こうした実態がございます。県教委は県立高校をよくしたいという思いが強く、市立高校は、その競合関係にあるわけです。こうした状況を踏まえると、私学について知事部局が所管となっていることは、いいことであると考えます。
 政令市ではない市である、中核市などが自らの財政で運営されている中で、創造的な教育活動というのは余り目立ちません。市立船橋高校とか、頑張っておられる幾つかの高校がありますが、こうした学校は本当に地道な取組をされているわけです。したがって、県教委の認可というのを政令市、中核市等へ移譲していく、設置者に任せていくことが必要かと思います。県教委への報告や協議等は総合調整ということで、一定残してもいいと思いますが、権限は委譲していくべきだと思います。最後の機会ですので、お話しさせていただきました。よろしくお願いしたいと思います。

【小川分科会長】  ありがとうございました。長い間、どうもありがとうございました。
 今日、委員の多くから、答申案について様々な意見を伺いました。今後の取扱いですけれども、今日、皆さんに審議していただいたこの答申案をベースに、今日頂いた意見、例えば1案、2案でも教育委員会の権限というものを、あたかも基準作りだけを中心としたものになっているけれども、果たしてそのようなものでいいのかということを含めた、教育長と教育委員会との関係をもう少し詰めてほしいとか、改革案、別案どちらにしても、教育委員会の活性化を図る方策、サポートの在りようということも非常に重要なので、その点についてももう少しきちんと触れてほしいとか、その他、文章等々で、もう少し正確に記述してほしいという御指摘もありましたので、今日頂いた意見については私に一任していただいて、事務局と相談して、どこまで文章を膨らませることができるかどうか分かりませんけれども、事務局と相談しながら、今日頂いた意見については可能な限り今日の答申案に組み込ませていただきたい。そのようなことで御了解いただきたいのですけれども、よろしいですか。
                            (「異議なし」の声あり)

【小川分科会長】  ありがとうございました。
 今、御了解を頂きましたので、皆さんから頂いた意見を踏まえながら加筆修正し、成案がなったところで、また皆さんにメールでお送りしますので、御確認いただければと思います。
 その上で、今週13日金曜日に中教審の総会がございますので、第88回の中教審総会ということになりますけれども、その成案については私から中教審の方に報告をさせていただいた上で、中教審総会で答申として取りまとめられることになります。その点についても、御了解いただければと思います。
 最後になりましたので、西川副大臣から一言頂ければと思います。

【西川副大臣】  皆様、本当に長い間、熱心に御討議いただいてありがとうございました。5月から17回という議論の末でございます。改革案いわゆるA案を中心にまとめるという方向性が出ている今回の答申になると思いますが、それにいたしましても、かなり丁寧に皆様の御意見を一生懸命まとめさせていただいたと思います。その中で、これを踏まえて、なおかつこれだけの御意見が出たということは大変重いと思いますので、より丁寧にしっかりと対応させていただきたいと思います。
 本当に長い間御審議いただきまして、心からお礼申し上げます。ありがとうございました。

【小川分科会長】  ありがとうございました。
 分科会長から、最後に簡単に皆さんへお礼を申し述べたいと思います。先ほどもお話ありましたように、第1回が5月20日ですので、実に7か月で17回にわたる会議を重ねてきました。大体ペースにすると月に2回程度というペースですので、皆さんには非常にお忙しい中、分科会の出席率もかなり良かったと思いますので、非常に御尽力いただきましてありがとうございました。
 いろいろな御意見を頂き、分科会では最初から最後まで真摯な議論をしていただきました。これまでの真摯な議論をできるだけ政府側にしっかり伝えて、今後の政府の法案作成にきちんと反映していただくよう、分科会長としても強くお願いするとともに、そうしたことを強く期待したいと思います。
 本当に長い間ありがとうございました。
 それでは、これで今日の分科会は閉会とさせていただきます。ありがとうございました。

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